説明

座標入力パネル

【課題】
面抵抗体以外の抵抗性周囲電極の材料として、混合などの必要がない単一の導電性材料を使用でき、抵抗性周囲電極の抵抗値の設計を容易に実施することができるような、抵抗性周囲電極のパターンを持つ座標入力パネルを提供する。
【解決手段】
抵抗性周囲電極の各辺を、面抵抗体上に互いに間隙を持って形成された複数の細長い直線状の導電性セグメントと、間隙を成す面抵抗体の部分領域との集合体から構成した。直線状の導電性セグメントは、抵抗性周囲電極の各辺に対して斜めにし、その傾きは、抵抗性周囲電極の各辺の座標入力領域の内側に面する直線の端が、各辺のそれぞれ中央側に位置し、座標入力領域の外側に面する直線の端が、各辺のそれぞれ両端側に位置するようにした。また、互いに隣り合う導電性セグメント同士が、互いに同じ傾きを持って平行になり、面抵抗体の間隙を挟んで直線部を少なくとも部分的に重ね合わせるように配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指または座標指示器によりタッチ位置を検出する座標入力システムの、座標入力パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
図5は従来の長方形の座標入力領域8を有する座標入力パネル1であり、均一な面抵抗体2に、面抵抗体2と電気的に接続するように、面抵抗体2を取り囲む抵抗性周囲電極3を配設しており、4頂点に検出電極4、5、6、及び7を備えている。検出電極4、5、6、及び7は、抵抗性周囲電極3と電気的に接続されている。座標入力領域8は、面抵抗体2上にあり、抵抗性周囲電極3の内側である。
上記座標入力パネル1を用いた座標入力システムの座標検出方法として、座標入力パネル1が受信側であるような、座標指示器(以下入力ペンとする)から信号を発信し、静電容量結合もしくは直接の接触を介して、面抵抗体2が、入力ペンから発信された信号を受信する方法、更には面抵抗体2全体を電圧振動させて、指又は導電物で指示した点の位置を入力パネル側で検出する方法、及び、信号伝達の方向がこれと逆であって、座標入力パネル1が発信側であるような、面抵抗体2の各部を信号駆動し、入力ペンで受信する方法がある。
【0003】
座標入力パネル1が受信側である場合は、面抵抗体2の一点に出入りする電流の、4頂点(4、5、6、及び7)へ配分される電流値を計測するものが知られている(特許3237629号(特許文献1)参照)。一方、座標入力パネル1が発信側である場合は、面抵抗体2に、検出電極4、5、6、及び7を通じて外部から電位勾配を与え、入力ペンによって指示座標点の電圧レベルを検出するものが知られている。指や入力ペンで指示した位置の座標は、面抵抗体2に出入りする電流の4頂点への配分値、もしくは4頂点を駆動した際に入力ペンで計測した電圧を用いて、計算される。また、座標入力パネル1の座標入力領域8が長方形ではなく一般的な多角形である場合についての座標検出方法としては、例えば同一出願人による特願2008−251905号(特許文献2)が存在する。
【0004】
上述した座標入力システムにおいて、指または導電物が近接または接触した点の位置を正確に検出するためには、座標入力領域8内に生じる電位分布あるいは電流分布を均一にすることが必要となる。抵抗性周囲電極3の辺あたりの抵抗値、もしくは長さあたりの抵抗率が高いと、接触した点の位置検出がずれることが分かっている。このため、抵抗性周囲電極3の抵抗値は、面抵抗体2の抵抗値に対してできるだけ低いことが好ましい。しかしながら、抵抗性周囲電極3の抵抗値を低く設定しすぎると、消費電力が大きくなったり、電位勾配を与える駆動電流が大きく、面抵抗体2にDCまたはACの電位勾配を強制的に作ることができなくなるなどの、回路制御上の不都合が生じる。一方、逆に面抵抗体2の抵抗値を高くすれば、抵抗性周囲電極3の抵抗値を相対的に下げることができるが、面抵抗体2の抵抗値を上げると、ノイズに弱くなるといった問題があった。従って、抵抗性周囲電極3は、適切な値に制御された抵抗値を持つことが望まれる。
【0005】
抵抗性周囲電極3の抵抗値を所定の値にするためには、例えば、一定の抵抗率を持った物質を直線的に塗布し、抵抗性周囲電極3の各辺と成す、という方法がある。ただし、塗布する物質として、例えば銀を用いると、銀の抵抗率が低いため、適切な値の抵抗値にするためには抵抗性周囲電極3の各辺を極めて細い幅にしなくてはならず、形成方法が難しい。また、銀にカーボンを混合して抵抗値を高くしたものは、周囲電極形成に適しているが、異なった材料を混合する必要があり、製造工程上、安定な抵抗値を維持するのが困難である。
【0006】
また抵抗性周囲電極3を形成する別の方法として、抵抗の低い導電性物質(たとえば銀インク)のセグメントを使用して非連続パターンを形成し、間隙に存在する面抵抗体2の抵抗により、所定の抵抗値を実現するものがある(例えば、特表2005−530274号(特許文献3)参照)。これらの方法では、電位分布あるいは電流分布を均一にするための導電性セグメントの配列パターンが複雑であることが多く、抵抗性周囲電極3の抵抗値の設計が困難であることがあった。
【0007】
【特許文献1】特許第3237629号
【特許文献2】特願2008−251905号公報
【特許文献3】特表2005−530274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、面抵抗体以外の抵抗性周囲電極の材料として、混合などの必要がない単一の導電性材料を使用でき、抵抗性周囲電極の抵抗値の設計を容易に実施することができるような、抵抗性周囲電極のパターンを持つ座標入力パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ひとつながりの面抵抗体の上に、各辺が直線である多角形の抵抗性周囲電極を、全ての辺が面抵抗体と電気的に接触する様に設けると共に、前記抵抗性周囲電極の内部を座標入力領域とする座標入力パネルであって、前記多角形の抵抗性周囲電極の各辺は、前記面抵抗体上に互いに間隙を持って形成された複数の細長い直線状の導電性セグメントと、前記間隙を成す面抵抗体の部分領域との集合体から成り、前記直線状の導電性セグメントは、前記抵抗性周囲電極の各辺に対して斜めに、その傾きは、前記抵抗性周囲電極の各辺の座標入力領域の内側に面する直線の端が、各辺のそれぞれ中央側に位置し、座標入力領域の外側に面する直線の端が、各辺のそれぞれ両端側に位置するようにし、且つ、互いに隣り合う導電性セグメント同士が、互いに同じ傾きを持って平行になり、前記面抵抗体の間隙を挟んで直線部を少なくとも部分的に重ね合わせるように配置され、前記抵抗性周囲電極の各辺の中央に最も近い2つの導電性セグメントの端を接続して成る様なパターンを持つ座標入力パネルを提案するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明による座標入力パネルによれば、抵抗性周囲電極の材料として、単一の導電性材料を使用することができるので、抵抗性周囲電極の抵抗値を安定させることができ、製造工程における歩留まりを上げることができる。また、抵抗性周囲電極の材料として低抵抗の銀を用いれば、検出電極と同じ材料を使用することができるので、印刷などによって検出電極と抵抗性周囲電極を同時に形成することができ、両者を別々に形成するよりもコストを下げることが可能になる。
【0011】
また、抵抗性周囲電極のパターンを、斜めにし、互いに部分的に重なるようにしたことで、抵抗性周囲電極の各辺は、隣り合う導電性セグメント同士の間隙によって形成される抵抗が直列に接続されたものと見做すことができるため、抵抗値の設計が容易になる。
【0012】
更に、抵抗性周囲電極の抵抗値の低さと面抵抗体の抵抗値の高さの差異が理想的ではない場合、指または導電物が近接または接触した位置を検出した結果が歪むことがあり、抵抗性周囲電極の各辺内の抵抗値の分布を調整することによって、その歪みを小さくすることができるが、隣り合う導電性セグメント同士の重なる長さを変えることによって、そのような抵抗値の分布の調整を容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】座標入力パネルの概略図
【図2】座標入力システムの一例を示す構成図
【図3】抵抗性周囲電極の部分拡大図
【図4】抵抗性周囲電極の概念図
【図5】従来の長方形の座標入力パネル
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に従って、本発明に係る座標入力パネルの好ましい実施の形態について詳述する。
図1は本発明になる多角形の座標入力パネル11の概略図である(図1には4角形の例を示す)。座標入力パネル11は、基材(図示せず)の上に、均一な面抵抗体12を形成し、面抵抗体12と電気的に接続するように、面抵抗体12を取り囲む抵抗性周囲電極13を形成し、更に、各頂点に検出電極14、15、16、及び17を形成したものである。抵抗性周囲電極13は、複数の細長い直線状の導電性セグメントと、面抵抗体12のうち、互いに隣り合う導電性セグメントの間隙を成す部分との集合体から成る。座標入力領域18は、抵抗性周囲電極13の内側の領域を指す。
【0015】
基材は、例えば、ソーダガラスを使用することができるが、特に材質が限定されるものではなく、任意のガラス素材あるいはアクリル樹脂、ポリエチレン樹脂などの透明な樹脂素材を使用できる。用途によっては不透明な絶縁性の基材を用いてもよい。面抵抗体12としては、スパッタ法によって形成したITO(インジウム酸化物)膜、あるいはCVD法によって形成した酸化スズ膜などを使用することができる。
【0016】
抵抗性周囲電極13を構成する導電性セグメントは、例えば銀のような低抵抗の導電性インクを用い、印刷・焼成して形成することができる。各頂点の検出電極14〜17は、引き出し線を接続するためのものであり、ハンダ付け可能な導電性インクを印刷・焼成して形成する。検出電極14〜17を形成するための導電性インクは、抵抗性周囲電極13を構成する導電性セグメントを形成するのと同じものを使用することができるため、検出電極14〜17と、抵抗性周囲電極13を構成する導電性セグメントは、一回の処理で印刷・焼成して形成することが可能である。
更に、図示しないが、指または座標指示器と面抵抗体12との相互作用に容量結合を用いる場合は、面抵抗体12を保護するために、面抵抗体12上に、透明絶縁性基材を被覆してもよい。
【0017】
図2は、本発明になる座標入力パネル11を用いた座標入力システムの一例を示す構成図であり、入力パネルが受信側である場合である。指21が座標入力パネル11の座標入力領域18内で指示した位置座標を検出する座標入力システムの構成図である。面抵抗体12の表面は、前記したように、指21が面抵抗体12に直接触れない様に絶縁処理することによって、指21と面抵抗体12との静電容量結合による信号伝達をさせるようにしてもよいし、絶縁処理せず、指21と面抵抗体12の直接的な電気的接触による信号伝達をさせるようにしてもよい。ここでは、面抵抗体12の表面に、透明絶縁性基材を被覆して絶縁処理をした場合を説明する。均一な面抵抗体12上に、各辺が直線である多角形の抵抗性周囲電極13を形成し、抵抗性周囲電極13の内部を座標入力領域18とする(図2には4角形の例を示す)。抵抗性周囲電極13上において、多角形の座標入力領域18の各頂点に当たる位置を検出電極14〜17とし、そこにそれぞれ1本ずつ引き出し線22、23、24、及び25を接続する。更に、引き出し線22〜25を、アナログ信号処理部26内の振動電圧印加回路27に接続する。
【0018】
座標を検出する際、AC信号源としての振動電圧発生器28は、振動電圧印加回路27に振動電圧を与え、振動電圧印加回路27は、対応する検出電極14〜17を、低インピーダンスで電圧振動させ、且つ、アナログマルチプレクサ29に検出電極から流入した電流を出力する。簡単な例としては、トランジスタのベースをAC信号で振動させ、エミッタを検出電極と接続して、コレクタから電流出力するものがある。
【0019】
AC信号源としての振動電圧発生器28によって、面抵抗体12は、全面が電圧振動する。人体は、従来から知られているように、AC信号に対して接地効果を持っており、人体の指21が面抵抗体12に接触または近接すると、静電容量結合により、指先を通して面抵抗体12との間にAC信号電流が流れる。検出電極14〜17は、アナログマルチプレクサ29を通してA/Dコンバータ(アナログ/デジタル変換器)30に接続しており、各検出電極に流れる電流に比例した電圧がA/Dコンバータ30に印加されるため、指先から面抵抗体12を通して流れ、検出電極14〜17へ配分される電流値を、電圧値としてデジタル値で得ることができる。CPU31は、アナログマルチプレクサ29を順番に切り替え(図示せず)、A/Dコンバータ30が出力するデジタル値を入力し、指21や入力ペンの指示位置の座標を計算する。指示位置の座標を計算するには、例えば特許3237629号(特許文献1)に開示されているような式を用いることができる。CPU31は計算した座標を出力し、座標は後段の装置によって利用される。
また、入力ペンから信号を発信する場合も、同様にして計測することが可能である。
【0020】
次に、抵抗性周囲電極13について、説明する。図3に、抵抗性周囲電極13の部分拡大図を示す。4角形の座標入力パネル11の4辺のうち、上辺の左半分を、検出電極14と共に示したものである。本実施の形態では、1辺の半分が、41a〜41gの7つの直線状の導電性セグメントから成っている。複数の導電性セグメント41a〜41gは、抵抗性周囲電極13の辺である直線に対して、導電性セグメントの直線が斜めになるよう配置する。傾きは、図3に示した上辺の左半分において、右下がりにし、その領域の全ての導電性セグメントの傾きを等しくする。右半分においては、逆に右上がりの傾きにする。導電性セグメントの配置パターンは、抵抗性周囲電極13の各辺の中央に関してそれぞれ対称であることが好ましい。しかし、配置パターンは各辺の間で同一である必要はない。
【0021】
抵抗性周囲電極13の辺の端、つまり検出電極14に最も近い導電性セグメント41aは、検出電極14と接続させる。一方、辺の中央に最も近い導電性セグメント41gは、辺の中央に関して対称な配置を持つ、上辺の右半分の導電性セグメントのうち、辺の中央に最も近い導電性セグメントと接続させる。
また、全ての導電性セグメントは、少なくとも平行に並んで隣り合う導電性セグメントと、導電性セグメントの直線が部分的に重なり合うように配置する。導電性セグメント41aは導電性セグメント41bと、導電性セグメント41gは導電性セグメント41fと、それぞれ部分的に重なり合うようにし、導電性セグメント41b〜41fは、それぞれ両側の導電性セグメントと部分的に重なり合うようにする。
【0022】
1辺を構成する導電性セグメントの数は、多ければ、座標入力領域18において、より抵抗性周囲電極13の間際まで、指示位置の座標の計算結果の歪みを小さくすることができる。歪みが発生するのは、次のような理由のためである。例として、導電性セグメント41bについて説明する。座標入力領域18内部から導電性セグメント41bに電流が流れ込むのは、導電性セグメント41bのうち、座標入力領域18に面し、導電性セグメント41aと重なり合って隠されている部分を除く領域に対してである。導電性セグメント41bの抵抗は低いため、導電性セグメント41bの電流が流れ込む領域については、そのどこに電流が流れ込んでも、それだけで位置を識別することはできない。指21が座標入力領域18内で指示した位置が、抵抗性周囲電極13から充分に離れていれば、電流が2次元的な分布を持って流れることから、導電性セグメント41bだけでなく、両側の導電性セグメント41a及び41cを含む導電性セグメントにも流れ込むため、電流の流れの歪みは総じて小さくなり、正確な指示位置を計算することができる。しかし、座標入力領域18内の、導電性セグメント41bに極めて近い位置を指示した場合には、ほとんどの電流が導電性セグメント41bに流れ込んでしまうため、指示位置の座標の計算結果について、歪みが発生する。1辺を構成する導電性セグメントの数を多くすると、そのような歪みを小さくすることができる。
【0023】
一方で、導電性セグメントの数が多いと、それらの間隙によって構成される抵抗値の合計が大きくなる傾向にある。従って、導電性セグメントの数、間隙、及び重なり合う長さなどを調整して、抵抗性周囲電極13の辺あたりの抵抗値、つまり隣り合う検出電極間の抵抗値を適切な範囲にする必要がある。
【0024】
図4に、図3に示した抵抗性周囲電極13の部分拡大図を説明するための概念図を示す。図4では、導電性セグメント41a〜41gを太さを持たない直線で示し、配置のパターンを明瞭にするために、間隙を広く示した。面抵抗体12のうち、図4(a)に網目43で示した、平行に並んで隣り合う導電性セグメント41a〜41gの間隙の部分が、抵抗性周囲電極13の辺あたりの抵抗値に寄与する。より厳密には、導電性セグメント同士の重なりが部分的であることに起因する2次元的な抵抗分布を考慮すべきであるが、間隙の幅に比べて重なりの長さが大きいことから、網目43以外の領域を無視しても、実用的な問題にはならない。
【0025】
図4(a)に網目43で示した、面抵抗体12の部分は、平行に並んで隣り合う導電性セグメント41a〜41gのそれぞれの間隙の抵抗として、等価的に、図4(b)に示す抵抗42A〜42Fとして表現することができる。つまり、抵抗性周囲電極13は、これらの等価的な抵抗42A〜42Fが直列に接続されたものと見做すことができる。そして、等価的な抵抗42A〜42Fのそれぞれの抵抗値は、面抵抗体12の抵抗値、平行に並んで隣り合う導電性セグメント41a〜41gのそれぞれの間隙の距離d、及び重なり合う長さwによって求めることができる。
【0026】
面抵抗体12の抵抗値は、一般的に、シート抵抗で表される。面抵抗体12のシート抵抗をρ(Ω/□)とすると、例えば、等価的な抵抗42Fの抵抗値は、ρ×d/w(Ω)という式で計算することができる。等価的な抵抗42A〜42Fまでの抵抗値を、それぞれの間隙とそれぞれの重なり合う長さを用いて計算すれば、抵抗性周囲電極13の1辺の半分あたりの抵抗値は、それらを合計したものとなり、抵抗性周囲電極13の1辺あたりの抵抗値は、導電性セグメントの配置パターンが対称であれば、その2倍と求めることができる。
【0027】
間隙の距離dは、抵抗性周囲電極13の中で一定にしてもよいし、場所によって変化させてもよい。重なり合う長さwは、同じ長さの導電性セグメントを並べた場合には同一であるが、導電性セグメントの長さを変化させるなどして、wを変化させてもよい。特に辺の端の近傍では、導電性セグメントを同じ長さにすると、検出電極14の形成の仕方によっては、検出電極14と干渉することもあるので、辺の端に近づくにつれて、徐々に短くしてもよい。この長さの調整は、次に述べる、座標の計算結果の歪みを小さくする点からも好ましい。
【0028】
指示位置の座標の計算結果の正確性を考慮すると、抵抗性周囲電極13の辺あたりの抵抗値は、できるだけ低い方が好ましいが、前述したような回路制御上の不都合が生じるため、実際にはある程度の抵抗値を持たせざるを得ない。従って、座標の計算結果には、それに起因する歪みが生じる。この歪みは、先述した導電性セグメントの数による抵抗性周囲電極13の間際に生じる局所的なものとは異なり、座標入力領域18内全域にわたって生じる。一方で、この歪みは、抵抗性周囲電極13の各辺の辺内部における抵抗分布を、辺中央において低抵抗に、辺の端の近傍において高抵抗になるように分布させると、小さくすることができることが知られている。
【0029】
このため、図4に示すように、導電性セグメントの長さを、抵抗性周囲電極13の辺の端に近づくにつれて短くしていくと、導電性セグメントの長さが短いほど、平行に並んで隣り合う導電性セグメントの重なり合う長さwが短くなり、重なり合う長さwが短いほど、その領域の等価的な抵抗の抵抗値は高くなる。従って、辺中央よりも辺の端の近傍において抵抗が高くなるような、望ましい抵抗分布を実現することができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例により、本発明を説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものでなく、本発明の技術範囲において、種々の変形例を含むものである。
【0031】
(実施例1)
座標入力パネル11は、次のようにして作成した。ガラス基材として、ソーダガラス(厚さ3ミリ)を略469×375mmの大きさに切断したものを用い、ガラス基材の表面に、スパッタ法によってITO(インジウム酸化物)膜を形成して面抵抗体12とした。次に、抵抗性周囲電極13の導電性セグメント、及び検出電極14〜17を、(株)アサヒ化学研究所製銀ペーストLS−504(樹脂バインダー)をスクリーン印刷し、加熱硬化させることで形成した。このとき、座標入力領域18の大きさを略450×350mmとし、導電性セグメント41a〜41gの太さを0.5mm、間隙dを0.5mmで一定とした。また、導電性セグメント41a〜41gの重なり合う長さwについては、長辺及び短辺とも、等価的な抵抗42A〜42Fのそれぞれについて、42Aを30mm、42Bを45mm、42Cを65mm、42Dを85mm、42E及び42Fを100mmとした。これによって、抵抗性周囲電極13の各辺は、1辺あたりの抵抗値を50Ωとすることができた。
【0032】
更に、面抵抗体12上に、透明絶縁性基材を形成した。透明絶縁性基材を形成するには、面抵抗体12と抵抗性周囲電極13上にガラスペーストを印刷し、熱処理して粉末ガラスを溶融させ、焼結させた。最後に、検出電極14〜17上に、引き出し線22〜25を、ハンダ付けにより接続した。この際、面抵抗体12のシート抵抗は500Ω/□となるようにした。
【0033】
このように作成した座標入力パネル11を、図2に示した構成図のように作成したハードウエアに接続した。ただし、CPU31から出力される座標データを、シリアル通信によってパソコンに取り込むようにした。
この座標入力システムを用いて座標入力パネル11を評価したところ、充分に小さな歪みで、指示位置の座標を計算できることが確認された。
【符号の説明】
【0034】
1 座標入力パネル
2 面抵抗体
3 抵抗性周囲電極
4、5、6、7 検出電極
8 座標入力領域
11 座標入力パネル
12 面抵抗体
13 抵抗性周囲電極
14、15、16、17 検出電極
18 座標入力領域
21 指
22、23、24、25 引き出し線
26 アナログ信号処理部
27 振動電圧印加回路
28 振動電圧発生器
29 アナログマルチプレクサ
30 A/Dコンバータ
31 CPU
41a、41b、41c、41d、41e、41f、41g 導電性セグメント
42A、42B、42C、42D、42E、42F 等価的な抵抗
43 平行に並んで隣り合う導電性セグメントの間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひとつながりの面抵抗体の上に、各辺が直線である多角形の抵抗性周囲電極を、全ての辺が面抵抗体と電気的に接触する様に設けると共に、前記抵抗性周囲電極の内部を座標入力領域とする座標入力パネルであって、前記多角形の抵抗性周囲電極の各辺は、前記面抵抗体上に互いに間隙を持って形成された複数の細長い直線状の導電性セグメントと、前記間隙を成す面抵抗体の部分領域との集合体から成り、前記直線状の導電性セグメントは、前記抵抗性周囲電極の各辺に対して斜めに、その傾きは、前記抵抗性周囲電極の各辺の座標入力領域の内側に面する直線の端が、各辺のそれぞれ中央側に位置し、座標入力領域の外側に面する直線の端が、各辺のそれぞれ両端側に位置するようにし、且つ、互いに隣り合う導電性セグメント同士が、互いに同じ傾きを持って平行になり、前記面抵抗体の間隙を挟んで直線部を少なくとも部分的に重ね合わせるように配置され、前記抵抗性周囲電極の各辺の中央に最も近い2つの導電性セグメントの端を接続して成る様なパターンを持つことを特徴とする座標入力パネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−113481(P2011−113481A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271693(P2009−271693)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】