説明

廃棄物ガス化溶融装置

【課題】廃棄物ガス化溶融炉におけるコークスの使用量を低減し、廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減することができる廃棄物ガス化溶融装置を提供することを課題とする。
【解決手段】投入された廃棄物を熱分解そしてガス化し、廃棄物の熱分解残渣を溶融する竪型の廃棄物ガス化溶融炉1と、ガス化し発生した可燃ガスを二次燃焼する二次燃焼室10と、二次燃焼した燃焼ガスから熱回収するボイラ12とを備える廃棄物ガス化溶融装置において、炭化原料の受入空間が形成され外部から加熱される反応ケーシング21A;21Bを有していて炭化原料が加熱され乾留されることにより炭化物が生成される炭化物製造装置13を備え、該炭化物製造装置13が二次燃焼室10及びボイラ12のうち少なくとも一方の内部に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を熱分解、ガス化し、熱分解残渣を溶融する竪型の廃棄物ガス化溶融装置に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみやシュレッダーダストなどの廃棄物を処理する技術として、廃棄物を熱分解、ガス化して可燃性ガスを発生させ、熱分解残渣を溶融しスラグにして排出するガス化溶融処理が知られている。
【0003】
この処理方法は、廃棄物を熱分解してガス化することによりその燃焼熱を回収することができるとともに、残渣を溶融してスラグとして排出した後に、埋立処分などで最終処分されるべき量を減容することができる利点を有している。このような処理を行なう溶融炉には幾つかの方式があるが、その一つとして、竪型をなすシャフト式廃棄物ガス化溶融炉がある。
【0004】
このシャフト式廃棄物ガス化溶融炉は、例えば、炉底部に堆積させたコークスを燃焼させ、この高温のコークス上へ廃棄物を投入して、熱分解及び部分酸化させてガス化するとともに残渣を溶融してスラグにする処理を行なう方式の炉である(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1のシャフト式廃棄物ガス化溶融炉においては、竪型筒状をなす炉体の機能が大別して縦(上下)方向で3つの領域に区分される。すなわち、炉底部にコークスを堆積させたコークス床を有する高温燃焼帯が形成され、この高温燃焼帯の上に廃棄物層が形成され、炉体の上部にて該廃棄物層の上方に大きな空間のフリーボード部をなしている。
【0006】
かかる溶融炉では、上記3つの領域のそれぞれで酸素含有ガスの炉内への吹込みが行われる。高温燃焼帯には主羽口が設けられていて、投入されて堆積されたコークス床のコークスを燃焼させて、廃棄物の熱分解残渣を溶融する溶融熱源を得るために酸素富化空気が吹き込まれる。また、廃棄物層には副羽口が設けられ、投入されて堆積された廃棄物を緩やかに流動させると共に、廃棄物を熱分解及び部分酸化させるために空気が吹き込まれる。また、フリーボード部には三段目羽口が設けられ、廃棄物が熱分解されて生成した熱分解ガス(可燃性ガス)の一部を部分燃焼させて内部を所定温度に維持するために空気が吹き込まれる。
【0007】
このようにシャフト式廃棄物ガス化溶融炉は、一つの炉で、廃棄物をその炉内での降下に伴い熱分解ガス化処理と溶融処理の両方を行うことのできる設備である。投入された廃棄物は熱分解され、ガスと残渣が生成される。主羽口からの酸素富化空気の送風によりコークス床のコークスが燃焼され高温燃焼帯が形成され、廃棄物の熱分解残渣が溶融されスラグとメタルとして排出される。高温燃焼帯のコークス燃焼により発生した高温ガスが高温燃焼帯の上に形成された廃棄物層の廃棄物を加熱し、副羽口からの空気の送風により廃棄物は熱分解され、この熱分解により発生した可燃性ガスを含むガスは廃棄物層内を上昇し、フリーボード部を経て、炉内上部に設けられた排出煙道より、炉外の二次燃焼室へ排出される。ガスは可燃ガスを多量に含んでいて二次燃焼室で燃焼され、ボイラで熱回収され蒸気を発生させその蒸気が発電等に用いられる。ボイラから排出されガスは、サイクロンで比較的粗いダストが除去され、さらに、減温装置で冷却され、有害物質除去剤との反応により有害ガスが除去され、集塵機で除塵処理されるなど排ガス処理された後、煙突から大気に放散される。
【0008】
かかる廃棄物ガス化溶融炉では、炉底部にコークスを堆積させたコークス床が形成され、コークスが燃焼して熱分解残渣の溶融熱源となっているが、コークスの使用量を低減し廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減することが要望されている。一方、コークスの代替として建築廃材のおがくずを加熱圧縮成形し炭化した炭化物や木炭などの塊状バイオマスを利用してコークス使用量を削減する廃棄物溶融方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平09−060830
【特許文献2】特開2005−249310
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
廃棄物ガス化溶融炉におけるコークスの使用量を低減するために、特許文献2のようにコークスの代替として塊状バイオマスを利用するとしても、塊状バイオマスはコークスに比べてさほど安価ではないため、廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減することができないという問題がある。また、廃棄物ガス化溶融炉設備内で塊状バイオマスを製造して利用しようとすると、別に塊状バイオマスを製造する設備が必要であり、また、製造するためのエネルギーが必要となり、コストが嵩み実施することは現実的には困難であるという問題がある。
【0011】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、廃棄物ガス化溶融炉におけるコークスの使用量を低減し、廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減することができる廃棄物ガス化溶融装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る廃棄物ガス化溶融装置は、投入された廃棄物を熱分解そしてガス化し、廃棄物の熱分解残渣を溶融する竪型の廃棄物ガス化溶融炉と、ガス化し発生した可燃ガスを二次燃焼する二次燃焼室と、二次燃焼した燃焼ガスから熱回収するボイラとを備えている。
【0013】
かかる廃棄物ガス化溶融装置において、本発明では、炭化原料の受入空間が形成され外部から加熱される反応ケーシングを有していて炭化原料が加熱され乾留されることにより炭化物が生成される炭化物製造装置を備え、該炭化物製造装置が二次燃焼室及びボイラのうち少なくとも一方の内部に配設されていることを特徴としている。
【0014】
また、本発明では、炭化物製造装置が、二次燃焼室から排出される燃焼ガスの流路内であって、炭化雰囲気温度を350〜500℃に保持するように燃焼ガスにより間接加熱される場所に配設されていることを特徴としている。
【0015】
このような構成の本発明によると、炭化物製造装置が二次燃焼室及びボイラのうち少なくとも一方の内部に、又は、二次燃焼室から排出される燃焼ガスの流路内であって、炭化雰囲気温度を350〜500℃に保持するように燃焼ガスにより間接加熱される場所に配設されているので、炭化原料を加熱、乾留して炭化物を生成するための熱エネルギーとして、二次燃焼室から排出される燃焼ガスの熱エネルギーを利用することができる。
【0016】
本発明において、炭化物製造装置は、該炭化物製造装置により生成された炭化物を廃棄物ガス化溶融炉へ供給する炭化物供給手段を備えるようにすることができる。こうすることにより、炭化物製造装置にて、炭化原料から炭化物を得てこれを廃棄物ガス化溶融炉へ燃料として供給することができる。
【0017】
本発明において、炭化物製造装置は反応ケーシング内にスクリューコンベアを備え、該反応ケーシング及びスクリューコンベアが二次燃焼室及びボイラの少なくとも一方を貫通して配設され、炭化原料が燃焼ガスにより反応ケーシングを介して間接加熱され乾留されて炭化物を生成するようになっているようにして構成することができる。
【0018】
本発明において、炭化物製造装置は、炭化原料として廃棄物を反応ケーシング内に受け入れる廃棄物供給手段を備えることが好ましい。
【0019】
このような構成の本発明によると、処理されるべき廃棄物の一部が炭化物製造装置に供給される。該炭化物製造装置は、廃棄物ガス化溶融炉からの可燃ガスを二次燃焼し高温の燃焼ガスが発生する二次燃焼室及び高温の燃焼ガスが流通するボイラの少なくとも一方の内部に、又は、二次燃焼室から排出される燃焼ガスの流路内であって、炭化雰囲気温度を350〜500℃に保持するように燃焼ガスにより間接加熱される場所に配設されているので、上記炭化物製造装置の反応ケーシング内の廃棄物は、該反応ケーシングを介して上記燃焼ガスにより加熱されて、乾留され炭化される。この炭化物は炭化物製造装置から取り出され、ガス化溶融炉での燃料の一部として該廃棄物ガス化溶融炉へ供給される。かくして、本発明によると、処理されるべき廃棄物で炭化物を製造し、炭化物を高温燃焼帯を形成するコークスの一部の代替として用い、ガス化溶融処理のために要する熱量の一部を賄うこととなり、コークスの使用量を低減し、廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減することができる。
【0020】
本発明において、炭化物製造装置は、該炭化物製造装置での炭化原料乾留時に発生する乾留ガスを二次燃焼室へ供給する乾留ガス供給手段を備えることが好ましい。こうすることにより、炭化物製造装置にて、廃棄物から炭化物を得てこれを廃棄物ガス化溶融炉へ燃料として供給するのみならず、炭化物を得る際に生ずる乾留ガスを二次燃焼室へ燃料として供給することで、廃棄物が保有する熱量を極めて有効に利用できる。
【0021】
本発明において、炭化物製造装置は、二次燃焼室及びボイラの少なくとも一方で回収する飛灰の少なくとも一部を受け入れる飛灰供給手段を備えることが好ましい。こうすることにより、炭化物製造装置の反応ケーシング内において炭化原料の空隙に飛灰を充填させ低酸素雰囲気とし乾留炭化を効率的に進めることができる。
【0022】
本発明において、炭化物製造装置は、反応ケーシングに設けられた炭化雰囲気温度計測のための温度センサと炭化雰囲気温度を調整する温度調整手段とを備えることが好ましい。こうすることにより、廃棄物の性状、供給条件に対して適切な炭化雰囲気温度のもとで、効率良く炭化物を得ることができる。
【0023】
本発明において、上記温度調整手段は、反応ケーシングの外面に配設され冷却空気を流通させる冷却管と、冷却空気の流量を温度センサの計測値にもとづき調整する調整弁とを備えていることで構成することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、廃棄物ガス化溶融炉において、高温燃焼帯を形成するコークスの一部の代替として、廃棄物ガス化溶融装置の二次燃焼室及びボイラのうち少なくとも一つで、又は、二次燃焼室から排出される燃焼ガスの流路内であって、炭化雰囲気温度を350〜500℃に保持するように燃焼ガスにより間接加熱される場所で、廃棄物から得た可燃ガスの燃焼熱を利用して製造した炭化物を廃棄物ガス化溶融炉での燃料として利用するため、コークスの使用量を低減し、廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減することができる廃棄物ガス化溶融装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態装置の概要構成を示す図である。
【図2】図1装置の炭化物製造装置の概要を示す図である。
【図3】炭化物製造装置の詳細を示し、(A)はその冷却空気管配管を説明する図、(B)は(A)におけるB−B縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。本実施形態では、竪型の廃棄物ガス化溶融装置に、炭化物製造装置を設けたことを特徴としているが、これらの特徴についての説明に先立ち、これらが設けられている廃棄物ガス化溶融装置を構成する各装置について説明する。
【0027】
図1に示される本発明の一実施形態の廃棄物ガス化溶融装置は、竪型をなすシャフト式廃棄物ガス化溶融炉1(以下、ガス化溶融炉1とする)であって、該ガス化溶融炉1の炉上部に、ガス化溶融されるべき処理対象としての廃棄物、燃料としてのコークス、スラグの成分調整材としての石灰石を炉内へ投入するための投入口2が設けられ、また、上部側方には炉内のガスを炉外へ排出するためのガス排出口3が設けられている。また、ガス化溶融炉1の炉底部には溶融スラグと溶融金属を排出するための出滓口4が設けられている。
【0028】
上記ガス化溶融炉1の内部空間は、縦方向で3つの領域に大別されていて、下方から、炉下部に形成された下部シャフト部I、その上に位置する中部シャフト部II、上部に形成されたフリーボード部IIIを有する領域となっている。これらの各部I,II,IIIは、それぞれ次のような機能を有する領域となっている。すなわち、下部シャフト部Iは、炉下部に堆積された石炭コークスを燃焼させて高温燃焼帯を形成する領域、中部シャフト部IIは、この高温燃焼帯上に投入された廃棄物の堆積により形成された廃棄物層の廃棄物を熱分解させる領域、フリーボード部IIIは、廃棄物の燃焼により生成された可燃性ガスを部分燃焼させる領域である。
【0029】
ガス化溶融炉1の上方には、都市ごみ等の廃棄物、コークス、生成するスラグの成分調整材として使用する石灰石をそれぞれ供給する供給装置(図示せず)が配設されており、この供給装置から供給された廃棄物、コークス、石灰石は搬送コンベア(図示せず)により搬送され炉上部の上記投入口2から炉内に投入される。
【0030】
ガス化溶融炉1に形成された上記下部シャフト部I、中部シャフト部II、フリーボード部IIIの各部に対して、それぞれ酸素含有ガスを吹き込む羽口が炉壁に設けられている。すなわち、下部シャフト部Iには、堆積された石炭コークスを燃焼させて高温燃焼帯を形成し、熱分解残渣を溶融するための酸素富化空気を吹き込む主羽口5が設けられ、中部シャフト部IIには、投入されて堆積された廃棄物を部分燃焼させると共に廃棄物を緩やかに流動させながら熱分解させるための空気を吹き込む副羽口6が設けられ、フリーボード部IIIには、廃棄物が熱分解して生成した可燃性ガスを部分燃焼させて内部を所定温度に維持するための空気を吹き込む三段羽口7が設けられている。
【0031】
ガス排出口3に二次燃焼室10が接続して設けられており、ガス化溶融炉1で廃棄物を熱分解して生成した可燃性ガスを受けてこれを燃焼する。二次燃焼室10には、二次燃焼のための空気を吹き込む空気送風口11が設けられている。また、二次燃焼室10で可燃性ガスを燃焼した燃焼ガスから熱回収するボイラ12が上記二次燃焼室10に連通して設けられている。
【0032】
このようにガス化溶融炉1に接続して設けられている二次燃焼室10とボイラ12の一方、もしくは両方には、本実施形態では、これらの内部空間に、炭化物製造装置13が設けられている。図1の例にあっては、炭化物製造装置13は二次燃焼室10とボイラ12の両方の内部空間に配設されている。
【0033】
上記炭化物製造装置13は、図示の例では、二次燃焼室10の下部のホッパ部そしてボイラ12の中間部に設けられるが、炭化物製造装置内の炭化雰囲気温度を350〜500
℃に保持するように燃焼ガスにより間接加熱される場所であればどこでもよく、図示以外の燃焼ガスの流路内の位置であってもよい。炭化物製造装置13には、ガス化溶融炉1でガス化溶融処理されるべく収集された廃棄物の一部が炭化原料として供給される。炭化原料として別の廃棄物を供給してもよい。
【0034】
ガス化溶融炉1から発生ガスに随伴されて排出された飛灰の一部は、二次燃焼室10の下部ホッパ部、ボイラ12の下部ホッパ部に落下し回収される。この両ホッパ部から回収された飛灰の少なくとも一部が廃棄物と混合して、炭化物製造装置13へ廃棄物と共に供給される。両ホッパ部から回収された飛灰の少なくとも一部が炭化物製造装置13の廃棄物供給部に搬送手段により搬送される。両ホッパ部から回収された飛灰を一旦貯槽等に貯留し、貯槽等から炭化物製造装置13の廃棄物供給部に搬送されるようにしてもよい。炭化物製造装置13では、この飛灰が廃棄物の空隙を充填することにより空隙の酸素を少なくして低酸素雰囲気とし炭化を効率的に行うことができる。飛灰は炭化物と共に炭化物排出部から排出される。
【0035】
炭化物製造装置13の炭化物排出部から排出される生成炭化物と飛灰を、ガス化溶融炉1の下部シャフト部Iの高温燃焼帯に供給するように炭化物供給手段が設けられている。炭化物供給手段として、図示の例では、炭化物と飛灰を搬送手段により搬送し上記主羽口5から酸素富化空気と共に炉内に吹き込む炭化物供給手段が設けられている。このような手段の他に、別に高温燃焼帯に供給する炭化物供給口を設けてもよい。また、炭化物製造装置13から排出される炭化物と飛灰を一旦貯槽等に貯留し、貯槽等から搬送しガス化溶融炉1の高温燃焼帯に供給するようにしてもよい。このようにして、炭化物を炉下部の高温燃焼帯に供給し燃焼させ溶融熱源としている。これにより、炭化物をコークスの一部の代替としてコークス使用量を低減できる。
【0036】
吹き込まれた炭化物に混合されている飛灰は上記高温燃焼帯で熱分解残渣と共に溶融され、スラグ、メタルとして出滓口4から炉外へ排出される。そのためガス化溶融炉1から発生ガスに随伴され排出される飛灰を回収して無害化処理する量を低減でき、処理費用を低減できる。
【0037】
上記炭化物製造装置13では、廃棄物を乾留して炭化物を生成する際に、揮発する乾留ガスが可燃ガスを含んでいるので、これを二次燃焼室10へ供給するように、乾留ガス排出部が乾留ガス供給管路により該二次燃焼室10に設けた乾留ガス供給口と接続されており、この乾留ガスを二次燃焼室10で燃焼して燃焼熱をボイラ12で熱回収し、廃棄物の熱エネルギーを有効利用できるようになっている。
【0038】
次に、このような炭化物製造装置13自体の構成について説明する。
【0039】
本実施形態では、二次燃焼室10そしてボイラ12に炭化物製造装置が設けられているが、両炭化物製造装置は全く同じ構成となっている。
【0040】
図2に見られるように、本実施形態では、上下で平行に配された二つの炭化部20A;20Bを直列に接続して炭化物製造装置13をなしている。該炭化部は一段設けてもよいし、三段以上設けてもよい。
【0041】
炭化部20A;20Bは、横方向を軸線として延び端部が閉じた筒状の反応ケーシング21A;21Bと、該反応ケーシング21A;21B内に配されたスクリューコンベア22A;22Bと、上記反応ケーシング21A;21Bの両端部を除く外周面を覆う耐火物23A;23Bとをそれぞれ有している。上記反応ケーシング21A;21Bは、耐火物23A;23Bが設けられている軸線方向範囲が二次燃焼室10あるいはボイラ12の内部空間内にあって、両端で開口が形成されている部分は二次燃焼室10あるいはボイラ12の外部へ突出している。上記反応ケーシング21A;21Bは軸線方向の両端部で耐火物23A;23Bのない部分に開口を有し、スクリューコンベア22A;22BはモータM;Mにてそれぞれ回転駆動を受け軸線方向での搬送力を有している。
【0042】
上方に位置する炭化部20Aの反応ケーシング21Aは左端上側の開口が廃棄物飛灰供給部24Aとして形成され、右端上側の開口が乾留ガス排出部25Aそして右端下側の開口が連絡口26Aとして形成されている。上記スクリューコンベア22Aは左端から右端へ向けての搬送力を有している。なお、スクリューコンベアに代えてパドルコンベア等、外部加熱を受けながらも攪拌搬送が可能な他の搬送手段としてもよい。
【0043】
これに対し、下方に位置する炭化部20Bの反応ケーシング21Bは右端上側の開口が連絡口26Bを形成していて、上記上方の反応ケーシング21Aの連絡口26Aと連絡管27により連通している。反応ケーシング21Bの左端上側の開口は乾留ガス排出部25Bそして左端下側の開口が炭化物排出口28Bとして形成されている。
【0044】
本実施形態では、上方の炭化部20Aも下方の炭化部20Bも、その反応ケーシング21A;21Bが同様に温度制御を受けており、ここで一方の反応ケーシング21Aのみについて説明する。図3(A),(B)に見られるように、反応ケーシング21Aの外周面には、軸線方向に折返し往復し冷却空気を流通させる冷却管30Aが設けられており、反応ケーシング21Aの外周面を覆う耐火物23A内で保護されている。該耐火物23Aは燃焼ガスに含まれる腐蝕性ガスによる反応ケーシング21Aそして冷却管30Aの腐蝕損傷を防止している。上記耐火物23Aは、反応ケーシング21Aの外周面に溶接されている骨状の複数のアンカー金物31Aにより支持されている。さらに、上記反応ケーシング21Aの外周面には、温度センサ32Aが設けられていて炭化雰囲気温度を検出できるようになっており、その出力部32A−1からの温度計測値信号を受けて、上記冷却管30Aに設けられた調整弁33Aにより冷却管30Aを流れる冷却空気の流量を調整し、炭化雰囲気温度を所定温度範囲(350〜500℃)に調整できるようになっている。
【0045】
このように構成された本実施形態における廃棄物ガス化溶融装置の操業は次のように行われる。
【0046】
ガス化溶融炉化1では、供給装置からの廃棄物、コークス、石灰石が該ガス化溶融炉1の上部に設けられた投入口を経て、それぞれ所定量ずつ炉内へ投入され、主羽口5、副羽口6、及び三段羽口7から、それぞれ酸素富化空気又は空気が炉内へ吹き込まれる。上記投入口から投入された廃棄物は、炉内で中部シャフト部IIに堆積して廃棄物層を形成し、下部シャフト部Iの高温燃焼帯から上昇してくる高温ガス及び副羽口6から吹き込まれる空気によって乾燥され、次いで熱分解される。熱分解により生成した可燃性ガスの一部が、フリーボード部IIIにて、三段羽口7から吹き込まれる空気により燃焼されて雰囲気温度が850℃以上の温度に保たれ、有害ガスとタール分を分解させる処理が施されてから、発生ガスはガス化溶融炉1の上部に設けられているガス排出口3を経て、炉外に設けられた二次燃焼室10へ送られ、二次燃焼用空気が吹き込まれ燃焼し、その燃焼ガスがボイラ12へ送られ熱回収される。中部シャフト部IIの廃棄物層で廃棄物が熱分解した残渣は下降し、コークスが燃焼されている高温燃焼帯が形成されている下部シャフト部Iに達し、該下部シャフト部Iにて、残存する可燃物としての固定炭素が燃焼し、不燃物が溶融し溶融スラグと溶融金属になる。溶融スラグと溶融金属は出滓口4から排出され、炉外に設けられた水砕装置(図示せず)に供給され冷却固化され、冷却固化された水砕スラグと水砕金属が回収される。
【0047】
二次燃焼室10の燃焼により発生した燃焼ガスは、二次燃焼室10そしてボイラ12に設けられた炭化物製造装置13の炭化部20A;20Bを加熱する。
【0048】
かかる炭化物製造装置13では、上記炭化部20Aの廃棄物飛灰供給部24Aから、ガス化溶融炉1へ供給される廃棄物の一部を、二次燃焼室10そしてボイラ12から回収された飛灰と共に、上記反応ケーシング21A内に供給する。反応ケーシング21A内では、廃棄物同士間の空隙が飛灰で充満された低酸素雰囲気の状態で、廃棄物がスクリューコンベア22Aにより連絡口26Aに向け右方へ攪拌されながら搬送される過程で、反応ケーシング21Aが受ける燃焼ガスからの間接加熱により350〜500℃の温度のもとで乾留・炭化が進行する。炭化雰囲気温度を350〜500℃の温度範囲とする理由は、350℃より低いと炭化原料の熱分解反応効率が低下し、500℃より高いとスクリューコンベアの機械強度が低下して、支障が生ずるためである。
【0049】
廃棄物が乾留される際に揮発した乾留ガスは乾留ガス排出部25Aから排出される。上記乾留・炭化進行中の廃棄物は連絡口26Aから連絡管27を経て下方の反応ケーシング21Bの連絡口26Bへ至り、反応ケーシング21B内に入る。廃棄物は飛灰と共に、反応ケーシング21B内をスクリューコンベア22Bにより炭化物排出部28Bに向け攪拌されながら搬送される過程で、さらに乾留・炭化が進む。かくして、炭化物と飛灰は炭化物排出部28Bから排出され、乾留ガスは乾留ガス排出部25Bから排出される。上記乾留・炭化は廃棄物が30〜40分程度反応ケーシング21A、21B内に滞留するようにスクリューコンベア22A、22Bの搬送速度を設定しておくことが好ましい。
【0050】
上記炭化物排出部28Bから排出された炭化物は、混在している飛灰と共にガス化溶融炉1の主羽口5へ燃料として供給され、飛灰は上記高温燃焼帯で熱分解残渣と共に溶融され、スラグ、メタルとして出滓口4から炉外へ排出される。乾留ガス排出部25A、25Bから排出された乾留ガスは、二次燃焼室10へ燃料として供給され、この乾留ガスを二次燃焼室10で燃焼して燃焼熱をボイラ12で熱回収し、廃棄物の熱エネルギーを有効利用できる。
【0051】
このような本発明では、廃棄物を炭化原料とし、二次燃焼室及びボイラに設けた炭化物製造装置により、ガス化溶融炉で発生した可燃ガスを燃焼した燃焼ガスの熱エネルギーを利用して炭化物を製造するため、下記の効果を奏することができる。
・廃棄物ガス化溶融炉において、高温燃焼帯を形成するコークスの一部の代替として、廃棄物ガス化溶融装置の二次燃焼室及びボイラのうち少なくとも一つで、廃棄物から得た可燃ガスの燃焼熱を利用して製造した炭化物を利用するため、コークスの使用量を低減し、廃棄物ガス化溶融炉の運転費を低減することができる。
・廃棄物を炭化原料とするため、バイオマスから製造された炭化物より安価に炭化物を利用でき、コークスより安価な代替燃料として利用できる。
・ガス化溶融炉に供給される廃棄物の一部を炭化原料とするので、ガス化溶融炉で溶融処理する廃棄物量を低減でき、溶融処理する廃棄物量の低減に伴い、溶融熱源として必要とするコークス使用量も低減できる。
・ガス化溶融装置の二次燃焼室及びボイラに炭化物製造装置を設けることにより、別に炭化物製造装置を設けるよりも、設備費を低くすることができ、装置の設置面積も最小とすることができ、設置コストを低くすることができる。
・炭化物を製造する熱エネルギーは、ガス化溶融炉で発生した可燃ガスを燃焼した燃焼ガスの熱エネルギーを利用するため、別に燃料を燃焼した熱エネルギーにより製造された炭化物を用いることに比べて、安価であり低い費用でコークス使用量を低減することができる。
・廃棄物に飛灰を混合して炭化物製造装置に供給し、廃棄物の間隙に飛灰を充填させ空隙に酸素を存在させないようにして低酸素雰囲気を容易に構築でき、炭化物を効率よく製造することができる。さらに、炭化物製造装置から排出される炭化物と飛灰をガス化溶融炉内へ供給することにより、飛灰を溶融しスラグ、メタルとして排出して、ガス化溶融炉からから発生ガスに随伴され排出され集塵機により捕集され回収して無害化処理される飛灰量を低減することができ、飛灰処理費用を低減することができる。
・炭化物製造装置において廃棄物を炭化する際に発生する乾留ガスを二次燃焼室に供給し燃焼して燃焼ガスから熱回収することにより、廃棄物中の可燃分の保有する発熱量を有効に利用できる。
・炭化物製造装置に冷却空気配管を設け、温度センサで計測した炭化雰囲気温度に基づき冷却空気流量を調整し所定温度範囲とするようにすることにより、効率よく炭化物を製造することができる。
・さらには、既設のガス化溶融装置の二次燃焼室及びボイラに炭化物製造装置を付加する改造を行って、製造した炭化物をコークスの代替として利用するようにすることにより、小規模な改造でコークス使用量の低減を実現することができる。
【0052】
炭化原料として廃棄物を用いる代わりに、もみ殻、おがくず、木質チップ等のバイオマスを用いてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 ガス化溶融炉
10 二次燃焼室
12 ボイラ
13 炭化物製造装置
21A;21B 反応ケーシング
22A;22B スクリューコンベア
32A 温度調整手段(温度センサ)
33A 温度調整手段(調整弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された廃棄物を熱分解そしてガス化し、廃棄物の熱分解残渣を溶融する竪型の廃棄物ガス化溶融炉と、ガス化し発生した可燃ガスを二次燃焼する二次燃焼室と、二次燃焼した燃焼ガスから熱回収するボイラとを備える廃棄物ガス化溶融装置において、
炭化原料の受入空間が形成され外部から加熱される反応ケーシングを有していて炭化原料が加熱され乾留されることにより炭化物が生成される炭化物製造装置を備え、該炭化物製造装置が二次燃焼室及びボイラのうち少なくとも一方の内部に配設されていることを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置。
【請求項2】
投入された廃棄物を熱分解そしてガス化し、廃棄物の熱分解残渣を溶融する竪型の廃棄物ガス化溶融炉と、ガス化し発生した可燃ガスを二次燃焼する二次燃焼室と、二次燃焼した燃焼排ガスから熱回収するボイラとを備える廃棄物ガス化溶融装置において、
炭化原料の受入空間が形成され外部から加熱される反応ケーシングを有していて炭化原料が加熱され乾留されることにより炭化物が生成される炭化物製造装置を備え、該炭化物製造装置が、二次燃焼室から排出される燃焼ガスの流路内であって、炭化雰囲気温度を350〜500℃に保持するように燃焼ガスにより間接加熱される場所に配設されていることを特徴とする廃棄物ガス化溶融装置。
【請求項3】
炭化物製造装置は、該炭化物製造装置により生成された炭化物を廃棄物ガス化溶融炉へ供給する炭化物供給手段を備えることとする請求項1又は請求項2に記載の廃棄物ガス化溶融装置。
【請求項4】
炭化物製造装置は反応ケーシング内にスクリューコンベアを備え、該反応ケーシング及びスクリューコンベアが二次燃焼室及びボイラの少なくとも一方を貫通して配設され、炭化原料が燃焼排ガスにより反応ケーシングを介して間接加熱され乾留されて炭化物を生成するようになっていることとする請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の廃棄物ガス化溶融装置。
【請求項5】
炭化物製造装置は、炭化原料として廃棄物を反応ケーシング内に受け入れる廃棄物供給手段を備えることとする請求項1ないし請求項4のいずれか一つに記載の廃棄物ガス化溶融装置。
【請求項6】
炭化物製造装置は、該炭化物製造装置での炭化原料乾留時に発生する乾留ガスを二次燃焼室へ供給する乾留ガス供給手段を備えることとする請求項1ないし請求項5のいずれか一つに記載の廃棄物ガス化溶融装置。
【請求項7】
炭化物製造装置は、二次燃焼室及びボイラの少なくとも一方で回収する飛灰の少なくとも一部を受け入れる飛灰供給手段を備えることとする請求項1ないし請求項6のいずれか一つに記載の廃棄物ガス化溶融装置。
【請求項8】
炭化物製造装置は、反応ケーシングに設けられた炭化雰囲気温度計測のための温度センサと炭化雰囲気温度を調整する温度調整手段とを備えることとする請求項1ないし請求項7のいずれか一つに記載の廃棄物ガス化溶融装置。
【請求項9】
温度調整手段は、反応ケーシングの外面に配設され冷却空気を流通させる冷却管と、冷却空気の流量を温度センサの計測値にもとづき調整する調整弁とを備えていることとする請求項8に記載の廃棄物ガス化溶融装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−163260(P2012−163260A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24219(P2011−24219)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】