説明

廃棄物処理炉

【課題】 羽口から吹き込む空気や燃焼支持ガスを、炉内のコークス全体に均一に接触させることができる廃棄物処理炉を提供する。
【解決手段】 羽口の口径を、その総断面積を、最下段羽口と最上位段羽口位置の水平方向の炉の平均断面積で割った比が5%以上になるようにした。このことにより、吹き込む空気や燃焼支持ガスの溶融炉内への広がりを拡大させ、吹き込む空気や燃焼支持ガスを炉内のコークス全体に均一に接触させることができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみ処理施設の廃棄物処理炉に係わるもので、都市ごみや産業廃棄物を溶融して処理する炉に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ごみ処理施設で使用されるシャフト炉タイプの溶融炉には投入された廃棄物を燃焼溶融させるために空気や燃焼支持ガスを供給する羽口を設けている。これらの羽口は複数の個所設けるのが一般的であるが、羽口の近傍では燃焼溶融が促進されるが羽口から離れるとその効果が低減する。従って炉内において燃焼・溶融の不均一が起こり、特に炉を大型化した場合に処理効率の低下が顕著になる。これを回避するために従来のごみ処理施設の廃棄物処理炉として羽口からの吹き込みガスを一様に分布可能とする溶融炉の炉体構造が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には羽口からの吹き込みガスを一様に分布可能とする溶融炉の例が開示されている。この溶融炉は円筒の炉体と、この下方に朝顔部及び更にその下方に炉床部を備えるが、前記朝顔部には上段羽口を、前記炉床部には下段羽口を有し、前記上段羽口からは常温空気を吹き込み、前記下段羽口からは空気及び燃焼支持ガスを吹き込む構造である。そして前記羽口から供給される空気及び燃焼支持ガスの吹き込み到達領域の総和は少なくとも炉内全断面とほぼ等しくなる様に羽口設定位置及び羽口段数を設定しているものである。
【0004】
【特許文献1】特開平8−94036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のごみ処理施設の廃棄物処理炉で、例えばシャフト炉タイプの溶融炉で空気や燃焼支持ガスの吹き込み口である羽口について、特許文献1によれば燃焼空気や酸素をコークスに到達させるために下方の炉床部と炉体の朝顔部に小口径で多数の羽口を設けることにより空気や燃焼支持ガスを炉内全断面にわたり行き渡らせることができる利点を持つことが記載されている。しかし、炉体を大型化した場合には朝顔部に羽口を複数個設けたとしても羽口の口径が小さいため、この羽口より供給された空気や燃焼支持ガスは炉内に充填されたコークスに衝突すると供給方向の速度を失い排ガスが吸引されている炉の上部へと導かれる。よって、羽口から出た直後に当たるコークス近傍にしか空気や燃焼支持ガスが供給されないという問題点があった。
【0006】
本発明は以上のような従来技術の問題点に鑑み、羽口の口径を従来のものより大口径とすることにより吹き込む空気や燃焼支持ガスの流速によらず、吹き込む空気や燃焼支持ガスの炉内での広がりを拡大させた。このことにより吹き込む空気や燃焼支持ガスを炉内のコークス全体に均一に行き渡らせることができる廃棄物処理炉を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
炉体とその下方に炉床部を備え、前記炉床部に羽口を、前記炉体に羽口をそれぞれ有し、前記羽口から空気若しくは燃焼支持ガスを吹き込む溶融炉において、羽口の総断面積を炉の最下段羽口と最上位段羽口位置の水平方向の平均断面積で割った比が5%以上になるような口径の羽口とし、溶融炉内への供給空気の供給領域を拡大させることを特徴とする。本発明では前記羽口の吹き込み風速を3m/s以下とすることが好ましい。
【0008】
本願第1の発明の廃棄物処理炉は、羽口の口径が従来のものより大口径としたものが取り付けられている溶融炉であり、羽口を従来のものより大口径とすることにより吹き込む空気や燃焼支持ガスの流速によらず、吹き込む燃焼空気や燃焼支持ガスの広がりを拡大させることができる。すなわち吹き込む空気や燃焼支持ガスがコークスに均一に接触するので燃焼ガスの吹き抜けがなくなり燃焼・溶融状態を均一にできるものである。
【0009】
本願第2の発明では、前記溶融炉は炉床部にプラズマトーチを持ち、プラズマトーチの挿入口を兼ねた前記羽口を有することを特徴とする。
【0010】
本願第2の発明の廃棄物処理炉は、炉床部にプラズマトーチを持つ溶融炉でありプラズマトーチの挿入口が羽口を兼ねており、その口径は従来のものより大口径の羽口となっている。羽口を大口径とすることにより吹き込む空気や燃焼支持ガスの流速が減速し、吹き込む空気や燃焼支持ガスの広がりを拡大させることができる。従ってプラズマの熱も吹き込む空気や燃焼支持ガスと共に均一にコークス充填層に行き渡らせることができるのでプラズマトーチを持つ溶融炉であっても燃焼排ガスの吹き抜けがなくなり、燃焼・溶融状態を均一にできるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によればシャフト炉タイプの溶融炉の場合は羽口の口径を従来のものより大口径とすることにより、吹き込む空気や燃焼支持ガスの流速によらず、吹き込む空気や燃焼支持ガスの広がりを拡大させることができる。このことにより吹き込む空気や燃焼支持ガスがコークス充填層に均一に接触するので発生する燃焼ガスの吹き抜けがなくなり燃焼・溶融状態を均一にでき、低温部分もできないので熱効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図1を参照して説明する。なお、本廃棄物処理炉は都市ごみや産業廃棄物を処理対象とした溶融炉を例として説明するが、本発明は以下の説明の実施例に限定されるものではない。
【0013】
本態様の廃棄物処理炉である溶融炉本体1は、円筒部1aと、連続的に径が減少する円筒部1bと、炉床部1cが一本の円筒状に一体化されて構成され、円筒部1aと、連続的に径が減少する円筒部1bと、炉床部1cには各々羽口2を設け、炉床部1cには出滓口3を設けている。
【0014】
前記溶融炉本体1で、羽口については円筒部1aには第3羽口2aと、連続的に径が減少する円筒部1bには第2羽口2bと、炉床部1cには第1羽口2cとを設ける。コークスは空気や燃焼支持ガスを供給することにより焼却残渣を溶融させうる熱を生じる状態になるが、この状態を発生させることを主目的として供給される空気や燃焼支持ガスを供給する為の羽口が第1羽口である。第3羽口2aは円筒部1aの下方の連続的に径が減少する円筒部1bに近い部分にやや下方に向けて設け、第2羽口2bは連続的に径が減少する円筒部1bの中間部にやや下方に向けて設け、第1羽口2cは炉床部1cの中間部に第2羽口2bより急な角度で炉床に向けて設ける。
【0015】
また、各羽口の本数は第3羽口2aと、第2羽口2bと、第1羽口2cは溶融炉本体の周上に各々間隔が均等になるように複数配列されるが、その好適な本数は炉体の大きさにより羽口からの空気等が炉の水平断面方向に行き渡るように算定される。たとえば、好適な本数は炉本体の直径が1000mm程度迄であれば円筒部1aや連続的に径が減少する円筒部1bでは4本程度、炉床部1cでは2本程度である。
【0016】
羽口の口径を従来のものより大口径とすることにより吹き込む空気や燃焼支持ガスが水平方向だけでなく炉底や羽口直上での水平方向の拡散も大きくすることができる。その理由は口径を変えずに吹き込む空気流速を変化させた場合、吹き込み空気や燃焼支持ガスの流速が早いとその流れの直進性が高まるので流れ方向の空隙への浸透性は良くなるが、流れ方向から外れた部分の空隙への浸透性はむしろ低くなる。そして空気や燃焼支持ガスがコークスや廃棄物等の固形物にぶつかると炉の下方から上方へ向けての燃焼ガス流れの影響を受けて、羽口から炉の軸心方向に向けての空気や燃焼支持ガスの流れが阻害され上方の空隙に流れる傾向が強まる。一方、吹き込み空気の流速が遅いほどその流れの直進性が低くなるので流れ方向の空隙への浸透性は従来口径より時間はかかるが、直進性が低くなるので上方の空隙に流れる傾向が低くなる。よって、流れ方向から外れた部分の空隙への浸透性はむしろ高くなり、特に流れ方向を軸心として、横方向への拡散が大きくなる。横方向への拡散が大きくなるのは縦方向にはコークスや廃棄物等の固形物が圧密されていて、空隙が少なく、横方向の空隙のほうが大きいからである。つまり供給空気量を変えないで羽口の口径を大きくすると吹き込み空気等の流速が落ちることによって、吹き込み空気や燃焼支持ガスの拡散範囲が拡大するのである。このように本発明を用いるとシャフト炉タイプの溶融炉では羽口の口径を大口径とすることにより、吹き込み空気や燃焼支持ガスの炉内での広がりを拡大させることができる。このことにより吹き込む空気や燃焼支持ガスがコークス充填層に均一に広い範囲にわたり接触するので発生ガスの局部的な吹き抜けがなくなり低温部分もできず燃焼・溶融状態を均一にすることが可能となるのである。
【0017】
たとえば羽口口径の好適な条件は燃焼・溶融に必要な過剰空気を加味した空気量を羽口本数で割って、吹き込み風速が3m/s以下となるようにすることが好ましく、なおかつ炉内に均一に拡散させるために羽口の総断面積を炉の最下段羽口と最上位段羽口位置の水平方向の平均断面積で割った比が5%以上になるように口径を設定する。また吹き込む空気や燃焼支持ガスの流速が変化しても炉内での拡散性に大きな変化はないので従来通りの口径で設計して羽口本数を決めた後、羽口の総断面積を炉の最下段羽口と最上位段羽口位置の水平方向の平均断面積で割った比が5%以上となるように口径を大口径としてもかまわない。
【0018】
このような従来のものに比べ大口径の羽口を設けた溶融炉本体1に投入された廃棄物は適度に混合された状態で炉内に予め投入されるが、溶融帯Dに既に投入されているコークスの上に順次堆積されて廃棄物層を形成する。コークスの燃焼の進行に伴い廃棄物が廃棄物層の上部から予熱乾燥帯A、熱分解帯B、燃焼帯C、溶融帯Dとして形成され、廃棄物は溶融処理されて出滓口から排出される。この際、円筒部1bの下方の熱分解帯Bと燃焼帯Cには第3羽口が位置し、燃焼帯Cには第2羽口が位置し、溶融帯Dには第1羽口が位置しており、これらの従来の羽口より大口径の羽口から空気や燃焼支持ガスが供給されることにより熱分解帯Bと燃焼帯Cでは可燃性ガスと乾留された廃棄物の主体の燃焼が均一に安定して行われ、溶融帯Dではコークスの燃焼により、乾留された廃棄物の溶融処理が吹き抜けも起こることなく均一に安定してなされる。
【0019】
図1は各羽口2からの空気や燃焼支持ガスがそれぞれの吹き込み時に炉内においてどのようなガスの流れになるかを模式的に表現した図であるが、図1(a)は一般的なシャフトタイプ溶融炉の場合の例であり、図1(b)は羽口を大口径とした場合のシャフトタイプ溶融炉の例であり、図1(c)はシャフトタイプの溶融炉で羽口を従来のものより大口径とし補助熱源として炉下部にプラズマトーチを設けた場合の炉の例である。
【0020】
図2は本発明の擬似実験例を示すもので、実際溶融炉内の空気等の流れを計測するのは困難を伴うので、本発明にかかる溶融炉内の空気や燃焼支持ガスの拡散を明らかにするため擬似実験を実施した。擬似実験炉の概略構成について図2を用いて説明する。
【0021】
溶融部における第1羽口からの吹き込み空気や燃焼支持ガスの拡散状態を調べる為、図2に示す擬似実験炉4を用いて従来の羽口と、面積比で約2倍の羽口で実験炉内における空気の拡散率を比較した。その結果大口径羽口では図3に示すように、羽口の直下と炉底において顕著な空気の拡散をしていることが確認できた。また、更には供給空気の流速を変化させた場合でも、羽口直上、羽口直下、炉底のいずれにおいても、流速の大小によらず空気の拡散性はさほど変わらないことを確認できた。特に空気比が小さいときには流速を小さくすると拡散性が向上することも確認できたのである。
【0022】
図2に示した擬似実験炉4を用いて、擬似廃棄物であるボールを装填し、第1段羽口のみから空気等の流れを確認するトレーサーとして複写機トナーを若干量含む空気を送り込んだ。実験の条件は下記の通りである。実験機材として、擬似実験炉4(直径500mm、高さ600mmのバケツ状の容器で、直径140mmの羽口と、直径203mmの羽口を有する)、複写機トナー、トナー付着用ガーゼ8、擬似廃棄物であるボール9(直径77mmの野球ボール)、濃度撮影用カメラ、画像編集ソフトウェア、吸引ファン、押しこみファンを使用した。これら機材を用い直径140mmの羽口と直径203mmの羽口でトナーが炉内でどのように拡散するのかを擬似実験炉4で実施した。そして一定高さ毎の水平断面に装填されたガーゼ8に付着したトナーの状況を写真撮影し、格子状に区分けしたその各々のエリア濃度を数値化して比較した。その結果、図3に示すように断面内の拡散率(断面積に対するトナーが付着した部分の面積割合)は直径140mmの第1羽口7の場合は実験1で25%であるのに対し直径203mmの第1羽口7の場合は実験3〜5で70%〜49%であり、かつ付着範囲は羽口の軸芯に対し横方向へ広がる傾向が強くなることがわかった。また、図3に示すように断面内の羽口直上と炉底における拡散率を比較してみると直径140mmの第1羽口7の場合実験5で羽口直上と炉底で各々5%であるのに対し、直径203mmの第1羽口7の場合は実験3で羽口直上と炉底で各々10%、25%と拡散率が高くなっている。つまり口径を大きくすることにより水平方向だけでなく炉底や羽口直上である垂直方向の拡散も大きくなることもわかった。次に同じ口径で吹き込む空気量を変化させた場合、トナーの断面内拡散率を比較してみた。その結果、図3に示すように実験5の流速3.4m/sの時の拡散率より実験3の流速1.1m/sの時の拡散率の方が羽口直上、羽口直下、炉底のいずれにおいても拡散率が高くなっている。つまり吹き込み空気の流速が遅いほど炉内拡散は大きい傾向にあることが確認できた。つまり羽口の口径を大きくすることで吹き込み空気等の拡散率が全体的に高まることが確認できたのである。擬似実験炉で得られたデータはフルード相似則に基づいてより大きい実際の溶融炉に適用することができる。
【0023】
(実施例)
本発明にかかるプラズマトーチを有するシャフトタイプの溶融炉の概略構成について図1(c)を用いて説明する。
【0024】
本態様の廃棄物処理炉である溶融炉本体1は、円筒部1aと、連続的に径が減少する円筒部1bと、炉床部1cが一本の円筒状に一体化されて構成され、円筒部1aと、連続的に径が減少する円筒部1bと、炉床部1cには各々羽口2を設け、炉床部1cには出滓口3を設けている。
【0025】
前記溶融炉本体1で羽口2については円筒部1aには第3羽口2aと、連続的に径が減少する円筒部1bには第2羽口2bと、炉床部1cには第1羽口2cとを設ける。第1羽口2cの内部には同心円状にプラズマトーチ2dを設ける。第3羽口2aは円筒部1aの下方の連続的に径が減少する円筒部1bに近い部分にやや下方に向けて設け、第2羽口2bは連続的に径が減少する円筒部1bの中間部にやや下方に向けて設け、第1羽口2cは炉床部1cの中間部にプラズマトーチ2dの外側に同心円筒として第2羽口2bより急な角度で炉床に向けて設ける。
【0026】
また、各羽口の本数は第3羽口2aと、第2羽口2bと、第1羽口2cは溶融炉本体の周上に各々間隔が均等になるように複数配列されるが、その好適な本数は炉体の大きさにより羽口からの空気等が炉の水平断面方向に行き渡るように算定される。たとえば、好適な本数は炉本体の直径が1000mm程度迄であれば円筒部1aや連続的に径が減少する円筒部1bでは4本程度、炉下部1cではプラズマトーチ2dの外側に同心円筒として2本程度である。
【0027】
羽口の口径を従来のものより大口径とすることにより吹き込む空気や燃焼支持ガスが水平方向だけでなく炉底や羽口直上での水平方向の拡散も大きくすることができる。その理由は口径を変えずに吹き込む空気流速を変化させた場合、吹き込み空気等の流速が早いとその流れの直進性が高まるので流れ方向の空隙への浸透性は良くなるが、流れ方向から外れた部分の空隙への浸透性はむしろ低くなる。そして空気や燃焼支持ガスがコークスや廃棄物等の固形物にぶつかると炉の下方から上方へ向けての燃焼ガス流れの影響を受けて、羽口から炉の軸心方向に向けての空気や燃焼支持ガスの流れが阻害され上方の空隙に流れる傾向が強まる。一方、吹き込み空気や燃焼支持ガスの流速が遅いほどその流れの直進性が低くなるので流れ方向の空隙への浸透性は従来口径より時間はかかるが、直進性が低くなるので上方の空隙に流れる傾向が低くなる。よって、流れ方向から外れた部分の空隙への浸透性はむしろ高くなり、特に流れ方向を軸心として、横方向への拡散が大きくなる。横方向への拡散が大きくなるのは縦方向にはコークスや廃棄物等の固形物が圧密されていて、空隙が少なく、横方向の空隙のほうが大きいからである。つまり供給空気量を変えないで羽口の口径を大きくすると吹き込み空気や燃焼支持ガスの流速が落ちることによって、吹き込み空気や燃焼支持ガスの拡散範囲が拡大するのである。このように本発明を用いるとシャフト炉タイプの溶融炉では羽口の口径を従来のものより大口径とすることにより、吹き込む空気や燃焼支持ガスの炉内での広がりを拡大させることができる。このことにより吹き込む空気や燃焼支持ガスがコークス充填層に均一に広い範囲にわたり接触するので発生ガスの局部的な吹き抜けがなくなり低温部分もできず燃焼・溶融状態を均一にすることが可能となるのである。
【0028】
たとえば羽口口径の好適な条件は燃焼・溶融に必要な過剰空気を加味した空気量を羽口本数で割って、吹き込み風速が3m/s以下となるようにすることが好ましく、なおかつ炉内に均一に拡散させるために羽口の総面積を炉の最下段羽口と最上位段羽口位置の水平方向の平均断面積で割った比が5%以上になるように口径を設定する。また吹き込む空気や燃焼支持ガスの流速が変化しても炉内での拡散性に大きな変化はないので従来通りの口径で設計して羽口本数を決めた後、羽口の総断面積を炉の最下段羽口と最上位段羽口位置の水平方向の平均断面積で割った比が5%以上となるように口径を大きくしてもかまわない。
【0029】
このような溶融炉本体1に投入された廃棄物は適度に混合された状態で炉内に予め投入されるが、溶融帯Dに既に投入されているコークスの上に順次堆積されて廃棄物層を形成する。コークスの燃焼の進行に伴い廃棄物が廃棄物層の上部から予熱乾燥帯A、熱分解帯B、燃焼帯C、溶融帯Dとして形成され、廃棄物は溶融処理されて出滓口から排出されるが、この際円筒部1bの下方の熱分解帯Bと燃焼帯Cには第3羽口が位置し、燃焼帯Cには第2羽口が位置し、溶融帯Dにはプラズマトーチ2dと一体になった第1羽口が位置しており、これらの羽口から空気や燃焼支持ガスが供給されることにより熱分解帯Bと燃焼帯Cでは可燃性ガスと乾留された廃棄物の主体の燃焼が行われ、溶融帯Dではコークスの燃焼とプラズマトーチ2dによる補助熱源により、乾留された廃棄物の溶融処理が吹き抜けも起こることなく均一に安定してなされる。
【0030】
このように本発明を用いるとシャフト炉タイプの溶融炉では羽口の口径を従来のものより大口径とすることにより吹き込む空気や燃焼支持ガスの流速によらず、吹き込む空気や燃焼支持ガスの広がりを拡大させることができる。この実験結果をもとに実際の炉に適用すると吹き込む空気や燃焼支持ガスがコークス充填層に均一に接触するので発生ガスの吹き抜けがなくなり燃焼・溶融状態を均一にでき、低温部分もできないので熱効率が向上する。従って、溶融した廃棄物の出滓も安定させることができるので連続出滓に好適になると共に、吹き込む空気等の送風機や誘引送風機の電力量を低減することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明にかかる方法を実施した実施例を示す図である。
【図2】本発明にかかる擬似実験装置を示す図である。
【図3】本発明にかかる擬似実験の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1:溶融炉本体
1a:円筒部
1b:連続的に径が減少する円筒部
1c:炉底部
2:羽口
2a:第3羽口
2b:第2羽口
2c:第1羽口
2d:プラズマトーチ
3:出滓口
A:予熱乾燥帯
B:熱分解帯
C:燃焼帯:
D:溶融帯
4:擬似実験炉
5:円筒部
6:第3羽口、
7:第1羽口
8:ガーゼ
9:ボール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉体とその下方に炉床部を備え、前記炉床部に羽口を、前記炉体に羽口をそれぞれ有し、前記羽口から空気若しくは燃焼支持ガスを吹き込む溶融炉において、羽口の総断面積を炉の最下段羽口と最上位段羽口位置の水平方向の平均断面積で割った比が5%以上になるような口径の羽口とし、溶融炉内への供給空気の供給領域を拡大させる廃棄物処理炉。
【請求項2】
前記羽口の吹き込み風速を3m/s以下とする廃棄物処理炉。
【請求項3】
前記溶融炉は炉床部にプラズマトーチを持ち、プラズマトーチの挿入口を兼ねた前記羽口を有する廃棄物処理炉。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−292179(P2006−292179A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108898(P2005−108898)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】