説明

廃棄物減容装置および廃棄物減容方法

【課題】 従来の廃棄物減容装置は「コンベア」「パレット」「シリンダ」「プレス」等の装置を有する大型のものであり、作業性が良いものではなかった。
【解決手段】 廃棄物減容装置10は、減容対象物たる保温材70の投入先となる投入部20と、投入部20下部に配置された保温材70を破砕するための破砕部25と、破砕された保温材70を圧縮するための圧縮部30と、圧縮・減容された保温材70を袋詰するための袋詰部40とを一体的に連結して備え、「投入部」から「袋詰部」に至る一連の系統が密閉・負圧状態であることを特徴とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、有害物質の含有した(含有したおそれのある)廃棄物、例えば、原子力施設などから発生する無機系保温材等の廃棄物や、石綿を含有する廃棄物などの減容技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、原子力施設などから発生する無機系保温材等の廃棄物の減容装置としては、破砕した廃棄物を減容してドラム缶に封入する装置が知られている。
例えば、特許文献1には、ドラム缶を待機位置と作業位置との間で移送するコンベアと、前記コンベア上にドラム缶の底部を受け止めるような形状で設置されたパレットと、前記作業位置でドラム缶の上方に配置された複数の上下動シリンダと、前記シリンダを支持するフレームと、前記各シリンダの下端に取り付けられたプレートと、ドラム缶内に収容される逆止弁付き収納袋とを備え、廃棄物をドラム缶内の前記収納袋内に収納してから前記シリンダのひとつ又は複数を下降させ、収納袋から空気を排出させることにより減容化処理する装置が開示されている。
また、特許文献2には、破砕前の保温材を破砕し、減容する装置として、筒体の中に廃材を入れ、プレスヘッドで圧縮して減容し、袋に収納する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−59893号公報
【特許文献2】特開平10−323798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、いずれの装置も「コンベア」「パレット」「シリンダ」「プレス」等の装置を有する大型のものであり、作業性が良いとはいえなかった。
そこで、本願発明は、従来の装置の有する課題を解決して、新規な廃棄物減容装置および廃棄物減容方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、第1の発明は、有害物質の含有した廃棄物又は有害物質の含有したおそれのある廃棄物を減容対象物として減容するための廃棄物減容装置であって、梱包材に封入されている減容対象物をそのまま投入するとともに、減容対象物の投入された空間と直接接触せず空間外部からの操作によって減容対象物を梱包材から取り出す投入部と、減容対象物を圧縮する圧縮部と、圧縮することで減容された減容対象物を袋詰する袋詰部とを備え、前記投入部から袋詰部に至る一連の系統が密閉・負圧状態であることを特徴とする廃棄物減容装置である。
ここで、「有害物質の含有した(おそれのある)廃棄物」とは、その廃棄処分に際して特別な措置が必要となる危険な廃棄物などを意味し、例えば、放射性廃棄物や石綿含有廃棄物などがこれに含まれる。
第2の発明は、投入部と圧縮部の間に減容対象物を破砕する破砕部を備えたことを特徴とする同廃棄物減容装置である。
第3の発明は、減容装置を構成する各部が組立自在に連結されていることを特徴とする同廃棄物減容装置である。
第4の発明は、投入部に磁石(マグネット)を設けたことを特徴とする同廃棄物減容装置である。
第5の発明は、有害物質の含有した廃棄物又は有害物質の含有したおそれのある廃棄物を減容対象物として減容するための廃棄物減容方法であって、梱包材に封入されている減容対象物をそのまま投入するとともに、減容対象物の投入された空間と直接接触せず空間外部からの操作によって減容対象物を梱包材から取り出す投入工程と、減容対象物を圧縮する圧縮工程と、圧縮することで減容された減容対象物を袋詰する袋詰工程とを備え、前記投入工程から袋詰工程に至る一連の作業工程が密閉・負圧状態でなされることを特徴とする廃棄物減容方法である。
第6の発明は、投入工程と圧縮工程の間に減容対象物を破砕する破砕工程を備えたことを特徴とする同廃棄物減容方法である。
【発明の効果】
【0006】
本願発明によれば、次のような効果を有する。
(1)本願発明に係る廃棄物減容装置は、「投入部」と「圧縮部」と「袋詰部」(或いは「投入部」と「破砕部」と「圧縮部」と「袋詰部」)を一体的に連結して備えているので、廃棄物の減容処理を連続的に処理できる。
(2)本願発明に係る廃棄物減容装置は、「投入部」から「袋詰部」に至る一連の系統が密閉・負圧状態であるために、減容対象物が外気に触れることがなく、廃棄物の減容処理を安全且つ確実に行える(装置周囲の汚染の危険性が極めて少ない)。
(3)特に、「投入部」及び「袋詰部」が負圧状態に維持されている(集塵装置が付いている)ので、廃棄物投入・取出のために投入・取出用扉を開けても粉塵が飛散しない。
(4)同廃棄物減容装置の構造はシンプルで、構成に重量物となる装置(機器)を含まないため、減容装置の小型化・軽量化を実現できる。
(5)同廃棄物減容装置の構成各部(機器)が組立自在に連結されていることで、各部(機器)ごとに分割して移動でき、装置の運搬・設置が極めて容易となる。
(6)同廃棄物減容装置は電気容量が小さいので、特別な電源設備を必要としない。
(7)投入部に磁石(マグネット)を設けることで、梱包材の中に含まれる減容対象物以外の鉄くず等を取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本願発明に係る廃棄物減容装置を示す概要図。
【図2】本願発明に係る廃棄物減容方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本願発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本願発明に係る廃棄物減容装置を示す概要図である。
廃棄物減容装置10は、有害物質の含有した廃棄物又は有害物質の含有したおそれのある廃棄物を減容対象物として減容するための装置である。その構造は、「投入部」、「破砕部(破砕機)」、「圧縮部(圧縮機)」、「袋詰部(袋詰機)」、「スクリューコンベア」及び「集塵機」を一体的に連結して備えてなるものである。なお、本実施形態では、原子力施設などから発生する無機系保温材(以下「保温材」)を減容対象物となる廃棄物として説明する。
【0009】
まず、投入部20は、保温材70の投入先となるものである。保温材70は梱包材71に梱包されたまま、投入部20の扉21を開けてその側面に設けられた投入口22から投入部20内に投入される。そして、扉21を閉めた後に、投入された保温材70は、投入部20内で梱包が解かれ、保温材70と梱包材71に分けられる。
【0010】
この時、投入部20内は、密閉空間であり、集塵機60によって負圧状態に制御されているので、保温材70の粉塵が投入部20外に飛散することはなく、安全性は保持される。また、保温材70の梱包を解く作業は、投入部20に設けられた投入部20内に延びるグローブ状の作業手段23と覗窓24を使って、保温材70の投入された空間(投入部20内)と直接接触せず空間外部からの操作によって行われる。
【0011】
なお、投入部20内には、その底板部分に磁石(マグネット)を備えるとよい(図示省略)。梱包材71には保温材70とともに、鉄くず等が混じっている場合もある。このため、投入部20内に磁石を備えることで、投入部20内で保温材70の梱包を解いた場合に、減容処理の障害となる鉄くず等を取り除くことができる。
また、投入部20には、梱包の解かれた梱包材71を回収する装置が取り付けるとよい(図示省略)。例えば、投入部20の投入口22下部に袋回収用のビニール袋を装着することにより使用済み梱包材71を回収する構造が考えられる。
【0012】
投入部20の下部は破砕部25となっており、破砕機(図示省略)が配置されている。この破砕機によって、投入部20内に投入された保温材70を破砕し、次の圧縮機で効率良く圧縮できるようにする。従って、減容対象物となる廃棄物が圧縮機のみで効率良く圧縮できるようなものであれば、破砕機による破砕工程は不要である。投入部20及び破砕部25は、密閉空間であり集塵機60によって負圧状態に制御されているので、破砕作業によっても保温材70の粉塵が投入部20や破砕部25外に飛散することはなく、安全性は保持される。
【0013】
破砕部25において破砕された保温材70は、スクリューコンベア等のコンベア式搬送機50によって圧縮部30へ搬送されて、圧縮機(図示省略)によって圧縮・減容される。圧縮機ではローラー等公知の手段を用いて保温材70を圧縮・減容する。この圧縮部30も密閉空間であり集塵機60によって負圧状態に制御されているので、圧縮作業によっても保温材70の粉塵が圧縮部30外に飛散することはなく、安全性は保持される。
【0014】
圧縮部30において圧縮・減容された保温材70は、コンベア式搬送機50によって袋詰部40へ搬送されて、袋詰機によって袋詰される。袋詰部40内は、集塵機60によって負圧状態に制御されているので、圧縮・減容された保温材70は負圧状態によって膨らんだ梱包材72内に詰め込まれるのみで、袋詰部40外に飛散することはなく、安全性は保持される。このようにして処理された保温材70(ケイ酸カルシウム板)は、処理前の約1/4に減容されて袋詰される。また、廃棄物がロックウール製のものであれば、処理前の約1/10に減容されて袋詰される。
【0015】
上記のような構造の廃棄物減容装置10は、これを構成する各部「投入部」、「破砕部」、「圧縮部」、「袋詰部」、「コンベア式搬送機」及び「集塵機」を一体的に連結してなるものであるから、減容対象物の減容処理を連続的に行うことが可能である。
また、「投入部」から「袋詰部」に至る一連の系統が密閉・負圧状態であるために、減容対象物が外気に触れることがなく、廃棄物の減容処理を安全且つ確実に行える(装置周囲の汚染の危険性が極めて少ない)。
さらに、運搬(移動)時や不使用時には、構成各部を分割・分離することが可能であるとともに、各機器が小型・軽量なものであるため、作業効率が良く、運搬・移動が極めて容易であり、保管・管理もしやすい。
【0016】
図2は、本願発明に係る廃棄物減容方法を示す説明図である。
本願発明に係る廃棄物減容方法は、図2(a)〜(d)の工程となる。
図2(a)は、減容対象物の投入先となる投入部へ梱包された減容対象物を投入し、減容対象物を取り出す投入工程である。
図2(b)は、投入部へ投入された減容対象物を破砕する破砕工程である。
図2(c)は、破砕部で破砕された減容対象物を圧縮する圧縮工程である。
図2(d)は、圧縮部で圧縮された減容対象物を袋詰する袋詰工程である。
なお、減容処理される減容対象物の材質等によっては、図2(b)の破砕工程が不要であれば、図2(a)の投入工程の次に、図2(c)の圧縮工程にいってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本願発明は、有害物質の含有した廃棄物又は有害物質の含有したおそれのある廃棄物を減容対象物として減容するための廃棄物減容技術として広く利用できるものである。減容対象物としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
(1)放射性廃棄物
(2)石綿含有廃棄物
(3)その他
【符号の説明】
【0018】
10 廃棄物減容装置
20 投入部 21 扉 22 投入口 23 作業手段 24 覗窓
25 破砕部
30 圧縮部
40 袋詰部
50 コンベア式搬送機
60 集塵機
70 保温材(減容対象物) 71 梱包材 72 梱包材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害物質の含有した廃棄物又は有害物質の含有したおそれのある廃棄物を減容対象物として減容するための廃棄物減容装置であって、
梱包材に封入されている減容対象物をそのまま投入するとともに、減容対象物の投入された空間と直接接触せず空間外部からの操作によって減容対象物を梱包材から取り出す投入部と、減容対象物を圧縮する圧縮部と、圧縮することで減容された減容対象物を袋詰する袋詰部とを備え、
前記投入部から袋詰部に至る一連の系統が密閉・負圧状態であることを特徴とする廃棄物減容装置。
【請求項2】
投入部と圧縮部の間に減容対象物を破砕する破砕部を備えたことを特徴とする請求項1記載の廃棄物減容装置。
【請求項3】
減容装置を構成する各部が組立自在に連結されていることを特徴とする請求項1又は2記載の廃棄物減容装置。
【請求項4】
投入部に磁石(マグネット)を設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の廃棄物減容装置。
【請求項5】
有害物質の含有した廃棄物又は有害物質の含有したおそれのある廃棄物を減容対象物として減容するための廃棄物減容方法であって、
梱包材に封入されている減容対象物をそのまま投入するとともに、減容対象物の投入された空間と直接接触せず空間外部からの操作によって減容対象物を梱包材から取り出す投入工程と、減容対象物を圧縮する圧縮工程と、圧縮することで減容された減容対象物を袋詰する袋詰工程とを備え、
前記投入工程から袋詰工程に至る一連の作業工程が密閉・負圧状態でなされることを特徴とする廃棄物減容方法。
【請求項6】
投入工程と圧縮工程の間に減容対象物を破砕する破砕工程を備えたことを特徴とする請求項5記載の廃棄物減容方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−201311(P2010−201311A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48181(P2009−48181)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】