説明

廃棄物溶融炉における酸素量制御方法及び酸素量制御装置

【課題】発生酸素量に連続的にほぼ一致した必要酸素量にすることで、発生酸素量を増やすタイミングを遅らせることにより、発生酸素量に必要な電力等が削減できるうえ、放散していた余剰酸素を溶融炉に吹き込むことで有効利用できる廃棄物溶融炉における酸素量制御方法を提供する。
【解決手段】酸素発生装置によって発生させた酸素と送風機で発生させた送風空気とを混合して廃棄物溶融炉に供給するときの酸素量制御方法において、
酸素発生装置における現在の発生酸素圧力P1と発生酸素圧力目標値P2とを比較し、現在の発生酸素圧力P1を前記発生酸素圧力目標値P2に合わせるように発生酸素圧力調節計6aの操作量を演算し、該操作量により必要酸素量目標値V2の補正値を演算して、該補正値に基づいて必要酸素量目標値V2を補正して必要酸素量V2´とすることを特徴とする廃棄物溶融炉における酸素量制御方法および制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物溶融炉における酸素量制御方法及び酸素量制御装置に関する。
【0002】
具体的には、一般廃棄物、各種産業廃棄物等の廃棄物を廃棄物溶融炉で熱分解溶融処理する際に、廃棄物溶融炉内に羽口から吹き込む酸素量の制御方法および制御装置に関する。
【背景技術】
【0003】
廃棄物には、都市ごみを主体とした生活系、事業系の一般廃棄物、各種産業廃棄物又はそれらを乾燥、焼却、破砕処理によって得られた中間処理物、焼却灰やそれを一度埋立処理した後、再度掘り起こした土砂分を含む埋立ごみ、汚泥(下水、し尿、建設)があり、これらの廃棄物の処理方法として、廃棄物を廃棄物溶融炉内で、乾燥、予熱、熱分解、燃焼、溶融し、スラグやメタルとして取り出す廃棄物溶融処理方法が知られている。
【0004】
廃棄物溶融処理方法は、廃棄物、及び副原料として石灰石やコークスが廃棄物溶融炉内に投入される。廃棄物溶融炉内には炉底部の羽口から酸素富化空気が吹き込まれ、コークスや熱分解によって生じた炭素質を高温炉床において高温度で燃焼させ、装入物は、炉内の乾燥帯、熱分解帯及び燃焼溶融帯を降下し、溶融スラグ化され、羽口から吹き込む空気の酸素濃度を高めることで廃棄物溶融炉で高温燃焼し、灰分を高温で溶融する。
【0005】
羽口から吹き込む酸素富化空気の酸素富化方法としては、従来、吸着剤による圧力スイング方式(PSA方式)、温度スイング方式等で酸素濃度90%程度の高酸素濃度ガスを生産し、廃棄物溶融炉へ空気と混合して酸素濃度を高めるのが一般的である。
【0006】
PSA方式は、空気から酸素ガスを製造する場合、空気を吸着塔に導入し、窒素ガスを吸着剤に吸着して酸素ガスを分離して回収し、吸着した窒素ガスは吸着塔内を減圧して吸着剤から脱着し、酸素ガスで吸着塔内を昇圧するサイクルを繰り返すものである。
【0007】
酸素富化方法としては、従来、多槽式の圧力スイング吸着方式により、酸素濃度90〜95%程度の高酸素濃度ガスを生産し、廃棄物溶融炉へ空気と混合して酸素濃度を高めて吹き込んでいる。酸素濃度を高めることで廃棄物溶融炉で高温燃焼することが可能となり、廃棄物中の灰分を高温で溶融することが可能となる。
【0008】
従来の廃棄物溶融設備における多槽式の圧力スイング吸着方式では、酸素ガスの生産量の増減は、例えば、吸着槽の切替タイムスケジュールの変更で行うことができる。ところが、吸着槽の切替タイムスケジュールは、例えば、吸着工程、均圧工程、再生工程を1サイクルとして、その1サイクルの途中では、タイムスケジュールの変更は不可能である。そのため、廃棄物溶融炉に必要な酸素量、また、その間、1サイクル完了までの変動も加味し、高カロリー〜低カロリーの廃棄物に対応できるようにするために、常に酸素発生装置の生産量を十分多くする必要があるので、酸素発生装置の定格能力を通常の操業点よりも大きく設定している。その結果、平均的な廃棄物のカロリーでは、廃棄物溶融炉で必要な酸素量以外の大量の酸素ガスは大気に放散する必要があった。そのため、その放散分の酸素ガスは無駄になるため、動力費のロスが発生していた。
【0009】
そこで、特開2000-356323号公報(下記特許文献1)には、廃棄物溶融炉の必要酸素量に応じて、酸素発生装置の吸着槽の切り替えタイムスケシ゛ュールを変更し、吸着槽へ空気を供給する原料フ゛ロワ、吸着槽から吸着した窒素カ゛スを取り出す真空ホ゜ンフ゜、均圧槽から酸素カ゛スを取り出す昇圧フ゛ロワのそれぞれの通過カ゛ス量を増減することで発生酸素量を増減することにより、圧力スイング吸着方式の酸素発生装置の性能を維持しつつ、廃棄物溶融炉で必要な酸素量と酸素発生装置の酸素生産量をバランスさせ、余剰酸素を出すことなく運転することのできる廃棄物熱分解溶融処理における酸素富化方法及び酸素富化設備が記載されている。
【0010】
しかし、特許文献1の方法は、必要酸素量が連続的に変化するのに対し、発生酸素量は数%刻みでしか制御できないため、必要酸素量と発生酸素量はその数%ごとにしか一致しない。このため、1)必要酸素量が発生酸素量を越えるときに発生酸素量を増やす必要があり、増やした時点から次に必要酸素量と発生酸素量が一致するまでの間は、発生酸素量が必要酸素量よりも余分に多くなる。また、2)一致しないときの余剰酸素は大気放散しており、有効利用できていないという問題点があった。
【特許文献1】特開2000-356323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、発生酸素量に連続的にほぼ一致した必要酸素量にすることで、発生酸素量を増やすタイミングを遅らせることにより、発生酸素量に必要な電力等が削減できるうえ、放散していた余剰酸素を溶融炉に吹き込むことで有効利用できる廃棄物溶融炉における酸素量制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前述の課題を解決するために、発生酸素量と必要酸素量の制御方法について鋭意検討の結果、発生酸素量に連続的にほぼ一致した必要酸素量にすることで、発生酸素量を増やすタイミングを遅らせることにより、発生酸素量に必要な電力等が削減できるうえ、放散していた余剰酸素を溶融炉に吹き込むことで有効利用できる廃棄物溶融炉における酸素量制御方法を提供するものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)酸素発生装置によって発生させた酸素と送風機で発生させた送風空気とを混合して廃棄物溶融炉に供給するときの酸素量制御方法において、
酸素発生装置における現在の発生酸素圧力P1と発生酸素圧力目標値P2とを比較し、現在の発生酸素圧力P1を前記発生酸素圧力目標値P2に合わせるように発生酸素圧力調節計6aの操作量を演算し、該操作量により必要酸素量目標値V2の補正値を演算して、該補正値に基づいて必要酸素量目標値V2を補正して必要酸素量V2´とすることを特徴とする廃棄物溶融炉における酸素量制御方法。
(2)前記送風空気量を送風機の回転数よって制御することを特徴とする(1)に記載の廃棄物溶融炉における酸素量制御方法。
【0013】
(3)酸素発生装置によって発生させた酸素と送風機で発生させた送風空気とを混合して廃棄物溶融炉に供給するときの酸素量制御装置において、
酸素発生装置における現在の発生酸素圧力P1と発生酸素圧力目標値P2とを比較して調整する発生酸素圧力調節計6aと、
該発生酸素圧力調節計6aの操作量に基づいて必要酸素量目標値V2の補正値を演算する必要酸素量目標値補正演算装置6bと、
該必要酸素量目標値補正演算装置6bの演算結果に基づいて必要酸素量目標値V2を補正して必要酸素量V2´とする必要酸素量目標値補正装置6cと、
該必要酸素量V2´に基づいて必要酸素量を調節する必要酸素量調節計6dとを備えたことを特徴とする廃棄物溶融炉における酸素量制御装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発生酸素量に連続的にほぼ一致した必要酸素量にすることで、発生酸素量を増やすタイミングを遅らせることにより、発生酸素量に必要な電力等が削減できるうえ、放散していた余剰酸素を溶融炉に吹き込むことで有効利用できる廃棄物溶融炉における酸素量制御方法を提供することができるなど、産業上有用な著しい効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態について図1および図2を用いて詳細に説明する。
【0016】
図1および図2において、1は酸素発生装置、2は昇圧ブロワ、3は空気ブロワ(送風機)、4 流量調節弁、5は廃棄物溶融炉、6は制御装置、6a は発生酸素圧力調節計、6bは必要酸素量目標値補正演算装置、6cは必要酸素量目標値補正装置、6d は必要酸素量調節計を示し、同じ要素については同じ記号を用いることにより説明の重複を避ける。
【0017】
図1は、本発明の廃棄物溶融炉における酸素量制御装置の実施形態を例示する図である。
【0018】
図1に示すように、本発明は、酸素発生装置1によって発生させた酸素と空気ブロワ3(送風機)で発生させた送風空気とを混合して廃棄物溶融炉5に供給するときの酸素量制御装置に関する。
【0019】
この酸素量制御を行う制御装置6には、発生酸素圧力調節計6a 、必要酸素量目標値補正演算装置6b、必要酸素量目標値補正装置6c、必要酸素量調節計6dが備えられており、この制御装置6によって適正な発生圧力が保持される。
【0020】
まず、発生酸素圧力調節計6aは、酸素発生装置1における現在の発生酸素圧力P1と発生酸素圧力目標値P2とを比較し、現在の発生酸素圧力P1を前記発生酸素圧力目標値P2に合わせるような操作量を算出する。
【0021】
次に、必要酸素量目標値補正演算装置6bは、該操作量により必要酸素量目標値V2の補正値を演算する。
【0022】
必要酸素量目標値補正装置6cは、前記必要酸素量目標値V2の補正値に基づいて必要酸素量目標値V2を補正して必要酸素量V2´とする。
【0023】
必要酸素量調節計6dは、前記必要酸素量V2´に基づいて必要酸素量を調節する。
【0024】
図2は、本発明の廃棄物溶融炉における酸素量制御方法の実施形態を例示する図である。
【0025】
図2に示すように、本発明は、酸素発生装置1によって発生させた酸素と空気ブロワ3(送風機)で発生させた送風空気とを混合して廃棄物溶融炉に供給するときの酸素量制御方法に関する。
【0026】
発生酸素圧力調節計6aにて、酸素発生装置1における発生酸素圧力P1と発生酸素圧力目標値P2とを比較し、現在の発生酸素圧力P1を前記発生酸素圧力目標値P2に合わせるように発生酸素圧力調節計6aの操作量を演算し、該操作量により必要酸素量目標値V2の補正値を演算して、該補正値に基づいて必要酸素量目標値V2を補正して必要酸素量V2´とする。
【0027】
本発明においては以下の制御により、発生酸素量に応じた必要酸素量となるように制御することができる。
1)酸素発生装置より発生する酸素の圧力P1が目標値P2よりも下がった場合、必要酸素量の目標値V2を下げる。
2)上記1)に応じて、溶融炉に吹き込む送風空気量の目標値を上げる。
3)酸素発生装置より発生する酸素の圧力P1が目標値よりも上がった場合、必要酸素量の目標値V2を上げる。
【0028】
発生酸素量が必要酸素量よりも少ない場合は、前述1)のように発生酸素圧力P1が目標値P2よりも下がるので、このとき必要酸素量目標値V2を下げるように補正することで、発生酸素量に連続的にほぼ一致した必要酸素量にすることができる。
【0029】
逆に発生酸素量が必要酸素量よりも多い場合は、前述3)のように発生酸素圧力P1が目標値P2よりも上がるので、このとき必要酸素量目標値V2を上げるように補正することで、発生酸素量に連続的にほぼ一致した必要酸素量にすることができる。
【実施例】
【0030】
図3は、本発明の廃棄物溶融炉における酸素量制御方法の実施例を示す図であり、図3(a)は従来技術を示し、図3(b)は本発明例を示す。
【0031】
図3(a)、図3(b)における横軸は必要酸素量、縦軸は発生酸素量を示す。
【0032】
従来技術を示す図3(a)においては、発生酸素量と必要酸素量とが一致するときに、発生酸素量を増加させるため、階段状の部分(斜線部)全体が余剰酸素として大気放散される。
【0033】
一方、本発明例を示す図3(b)においては、発生酸素量に連続的にほぼ一致した必要酸素量にすることで、発生酸素量を増やすタイミングを遅らせることにより、発生酸素量に必要な電力等が削減できるうえ、放散していた余剰酸素を溶融炉に吹き込むことで有効利用できる。
【0034】
以上の実施例によって、本発明の効果が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の廃棄物溶融炉における酸素量制御装置の実施形態を例示する図である。
【図2】本発明の廃棄物溶融炉における酸素量制御方法の実施形態を例示する図である。
【図3】本発明の廃棄物溶融炉における酸素量制御方法の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 酸素発生装置
2 昇圧ブロワ
3 空気ブロワ(送風機)
4 流量調節弁
5 廃棄物溶融炉
6 制御装置
6a 発生酸素圧力調節計
6b 必要酸素量目標値補正演算装置
6c 必要酸素量目標値補正装置
6d 必要酸素量調節計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素発生装置によって発生させた酸素と送風機で発生させた送風空気とを混合して廃棄物溶融炉に供給するときの酸素量制御方法において、
酸素発生装置における現在の発生酸素圧力P1と発生酸素圧力目標値P2とを比較し、現在の発生酸素圧力P1を前記発生酸素圧力目標値P2に合わせるように発生酸素圧力調節計6aの操作量を演算し、該操作量により必要酸素量目標値V2の補正値を演算して、該補正値に基づいて必要酸素量目標値V2を補正して必要酸素量V2´とすることを特徴とする廃棄物溶融炉における酸素量制御方法。
【請求項2】
前記送風空気量を送風機の回転数よって制御することを特徴とする請求項1に記載の廃棄物溶融炉における酸素量制御方法。
【請求項3】
酸素発生装置によって発生させた酸素と送風機で発生させた送風空気とを混合して廃棄物溶融炉に供給するときの酸素量制御装置において、
酸素発生装置における現在の発生酸素圧力P1と発生酸素圧力目標値P2とを比較して調整する発生酸素圧力調節計6aと、
該発生酸素圧力調節計6aの操作量に基づいて必要酸素量目標値V2の補正値を演算する必要酸素量目標値補正演算装置6bと、
該必要酸素量目標値補正演算装置6bの演算結果に基づいて必要酸素量目標値V2を補正して必要酸素量V2´とする必要酸素量目標値補正装置6cと、
該必要酸素量V2´に基づいて必要酸素量を調節する必要酸素量調節計6dとを備えたことを特徴とする廃棄物溶融炉における酸素量制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−162428(P2009−162428A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−893(P2008−893)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】