説明

廃棄物焼却炉の排ガス処理方法およびそのシステム

【課題】排ガス規制値に応じて必要量だけを効率良く脱硝処理することができ、しかも従来の触媒脱硝法では必要とされていた排ガス加熱装置を省略することができるとともに、触媒脱硝装置のコンパクト化を図ることができる廃棄物焼却炉の排ガス処理方法およびそのシステムを提供する。
【解決手段】廃棄物を焼却処理する焼却炉2で発生した排ガスの一部を300℃程度の温度域から分岐管路10を通じて引き抜いて触媒脱硝装置12で脱硝処理するものとする。触媒脱硝装置12の上流に、分岐管路10によって引き抜かれた排ガス中に含まれるダストを除去する集塵装置11が設けられるのがよい。また、触媒脱硝装置12によって脱硝処理された排ガスの余熱を用いてボイラ3への給水を加熱する第2のエコノマイザ13が設けられるのがよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般廃棄物や産業廃棄物を焼却処理する廃棄物焼却炉の排ガス処理方法およびそのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の廃棄物焼却処理施設として、例えば図2に示されるようなものがある。
この図2に示される廃棄物焼却処理施設51において、廃棄物を焼却処理する焼却炉52で発生した排ガスは、ボイラ53での熱交換に供されるとともに、エコノマイザ54でのボイラ53への給水の加熱に供された後に、減温塔55で所定温度まで冷却されてからバグフィルタを用いた集塵装置56に送られる。この集塵装置56でダストが除去された排ガスは、排ガス加熱装置57で加熱された後に触媒脱硝装置58に送られる。この触媒脱硝装置58で脱硝処理された排ガスは、誘引通風機(図示省略)により、煙突59を介して系外に排出される。
なお、この種の廃棄物焼却処理施設は、例えば特許文献1にて知られている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−309079号公報
【0004】
この廃棄物焼却処理施設51において、焼却炉52からの排ガスには、廃棄物に含まれる灰分や塩素、硫黄等に由来するダスト、HCl、SOx、ダイオキシン類等の有害物質が含まれる。そのため、集塵装置56でダストを除去し、アルカリ剤(消石灰が主流)を集塵装置56の上流に吹き込むことで、HCl、SOx等の酸性ガスをガス中や集塵装置56のバグフィルタ(ろ布)上で反応させて無害化を図ったり、活性炭を集塵装置56の上流に吹き込むことで、ダイオキシン類の除去を行ったりしている。
ろ布の性質上(PTFE繊維やガラス繊維等が使用される)耐熱性は200℃程度までであり、また、HCl、SOx等の酸性ガスと消石灰の反応も温度依存性が高く、排ガス温度が低いほど効率的であるので、機器の腐食対策等を考慮し150℃程度の排ガス温度となるように設計される。
【0005】
さらに、この廃棄物焼却処理施設51においては、焼却炉52からの排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を除去するために、排ガス加熱装置57と触媒脱硝装置58とが組み込まれる。
排ガス加熱装置57は、集塵装置56からの150℃程度の排ガスを210℃程度にまで加熱するものであり、熱源としてはボイラ付き廃棄物焼却処理施設51の場合にはボイラ53からの過熱蒸気(400℃または300℃)が使用される。
触媒脱硝装置58は、触媒上でアンモニア(NH)とNOxの反応を起こさせ、NOxをNとHOに分解する装置であるが、分解率は反応温度に大きく依存するため、排ガス温度を少なくとも200℃以上に保つ必要がある。
【0006】
なお、上記の廃棄物焼却処理施設51において、排ガス処理経路途中に排ガス加熱装置57と触媒脱硝装置58とを組み込んで脱硝処理する触媒脱硝法以外に、アンモニアまたは尿素を焼却炉52内の例えば850℃域に吹き込んで脱硝処理する無触媒脱硝法を採用する態様もある。
【0007】
しかしながら、従来の廃棄物焼却処理施設51における排ガス処理システムでは、以下のような問題点がある。
(1)無触媒脱硝法では脱硝処理の効率が低いために使用する薬品量が多く、また未反応のアンモニアが塩化水素と反応して白煙(紫煙)が発生する恐れがある。
(2)触媒脱硝装置58での触媒脱硝反応は温度依存性が高く温度を下げるわけにはいかないため、触媒脱硝装置58に導入される排ガスを210℃程度まで加熱する排ガス加熱装置57が必要となり、設備費が高くなる。
(3)排ガス加熱装置57で使用される熱源のエネルギーは損出エネルギーとなり、例えば発電効率の低下の原因になる。
(4)触媒脱硝装置58として、焼却炉52からの排ガスの全量を処理する大容量のものが必要となり、設備費が高くなる。
(5)ダイオキシン類除去のための活性炭の使用量が多くなり、運転費が高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、排ガス規制値に応じて必要量だけを効率良く脱硝処理することができ、しかも従来の触媒脱硝法では必要とされていた排ガス加熱装置を省略することができるとともに、触媒脱硝装置のコンパクト化を図ることができる廃棄物焼却炉の排ガス処理方法およびそのシステムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、第1発明による廃棄物焼却炉の排ガス処理方法は、
廃棄物を焼却処理する焼却炉で発生した排ガスの一部を200℃超の温度域から引き抜いて脱硝処理することを特徴とするものである。
【0010】
次に、第2発明による廃棄物焼却炉の排ガス処理システムは、
廃棄物を焼却処理する焼却炉で発生した排ガスの一部を200℃超の温度域から引き抜く分岐管路と、この分岐管路によって引き抜かれた排ガスを脱硝処理する触媒脱硝装置とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
第2発明において、前記触媒脱硝装置の上流に、前記分岐管路によって引き抜かれた排ガス中に含まれるダストを除去する集塵装置が設けられるのが好ましい(第3発明)。
【0012】
第2発明または第3発明において、前記焼却炉には、排ガスの熱回収を行うボイラが付設され、前記触媒脱硝装置によって脱硝処理された排ガスの余熱を用いて前記ボイラへの給水を加熱するエコノマイザが設けられるのが好ましい(第4発明)。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、焼却炉で発生した排ガスの一部が200℃超の温度域(好ましくは300℃域)から排ガス規制値に応じて必要量だけ引き抜かれて触媒脱硝装置で脱硝処理される。これにより、排ガス規制値に応じて必要量だけを効率良く脱硝処理することができるとともに、触媒脱硝装置のコンパクト化を図ることができる。
また、200℃超の温度域から引き抜かれた排ガスが触媒脱硝装置に導入されて脱硝処理されるので、従来、触媒脱硝装置に導入される前の排ガスを加熱していた排ガス加熱装置が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る排ガス処理システムを備えた廃棄物焼却処理施設の概略システム構成図
【図2】従来の排ガス処理システムを備えた廃棄物焼却処理施設の概略システム構成図
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明による廃棄物焼却炉の排ガス処理方法およびそのシステムの具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
<廃棄物焼却処理施設の概略構成の説明>
図1に示される廃棄物焼却処理施設1において、廃棄物は焼却炉2で燃焼される。この焼却炉2での廃棄物の燃焼に伴い発生する排ガスは、ボイラ3での熱交換に供されるとともに、第1のエコノマイザ4でのボイラ3への給水の加熱に供された後に、減温塔5で所定温度まで冷却されてからバグフィルタを用いた集塵装置6に送られる。この集塵装置6でダストが除去された排ガスは、誘引通風機7により、煙突8を介して系外に排出される。
なお、集塵装置6の上流側には、酸性ガス処理薬剤(例えば、消石灰)が吹き込まれており、HCl、SOx等の酸性ガスをガス中や集塵装置6のバグフィルタ(ろ布)上で反応させて無害化を図っている。
【0017】
<分岐管路の説明>
ボイラ3の排ガス出口部分の管路9においては、300℃程度の排ガスが流通されている。この管路9には、焼却炉2で発生した排ガスの一部を300℃の温度域から引き抜く分岐管路10が接続されている。
【0018】
<分岐管路上の設置機器の説明>
分岐管路10上には、排ガス流れの上流側から下流側に向けて順に、集塵装置11、触媒脱硝装置12および第2のエコノマイザ13がそれぞれ設置されている。
【0019】
<集塵装置の説明>
集塵装置11は、耐熱性・耐薬品性に優れるセラミックフィルタを用いたもので、分岐管路10によって引き抜かれた比較的高温(300℃程度)の排ガス中に含まれるダストを効果的に除去する機能を有している。この集塵装置11によってダストが除去された排ガスは、触媒脱硝装置12に導入される。
【0020】
<触媒脱硝装置の説明>
触媒脱硝装置12は、装置の上流において吹き込まれたアンモニア(NH)と装置内に導入された排ガス中の窒素酸化物(NOx)との反応を触媒上で起こさせ、NOxをNとHOに分解する装置である。分解率は反応温度に大きく依存するため、排ガス温度を少なくとも200℃以上に保つ必要があるが、この触媒脱硝装置12に導入される排ガスの温度は300℃程度であるので、高効率でNOxをNとHOに分解することができる。
【0021】
<エコノマイザの説明>
本実施形態においては、ボイラ3への給水を加熱する手段として、第1のエコノマイザ4と第2のエコノマイザ13とが設けられている。
給水ポンプ14によって第1のエコノマイザ4に送られた水は、ボイラ3での熱交換に供された排ガスの余熱で加熱された後、蒸気ドラム15に送られる。一方、給水ポンプ14によって第2のエコノマイザ13に送られた水は、触媒脱硝装置12によって脱硝処理された排ガスの余熱で加熱された後、蒸気ドラム15に送られる。
なお、この第2のエコノマイザ13でボイラ3への給水の加熱に供された排ガスは、誘引通風機7により、煙突8を介して系外に排出される。
【0022】
<作用効果の説明>
本実施形態においては、焼却炉2で発生した排ガスの一部が、ボイラ3の排ガス出口部分における300℃の温度域の管路9に接続される分岐管路10を通して、排ガス規制値に応じて必要量だけ引き抜かれる。なお、分岐管路10を通して引き抜く排ガス量は、排ガス規制値によって変わるが、概ね全排ガス量の20〜50%である。
【0023】
分岐管路10を通して引き抜かれた排ガスは、集塵装置11でダストが除去された後、触媒脱硝装置12に導入されてNOxとダイオキシン類が分解除去される。ここでは、触媒活性の高い300℃域での反応であるため、NOxやダイオキシン類をほぼ100%分解除去することができる。こうして、排ガス規制値に応じて必要量だけを効率良く脱硝・無害化処理することができる。
ここで、例えば、NOxを60ppmまで下げるには、分岐管路10による分岐排ガス量を全排ガス量の50%とし、NOxを100ppmまで下げるためには、分岐管路10による分岐排ガス量を全排ガス量の20%とすればよい。この場合、焼却炉2からボイラ3、第1のエコノマイザ4、減温塔5、集塵装置6に至る設備は、分岐排ガス量が全排ガス量の50%のときには、全排ガス量の50%を処理することができる容量のものでよく、分岐排ガス量が全排ガス量の20%のときには、全排ガス量の80%を処理することができる容量のものでよいことになる。
【0024】
また、焼却炉2で発生した排ガスの一部のみが触媒脱硝装置12に導入されるので、触媒脱硝装置12としては排ガスの一部のみを脱硝処理することができる能力のものでよく、装置のコンパクト化を図ることができる。
また、300℃の温度域から引き抜かれた排ガスが触媒脱硝装置12に導入されて脱硝処理されるので、従来、触媒脱硝装置58に導入される前の排ガスを加熱していた排ガス加熱装置57が不要になる。
【0025】
また、第2のエコノマイザ13に導入される排ガスは、集塵装置11による除塵処理によってダストが無い条件となるので、第2のエコノマイザ13として、フィンチューブを用いたコンパクトな構成のものを採用することができる。
【0026】
なお、HCl、SOx等の酸性ガスは、規制値に応じて、焼却炉2からボイラ3、第1のエコノマイザ4、減温塔5、集塵装置6に至るメインラインと、分岐管路10から集塵装置11、触媒脱硝装置12、第2のエコノマイザ13に至る分岐ラインとのうちのいずれか、あるいは両方で処理することができるが、分岐ラインで処理する場合は、酸性ガス処理薬剤として例えば重曹を用いるのが好ましい。
また、分岐ラインのNOx、ダイオキシン類はほぼ完全に分解することができるので、メインラインにおいて集塵装置6の上流側に吹き込む活性炭量を低減することができる。
【0027】
以上、本発明の廃棄物焼却炉の排ガス処理方法およびそのシステムについて、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0028】
本実施形態においては、焼却炉2で発生した排ガスの一部を300℃の温度域から引き抜いて触媒脱硝装置12に導入するようにしたが、これに限定されるものではなく、焼却炉2で発生した排ガスの一部を300℃超の温度域から引き抜いて触媒脱硝装置12に導入するようにしてもよい。また、触媒脱硝装置12でのNOxの分解率の観点上、触媒脱硝装置12に導入される排ガスの温度が少なくとも200℃以上に保たれればよいため、焼却炉2で発生した排ガスの一部を200℃超〜300℃未満の温度域から引き抜いて触媒脱硝装置12に導入するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の廃棄物焼却炉の排ガス処理方法およびそのシステムは、排ガス規制値に応じて必要量だけを効率良く脱硝処理することができ、しかも従来の触媒脱硝法では必要とされていた排ガス加熱装置を省略することができるとともに、触媒脱硝装置のコンパクト化を図ることができるという特性を有していることから、一般廃棄物や産業廃棄物を焼却処理する廃棄物焼却炉の排ガスの処理の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 廃棄物焼却処理施設
2 焼却炉
3 ボイラ
4 第1のエコノマイザ
5 減温塔
6 集塵装置
7 誘引通風機
8 煙突
10 分岐管路
11 集塵装置
12 触媒脱硝装置
13 第2のエコノマイザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を焼却処理する焼却炉で発生した排ガスの一部を200℃超の温度域から引き抜いて脱硝処理することを特徴とする廃棄物焼却炉の排ガス処理方法。
【請求項2】
廃棄物を焼却処理する焼却炉で発生した排ガスの一部を200℃超の温度域から引き抜く分岐管路と、この分岐管路によって引き抜かれた排ガスを脱硝処理する触媒脱硝装置とを備えることを特徴とする廃棄物焼却炉の排ガス処理システム。
【請求項3】
前記触媒脱硝装置の上流に、前記分岐管路によって引き抜かれた排ガス中に含まれるダストを除去する集塵装置が設けられる請求項2に記載の廃棄物焼却炉の排ガス処理システム。
【請求項4】
前記焼却炉には、排ガスの熱回収を行うボイラが付設され、
前記触媒脱硝装置によって脱硝処理された排ガスの余熱を用いて前記ボイラへの給水を加熱するエコノマイザが設けられる請求項2または3に記載の廃棄物焼却炉の排ガス処理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−107023(P2013−107023A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251747(P2011−251747)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】