廃水処理方法及び廃水処理装置
【課題】同一の処理槽に共存する硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌により、廃水処理を迅速かつ安定して行うことができる廃水処理方法及び廃水処理装置を提供する。
【解決手段】処理槽20に、硝化細菌が優占化された硝化担体22と、嫌気性アンモニア酸化細菌が優占化された脱窒担体24とを混在させる。これにより、処理槽20において、硝化担体22による硝化反応及び脱窒担体24による脱窒反応の両方を行い、廃水中のアンモニア性窒素を窒素ガスに分解する。硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌とを互いに異なる担体(硝化担体22及び脱窒担体24)に固定化することで、硝化担体22と脱窒担体24との体積比(投入量比)の調節により、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌の菌量比を容易にコントロールすることができる。
【解決手段】処理槽20に、硝化細菌が優占化された硝化担体22と、嫌気性アンモニア酸化細菌が優占化された脱窒担体24とを混在させる。これにより、処理槽20において、硝化担体22による硝化反応及び脱窒担体24による脱窒反応の両方を行い、廃水中のアンモニア性窒素を窒素ガスに分解する。硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌とを互いに異なる担体(硝化担体22及び脱窒担体24)に固定化することで、硝化担体22と脱窒担体24との体積比(投入量比)の調節により、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌の菌量比を容易にコントロールすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水処理方法及び廃水処理装置に係り、特に、アンモニア性窒素を含む廃水の処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アンモニア性窒素を含む廃水の処理方法として、嫌気性アンモニア酸化細菌による脱窒処理を伴う方法(嫌気性アンモニア酸化法)が注目を集めている。この方法では、硝化槽において、廃水中のアンモニア性窒素を硝化細菌で亜硝酸に硝化した後、脱窒槽において、当該亜硝酸と、廃水中のアンモニア性窒素とを嫌気性アンモニア酸化細菌により同時脱窒する。この方法によれば、脱窒反応時に、外部からの有機物の供給を必要としないため、効率的な廃水処理を行うことができる。
【0003】
嫌気性アンモニア酸化法における同時脱窒は、下記の反応式に従って行われる。したがって、廃水中のアンモニア性窒素を確実に分解除去するためには、下記反応式の量論比に基づいて、脱窒槽中のアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素との比率を管理する必要がある。このため、硝化槽における硝化率を厳密にコントロールする必要があった。
【0004】
1.00NH4+1.32NO2+0.066HCO3+0.13H+
→1.02N2+0.26NO3+0.066CH2O0.5N0.15+2.03H2O
そこで、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌が共存する処理槽において、好気条件下で、硝化反応及び脱窒反応の両方を行う方法(いわゆるキャノン法)が提案されている(例えば、非特許文献1)。この方法では、同一の処理槽内に共存する硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌が、互いに均衡を保とうとするため、硝化率を厳密にコントロールしなくても、廃水中のアンモニア性窒素を確実に分解除去することができる。
【0005】
キャノン法では、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌を同一の処理槽に共存させる必要がある。そこで、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌の両方を同一の生物膜に共存させ、当該生物膜により廃水処理を行う方法が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌の両方が固定化された担体(スポンジ)を用いて、廃水処理を行うことが記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、嫌気性アンモニア酸化細菌を内部に包括固定化するとともに、表面に硝化細菌を付着させた二重構造の生物膜からなる担体(二重構造担体)を用いて、廃水処理を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−293494号公報
【特許文献2】特開2004−230225号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Third, K.A., Sliekers, A.O., Kuenen, J.G., Jetten, M.S.M., 2001 The CANNON system (completely autotrophic nitrogen-removal over nitrite) under ammonium limitation: interaction and competition between three groups of bacteria. Syst. Appl. Microbiol. 24(4), 588-596.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1及び2に記載された方法では、硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌との菌量の比率をコントロールすることが難しく、硝化反応及び脱窒反応のいずれか一方が律速となってしまい、廃水処理を迅速に行うことができない場合がある。
【0011】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、同一の処理槽に共存する硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌により、廃水処理を迅速かつ安定して行うことができる廃水処理方法及び廃水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る廃水処理方法は、アンモニア性窒素を含む廃水を処理する方法であって、硝化細菌を優占化させた硝化担体と、嫌気性アンモニア酸化細菌を優占化させた脱窒担体とが混在する処理槽において、前記硝化担体の前記硝化細菌により、前記廃水に含まれる前記アンモニア性窒素を亜硝酸に酸化する工程と、前記処理槽において、前記脱窒担体の前記嫌気性アンモニア酸化細菌により、前記廃水中の前記アンモニア性窒素を水素供与体として、前記アンモニア性窒素の酸化により生成した前記亜硝酸を脱窒する工程とを含むことを特徴とする。
【0013】
従来、同一の処理槽内で硝化反応及び脱窒反応を行う場合、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌が共存する生物膜を用いる必要があると考えられていた。このような状況において、本願発明者らは、鋭意検討した結果、硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌とを別々の担体に固定化して、これら2種類の担体を混在させた処理槽において、硝化反応及び脱窒反応を行うことが可能であることを発見した。上記廃水処理方法は、本願発明者らの上述の知見に基づいてなされたものである。
【0014】
上記廃水処理方法では、硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌とを互いに異なる担体(硝化担体及び脱窒担体)に固定化することで、硝化担体と脱窒担体との体積比(投入量比)の調節により、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌の菌量比を容易にコントロールすることができる。したがって、硝化反応及び脱窒反応のいずれか一方が律速となることを防止して、廃水処理を迅速に行うことができる。
【0015】
上記廃水処理方法は、前記処理槽に前記脱窒担体を投入する工程と、前記脱窒担体が投入された前記処理槽に、前記硝化細菌を含む担体を投入する工程と、前記脱窒担体が得られるように、前記処理槽内の前記担体に含まれる前記硝化細菌を馴養する工程とを含んでもよい。
【0016】
脱窒担体中に優占化させた嫌気性アンモニア酸化細菌は、溶存酸素に対してある程度の耐性を有する。したがって、嫌気性アンモニア酸化細菌を予め優占化させた脱窒担体を処理槽に投入した後、当該処理槽において好気性細菌である硝化細菌を馴養することで、脱窒担体中の嫌気性アンモニア酸化細菌を失活させずに、硝化担体の馴養を行うことができる。
【0017】
上記廃水処理方法において、前記処理槽が第1馴養室及び第2馴養室に分離されるように、前記処理槽に分離板を取り付ける工程と、前記第1馴養室に前記硝化細菌を含む第1担体を投入する工程と、前記第2馴養室に前記嫌気性アンモニア酸化細菌を含む第2担体を投入する工程と、前記硝化担体が得られるように、前記第1馴養室内の前記第1担体に含まれる前記硝化細菌を馴養する工程と、前記脱窒担体が得られるように、前記第2馴養室内の前記第2担体に含まれる前記嫌気性アンモニア酸化細菌を馴養する工程と、前記硝化細菌及び前記嫌気性アンモニア酸化細菌を馴養した後、前記分離板を取り外す工程とを含んでもよい。
【0018】
このように、好気性細菌である硝化細菌と、嫌気性細菌である嫌気性アンモニア酸化細菌とを、それぞれ第1馴養室及び第2馴養室において馴養することで、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養を確実に行うことができる。また、廃水処理運転に用いる処理槽だけで、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養を行うことができるため、省スペース化を図ることができる。
【0019】
上記廃水処理方法において、前記硝化担体及び前記脱窒担体の少なくとも一方は、包括固定化担体であるが好ましい。
【0020】
担体として包括固定化担体を用いれば、付着固定化担体の場合に起こりうる生物膜の剥離が生じないため、菌量を確実にコントロールすることができる。また、包括固定化担体であれば、馴養の際、汚泥の返送が不要であるため、比較的容易に馴養を行うことができる。
【0021】
上記廃水処理方法では、前記亜硝酸に酸化する工程と、前記亜硝酸を脱窒する工程とにおいて、前記処理槽における溶存酸素濃度を、1mg/L以上4mg/L以下に維持することが好ましい。
【0022】
溶存酸素濃度(DO)を上記範囲に維持することで、廃水処理を安定して迅速に行うことができる。
【0023】
上記廃水処理方法において、前記アンモニア性窒素を前記亜硝酸に酸化する硝化反応速度が、1.1kg-N・m−3・day−1以上であり、前記亜硝酸を脱窒する脱窒反応速度が、2.0kg-N・m−3・day−1以上であることが好ましい。
【0024】
本発明に係る廃水処理装置は、硝化細菌を優占化させた硝化担体と、嫌気性アンモニア酸化細菌を優占化させた脱窒担体とが混在する処理槽を備えることを特徴とする。
【0025】
上記廃水処理装置によれば、硝化担体と脱窒担体との体積比(投入量比)により、硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌との菌量の比率を容易にコントロールすることができる。したがって、硝化反応及び脱窒反応のいずれか一方が律速となることを防止して、廃水処理を迅速に行うことができる。
【0026】
上記廃水処理装置は、前記処理槽が、前記硝化担体の馴養が行われる第1馴養室と、前記脱窒担体の馴養が行われる第2馴養室とに分離されるように、前記処理槽に着脱可能に取り付けられる分離板をさらに備えることが好ましい。
【0027】
これにより、分離板により処理槽を第1馴養室及び第2馴養室に分離した状態で、好気性細菌である硝化細菌と、嫌気性細菌である嫌気性アンモニア酸化細菌とを、それぞれ第1馴養室及び第2馴養室において馴養することができる。また、廃水処理運転に用いる処理槽だけで、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養を行うことができるため、廃水処理装置を小型化することができる。
【0028】
上記廃水処理装置は、前記処理槽を第1処理室及び第2処理室に分離するとともに、前記第1処理室及び前記第2処理室とを連通する連通路が前記処理槽の上部及び底部に形成されるように配置される邪魔板と、前記第1処理室及び前記第2処理室のいずれか一方に設けられ、前記連通路を介して、前記廃水の旋回流が前記処理槽内に形成されるように、前記廃水を曝気攪拌する散気手段とをさらに備えることが好ましい。
【0029】
これにより、前記第1処理室及び前記第2処理室のいずれか一方に散気手段を設けるだけで、処理槽内に形成される廃水の旋回流を利用して、処理槽内の廃水に溶存酸素を供給するとともに、処理槽内の担体を流動させることができる。したがって、廃水処理運転に必要なエネルギーを低減することができる。
【0030】
上記廃水処理装置において、前記硝化担体及び前記脱窒担体の少なくとも一方は、包括固定化担体であることが好ましい。
【0031】
担体として包括固定化担体を用いれば、付着固定担体の場合に起こりうる生物膜の剥離が生じないため、菌量を確実にコントロールすることができる。また、包括固定化担体であれば、馴養の際、汚泥の返送が不要であるため、比較的容易に馴養を行うことができる。
【0032】
上記廃水処理装置は、前記処理槽内の前記廃水を曝気攪拌する散気手段と、前記処理槽における溶存酸素量が1mg/L以上4mg/L以下になるように、前記散気手段を制御する制御手段とをさらに備えることが好ましい。
【0033】
溶存酸素濃度(DO)を上記範囲に維持することで、廃水処理を安定して迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、硝化細菌を優占化させた硝化担体と、嫌気性アンモニア酸化細菌を優占化させた脱窒担体とが混在する処理槽を用いて廃水処理を行うため、処理槽内の硝化担体と脱窒担体との体積比(投入量比)により、硝化反応及び脱窒反応のいずれか一方が律速となることを防止して、廃水処理を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る廃水処理装置の一例を示す構成図である。
【図2】硝化担体及び脱窒担体の馴養を行う廃水処理装置の一例を示す構成図である。
【図3】硝化担体及び脱窒担体の馴養を行う廃水処理装置の他の例を示す構成図である。
【図4】旋回流を利用して処理槽内の廃水を攪拌する廃水処理装置の一例を示す構成図である。
【図5】旋回流を利用して処理槽内の廃水を攪拌する廃水処理装置の他の例を示す構成図である。
【図6】硝化担体及び脱窒担体の馴養を行う廃水処理装置の他の例を示す構成図である。
【図7】硝化担体の馴養に用いたアンモニア廃水の水質を示す表である。
【図8】脱窒担体の馴養に用いた合成廃水の水質を示す表である。
【図9】実施例1における廃水処理の結果を示す表である。
【図10】実施例2における廃水処理の結果を示す表である。
【図11】実施例4における、溶存酸素量と窒素除去率との関係を示すグラフである。
【図12】実施例5における廃水処理の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。
【0037】
図1は、本実施形態に係る廃水処理装置の一例を示す構成図である。同図に示すように、廃水処理装置10は、主として、処理すべき廃水(原廃水)が貯留される原水タンク12と、原水タンク12から送られる廃水を処理する処理槽20と、廃水処理装置10の各部を制御する制御装置40とにより構成される。
【0038】
原水タンク12に貯留される廃水は、少なくともアンモニア性窒素を含有する廃水であり、アンモニア性窒素の他に、窒素、リン、炭素等の栄養塩が含まれていてもよい。原水タンク12は、処理槽20と連結されており、ポンプ14により、原水タンク12から処理槽20に廃水を供給できるようになっている。
【0039】
従来、同一の処理槽内で硝化反応及び脱窒反応を行う場合、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌が共存する生物膜を用いる必要があると考えられていた。このような状況において、本願発明者らは、鋭意検討した結果、硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌とを別々の担体に固定化して、これら2種類の担体を混在させた処理槽において、硝化反応及び脱窒反応を行うことが可能であることを発見した。本実施形態に係る廃水処理装置10は、本願発明者らの上述の知見に基づいており、処理槽20には、硝化細菌(アンモニア酸化細菌)が優占的に集積された硝化担体22と、嫌気性アンモニア酸化細菌が優占的に集積された脱窒担体24とが混在している。すなわち、硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌とは、互いに異なる担体(硝化担体22及び脱窒担体24)に固定化されている。
【0040】
このように硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌とを互いに異なる担体に固定化することで、硝化担体22と脱窒担体24との体積比(投入量比)の調節により、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌の菌量比を容易にコントロールすることができる。したがって、硝化反応及び脱窒反応のいずれか一方が律速となることを防止して、廃水処理を迅速に行うことができる。
【0041】
また、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌の一方を内部に包括固定化するとともに、他方を担体表面に付着させた二重構造担体(例えば、特許文献2に記載された担体)の場合には、担体内層への原料物質の拡散が律速になり、十分な廃水処理速度が得られないことがある。これは、一方の細菌が生息する外層が厚いと、反応原料物質が、他方の細菌が生息する内層に迅速に拡散することができないためである。これに対し、本実施形態のように、硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌とを互いに異なる担体(硝化担体22と脱窒担体24)に固定化する場合、反応原料物質の拡散律速に起因する廃水処理速度の低下は起こらない。
【0042】
また、二重構造担体の場合には、担体の外層が剥がれ落ちて、外層に生息する細菌が処理槽から流出してしまい、硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌との菌量のバランスが崩れて、廃水処理が不安定になってしまうことがある。これに対し、本実施形態のように、硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌とを互いに異なる担体(硝化担体22と脱窒担体24)に固定化する場合、硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌との菌量のバランスを安定して維持することができる。
【0043】
処理槽20では、硝化担体22に集積された硝化細菌と、脱窒担体24に集積された嫌気性アンモニア酸化細菌とが共存している。これにより、処理槽20において、硝化担体22による硝化反応及び脱窒担体24による脱窒反応の両方を行い、廃水中のアンモニア性窒素を窒素ガスに分解することができる。ここで、硝化反応とは、廃水中のアンモニア性窒素を硝化細菌により亜硝酸に酸化する反応をいい、脱窒反応とは、嫌気性アンモニア酸化細菌により、廃水中のアンモニア性窒素を水素供与体として、硝化反応により生成した亜硝酸を脱窒する反応をいう。
【0044】
硝化担体22は、硝化細菌が固定化されていれば特に限定されず、固定化担体であってもよいし、接触ろ材であってもよい。硝化担体22に固定化される硝化細菌は、活性汚泥等の微生物から分離したものを用いてもよいし、硝化細菌を優先繁殖させた微生物群を含む活性汚泥を用いてもよい。
【0045】
また、固定化担体タイプの硝化担体22としては、硝化細菌を担体内部に包括固定化した包括固定化担体を用いることが好ましい。包括固定化担体を用いれば、付着固定担体の場合に起こりうる生物膜の剥離が生じないため、菌量を確実にコントロールすることができる。また、包括固定化担体であれば、馴養の際、汚泥の返送が不要であるため、比較的容易に馴養を行うことができる。
【0046】
硝化担体22の固定化材料は、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、アルギン酸、ポリエチレングリコール等のゲルや、セルロース、ポリエステル、ポリプロピレン、塩化ビニル等のプラスチックを用いることができる。硝化担体22の形状は、例えば、球形、円筒形、立方形であってもよく、硝化担体22は、多孔状、ハニカム状、スポンジ状に成形されていてもよい。また、硝化担体22として、微生物の自己造粒を利用したグラニュール担体を使用してもよい。なお、硝化担体22として使用可能な接触ろ材として、塩化ビニル製やポリエチレン製のものを挙げることができる。
【0047】
脱窒担体24は、嫌気性アンモニア酸化細菌が固定化されていれば特に限定されず、固定化担体であってもよいし、接触ろ材であってもよい。
【0048】
また、脱窒担体24に用いる固定化担体は、嫌気性アンモニア酸化細菌を担体内部に包括固定化した包括固定化担体であってもよいし、嫌気性アンモニア酸化細菌を担体表面に付着固定した付着固定化担体であってもよい。中でも、脱窒担体24として、包括固定化担体を使用することが好ましい。包括固定化担体を用いれば、付着固定担体の場合に起こりうる生物膜の剥離が生じないため、菌量を確実にコントロールすることができる。また、包括固定担体は、菌を確実に処理槽内に維持することができるため、培養により得られる貴重な菌である嫌気性アンモニア酸化細菌の固定担体として適している。さらに、包括固定化担体であれば、馴養の際、汚泥の返送が不要であるため、比較的容易に馴養を行うことができる。
【0049】
脱窒担体24の固定化材料は、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、アルギン酸、ポリエチレングリコール等のゲルや、セルロース、ポリエステル、ポリプロピレン、塩化ビニル等のプラスチックを用いることができる。脱窒担体24の形状は、例えば、球形、円筒形、立方形であってもよく、脱窒担体24は、多孔状、ハニカム状、スポンジ状に成形されていてもよい。また、脱窒担体24として、微生物の自己造粒を利用したグラニュール担体を使用してもよい。なお、脱窒担体24として使用可能な接触ろ材として、塩化ビニル製やポリエチレン製のものを挙げることができる。
【0050】
硝化担体22及び脱窒担体24の合計体積は、処理槽20内の廃水の体積の10〜40%であることが好ましく、15〜25%であることがより好ましい。また、処理槽20における硝化担体22及び脱窒担体24の合計体積に対する脱窒担体24の体積率Xは、処理槽20内の水温に応じて調節されることが好ましい。特に、脱窒担体24の体積率Xは、水温が15〜20℃の場合には50〜75%に、水温が20〜25℃の場合には40〜65%に、水温が25〜37℃の場合には20〜50%に調節されることが好ましい。
【0051】
また、図1に示すように、処理槽20には、処理槽20内の廃水の水質を測定するセンサー26が設けられている。センサー26は、例えば、アンモニア濃度、亜硝酸濃度、硝酸濃度、溶存酸素量、pHなどを測定可能な構成になっている。センサー26の測定結果は、制御装置40に送られ、この測定結果に基づいて、廃水処理装置10の各部が制御される。
【0052】
また、処理槽20には、散気手段28が設けられており、この散気手段28を介して、ブロア30から空気が供給されるようになっている。これにより、処理槽20内の廃水を曝気攪拌するとともに、廃水に溶存酸素を供給することができる。
【0053】
ブロア30は、制御装置40により、処理槽20内の廃水の溶存酸素量が1.0mg/L以上4.0mg/L以下(より好ましくは、1.5mg/L以上3.0mg/L以下)になるように制御されることが好ましい。溶存酸素量が高すぎると、嫌気性細菌である嫌気性アンモニア酸化細菌の活性が低下する一方、溶存酸素量が低すぎると、好気性細菌である硝化細菌の活性が低下する。処理槽20内の廃水の溶存酸素量を上記範囲に維持することで、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌の活性を維持して、廃水処理を迅速に行うことができる。
【0054】
処理槽20における亜硝酸濃度は、1〜280mg/Lに維持されることが好ましく、2〜100mg/Lに維持されることがより好ましい。また、処理槽20におけるアンモニア濃度は、1〜100mg/Lに維持されることが好ましく、1〜20mg/Lに維持されることがより好ましい。
【0055】
処理槽20における亜硝酸濃度及びアンモニア濃度は、制御装置40がポンプ14を制御して、廃水の処理槽20における滞留時間(水理学的滞留時間)を変更することで、調節することができる。
【0056】
次に、硝化細菌を優占化させた硝化担体22と、嫌気性アンモニア酸化細菌を優占化させた脱窒担体24とを処理槽20内に混在させる方法について説明する。
【0057】
硝化細菌を優占化させた硝化担体22は、馴養された硝化細菌が固定化された担体である。例えば、硝化担体22は、単位体積あたりのアンモニア性窒素の処理速度が4kg-N/m3-担体/day以上になるように、硝化細菌の馴養が行われている。なお、特に明記しない限り、「硝化担体22」は、馴養済みの硝化担体22を指す。一方、未馴養の硝化担体22とは、単位体積あたりのアンモニア性窒素の処理速度が0.5kg-N/m3-担体/day以下のものを指す。
【0058】
嫌気性アンモニア酸化細菌を優占化させた脱窒担体24は、馴養された嫌気性アンモニア酸化細菌が固定化された担体である。例えば、脱窒担体24は、単位体積あたりのアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素の処理速度が5kg-N/m3-担体/day以上になるように、嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養が行われている。なお、特に明記しない限り、「脱窒担体24」は、馴養済みの脱窒担体24を指す。一方、未馴養の脱窒担体24とは、アンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素の処理速度が2.5kg-N/m3-担体/day以下のものを指す。
【0059】
処理槽20内に混在させる硝化担体22及び脱窒担体24は、馴養済みの硝化担体22及び馴養済みの脱窒担体24を処理槽20に投入してもよいし、硝化担体22及び脱窒担体24のいずれか一方を廃水処理装置10内で馴養してもよい。
【0060】
例えば、未馴養の硝化担体22と馴養済みの脱窒担体24とを処理槽20に投入した後、処理槽20内を好気条件に維持することで、硝化担体22の馴養を行ってもよい。馴養済みの脱窒担体24に含まれる嫌気性アンモニア酸化細菌は、溶存酸素に対してある程度の耐性を有する。したがって、嫌気性アンモニア酸化細菌が優占化された脱窒担体24と未馴養の硝化担体22とを処理槽20に投入した後、硝化担体22の馴養を行うことで、脱窒担体24中の嫌気性アンモニア酸化細菌を失活させずに、硝化担体22に硝化細菌を優占化させることができる。
【0061】
また、以下に説明するような手順で、未馴養の硝化担体22と未馴養の脱窒担体24とを、廃水処理装置内で馴養してもよい。図2は、硝化担体22及び脱窒担体24の馴養を行う廃水処理装置の一例を示す構成図である。図3は、硝化担体22及び脱窒担体24の馴養を行う廃水処理装置の他の例を示す構成図である。なお、図2及び3では、図1に示す廃水処理装置10と共通する構成要素には同一の符号を付し、ここではその説明を省略する。
【0062】
図2に示すように、廃水処理装置50は、処理槽20の後段に、脱窒担体24の馴養が行われる馴養槽42を備える点で、廃水処理装置10と異なる。
【0063】
廃水処理装置50を用いて、硝化担体22及び脱窒担体24の馴養を行うには、まず、未馴養の硝化担体22を処理槽20に投入するとともに、未馴養の脱窒担体24を馴養槽42に投入する。この後、処理槽20を好気条件で維持するとともに、馴養槽42を嫌気条件に維持することで、硝化担体22及び脱窒担体24の馴養を行う。
【0064】
このとき、センサー26(26A、26B)の測定結果に基づいて、処理槽20における溶存酸素量、アンモニア濃度及びpHと、馴養槽42における溶存酸素量、アンモニア濃度、亜硝酸濃度及びpHとを調節することが好ましい。
【0065】
また、図2に示すように、制御装置40の指示に従って、アンモニア、亜硝酸及び中和剤(例えば、炭酸水素ナトリウムや塩酸)を処理槽20及び馴養槽42に供給するタンク44(44A、44B)が設けられていることが好ましい。これにより、センサー26の測定結果に基づいて制御装置40がタンク44に指示を送ることで、処理槽20におけるアンモニア濃度及びpHと、馴養槽42におけるアンモニア濃度、亜硝酸濃度及びpHとを自動的に調節することができる。
【0066】
廃水処理装置50によれば、散気手段28が設けられた処理槽20において、好気性細菌である硝化細菌の馴養を行うとともに、処理槽20の後段に設けられた馴養槽42において、嫌気性細菌である嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養を行うことができる。
【0067】
そして、硝化担体22及び脱窒担体24を馴養した後、脱窒担体24を馴養槽42から処理槽20に移すことで、硝化細菌を優占化させた硝化担体22と、嫌気性アンモニア酸化細菌を優占化させた脱窒担体24とを処理槽20内に混在させることができる。しかし、廃水処理装置50の場合、廃水処理運転時に使用しない馴養槽42設けるため、広い設置スペースを必要とする。そこで、図3に示す廃水処理装置60を用いることが好ましい。
【0068】
廃水処理装置60は、図3に示すように、処理槽20に着脱可能に取り付けられる分離板62を備える点で、廃水処理装置10と異なる。
【0069】
廃水処理装置60を用いて、硝化担体22及び脱窒担体24の馴養を行うには、まず、分離板62により、処理槽20を第1馴養室20A及び第2馴養室20Bに分割し、未馴養の硝化担体22を第1馴養室20Aに投入するとともに、未馴養の脱窒担体24を第2馴養室20Bに投入する。この後、第1馴養室20Aを好気条件で維持するとともに、第2馴養室20Bを嫌気条件に維持することで、硝化担体22及び脱窒担体24の馴養を行う。
【0070】
このとき、図2に示す廃水処理装置50と同様に、センサー26(26A、26B)の測定結果に基づいて、第1馴養室20Aにおける溶存酸素量、アンモニア濃度及びpHと、第2馴養室20Bにおける溶存酸素量、アンモニア濃度、亜硝酸濃度及びpHとを調節することが好ましい。
【0071】
また、図3に示すように、制御装置40の指示に従って、アンモニア、亜硝酸及び中和剤(例えば、炭酸水素ナトリウムや塩酸)を処理槽20及び馴養槽42に供給するタンク44(44A、44B)が設けられていることが好ましい。これにより、センサー26の測定結果に基づいて制御装置40がタンク44に指示を送ることで、第1馴養室20Aにおけるアンモニア濃度及びpHと、第2馴養室20Bにおけるアンモニア濃度、亜硝酸濃度及びpHとを自動的に調節することができる。
【0072】
このように硝化担体22及び脱窒担体24の馴養を行った後、分離板62を取り外す。これにより、馴養済みの硝化担体22と、馴養済みの脱窒担体24とを処理槽20内に混在させることができる。
【0073】
なお、分離板62の取り付け及び取り外しは、制御装置40により、分離板62を上下方向(図3における矢印の方向)に移動させるモーター64を制御することで行うことが好ましい。
【0074】
廃水処理装置60によれば、好気条件である第1馴養室20Aにおいて、好気性細菌である硝化細菌の馴養を行うとともに、嫌気条件である第2馴養室20Bにおいて、嫌気性細菌である嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養を行うことができる。また、廃水処理運転を行う処理槽20だけで、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養を行うことができるため、廃水処理装置を小型化することができる。
【0075】
以上、本発明の一実施形態に係る廃水処理方法及び廃水処理装置について説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【0076】
例えば、上述の実施形態では、処理槽20を散気手段28により曝気攪拌する例について説明したが、処理槽20に旋回流を形成して、処理槽20内の廃水を攪拌してもよい。
【0077】
図4は、旋回流を利用して処理槽20内の廃水を攪拌する廃水処理装置の一例を示す構成図である。なお、図4では、図1に示す廃水処理装置10と共通する構成要素には同一の符号を付し、ここではその説明を省略する。
【0078】
図4に示すように、廃水処理装置70は、処理槽20を第1処理室74及び第2処理室76に分離する邪魔板72を備える点で廃水処理装置10と異なる。
【0079】
邪魔板72は、第1処理室74と第2処理室76とを連通する連通路78が処理槽20の上部及び底部に形成されるように配置される。連通路78の断面形状は特に限定されず、正方形や長方形等の多角形であっても、円形、楕円形であってもよい。また、連通路78は、処理槽20の上部及び底部に一つずつ設けてもよいし、処理槽20の上部及び底部に複数の連通路78を設けてもよい。
【0080】
また、散気手段28は、第1処理室74及び第2処理室76のいずれか一方に設けられており、散気手段28を稼動することで、連通路78を介して、廃水の旋回流を処理槽20内に形成することができる。
【0081】
これにより、第1処理室74及び第2処理室76のいずれか一方に散気手段28を設けるだけで、処理槽20内に形成される廃水の旋回流を利用して、処理槽20内の廃水に溶存酸素を供給するとともに、処理槽20内の担体を流動させることができる。したがって、廃水処理運転に必要なエネルギーを低減することができる。
【0082】
なお、図4には、平板状の邪魔板72により、処理槽20内に廃水の旋回流を形成する例を示したが、邪魔板72の形状はこれに限定されず、種々の形状であってもよい。例えば、図5に示すように、円筒状の邪魔板72を処理槽20内に配置することで形成される連通路78を介して、第1処理室74及び第2処理室のいずれか一方(図5に示す例では、第1処理室74)に設けられた散気手段28により、廃水の旋回流を処理槽20内に形成してもよい。
【0083】
また上述の実施形態では、平板状の分離板62により処理槽20を第1馴養室20A及び第2馴養室20Bに分離した状態で担体の馴養を行う例について説明したが、分離板62の形状は平板状に限られず、種々の形状を採りうる。例えば、図6に示すように、円筒状の分離板62により、処理槽20を第1馴養室20A及び第2馴養室20Bに分離した状態で、硝化担体22の馴養を第1馴養室20Aで行うとともに、脱窒担体24の馴養を第2馴養室20Bで行ってもよい。なお、図6には、円筒状の処理槽20の外側を第1馴養室20Aとし、処理槽20の内側を第2馴養室20Bとする例を示したが、処理槽20の内側を第1馴養室20Aとし、処理槽20の外側を第2馴養室20Bとしてもよいことはいうまでもない。
【実施例】
【0084】
以下、実施例により、本発明の特徴をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0085】
(実施例1)
<硝化担体22の作製>
硝化細菌を含む活性汚泥を、3mm角の立方体に成形したポリエチレングリコール系のゲルで包括固定化した。なお、このときの包括固定化担体の硝化速度は、0.5kg-N/m3-担体/day以下であった。
【0086】
この包括固定化担体0.2Lを、容積2Lの円筒形のリアクタ(培養槽)に投入した。このリアクタにアンモニア廃水(無機合成廃水)を流入させ、リアクタ内の温度を30℃に維持しながら、硝化細菌の馴養を1ヶ月行って、脱窒担体24を作製した。図7は、硝化細菌の馴養に用いたアンモニア廃水の水質を示す表である。
【0087】
硝化細菌の馴養時は、曝気攪拌により、リアクタ内の溶存酸素量(DO)を2〜4mg/Lに維持するとともに、5%炭酸水素ナトリウムの添加によりpHを7.5に維持した。また、馴養開始初期は、滞留時間(水理学的滞留時間)が24時間になるようにアンモニア廃水の流入量を調節し、その後、硝化細菌の活性の増加に応じて、滞留時間を短縮し、負荷を大きくした。
【0088】
硝化細菌の馴養開始から1ヶ月後に、DO=3mg/L、水温26℃の条件下で、上記包括固定化担体の硝化速度(=アンモニアの除去速度=亜硝酸の生成速度)を測定したところ、7.0kg-N/m3-担体/dayであった。
【0089】
また、硝化細菌の馴養開始から1〜2ヶ月の期間における平均水質は、流入廃水中のアンモニア(NH4-N)濃度が705mg/Lであり、処理水中のアンモニア(NH4-N)濃度が300mg/L、処理水中の亜硝酸(NO2-N)濃度が398mg/L、処理水中の硝酸(NO3-N)濃度が1mg/Lであった。
【0090】
<脱窒担体24の作製>
嫌気性アンモニア酸化細菌を、3mm角の立方体に成形したポリエチレングリコール系のゲルで包括固定化した。なお、このときの包括固定化担体の窒素除去速度は、2.5kg-N/m3-担体/day以下であった。
【0091】
この包括固定化担体0.2Lを、容積2Lの円筒形のリアクタ(培養槽)に投入した。また、リアクタは、内部への空気の混入を防ぐ構造であり、スターラーを備えるものを用いた。このリアクタに合成廃水を流入させ、リアクタ内の温度を30℃に維持しながら、嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養を2ヶ月行って、脱窒担体24を作製した。図8は、嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養に用いた合成廃水の水質を示す表である。
【0092】
脱窒担体の馴養時は、HCl(0.2N)の添加によりpHを7.5に維持した。また、馴養開始初期は、滞留時間(水理学的滞留時間)が12時間になるように廃水流入量を調節し、活性の増加に伴い、窒素濃度を徐々に上昇させた。
【0093】
嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養開始から2ヵ月後に、水温30℃の条件下で、脱窒速度(アンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素の除去速度の和)を測定したところ、18.0kg-N/m3-担体/dayであった。
【0094】
<硝化脱窒試験>
上記手順で作製した硝化担体22及び脱窒担体24を用いて、アンモニア廃水の廃水処理試験を行った。硝化担体22の作製に使用したのと同一のリアクタに、硝化担体22を0.2L、脱窒担体24を0.2L投入した。このリアクタに、図7に示す水質の合成廃水を流入させ、廃水処理を行った。廃水処理時は、リアクタ内の溶存酸素量を2.0〜3.0mg/Lに維持した。
【0095】
図9は、廃水処理開始から1週間〜3ヶ月の流入廃水及び処理水の平均水質を示す表である。図9から、リアクタ内のアンモニアがほぼ完全に処理されるとともに、硝化反応により生成する亜硝酸も、嫌気性アンモニア酸化反応(脱窒反応)により脱窒されることが分かった。
【0096】
(実施例2)
実施例1と同様の馴養条件で、硝化担体22及び脱窒担体24を作製した。
【0097】
得られた硝化担体22及び脱窒担体24を、実施例1と同じリアクタに種々の比率で充填した。すなわち、硝化担体22及び脱窒担体24の合計体積に対する脱窒担体24の体積率を、75%、65%、50%、40%、25%及び20%に調整した。なおいずれの場合も、硝化担体22及び脱窒担体24の合計体積が0.5Lになるようにした。
【0098】
この後、実施例1と同様の条件で、図7に示す水質の合成廃水をリアクタに流入させ、廃水処理運転を行った。廃水処理時は、リアクタ内の溶存酸素量を2.0〜3.0mg/Lに維持した。また水温は15〜20℃、20〜25℃、25〜37℃に調整し、窒素負荷はそれぞれ1.0〜1.5kg-N/m3/day、1.3〜1.8kg-N/m3/day、1.7〜2.8kg-N/m3/dayに調整した。
【0099】
図10は、廃水処理の結果を示す表である。図10において、「◎」は80%以上の窒素除去率が得られたことを示し、「○」は50%以上80%未満の窒素除去率が得られたことを示し、「△」は窒素除去性能が得られたものの、窒素除去率が50%未満であったことを示す。また、「○NH4」及び「△NH4」は、アンモニアが処理水に残留し、処理性能が低下したことを意味し、「○NO2」及び「△NO2」は、亜硝酸が処理水に残留し、処理性能が低下したことを意味する。
【0100】
図10から、硝化担体22及び脱窒担体24の合計体積に対する脱窒担体24の体積率の好ましい範囲は、水温によって異なることが分かった。具体的には、脱窒担体24の体積率は、水温が15〜20℃の場合には50〜75%が好ましく、水温が20〜25℃の場合には40〜65%が好ましく、水温が25〜37℃の場合には20〜50%が好ましいことが分かった。
【0101】
特に、水温が25〜37℃であって、脱窒担体24の体積率が25〜40%の条件では、リアクタから窒素が消失する速度として、2.1kg-N/m3/dayと極めて高い処理性能が得られた。これは、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌が、それぞれ硝化担体22及び脱窒担体24に高濃度に保持されており、この状態をリアクタ内で安定して維持することができたためであると考えられる。
【0102】
(実施例3)
以下の手順で、未馴養の硝化担体22と馴養済みの脱窒担体24とを用いて、リアクタの立ち上げ試験を行った。
【0103】
硝化細菌を含む活性汚泥を、3mm角の立方体に成形したポリエチレングリコール系のゲルで包括固定化した。なお、このときの包括固定化担体の硝化速度は、0.5kg-N/m3-担体/day以下であった。また、馴養済みの脱窒担体24として、実施例1と同様の条件で馴養を行った脱窒担体を用いた。
【0104】
実施例1で用いたリアクタ(容積2L)に、上記未馴養の硝化担体を0.3L、馴養済みの脱窒担体を0.2L投入した。このリアクタに図7に示す水質のアンモニア廃水を流入させ、馴養を行った。なお、リアクタ内の水温を30℃に調整するとともに、pHが7.5になるように炭酸水素ナトリウム及び塩酸を適宜滴下した。
【0105】
その結果、馴養開始から1ヵ月後には、リアクタ内の窒素は80%以上処理され、リアクタ内で硝化担体による硝化反応と、脱窒担体による脱窒反応とが並行して行われていることが確認された。
【0106】
このことから、未馴養の硝化担体及び馴養済みの脱窒担体を処理槽に投入した後、処理槽内を好気条件に維持することで、脱窒担体中の嫌気性アンモニア酸化細菌を失活させずに、硝化担体の馴養を行うことができることが分かった。
【0107】
なお、比較例として、馴養済みの硝化担体及び未馴養の脱窒担体を処理槽に投入した後、処理槽を好気条件下に維持して、脱窒担体の馴養を行った。しかしながら、馴養開始から5ヶ月を経過しても、原廃水のアンモニアが亜硝酸に酸化されるのみであり、脱窒反応を確認することはできなかった。
【0108】
(実施例4)
実施例1の硝化脱窒試験において、処理槽内の溶存酸素量と窒素除去率について検討を行った。その結果を図11に示す。図11から、溶存酸素量(DO)が1〜4mg/Lの場合に高い窒素除去率が得られることが分かった。特に、溶存酸素量が1.5〜3.0mg/Lの場合には、非常に高い窒素除去率が得られた。
【0109】
一方、溶存酸素量が1mg/L未満の場合、好気性細菌である硝化細菌の活性が低下して、硝化反応が律速になり、処理水中にアンモニアが残留し、窒素除去率が低下した。また溶存酸素量が4mg/Lを超える場合には、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性が低下し、脱窒反応が律速になり、処理水中に亜硝酸が残留し、窒素除去率が低下した。
【0110】
(実施例5)
以下の手順で、図3に示す廃水処理装置60を用いて、処理槽20内で硝化担体22及び脱窒担体24の馴養を行った後、廃水処理実験を行った。
【0111】
第1馴養室20A及び第2馴養室20Bの容積がそれぞれ10Lになるように、直方体のリアクタからなる処理槽20に分離板62を取り付けた。この後、第1馴養室20A及び第2馴養室20Bに、それぞれ、未馴養の硝化担体(実施例1と同じもの)2L、未馴養の脱窒担体(実施例1と同じもの)1Lを投入した。
【0112】
この処理槽20に、図7に示す水質のアンモニア廃水を流入させ、硝化担体及び脱窒担体の馴養を行った。馴養時は、第1馴養室20Aの溶存酸素量を2〜4mg/Lに維持するとともに、第1馴養室20AのpHが7.5になるように、5%炭酸水素ナトリウムを適宜添加した。また、第2馴養室20BのpHが7.5になるように、HCl(0.2N)を適宜添加した。なお、馴養は、30℃の恒温室内で行った。
【0113】
硝化担体及び脱窒担体の馴養は、具体的には次の方法で行った。
【0114】
まず、第1馴養室20Aの立ち上げを行った。すなわち、第1馴養室20Aにおいて、硝化担体の馴養を行った。次に、第1馴養室20Aにおける硝化活性が確認された後、第1馴養室20Aの処理水を第2馴養室20Bに流入させた。嫌気性アンモニア酸化細菌の活性の上昇にともない、第2馴養室20Bへの流入速度を増加させ、徐々に立ち上げを行った。
【0115】
これにより、馴養開始から6ヵ月後には、第1馴養室20Aにおいて1.2kg-N/m3/dayの硝化速度が確認され、第2馴養室20Bにおいて3.8kg-N/m3/dayの処理速度が確認された。
【0116】
そして、馴養開始から10ヶ月後に、分離板62を取り外し、第1馴養室20A及び第2馴養室20Bを連結した。また同時に、第2馴養室20Bのスターラー攪拌を停止し、曝気攪拌を開始した。
【0117】
その後、2ヶ月間にわたって廃水処理運転を継続した。図12は、廃水処理運転を行った2ヶ月間の平均水質を示す表である。図12から、アンモニア性窒素がほとんど除去されていた。また、硝化細菌による硝化率を特にコントロールしなかったが、安定した処理性能が得られた。
【0118】
また、比較例として、馴養後に分離板62を取り外さずに、第1馴養室20A(硝化槽)と第2馴養室20B(脱窒槽)とが分離した状態のまま、廃水処理運転を行った。この場合、図12に示すように、処理水にアンモニアが多く残留する傾向があった。これは、第1馴養室20A(硝化槽)における硝化率を57%(脱窒反応式の量論比から導かれる目標値)に調節することが難しく、第2馴養室20B(脱窒槽)に流入するアンモニアと亜硝酸とのバランスが崩れたためであると考えられる。
【0119】
なお、図12に示すように、本発明及び実施例において硝酸の生成が確認され、実施例のほうが比較例よりも、硝酸の生成量が若干多かった。この硝酸は、嫌気性アンモニア酸化細菌による脱窒反応の際に発生したものである。したがって、図12から、実施例のほうが比較例よりも、嫌気性アンモニア酸化細菌による脱窒反応がより多く行われたことが分かった。
【0120】
また、分離板62を用いずに、未馴養の硝化担体と未馴養の脱窒担体とを処理槽20に投入して、好気条件下で馴養を行ったが、原廃水のアンモニアが亜硝酸に酸化されるのみであり、5ヶ月経過した後も、脱窒反応が確認されることはなかった。
【符号の説明】
【0121】
10…廃水処理装置、12…原水タンク、14…ポンプ、20…処理槽、20A…第1馴養室、20B…第2馴養室、22…硝化担体、24…脱窒担体、26…センサー、28…散気手段、30…ブロア、40…制御装置、42…馴養槽、44…タンク、50…廃水処理装置、60…廃水処理装置、62…分離板、64…モーター、70…廃水処理装置、72…邪魔板、74…第1処理室、76…第2処理室、78…連通路
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水処理方法及び廃水処理装置に係り、特に、アンモニア性窒素を含む廃水の処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アンモニア性窒素を含む廃水の処理方法として、嫌気性アンモニア酸化細菌による脱窒処理を伴う方法(嫌気性アンモニア酸化法)が注目を集めている。この方法では、硝化槽において、廃水中のアンモニア性窒素を硝化細菌で亜硝酸に硝化した後、脱窒槽において、当該亜硝酸と、廃水中のアンモニア性窒素とを嫌気性アンモニア酸化細菌により同時脱窒する。この方法によれば、脱窒反応時に、外部からの有機物の供給を必要としないため、効率的な廃水処理を行うことができる。
【0003】
嫌気性アンモニア酸化法における同時脱窒は、下記の反応式に従って行われる。したがって、廃水中のアンモニア性窒素を確実に分解除去するためには、下記反応式の量論比に基づいて、脱窒槽中のアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素との比率を管理する必要がある。このため、硝化槽における硝化率を厳密にコントロールする必要があった。
【0004】
1.00NH4+1.32NO2+0.066HCO3+0.13H+
→1.02N2+0.26NO3+0.066CH2O0.5N0.15+2.03H2O
そこで、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌が共存する処理槽において、好気条件下で、硝化反応及び脱窒反応の両方を行う方法(いわゆるキャノン法)が提案されている(例えば、非特許文献1)。この方法では、同一の処理槽内に共存する硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌が、互いに均衡を保とうとするため、硝化率を厳密にコントロールしなくても、廃水中のアンモニア性窒素を確実に分解除去することができる。
【0005】
キャノン法では、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌を同一の処理槽に共存させる必要がある。そこで、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌の両方を同一の生物膜に共存させ、当該生物膜により廃水処理を行う方法が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌の両方が固定化された担体(スポンジ)を用いて、廃水処理を行うことが記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、嫌気性アンモニア酸化細菌を内部に包括固定化するとともに、表面に硝化細菌を付着させた二重構造の生物膜からなる担体(二重構造担体)を用いて、廃水処理を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−293494号公報
【特許文献2】特開2004−230225号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Third, K.A., Sliekers, A.O., Kuenen, J.G., Jetten, M.S.M., 2001 The CANNON system (completely autotrophic nitrogen-removal over nitrite) under ammonium limitation: interaction and competition between three groups of bacteria. Syst. Appl. Microbiol. 24(4), 588-596.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1及び2に記載された方法では、硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌との菌量の比率をコントロールすることが難しく、硝化反応及び脱窒反応のいずれか一方が律速となってしまい、廃水処理を迅速に行うことができない場合がある。
【0011】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、同一の処理槽に共存する硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌により、廃水処理を迅速かつ安定して行うことができる廃水処理方法及び廃水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る廃水処理方法は、アンモニア性窒素を含む廃水を処理する方法であって、硝化細菌を優占化させた硝化担体と、嫌気性アンモニア酸化細菌を優占化させた脱窒担体とが混在する処理槽において、前記硝化担体の前記硝化細菌により、前記廃水に含まれる前記アンモニア性窒素を亜硝酸に酸化する工程と、前記処理槽において、前記脱窒担体の前記嫌気性アンモニア酸化細菌により、前記廃水中の前記アンモニア性窒素を水素供与体として、前記アンモニア性窒素の酸化により生成した前記亜硝酸を脱窒する工程とを含むことを特徴とする。
【0013】
従来、同一の処理槽内で硝化反応及び脱窒反応を行う場合、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌が共存する生物膜を用いる必要があると考えられていた。このような状況において、本願発明者らは、鋭意検討した結果、硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌とを別々の担体に固定化して、これら2種類の担体を混在させた処理槽において、硝化反応及び脱窒反応を行うことが可能であることを発見した。上記廃水処理方法は、本願発明者らの上述の知見に基づいてなされたものである。
【0014】
上記廃水処理方法では、硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌とを互いに異なる担体(硝化担体及び脱窒担体)に固定化することで、硝化担体と脱窒担体との体積比(投入量比)の調節により、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌の菌量比を容易にコントロールすることができる。したがって、硝化反応及び脱窒反応のいずれか一方が律速となることを防止して、廃水処理を迅速に行うことができる。
【0015】
上記廃水処理方法は、前記処理槽に前記脱窒担体を投入する工程と、前記脱窒担体が投入された前記処理槽に、前記硝化細菌を含む担体を投入する工程と、前記脱窒担体が得られるように、前記処理槽内の前記担体に含まれる前記硝化細菌を馴養する工程とを含んでもよい。
【0016】
脱窒担体中に優占化させた嫌気性アンモニア酸化細菌は、溶存酸素に対してある程度の耐性を有する。したがって、嫌気性アンモニア酸化細菌を予め優占化させた脱窒担体を処理槽に投入した後、当該処理槽において好気性細菌である硝化細菌を馴養することで、脱窒担体中の嫌気性アンモニア酸化細菌を失活させずに、硝化担体の馴養を行うことができる。
【0017】
上記廃水処理方法において、前記処理槽が第1馴養室及び第2馴養室に分離されるように、前記処理槽に分離板を取り付ける工程と、前記第1馴養室に前記硝化細菌を含む第1担体を投入する工程と、前記第2馴養室に前記嫌気性アンモニア酸化細菌を含む第2担体を投入する工程と、前記硝化担体が得られるように、前記第1馴養室内の前記第1担体に含まれる前記硝化細菌を馴養する工程と、前記脱窒担体が得られるように、前記第2馴養室内の前記第2担体に含まれる前記嫌気性アンモニア酸化細菌を馴養する工程と、前記硝化細菌及び前記嫌気性アンモニア酸化細菌を馴養した後、前記分離板を取り外す工程とを含んでもよい。
【0018】
このように、好気性細菌である硝化細菌と、嫌気性細菌である嫌気性アンモニア酸化細菌とを、それぞれ第1馴養室及び第2馴養室において馴養することで、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養を確実に行うことができる。また、廃水処理運転に用いる処理槽だけで、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養を行うことができるため、省スペース化を図ることができる。
【0019】
上記廃水処理方法において、前記硝化担体及び前記脱窒担体の少なくとも一方は、包括固定化担体であるが好ましい。
【0020】
担体として包括固定化担体を用いれば、付着固定化担体の場合に起こりうる生物膜の剥離が生じないため、菌量を確実にコントロールすることができる。また、包括固定化担体であれば、馴養の際、汚泥の返送が不要であるため、比較的容易に馴養を行うことができる。
【0021】
上記廃水処理方法では、前記亜硝酸に酸化する工程と、前記亜硝酸を脱窒する工程とにおいて、前記処理槽における溶存酸素濃度を、1mg/L以上4mg/L以下に維持することが好ましい。
【0022】
溶存酸素濃度(DO)を上記範囲に維持することで、廃水処理を安定して迅速に行うことができる。
【0023】
上記廃水処理方法において、前記アンモニア性窒素を前記亜硝酸に酸化する硝化反応速度が、1.1kg-N・m−3・day−1以上であり、前記亜硝酸を脱窒する脱窒反応速度が、2.0kg-N・m−3・day−1以上であることが好ましい。
【0024】
本発明に係る廃水処理装置は、硝化細菌を優占化させた硝化担体と、嫌気性アンモニア酸化細菌を優占化させた脱窒担体とが混在する処理槽を備えることを特徴とする。
【0025】
上記廃水処理装置によれば、硝化担体と脱窒担体との体積比(投入量比)により、硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌との菌量の比率を容易にコントロールすることができる。したがって、硝化反応及び脱窒反応のいずれか一方が律速となることを防止して、廃水処理を迅速に行うことができる。
【0026】
上記廃水処理装置は、前記処理槽が、前記硝化担体の馴養が行われる第1馴養室と、前記脱窒担体の馴養が行われる第2馴養室とに分離されるように、前記処理槽に着脱可能に取り付けられる分離板をさらに備えることが好ましい。
【0027】
これにより、分離板により処理槽を第1馴養室及び第2馴養室に分離した状態で、好気性細菌である硝化細菌と、嫌気性細菌である嫌気性アンモニア酸化細菌とを、それぞれ第1馴養室及び第2馴養室において馴養することができる。また、廃水処理運転に用いる処理槽だけで、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養を行うことができるため、廃水処理装置を小型化することができる。
【0028】
上記廃水処理装置は、前記処理槽を第1処理室及び第2処理室に分離するとともに、前記第1処理室及び前記第2処理室とを連通する連通路が前記処理槽の上部及び底部に形成されるように配置される邪魔板と、前記第1処理室及び前記第2処理室のいずれか一方に設けられ、前記連通路を介して、前記廃水の旋回流が前記処理槽内に形成されるように、前記廃水を曝気攪拌する散気手段とをさらに備えることが好ましい。
【0029】
これにより、前記第1処理室及び前記第2処理室のいずれか一方に散気手段を設けるだけで、処理槽内に形成される廃水の旋回流を利用して、処理槽内の廃水に溶存酸素を供給するとともに、処理槽内の担体を流動させることができる。したがって、廃水処理運転に必要なエネルギーを低減することができる。
【0030】
上記廃水処理装置において、前記硝化担体及び前記脱窒担体の少なくとも一方は、包括固定化担体であることが好ましい。
【0031】
担体として包括固定化担体を用いれば、付着固定担体の場合に起こりうる生物膜の剥離が生じないため、菌量を確実にコントロールすることができる。また、包括固定化担体であれば、馴養の際、汚泥の返送が不要であるため、比較的容易に馴養を行うことができる。
【0032】
上記廃水処理装置は、前記処理槽内の前記廃水を曝気攪拌する散気手段と、前記処理槽における溶存酸素量が1mg/L以上4mg/L以下になるように、前記散気手段を制御する制御手段とをさらに備えることが好ましい。
【0033】
溶存酸素濃度(DO)を上記範囲に維持することで、廃水処理を安定して迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、硝化細菌を優占化させた硝化担体と、嫌気性アンモニア酸化細菌を優占化させた脱窒担体とが混在する処理槽を用いて廃水処理を行うため、処理槽内の硝化担体と脱窒担体との体積比(投入量比)により、硝化反応及び脱窒反応のいずれか一方が律速となることを防止して、廃水処理を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る廃水処理装置の一例を示す構成図である。
【図2】硝化担体及び脱窒担体の馴養を行う廃水処理装置の一例を示す構成図である。
【図3】硝化担体及び脱窒担体の馴養を行う廃水処理装置の他の例を示す構成図である。
【図4】旋回流を利用して処理槽内の廃水を攪拌する廃水処理装置の一例を示す構成図である。
【図5】旋回流を利用して処理槽内の廃水を攪拌する廃水処理装置の他の例を示す構成図である。
【図6】硝化担体及び脱窒担体の馴養を行う廃水処理装置の他の例を示す構成図である。
【図7】硝化担体の馴養に用いたアンモニア廃水の水質を示す表である。
【図8】脱窒担体の馴養に用いた合成廃水の水質を示す表である。
【図9】実施例1における廃水処理の結果を示す表である。
【図10】実施例2における廃水処理の結果を示す表である。
【図11】実施例4における、溶存酸素量と窒素除去率との関係を示すグラフである。
【図12】実施例5における廃水処理の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。
【0037】
図1は、本実施形態に係る廃水処理装置の一例を示す構成図である。同図に示すように、廃水処理装置10は、主として、処理すべき廃水(原廃水)が貯留される原水タンク12と、原水タンク12から送られる廃水を処理する処理槽20と、廃水処理装置10の各部を制御する制御装置40とにより構成される。
【0038】
原水タンク12に貯留される廃水は、少なくともアンモニア性窒素を含有する廃水であり、アンモニア性窒素の他に、窒素、リン、炭素等の栄養塩が含まれていてもよい。原水タンク12は、処理槽20と連結されており、ポンプ14により、原水タンク12から処理槽20に廃水を供給できるようになっている。
【0039】
従来、同一の処理槽内で硝化反応及び脱窒反応を行う場合、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌が共存する生物膜を用いる必要があると考えられていた。このような状況において、本願発明者らは、鋭意検討した結果、硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌とを別々の担体に固定化して、これら2種類の担体を混在させた処理槽において、硝化反応及び脱窒反応を行うことが可能であることを発見した。本実施形態に係る廃水処理装置10は、本願発明者らの上述の知見に基づいており、処理槽20には、硝化細菌(アンモニア酸化細菌)が優占的に集積された硝化担体22と、嫌気性アンモニア酸化細菌が優占的に集積された脱窒担体24とが混在している。すなわち、硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌とは、互いに異なる担体(硝化担体22及び脱窒担体24)に固定化されている。
【0040】
このように硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌とを互いに異なる担体に固定化することで、硝化担体22と脱窒担体24との体積比(投入量比)の調節により、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌の菌量比を容易にコントロールすることができる。したがって、硝化反応及び脱窒反応のいずれか一方が律速となることを防止して、廃水処理を迅速に行うことができる。
【0041】
また、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌の一方を内部に包括固定化するとともに、他方を担体表面に付着させた二重構造担体(例えば、特許文献2に記載された担体)の場合には、担体内層への原料物質の拡散が律速になり、十分な廃水処理速度が得られないことがある。これは、一方の細菌が生息する外層が厚いと、反応原料物質が、他方の細菌が生息する内層に迅速に拡散することができないためである。これに対し、本実施形態のように、硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌とを互いに異なる担体(硝化担体22と脱窒担体24)に固定化する場合、反応原料物質の拡散律速に起因する廃水処理速度の低下は起こらない。
【0042】
また、二重構造担体の場合には、担体の外層が剥がれ落ちて、外層に生息する細菌が処理槽から流出してしまい、硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌との菌量のバランスが崩れて、廃水処理が不安定になってしまうことがある。これに対し、本実施形態のように、硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌とを互いに異なる担体(硝化担体22と脱窒担体24)に固定化する場合、硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌との菌量のバランスを安定して維持することができる。
【0043】
処理槽20では、硝化担体22に集積された硝化細菌と、脱窒担体24に集積された嫌気性アンモニア酸化細菌とが共存している。これにより、処理槽20において、硝化担体22による硝化反応及び脱窒担体24による脱窒反応の両方を行い、廃水中のアンモニア性窒素を窒素ガスに分解することができる。ここで、硝化反応とは、廃水中のアンモニア性窒素を硝化細菌により亜硝酸に酸化する反応をいい、脱窒反応とは、嫌気性アンモニア酸化細菌により、廃水中のアンモニア性窒素を水素供与体として、硝化反応により生成した亜硝酸を脱窒する反応をいう。
【0044】
硝化担体22は、硝化細菌が固定化されていれば特に限定されず、固定化担体であってもよいし、接触ろ材であってもよい。硝化担体22に固定化される硝化細菌は、活性汚泥等の微生物から分離したものを用いてもよいし、硝化細菌を優先繁殖させた微生物群を含む活性汚泥を用いてもよい。
【0045】
また、固定化担体タイプの硝化担体22としては、硝化細菌を担体内部に包括固定化した包括固定化担体を用いることが好ましい。包括固定化担体を用いれば、付着固定担体の場合に起こりうる生物膜の剥離が生じないため、菌量を確実にコントロールすることができる。また、包括固定化担体であれば、馴養の際、汚泥の返送が不要であるため、比較的容易に馴養を行うことができる。
【0046】
硝化担体22の固定化材料は、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、アルギン酸、ポリエチレングリコール等のゲルや、セルロース、ポリエステル、ポリプロピレン、塩化ビニル等のプラスチックを用いることができる。硝化担体22の形状は、例えば、球形、円筒形、立方形であってもよく、硝化担体22は、多孔状、ハニカム状、スポンジ状に成形されていてもよい。また、硝化担体22として、微生物の自己造粒を利用したグラニュール担体を使用してもよい。なお、硝化担体22として使用可能な接触ろ材として、塩化ビニル製やポリエチレン製のものを挙げることができる。
【0047】
脱窒担体24は、嫌気性アンモニア酸化細菌が固定化されていれば特に限定されず、固定化担体であってもよいし、接触ろ材であってもよい。
【0048】
また、脱窒担体24に用いる固定化担体は、嫌気性アンモニア酸化細菌を担体内部に包括固定化した包括固定化担体であってもよいし、嫌気性アンモニア酸化細菌を担体表面に付着固定した付着固定化担体であってもよい。中でも、脱窒担体24として、包括固定化担体を使用することが好ましい。包括固定化担体を用いれば、付着固定担体の場合に起こりうる生物膜の剥離が生じないため、菌量を確実にコントロールすることができる。また、包括固定担体は、菌を確実に処理槽内に維持することができるため、培養により得られる貴重な菌である嫌気性アンモニア酸化細菌の固定担体として適している。さらに、包括固定化担体であれば、馴養の際、汚泥の返送が不要であるため、比較的容易に馴養を行うことができる。
【0049】
脱窒担体24の固定化材料は、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、アルギン酸、ポリエチレングリコール等のゲルや、セルロース、ポリエステル、ポリプロピレン、塩化ビニル等のプラスチックを用いることができる。脱窒担体24の形状は、例えば、球形、円筒形、立方形であってもよく、脱窒担体24は、多孔状、ハニカム状、スポンジ状に成形されていてもよい。また、脱窒担体24として、微生物の自己造粒を利用したグラニュール担体を使用してもよい。なお、脱窒担体24として使用可能な接触ろ材として、塩化ビニル製やポリエチレン製のものを挙げることができる。
【0050】
硝化担体22及び脱窒担体24の合計体積は、処理槽20内の廃水の体積の10〜40%であることが好ましく、15〜25%であることがより好ましい。また、処理槽20における硝化担体22及び脱窒担体24の合計体積に対する脱窒担体24の体積率Xは、処理槽20内の水温に応じて調節されることが好ましい。特に、脱窒担体24の体積率Xは、水温が15〜20℃の場合には50〜75%に、水温が20〜25℃の場合には40〜65%に、水温が25〜37℃の場合には20〜50%に調節されることが好ましい。
【0051】
また、図1に示すように、処理槽20には、処理槽20内の廃水の水質を測定するセンサー26が設けられている。センサー26は、例えば、アンモニア濃度、亜硝酸濃度、硝酸濃度、溶存酸素量、pHなどを測定可能な構成になっている。センサー26の測定結果は、制御装置40に送られ、この測定結果に基づいて、廃水処理装置10の各部が制御される。
【0052】
また、処理槽20には、散気手段28が設けられており、この散気手段28を介して、ブロア30から空気が供給されるようになっている。これにより、処理槽20内の廃水を曝気攪拌するとともに、廃水に溶存酸素を供給することができる。
【0053】
ブロア30は、制御装置40により、処理槽20内の廃水の溶存酸素量が1.0mg/L以上4.0mg/L以下(より好ましくは、1.5mg/L以上3.0mg/L以下)になるように制御されることが好ましい。溶存酸素量が高すぎると、嫌気性細菌である嫌気性アンモニア酸化細菌の活性が低下する一方、溶存酸素量が低すぎると、好気性細菌である硝化細菌の活性が低下する。処理槽20内の廃水の溶存酸素量を上記範囲に維持することで、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌の活性を維持して、廃水処理を迅速に行うことができる。
【0054】
処理槽20における亜硝酸濃度は、1〜280mg/Lに維持されることが好ましく、2〜100mg/Lに維持されることがより好ましい。また、処理槽20におけるアンモニア濃度は、1〜100mg/Lに維持されることが好ましく、1〜20mg/Lに維持されることがより好ましい。
【0055】
処理槽20における亜硝酸濃度及びアンモニア濃度は、制御装置40がポンプ14を制御して、廃水の処理槽20における滞留時間(水理学的滞留時間)を変更することで、調節することができる。
【0056】
次に、硝化細菌を優占化させた硝化担体22と、嫌気性アンモニア酸化細菌を優占化させた脱窒担体24とを処理槽20内に混在させる方法について説明する。
【0057】
硝化細菌を優占化させた硝化担体22は、馴養された硝化細菌が固定化された担体である。例えば、硝化担体22は、単位体積あたりのアンモニア性窒素の処理速度が4kg-N/m3-担体/day以上になるように、硝化細菌の馴養が行われている。なお、特に明記しない限り、「硝化担体22」は、馴養済みの硝化担体22を指す。一方、未馴養の硝化担体22とは、単位体積あたりのアンモニア性窒素の処理速度が0.5kg-N/m3-担体/day以下のものを指す。
【0058】
嫌気性アンモニア酸化細菌を優占化させた脱窒担体24は、馴養された嫌気性アンモニア酸化細菌が固定化された担体である。例えば、脱窒担体24は、単位体積あたりのアンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素の処理速度が5kg-N/m3-担体/day以上になるように、嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養が行われている。なお、特に明記しない限り、「脱窒担体24」は、馴養済みの脱窒担体24を指す。一方、未馴養の脱窒担体24とは、アンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素の処理速度が2.5kg-N/m3-担体/day以下のものを指す。
【0059】
処理槽20内に混在させる硝化担体22及び脱窒担体24は、馴養済みの硝化担体22及び馴養済みの脱窒担体24を処理槽20に投入してもよいし、硝化担体22及び脱窒担体24のいずれか一方を廃水処理装置10内で馴養してもよい。
【0060】
例えば、未馴養の硝化担体22と馴養済みの脱窒担体24とを処理槽20に投入した後、処理槽20内を好気条件に維持することで、硝化担体22の馴養を行ってもよい。馴養済みの脱窒担体24に含まれる嫌気性アンモニア酸化細菌は、溶存酸素に対してある程度の耐性を有する。したがって、嫌気性アンモニア酸化細菌が優占化された脱窒担体24と未馴養の硝化担体22とを処理槽20に投入した後、硝化担体22の馴養を行うことで、脱窒担体24中の嫌気性アンモニア酸化細菌を失活させずに、硝化担体22に硝化細菌を優占化させることができる。
【0061】
また、以下に説明するような手順で、未馴養の硝化担体22と未馴養の脱窒担体24とを、廃水処理装置内で馴養してもよい。図2は、硝化担体22及び脱窒担体24の馴養を行う廃水処理装置の一例を示す構成図である。図3は、硝化担体22及び脱窒担体24の馴養を行う廃水処理装置の他の例を示す構成図である。なお、図2及び3では、図1に示す廃水処理装置10と共通する構成要素には同一の符号を付し、ここではその説明を省略する。
【0062】
図2に示すように、廃水処理装置50は、処理槽20の後段に、脱窒担体24の馴養が行われる馴養槽42を備える点で、廃水処理装置10と異なる。
【0063】
廃水処理装置50を用いて、硝化担体22及び脱窒担体24の馴養を行うには、まず、未馴養の硝化担体22を処理槽20に投入するとともに、未馴養の脱窒担体24を馴養槽42に投入する。この後、処理槽20を好気条件で維持するとともに、馴養槽42を嫌気条件に維持することで、硝化担体22及び脱窒担体24の馴養を行う。
【0064】
このとき、センサー26(26A、26B)の測定結果に基づいて、処理槽20における溶存酸素量、アンモニア濃度及びpHと、馴養槽42における溶存酸素量、アンモニア濃度、亜硝酸濃度及びpHとを調節することが好ましい。
【0065】
また、図2に示すように、制御装置40の指示に従って、アンモニア、亜硝酸及び中和剤(例えば、炭酸水素ナトリウムや塩酸)を処理槽20及び馴養槽42に供給するタンク44(44A、44B)が設けられていることが好ましい。これにより、センサー26の測定結果に基づいて制御装置40がタンク44に指示を送ることで、処理槽20におけるアンモニア濃度及びpHと、馴養槽42におけるアンモニア濃度、亜硝酸濃度及びpHとを自動的に調節することができる。
【0066】
廃水処理装置50によれば、散気手段28が設けられた処理槽20において、好気性細菌である硝化細菌の馴養を行うとともに、処理槽20の後段に設けられた馴養槽42において、嫌気性細菌である嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養を行うことができる。
【0067】
そして、硝化担体22及び脱窒担体24を馴養した後、脱窒担体24を馴養槽42から処理槽20に移すことで、硝化細菌を優占化させた硝化担体22と、嫌気性アンモニア酸化細菌を優占化させた脱窒担体24とを処理槽20内に混在させることができる。しかし、廃水処理装置50の場合、廃水処理運転時に使用しない馴養槽42設けるため、広い設置スペースを必要とする。そこで、図3に示す廃水処理装置60を用いることが好ましい。
【0068】
廃水処理装置60は、図3に示すように、処理槽20に着脱可能に取り付けられる分離板62を備える点で、廃水処理装置10と異なる。
【0069】
廃水処理装置60を用いて、硝化担体22及び脱窒担体24の馴養を行うには、まず、分離板62により、処理槽20を第1馴養室20A及び第2馴養室20Bに分割し、未馴養の硝化担体22を第1馴養室20Aに投入するとともに、未馴養の脱窒担体24を第2馴養室20Bに投入する。この後、第1馴養室20Aを好気条件で維持するとともに、第2馴養室20Bを嫌気条件に維持することで、硝化担体22及び脱窒担体24の馴養を行う。
【0070】
このとき、図2に示す廃水処理装置50と同様に、センサー26(26A、26B)の測定結果に基づいて、第1馴養室20Aにおける溶存酸素量、アンモニア濃度及びpHと、第2馴養室20Bにおける溶存酸素量、アンモニア濃度、亜硝酸濃度及びpHとを調節することが好ましい。
【0071】
また、図3に示すように、制御装置40の指示に従って、アンモニア、亜硝酸及び中和剤(例えば、炭酸水素ナトリウムや塩酸)を処理槽20及び馴養槽42に供給するタンク44(44A、44B)が設けられていることが好ましい。これにより、センサー26の測定結果に基づいて制御装置40がタンク44に指示を送ることで、第1馴養室20Aにおけるアンモニア濃度及びpHと、第2馴養室20Bにおけるアンモニア濃度、亜硝酸濃度及びpHとを自動的に調節することができる。
【0072】
このように硝化担体22及び脱窒担体24の馴養を行った後、分離板62を取り外す。これにより、馴養済みの硝化担体22と、馴養済みの脱窒担体24とを処理槽20内に混在させることができる。
【0073】
なお、分離板62の取り付け及び取り外しは、制御装置40により、分離板62を上下方向(図3における矢印の方向)に移動させるモーター64を制御することで行うことが好ましい。
【0074】
廃水処理装置60によれば、好気条件である第1馴養室20Aにおいて、好気性細菌である硝化細菌の馴養を行うとともに、嫌気条件である第2馴養室20Bにおいて、嫌気性細菌である嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養を行うことができる。また、廃水処理運転を行う処理槽20だけで、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養を行うことができるため、廃水処理装置を小型化することができる。
【0075】
以上、本発明の一実施形態に係る廃水処理方法及び廃水処理装置について説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【0076】
例えば、上述の実施形態では、処理槽20を散気手段28により曝気攪拌する例について説明したが、処理槽20に旋回流を形成して、処理槽20内の廃水を攪拌してもよい。
【0077】
図4は、旋回流を利用して処理槽20内の廃水を攪拌する廃水処理装置の一例を示す構成図である。なお、図4では、図1に示す廃水処理装置10と共通する構成要素には同一の符号を付し、ここではその説明を省略する。
【0078】
図4に示すように、廃水処理装置70は、処理槽20を第1処理室74及び第2処理室76に分離する邪魔板72を備える点で廃水処理装置10と異なる。
【0079】
邪魔板72は、第1処理室74と第2処理室76とを連通する連通路78が処理槽20の上部及び底部に形成されるように配置される。連通路78の断面形状は特に限定されず、正方形や長方形等の多角形であっても、円形、楕円形であってもよい。また、連通路78は、処理槽20の上部及び底部に一つずつ設けてもよいし、処理槽20の上部及び底部に複数の連通路78を設けてもよい。
【0080】
また、散気手段28は、第1処理室74及び第2処理室76のいずれか一方に設けられており、散気手段28を稼動することで、連通路78を介して、廃水の旋回流を処理槽20内に形成することができる。
【0081】
これにより、第1処理室74及び第2処理室76のいずれか一方に散気手段28を設けるだけで、処理槽20内に形成される廃水の旋回流を利用して、処理槽20内の廃水に溶存酸素を供給するとともに、処理槽20内の担体を流動させることができる。したがって、廃水処理運転に必要なエネルギーを低減することができる。
【0082】
なお、図4には、平板状の邪魔板72により、処理槽20内に廃水の旋回流を形成する例を示したが、邪魔板72の形状はこれに限定されず、種々の形状であってもよい。例えば、図5に示すように、円筒状の邪魔板72を処理槽20内に配置することで形成される連通路78を介して、第1処理室74及び第2処理室のいずれか一方(図5に示す例では、第1処理室74)に設けられた散気手段28により、廃水の旋回流を処理槽20内に形成してもよい。
【0083】
また上述の実施形態では、平板状の分離板62により処理槽20を第1馴養室20A及び第2馴養室20Bに分離した状態で担体の馴養を行う例について説明したが、分離板62の形状は平板状に限られず、種々の形状を採りうる。例えば、図6に示すように、円筒状の分離板62により、処理槽20を第1馴養室20A及び第2馴養室20Bに分離した状態で、硝化担体22の馴養を第1馴養室20Aで行うとともに、脱窒担体24の馴養を第2馴養室20Bで行ってもよい。なお、図6には、円筒状の処理槽20の外側を第1馴養室20Aとし、処理槽20の内側を第2馴養室20Bとする例を示したが、処理槽20の内側を第1馴養室20Aとし、処理槽20の外側を第2馴養室20Bとしてもよいことはいうまでもない。
【実施例】
【0084】
以下、実施例により、本発明の特徴をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0085】
(実施例1)
<硝化担体22の作製>
硝化細菌を含む活性汚泥を、3mm角の立方体に成形したポリエチレングリコール系のゲルで包括固定化した。なお、このときの包括固定化担体の硝化速度は、0.5kg-N/m3-担体/day以下であった。
【0086】
この包括固定化担体0.2Lを、容積2Lの円筒形のリアクタ(培養槽)に投入した。このリアクタにアンモニア廃水(無機合成廃水)を流入させ、リアクタ内の温度を30℃に維持しながら、硝化細菌の馴養を1ヶ月行って、脱窒担体24を作製した。図7は、硝化細菌の馴養に用いたアンモニア廃水の水質を示す表である。
【0087】
硝化細菌の馴養時は、曝気攪拌により、リアクタ内の溶存酸素量(DO)を2〜4mg/Lに維持するとともに、5%炭酸水素ナトリウムの添加によりpHを7.5に維持した。また、馴養開始初期は、滞留時間(水理学的滞留時間)が24時間になるようにアンモニア廃水の流入量を調節し、その後、硝化細菌の活性の増加に応じて、滞留時間を短縮し、負荷を大きくした。
【0088】
硝化細菌の馴養開始から1ヶ月後に、DO=3mg/L、水温26℃の条件下で、上記包括固定化担体の硝化速度(=アンモニアの除去速度=亜硝酸の生成速度)を測定したところ、7.0kg-N/m3-担体/dayであった。
【0089】
また、硝化細菌の馴養開始から1〜2ヶ月の期間における平均水質は、流入廃水中のアンモニア(NH4-N)濃度が705mg/Lであり、処理水中のアンモニア(NH4-N)濃度が300mg/L、処理水中の亜硝酸(NO2-N)濃度が398mg/L、処理水中の硝酸(NO3-N)濃度が1mg/Lであった。
【0090】
<脱窒担体24の作製>
嫌気性アンモニア酸化細菌を、3mm角の立方体に成形したポリエチレングリコール系のゲルで包括固定化した。なお、このときの包括固定化担体の窒素除去速度は、2.5kg-N/m3-担体/day以下であった。
【0091】
この包括固定化担体0.2Lを、容積2Lの円筒形のリアクタ(培養槽)に投入した。また、リアクタは、内部への空気の混入を防ぐ構造であり、スターラーを備えるものを用いた。このリアクタに合成廃水を流入させ、リアクタ内の温度を30℃に維持しながら、嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養を2ヶ月行って、脱窒担体24を作製した。図8は、嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養に用いた合成廃水の水質を示す表である。
【0092】
脱窒担体の馴養時は、HCl(0.2N)の添加によりpHを7.5に維持した。また、馴養開始初期は、滞留時間(水理学的滞留時間)が12時間になるように廃水流入量を調節し、活性の増加に伴い、窒素濃度を徐々に上昇させた。
【0093】
嫌気性アンモニア酸化細菌の馴養開始から2ヵ月後に、水温30℃の条件下で、脱窒速度(アンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素の除去速度の和)を測定したところ、18.0kg-N/m3-担体/dayであった。
【0094】
<硝化脱窒試験>
上記手順で作製した硝化担体22及び脱窒担体24を用いて、アンモニア廃水の廃水処理試験を行った。硝化担体22の作製に使用したのと同一のリアクタに、硝化担体22を0.2L、脱窒担体24を0.2L投入した。このリアクタに、図7に示す水質の合成廃水を流入させ、廃水処理を行った。廃水処理時は、リアクタ内の溶存酸素量を2.0〜3.0mg/Lに維持した。
【0095】
図9は、廃水処理開始から1週間〜3ヶ月の流入廃水及び処理水の平均水質を示す表である。図9から、リアクタ内のアンモニアがほぼ完全に処理されるとともに、硝化反応により生成する亜硝酸も、嫌気性アンモニア酸化反応(脱窒反応)により脱窒されることが分かった。
【0096】
(実施例2)
実施例1と同様の馴養条件で、硝化担体22及び脱窒担体24を作製した。
【0097】
得られた硝化担体22及び脱窒担体24を、実施例1と同じリアクタに種々の比率で充填した。すなわち、硝化担体22及び脱窒担体24の合計体積に対する脱窒担体24の体積率を、75%、65%、50%、40%、25%及び20%に調整した。なおいずれの場合も、硝化担体22及び脱窒担体24の合計体積が0.5Lになるようにした。
【0098】
この後、実施例1と同様の条件で、図7に示す水質の合成廃水をリアクタに流入させ、廃水処理運転を行った。廃水処理時は、リアクタ内の溶存酸素量を2.0〜3.0mg/Lに維持した。また水温は15〜20℃、20〜25℃、25〜37℃に調整し、窒素負荷はそれぞれ1.0〜1.5kg-N/m3/day、1.3〜1.8kg-N/m3/day、1.7〜2.8kg-N/m3/dayに調整した。
【0099】
図10は、廃水処理の結果を示す表である。図10において、「◎」は80%以上の窒素除去率が得られたことを示し、「○」は50%以上80%未満の窒素除去率が得られたことを示し、「△」は窒素除去性能が得られたものの、窒素除去率が50%未満であったことを示す。また、「○NH4」及び「△NH4」は、アンモニアが処理水に残留し、処理性能が低下したことを意味し、「○NO2」及び「△NO2」は、亜硝酸が処理水に残留し、処理性能が低下したことを意味する。
【0100】
図10から、硝化担体22及び脱窒担体24の合計体積に対する脱窒担体24の体積率の好ましい範囲は、水温によって異なることが分かった。具体的には、脱窒担体24の体積率は、水温が15〜20℃の場合には50〜75%が好ましく、水温が20〜25℃の場合には40〜65%が好ましく、水温が25〜37℃の場合には20〜50%が好ましいことが分かった。
【0101】
特に、水温が25〜37℃であって、脱窒担体24の体積率が25〜40%の条件では、リアクタから窒素が消失する速度として、2.1kg-N/m3/dayと極めて高い処理性能が得られた。これは、硝化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌が、それぞれ硝化担体22及び脱窒担体24に高濃度に保持されており、この状態をリアクタ内で安定して維持することができたためであると考えられる。
【0102】
(実施例3)
以下の手順で、未馴養の硝化担体22と馴養済みの脱窒担体24とを用いて、リアクタの立ち上げ試験を行った。
【0103】
硝化細菌を含む活性汚泥を、3mm角の立方体に成形したポリエチレングリコール系のゲルで包括固定化した。なお、このときの包括固定化担体の硝化速度は、0.5kg-N/m3-担体/day以下であった。また、馴養済みの脱窒担体24として、実施例1と同様の条件で馴養を行った脱窒担体を用いた。
【0104】
実施例1で用いたリアクタ(容積2L)に、上記未馴養の硝化担体を0.3L、馴養済みの脱窒担体を0.2L投入した。このリアクタに図7に示す水質のアンモニア廃水を流入させ、馴養を行った。なお、リアクタ内の水温を30℃に調整するとともに、pHが7.5になるように炭酸水素ナトリウム及び塩酸を適宜滴下した。
【0105】
その結果、馴養開始から1ヵ月後には、リアクタ内の窒素は80%以上処理され、リアクタ内で硝化担体による硝化反応と、脱窒担体による脱窒反応とが並行して行われていることが確認された。
【0106】
このことから、未馴養の硝化担体及び馴養済みの脱窒担体を処理槽に投入した後、処理槽内を好気条件に維持することで、脱窒担体中の嫌気性アンモニア酸化細菌を失活させずに、硝化担体の馴養を行うことができることが分かった。
【0107】
なお、比較例として、馴養済みの硝化担体及び未馴養の脱窒担体を処理槽に投入した後、処理槽を好気条件下に維持して、脱窒担体の馴養を行った。しかしながら、馴養開始から5ヶ月を経過しても、原廃水のアンモニアが亜硝酸に酸化されるのみであり、脱窒反応を確認することはできなかった。
【0108】
(実施例4)
実施例1の硝化脱窒試験において、処理槽内の溶存酸素量と窒素除去率について検討を行った。その結果を図11に示す。図11から、溶存酸素量(DO)が1〜4mg/Lの場合に高い窒素除去率が得られることが分かった。特に、溶存酸素量が1.5〜3.0mg/Lの場合には、非常に高い窒素除去率が得られた。
【0109】
一方、溶存酸素量が1mg/L未満の場合、好気性細菌である硝化細菌の活性が低下して、硝化反応が律速になり、処理水中にアンモニアが残留し、窒素除去率が低下した。また溶存酸素量が4mg/Lを超える場合には、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性が低下し、脱窒反応が律速になり、処理水中に亜硝酸が残留し、窒素除去率が低下した。
【0110】
(実施例5)
以下の手順で、図3に示す廃水処理装置60を用いて、処理槽20内で硝化担体22及び脱窒担体24の馴養を行った後、廃水処理実験を行った。
【0111】
第1馴養室20A及び第2馴養室20Bの容積がそれぞれ10Lになるように、直方体のリアクタからなる処理槽20に分離板62を取り付けた。この後、第1馴養室20A及び第2馴養室20Bに、それぞれ、未馴養の硝化担体(実施例1と同じもの)2L、未馴養の脱窒担体(実施例1と同じもの)1Lを投入した。
【0112】
この処理槽20に、図7に示す水質のアンモニア廃水を流入させ、硝化担体及び脱窒担体の馴養を行った。馴養時は、第1馴養室20Aの溶存酸素量を2〜4mg/Lに維持するとともに、第1馴養室20AのpHが7.5になるように、5%炭酸水素ナトリウムを適宜添加した。また、第2馴養室20BのpHが7.5になるように、HCl(0.2N)を適宜添加した。なお、馴養は、30℃の恒温室内で行った。
【0113】
硝化担体及び脱窒担体の馴養は、具体的には次の方法で行った。
【0114】
まず、第1馴養室20Aの立ち上げを行った。すなわち、第1馴養室20Aにおいて、硝化担体の馴養を行った。次に、第1馴養室20Aにおける硝化活性が確認された後、第1馴養室20Aの処理水を第2馴養室20Bに流入させた。嫌気性アンモニア酸化細菌の活性の上昇にともない、第2馴養室20Bへの流入速度を増加させ、徐々に立ち上げを行った。
【0115】
これにより、馴養開始から6ヵ月後には、第1馴養室20Aにおいて1.2kg-N/m3/dayの硝化速度が確認され、第2馴養室20Bにおいて3.8kg-N/m3/dayの処理速度が確認された。
【0116】
そして、馴養開始から10ヶ月後に、分離板62を取り外し、第1馴養室20A及び第2馴養室20Bを連結した。また同時に、第2馴養室20Bのスターラー攪拌を停止し、曝気攪拌を開始した。
【0117】
その後、2ヶ月間にわたって廃水処理運転を継続した。図12は、廃水処理運転を行った2ヶ月間の平均水質を示す表である。図12から、アンモニア性窒素がほとんど除去されていた。また、硝化細菌による硝化率を特にコントロールしなかったが、安定した処理性能が得られた。
【0118】
また、比較例として、馴養後に分離板62を取り外さずに、第1馴養室20A(硝化槽)と第2馴養室20B(脱窒槽)とが分離した状態のまま、廃水処理運転を行った。この場合、図12に示すように、処理水にアンモニアが多く残留する傾向があった。これは、第1馴養室20A(硝化槽)における硝化率を57%(脱窒反応式の量論比から導かれる目標値)に調節することが難しく、第2馴養室20B(脱窒槽)に流入するアンモニアと亜硝酸とのバランスが崩れたためであると考えられる。
【0119】
なお、図12に示すように、本発明及び実施例において硝酸の生成が確認され、実施例のほうが比較例よりも、硝酸の生成量が若干多かった。この硝酸は、嫌気性アンモニア酸化細菌による脱窒反応の際に発生したものである。したがって、図12から、実施例のほうが比較例よりも、嫌気性アンモニア酸化細菌による脱窒反応がより多く行われたことが分かった。
【0120】
また、分離板62を用いずに、未馴養の硝化担体と未馴養の脱窒担体とを処理槽20に投入して、好気条件下で馴養を行ったが、原廃水のアンモニアが亜硝酸に酸化されるのみであり、5ヶ月経過した後も、脱窒反応が確認されることはなかった。
【符号の説明】
【0121】
10…廃水処理装置、12…原水タンク、14…ポンプ、20…処理槽、20A…第1馴養室、20B…第2馴養室、22…硝化担体、24…脱窒担体、26…センサー、28…散気手段、30…ブロア、40…制御装置、42…馴養槽、44…タンク、50…廃水処理装置、60…廃水処理装置、62…分離板、64…モーター、70…廃水処理装置、72…邪魔板、74…第1処理室、76…第2処理室、78…連通路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア性窒素を含む廃水を処理する方法であって、
硝化細菌を優占化させた硝化担体と、嫌気性アンモニア酸化細菌を優占化させた脱窒担体とが混在する処理槽において、前記硝化担体の前記硝化細菌により、前記廃水に含まれる前記アンモニア性窒素を亜硝酸に酸化する工程と、
前記処理槽において、前記脱窒担体の前記嫌気性アンモニア酸化細菌により、前記廃水中の前記アンモニア性窒素を水素供与体として、前記アンモニア性窒素の酸化により生成した前記亜硝酸を脱窒する工程とを含むことを特徴とする廃水処理方法。
【請求項2】
前記処理槽に前記脱窒担体を投入する工程と、
前記脱窒担体が投入された前記処理槽に、前記硝化細菌を含む担体を投入する工程と、
前記脱窒担体が得られるように、前記処理槽内の前記担体に含まれる前記硝化細菌を馴養する工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載の廃水処理方法。
【請求項3】
前記処理槽が第1馴養室及び第2馴養室に分離されるように、前記処理槽に分離板を取り付ける工程と、
前記第1馴養室に前記硝化細菌を含む第1担体を投入する工程と、
前記第2馴養室に前記嫌気性アンモニア酸化細菌を含む第2担体を投入する工程と、
前記硝化担体が得られるように、前記第1馴養室内の前記第1担体に含まれる前記硝化細菌を馴養する工程と、
前記脱窒担体が得られるように、前記第2馴養室内の前記第2担体に含まれる前記嫌気性アンモニア酸化細菌を馴養する工程と、
前記硝化細菌及び前記嫌気性アンモニア酸化細菌を馴養した後、前記分離板を取り外す工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載の廃水処理方法。
【請求項4】
前記硝化担体及び前記脱窒担体の少なくとも一方は、包括固定化担体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の廃水処理方法。
【請求項5】
前記亜硝酸に酸化する工程と、前記亜硝酸を脱窒する工程とにおいて、前記処理槽における溶存酸素濃度を、1mg/L以上4mg/L以下に維持することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の廃水処理方法。
【請求項6】
前記アンモニア性窒素を前記亜硝酸に酸化する硝化反応速度が、1.1kg-N・m−3・day−1以上であり、
前記亜硝酸を脱窒する脱窒反応速度が、2.0kg-N・m−3・day−1以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の廃水処理方法。
【請求項7】
硝化細菌を優占化させた硝化担体と、嫌気性アンモニア酸化細菌を優占化させた脱窒担体とが混在する処理槽を備えることを特徴とする廃水処理装置。
【請求項8】
前記処理槽が、前記硝化担体の馴養が行われる第1馴養室と、前記脱窒担体の馴養が行われる第2馴養室とに分離されるように、前記処理槽に着脱可能に取り付けられる分離板をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の廃水処理装置。
【請求項9】
前記処理槽を第1処理室及び第2処理室に分離するとともに、前記第1処理室及び前記第2処理室とを連通する連通路が前記処理槽の上部及び底部に形成されるように配置される邪魔板と、
前記第1処理室及び前記第2処理室のいずれか一方に設けられ、前記連通路を介して、前記廃水の旋回流が前記処理槽内に形成されるように、前記廃水を曝気攪拌する散気手段とをさらに備えることを特徴とする請求項7又は8に記載の廃水処理装置。
【請求項10】
前記硝化担体及び前記脱窒担体の少なくとも一方は、包括固定化担体であることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の廃水処理装置。
【請求項11】
前記処理槽内の前記廃水を曝気攪拌する散気手段と、
前記処理槽における溶存酸素量が1mg/L以上4mg/L以下になるように、前記散気手段を制御する制御手段とをさらに備えることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一項に記載の廃水処理装置。
【請求項1】
アンモニア性窒素を含む廃水を処理する方法であって、
硝化細菌を優占化させた硝化担体と、嫌気性アンモニア酸化細菌を優占化させた脱窒担体とが混在する処理槽において、前記硝化担体の前記硝化細菌により、前記廃水に含まれる前記アンモニア性窒素を亜硝酸に酸化する工程と、
前記処理槽において、前記脱窒担体の前記嫌気性アンモニア酸化細菌により、前記廃水中の前記アンモニア性窒素を水素供与体として、前記アンモニア性窒素の酸化により生成した前記亜硝酸を脱窒する工程とを含むことを特徴とする廃水処理方法。
【請求項2】
前記処理槽に前記脱窒担体を投入する工程と、
前記脱窒担体が投入された前記処理槽に、前記硝化細菌を含む担体を投入する工程と、
前記脱窒担体が得られるように、前記処理槽内の前記担体に含まれる前記硝化細菌を馴養する工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載の廃水処理方法。
【請求項3】
前記処理槽が第1馴養室及び第2馴養室に分離されるように、前記処理槽に分離板を取り付ける工程と、
前記第1馴養室に前記硝化細菌を含む第1担体を投入する工程と、
前記第2馴養室に前記嫌気性アンモニア酸化細菌を含む第2担体を投入する工程と、
前記硝化担体が得られるように、前記第1馴養室内の前記第1担体に含まれる前記硝化細菌を馴養する工程と、
前記脱窒担体が得られるように、前記第2馴養室内の前記第2担体に含まれる前記嫌気性アンモニア酸化細菌を馴養する工程と、
前記硝化細菌及び前記嫌気性アンモニア酸化細菌を馴養した後、前記分離板を取り外す工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載の廃水処理方法。
【請求項4】
前記硝化担体及び前記脱窒担体の少なくとも一方は、包括固定化担体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の廃水処理方法。
【請求項5】
前記亜硝酸に酸化する工程と、前記亜硝酸を脱窒する工程とにおいて、前記処理槽における溶存酸素濃度を、1mg/L以上4mg/L以下に維持することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の廃水処理方法。
【請求項6】
前記アンモニア性窒素を前記亜硝酸に酸化する硝化反応速度が、1.1kg-N・m−3・day−1以上であり、
前記亜硝酸を脱窒する脱窒反応速度が、2.0kg-N・m−3・day−1以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の廃水処理方法。
【請求項7】
硝化細菌を優占化させた硝化担体と、嫌気性アンモニア酸化細菌を優占化させた脱窒担体とが混在する処理槽を備えることを特徴とする廃水処理装置。
【請求項8】
前記処理槽が、前記硝化担体の馴養が行われる第1馴養室と、前記脱窒担体の馴養が行われる第2馴養室とに分離されるように、前記処理槽に着脱可能に取り付けられる分離板をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の廃水処理装置。
【請求項9】
前記処理槽を第1処理室及び第2処理室に分離するとともに、前記第1処理室及び前記第2処理室とを連通する連通路が前記処理槽の上部及び底部に形成されるように配置される邪魔板と、
前記第1処理室及び前記第2処理室のいずれか一方に設けられ、前記連通路を介して、前記廃水の旋回流が前記処理槽内に形成されるように、前記廃水を曝気攪拌する散気手段とをさらに備えることを特徴とする請求項7又は8に記載の廃水処理装置。
【請求項10】
前記硝化担体及び前記脱窒担体の少なくとも一方は、包括固定化担体であることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の廃水処理装置。
【請求項11】
前記処理槽内の前記廃水を曝気攪拌する散気手段と、
前記処理槽における溶存酸素量が1mg/L以上4mg/L以下になるように、前記散気手段を制御する制御手段とをさらに備えることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一項に記載の廃水処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−221191(P2010−221191A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74246(P2009−74246)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]