説明

廃水処理装置及び廃水処理方法

【課題】UASB処理の反応槽内の水質を微生物の反応活性が高活性となる状態に維持する。
【解決手段】廃水処理装置1は、被処理水を底部100から供給して微生物塊と接触させた後に処理水として上部から排出させる反応槽10と、反応槽10から流出する処理水の一部をpH調整するpH調整槽18を備える。pH調整槽18を、返送管181bまたは181cを介して反応槽10の側面と接続し、反応槽10から排出される処理水の一部を微生物塊の反応活性が高くなるpH範囲となるようにpH調整し、pH調整された処理水を反応槽10内のベッド19であって、被処理水の供給部100から被処理水の流通方向に離間した箇所に注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性の微生物塊(微生物からなる自己造粒汚泥であるグラニュールや核となる物質を含んだ微生物膜)を利用した廃水処理技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上向流嫌気性汚泥床(UASB:Upflow Anaerobic Sludge Bed)法は微生物塊を充填した反応槽の底部から被処理水を供給し、この供給によって生ずる上向水流のもとで被処理水に含まれる有機物や窒素化合物を微生物塊と接触させ微生物の代謝反応により分解する方法である(例えば、特許文献1〜4等)。
【0003】
UASB法は微生物担体となる充填材を必要とせず、高密度に凝集した微生物塊を用いることにより非常に高い負荷を処理できることを最大の特徴とする。微生物塊とは微生物が自己造粒化したグラニュールと呼ばれる形態や核となる物質を含んだ微生物膜が該当する。グラニュールや有核微生物膜などの微生物塊は、沈降性に優れたものが多く、反応槽底部より被処理水を供給すると適切な上向流速において、反応槽上部の浮遊微生物塊が少なく、反応槽の下方に多く微生物塊が沈殿・滞留し汚泥床(ベッド)と呼ばれる状態を形成する。
【0004】
また、含アンモニア廃水では、前段として好気性細菌によりアンモニアを硝酸に酸化する硝化処理と、後段で嫌気性の従属栄養細菌により有機物を利用して硝酸を窒素ガスに還元する脱窒処理があるが、近年、アンモニアと亜硝酸から脱窒することができる嫌気性アンモニア酸化(通称:アナモックス)細菌が注目され、本方法においてもUASB法が適用されている。アナモックス細菌を用いる場合、前段ではアンモニアを約半量亜硝酸まで硝化することで、後段のアナモックス細菌による脱窒処理が可能であり、好気処理に要する曝気動力が大幅に削減される。また、後段のアナモックス反応は独立栄養細菌によるため、従属栄養細菌による脱窒で必要とされた有機物が不要となる。その結果、C/N比の低い廃水で必要とされていた有機物供給が不要となるなど非常に優れた窒素処理方式である。アナモックス反応槽で適用可能な窒素負荷はプロセスにより異なるが、実証試験では、2.8〜5.4kg−N/m3/日であると報告されている(例えば、非特許文献2)。
【0005】
また、UASB法では、反応槽内の微生物が高活性を維持した状態となるように、反応槽内の水質(被処理水のpHや反応物質濃度など)を制御する。例えば、特許文献1では、反応槽内の被処理水注入点付近を攪拌することで、被処理水注入部の局部的な亜硝酸性窒素濃度の上昇に起因するアナモックス細菌の失活または活性低下を防止している。また、特許文献2では、亜硝酸性窒素を含有する被処理水の流入点を反応槽の高さ方向に複数設け、最下段(最上流)における亜硝酸性窒素注入濃度を300mg−N/L以下とすることで、被処理水注入部の局部的な亜硝酸性窒素濃度の上昇に起因するアナモックス細菌の失活または活性低下を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−033795号公報
【特許文献2】特開2003−033793号公報
【特許文献3】特開昭62−279891号公報
【特許文献4】特開平9−225491号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】福崎康博、外5名、“アナモックス反応による高濃度窒素排水の高速処理技術”、用水と廃水、株式会社産業用水調査会、2010年9月、第52巻、第9号、p.719−727
【非特許文献2】アナモックス反応を利用した窒素除去技術の評価に関する報告書、日本下水道事業団技術評価委員会、平成22年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、反応槽内の水質が、被処理水(または、被処理水と希釈水との混合水)を注入することによって回避されない場合(例えば、微生物反応処理の進行に伴うpHの上昇など)には、被処理水を反応槽に分散投入するだけでは反応槽の水質を微生物が高活性となる状態に維持できないおそれがある。例えば、特許文献2には、アナモックス細菌の活性阻害は、亜硝酸性窒素濃度50〜200mg/L程度から生じ、高濃度ほど阻害作用が大きくなるとされており、被処理水中の亜硝酸性窒素濃度が高濃度となった場合には、単に被処理水を分散投入に変更しただけでは、アナモックス細菌の活性を阻害する要因の解消が困難である。
【0009】
また、反応槽内の水質を微生物が高活性となる状態に維持するために被処理水に混合される希釈水を増加させると、希釈水の注入にコストがかる、または反応槽への希釈水の通水量が増大する。反応槽への希釈水の通水量が増大すると、反応槽において通水速度が律速となって負荷が制限されるおそれがある。さらには、希釈水に一定以上の溶存酸素濃度が存在する場合、反応槽内の嫌気性雰囲気を壊す可能性があるため、希釈水の注入の際には、溶存酸素の反応槽への持込に十分注意しなければいけない。
【0010】
したがって、効率よく安定した嫌気性アンモニア酸化処理を行うためには、アナモックス細菌の活性を阻害してしまうような環境にならないように工夫しなければいけない。同時に、高活性のアナモックス細菌を反応槽に維持し、且つ、処理反応により多くのアナモックス細菌を関与させることも必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明の廃水処理装置及びこの装置による廃水処理方法は、UASB型反応槽にて、この反応槽で処理された処理水のpHを、反応槽内に保持された微生物が窒素除去反応を高活性で行うことに適したpHに調整し、このpH調整された処理水を反応槽のベッドに注入して、このベッド中のpHが微生物塊を形成する微生物の反応活性維持に適したpHとなるように制御することを特徴としている。
【0012】
すなわち、上記課題を解決する本発明の廃水処理装置は、被処理水を上昇水流のもとで微生物と接触させて当該被処理水中の窒素化合物を分解する廃水処理装置であって、前記被処理水を底部から供給して前記微生物と接触させた後に処理水として上部から排出させる反応槽と、前記反応槽から排出された処理水の一部を前記微生物の反応活性が高くなるpH範囲となるように調整するpH調整槽と、前記反応槽内のベッドであって、前記被処理水の供給部から前記被処理水の流通方向に離間した箇所に、前記pH調整槽でpH調整された処理水を注入する経路と、を備えたことを特徴としている。
【0013】
また、本発明の廃水処理装置は、上記廃水処理装置において、前記pH調整された処理水がベッドの高さの50%以下の箇所に注入されるように、前記pH調整された処理水を注入する経路が備えられたことを特徴としている。
【0014】
また、本発明の廃水処理装置は、上記廃水処理装置において、前記pH調整された処理水は、前記被処理水と混合されることなく注入されることを特徴としている。
【0015】
また、本発明の廃水処理装置は、上記廃水処理装置において、前記pH調整された処理水を注入する経路は、前記反応槽の前記被処理水の流通方向に対して複数備えられたことを特徴としている。
【0016】
また、上記課題を解決する本発明の廃水処理装置は、被処理水を上昇水流のもとで微生物と接触させて当該被処理水中の窒素化合物を分解する廃水処理装置であって、前記被処理水を底部から供給して前記微生物と接触させた後に処理水として上部から排出させる反応槽と、前記反応槽から排出された処理水の一部を、前記微生物の反応活性が高くなるpH範囲となるように調整するpH調整槽と、前記反応槽の内部に設けられ、前記微生物と前記被処理水との反応で生じた気泡と前記微生物とを分離するための気泡分離部材と、前記気泡分離部材の下方であって、前記被処理水の供給部から前記被処理水の流通方向に離間した箇所に、前記pH調整槽でpH調整された処理水を注入する経路と、を備えたことを特徴としている。
【0017】
また、上記課題を解決する本発明の廃水処理方法は、被処理水と微生物とを接触反応させる反応槽と、前記反応槽で処理された後の処理水のpHを前記微生物の反応活性が高くなるpH範囲となるように調整するpH調整槽と、を備えた廃水処理装置による廃水処理方法であって、前記被処理水を前記反応槽の底部から供給して、前記被処理水を前記微生物と接触させた後に処理水として前記反応槽の上部から排出させ、前記排出された処理水の一部を前記pH調整槽で、前記微生物の反応活性が高くなるpH範囲となるように調整し、前記反応槽のベッドであって、前記被処理水の供給部から前記被処理水の流通方向に離間した箇所に、前記pH調整された処理水を注入することを特徴としている。
【0018】
また、上記課題を解決する本発明の廃水処理方法は、被処理水と微生物とを接触反応させる反応槽と、前記反応槽の内部に設けられ、前記微生物と前記被処理水との反応で生じた気泡と前記微生物とを分離するための気泡分離部材と、前記反応槽で処理された後の処理水の一部を前記微生物の反応活性が高くなるpH範囲となるように調整するpH調整槽と、を備えた廃水処理装置による廃水処理方法であって、前記被処理水を前記反応槽の底部から供給して、前記被処理水を前記微生物と接触させた後に処理水として前記反応槽の上部から排出させ、前記排出された処理水の一部を前記pH調整槽で前記微生物の反応活性が高くなるpH範囲となるように調整し、前記気泡分離部材の下方であって、前記被処理水の供給部から前記被処理水の流通方向に離間した箇所に、前記pH調整槽でpH調整された処理水を注入することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
以上の発明によれば微生物塊の活性を維持し、UASB処理の高負荷化に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】発明の参考例に係る廃水処理システムを示した概略構成図である。
【図2】発明の参考例に係る廃水処理システムの反応槽の高さ方向の被処理水のpH変化を示す図である。
【図3】発明の実施形態1に係る廃水処理装置を示した概略構成図である。
【図4】(a)pH調整された処理水を反応槽の側面から注入しない場合の反応槽の高さ(H)と反応槽内のpH値との関係を示す図、(b)pH調整された処理水を反応槽の側面から注入した場合の反応槽の高さ(H)と反応槽内のpH値との関係を示す図である。
【図5】発明の実施形態2に係る廃水処理装置を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[参考例]
本発明に先だって、発明者らは、参考例として図1に示す廃水処理装置5において、反応槽50にアナモックス細菌を植種して、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを反応させた。そして、この反応槽50の高さ方向のpH変化を測定した。
【0022】
(装置の構成)
図1に示すように、参考例に係る反応処理装置5は、pH調整槽18と、反応槽50と、気泡捕集管12とを備える。
【0023】
反応槽50の底部500に、後述の人工廃水槽51を供給管101を介して接続した。そして、被処理水を反応槽50の底部500から供給して、反応槽50内のベッド19と接触させた後に処理水として上部から排出させた。被処理水は反応槽50の下端部に接続された供給管101を介してポンプP1によって供給した。図1に示すように、反応槽50は円筒状に形成した。また、反応槽50の底部500付近の内周面は微生物塊を底部に集積しやすく、被処理水との接触効率を高められるように下細りのテーパー状に形成した。
【0024】
さらに、反応槽50の上部側面には、処理水の一部を反応槽50に返送させる循環配管172を設けた。そして、反応槽50の側面には、反応槽50の高さ方向に複数の採水管7a〜7fを設けた。
【0025】
気泡捕集管12は、陣笠状に形成された捕集コーン121とこの捕集コーン121の上端開口部に円筒部122が鉛直に接続されることで構成されており、反応槽50内に同槽と同軸に配置される。気泡捕集管12は、ベッド19から生じた気泡を捕集して、反応槽50の天井部に接続された円筒部122を介して大気中に排出した。
【0026】
pH調整槽18を、反応槽50と循環配管172を介して設け、処理水の一部を循環配管172を介してpH調整槽18に移送した。さらに、pH調整槽18にはpH計18aを設け、pH調整槽18で処理水のpHを0.5MのH2SO4で所定のpHに調整した。そして、ポンプP2により循環配管181を介してpH調整された処理水を反応槽50に再び循環させた。
【0027】
人工廃水槽51は、供給管101を介して反応槽50の底部500と接続した。人工廃水槽51には、溶存酸素濃度(DO)計51a、及びpH計51bを備えた。そして、人工廃水槽51の被処理水を、供給管101を介してポンプP1により反応槽50に供給した。なお、参考例では、人工廃水槽51に、表1に示す組成に調整された被処理水を予め備えておき、被処理水の溶存酸素濃度が0.5mg/L以下となるように窒素ガスによる脱気を行った。
【0028】
【表1】

【0029】
上記構成からなる廃水処理装置5において、高負荷運転における反応槽50内を流通する被処理水のpH特性を調査するために、窒素容積負荷(NLR)を7.0kg−N/m3/日として、アナモックス細菌の存在下でアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを反応させた。そして、採水管7a〜7fから被処理水を採取し、採取した被処理水のpHを測定した。アナモックス反応中の反応槽50の高さ方向における被処理水のpH変化を図2に示す。
【0030】
アナモックス細菌による反応は、下記の(1)式で示される反応式が提案されている。
1.0NH4++1.32NO2-+0.066HCO3-+0.13H+
1.02N2+0.26NO3-+0.066CH20.50.15+2.03H2O…(1)
(1)式によれば、アナモックス反応が進行するにしたがって、被処理水中のH+が消費されるので、図2に示すように、反応槽50の上部にある被処理水ほどpHが高くなっている。このpH変化は、反応槽50へ流入する被処理水のpH緩衝性が低い場合に顕著となる。
【0031】
図2では、反応槽50の被処理水のpHは、反応槽50最下部の流入部500でpH7.5であるが、反応槽50の最下部より高さ180mmの位置(ベッド高さの約50%に相当)にある採水管7aで採取された被処理水で既にpH8.43であり、アナモックス反応に好適とされるpH範囲(pH6.5〜8.0)を超えている。そして、この好適pHの上限(pH8.0)を逸脱するのは、反応槽50の最下部より高さ100mm(ベッドの高さの24%に相当)の位置である。
【0032】
また、採水管7bの位置から上方に行くにしたがって、反応槽50を流通する被処理水のpHの上昇が緩やかになっている。すなわち、反応槽50の底部500から被処理水を流入させると、図2のように、特に、微生物塊の存在するベッド19領域内のほぼ全てにおいてpH変化が起こっている。そして、反応槽50内のpHは、反応槽50下部の流入部500の上向流側の近傍でアナモックス細菌の好適pHの上限を逸脱してしまう。
【0033】
このことから、反応槽50底部500から被処理水を供給する場合、アナモックス細菌の活性を維持できる領域は流入部付近にあるベッド19部分に限られることとなる。
【0034】
そして、好適pHの上限を逸脱し、活性が阻害される部分に存在するアナモックス細菌は反応への寄与が低いので、ベッド19領域に多量のアナモックス細菌を保持していても、窒素除去性能の向上は期待できないおそれがある。また、窒素容積負荷(NLR)をさらに高く設定した高負荷処理運転をするほど(1)式の反応が速く進むので、底部500に供給される被処理水の流入初期pHから変化するベッド19領域内での上向流方向のpH変化は速くなる。すると、ますます、好適pHの上限を逸脱による活性阻害の影響を受けるベッド19領域が広くなるため、アナモックス細菌の全体量は十分確保されていても、その細菌量に比例した窒素除去性能の向上は期待できず、逆に、窒素除去性能が低下する場合もあり得る。また、この阻害により過負荷となった場合、処理水中に基質濃度が高いまま残留することとなるため、pH調整された処理水の希釈効果がなくなり、処理が加速度的に悪化することとなるおそれもある。
【0035】
また、ベッド19(参考例では、反応槽の底部より420mmの位置付近まで堆積)の上方に気泡とともに浮上した微生物塊は、pHによる活性阻害を受けるためほとんど窒素除去に寄与しない。さらに、上部での滞留時間が長いほど、アナモックス細菌の活性が減少していく可能性がある。故に、気泡とともに浮上した微生物塊は速やかにベッド19内に戻す操作が必要であり、微生物塊は捕集コーン121に衝突することで、気泡と微生物塊とが分離され、気泡が分離された微生物塊は下降しベッド19内に戻る。
【0036】
上記参考例に係る廃水処理装置5における反応槽50でのpH変化の測定結果を鑑みて、発明者らは本発明を創作するにいたった。以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0037】
[実施形態1]
図3、図4を参照して本発明の実施形態1に係る廃水処理装置1及びこの装置による廃水処理方法について詳細に説明する。
【0038】
(装置の構成)
図3に示すように、廃水処理装置1は反応槽10とpH調整槽18と、側面スクリーン13とを備える。そして、pH調整槽18に接続された返送管181からは、返送管181a〜181cが分岐している。
【0039】
反応槽10は被処理水を底部100から供給して、反応槽10の下部に堆積した微生物塊のベッド19と接触させた後に処理水として上部から排出させる。ベッド19(汚泥床)とは、反応槽10の下方に沈殿・滞留した微生物塊によって形成される層であり、微生物塊とは微生物が自己造粒化したグラニュールと呼ばれる形態や核となる物質を含んだ微生物膜が該当する。この微生物塊を形成する微生物としては、例えば、アナモックス細菌が挙げられる。反応槽10へ供給する窒素化合物の負荷量は、ベッド19の容積と被処理水の基質濃度や水量などにより決定される。そして、運転の継続に伴って増殖した微生物は、適宜、ベッド19の高さを所定の高さを維持するように定期的に引き抜かれる。したがって、反応槽10のベッド19の高さは、反応槽10の運転条件の一つとして予め設定されることとなる。
【0040】
被処理水は反応槽10の下端部に接続された供給管101を介してポンプP1によって供給される。被処理水としては、例えば、アンモニアを含有する被処理水を図示省略の処理槽で、前もって好気性のアンモニア酸化細菌により処理することで、被処理水のアンモニアの一部を亜硝酸に変換した被処理水を用いることが挙げられる。被処理水については、特に限定するものではなく、例えば(1)式に示した反応が効率よく進行するように、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素などを含有した被処理水を供給すればよい。
【0041】
反応槽10は円筒状に形成されている。また、反応槽10の底部100付近の内周面は微生物塊を底部に集積しやすく、被処理水との接触効率を高められるように下細りのテーパー状に形成されている。反応槽10の上部には、処理水を系外に流出させる流出配管171の他に、処理水の一部を反応槽10に返送させる循環配管172が処理水分離室17と連通して接続されている。循環配管172には処理水分離室17から移送された処理水のpHを調整するためのpH調整槽18が接続されている。
【0042】
反応槽10内の液相は、(1)式に示した反応によってpHが8.5を超えることがあり、これにより微生物塊の活性が低下する場合がある。そこで、処理水のpHをpH調整槽18にて中性付近(例えば、pH7.1〜7.4)となるようにpH調整し、pH調整された処理水を反応槽10に返送することで微生物塊活性の安定化を図る。
【0043】
pH調整槽18は、返送管181a及び供給配管101を介して、反応槽10の底部100に接続され、供給配管101より供給される被処理水は、pH調整槽18でpH調整された処理水により希釈される。また、pH調整槽18は、返送管181bまたは181cを介して反応槽10の側面と接続され、pH調整された処理水を反応槽10のベッド19の下部近傍に注入する。pH調整槽18は、pH調整用の薬液を注入するポンプと処理水を攪拌するための攪拌機とを備える。薬液は、水処理技術に適用される周知の薬剤(硫酸、塩酸など)を適用すればよい。なお、返送管181b、181cは、反応槽10を流通する被処理水の流れ方向(すなわち、反応槽10の高さ方向)に複数備え、反応槽10の処理状態に応じてpH調整された処理水の注入を制御してもよい。
【0044】
なお、pH調整された処理水を注入する注入点は、反応槽10においてベッド19が堆積している箇所であれば特に限定するものではない。供給配管101から供給される被処理水は、アナモックス反応の活性が高くなるpH範囲となるようにpH調整されているので、pH調整された処理水を注入する注入点は、供給配管101から被処理水の流通方向に離間した箇所に備える。また、pH調整された処理水の注入点は、ベッド19にpH調整された処理水を注入できればよいので、注入点を反応槽10の側面に備えることに限定するものでもない。参考例で示したように、反応槽50の最下部より高さ180mm(ベッド19の高さの約50%に相当)で、アナモックス細菌の活性に対する好適pHの上限(pH8.0)を逸脱している。そこで、このpH調整された処理水の反応槽10内への注入点を、反応槽10内のベッド19高さの50%以下となる箇所とすると、ベッド19を流通する被処理水の水質をアナモックス細菌の活性を高い状態に維持や回復させることができる。
【0045】
側面スクリーン13は反応槽10の上層部の微生物塊を含んだ液相を微生物塊と被処理水とに分離する。側面スクリーン13は円筒状に形成されたウェッジワイヤースクリーンなどのスリット状または格子状のスクリーンからなる。このスクリーンの目幅は、微生物塊と被処理水との固液分離に適するよう微生物塊の平均粒径よりも小径となるよう設定されている。側面スクリーン13は反応槽10と同径の円筒状に形成されるとともに反応槽10の上端付近の周側面に設置されている。そして、この上端付近の外周には側面スクリーン13を介して処理水が移送される処理水分離室17が設けられている。なお、液相に浸っている側面スクリーン13上部の反応槽10の内面部分をウェッジワイヤーなどのスリット状または格子状のスクリーンにすると、浮上した微生物塊が被処理水の流れによって流出側へ押し出され側面スクリーン13を閉塞しやすくなる。したがって、側面スクリーン13上部の反応槽10の内面部分は水の透過性のないことが望ましい。
【0046】
(動作例の説明)
図3を参照しながら廃水処理装置1の動作例について説明する。
【0047】
被処理水はポンプP1によって供給管101を介して底部100から反応槽10内に供給される。反応槽10内に被処理水が供給されるとベッド19を構成する微生物塊によって被処理水中の窒素化合物が分解される。例えば、被処理水中に含まれる亜硝酸とアンモニア成分が、(1)式に例示した、微生物塊を構成する細菌類の一つであるアナモックス細菌による脱窒反応によって窒素ガスに転換される。微生物塊から発生した窒素ガスは上向水流によって反応槽10内の液面に向かって上昇する。また、最も生物活性が高くなっている底部100付近の微生物塊はガスの発生が激しく当該ガスの気泡の付着によって沈降性を失うことがあり上向水流に乗って上昇する。この気泡が付着した微生物塊が上昇する際には、上昇流から受ける流れの作用で気泡が付着していた微生物塊から離脱し、一部、気泡が離脱した微生物塊は自重により沈降してベッド19へ戻る。この過程で気泡が離脱しない微生物塊及び微生物塊から離脱した気泡は、反応槽10を上昇して液面付近へ移動する。上昇した気泡は、液面に達するとガスとして反応槽10内の気相に解放され排気管103から系外に排出される。また、この液面に浮上した時に気泡と分離された微生物塊は、自重によって下降しベッド19に向かって沈降する。そして、反応槽10のこの領域においても、まだ気泡が付着した微生物塊は、側面スクリーン13を介して系外に流出する処理水の流れに乗って側面スクリーン13と接触すると、一部の微生物塊から気泡が脱離してガスは気相中に解放され、気泡と分離された微生物塊は自重によって下降しベッド19に向かって沈降する。
【0048】
反応槽10の液面付近の上層まで上昇してきた被処理水は側面スクリーン13によって固液分離された後に処理水分離室17の流出配管171から系外に排出される。
【0049】
pH調整槽18では、処理水分離室17から流出してきた処理水に対して、酸などのpH調整剤を添加して処理水のpHを微生物塊の反応活性が高くなるpH範囲となるように調整する。具体的には、処理水のpHが中性付近(pH7.1〜7.4)となるようにpH調整する。pH調整された処理水は、返送配管181から、返送管181b、181cを介してポンプP2によって反応槽10のベッド19下部近傍に注入される。その結果、反応槽10の液相環境を、微生物塊の生物活性を維持することができるpH範囲(例えば、pH7.5程度以下)にpH調整することができる。なお、被処理水の基質濃度を希釈するために一部の処理水は循環配管172を介してpH調整系に供された後に返送管181aを介して供給管101に循環供給される。
【0050】
(効果)
廃水処理装置1によれば、反応槽10のベッド19にpH調整された処理水を注入することで、ベッド19の水質をアナモックス細菌の活性が高い状態に維持できる水質となるように調整することができる。
【0051】
つまり、pH調整された処理水を反応槽10のベッド19の下部近傍に注入することで、生物処理によって上昇したpHを下げるとともに、反応槽10に供給された被処理水及びアナモックス反応で生じた反応生成物の希釈を同時に行うことができる。また、pH調整された処理水の返送により反応槽10に供給される被処理水を希釈することで、微生物塊の生物活性を阻害するような高濃度基質を微生物塊の活性を阻害しない濃度レベルとし、ベッド19の嫌気的生物活性を維持させることができる。その結果、微生物塊の活性を保てる領域を広くすることができるので、これにより高負荷で廃水処理を行うことができる。また、反応槽10の容積を有効利用することができるので、反応槽10の小型化を実現させることができる。
【0052】
さらに、反応槽10に返送されるpH調整された処理水は、反応槽10を流通した処理水であるので溶存酸素濃度が低い。よって、ベッド19のpH調整を行うための返送水に、処理水を用いることで、アナモックス細菌に対する溶存酸素の影響を低減することができる。なお、返送管181b、181bから注入されるpH調整水は、実施形態のようにpH調整された処理水を返送させることに限定するものではなく、pH調整された溶液を注入すれば本発明の効果を得ることができる。
【0053】
また、pH調整された処理水を注入する返送管を反応槽10の高さ方向に複数備え、さらに、各返送管にバルブ(図示省略)を備えると、このバルブを調整することで、反応槽10での生物反応の変化(反応槽10の高さ方向におけるpHや基質濃度の変化)に応じて、pH調整や被処理水の希釈を行うことができる。
【0054】
図4(a)に示すように、窒素容積負荷(NLR)7kg−N/m3/日のように高窒素容積負荷で廃水処理装置1を運転した場合、pH調整された処理水を注入しないと、反応槽10の被処理水のpHは、反応槽10の中位付近で既にpH8.5まで上昇している。このように、反応槽10内を流通する被処理水のpHが上昇すると、微生物塊の活性が阻害される可能性がある。一方、本発明の実施形態に係る廃水処理装置1は、pH調整された処理水を反応槽10の側面から注入することで、図4(b)に示すように、反応槽10での反応に伴うpH上昇を抑制していることがわかる。図4(b)では、pH調整された処理水を反応槽10内のベッド19であって、ベッド19の高さの50%以下となる反応槽10内のベッド19へ注入することで、図4(a)に示したように、反応槽10内のpHが8.0を逸脱しており、pH阻害によりアナモックス細菌による窒素除去反応が進まなくなった環境であっても、好適pH範囲内となるようにpH調整して、再びアナモックス反応を進めることができることを示している。すなわち、pH調整された処理水を反応槽10内においてベッド19高さの50%以下に位置するベッド19へ注入すると、高窒素負荷や被処理水のpH緩衝性が低い場合などの処理運転において、効果的に好適pH範囲の状態に維持や回復させる操作が可能となる。その結果、微生物塊が沈降して形成されるベッド19の有効領域(反応槽10におけるベッド19の活性を保つことができる領域)を広くすることができるので、高い負荷で廃水処理を行う場合においても、微生物塊の活性を高い状態に維持して嫌気性廃水処理を行うことができる。
【0055】
[実施形態2]
図5を参照して本発明の実施形態2に係る廃水処理装置2及びこの装置による廃水処理方法について詳細に説明する。
【0056】
図5に示された実施形態2に係る廃水処理装置2は、反応槽10内に微生物と被処理水との接触反応により生じたガスと微生物とを分離する気泡分離部材を備えること以外は、実施形態1に係る廃水処理装置1の構成と同じである。よって、実施形態1に係る廃水処理装置1と同様の構成については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0057】
(装置の構成)
廃水処理装置2は反応槽10とpH調整槽18と、気泡分離スクリーン11と側面スクリーン13とを備える。そして、pH調整槽18に接続された返送管181からは、返送管181a〜181cが分岐している。
【0058】
気泡分離スクリーン11は反応槽10の底部100付近に滞留するベッド19から微生物反応の結果生じたガスの気泡を付着させた微生物塊と接触して当該微生物塊から気泡を分離させる。気泡分離スクリーン11は陣笠状に形成されたウェッジワイヤースクリーンなどのスリット状または格子状のスクリーンからなる。
【0059】
実施形態2に係る廃水処理装置2では、気泡分離スクリーン11の下方の被処理水にpH調整された処理水を注入するように、反応槽10の側面に返送管181b、181cを備える。
【0060】
(動作例の説明)
図5を参照しながら廃水処理装置2の動作例について説明する。
【0061】
被処理水はポンプP1によって供給管101を介して底部100から反応槽10内に供給される。反応槽10内に被処理水が供給されるとベッド19を構成する微生物塊によって被処理水中の窒素化合物が分解される。例えば、被処理水中に含まれる亜硝酸とアンモニア成分などは、微生物塊を構成する細菌類の一つであるアナモックス細菌による脱窒反応によって窒素ガスに転換される。微生物塊から発生した窒素ガスなどの気泡は上向水流によって反応槽10内の液面に向かって上昇する。また、最も生物活性が高くなっている底部100付近の微生物塊はガスの発生が激しく当該ガスの気泡の付着によって沈降性を失うことがあり上向水流に乗って上昇する。
【0062】
前記気泡が付着した微生物塊はベッド19内に設置した気泡分離スクリーン11との接触により、迅速に気泡の脱離が行われることとなる。そのため、気泡が脱離した微生物塊は底部100付近に留まりやすくなるため、ベッド19の微生物塊の集積度を高められる。一方、ベッド19によって処理された被処理水は気泡分離スクリーン11によって固液分離された後に上昇流に乗って反応槽10の上層に向かって移行する。
【0063】
また、気泡を付着させた微生物塊は、側面スクリーン13を介して系外に流出する処理水の流れに乗って側面スクリーン13と接触すると、一部の微生物塊から気泡が脱離してガスは気相中に解放され、微生物塊はベッド19方向へ沈降する。
【0064】
反応槽10の液面付近の上層まで上昇してきた被処理水は側面スクリーン13によって固液分離された後に処理水分離室17の流出配管171から系外に排出される。また、処理水分離室17の処理水の一部は、循環配管172を介してpH調整槽18に移送される。
【0065】
pH調整槽18では、処理水分離室17から流出してきた処理水に対して、酸などのpH調整剤を添加して処理水のpHを中性付近(pH7.1〜7.4)まで調整する。pH調整された処理水は、返送配管181から、返送管181b、181cを介してポンプP2によって反応槽10の気泡分離スクリーン11の下方に供給される。その結果、反応槽10の液相環境を、微生物塊の生物活性を維持することができるpH範囲(例えば、pH7.5程度以下)にpH調整することができる。なお、被処理水の基質濃度を希釈するために一部の処理水はpH調整槽18でpH調整された後に返送管181aを介して供給管101に循環供給される。
【0066】
(効果)
廃水処理装置2によれば浮上する微生物塊から気泡を分離させるとともに、ベッド19において反応槽10の高さ方向の水質を微生物が高い活性を維持することができる水質に調節することができる。また、pH調整された処理水の注入箇所を反応槽10内に備えられた気泡分離スクリーン11の配置箇所に備えることで、本発明の実施形態1に係る廃水処理装置1の効果に加えて、pH調整された処理水の注入時の水勢により気泡分離スクリーン11への微生物塊の付着を防止するとともに、微生物塊に付着する気泡の分離を促進し、ベッド19の微生物塊の集積度を高めることができる。
【0067】
また、反応槽10内において、ベッド19や被処理水の水質は、反応条件や反応処理時間に応じて変化する場合がある。本発明の実施形態2に係る廃水処理装置2では、pH調整された処理水を気泡分離スクリーン11に応じた位置に注入することで、ベッド19の高さによらず、反応槽10の微生物活性を高い状態に制御することができる。つまり、ベッド19が気泡分離スクリーン11より下に堆積している場合には、ベッド19と気泡スクリーン11の間のpHを微生物塊の活性が阻害されないように制御することで、浮上した微生物塊が活性を維持した状態で再度ベッド19に返送される。よって、ベッド19の成長を促進することができる。また、気泡分離スクリーン11がベッド19に埋設した状態である場合、気泡が生成しているベッド19にpH調整された処理水を注入することで、微生物反応が活発な領域の水質を、微生物塊が高い活性を維持できる状態に制御することができる。
【0068】
なお、この気泡分離スクリーン11にpH調整された処理水が直接当たるように返送管181b、181cを備えると、pH調整された処理水の水勢により気泡分離スクリーン11に付着した微生物塊を引きはがすことができる。
【0069】
以上、実施形態1、2を挙げて説明したように、本発明の廃水処理装置及び廃水処理方法によれば、pH調整された処理水がベッドの下部近傍に注入されることで、反応槽内のpHの上昇が抑制されるとともに被処理水の基質(または、反応生成物)の希釈を十分に行うことができる。すなわち、アナモックス反応の進行に伴う被処理水のpH上昇を抑制するとともに、被処理水中の基質濃度がアナモックス細菌の活性を阻害する可能性がある濃度に上昇した場合には、阻害因子の影響を緩和するように制御することができる。よって、反応槽内の微生物塊の反応活性を高い状態に維持することができる。
【0070】
なお、本発明に係る廃水処理装置及び廃水処理方法は、上記の実施形態に限定されるものでなく、その効果を損なわない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、反応槽の形状は、円筒形に限定されるものではなく、断面矩形、多角形などの角筒状であってもよい。さらに、気泡分離スクリーンの形状は、陣笠状に形成されるものに限定されるものではなく、気泡分離スクリーンの面が水平に対して傾きを有していれば、反応槽が断面矩形の角筒状などの場合には反応槽の長手方向に伸びる水平に対して傾きをもった板状に形成してもよい。
【0071】
また、実施形態ではアナモックス細菌により脱窒処理を行う形態を例示して説明したが、従来から実施されている嫌気性の従属栄養細菌(脱窒菌)による脱窒処理に本発明の廃水処理装置及び廃水処理方法を適用しても同様の効果を得ることができる。すなわち、従属栄養細菌が高い活性を維持することができるpH範囲は、中性付近pH付近であり、脱窒菌による反応は、下記の(2)、(3)式に示す反応が起こり、被処理水のpHは上昇すると考えられる。
NO2-+3H+→1/2N2+H2O+OH- …(2)
NO3-+5H+→1/2N2+2H2O+OH- …(3)
そこで、処理水をpH調整してベッドに供給することで、従属栄養細菌の活性が高くなるpH範囲となるように被処理水の水質を制御することができる。その結果、従属栄養細菌の活性を維持し、UASB処理を高負荷化で行うことができる。
【符号の説明】
【0072】
1,2,5…廃水処理装置
10,50…反応槽
11…気泡分離スクリーン(気泡分離部材)
13…側面スクリーン
18…pH調整槽
19…ベッド(微生物の堆積層)
181,181a〜181c…返送管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を上昇水流のもとで微生物と接触させて当該被処理水中の窒素化合物を分解する廃水処理装置であって、
前記被処理水を底部から供給して前記微生物と接触させた後に処理水として上部から排出させる反応槽と、
前記反応槽から排出された処理水の一部を、前記微生物の反応活性が高くなるpH範囲となるように調整するpH調整槽と、
前記反応槽内に堆積した前記微生物の堆積層であって、前記被処理水の供給部から前記被処理水の流通方向に離間した箇所に、前記pH調整槽で調整された処理水を注入する経路と、を備えた
ことを特徴とする廃水処理装置。
【請求項2】
前記pH調整された処理水を注入する経路は、前記pH調整された処理水が前記微生物の堆積層の高さの50%以下の箇所に注入されるように備えられた
ことを特徴とする請求項1に記載の廃水処理装置。
【請求項3】
前記pH調整された処理水は、前記被処理水と混合されることなく注入される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の廃水処理装置。
【請求項4】
前記pH調整された処理水を注入する経路は、前記反応槽の前記被処理水の流通方向に対して複数備えられた
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の廃水処理装置。
【請求項5】
被処理水を上昇水流のもとで微生物と接触させて当該被処理水中の窒素化合物を分解する廃水処理装置であって、
前記被処理水を底部から供給して前記微生物と接触させた後に処理水として上部から排出させる反応槽と、
前記反応槽から排出された処理水の一部を、前記微生物の反応活性が高くなるpH範囲となるように調整するpH調整槽と、
前記反応槽の内部に設けられ、前記微生物と前記被処理水との反応で生じた気泡と前記微生物とを分離するための気泡分離部材と、
前記気泡分離部材の下方であって、前記被処理水の供給部から前記被処理水の流通方向に離間した箇所に、前記pH調整槽でpH調整された処理水を注入する経路と、を備えた
ことを特徴とする廃水処理装置。
【請求項6】
被処理水と微生物とを接触反応させる反応槽と、
前記反応槽で処理された後の処理水の一部を、前記微生物の反応活性が高くなるpH範囲となるように調整するpH調整槽と、
を備えた廃水処理装置による廃水処理方法であって、
前記被処理水を前記反応槽の底部から供給して、前記被処理水を前記微生物と接触させた後に処理水として前記反応槽の上部から排出させ、
前記pH調整槽で、前記排出された処理水の一部を、前記微生物の反応活性が高くなるpH範囲となるように調整し、
前記反応槽に堆積した前記微生物の堆積層であって、前記被処理水の供給部から前記被処理水の流通方向に離間した箇所に、前記pH調整された処理水を注入する
ことを特徴とする廃水処理方法。
【請求項7】
被処理水と微生物とを接触反応させる反応槽と、
前記反応槽の内部に設けられ、前記微生物と前記被処理水との反応で生じた気泡と前記微生物とを分離するための気泡分離部材と、
前記反応槽で処理された後の処理水の一部を、前記微生物の反応活性が高くなるpH範囲となるように調整するpH調整槽と、
を備えた廃水処理装置による廃水処理方法であって、
前記被処理水を前記反応槽の底部から供給して、前記被処理水を前記微生物と接触させた後に処理水として前記反応槽の上部から排出させ、
前記pH調整槽で、前記排出された処理水の一部を、前記微生物の反応活性が高くなるpH範囲となるように調整し、
前記気泡分離部材の下方であって、前記被処理水の供給部から前記被処理水の流通方向に離間した箇所に、前記pH調整槽でpH調整された処理水を注入する
ことを特徴とする廃水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−152674(P2012−152674A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12065(P2011−12065)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】