説明

廃油から潤滑油基油を生成するための方法

廃潤滑油から基油を回収する方法であって、廃潤滑油混合物から基油範囲成分を分離し、次いで、廃潤滑油混合物より回収した基油から高品質基油成分と低品質基油成分とを分離し、その後、低品質基油成分を処理して市場性のある基油を生成する。本プロセスによって廃潤滑油混合物から生成される基油の総量は、廃潤滑油混合物から分離させた基油のみを使用する従来のプロセスによって、または廃潤滑油混合物から回収した基油の処理のみを行って基油製品を生成するプロセスによって生成可能な量よりも多い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の成分から基油範囲成分を分離するステップと、低品質基油成分から高品質基油成分を分離して、第一の高品質の市場性のあるグレードの基油および第二の低品質基油ストリームを生成するステップと、低品質基油ストリームを処理して第二の市場性のあるグレードの基油製品を生成するステップとを含むプロセスによって、廃油から市場性のある基油を生成する方法に関する。本プロセスによる第一および第二の製品の基油収量および廃油から生成された高品質基油の留分の総量は、従来のプロセスによって生成可能な量よりも多い。
【背景技術】
【0002】
本発明は、廃油を精製して基油および他の有用な生成物を生成するための高効率な方法に関し、前記方法は、廃油の様々な物理的混入物および他の炭化水素留分から、一般的に、通常500乃至1100°Fの沸点での潤滑用途に好適な鉱油である、基油成分(基油留分)の少なくとも一部を分離するステップと、基油留分から、ヘテロ原子、不飽和化合物、極性物、および芳香族化合物を含むものなどの低品質分子の一部を分離するステップと、それによって、第一の高品質の市場性のある基油ストリームおよび低品質分子が濃縮されたストリームを作り出すステップと、その後、ヘテロ原子、不飽和化合物、極性物、および芳香族化合物を含む前記成分を、硫黄、酸素、窒素、塩素成分などを取り除き、前記分子をさらに完全に飽和させることによって高品質分子に少なくとも部分的に変換して、第二の市場性のある品質の基油を生成するために、前記低品質基油ストリームをさらに処理するステップとを含む。
【0003】
毎年、世界中で大量の使用済み潤滑油が生成される。完成潤滑油は、基油(別称、ベースストック、ベースルブストック、ルブストック、ルブオイル、ルブリケーションオイルなど)、一般には、18乃至40の炭素原子数で、沸点が500乃至約1050°Fである鉱油を、基油の特性を高める化学添加物と混合することによって、意図する用途にさらに適するように生成される。使用される基油の品質、量、およびタイプは、それに対して完成潤滑油が製造される用途に依存する。
【0004】
基油成分の品質は、一般的に、油の構成および物理的な特性に関連する複数の因子によって決定される。米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials:ASTM)は、基油の品質を試験するための指針として、ASTM D-6074-99 Standard Guide for Characterizing Hydrocarbon Lubricant Base Oilsを編纂した。同様に、米国石油協会(American Petroleum Institute:API)は、基油の品質の量化および分類を補助するために、Specification API 1509, Engine Oil Licensing and Certification Systems Specificationを用意した。組成特性は、基油分子内の水素および炭素以外の特定の混入物の存在、および基油分子の構成、形態、または構造のような、基油の実際の化学組成に関連する。物理的特性は、所定の方法で試験したときの基油の性能に関連し、粘度、引火点、揮発性などのような特性を含む。
【0005】
現在API 1509では、基油を6つの分類("群")に指定している。群I、II、およびIIIでは、一般的に、それらの物理的なおよび構成特性によって基油を分類する。群IV、V、およびVIでは、一般的に、合成油などを含むタイプによって基油を分類する。廃油から抽出される鉱油は、一般的に、I、II、またはIII群に分類される。これらの群は、主に、硫黄の濃度、飽和量、および粘度指数によって区別される。
【0006】
一般的に、基油および完成潤滑油は、使用および/または処理において、酸化、分解生成物、水、燃料、溶媒、不凍液、他の油、微粒子、添加生成物などによって汚染される。また、用途は、油の分子構造および/または化学添加物の変化による油の元の性質の変化によってもたらされる。これらの混入物または変化は、油の所望の性能を低下させるか、または意図する用途での使用に不適当な油としてしまい、処理または新しい非汚染油との交換を必要とする場合がある。これらの汚染油は、使用または用途に不適当であるとみなされると、一般に廃油または使用済み油と呼ばれる。廃油は、使用されたかどうかにかかわらず、石油または合成を基本とした油であり、一般的に、エンジン、タービン、および歯車用の潤滑油、作動油、金属加工油、絶縁または冷却油、プロセス流体などとして使用される油を含む。
【0007】
廃油は、一般的に、利用または製造現場からそれを収集する、多数の地域廃油収集者によって収集される。収集プロセスでは、様々なタイプの用途に調整された多種多様な油が混合され、それによって、異なるタイプおよび品質の基油、薬品、混入物などを形成する。
【0008】
石油資源の節約および管理に対する要望が増え続けることによって、廃油を回収および再精製して、それらに含まれる基油を回収する必要性に改めて注目している。現在、収集された廃油のほとんどは、工業用の燃料油と混合されて、燃焼燃料として燃やされている。この行いは、環境に対する汚染の顕著な一因となるだけでなく、エネルギーの消費、および国外の油に依存する一因にもなる。これらの広く知られた問題では、米国環境保護局(the U.S. Environmental Protection Agency)および米国石油協会(American Petroleum Institute)を含めて、基油を生成するための再精製が、廃油の最良かつ最高の利用法であることを認識しており、業界は、廃油から高い割合で基油を回収し(高効率)、そこから高い割合で高品質の生成物を生成する(高品質)ことができる、有効かつ経済的で環境にやさしいプロセスを長い間求めている。
【0009】
様々な処理形態を用いた、廃油からよりきれいな燃焼燃料油またはディーゼル油を作り出すための様々な処理プロセスが提案されており、それらには、熱分解では、米国特許第5,362,381号、第5,382,328号、第5,885,444号、蒸留では、米国特許第4,101,414号、第4,342,645号、第5,306,419号、第5,814,207号、第5,980,698号、RE38,366、パイロリシスでは、米国特許第6,132,596号、コークス化では、米国特許第5,143,597号、RE36,922など、が挙げられる。しかし、元々原油から基油を生成するために行われる厳しいプロセスまたは合成プロセスのエネルギーが、油が燃焼によって消費されるときに失われるので、燃料油の生成は、廃油に対する最高かつ最良の用途ではない。さらに、資源自体が失われる。したがって、廃油の燃焼は、節約および回収の最終的な目的を完全に満たしていない。
【0010】
理想的な再精製プロセスでは、高い割合で基油を生成し、高品質の製品を生成するが、基油および副生物はいずれも環境にやさしく、経済的に実現性があり、商業的に適切なものとなりうる。廃油を基油に再精製するための様々なプロセスが提案されているが、現在、いずれのプロセスも以下に記述される方法と同じくらい効果的に全ての所望の目的を満たすことができていない。
【0011】
例えば、長い間、廃油は、有用な炭化水素成分から混入物を分離するように硫酸を使用し、その後粘土によって処理して基油に再精製されていたが、基油製品の品質が悪く、大量の有害物質が発生し、環境的に危険であり、酸性の粘土スラッジが発生することから、このタイプの施設はほとんど残っていない。この類のプロセスは、これらの欠点から欧米諸国の多くでは使用が禁止されている。
【0012】
廃油はまた、水素化処理または水素化精製として既知であるプロセスを用いて再精製されている。米国特許第4,431,524号、第4,432,856号、第4,512,878号、第4,941,967号、第5,045,179号、および第5,447,625号を含む、複数の特許で派生的なプロセスを開示している。この処理方法は、一般的に、ある形態の蒸留を用いて他の混入物から基油を分離し、続けて触媒を通して高温高圧で水素によって処理するものである。この方法は、いくつかの芳香族化合物および不飽和化合物を飽和させるには功を奏しているが、油分子を十分に飽和させて、より高品質の基油の物理的および構成的特性を達成するには、高度な水素化処理(より高い温度、圧力、水素濃度、滞留時間など)を必要とする。不都合にも、これらの高度な処理条件は、基油の収率損失をもたらし、それによって生成される基油の量が減じられる、分子的分解をもたらす可能性がある。したがって、このプロセスでは、高品質製品(高品質)かつ大量(高効率)に生成することができない。さらに、全ての基油留分の水素化処理には費用がかかり、一般的に限界に近い経済的側面をもたらす。
【0013】
廃油を基油に再精製する別の方法では、溶媒抽出を用いる。このプロセスも、収量と品質の二律背反を欠点として持つ。米国特許第4,021,333号、第4,071,438号、第4,360,420号、第6,117,309号、第6,319,394号、第6,320,090号、および第6,712,954号では、いくつかの形態の蒸留に続く溶媒抽出を伴う様々なプロセスを開示している。米国特許第4,302,325号および第4,399,025号では、基油留分に関する抽出過程を開示しているが、派生物である。これらのプロセスでは、汚染された基油分子(極性物、芳香族化合物、ヘテロ原子、不飽和化合物)の一部は、液体/液体抽出を使用して基油留分から分離される。これによって、精製された基油ストリーム(ラフィネート)および抽出油ストリーム(抽出物)を作り出し、汚染された分子の一部が濃縮される。汚染された分子から良質の基油を分離する有効性は、温度、処理比率、滞留時間、接触、および油および溶媒に加えられた他の液体の存在など、複数の変数によって決定される。抽出プロセスでは、選択性(抽出によって得られる良好な基油の量)と、純度(ラフィネート内に残った汚染された基油分子の割合)との継続的な二律背反が存在する。
【0014】
一般的に、溶媒抽出プロセスは、芳香族化合物、極性物、および不飽和化合物の一部を取り除くという点では有効である。しかし、既知のプロセスを使用した高品質基準に必要な所望のレベルの精製に到達するには、溶媒の選択性を減じなければならず、それによって汚染分子とともに良質分子が取り込まれ、基油の収量が著しく減じられる。したがって、高品質基油を得るために収量を減じるような、品質と収量との間の固有の二律背反が存在する(米国特許第6,712,954号を参照のこと)。
【0015】
上述のように、この類の既知のプロセスでは、高品質および多量の両方ではなく、そのどちらかをもって精製することができる。これは、廃油の性質によるものであり、この廃油は、様々な種類、品質、および混入物を含み、結果として、一般的にこれらのプロセスに固有である品質と収量との二律背反が生じる。さらに、このタイプのうちの最も既知のプロセスでは、I群の基油しか精製することができない。このプロセスの更なる不利点は、廃油の溶媒抽出によって形成される抽出物が、重合によるものと考えられる再構成も生じやすいことである。この重合は、酸によって触媒され、塩基の添加または燃料油または他の抗高分子化学薬品との混合によって減じることができるが、それによって、全体的な製造コストが増加すると考えられる。さらに、得られる製品は、低品質基油であり、市場に出すことは困難である。
【発明のまとめ】
【0016】
本発明によれば、廃油から多量の高品質基油を効率的に生成するための方法は、基油留分を生成するために、前記廃油から前記基油成分の少なくとも一部を分離するステップと、前記基油留分を、高品質基油ストリームおよび低品質基油ストリームに分離するように処理するステップと、前記低品質基油ストリームの不要な成分を改善または取り除くことによって、市場性のある品質の基油ストリームまで前記低品質基油ストリームの品質を高めるように、前記低品質基油ストリームを処理するステップと、を含む。
【0017】
本発明は、高純度基油ストリームを生成するための方法であって、上述のように生成された前記高品質基油ストリームをさらに処理して、不要な成分を改善または取り除いて飽和の度合いを高め、それによって、使用および対価に対する広範な潜在市場を有する高純度基油を生成する方法をさらに含む。前記高純度基油は、白油品質にさせることができ、それによって、医薬品および食品加工業での使用に好適なものとなり、同様に、高品質または特殊潤滑油用の高品質の基油ストックとして好適なものとなる。
【0018】
本発明は、廃油から高純度基油を効率的に生成するための方法であって、基油留分を生成するために、前記廃油から前記基油成分の少なくとも一部を分離するステップと、前記基油留分を、高品質基油ストリームおよび低品質基油ストリームに分離するように処理するステップと、不要な成分を改善または取り除いて高純度基油を精製するために、前記高品質基油ストリームを処理するステップと、を含む方法をさらに含む。前記高純度基油ストリームは、一般にAPIのII群またはIII群の品質である。
【0019】
本発明は、廃油から超高品質基油を効率的に生成するための方法であって、基油留分を生成するために、前記廃油から前記基油成分の少なくとも一部を分離するステップと、本願明細書に記述された高度な溶媒抽出を使用して前記基油留分を処理して、超高品質基油ストリームおよび低品質基油ストリームに分離するステップと、を含む方法をさらに含む。前記方法によって、高品質および特殊潤滑油用に好適な、APIのIII群基油を生成することが可能である。
【0020】
本発明は、少なくとも1つの蒸留ゾーンにおけるその場フラッシュ蒸留によって、様々な沸点の複数の成分を含む液体ストリームを分離して、少なくとも1つの塔頂ストリームおよび少なくとも1つの塔底ストリームを生成するための方法であって、蒸留ゾーン内に含まれる加熱液体層を前記液体ストリームに通過させて、塔頂ストリームおよび塔底ストリームを生成するステップと、前記蒸留ゾーン内の前記液体層を前記液体供給ストリームの一部の気化に十分な温度まで継続的に加熱することによって、塔底ストリームおよび気化蒸留液ストリームを生成するステップと、前記蒸留ゾーンから前記塔頂ストリームの一部を通すステップと、別の蒸留ゾーンへの充填液体ストリームとして使用するか、または製品ストリームとして使用するために、前記塔頂ストリームの少なくとも一部を通過させるステップと、を含む方法をさらに含む。
【0021】
本発明は、その場フラッシュ蒸留によって、様々な沸点の複数の成分を含む液体ストリームを分離するための方法であって、塔頂出口を介して塔頂ストリームを生成し、塔底ストリーム出口から塔底ストリームを生成するために、フラッシュ容器内の加熱液体層に前記液体ストリームを充填するステップであって、前記フラッシュ容器は、少なくとも頂部および底部と、液体ストリーム入口と、容器の頂部付近の蒸留液出口と、前記容器の底部付近の下位部および塔底ストリーム出口とを有し、その下位部内に加熱液体層を含むステップと、加熱塔底ストリームを生成するために前記フラッシュ容器からの前記塔底ストリームを継続的に加熱し、前記加熱塔底ストリームの一部を前記フラッシュ蒸留ゾーン内の前記液体層に戻すステップと、を含む方法をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のプロセスの全般的な概略図である。
【0023】
【図2】本発明の実施態様において、溶媒抽出プロセスおよび水素化処理プロセスと組み合わせた、好適な蒸留プロセスの概略図である。
【0024】
【図3】本発明のプロセスの第二の実施態様の全般的な概略図である。
【0025】
【図4】本発明のプロセスの第三の実施態様の全般的な概略図である。
【0026】
【図5】本発明のプロセスの第四の実施態様の全般的な概略図である。
【好適な実施態様の説明】
【0027】
図1に、本発明の全般的な実施態様を示す。示された実施態様では、廃油ストリーム12は、基油分離ゾーン14に充填され、ここでは、基油成分(基油留分)の一部、ライン20、が廃油内の他の物理的混入物から分離される、ライン16。実際には、本願明細書では簡潔に示されているが、一般的に、1つ以上のストリームを生成し、これらを選択的に分離してライン16を介して回収するような方法で、様々な物理的混入物が基油留分から取り除かれる。また、物理的混入物には、(含まれる全ての物質の沸点範囲が650°F以下であることが望まれる場合があるが)一般的に沸点範囲が約500°F以下の、軽質炭化水素、水、グリコールなどのような低分子量の物質、および一般的に沸点が約1050°Fを超える、粒状物、高分子、塩類などを含む高分子量物質および低揮発性の物質が挙げられる。ライン20を介して回収された基油留分は、一般的に、18乃至40の炭素原子数で、沸点範囲が約500乃至110°Fである基油への使用または製造に好適な炭化水素分子を含む。高品質基油分離ゾーン22では、高品質基油分子(高品質基油)の一部が、低品質基油分子(低品質基油)から分離され、製品基油として販売するために、ライン24を介して回収される。前記高品質基油は、API 1509に示されるようなI群、II群、またはIII群のうちの少なくとも1つを満たす。低品質基油は、ライン26を介して回収され、低品質基油処理ゾーン28に送られるが、ここではライン32を介して回収された様々な元素混入物を取り除くために、より完全に飽和および処理され、ライン30を介して回収されるAPI 1509のI群、II群、III群のうちの少なくとも1つの要件を満たす市場性のある品質基油を生成する。様々な物質、混入物、誘導体、およびその生成物などは、ライン32を経て回収される。これは、本発明のプロセスの比較的全般を示すものである。しかし、本発明の重要な機能を示している。
【0028】
第一ステージ、ゾーン14では、基油留分が、廃油内の物理的混入物から分離される。一般的に、当該の混入物は、水、軽質炭化水素、溶媒、固体、高分子、高分子量炭化水素、潤滑油添加物、化学薬品、塩類などを含む。複数のプロセスまたはプロセスを組み合わせたものを使用して、当業者に既知である、様々な形態の抽出、蒸留、濾過、遠心分離、吸収、および吸着などを含む分離を達成する。一般的に、分離は、基油留分の物理的または化学的特性の差異、および様々な汚染物質に基づいて行われる。
【0029】
次いで、第二ステージでは、基油留分がプロセスのゾーン22に送られ、ここでは、低品質基油分子の一部が分離される。これらの分子は、極性物、芳香族化合物、オレフィン、不飽和化合物、ヘテロ原子などを含む場合があり、これらは高品質基油分子から分離され、一般的に飽和した、パラフィンおよび非芳香族である。ライン24内の高品質基油分子は、一般的に飽和割合が90%を超え、硫黄含量が約0.3重量パーセント未満である高品質基油ストリームである。ライン26内のストリームは、一般的に、高濃度の硫黄、酸素、窒素、オレフィン、芳香族化合物などを有することになる。様々なプロセスまたはその組み合わせを使用して、高品質基油からの前記物質の分離を達成することができる。これらのプロセスは、当業者に既知である、様々な形態の抽出、濾過、限外濾過、吸収、吸着、分子篩などを含む。
【0030】
第三ステージでは、当業者に既知である、水素化、アルキル化、分子的な改質、分子的な置換など、またはその組み合わせによって、ゾーン28において前記ストリームが処理され、硫黄、窒素、酸素などの不要な要素を取り除き、低品質基油ストリーム内の炭化水素分子のうちの少なくとも一部の飽和割合を増加させる。ライン30を介して生成された基油は、一般的に、API 1509のI群、II群、III群の要件を満たすに十分な品質のものである。
【0031】
図2は、本発明の一実施態様を示す図である。ステージ1には、廃油ストリームの他の成分から基油留分を分離するためのフラッシュ蒸留システムゾーン40を示す。廃油ストリームは、ライン42を介し、加熱器44およびライン46を介して第一のフラッシュ蒸留容器52に充填される。フラッシュ蒸留容器52は、塔頂53および塔底57を含み、蒸留液排出ライン54および塔底排出ライン56を含む。沸点範囲が約350°Fである蒸留液ストリームは、ライン54を経て回収され、燃料などとして使用するように通される。塔底ストリームは、塔底排出ライン56を経て引き出され、第二のその場フラッシュ蒸留容器70に通される。
【0032】
その場フラッシュ蒸留容器70は、塔頂72と、88で示される液面において、塔頂72および容器70の塔底部内に保持される液体層の一部を回収するための塔底排出ライン78から蒸留液ストリームを回収するために配置された蒸留液排出ライン76を備えた塔底74とを含む。ライン76から回収されるストリームの沸点範囲は、一般的に約350乃至約500°Fであり、一般的に燃料などのために使われる。ライン78を介して回収された塔底ストリームは、ポンプ80に通され、次いで、供給流入ライン82および加熱器84を通り、ライン83を介して容器70に戻される。ライン82内の加熱塔底ストリームの一部は、ライン86を介して引き出され、第三のその場フラッシュ蒸留容器90に送られる。
【0033】
その場フラッシュ蒸留容器90は、塔頂92および塔底94と、容器90の塔頂部を介して蒸留液が回収される蒸留液回収物出口96とを含む。塔底ストリーム98は、容器90の塔底から回収され、ポンプ100を介してライン98を経てライン102に通され、容器90への戻りストリームとして加熱器104を経てライン108に通される。ストリーム102の一部は、供給物としてライン106を介して第四のフラッシュ蒸留容器112に通される。液面110である液体層は、容器90の下部に保持される。容器90は、沸点範囲が約500乃至約650°Fである蒸留液ストリームを生成する。
【0034】
容器70および90への戻りストリームを使用して、容器内の塔底内の液体層の温度を保持する。容器70および90に供給される油は、容器の塔底内の液体層と直接接触することによって、所望の蒸留液の分離を達成するに必要な温度まで加熱される。
【0035】
容器112は、塔頂114および塔底116を含み、ライン106を経て容器90から供給物を受ける。前記容器は、蒸留液出口118を介して、温度が約650乃至約1050°Fである蒸留液ストリームを生成する。液面は、前記容器においても130で示されるレベルに保持される。塔底ストリームは、ライン120を介して引き出され、ポンプ122を経て、前記ストリームの一部が生成物として回収される排出ライン124に通される。前記ストリームの一部も、ライン126および加熱器128を経て戻され、流入ライン106内の供給ストリームに合流する。前記加熱塔底ストリーム126を使用して、容器112への所望の供給温度を保持する。
【0036】
ライン124を介して回収された生成物ストリームは、一般的に、アスファルトの範囲の物質を含み、図1の廃油ストリーム42に含まれる、一般的に沸点が1050°Fを超える、高分子、高沸点炭化水素、塩類、固体などを含む。
【0037】
容器112は、容器内の基油ストリームの劣化を防ぐ必要があれば、真空蒸留容器とすることが可能である。前記容器では、蒸気またはガスの除去も行って蒸留を向上させる。
【0038】
容器112からライン118を介して回収された蒸留液ストリームは、ステージ2、ゾーン50の溶媒抽出区域に通される。ライン118内のストリームは、熱交換器132を通過し、溶媒処理容器140に通される。前記溶媒処理容器を、塔頂144および塔底142とともに示す。接触区域146を、概略的に容器の中心部に示す。溶媒処理および貯蔵システムを148で示し、ライン150を経て容器140の上部の塔頂部付近に溶媒を供給する。一般的に、溶媒は油に逆行して下方に移動し、接触区域146の塔底付近に導かれる。高品質基油分子は、容器140の塔頂からの媒体の一部によって回収され、ライン157を経て塔頂158および塔底160を有する容器152に通され、ここでは、溶媒が基油から分離され、ライン156を経て基油が生成物に通される。前記ストリームは、高品質油であり、一般的に、API 1509に指定されるI群、II群、またはIII群の要件を満たす。
【0039】
溶媒は、ライン164を介して回収され、溶媒処理および貯蔵システムに戻され、ここでは、一般的に、当業者に既知である、水、低沸点混入物の除去、酸の中和などの処理が行われ、繰り返して使用するために溶媒貯蔵部に戻される。塔底ストリーム155は、基油分離容器140から回収され、塔頂168および塔底170を有する溶媒分離容器154に通される。溶媒は、一般的に蒸留によって前記容器内で低品質基油から分離され、ライン166を経て溶媒処理および貯蔵システム148に戻される。容器154の塔底から回収される低品質基油は、ライン172を経て第三ステージ、ゾーン60の水素化処理区域に通される。
【0040】
図に示されるように、水素化処理区域では、水素がライン176を経てストリーム172に添加される。次いで、ストリームは、加熱器174を通過して容器178に通され、保護層として作用して、他に水素化処理触媒を汚染する可能性のある、油内の混入物を取り除く。前記容器は、塔頂180および塔底182を有し、当業者には既知である、触媒、使用済み触媒、活性粘土などを含む接触区域184を含む。水素は、複数の地点でライン172に注入するか、または複数の地点で容器178に注入することが可能であると理解されよう。容器178からの生成物は、ライン186を介して回収され、水素化処理反応容器190に通される。
【0041】
容器190は、塔頂192および塔底194を有し、触媒層196を含む。水素は、ライン188で示されるように、ライン186に沿った様々な地点で追加するか、または容器190の長さ方向に沿った様々な地点で添加することが可能である。ある程度まで、硫黄、窒素、酸素、ヘテロ原子などのような混入物を含むオレフィンおよび分子が水素化され、より飽和した炭化水素分子および水素の揮発性化合物を形成する。生成物ストリームは、ライン200を介して容器202に回収され、ここでは、ほとんどの混入物を含む揮発性物質がライン204を経て蒸発され、燃料として使用されるように渡され、好適な処理の後に大気中などに排出される。品質の向上した低品質油は、ライン206を介して回収される。この油は、一般的に、API 1509のI群、II群、またはIII群に基づく基油として販売に好適である。
【0042】
本発明の実施において、場合によっては、加熱器44において、塩基または、当業者には既知である、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのようなアルカリ物質によって廃油を化学的に処理することが望ましい場合がある。前記ステップは、廃油ストリームの調整、安定化、および中和を行い、汚染しやすさを減じ、廃油ストリームの成分要素への分離を容易にし、また非基油生成物の品質を高める。場合によっては、供給ストリーム、リサイクルストリームのいずれかにある蒸留容器のうちの1つ以上に、または直接容器にアルカリまたは塩基を添加することが好ましい場合もある。
【0043】
上述の実施態様では、4つの容器を使用して、他の廃油成分から基油留分を分離している。本発明の実施において、前記分離を達成するために、容器を2つだけ使用するか、または8つもの容器を使用することが望ましい場合がある。
【0044】
上述の実施態様では、フラッシュ容器を使用して、基油留分から様々な成分を分離する。これらの容器は、当業者に既知である、単純な蒸発器、薄膜またはワイプド薄膜蒸発器、カラム、容器、タンク、パイプなどを含む、単一ステージの分離に作用するあらゆる容器またはシステムを含む。
【0045】
上述の実施態様では、蒸気またはガスを容器52、70、90、および112に添加して、廃油から軽い蒸留液を除去することを援助し、それによって分離を促進する。蒸気の除去は、蒸留プロセスを高める手段として当業者に既知である。
【0046】
容器52では、特異な汚染を懸念せずに、所望の温度まで加熱器44内の入口供給ストリームを加熱することができるので、加熱リサイクル塔底ストリームは使用されない。前記容器は、ライン56内の塔底ストリームの一部を加熱して容器52に戻し、容器52内の塔底層を保持することによって、容器70と同じ形態で操作することができる。
【0047】
本発明の実施において、場合によっては、ライン96を介して回収したストリーム(一般的に沸点範囲が約500乃至650°Fである)、が基油としての使用に好適であることから、水素化処理のためにライン172内のストリームと混合させることが望ましい場合がある。前記ストリームは、ライン172内のストリームへの補足に対する全ての事例において使用されないが、必要に応じて使用することが可能である。ライン96を介して回収された物質の沸点範囲を必要に応じて変更し、初期の沸点がわずかに高い物質を生成することができる。前記ストリームは基油としても有用であるが、従来のプロセスでは、多くの事例において回収されなかった。
【0048】
上述のステージ2の実施態様では、基油よりも大きな比重である溶媒に適用する。溶媒が基油未満の特定の比重を有する場合、この溶媒は溶媒処理容器の塔底に導かれ、基油は容器の塔頂に導かれる。それでも容器152および154は、それぞれラフィネートおよび抽出物から溶媒を取り除くように構成される。
【0049】
図2は、1つの保護層、容器178、1つの水素化処理反応炉、および容器190を示しているが、容器190の前に、直列または並列に構成した2つ以上の保護層を使用することが可能である。並列の保護層は、1つずつ操作され、容器190への流れを中断させずに、いずれかの容器を再生または清掃、および再充填することができる。同様に、1つ以上の水素化処理反応炉を直列または並列に操作して動作を向上させることが可能である。
【0050】
上述の実施態様では、水素回収システムを組み込んで、プロセスストリーム204から水素を回収することが望ましい場合もある。水素回収システムは、前記ストリーム内の水素を浄化および回収して、ストリーム176および/または188に戻して再使用する。
【0051】
容器202に蒸気またはガス除去を用いて、基油から非基油の軽い汚染物を除去するのを援助することが望ましい場合もある。また、更なる容器を追加して、ライン206内の基油をさらに細分することによって基油をさらに処理して、異なる粘度カットを作り出すか、またはそれを除去して揮発性を減じることが可能である。
【0052】
上述の実施態様では、ステージ2を使用して、低品質分子から高品質分子の一部を分離し、それによって、芳香族化合物、極性物、不飽和化合物、ヘテロ原子などの濃度がより低い第一の高品質基油ストリーム156を作り出し、また、芳香族化合物、極性物、不飽和化合物、ヘテロ原子などの濃度がより高い第二の低品質基油ストリーム172を作り出す。また、高品質基油ストリーム内に残存する芳香族、極生物、不飽和、ヘテロ原子の分子などの一部を高品質分子に変換し、それによって、さらに精製して飽和の程度を増加させることによって、ステージ3に類似するプロセスを使用して高品質基油の品質をさらに高め、それによって、高純度基油を生成することも可能である。この油は、白油として医薬および食品加工業での使用に好適なものとなり、同様に、工業用潤滑剤市場における潤滑基油としての使用に好適となりうる。
【0053】
上述の示された実施態様では、低品質および高品質基油ストリーム164および166から回収された溶媒は、再利用の前に、水および他の低沸点混入物を取り除くことによって、溶媒処理および貯蔵ユニット内で混合および精製される。また、溶媒は、当業者に既知の塩基などによって前記ステージにおいて処理し、溶媒内に尽くせ記した可能性のある有機酸を中和することもできる。
【0054】
上述の本発明の実施態様では、フラッシュ蒸留を使用して、他の廃油成分から基油留分を分離している。処理された廃油ストリームは、加熱器44内で250乃至450°F、好ましくは300乃至400°Fに加熱され、廃油から蒸留液ストリーム54が回収されるフラッシュ蒸留容器52への弁(図示せず)を越えて蒸発される。蒸留液ストリームは、一般的に、プロセスガスとして燃焼されるか、または濃縮され、水、グリコールなどから分離されて、燃料などとして使用される。塔底廃油排出ストリームは、その場フラッシュ蒸留容器70に通されるか、またはポンプで送られ、容器の塔底に内在する油のプールに通される。油のプールは、再循環加熱器によって加熱することによって、400乃至600°F、好ましくは450乃至550°Fの温度に保持され、それによって、容器70の塔底からポンプで送られ、加熱器84内で加熱され、容器70内に戻される。一般的に、前記再循環ストリームの流量は、液体層(容器の塔底に内在するオイルのプール)を所望の温度に保持するために、加熱器84において十分な熱交換を提供するに十分であり、それによって、所望の蒸留液留分76を作り出し、加熱器84の管路を通じて乱流および高レイノルズ数を保持する。
【0055】
容器52から容器70に入る廃油ストリームは、前記液体層と直接接触することによって加熱され、それによって、液体層の温度未満の沸点で廃油の成分を気化させ、蒸留液ストリーム76を作り出す。蒸留液ストリーム76の沸点範囲は、一般的に約350乃至約500°Fであり、一般的に濃縮されて燃料などに使われる。ライン82内の塔底ストリームの一部は、第三のその場フラッシュ蒸留容器90に通される。
【0056】
容器90は、高温の液体層を使用して容器70に類似した原理で操作して、直接接触によって流入ストリームを加熱する。油の液体層は、再循環加熱器100を通じて加熱することによって、550乃至750°F、好ましくは600乃至700°Fに保持され、それによって、油が容器90の塔底からポンプで送られ、加熱器100で加熱され、容器90に戻される。再循環ストリーム82の一部は、フラッシュ蒸留容器112に通される。液面110である液体層は、容器90の下部に保持される。容器90は、沸点範囲が約500乃至約650°Fの蒸留液ストリーム96を生成する。
【0057】
上述の実施態様では、容器52、70、および90は、大気圧で操作される。また、これらの容器は、当業者に公知の圧力または真空下で操作され、廃油から基油留分の類似した分離を達成することも可能である。
【0058】
容器112は、一般的にフラッシュ蒸留容器であり、完全な真空乃至500mmHg、好ましくは2乃至30mmHgの範囲の真空下で操作される。容器90からの供給ストリーム106は、550乃至700°F、好ましくは600乃至650°Fに加熱された容器112の塔底からの再循環ストリーム126と混合され、それによって、供給ストリームの流量と再循環ストリームの流量の質量比は、1:2乃至1:40、好ましくは1:10乃至1:20となる。生成される蒸留液ストリームは、蒸留液出口118を通過し、沸点範囲が約650乃至約1050°Fである。液面130は、容器112内でも保持される。塔底ストリームはライン120を介して引き出され、ポンプ122を経て排出ライン124に送られるが、この排出ラインを介して前記ストリームの一部が生成物として回収される。前記ストリームの一部も、ライン126および加熱器128を経て戻され、流入ライン106内のストリームに合流する。前記加熱塔底ストリームを使用して、容器112への所望の供給温度を保持する。
【0059】
上述の示された実施態様では、蒸気のような除去ガスを容器52、70、90、および112のうちの1つ以上の添加することは、油から軽い成分を除去し、蒸留および分離プロセスを補助するのに好都合となりうる。除去ガスは、容器の下半分の様々な地点に追加するか、またはこれらの容器の油供給ストリームに添加することが可能である。
【0060】
容器140内で使用される抽出プロセスは、低品質基油分子から高品質基油分子を分離するための、当業者に既知である、あらゆる分離プロセスとすることが可能である。当該のプロセスは、エタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコール-モノ(低アルキル)エーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコール-モノ(低アルキル)エーテル、o-クロロフェノールフルフラール、アセトン、ギ酸、4-ブチロラクトン、低モノまたはジカルボン酸の低アルキルエーテル、ジメチルホルムアミド、2-ピロリドンおよびN(低アルキル)2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、エピクロルヒドリン、ジオキサン、モルホリン、低アルキルおよびアミノ(低アルキル)モルホリン、ベンゾニトリルおよびジ(低アルキル)スルホキシド、およびホスホン酸塩などのような物質による溶媒抽出を含む。
【0061】
N-メチル-2-ピロリドンは、本発明のプロセスの好適な溶媒である。好適な一実施態様では、抽出は、溶媒および油が少なくとも部分的に混和性である温度、一般的に約100乃至約250°F、好ましくは約130乃至190°Fで行われる。一般的に、溶媒および油はどちらも、同じ温度である必要はないが、前記温度範囲内で抽出カラムに供給される。抽出カラムに供給される溶媒量(給油に対する溶媒の割合)は、一般的に50乃至1000容量%、好ましくは100乃至500容量%である。一般的に、抽出は、充填カラム(packed column)またはトレイドカラム(trayed column)内で行われ、それによって溶媒はカラムの塔頂に供給され、基油は塔底に供給される。充填カラムは、当業者に既知である従来型の構造化された、またはランダムなパッキングのいずれかを含むことができる。水は、溶媒選択性の制御が必要な場合に、溶媒または抽出カラムに注入することが可能である。同様に、温度勾配、または局所加熱または冷却を、ライン50に沿った様々な地点で、または抽出カラム全体で使用して、当業者に既知である性能および選択性に作用させることができる。同じまたは異なる温度でのラフィネートおよび抽出の両方のリサイクルも用いることができる。場合によっては、抽出カラムからのサイドストリームの除去、ラフィネートまたは抽出ストリームの冷却、サイドストリームの冷却、油から溶媒の一部を分離すること、およびカラムへ油を戻すことに有効となりうる。溶媒は、蒸留を使用して、ライン157内のラフィネートストリームおよびライン155内の抽出ストリームから回収することが可能である。蒸留は、気圧的に、または真空を用いて行うことができる。基油から溶媒を分離するように、いずれも気圧的に圧力下または真空下で操作される、1つ以上のフラッシュ分離器、マルチステージカラムなど、またはそれらの組み合わせを使用することができる。
【0062】
本発明の好適な一実施態様では、上述のように、水素化精製を使用して、最終ステップとして、低品質基油ストリームを精製および飽和させる。低品質基油ストリームは、基油供給物1バレルあたり50乃至2000scfの水素、好ましくは基油供給物1バレルあたり70乃至150scfの水素と混合され、500乃至1200°F、好ましくは650乃至850°Fに加熱され、約100乃至約3000psig、好ましくは約500乃至約800psigに加圧される。混合物は、活性粘土または使用済み触媒からなる保護層を通過し、次いで、当業者に既知である、周期表のV(b)群、VI(b)群、およびVIII群からの金属要素を有する1つ以上の水素化処理触媒を含む水素化処理反応器を通過する。アルミナ上のコバルト-モリブデン、アルミナ上のニッケル-モリブデン、またはシリカ/アルミナ上のニッケル-タングステンなどの、活性炭、キーザルガ、シリカ、アルミナなどのような担体上に保持された、ニッケル、モリブデン、バナジウム、タングステン、またはコバルト金属の化合物が好ましい。一般的に、水素化処理は、約0.1乃至約10の空間速度、好ましくは、1時間あたり、1容量につき0.5乃至2容量の液体供給において行われる。一般的に、1つの反応ステージしか使用されない。しかし、必要に応じて、一連の複数の反応器を使用することによって、複数のステージを使用することができる。水素化処理の後、基油留分は、フラッシュ容器内で水素ガスおよび揮発性の反応性生物から分離されるが、これは減圧して操作することが可能である。一般的に、圧力は、広範囲の好適な圧力があり得るが、完全な真空乃至約100psigである。
【0063】
油ストリーム156および206の両方によって、必要に応じて、蒸留カラムを使用して、基油を異なる粘度カットに細分することができる。様々なバリエーションおよびスキームを再生または回復熱交換器に取り入れて、プロセスストリームから熱を回収し、プロセスの熱効率を最適化することが可能である。
【0064】
水、グリコール、溶媒、軽質炭化水素などのような前記ストリームの成分をさらに分離するような、更なる処理を容器52からの蒸留液ストリーム54に行うことが可能であり、それによって、使用が可能な、または高品質生成物に向上させることが可能な、別個の生成物を作り出す。これらの生成物ストリームはまた、当業者に既知である、更なる処理を行って、それらの品質を高めることも可能である。
【0065】
好適な実施態様では、ステージ#2における更なる処理に対して、容器112から1つの蒸留液カットだけしか取り込まれない。また、容器112の後ろに第二のカットまたは別の分留容器(図示せず)を取り込んで、基油をさらに細分して、基油の異なる粘度グレードなどを生成することも可能であり、次いで、ステージ2およびステージ3で別々に処理することができる。
【0066】
上述の好適な実施態様は、3つのステージ間の連続的な流れを示す。特定の事例では、ステージ間に中間貯蔵容器を設けて、当業者に既知である、プロセスのサージ、特定の物質を外すこと、スムーズな動作、品質管理用途を可能にし、1つ以上の基油蒸留液のカットなどを可能にすることが望ましい場合がある。
【0067】
また、場合によっては、当業者に既知である、相間移動触媒などを使用して、プロセスの第二ステージの操作を高め、それによって、プロセスの選択性などが高められ、したがって、低品質基油分子から高品質分子のより良好な分離を提供することが好ましいこともある。
【0068】
実施態様に示されるプロセスの第三ステージでは、複数の保護層を有し、反応器を並列また波力列に実行させて、反応器間または保護層と反応器との間に相分離器などを用いるのに好都合となりうる。さらに、場合によっては、軽い混入物の基油を除去するか、または異なる粘度カットにさらに細分するのに好都合となりうる。本願明細書に記述されたシステムでは水素回収システムを用いていないが、これを用いて、生成物基油から分離した後に、未反応の水素および反応生成物を回収および精製することが可能である。
【0069】
場合によっては、当業者に既知である、別個の水素化処理において、蒸留液ストリーム54および/または76を水素処理することによって、これらの品質を高めることが望ましいことがある。別様には、これらのストリームをストリーム172および/またはストリーム96と混合して、混合したストリームを水素処理することが可能である。後者の手法を用いた場合、基油カットおよび燃料油カットを生成するために、更なる分留ステージを含むことが望ましい場合がある。
【0070】
図3に、本発明の全般的な実施態様を示す。示された実施態様では、廃油ストリーム312は、基油分離ゾーン314に充填され、ここでは、基油成分(基油留分)の一部(ライン320)が廃油内の他の物理的混入物(ライン316)から分離される。実際には、本願明細書では簡潔に示されているが、一般的に、1つ以上のストリームを生成し、これらを選択的に分離してライン316を介して回収するような方法で、様々な物理的混入物を基油留分から取り除くことが可能である。また、物理的混入物には、(含まれる全ての物質の沸点範囲が650°F以下であることが望まれる場合があるが)一般的に沸点範囲が約500°F以下の、軽質炭化水素、水、グリコールなどのような低分子量の物質、および一般的に沸点が約1050°Fを超える、粒状物、高分子、塩類などを含む高分子量物質および低揮発性の物質が挙げられる。ライン320を介して回収された基油留分は、一般的に、18乃至40の炭素原子数で、沸点範囲が約500乃至1050°Fである基油への使用または製造に好適な炭化水素分子を含む。
【0071】
高品質基油分離ゾーン322では、高品質基油分子(高品質基油)の一部が、低品質基油分子(低品質基油)から分離され、ライン324を介して回収され、高品質基油処理ゾーン325に送られるが、ここではライン327を介して回収された様々な元素混入物を取り除くために、より完全に飽和および処理され、ライン326を介して回収されるAPI 1509のI群、II群、III群のうちの少なくとも1つの要件を満たす高純度基油を生成する。様々な物質、混入物、誘導体、およびその生成物などは、ライン327を経て回収される。
【0072】
低品質基油は、ライン323を介して回収され、低品質基油処理ゾーン328に送られるが、ここではライン332を介して回収された様々な元素混入物を取り除くために、より完全に飽和および処理され、ライン330を介して回収されるAPI 1509のI群、II群、III群のうちの少なくとも1つの要件を満たす市場性のある品質基油を生成する。様々な物質、混入物、誘導体、およびその生成物などは、ライン322を経て回収される。これは、本発明の更なるプロセスの比較的全般を示すものである。しかし、本発明の重要な機能を示している。
【0073】
第一ステージ、ゾーン314では、基油留分が、廃油内の物理的混入物から分離される。一般的に、当該の混入物は、水、軽質炭化水素、溶媒、固体、高分子、高分子量炭化水素、潤滑油添加物、化学薬品、塩類などを含む。複数のプロセスまたはプロセスを組み合わせたものを使用して、当業者に既知である、様々な形態の抽出、蒸留、濾過、遠心分離、吸収、および吸着などを含む分離を達成する。一般的に、分離は、基油留分の物理的または化学的特性の差異、および様々な汚染物質に基づいて行われる。
【0074】
次いで、第二ステージでは、基油留分がプロセスのゾーン322に送られ、ここでは、低品質基油分子の一部が高品質基油から分離される。これらの分子は、極性物、芳香族化合物、オレフィン、不飽和化合物、ヘテロ原子などを含む場合があり、これらは高品質基油分子から分離され、一般的に飽和した、パラフィンおよび非芳香族である。ライン323内のストリームは、一般的に、高濃度の硫黄、酸素、窒素、オレフィン、芳香族化合物などを有することになる。様々なプロセスまたはその組み合わせを使用して、高品質基油からの前記物質の分離を達成することができる。これらのプロセスは、当業者に既知である、様々な形態の抽出、限外濾過、吸収、吸着、分子篩などを含む。
【0075】
第三ステージでは、当業者に既知である、水素化、アルキル化、分子的な改質、分子的な置換など、またはその組み合わせによって、ゾーン323においてストリーム323が処理され、硫黄、窒素、酸素などの不要な要素を取り除き、低品質基油ストリーム内の炭化水素分子のうちの少なくとも一部の飽和割合を増加させる。ライン330を介して生成された基油は、一般的に、API 1509のI群、II群、III群の要件を満たすに十分な品質のものである。
【0076】
第四ステージでは、当業者に既知である、水素化、アルキル化、分子的な改質、分子的な置換など、またはその組み合わせによって、ゾーン325においてストリーム324が処理され、硫黄、窒素、酸素などの不要な要素を取り除き、低品質基油ストリーム内の炭化水素分子のうちの少なくとも一部の飽和割合を増加させる。ライン326を介して生成された基油は、一般的に、API 1509のI群、II群、III群の要件を満たすに十分な品質のものである。
【0077】
図4に、本発明の全般的な実施態様を示す。示された実施態様では、廃油ストリーム412は、基油分離ゾーン414に充填され、ここでは、基油成分(基油留分)の一部、(ライン420)が廃油内の他の物理的混入物(ライン416)から分離される。実際には、本願明細書では簡潔に示されているが、一般的に、1つ以上のストリームを生成し、これらを選択的に分離してライン416を介して回収するような方法で、様々な物理的混入物を基油留分から取り除くことが可能である。また、物理的混入物には、(含まれる全ての物質の沸点範囲が650°F以下であることが望まれる場合があるが)一般的に沸点範囲が約500°F以下の、軽質炭化水素、水、グリコールなどのような低分子量の物質、および一般的に沸点が約1050°Fを超える、粒状物、高分子、塩類などを含む高分子量物質および低揮発性の物質が挙げられる。ライン420を介して回収された基油留分は、一般的に、18乃至40の炭素原子数で、沸点範囲が約500乃至1100°Fである基油への使用または製造に好適な炭化水素分子を含む。
【0078】
高度な超高品質基油分離ゾーン422では、高品質基油分子(高品質基油)の一部が、低品質基油分子(低品質基油)から分離され、製品基油として販売するために、ライン424を介して回収される。前記高品質基油は、API 1509に示されるようなI群、II群、またはIII群のうちの少なくとも1つを満たす。低品質基油は、ライン26を介して回収され、燃料油として販売されるか、またはさらに処理して油の品質を市場性のある品質の基油に向上させる。
【0079】
第一ステージ、ゾーン414では、基油留分が、廃油内の物理的混入物から分離される。一般的に、当該の混入物は、水、軽質炭化水素、溶媒、固体、高分子、高分子量炭化水素、潤滑油添加物、化学薬品、塩類などを含む。複数のプロセスまたはプロセスを組み合わせたものを使用して、当業者に既知である、様々な形態の抽出、蒸留、濾過、遠心分離、吸収、および吸着などを含む分離を達成する。一般的に、分離は、基油留分の物理的または化学的特性の差異、および様々な汚染物質に基づいて行われる。
【0080】
次いで、第二ステージでは、基油留分がプロセスのゾーン422に送られ、ここでは、ライン526を経て低品質基油分子の一部が分離される。これらの分子は、極性物、芳香族化合物、オレフィン、不飽和化合物、ヘテロ原子などを含む場合があり、これらは高品質基油分子から分離され、一般的に飽和した、パラフィンおよび非芳香族である。ライン424内の高品質基油分子は、一般的に飽和割合が90%を超え、硫黄含量が約0.3重量パーセント未満である高品質基油ストリームである。ライン426内のストリームは、一般的に、高濃度の硫黄、酸素、窒素、オレフィン、芳香族化合物などを有することになる。様々なプロセスまたはその組み合わせを使用して、高品質基油からの前記物質の分離を達成することができる。これらのプロセスは、当業者に既知である、様々な形態の抽出、限外濾過、吸収、吸着、分子篩などを含む。
【0081】
図5は、本発明の全般的な実施態様500を示す図である。示された実施態様では、廃油ストリーム512は、基油分離ゾーン514に充填され、ここでは、基油成分(基油留分)の一部、ライン520、が廃油内の他の物理的混入物から分離される、ライン516。実際には、本願明細書では簡潔に示されているが、一般的に、1つ以上のストリームを生成し、これらを選択的に分離してライン516を介して回収するような方法で、様々な物理的混入物を基油留分から取り除くことが可能である。また、物理的混入物には、(含まれる全ての物質の沸点範囲が650°F以下であることが望まれる場合があるが)一般的に沸点範囲が約500°F以下の、軽質炭化水素、水、グリコールなどのような低分子量の物質、および一般的に沸点が約1050°Fを超える、粒状物、高分子、塩類などを含む高分子量物質および低揮発性の物質が挙げられる。ライン520を介して回収された基油留分は、一般的に、18乃至40の炭素原子数で、沸点範囲が約500乃至1100°Fである基油への使用または製造に好適な炭化水素分子を含む。
【0082】
高品質基油分離ゾーン522では、高品質基油分子(高品質基油)の一部が、低品質基油分子(低品質基油)から分離され、ライン524を介して回収され、高品質基油処理ゾーン528に送られるが、ここではライン525を介して回収された様々な元素混入物を取り除くために、より完全に飽和および処理され、ライン526を介して回収されるAPI 1509のI群、II群、III群のうちの少なくとも1つの要件を満たす高純度基油を生成する。様々な物質、混入物、誘導体、およびその生成物などは、ライン527を経て回収される。低品質基油は、ライン523を介して回収され、燃料油として販売されるか、またはさらに処理して油の品質を市場性のある品質の基油に向上させる。
【0083】
第一ステージ、ゾーン514では、基油留分が、廃油内の物理的混入物から分離される。一般的に、当該の混入物は、水、軽質炭化水素、溶媒、固体、高分子、高分子量炭化水素、潤滑油添加物、化学薬品、塩類などを含む。複数のプロセスまたはプロセスを組み合わせたものを使用して、当業者に既知である、様々な形態の抽出、蒸留、濾過、遠心分離、吸収、および吸着などを含む分離を達成する。一般的に、分離は、基油留分の物理的または化学的特性の差異、および様々な汚染物質に基づいて行われる。
【0084】
次いで、第二ステージでは、基油留分がプロセスのゾーン522に送られ、ここでは、低品質基油分子の一部が高品質基油分子から分離される。これらの低品質分子は、極性物、芳香族化合物、オレフィン、不飽和化合物、ヘテロ原子などを含む場合があり、これらは高品質基油分子から分離され、一般的に飽和され、パラフィンおよび非芳香族である。ライン523内のストリームは、一般的に、高濃度の硫黄、酸素、窒素、オレフィン、芳香族化合物などを有することになる。様々なプロセスまたはその組み合わせを使用して、高品質基油からの前記物質の分離を達成することができる。これらのプロセスは、当業者に既知である、様々な形態の抽出、限外濾過、吸収、吸着、分子篩などを含む。
【0085】
第三ステージでは、当業者に既知である、水素化、アルキル化、分子的な改質、分子的な置換など、またはその組み合わせによって、ゾーン525においてストリーム524が処理され、硫黄、窒素、酸素などの不要な要素を取り除き、低品質基油ストリーム内の炭化水素分子のうちの少なくとも一部の飽和割合を増加させる。ライン526を介して生成された基油は、高純度基油であり、一般的に、API 1509のI群、II群、III群の内の1つの要件を満たすに十分な品質のものである。
【0086】
本発明のプロセスによって、基油ストリームが廃油ストリームから分離され、その後、高品質基油ストリームおよび低品質基油ストリームに分離され、次いで、低品質基油ストリームの品質を向上させて販売可能な基油ストリームを生成する。これらのステップの組み合わせでは、極めて多量の高品質基油を生み出す、極めて優れたプロセスをもたらしている。
【0087】
前記マルチステージプロセスの使用によって、既存のプロセス方法を超える複数の顕著な利点が提供される。本特許の発明によって、使用可能な製品の品質に対する市場の要求を満たす製品を製造するという目的と、廃油から生成される基油の量を最大化するという要望を満たすという目的との両方が可能となる。既存のプロセスは、プロセス効率または収率損失を犠牲にすることでしか高品質の基油を生成することができない。
【0088】
図2のライン156および206を介して生成された基油の総量は、従来のプロセスによって生成された量よりも多く、全体的な品質も高い。従来の抽出プロセスを使用して他の不要な成分から基油を分離した場合、高品質基油を生成するために抽出処理を比較的厳しくする必要があり、その結果、過剰抽出による基油の収率損失をもたらす。同様に、従来の水素化処理プロセスを使用した場合も、高品質基油を生成するためには、厳しい処理が必要である。この高度な処理では、基油分子の一部がより小さな非基油分子に分解され、収率損失をもたらす。したがって、これらのプロセスのいずれも、単独では高収率かつ高品質の基油を生成することができない。
【0089】
本発明によれば、抽出された油が、収量損失を懸念することなく次のステージにおいて回収および品質が向上されるので、基油物質を充填して抽出し、厳しい抽出を行って、高品質基油から混入物を含む低品質基油を分離することができる。本願明細書で使用されるマルチステージプロセスによって、収率損失の脅威が取り除かれるので、多量かつ高品質の基油を生成することが可能である。この驚くべき結果は、これまで既知の処理方法では達成されなかった。
【0090】
本発明の更なる利点は、全体的に高品質である基油を高い収量で生成する能力である。一般的に、所望の基油の基本的な品質に依存するが、廃油ストリームの油含量の45乃至65パーセントが、ストリーム156を介してステージ2で回収され、さらに基油の10乃至30パーセントが、ストリーム206を介してステージ3で生成される。一般的に、廃油ストリーム42に含まれる基油の90パーセント以上が、本願明細書に記述されたプロセスを通して回収および/または品質が高められ、全体的な基油収量は75乃至85パーセントとなる。一般的に、既知のプロセスでは、基油の60乃至65パーセントの収量でしかない。
【0091】
既存の技術と比較して本発明の予想外の利点は、様々な仕様および品質の廃油を処理することができ、さらに高品質基油を大量に生成する能力である。既存のプロセスは、原材料の品質に大きく影響され、それらの製品の品質および/または収量は、原材料の品質に大きく影響される。本願明細書で概説した本発明は、幅広い種類の基油を処理することができ、さらに、高品質基油を製造し、基油製品全体の高い収量を保持することができる。
【0092】
また、本発明は、設備投資を減じるという予想外の利点を有する。既知のプロセスでは、良好な基油分子は、一般的に、良好な基油分子の品質を向上させる必要がない場合であっても、汚染された基油分子によって処理される。そのため、品質向上プロセスでは、サイズを大きくして基油分子の全てを一緒に処理しなければならない。一般的に、品質向上装置は、建設および運用に非常に費用がかかる。本発明では、良好な基油分子は、汚染された分子の品質を向上させる前に、汚染された基油分子から分離される。こうすることによって、品質向上処理装置を小型化することができ、それによって、資本および運用コストを節約することができる。
【0093】
本願明細書に開示されたタイプの蒸留システムは、従来のシステムを超える実質的な利点を提供することを考慮したものである。本プロセスは、各ステージのより単純な装置によって、より効率的な分離を可能にする単純なフラッシュ容器を使用しているので、更なる効率および経済的な利点を提供する。同様に、一般的に廃油に見出される混入物の優れた分離を可能にし、更なる処理および品質向上に適した基油の蒸留液が得られる。物理的混入物の逐次的な除去によっても、混入物の分離にわたる良好な制御が可能になり、燃料油、アスファルトなどのような基油蒸留液に加えて、有用な生成物が得られる。本願明細書に記述されたインシトゥ蒸留システムには、薄膜蒸発器などに見られるような機械的手段がなく、その結果、主要なメンテナンスおよび運用コストが削減される。インシトゥ蒸留システムの更なる利点は、充填カラムを介して使用済み油を処理するときに遭遇する可能性のある、一般的な汚染パッキングの問題を回避することである。フラッシュ容器にはパッキングがなく、したがって、汚染物の付着が生じる表面および接触点が最小となる。充填カラムを使用して蒸留を達成するときに、パッキングは、タール質の付着物で汚染される可能性があり、パッキング効率を減じ、最終的には、カラム内の物質の流れを制限することになり、運用およびメンテナンスコストを増加させることになる。
【0094】
本プロセスの驚くべき利点は、一般的に熱面を用いた廃油処理施設において遭遇する熱交換時の付着物の問題を回避する能力である。容器70および90への戻りストリームを使用して、容器の塔底内の液体層内の温度を保持する。容器70および90に供給される油は、容器の塔底内の液体層と直接接触することによって、所望の分離を達成するに必要な温度まで過熱される。前記利点は、容器の塔底に内在するより高温の液体との直接接触を介して、油を加熱および気化することによって達成される。一般的に熱交換器の熱面の境界層で蒸発が生じたときに発生して付着物をもたらす汚染反応は、汚染生成物が付着する熱金属面が存在しないため、効率の低下をもたらし、メンテナンスを低下させる。したがって、本発明は、熱交換の効率が増加し、メンテナンスを軽減し、最終的に装置の有効性を増加させる。
【0095】
本願明細書に用いた溶媒抽出システムは、APIのIII群の基油を生成することによって、驚くべき結果をもたらしている。他のいかなる再精製技術でも、このような高品質の基油を生成することはできなかった。
【0096】
特定の好適な実施態様を参照して本発明を記述したが、記述された実施態様は、例示的なものであってその性質を制限するものではなく、本発明の範囲内で多数の変更および改良を行うことが可能であることに留意されたい。当該の多数の変更および改良は、上述の好適な実施態様の説明を再考察することで、当業者によって明らかで望ましいものとみなされるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃油から多量の高品質基油を効率的に生成するための方法であって、
a) 基油留分を生成するために、前記廃油から前記基油成分の少なくとも一部を分離するステップと、
b) 前記基油留分を、高品質基油ストリームおよび低品質基油ストリームに分離するように処理するステップと、
c) 不要な成分を改善または取り除くことによって、市場性のある品質の基油ストリームまで前記低品質基油ストリームの品質を高めるように、前記低品質基油ストリームを処理するステップと、を含む方法。
【請求項3】
前記基油成分は、蒸留、真空蒸留、蒸発、濾過、限外濾過、溶媒抽出、抽出、遠心分離、吸収、および吸着のうちの少なくとも1つによって前記廃油から分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基油留分は、蒸留によって前記廃油から分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基油留分は、真空蒸留によって廃油から少なくとも部分的に分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記基油留分の沸点は、約500乃至約1100°Fである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記高品質基油ストリームおよび前記低品質基油ストリームは、濾過、限外濾過、分子篩、抽出、溶媒抽出、吸収、および吸着のうちの少なくとも1つによって分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記高品質潤滑油基油ストリームおよび前記低品質潤滑油基油ストリームは、溶媒抽出によって分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒は、N-メチル2ピロリドンである、請求項11に記載の方法。
【請求項10】
前記高品質基油ストリームは、API(American Petroleum Institute:米国石油協会)1509に指定された、I群、II群、またはIII群ベースの基油である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記低品質基油は、水素化、アルキル化、および分子的改善のうちの少なくとも1つによって処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記低品質基油内の不要な成分の量を減じて、前記基油分子をより完全に飽和させるために、前記低品質基油を水素化する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
水素化処理は、好適な担体上に担持された、V(b)群、VI(b)群、およびVIII群の金属およびその化合物を含む触媒の存在下で、約500乃至約1000°Fの温度および約100乃至2000psigの圧力において、水素ガスを使用して行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記市場性のある品質の潤滑油は、API 1509に指定された、I群またはII群ベースの油である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記不要な成分は、極性物、芳香族化合物、ヘテロ原子不飽和化合物、オレフィンから構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記基油留分は、蒸留によって前記廃油から分離され、沸点範囲が約500乃至約650°Fである蒸留液ストリーム、および沸点範囲が約650乃至約1100°Fである蒸留液ストリームのうちの少なくとも1つを生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記沸点範囲が約500乃至約650°Fである蒸留液ストリームの少なくとも一部は、前記不要な混入物を処理する前に前記低品質基油ストリームと混合されて、前記市場性のある基油ストリームを生成する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記不要な混入物は、水素化処理によって取り除かれる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記高品質基油ストリームをさらに処理して、不要な成分を改善または取り除いて、高純度基油ストリームを生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記高品質基油は、水素化、アルキル化、および分子的改善のうちの少なくとも1つによって処理される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記低品質基油内の不要な成分の量を減じて、前記基油分子をより完全に飽和させるために、前記高品質基油ストリームを水素化する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
水素化処理は、好適な担体上に担持された、V(b)群、VI(b)群、およびVIII群の金属およびその化合物を含む触媒の存在下で、約500乃至約1200°Fの温度および約100乃至2000psigの圧力において、水素ガスを使用して行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
廃油から高純度基油を効率的に生成するための方法であって、
a)基油留分を生成するために、前記廃油から前記基油成分の少なくとも一部を分離するステップと、
b)前記基油留分を、高品質基油ストリームおよび低品質基油ストリームに分離するように処理するステップと、
c)不要な成分を改善または取り除いて高純度基油を精製するために、前記高品質基油ストリームを処理するステップと、を含む方法。
【請求項25】
前記基油成分は、蒸留、真空蒸留、蒸発、濾過、限外濾過、抽出、遠心分離、吸収、および吸着のうちの少なくとも1つによって前記廃油から分離される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記基油留分は、蒸留によって前記廃油から分離される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記基油留分は、真空蒸留によって廃油から少なくとも部分的に分離される、請求項26に記載の方法。
【請求項27】
前記基油留分の沸点は、約500乃至約1100°Fである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記高純度基油ストリームは、API 1509に指定された、II群、またはIII群ベースの基油である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記高品質基油ストリームおよび前記低品質基油ストリームは、濾過、限外濾過、分子篩、抽出、溶媒抽出、吸収、および吸着のうちの少なくとも1つによって分離される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記高品質基油ストリームおよび前記低品質基油ストリームは、溶媒抽出によって分離される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記溶媒は、N-メチル2ピロリドンである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記高品質基油は、水素化、アルキル化、および分子的改善のうちの少なくとも1つによって処理される、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記低品質基油内の不要な成分の量を減じるか、または前記基油分子をより完全に飽和させるために、前記高品質基油を水素化する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
水素化処理は、好適な担体上に担持された、V(b)群、VI(b)群、およびVIII群の金属およびその化合物を含む触媒の存在下で、約500乃至約1000°Fの温度および約100乃至2000psigの圧力において、水素ガスを使用して行われる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
廃油から超高品質基油を効率的に生成するための方法であって、
a)基油留分を生成するために、前記廃油から前記基油成分の少なくとも一部を分離するステップと、
b)条件下で溶媒抽出を使用するか、または前記油に少なくとも部分的に混和性のある溶媒によって前記基油留分を高度に処理して、超高品質基油ストリームおよび低品質基油ストリームに分離するステップと、を含む方法。
【請求項35】
前記基油成分は、蒸留、真空蒸留、蒸発、濾過、限外濾過、抽出、遠心分離、吸収、および吸着のうちの少なくとも1つによって前記廃油から分離される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記基油留分は、蒸留によって前記廃油から分離される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記基油留分は、真空蒸留によって廃油から少なくとも部分的に分離される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記基油留分の沸点は、約500乃至約1100°Fである、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記超高品質基油ストリームは、API 1509に指定された、II群、またはIII群ベースの基油である、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記溶媒は、N-メチル2ピロリドンである、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記溶媒抽出は、100乃至300°Fで行われる、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記溶媒抽出は、3:1を超える溶媒処理比率によって行われる、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記溶媒抽出は、エントレインメントを制限し、油と溶媒相の良好な分離を可能にするようにデザインされた抽出カラム内で行われる、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
前記溶媒抽出は、充填カラム内で行われる、請求項34に記載の方法。
【請求項45】
前記滞留時間は、効率的な溶媒と油との接触および良好な相の遊離を可能にするに十分である、請求項34に記載の方法。
【請求項46】
抽出を高めるために相間移動触媒を使用する、請求項34に記載の方法。
【請求項47】
前記超高品質基油をさらに処理して、少なくとも2つの異なる粘性カットに細分する、請求項34に記載の方法。
【請求項48】
少なくとも1つの蒸留ゾーンにおけるその場フラッシュ蒸留(in-situ flash distillation)によって、様々な沸点の複数の成分を含む液体ストリームを分離して、少なくとも1つの塔頂ストリームおよび少なくとも1つの塔底ストリームを生成するための方法であって、
a)蒸留ゾーン内に含まれる加熱液体層を前記液体ストリームに通過させて、塔頂ストリームおよび塔底ストリームを生成するステップと、
b)前記蒸留ゾーン内の前記液体層の加熱を前記液体供給ストリームの一部の気化に十分な温度に保持することによって、塔底ストリームおよび気化蒸留液ストリームを生成するステップと、
c)前記蒸留ゾーンから蒸留液ストリームの少なくとも一部を通過させるステップと、
d)別の蒸留ゾーンへの充填液体ストリームとして使用するか、または製品ストリームとして使用するために、前記塔頂ストリームの少なくとも一部を通過させるステップと、を含む方法。
【請求項49】
複数のフラッシュ蒸留ゾーンが使用される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記フラッシュ蒸留ゾーンのうちの少なくとも1つは、真空下で働かされる、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記フラッシュ蒸留ゾーンのうちの少なくとも1つは、充填カラムである、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
2つのフラッシュ蒸留容器が使用される、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
3つのフラッシュ蒸留容器が使用される、請求項48に記載の方法。
【請求項54】
4つのフラッシュ蒸留容器が使用される、請求項48に記載の方法。
【請求項55】
5つ以上のフラッシュ蒸留容器が使用される、請求項48に記載の方法。
【請求項56】
前記液体ストリームは、付着しやすい液体である、請求項48に記載の方法。
【請求項57】
前記液体ストリームは、炭化水素ストリームである、請求項48に記載の方法。
【請求項58】
前記液体ストリームは、廃油である、請求項48に記載の方法。
【請求項59】
沸点範囲が約500乃至約600°Fである塔頂ストリームおよび沸点が約600乃至約1100°Fである塔頂ストリームが生成される、請求項52に記載の方法。
【請求項60】
前記液体ストリームの一部を蒸発させるに十分な温度まで、前記蒸留ゾーン内の前記液体層を加熱するに十分な温度で、前記塔底ストリームが加熱され、一部が前記蒸留ゾーンに戻され、前記蒸留ゾーンから塔頂ストリームを生成する、請求項48に記載の方法。
【請求項61】
前記液体ストリームは、蒸留前に前記油を調整するためにアルカリまたは塩基で処理される、請求項48に記載の方法。
【請求項62】
前記アルカリまたは塩基は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのうちの1つである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記液体ストリームは、フラッシュ蒸留の前に、水、軽質炭化水素、および低沸点材料を取り除くように処理される、請求項48に記載の方法。
【請求項64】
前記液体ストリームは、その場フラッシュ蒸留の前に、水および低沸点成分を取り除くように、蒸留を使用して処理される、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
前記液体ストリームは、蒸留の前に、アルカリまたは塩基で処理され、また、水および軽質炭化水素を取り除くように処理される、請求項48に記載の方法。
【請求項66】
その場フラッシュ蒸留(in-situ flash distillation)によって、様々な沸点の複数の成分を含む液体ストリームを分離するためのシステムであって、
a)塔頂出口を介して塔頂ストリームを生成し、塔底ストリーム出口から塔底ストリームを生成するために、フラッシュ容器内の加熱液体層に前記液体ストリームを充填するステップであって、前記フラッシュ容器は、少なくとも頂部および底部と、液体ストリーム入口と、容器の頂部付近の蒸留液出口と、前記容器の底部付近の下位部および塔底ストリーム出口とを有し、その下位部内に加熱液体層を含むステップと、
b)加熱塔底ストリームを生成するために前記フラッシュ容器からの前記塔底ストリームを加熱し、前記加熱塔底ストリームの一部を前記フラッシュ蒸留ゾーン内の前記液体層に戻すステップと、を含む方法。
【請求項67】
複数のフラッシュ蒸留容器を使用して、複数の蒸留液ストリームおよび複数の生成物塔底ストリームを生成する、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記フラッシュ蒸留容器のうちの少なくとも1つは、真空下で働かされる、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記フラッシュ蒸留容器のうちの少なくとも1つは、充填カラムである、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
2つのフラッシュ蒸留容器が使用される、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
3つのフラッシュ蒸留容器が使用される、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
4つのフラッシュ蒸留容器が使用される、請求項67に記載の方法。
【請求項73】
5つ以上のフラッシュ蒸留容器が使用される、請求項67に記載の方法。
【請求項74】
前記液体ストリームは、炭化水素ストリームである、請求項66に記載の方法。
【請求項75】
前記液体ストリームは、廃油である、請求項61に記載の方法。
【請求項76】
沸点範囲が約500乃至約650°Fの範囲である蒸留液ストリームおよび沸点が約650乃至約1100°Fである蒸留液ストリームが生成される、請求項70に記載の方法。
【請求項77】
前記液体ストリームの一部を蒸発させるに十分な温度まで、前記第一のフラッシュ蒸留ゾーン内の前記液体層を加熱するに十分な温度で、前記塔底ストリームが加熱され、一部が前記蒸留ゾーンに戻され、前記蒸留ゾーンから塔頂ストリームを生成する、請求項66に記載の方法。
【請求項78】
前記第一のフラッシュ蒸留ゾーンからの前記塔底ストリームの一部を蒸発させるに十分な温度まで、前記第二のフラッシュ蒸留ゾーン内の前記液体層を加熱するに十分な温度で、前記第二のフラッシュ蒸留ゾーンからの前記塔底ストリームが加熱され、一部が前記蒸留ゾーンに戻され、前記蒸留ゾーンから塔頂ストリームを生成する、請求項70に記載の方法。
【請求項79】
前記液体ストリームは、蒸留前に前記油を調整するためにアルカリまたは塩基で処理される、請求項66に記載の方法。
【請求項80】
前記アルカリまたは塩基は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのうちの1つである、請求項77に記載の方法。
【請求項81】
前記液体ストリームは、蒸留の前に、水および軽質炭化水素を取り除くように処理される、請求項66に記載の方法。
【請求項82】
前記液体ストリームは、蒸留の前に、アルカリまたは塩基で処理され、また、水および軽質炭化水素を取り除くように処理される、請求項66に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−533240(P2008−533240A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500754(P2008−500754)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/007161
【国際公開番号】WO2006/096396
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(507301903)エー・アール・アイ テクノロジーズ エルエルシー (1)
【氏名又は名称原語表記】ARI TECHNOLOGIES, LLC
【住所又は居所原語表記】4533 Charlemagne Drive, Plano, Texas 75093, United States of America
【Fターム(参考)】