説明

廃油の再生処理方法および再生処理剤

【課題】エマルジョンが生じない、また、生じ難い、再生処理剤の提供と、そのような再生処理剤を用いた廃油から油を回収する方法を提供すること。
【解決手段】廃油に尿素を添加し、攪拌し、静置した後、油分を分離すること含む、灰分を除去した油を回収する方法。灰分を含有する廃油に硝酸アンモニウムとキレート剤を添加し、攪拌し、静置した後、油分を分離すること含む、灰分を除去した油を回収する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みエンジン油、使用済み工業用潤滑油などの灰分を含有する廃油(エマルジョン)から、灰分を除去し、油を回収する方法に関する。さらに、本発明は、これらの廃油から高品質な油を回収することができる廃油再生処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効利用及び環境保全の観点から、廃棄物の適性処理、リサイクルの促進等が社会的緊急課題として大きく取上げられている。これらの課題に対して、廃棄物処理法、リサイクル法、省エネ・リサイクル支援法、容器包装リサイクル法等の制定によって法制面からの整備が着々と進められている。廃棄物の排出量低減と共に廃棄物を再生し、それを可能な限り有効利用できるような再生処理技術の開発も求められている。特に、例えば、使用済みのエンジン油や工業用潤滑油などの再利用が困難な廃油の多くは焼却処分されていたためその再生処理技術が望まれていた。また、廃油中の金属分はダイオキシン発生に触媒的に働く恐れがあるため、その除去技術も望まれていた。
【0003】
従来からエンジン油などの潤滑油の廃油処理では、硫酸処理、白土処理を施すことが一般的に行われている。その処理方法としては、例えば、前処理により廃油中の水や浮遊するゴミを除去し、濃硫酸を加えて静置後、遠心分離により硫酸スラッジを分離する。残りの酸性状態の廃油に白土を加え加熱処理を行い中和し、次いで更に軽質油分を減圧蒸留で除去してから廃白土を濾過し、更に減圧脱気脱臭の後、再濾過して再生油を得る方法が挙げられる。しかしながら、上記の従来方法は硫酸スラッジや廃白土による二次公害の恐れがあり、また、活性白土が高価である上、特に再利用するには再生重油として一定値以下への低減が求められる灰分(金属分)等については充分に減少させることが出来ないなどの問題がある。
【0004】
また、他の処理方法として、例えば、溶剤抽出、水素化精製の処理方法も知られているがいずれも再生油のコスト高要因で実施されていない。更に、瀝青炭等を利用した廃油の再生技術を開発中との報告もあるがプラントが巨大規模になるため経済的でなく実用化されていない。
【0005】
通常のエンジン油にはエンジンの清浄性能、酸化防止性能、摩耗防止性能を高めるために金属系清浄剤、ジチオリン酸亜鉛、有機モリブデン化合物等の金属系添加剤を多く含有するため、使用済みエンジン油を多く含む廃油は灰分が多い。従って使用済みエンジン油を多く含む廃油から従来の処理方法で得られる再生重油は、灰分が多く残るためにボイラーや内燃機関用の燃料としては使用できなかった。特に非常に微細な煤(粒径20〜30nmのディーゼルパティキュレートと呼ばれる微粒子)を含む使用済みディーゼルエンジン油を含む廃油は、通常のフィルタを用いる方法や従来の再生処理方法ではこれらの煤の充分な除去が困難であるため、その再生重油は有効に利用されていない。
【0006】
また、一般に、工業用潤滑油の廃油には、塩類、アルカリを含有する非常に微細な粒径の不純物が存在し、また使用劣化で出来る副生成物はヒドロキシル基、或いはエーテル基等、水との親和性が大きい官能基を有する有機物を含有するため、沈降分離、遠心分離、濾過分離等の固体−液体分離によって不純物を完全に除去することは出来なかった。
【0007】
エンジン油を多く含む廃油中の灰分(金属分)などの不純物を効率よく、簡便かつ安価に除去、低減してより高品質な再生油を得ることを目的として、珪酸ナトリウムを再生処理剤として使用する方法が提案されている(特開2003-176492号公報、特許文献1)。
【特許文献1】特開2003-176492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の珪酸ナトリウムを再生処理剤として使用することで、廃油に含まれる不純物を効率よく、簡便かつ安価に除去、低減でき、高品質な再生油を得ることができる。この処理方法では、珪酸ナトリウムを水溶液とし、この水溶液と廃油とを攪拌混合し、廃油中の不純物を水相に移行させる。ところが、水溶液と廃油とを攪拌混合した後、静置しても、油相と水相との間にエマルジョンの相が形成され、静置時間を長くしても、エマルジョンが消失しない、との問題が新たに明らかになった。残ったエマルジョンは、新たな処理に付す必要が生じる。
【0009】
そこで本発明は、上記のようなエマルジョンが生じない、また、生じ難い、再生処理剤の提供と、そのような再生処理剤を用いた廃油から油を回収する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は以下の通りである。
[1]廃油に尿素を添加し、攪拌し、静置した後、油分を分離すること含む、灰分を除去した油を回収する方法。
[2]0.001〜0.1Mの尿素水溶液を、廃油に対して0.1〜20質量倍の範囲で添加する[1]に記載の方法。
[3]灰分を含有する廃油に硝酸アンモニウムとキレート剤を添加し、攪拌し、静置した後、油分を分離すること含む、灰分を除去した油を回収する方法。
[4]0.001〜0.1Mの硝酸アンモニウムおよび0.001〜0.1g/リットルのキレート剤を含む水溶液を廃油に対して0.1〜20質量倍の範囲で添加する[3]に記載の方法。
[5]キレート剤がEDTA,NTA,DTPA,GLDA,HEDTA,GEDTA,TTHA,HIDA,またはDHEGである[3]または[4]に記載の方法。
[6]廃油に硫酸アンモニウムを添加し、攪拌し、静置した後、油分を分離すること含む、灰分を除去した油を回収する方法。
[7]硫酸アンモニウム飽和水溶液を、廃油に添加する[6]に記載の方法。
[8]廃油が灰分を含有するエマルジョンである[1]〜[7]のいずれか1項に記載の方法。[9]廃油が、使用済みエンジン油または使用済み工業用潤滑油である[1]〜[7]のいずれか1項に記載の方法。
[10]尿素またはその水溶液からなる廃油の再生処理剤。
[11]硝酸アンモニウムおよびキレート剤またはそれらの水溶液からなる廃油の再生処理剤。
[12]キレート剤がEDTA,NTA,DTPA,GLDA,HEDTA,GEDTA,TTHA,HIDA,EDDSまたはDHEGである[11]に記載の再生処理剤。
[13]硫酸アンモニウムまたはその飽和水溶液からなる廃油の再生処理剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エマルジョンが生じない、また、生じ難い、再生処理剤を提供でき、さらに、本発明の再生処理剤を用いることで、より優れた廃油の再生処理方法を提供でき、環境汚染物質の排出量低減、未利用エネルギーの回収、省エネルギーの促進を進めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の廃油の再生処理剤は、(1)尿素またはその水溶液からなるもの、(2)硝酸アンモニウムおよびキレート剤またはそれらの水溶液からなるもの、および(3)硫酸アンモニウムまたはその飽和水溶液からなるものである。尿素の水溶液は、処理剤として使用されるときには、0.001〜0.1Mの濃度にするが、再生処理剤としては、これと同様の濃度であるか、または、より濃い濃度であって、使用時に希釈して使用するものであってもよい。より濃い濃度とは、例えば、1〜10Mであることができるが、この範囲に限定される意図ではない。
【0013】
キレート剤としては、例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸4ナトリウム塩), NTA(ニトリロ三酢酸3ナトリウム塩), DTPA(ジエチレンジアミン五酢酸5ナトリウム塩), GLDA(L-グルタミン酸二酢酸4ナトリウム塩), HEDTA(ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸3ナトリウム塩), GEDTA(グリコールエーテルジアミン四酢酸4ナトリウム塩), TTHA(トリエチレンテトラミン六酢酸6ナトリウム塩), HIDA(ヒドロキシエチルイミノ二酢酸2ナトリウム塩), EDDS(エチレンジアミンジコハク酸4ナトリウム塩)またはDHEG(ジヒドロキシエチルグリシンナトリウム塩)を挙げることができる。
硝酸アンモニウムとキレート剤との混合比は、例えば、0.1:1〜1:0.1の範囲とすることが適当である。
【0014】
硝酸アンモニウムとキレート剤とを含有する水溶液は、処理剤として使用されるときには、硝酸アンモニウム0.001〜0.1Mの濃度およびキレート剤0.001〜0.1g/リットルの濃度にするが、再生処理剤としては、これと同様の濃度であるか、または、より濃い濃度であって、使用時に希釈して使用するものであってもよい。より濃い濃度とは、硝酸アンモニウムでは、例えば、1〜10Mであることができ、キレート剤では、例えば、1〜100 g/リットルであることができるが、この範囲に限定される意図ではない。
【0015】
硫酸アンモニウムまたはその飽和水溶液からなるものは、水に飽和量以上の硫酸アンモニウムを添加したものまたは、そこから硫酸アンモニウムの沈殿を除去したものであることができる。硫酸アンモニウムは、飽和水溶液とすることで、高い廃油再生能力を発揮する。
【0016】
本発明は、上記廃油再生処理剤を水溶液として廃油に添加し、混合・攪拌する工程(第1工程)、次いで得られた混合物を静置した後、油分を分離する工程(第2工程)とを含む廃油から油を回収する方法である。
以下、工程順に説明する。
【0017】
第1工程;廃油に添加する再生処理剤は固体を使用してもよいが、より高品質の再生油を得るには、水溶液として廃油に添加することが好ましい。水溶液を使用する場合、その尿素の場合は、0.001〜0.1M、好ましくは0.002〜0.05M、特に好ましくは0.005〜0.02Mである。硝酸アンモニウムおよびキレート剤の場合には、硝酸アンモニウムは0.001〜0.1M、好ましくは0.002〜0.05M、特に好ましくは0.005〜0.02Mである。キレート剤は0.001〜0.1M、好ましくは0.002〜0.05M、特に好ましくは0.005〜0.02Mである。硝酸アンモニウムとキレート剤とのモル比は、例えば、0.001:1〜1: 0.001の範囲、好ましくは0.01:1〜1: 0.01の範囲、より好ましくは0.1:1〜1: 0.1の範囲である。硫酸アンモニウムは、上記のように飽和水溶液を用いる。
【0018】
廃油の量に対する処理剤水溶液の量は、通常0.1〜20質量倍であり、好ましくは、0.5〜8質量倍、より好ましくは、0.8〜5質量倍である。なお、廃油に添加する処理剤の量は、廃油中に含まれる除去成分を充分捕捉できるように過剰に添加してもよく、過剰に添加した分は、後述するように処理後、回収し、再利用することができる。これらの条件は、処理装置の規模や処理時間により適宜決定することができる。また、硫酸アンモニウム飽和水溶液を用いる場合は、廃油の量に対する処理剤水溶液の量は、比較的少ない方が好ましく、例えば、0.01〜2質量倍、より好ましくは、0.05〜1質量倍である。
【0019】
処理剤水溶液を廃油に添加した後、混合・撹拌して処理剤と廃油とを充分に接触、反応させる。混合・撹拌時(反応時)の雰囲気は、0℃〜100℃で行うことができるが、好ましくは、10〜90℃である。通常は作業性の点から室温、例えば、15〜30℃で行うことが好ましいが、例えば、50〜90℃、好ましくは60〜80℃で行うことで、反応時間を短縮することができる。また、反応時間は、反応温度などにより異なるが、通常5分〜20時間である。反応に十分な接触時間を確保するためには、20分〜15時間であることが好ましく、更に好ましくは、40分〜8時間である。撹拌条件は、一般に用いられる撹拌機で100〜3000rpmであり、好ましくは、200〜2000rpmである。処理剤と廃油との反応により、廃油中に残留炭素分や灰分として含まれる成分、例えば、エンジン廃油では、これに比較的多く含まれる成分(カルシウム、亜鉛、リンなど)が塩(固体)として生成(析出)する。なお、混合、撹拌時の処理剤の濃度は、簡易のpH計で測定することができる。
【0020】
第2工程;反応終了後、得られた混合物を静置した後、油分を分離する。反応終了後、固体(スラッジ)、油分、及び水相はそれらの比重の違いから静置することでこれらを分離することができる。静置時間は通常6時間〜3日であり、6〜24時間静置することが好ましい。
より分離効率を上げるためには、分離操作を遠心分離により行うことが好ましい。特に、硫酸アンモニウム飽和水溶液を用いる場合、難溶解性の沈殿が生じるため、これを油分から分離するには、分離操作を遠心分離により行うことが好ましい。分離手段としては、従来の遠心分離機を用いることができるが、固体、油分、及び水分を分離でき、且つ固体を自動排出できるものであることが望ましい。なお、遠心分離条件は、特に制限はなく、遠心分離機の能力によるが、遠心分離は通常室温で、1000〜20000rpm、好ましくは1200〜15000rpmで、5分〜1時間、好ましくは10〜50分間行う。この分離操作で、残留炭素分も分離除去することが出来る。
【0021】
この分離操作で固体(スラッジ:Na、Si、Ca、Zn等の濃縮物)、及び水分(水溶液)は、それぞれ回収して利用することができる。例えば、水分中には再生処理剤が残存しているため、コスト低減にはフィルター濾過後に濾液を回収し、処理剤として再利用することが好ましい。またスラッジはフィルタープレスで出来るだけ水分を除去しフレーク状とした後、可燃物(例えば、燃焼しても有害ガスを発生しないおがくずなど)と練り合わせ固体燃料としてリサイクルすることもできる。ここで除去された水分は回収し、処理剤として再利用することが好ましい。
【0022】
分離した油分は、所望により、さらに、純度を高めるために、さらに、酸水溶液又はアルデヒド水溶液を添加して処理する工程(第3工程)、処理後、更に水を加えて水洗する工程(第4工程)、そして最後にこれの混合物から油分を分離する工程(第5工程)に付すことができる。
【0023】
第3工程:分離した油分に酸又はアルデヒドを添加し、混合撹拌する。この場合、酸水溶液又はアルデヒド水溶液として添加することが好ましく、これらの水溶液の添加により、油分中に残存する塩類及び未反応で残留するアルカリと容易に反応してNa塩やSiO2の塩が形成されて水分側に容易に移行させることができる。
【0024】
酸としては、上述のような添加効果を有するものであれば特に制限はなく、例えば、硫酸、炭素数1〜10のカルボン酸、及び炭素数1〜10の脂肪族オキシカルボン酸を挙げることができる。炭素数1〜10のカルボン酸としては、例えば、炭素数1〜5、より好ましくは、炭素数1〜3の脂肪族カルボン酸であり、具体的には、蟻酸、酢酸が好ましい。炭素数1〜10の脂肪族オキシカルボン酸としては、例えば、炭素数1〜5のもの、より好ましくは、炭素数1〜3の脂肪族オキシカルボン酸であり、具体的には、グリコール酸が好ましい。
【0025】
アルデヒドとしては、炭素数1〜10の脂肪族アルデヒドであることが好ましく、更に好ましくは炭素数1〜5、更に好ましくは炭素数1〜3の脂肪族アルデヒドであり、具体的には、グリオキサールが好ましい。以上の酸、又はアルデヒドはそれぞれ単独であるいはそれぞれ混合して使用することができる。本発明では、硫酸、グリオキサールを用いることが好ましい。これらカルボン酸、脂肪族オキシカルボン酸、脂肪族アルデヒドは炭素数が多い場合に油溶性が高くなり、未反応残留分を後の工程で分離しにくくなるため、炭素数が小さい方が特に好ましい。酸又はアルデヒド水溶液の濃度は特に制限はないが、硫酸のような強酸の場合、通常0.05〜2N、好ましくは、0.1〜0.5Nとする。上記カルボン酸、脂肪族オキシカルボン酸、アルデヒド等の弱酸性を示す化合物は通常、100%のものあるいは1〜99質量%水溶液、好ましくは5〜80質量%水溶液とする。なお、酸又はアルデヒド水溶液の第2工程で分離された油分への添加量は、特に制限はないが、当該油分に対し、0.1〜5質量倍、好ましくは同量〜2質量倍である。第3工程の処理時間は、特に制限はないが、通常5分〜5時間であることが好ましく、10分〜3時間であることがさらに好ましい。この間、第1工程と同様な条件で混合撹拌することが好ましい。
【0026】
第4工程:酸水溶液又はアルデヒド水溶液処理後、さらに水洗処理する。使用水量は、特に制限はないが、通常酸水溶液又はアルデヒド処理後の混合液に対して同量〜5質量倍である。好ましくは、同量〜2質量倍である。水洗により、水溶性成分は油分から水分側への移行が促進され、第5工程におけるこれらの除去が容易になる。その結果、より精製度の高い再生油を得ることが出来る。水洗工程においても第1工程と同様な条件で混合撹拌することが好ましい。
【0027】
第5工程:水洗処理後、酸又はアルデヒド、Na塩やSiO2の塩等を含む水溶液、油分、そしてスラッジを含む混合液から油分を分離処理する。分離処理は、前記第2工程と同様な方法で行うことができる。また分離条件も上記の範囲に適当に設定して行うことが出来る。
【0028】
以上の工程により、廃油から金属分などの不純物が除去された再生油を得ることができる。特に本発明の再生処理方法を利用することで灰分(金属分)を低減することが出来る。得られる再生油中の金属分としては、ICP(誘導結合プラズマ発光分析)法による元素分析により確認され、特に廃油中に多く含まれるカルシウムや亜鉛では500質量ppm以下、好ましくは100質量ppm以下、さらに好ましくは50質量ppm以下、特に好ましくは10質量ppm以下まで低減され、これら金属分が60〜99質量%以上低減された再生油を得ることができる。灰分としてはJIS K2272に規定された硫酸灰分として、0.6質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは、0.3質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以下である。硫酸灰分量を0.05質量%以下とすることで重油のJIS規格の1種に適合する再生重油を得ることが出来る。また得られる再生油中の残留炭素分(JIS K 2270に規定)は、1質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは、0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下である。再生油は再生重油として用いられる他、再生潤滑油として用いられる。また、これら再生油は、さらに燃料や潤滑油の通常の精製処理方法、例えば常圧蒸留、減圧蒸留、接触分解、接触改質、水素化処理、溶剤抽出など、あるいはこれらの処理方法を適宜組合せて精製することもでき、必要に応じ燃料添加剤や潤滑油添加剤など公知の添加剤を任意に配合することもできる。
【0029】
本発明の廃油再生処理剤を用いる廃油再生処理方法は、灰分や残留炭素分などの不純物を含む廃油に対して有効であり、一般に廃油として取り扱われているものであれば、効果があるが、特に灰分を比較的多く含む使用済みエンジン油、又は使用済み工業用潤滑油(塩素系切削油は含まれない)などの廃油に対して好適である。使用済みエンジン油には、サービスステーション(S/S)や整備工場などから回収されるエンジン油、或いは長期在庫で販売不能のエンジン油や規格外れのエンジン油及びそれらの混合油などの廃油が含まれる。また工業用潤滑油には、塩素系以外の切削油、油圧作動油などが含まれる。
【実施例】
【0030】
以下本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例1
実験装置
ふた付スクリュウ管(50ml)に攪拌子(直径4mm×長さ10mm)を入れたものをマグネチックスターラー上に置き、室温で操作した。灰分量は30mL白金ルツボに試料を採り、濃硝酸を加えドラフト中に設定したサンドバス中に置き加熱した。硝酸水溶液は蒸発乾固した。白金ルツボごと電気炉に入れ1200℃で焼成した。灰分の重金属の定量は原子吸光光度計(HITACHI A−2000)で測定した。
【0031】
実験方法
未処理WO中の灰分の測定と灰分に含まれる重金属の分析
30mlの白金ルツボに試料廃油5ml(3.3967g)を秤取、これに濃硝酸3ml加えドラフト中に設定したサンドバス中に置き加熱した。約3時間経過後硝酸水溶液は蒸発乾固した。この操作をその後2回繰り返した。加熱終了後、試料廃油は完全に酸化され消滅した。白金ルツボ中には黒色の残査が残った。さらに白金ルツボごと電気炉に入れ1200℃で1h放置加熱した。得られた灰分に濃硝酸を少量加え、蒸留水を加えて20mlメスフラスコに洗い入れ、蒸留水で20ml溶液とした。
分析は原子吸光光度分析を使用し、和光純薬工業(株)製標準液、Pb、Zn及びCaについて検量線を作成し、これに照合してそれぞれの含有量を求めた。
【0032】
各種溶液によるWOの洗浄による灰分の除去について
試料廃油5ml中に各種溶液10mlを加え、室温で4時間攪拌した。その後、試料廃油層と水層の重金属の分析を行なった。溶液として表1に示す水溶液を用いた。結果を表1に示す。
撹拌後、1時間静置後の油相と水相との界面に形成されたエマルジョン層の状態を目視で判定し、以下のように評価した。
△:エマルジョン層の厚みが3mm以上
○:エマルジョン層の厚みが1mm以上、3mm未満
◎:エマルジョン層の厚みが1mm未満
【0033】
【表1】

【0034】
表1に示す結果から、本発明の処理剤を使用した場合、不純物である鉛、亜鉛およびカルシウムの除去は、特許文献1に記載の水ガラス(珪酸ナトリウム)を使用した場合と同等又はそれ以上であり、かつ静置後の油相と水相との界面に形成されたエマルジョン層の状態は、特許文献1に記載の水ガラス(珪酸ナトリウム)を使用した場合よりも、優れていた。
【0035】
実施例2
実施例1と同様の装置および分析方法を用いて本発明の処理剤として硫酸アンモニウムを使用した廃油処理実験を行った。硫酸アンモニウム100gを100mlの水に加えて作成した硫酸アンモニウム飽和水溶液を0.5ml、またはこの硫酸アンモニウム飽和水溶液2 mlに0.01gのEDTAを加えた水溶液を、廃油5mlに加えた後に、実施例1と同様に室温で3時間攪拌し、その後、試料廃油層と水層を約1200rpmで30分間遠心分離し、各層の重金属の分析を行なった。結果を、処理前の廃油のデータとともに図1に示す。尚、灰分総質量は、処理前の廃油が0.52%であったのに対して、硫酸アンモニウム飽和水溶液0.5mlの系では、0.20%であり、硫酸アンモニウム飽和水溶液0.5ml+0.01gのEDTAの系では、0.21%であった。
【0036】
図1に示す結果から、廃油5mlに対して硫酸アンモニウム飽和水溶液0.5mlを加えることで、重金属を大幅に除去でき、かつエマルジョンの発生も全く観察されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、廃油処理の分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例2の結果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃油に尿素を添加し、攪拌し、静置した後、油分を分離すること含む、灰分を除去した油を回収する方法。
【請求項2】
0.001〜0.1Mの尿素水溶液を、廃油に対して0.1〜20質量倍の範囲で添加する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
廃油に硝酸アンモニウムとキレート剤を添加し、攪拌し、静置した後、油分を分離すること含む、灰分を除去した油を回収する方法。
【請求項4】
0.001〜0.1Mの硝酸アンモニウムおよび0.001〜0.1g/リットルのキレート剤を含む水溶液を廃油に対して0.1〜20質量倍の範囲で添加する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
キレート剤がEDTA,NTA,DTPA,GLDA,HEDTA,GEDTA,TTHA,HIDA,またはDHEGである請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
廃油に硫酸アンモニウムを添加し、攪拌し、静置した後、油分を分離すること含む、灰分を除去した油を回収する方法。
【請求項7】
硫酸アンモニウム飽和水溶液を、廃油に添加する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
廃油が灰分を含有するエマルジョンである請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
廃油が、使用済みエンジン油または使用済み工業用潤滑油である請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
尿素またはその水溶液からなる廃油の再生処理剤。
【請求項11】
硝酸アンモニウムおよびキレート剤またはそれらの水溶液からなる廃油の再生処理剤。
【請求項12】
キレート剤がEDTA,NTA,DTPA,GLDA,HEDTA,GEDTA,TTHA,HIDA,EDDSまたはDHEGである請求項11に記載の再生処理剤。
【請求項13】
硫酸アンモニウムまたはその飽和水溶液からなる廃油の再生処理剤。

【図1】
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【公開番号】特開2006−249419(P2006−249419A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29982(P2006−29982)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(504007006)公協産業株式会社 (8)
【出願人】(504007327)
【Fターム(参考)】