説明

廃液処理装置およびその処理方法

【課題】有機物含有廃液中の有機物を効率よく分解除去することができる廃液処理装置およびその処理方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る廃液処理装置1は、有機物含有廃液の処理が連続的に行われるように構成された複数の反応槽からなる多段式のオゾン反応槽4と、オゾンガスを発生させ、オゾン反応槽4にオゾンガスを供給するオゾンガス供給手段13と、オゾンガス供給手段13から供給されたオゾンガスを有機物含有廃液に溶解させるオゾンガス溶解手段20と、多段式のオゾン反応槽4の第2槽目4b以降に設けられ、オゾン反応槽4中の有機物含有廃液にアルカリ剤を供給するアルカリ供給手段25とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾンを酸化剤に用いた廃液処理技術に係り、特に、有機物含有廃液中の有機物を効率よく分解除去することができる廃液処理装置およびその処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所、核燃料再処理工場などの放射性核種の取扱施設においては、汚染管理区域内で着用された作業用衣類などは原子力発電所内などに併設されている専用洗濯設備で洗濯される。専用洗濯設備には、作業用衣類などの水洗を行う洗濯機と、この洗濯機から排出される放射性物質を含有する洗濯廃液である有機物含有廃液を処理する廃液処理装置が設置される。
【0003】
廃液処理装置は、洗濯廃液中に存在する放射性核種、懸濁固形(SS;suspended solid)分および化学的酸素要求量(COD;chemical oxygen demand)成分を除去することを主な目的として設置される。
【0004】
この洗濯廃液は、放射性核種濃度などを測定して十分に濃度が低いことを確認した後、外部環境へ放出される。洗濯廃液を外部環境へ放出する場合、放射性核種濃度のほか、水素イオン濃度(pH)を一定の範囲内に収め、SS濃度、CODを放出基準値以下にする必要がある。
【0005】
洗濯廃液中に存在する放射性核種は、クラッド(CRUD;Chalk River Unclassified Deposit)と呼ばれる固形分に随伴しているものが大部分で、廃液処理装置に設けられたフィルタでろ過処理を行うことで大部分を取り除くことができる。SS分は作業用衣類などに付着した塵埃や差微粒子などの不溶性の汚れ成分であり、放射性核種成分と同様にフィルタによるろ過処理を行うことで除去可能である。
【0006】
COD成分には、洗剤の主な成分である界面活性剤と、作業用衣類などについた油脂類や人体からの皮脂成分などが含まれる。これらのCOD成分を除去するために、従来から種々の廃液処理装置およびその処理方法が提案されてきた。
【0007】
活性炭を吸着材とし、COD成分中の界面活性剤などの有機成分を吸着させて除去する活性炭吸着方法(例えば特許文献1)、低発泡性洗剤を使用することで洗濯廃液を蒸発蒸留する濃縮蒸発方法、過酸化水素などの酸化剤を添加してCOD成分を分解する方法(例えば特許文献2)などが提案されてきた。
【0008】
また、オゾンの酸化力を利用したCOD成分の分解処理も多く提案されており、洗濯廃液中に溶解したオゾンの分解力を高めるため、触媒を併用した方法が提案されている(例えば特許文献3)。
【特許文献1】特開平06−331792号公報
【特許文献2】特開平07−027898号公報
【特許文献3】特開平09−253672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
オゾンを酸化剤とする廃液処理方法においては、オゾンガスによるCOD成分中の界面活性剤などの分解に伴って廃液の液性は酸性となり、洗濯廃液に注入・溶解されたオゾン分子は安定した状態になる。この後、溶解オゾンによって効率よく洗濯廃液中の有機物を分解させるためには、液性を酸性から中性または弱アルカリ性にし、溶解オゾンをラジカル化するなどの方策が知られている。
【0010】
例えば、洗濯廃液中のCOD成分である洗濯洗剤に含有される陰イオン界面活性剤(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、LAS)は、その端部にベンゼン環を有しており、廃液中に溶解されたオゾンとの初期段階の反応では、オゾン分子による二重結合を有するベンゼン環を開環する酸化分解反応を起こさせる。この酸化分解反応によりオゾニドが生成され、直鎖の有機酸などが残留する。また第二段階における分解反応としては、洗濯廃液に溶解したオゾン分子を液中で積極的に分解させることでラジカル化し、このラジカルにより直鎖の有機酸などの水素引き抜き反応を起こさせることが好ましい。
【0011】
オゾンガスの洗濯廃液中への効率的な溶解が初期段階の酸化分解処理に有効であるが、特許文献3に開示された洗濯廃液処理方法ではこれについて十分に開示されているとはいえない。また、同様に洗濯廃液に溶解したオゾン分子のラジカル化についても効率的に行われているとはいえない。
【0012】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、初期段階の酸化分解反応では、オゾンガスの廃液中への溶解を効率的に行い、第二段階の酸化分解反応では、オゾン分子の分解反応を効率的に行うことにより有機物含有廃液中の有機物の酸化分解時間の短縮化を可能とする廃液処理装置およびその処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る廃液処理装置は、上述した課題を解決するために、有機物含有廃液の処理が連続的に行われるように構成された複数の反応槽からなる多段式のオゾン反応槽と、オゾンガスを発生させ、前記オゾン反応槽に前記オゾンガスを供給するオゾンガス供給手段と、前記オゾンガス供給手段から供給されたオゾンガスを前記有機物含有廃液に溶解させるオゾンガス溶解手段と、前記多段式のオゾン反応槽の第2槽目以降に設けられ、前記オゾン反応槽中の前記有機物含有廃液にアルカリ剤を供給するアルカリ供給手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る廃液処理方法は、上述した課題を解決するために、多段式のオゾン反応槽に有機物含有廃液を供給する廃液供給ステップと、前記オゾン反応槽にオゾンガスを供給するオゾンガス供給ステップと、前記オゾンガス供給ステップで供給されたオゾンガスを前記有機物含有廃液に溶解するオゾンガス溶解ステップと、前記多段式のオゾン反応槽の第2槽目以降に供給された前記有機物含有廃液に、アルカリ剤を供給するアルカリ供給ステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る廃液処理装置およびその処理方法においては、初期段階の酸化分解反応では、オゾンガスの廃液中への溶解を効率的に行い、第二段階の酸化分解反応では、オゾン分子の分解反応を効率的に行うことにより有機物含有廃液中の有機物の酸化分解時間の短縮化を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る廃液処理装置およびその処理方法の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
本実施形態における廃液処理装置は、原子力発電所、核燃料再処理工場などの放射性核種の取扱施設における汚染管理区域内で着用された作業用衣類などの洗濯を行う専用洗濯設備に適用され、洗濯廃液である有機物含有廃液処理を行う例を示す。
【0018】
図1は、本実施形態における廃液処理装置1の一例を示す構成図である。
【0019】
廃液処理装置1の主な構成は、洗濯機2から排出される洗濯廃液を貯留する収集タンク3、収集タンク3から案内される洗濯廃液をオゾンガスと反応させるオゾン反応槽4、オゾンによる酸化分解反応後の洗濯廃液を貯留するオゾン処理水受タンク5、洗濯廃液中に存在する固形分などのろ過処理を行うフィルタ6、洗濯廃液を外部環境に放出する前に一時貯留し水質チェックを行うためのサンプルタンク7からなる。
【0020】
収集タンク3には、洗濯機2で作業用衣類などが洗濯されることにより発生した洗濯廃液が貯留される。この洗濯廃液は、作業時に衣類などに付着した放射性核種や、懸濁固形分(SS分)および化学的酸素要求量成分(COD成分)を含有しており、外部環境に放出するためにはこれらの成分を除去し、一定基準を満たした水質にする必要がある。
【0021】
収集タンク3には、ろ過助剤添加手段としてのろ過助剤タンク10が設置される。ろ過助剤タンク10は、収集タンク3に貯留された洗濯廃液にろ過助剤が添加可能なように構成される。
【0022】
ろ過助剤タンク10内のろ過助剤は、洗濯廃液に含有されるクラッドに随伴した放射性核種や、オゾンでは分解不可能なSS分である繊維くずや微小な固形分のろ過を行う際のろ過性を改善するために添加される。ろ過助剤は、ろ過比抵抗が高いことから生じるろ過差圧の急増を回避し、ろ過性を改善することができる。
【0023】
さらに、ろ過助剤は触媒機能も備えており、オゾン反応槽4における酸化分解反応を促進することができる。そのため、ろ過助剤タンク10はオゾン反応槽4の上流側に設けられる。
【0024】
ろ過助剤には金属酸化物の粉末が用いられ、例えば鉄、マンガン、銅、およびこれら金属の化合物からなる金属酸化物が用いられる。ろ過助剤としての金属酸化物の粉末は、粒径が0.5μm〜50μm程度であるものが好ましく、また、ろ過助剤は洗濯廃液に対し1mg/kg〜1000mg/kg程度で添加されることが好ましい。
【0025】
なお、ろ過助剤はフィルタ6でろ過処理が行われることにより廃棄物となるが、この廃棄物となったろ過助剤を回収し、再度ろ過助剤タンク10で再利用することが可能である。
【0026】
オゾン反応槽4では、収集タンク3からポンプ11aによって昇圧された洗濯廃液に含有されるCOD成分である有機物を、オゾンと反応させることにより酸化分解する。COD成分である有機物は、洗濯洗剤に含有される界面活性剤や、作業用衣類などについた油脂類、人体からの皮脂成分などからなる。この界面活性剤などのCOD成分を外部環境に放出するためには、有機物成分を酸化分解し、無機化させなければならない。
【0027】
オゾン反応槽4は、洗濯廃液を滞留させることなく複数の反応槽で連続的に処理を行うため多段式に構成され、例えば図1のように連結配管12a、12bで接続された3段で構成される。
【0028】
オゾン反応槽4の第1槽目4aでは、オゾンガスを効率的に溶解させ、主にCOD成分である有機物中に存在する炭素の二重結合の酸化分解反応が行われる。この時、ろ過助剤タンク10から供給されるろ過助剤が、触媒として酸化分解反応を促進する。この酸化分解反応により、直鎖の有機酸などの直鎖有機物が生成される。
【0029】
オゾン反応槽4の第2槽目4bおよび第3槽目4cでは、主にオゾン分子の分解により生成されたラジカルにより、第1槽目4aで生成された直鎖有機物に対し水素引き抜き反応を行うことにより酸化分解反応が行われる。また、第3槽目4cを連続的に設けたのは、酸化分解反応を行う時間をより確保するためであるが、オゾン反応槽4を2段構成や、3段以上の構成としてもよい。
【0030】
各オゾン反応槽4には、オゾン供給配管14が接続されており、オゾン発生器13から発生したオゾンガスが適宜供給されるようになっている。このオゾン発生器13およびオゾン供給配管14は、オゾンガス供給手段を構成する。
【0031】
オゾンガスは洗濯廃液への溶解効率を高めるため、オゾン反応槽4中の洗濯廃液に均一な発泡状態で供給されることが望ましい。このため、オゾン反応槽4の下方にはオゾンガス溶解手段として散気装置20が設けられる。散気装置20は、例えば多孔質の散気板や散気筒などからなり、セラミックス、ガラス、金属およびプラスチックなどから構成される。
【0032】
各オゾン反応槽4の上方は密閉され、散気オゾン排出配管21を通じて未反応のオゾンガスが廃オゾン分解塔22に排出されるようになっている。廃オゾン分解塔22は、オゾン反応槽4で洗濯廃液に溶解せずに、オゾン反応槽4の気中に放出されたオゾンガスを分解する機能を備える。廃オゾン分解塔22は、例えばセラミックス製基材の表面に金属酸化物などを担持したオゾン分解用触媒が充填されている。未反応のオゾンガスはオゾン分解用触媒により分解され、このオゾン分解用触媒は分解時に発生する熱などにより劣化して廃棄物となる。
【0033】
オゾン反応槽4の第1槽目4aと第2槽目4bとを接続する連結配管12aには、アルカリ供給手段としてのアルカリ供給タンク25が接続され、例えば水酸化ナトリウムなどのアルカリ剤が供給される。アルカリ剤は、オゾン発生器13から供給され洗濯廃液中に溶解したオゾン分子を急速に分解し、分解にともない生成されるラジカルにより有機酸などの直鎖有機物の分解を効率よく行う。また、アルカリ剤の供給は、オゾン反応槽4中の洗濯廃液のpHが7〜9になるように行われるのが好ましい。
【0034】
なお、アルカリ剤の供給は、オゾン反応槽4の第1槽目4aから行わず、第2槽目4bで行う。これは、第1槽目4aでは洗濯廃液中に溶解したオゾン分子によるCOD成分である有機物中の酸化分解反応を行わせ、ラジカルによる酸化分解反応は第2槽目4b以降で行うことが効率的であるためである。なお、アルカリ供給タンク25は連結配管12aに接続したが、第2槽目4bに直接接続してもよい。
【0035】
オゾン反応槽4におけるCOD成分である有機物の酸化分解は、一定の温度下で行われることでより促進される。このため、オゾン反応槽4の上流側には、ヒータ26が設けられ、洗濯廃液の加熱が行われる。洗濯廃液は、ヒータ26により50℃〜80℃に保たれることで、効率よく酸化分解反応が行われるようになっている。
【0036】
オゾン処理水受タンク5には、オゾン反応槽4で酸化分解反応が行われた洗濯廃液が貯留される。この洗濯廃液は、オゾン処理水受タンク5からポンプ11bによって昇圧され、フィルタ6に案内される。フィルタ6では、オゾン反応槽4で酸化分解反応が行われた洗濯廃液に含有されるクラッドに随伴した放射性核種や、SS分である繊維くずや微小な固形分のろ過が行われる。
【0037】
サンプルタンク7では、オゾン反応槽4での酸化分解処理およびフィルタ6でのろ過処理がなされた洗濯廃液が貯留され、最終的な水質のチェックが行われ、一定基準を満たした場合にポンプ11cを介して外部環境に放出される。
【0038】
次に、本実施形態における廃液処理装置1を用いた廃液処理方法について説明する。
【0039】
図2は、廃液処理方法の手順を示すフローチャートである。
【0040】
ステップS1において、原子力発電所、核燃料再処理工場などの放射性核種の取扱施設における汚染管理区域内で着用された作業用衣類などが洗濯機2で洗濯され、これにともない発生した有機物含有廃液である洗濯廃液が収集タンク3に貯留される。
【0041】
ステップS2では、収集タンク3に貯留された洗濯廃液に、ろ過助剤タンク10からろ過助剤が添加される。ろ過助剤は、洗濯廃液に含有されるクラッドに随伴した放射性核種や、SS分である繊維くずや微小な固形分のろ過性を改善するために添加される。ろ過助剤は、ろ過比抵抗が高いことから生じるろ過差圧の急増を回避することで、ろ過性を改善させることができる。さらに、ろ過助剤は触媒機能も備えており、オゾン反応槽4における酸化分解反応を促進することができる。
【0042】
ステップS3では、収集タンク3からポンプ11aにより昇圧された洗濯廃液がヒータ26により加熱される。洗濯廃液は、ヒータ26によりオゾン反応槽4における酸化分解反応の促進のため50℃〜80℃に加熱される。
【0043】
ステップS4では、ステップS3でヒータ26により加熱された洗濯廃液が、オゾン反応槽4の第1槽目4aに供給され、初期段階のオゾンによる酸化分解反応が行われる。オゾン反応槽4には、オゾン発生器13において発生しオゾン供給配管14に案内されるオゾンガスが、オゾン反応槽4の下部に設けられた散気装置20から均一な発泡状態で供給され、オゾン分子として洗濯廃液に溶解される。
【0044】
オゾン反応槽4の第1槽目4aにおいて行われる初期段階の酸化分解反応の一例について説明する。例えば、洗濯廃液におけるCOD成分である洗濯洗剤に含有された陰イオン界面活性剤(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、LAS)は、その端部に二重結合を有するベンゼン環を有している。陰イオン界面活性剤には、オゾン分子によって二重結合を有するベンゼン環を開環する酸化分解反応が起こることによりオゾニドが生成され、直鎖の有機酸などが残る。
【0045】
ステップS5において、第1槽目4aと第2槽目4bの連結配管12aに接続されたアルカリ供給タンク25より、アルカリ剤が供給される。このアルカリ剤の供給により、洗濯廃液のpHが7〜9の中性〜弱アルカリ性になるように調整され、後の第二段階の酸化分解反応を効率よく行うことができる。
【0046】
ステップS4で初期段階の酸化分解反応が行われた洗濯廃液は、オゾン反応槽4の第2槽目4bおよび第3槽目4cに順次供給され、ステップS6において第二段階の酸化分解反応が行われる。オゾン反応槽4には、第1槽目4aと同様に、オゾン発生器13において発生しオゾン供給配管14に案内されるオゾンガスがオゾン反応槽4の下部に設けられた散気装置20から均一な発泡状態で供給され、オゾン分子として洗濯廃液に溶解される。
【0047】
第二段階の酸化分解反応は、洗濯廃液に溶解したオゾン分子が分解する際に生成されるラジカルにより、初期段階の酸化分解反応で生成された直鎖の有機酸などの直鎖有機物の酸化分解反応が行われる。
【0048】
ここで、ステップS5でアルカリ剤の供給を行うことで、ラジカルの生成を促進することができる。一方、洗濯廃液に溶解されたオゾン分子により直鎖有機物の酸化分解反応を行うことも考えられる。しかし、オゾン分子が直鎖有機物のような低分子有機物の酸化分解反応を行うよりは、ラジカルによる水素引き抜き反応による酸化分解反応を行うほうがより効果的であり、全体の反応を効率よく進めることができる。
【0049】
ステップS7において、酸化分解ステップS4およびS6において各オゾン反応槽4で酸化分解反応が行われた洗濯廃液が、オゾン処理水受タンク5に供給され、貯留される。
【0050】
ステップS8において、ステップS7でオゾン処理水受タンク5に貯留された洗濯廃液が、ポンプ11bにより昇圧され、フィルタ6でろ過処理が行われる。フィルタ6では、洗濯廃液に含有されるクラッドに随伴した放射性核種や、SS分である繊維くずや微小な固形分のろ過が行われる。このろ過処理では、ろ過助剤添加ステップS2において添加されたろ過助剤によりろ過効率の改善が行われる。
【0051】
ステップS9において、ステップS8におけるフィルタろ過処理が行われた洗濯廃液が、サンプルタンク7に供給され、洗濯廃液が外部環境に放出可能か否かの判断がなされる。洗濯廃液が一定の各基準値をクリアし放出可能と判断された場合には、ポンプ11cにより昇圧され、ステップS10において外部環境に放出される。
【0052】
この廃液処理装置およびその処理方法によれば、COD成分である有機物の酸化分解反応を二段階に分けて行うことにより、有機物含有廃液を効率よく酸化分解し無機物化することができる。このため、初期段階の酸化分解反応では、散気装置20により均一な発泡状態でオゾンガスを供給することにより、オゾンガスを洗濯廃液に効率よく溶解することができ、これにともない酸化分解反応効率を向上させることができる。また、第二段階の酸化分解反応では、オゾン反応槽4の第2槽目4b以降にアルカリ剤を供給することにより、洗濯廃液に溶解しているオゾン分子の分解により生成されるラジカルの生成を促進することができ、これにともない酸化分解反応効率を向上させることができる。この結果、全体の酸化分解反応時間の短縮化を実現することができる。
【0053】
また、ろ過助剤に酸化分解反応を促進する触媒機能を有する金属酸化物を用い、オゾン反応槽4の上流側で添加することにより、さらに酸化分解反応の効率化を図ることができる。
【0054】
本実施形態においては、各オゾン反応槽4の洗濯廃液にオゾンガスを溶解するオゾンガス溶解手段として、散気装置20を用いたが、図3の第1の変形例に示すように、気液混合器であるミキシングポンプ30を用いてもよい。
【0055】
また、図4の第2の変形例に示すように、第1槽目4aにミキシングポンプ30、第2槽目4bおよび第3槽目4cに散気装置20を設けて構成することもできる。第1槽目4aで行われる初期段階の酸化分解反応では、洗濯廃液に対する高効率のオゾンガスの溶解が求められる。このため、第1槽目4aのみに高性能であるミキシングポンプ30を設け、第2槽目4b、第3槽目4cに低廉な散気装置を用いることで、全体のコスト低下を図ることができ、経済性も向上させることができる。
【0056】
さらに、図5の第3の変形例に示すように、オゾン反応槽4の第1槽目4aにおいてオゾンガスの溶解効率をより向上させるため、ミキシングポンプ30に加え微細気泡発生装置31を設けてもよい。この微細気泡発生装置31を設けたことで溶解効率を向上させ、さらに洗濯廃液中の有機物の分解速度をより高めることができる。また、第2槽目4bおよび第3槽目4cには、散気筒16を設けた。また、第2槽目4bおよび第3槽目4cにもミキシングポンプ30および微細気泡発生装置31を設置することで、オゾンガスの溶解効率をさらに向上させることができ、有機物の分解速度を高め、COD成分である有機物の酸化分解処理の短縮化が可能となる。
【0057】
図6は、オゾンガス溶解手段が異なる、本実施形態における廃液処理装置1、および第1から第3の変形例を適用した廃液処理装置1を用いた廃液処理方法によるCODの値(mg/l)の変化を比較した図である。なお、図1に示す本実施形態における廃液処理装置については、アルカリ剤を供給した場合と供給しない場合とを比較した。また、処理流量、オゾン濃度およびオゾン注入量は、各構成とも一定条件下で廃液処理を実施した。
【0058】
図6によれば、オゾンガス溶解手段に散気装置20を設け、アルカリ剤を供給しない場合、第3槽目4cから排出される廃液のCODの値は最も高く、オゾンによる有機物の酸化分解が有効に行われていないことがわかる。これにより、第2槽目以降にアルカリ剤を供給することで、効率的にCODの値の低減が図れることがわかる。
【0059】
さらに、第3の変形例を適用した廃液処理装置は、ミキシングポンプ30や微細気泡発生装置31をさらに設けたことでオゾンが効率的に廃液に溶解され、有機物の酸化分解が有効に行われていることがわかる。
【0060】
また、本実施形態においては、本発明に係る廃液処理装置およびその処理方法を、原子力発電所、核燃料再処理工場などの放射性核種の取扱施設における汚染管理区域内で着用された作業用衣類などの洗濯を行う専用洗濯設備に適用したが、有機物含有廃液を扱う産業排水や生物処理水などの汚水処理施設などにおいても適用可能である。
【0061】
[第2の実施形態]
本発明に係る廃液処理装置およびその処理方法の第2実施形態を図7に基づいて説明する。
【0062】
図7は、本実施形態における廃液処理装置1の一例を示す構成図である。
【0063】
第1実施形態と異なる点は、オゾン発生器13に接続されたオゾン供給配管14に、オゾンガス供給制御手段である供給切替バルブ40を設けた点である。この供給切替バルブ40は、オゾン発生器13で発生し各オゾン反応槽4に供給されるオゾンガスを、任意のオゾン反応槽4に供給されるように制御することができる。これにより、オゾン発生器13から各オゾン反応槽4にオゾンガスが供給される際、常に全オゾン反応槽4に同時かつ均等に供給されるのではなく、交互に供給することが可能である。
【0064】
一方、各オゾン反応槽4に供給されるオゾンガスは、洗濯廃液のCOD成分の酸化分解処理を行うため、連続的に供給される必要がある。これに対応するため、各オゾン反応槽4のオゾンガス溶解手段としてのミキシングポンプ30の吐出側に、微細気泡発生装置31を設けた。各オゾン反応槽4に微細気泡発生装置31を設けたことにより、オゾン発生器13から供給されるオゾンガスの気泡径を微細化することができ、これに伴うオゾンガス表面積の増大により水中での浮上速度が遅くなり、オゾンガス気泡の滞留時間増大を図ることができる。この結果、連続的に全てのオゾン反応槽4にオゾンガスを供給しなくても、洗濯廃液にオゾンが溶解された状態を連続して確保することができる。
【0065】
図8は、廃液処理装置1が、供給切替バルブ40によってオゾン反応槽4の第1槽目4aにオゾンガスを供給するように制御されている状態を示した図である。第1槽目4aにオゾンガスを供給するオゾン供給配管14、および第1槽目4aからオゾンが排出されるオゾン排出配管21が太線で表されているのは、オゾンガスが通流している状態であることを示している。
【0066】
同様に図9は、廃液処理装置1が、供給切替バルブ40によってオゾン反応槽4の第2槽目4bにオゾンガスが供給されるように制御されている状態を示した図である。
【0067】
この廃液処理装置およびその処理方法によれば、第1実施形態により生じる効果に加え、オゾン発生器13から発生したオゾンの供給先を常に全オゾン反応槽4とするのではなく、任意のオゾン反応槽4に供給するように制御することができるため、オゾン発生器13の小型化を図ることができる。
【0068】
また、各オゾン反応槽4に供給されるオゾンガスの気泡径の微細化により、洗濯廃液への溶解効率を向上させることができる点で有効である。
【0069】
[第3の実施形態]
本発明に係る廃液処理装置およびその処理方法の第3実施形態を図10に基づいて説明する。
【0070】
図10は、本実施形態における廃液処理装置1の一例を示す構成図である。
【0071】
第2実施形態と異なる点は、各オゾン反応槽4の上方に接続されたオゾン排出配管21上にオゾンガス再供給手段を設けた点である。
【0072】
このオゾンガス再供給手段は、各オゾン反応槽4と廃オゾン分解塔22とを接続するオゾン排出配管21上に分岐して設けられたオゾン再供給配管50と、このオゾン再供給配管50上に設けられた再供給切替バルブ51からなる。オゾン再供給配管50は、オゾン排出配管21を通じて排出された未反応のオゾンガスが廃オゾン分解塔22に案内される手前で、その未反応のオゾンガスの一部または全量がオゾン供給配管14上のミキシングポンプ30の入口側に導かれるようになっている。また、ミキシングポンプ30の入口側に導かれるようになっているため、特にポンプなどを設ける必要がなく、ミキシングポンプ30の吸入側から定量が吸い込まれるようになっている。
【0073】
オゾンガス供給制御手段としての再供給切替バルブ51は、オゾン再供給配管50上に設けられ、任意のオゾン反応槽4に未反応のオゾンガスが供給されるように制御する。このため、廃液処理装置1は、オゾンガスを各オゾン反応槽4に供給する際、オゾン発生器13側に設けられた供給切替バルブ40と連動して、効率的にオゾンガスを供給することができる。
【0074】
例えば、図11に示すように、オゾン発生器13に接続された供給切替バルブ40によって、オゾン反応槽4の第1槽目4aにオゾンガスが供給されるように制御された場合、オゾンガス再供給手段より供給される未反応のオゾンガスは、再供給切替バルブ51によって第2槽目4bおよび第3槽目4cに供給されるように制御することができる。なお、太線で表されているオゾン供給配管14およびオゾン排出配管21は、オゾンガスが通流している状態であることを示している。
【0075】
この廃液処理装置1およびその処理方法によれば、各オゾン反応槽4において未反応であったオゾンガスを再利用することにより、オゾンガスの有効利用を図ることができ、さらにオゾン発生器13から供給されるオゾンガス量を低減することができる。
【0076】
また、供給切替バルブ40による各オゾン反応槽4へのオゾンガスの供給と、再供給切替バルブ51による各オゾン反応槽4への未反応のオゾンガスの供給とを連動して制御することにより、効率的にオゾンガスを供給することができ、この結果オゾン発生器13の小型化をさらに図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る廃液処理装置の第1実施形態を示す構成図。
【図2】本発明に係る廃液処理方法を示すフローチャート。
【図3】第1実施形態における廃液処理装置の第1の変形例を示す構成図。
【図4】第1実施形態における廃液処理装置の第2の変形例を示す構成図。
【図5】第1実施形態における廃液処理装置の第3の変形例を示す構成図。
【図6】本発明に係る廃液処理方法によるCODの変化を比較した図。
【図7】本発明に係る廃液処理装置の第2実施形態を示す構成図。
【図8】供給切替バルブによりオゾン反応槽の第一反応槽にオゾンガスが供給されるように制御されている状態を示した図。
【図9】供給切替バルブによりオゾン反応槽の第二反応槽にオゾンガスが供給されるように制御されている状態を示した図。
【図10】本発明に係る廃液処理装置の第3実施形態を示す構成図。
【図11】供給切替バルブによりオゾン反応槽の第一反応槽に、再供給切替バルブにより第二および第三反応槽にオゾンガスが供給されるように制御されている状態を示した図。
【符号の説明】
【0078】
1 廃液処理装置
2 洗濯機
3 収集タンク
4、4a、4b、4c オゾン反応槽
5 オゾン処理水受タンク
6 フィルタ
7 サンプルタンク
10 ろ過助剤タンク
11a、11b、11c ポンプ
12a、12b 連結配管
13 オゾン発生器
14 オゾン供給配管
20 散気装置
21 オゾン排出配管
22 廃オゾン分解塔
25 アルカリ供給タンク
26 ヒータ
30 ミキシングポンプ
31 微細気泡発生装置
40 供給切替バルブ
50 オゾン再供給配管
51 再供給切替バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物含有廃液の処理が連続的に行われるように構成された複数の反応槽からなる多段式のオゾン反応槽と、
オゾンガスを発生させ、前記オゾン反応槽に前記オゾンガスを供給するオゾンガス供給手段と、
前記オゾンガス供給手段から供給されたオゾンガスを前記有機物含有廃液に溶解させるオゾンガス溶解手段と、
前記多段式のオゾン反応槽の第2槽目以降に設けられ、前記オゾン反応槽中の前記有機物含有廃液にアルカリ剤を供給するアルカリ供給手段とを備えたことを特徴とする廃液処理装置。
【請求項2】
前記有機物含有廃液にろ過助剤を添加するろ過助剤添加手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の廃液処理装置。
【請求項3】
前記ろ過助剤は前記オゾン反応槽の上流側に設けられ、
オゾンによる酸化分解反応の触媒機能をさらに備えた鉄、マンガン、銅およびこれら金属の化合物からなる金属酸化物のうち少なくとも一つからなり、
前記ろ過助剤の粒径は0.5μm乃至50μmであり、
かつ、前記ろ過助剤は前記有機物含有廃液に対し1mg/kg乃至1000mg/kgで供給されることを特徴とする請求項2記載の廃液処理装置。
【請求項4】
前記多段式のオゾン反応槽の各槽に設けられた前記オゾンガス溶解手段は、散気装置または気液混合装置であることを特徴とする請求項1記載の廃液処理装置。
【請求項5】
前記多段式のオゾン反応槽の各槽に設けられた前記オゾンガス溶解手段が気液混合装置である場合、微細気泡発生装置をさらに備えたことを特徴とする請求項4記載の廃液処理装置。
【請求項6】
前記多段式のオゾン反応槽の第1槽目に設けられる前記オゾンガス溶解手段は、前記気液混合装置および微細気泡発生装置であって、
第2槽目以降に設けられる前記オゾンガス溶解手段は、前記散気装置であることを特徴とする請求項1記載の廃液処理装置。
【請求項7】
前記多段式のオゾン反応槽から排出された未反応のオゾンガスを、前記多段式のオゾン反応槽への再供給が可能なオゾンガス再供給手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の廃液処理装置。
【請求項8】
前記オゾンガス供給手段および前記オゾンガス再供給手段は、前記多段式のオゾン反応槽中の任意のオゾン反応槽に前記オゾンガスの供給および再供給の制御が可能なオゾンガス供給制御手段をさらに設けたことを特徴とする請求項1記載の廃液処理装置。
【請求項9】
多段式のオゾン反応槽に有機物含有廃液を供給する廃液供給ステップと、
前記オゾン反応槽にオゾンガスを供給するオゾンガス供給ステップと、
前記オゾンガス供給ステップで供給されたオゾンガスを前記有機物含有廃液に溶解するオゾンガス溶解ステップと、
前記多段式のオゾン反応槽の第2槽目以降に供給された前記有機物含有廃液に、アルカリ剤を供給するアルカリ供給ステップとを備えることを特徴とする廃液処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−90258(P2009−90258A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266075(P2007−266075)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】