説明

廃液処理装置及びその処理方法

【課題】 小型で卓上にも設置できる大きさであり、かつ運転操作が極めて簡易な廃液処理装置及び廃液処理方法を提供する。
【解決手段】 有機物を含む廃液を超臨界水を用いて酸化分解する廃液処理装置であって、熱交換器内に流動する廃液または水の熱交換器内の通過遅延手段を内設又は内蔵させて高い伝熱効果を得るようにしたので、熱交換器の小型化、空冷タイプ冷却機器の採用化など可能となり、廃液処理装置を小型化することができ、また、廃液槽及び水槽に重量センサーを配設させ、水と廃液の圧送順や圧送量を設定し制御するようにしたことから、装置の自動運転が可能となり監視が不要となり、操作が極めて簡単な装置を提供できた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物を含む廃液を超臨界水酸化処理によって分解処理することのできる廃液処理装置およびその処理方法に関するものである。さらに詳しくは、研究室での有機廃水や病院での使用済み薬液などの有機物を含む廃液を超臨界水酸化処理によって分解処理することのできる小型で操作が容易な廃液処理装置およびその処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、大学や公設試験所などの研究機関、分析機関あるいは病院から排出されるクロロホルム、アセトン、ヘキサンまたはジクロロメタンなどの有機系有害物を含む廃液は、さまざまの有機系有害物の廃液とともに一カ所に集められて所定期間保存された後、焼却処理がされている。
【0003】
しかし、こうした焼却処理は、有機系有害物の処理には優れているがダイオキシン類などの副生が懸念されている。
【0004】
こうした点に鑑み、近年では、有機系有機物を含む廃液を超臨界水酸化分解により処理水と排ガスにして排出する装置が創案されている(特許文献1参照)。この装置は、廃液を超臨界水酸化分解し処理水と排ガスにして排出するのでダイオキシン類などの副生の問題を解決することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、近年、研究機関などで使用済みとなった廃液は、その場で研究室ごとに処理する方向に見直されつつある。超臨界水廃液処理装置を全国に存在する大小の多くの研究室に設置可能とするためには研究室内での空いたスペースに設置できることが必要であり、そのためには超臨界水廃液処理装置を小型化する必要がある。
【0006】
この観点からみると、特許文献1に記載の装置は、反応後の処理流体を冷却するために水冷式の冷却器を設置しており、このため冷却水を循環させるための循環パイプや循環ポンプなどを配設しているため、装置も必然的に大型かつ複雑化するので研究室内には設置困難という問題がある。
【0007】
また、一つの実験などで排出された少量の廃液を研究室内で貯留することを不要とするために、廃液の排出されるたびに超臨界水廃液処理装置の操作を行わなければならないが、超臨界水廃液処理装置の運転操作が複雑であり、かつ監視しておかねばならないという問題がある。
【0008】
本発明はこうした点に鑑み創案されたもので、研究室内の床面や机上の空いたスペースに容易に設置可能な卓上サイズの大きさであり、かつ運転操作が極めて簡易な超臨界水酸化反応による廃液処理装置及び廃液処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明において、「処理流体」とは、廃液が反応器で超臨界水酸化反応により処理された流体を意味する。
【0010】
本発明において、「外管」または「内管」とは、二重管式熱交換器において液体が流動する外管または内管を意味する。
【0011】
本発明において、「通過遅延手段」とは、例えば二重管式熱交換器の外管に低温側の廃液が流れ、内管に高温側の処理流体が流れる構造の場合に、廃液及び/又は処理流体の通過を遅らせるために、前記外管及び/又は内管の管路内に内設又は内蔵したコイルや邪魔板などの遅延部材を意味する。
【0012】
本発明において、「生成水」又は「生成ガス」とは処理流体を気液分離器により分離された「液体」又は「気体」を意味する。また、「各構成機器」とは、廃液処理装置の廃液又は処理流体が流動する全域に配設された機器を意味し、例えば高圧ポンプ、熱交換器、反応器、冷却器、圧力制御弁及び気液分離器を含む機器を意味する。
【0013】
請求項1に記載の廃液処理装置1は、有機物を含む廃液Lを超臨界水を用いて酸化分解する廃液処理装置1であって、廃液Lを収容する廃液槽3と、水W1を収容する水槽2と、前記廃液槽3と高圧ポンプ5との間に配設した気液分離器10と、前記廃液L及び水W1を交互に圧送する圧送制御手段と、圧送された廃液Lを超臨界水酸化処理する反応器4と、該反応器4内の圧力を設定圧力に制御する圧力制御手段と、前記反応器4内の温度を設定温度に制御する温度制御手段と、前記反応器4に隣接して設けられ、外管及び/又は内管に通過遅延手段を内設又は内蔵し、かつ前記反応器4の上流側管路内を流動する圧送された廃液L及び水W1と、前記反応器4の下流側管路内を流動する前記反応器4からの高温の処理流体とを熱交換させる熱交換器7と、該熱交換器7の下流側に設けられ前記処理流体を冷却する冷却手段と、該冷却手段の下流側に設けられ前記処理流体を生成水W2と生成ガスGに分離する気液分離器11と、を含む手段からなることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の廃液処理装置1は、請求項1において、有機物を含む廃液Lを超臨界水を用いて酸化分解する廃液処理装置1であって、廃液L及び水W1を交互に圧送する圧送制御手段が、廃液Lを収容する廃液槽3及び水W1を収容する水槽2のそれぞれに配設された計量手段15、16と、廃液L又は水W1の管路Pに配設された開閉弁V1、V2と、高圧ポンプ5及び圧送制御器とから構成され、前記圧送制御手段が、第一段階で水槽2の水W1を所定量圧送し、第二段階で前記水W1が臨界温度以上に昇温されて熱交換器7に到達しているときに常温の廃液Lが熱交換器7に到達するように、廃液槽3の廃液Lの圧送を開始して、廃液Lを全量圧送し、第三段階で前記廃液L圧送後に各構成機器及び管路Pを洗浄する水W1を所定量圧送し、前記水W1圧送後に廃液処理装置1の作動を停止させる制御をすることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の廃液処理装置1は、請求項1または2において、有機物を含む廃液Lを超臨界水を用いて酸化分解する廃液処理装置1であって、熱交換器7の下流側に設けられ処理流体を冷却する冷却手段が、空冷式冷却手段であることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の廃液処理装置1は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、有機物を含む廃液Lを超臨界水を用いて酸化分解する廃液処理装置1であって、反応器4内の温度を設定温度に制御する温度制御手段が、熱交換器7と、反応器4に周設させた加熱器6と、反応器4に設置した温度センサー17と、該温度センサー17が検知した温度に応じて前記加熱器6の作動を制御する温度制御器とから構成されることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の廃液処理装置1は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、有機物を含む廃液Lを超臨界水を用いて酸化分解する廃液処理装置1であって、反応器4内の圧力を設定圧力に制御する圧力制御手段が、冷却器8の下流側に配設された圧力制御弁9と、高圧ポンプ5とから構成されることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の廃液処理方法は、有機物を含む廃液Lを超臨界水を用いて酸化分解する廃液処理方法であって、廃液Lを収容する工程と、水W1を収容する工程と、前記廃液収容工程と圧送工程との間に配設した気液分離工程と、前記廃液L及び水W1を交互に圧送する工程と、圧送された廃液Lを超臨界水酸化処理する反応工程と、前記反応工程の圧力を設定圧力に制御する圧力制御工程と、前記反応器4内の温度を設定温度に制御する温度制御工程と、前記反応工程に隣接して設けられ、外管及び/又は内管に流体の通過を遅延させる方法を備え、かつ前記反応工程の上流側管路内を流動する圧送された廃液L及び水W1と、前記反応工程の下流側管路内を流動する前記反応工程からの高温の処理流体とを熱交換させる熱交換工程と、該熱交換工程の下流側に設けられ前記処理流体を冷却する冷却工程と、該冷却工程の下流側に設けられ前記処理流体を生成水W2と生成ガスGに分離する気液分離工程と、を含む工程からなることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の廃液処理方法は、請求項6において、有機物を含む廃液Lを超臨界水を用いて酸化分解する廃液処理方法であって、廃液L及び水W1を交互に圧送する工程が、廃液Lを収容する工程及び水W1を収容する工程のそれぞれの収容量を計量しつつ、第一段階で水W1を所定量圧送し、第二段階で前記水W1が臨界温度以上に昇温されて熱交換器7に到達しているときに常温の廃液Lが熱交換器7に到達するように、廃液Lの圧送を開始して、廃液Lを全量圧送し、第三段階で廃液L圧送後に各構成機器及び管路Pを洗浄する水W1を所定量圧送し、前記水W1圧送後に廃液処理装置1の作動を停止させるように制御する工程であることを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載の廃液処理方法は、請求項6または7において、有機物を含む廃液Lを超臨界水を用いて酸化分解する廃液処理方法であって、熱交換工程の下流側に設けられ処理流体を冷却する工程が、空冷式冷却工程であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明は、有機物を含む廃液Lを完全閉鎖系の装置内で超臨界水酸化処理を行うことによって、煙の発生がなく、ダイオキシンなどの環境汚染物質の発生もなく、生成ガスGとして無害である二酸化炭素と、生成水W2として水とに分解するという効果を奏する。
【0022】
熱交換器7の管路内に邪魔板又はコイルなどの遅延部材12を内設又は内蔵したことにより、前記管路内を通過する流体の流れを静かな流れでなく乱れた流れにすることができ、前記流体の熱交換器7内における滞留時間を長くすることができるので、高い伝熱効果を奏することができる。
【0023】
そのため、水W1又は廃液Lの温度を常温から臨界温度に大幅に近づけることができるとともに、反応器4で臨界温度以上になった処理流体の温度を常温に大幅に近づけることができ、少ない伝熱面積で高い熱交換性能を発揮でき、熱交換器7を小型化することができ、廃液処理装置1の卓上サイズへの小型化を実現させることができるという効果を奏する。
【0024】
また、水W1又は廃液Lを熱交換器7で昇温させ常温から臨界温度に大幅に近づけた後に、反応器4に周設させたヒーターなどの加熱器6によって臨界温度以上の設定温度まで昇温させるので、ヒーターなどの加熱器6を小型化することができ、廃液処理装置1の卓上サイズへの小型化を実現させることができるという効果を奏する。
【0025】
廃液Lや水W1を圧送する高圧ポンプ5の上流側に気液分離器10を設けたことにより、例えば、廃液L中に酸化剤として希釈した過酸化水素水を投入したときに廃液L中に気泡が発生した場合においても気体と液体とを分離し、液体のみを高圧ポンプ5に供給するので高圧ポンプ5による圧送トラブルを防止できるという効果を奏する。
【0026】
請求項2の発明は、請求項1の発明と同じ効果を奏する。また、請求項2の発明は、水W1および廃液Lの圧送の順序及び圧送量の制御を行うが、水槽2内に収容された水W1の重量及び廃液槽3内に収容された廃液Lの重量をそれぞれ水計量器15、廃液計量器16で計量するようにしたので、第一段階で、研究者等がスイッチを入れると、自動的に開閉弁V1を開にして水槽2の水W1を水計量器15で計量しつつ所定量を送り出し、第二段階で、水W1がヒーターなどの加熱器6によって昇温されて臨界温度以上の高温になって熱交換器7に到達しているときに、常温の廃液Lが高圧ポンプ5で圧送されて熱交換器7に到達するように、水槽2側のバルブV1を自動的に閉にし廃液L側のバルブV2を自動的に開にして廃液槽3の廃液Lの圧送を開始するので、圧送する廃液L全量を熱交換器7により昇温させることができるという効果を奏する。
【0027】
また、第二段階での廃液槽3の廃液Lの圧送が完了し収容廃液の重量がゼロになったことを廃液計量器16で検知できるので、人が監視していなくても廃液槽3内を空になった時点で廃液L側のバルブV2を自動的に閉にすることができるという効果を奏する。
【0028】
さらに、第三段階で水槽2内の水W1を圧送するが、廃液槽3内が空になったことを廃液計量器16が検知すると同時に水槽2側のバルブV1を自動的に開にして水槽2内の水W1の圧送を開始するので、人が監視していなくても廃液Lから水W1への圧送の切り替えが瞬時にできるという効果を奏する。
【0029】
そして、水槽2内の水W1を水計量器15で計量しつつ水W1を所定量圧送することによって、人が監視せずに廃液や処理流体が流動する各構成機器及び管路を洗浄できるという効果を奏する。
【0030】
第三段階での常温の水W1を所定量圧送した後に、廃液処理装置1の作動を自動的に停止させる制御をすることができるので、廃液Lを廃液槽3に注入した後に廃液処理装置の作動開始スイッチを入れれば、人が廃液槽3の廃液量や反応器通過後の処理液がすべて気液分離器11を通過したことなどを監視していなくても、廃液処理がすべて自動的に行われるので、操作が極めて容易にできるという効果を奏する。
【0031】
また、水W1の圧送によって管内の洗浄ができるので、例えば研究室で実験のために日々発生する廃液Lを混ぜると危険である場合もあるので、ある廃液Lを処理した後に別の種類の廃液Lを処理することになっても先の廃液Lが残存していないので安全に使用できるという効果を奏する。
【0032】
廃液槽3内又は水槽2内に収容された廃液L又は水W1の重量を計量する廃液計量器16及び水計量器15が空を検知すると、瞬時に高圧ポンプ5による圧送及びヒーターなどの加熱器6の作動を停止するので反応器4や熱交換器7の空焚きを防止できるという効果を奏する。
【0033】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明と同じ効果を奏する。また、請求項3の発明は、反応器4で臨界温度以上になった処理流体の温度を熱交換器7を通過させることによって常温に大幅に近づけることができるので、さらに常温まで降温させるためには空冷式クーラーを設置すればよいことから、水冷式クーラーと異なり、水を循環させる循環パイプや循環ポンプなどを必要としないので、冷却器を小型で簡易な構成とすることができ、廃液処理装置1の卓上サイズへの小型化を実現させることができるという効果を奏する。
【0034】
また、空冷式クーラーを、螺旋状のパイプP1のみの構成とし、ファンなどの機材を設けていないので、廃液処理装置1の小型化をさらに図ることができるという効果を奏する。
【0035】
熱交換器7の伝熱効率向上による小型化や空冷式冷却器の採用化などの小型化を実現できたことにより、廃液処理装置1全体の大きさを卓上サイズまでに小型化でき、卓上に前記廃液処理装置1を設置して研究者等がひとつの実験の終わるごとに廃液処理をすることができ、使用済み廃液を貯留させなくてもよいという効果を奏する。
【0036】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明と同じ効果を奏する。また、請求項4の発明は、常温の水W1及び廃液Lを熱交換器7で加熱した後に、反応器4に周設されたヒーターなどの加熱器6により、反応器4に設置された温度センサー17の検知温度が臨界温度以上の設定温度に到達するように昇温させ維持するように加熱作動を制御するので、人が監視していなくとも温度制御がされるという効果を奏する。
【0037】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかの発明と同じ効果を奏する。また、請求項5の発明は、圧力調整弁9で臨界圧力以上の圧力を設定すると、高圧ポンプ5の作動によって、廃液Lや水W1又は処理流体の流動する管路P内などの圧力を設定圧力まで昇圧し維持する制御をするので、人が監視していなくても圧力制御がなされるという効果を奏する。
【0038】
以上より、廃液処理装置1の制御が自動的にできることから、廃液処理操作が極めて容易になるという効果を奏する。
【0039】
請求項6の発明は、請求項1の発明と同じ効果を奏する。
【0040】
請求項7の発明は、請求項2の発明と同じ効果を奏する。
【0041】
請求項8の発明は、請求項3の発明と同じ効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る廃液処理装置の実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示す装置の熱交換器を示す部分断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明に係る廃液処理装置1の実施形態を、図1および図2に示す。なお、本発明に係る廃液処理方法は前記廃液処理装置1によって実施することができる。
【0044】
廃液処理装置1は、有機物を含む廃液Lを、超臨界水酸化処理によって連続的に生成水W2と生成ガスGに分解して排出する小型で卓上にも設置可能でかつ移動容易な廃液処理装置1であり、水槽2、廃液槽3、反応器4、高圧ポンプ5、加熱器6、熱交換器7、冷却器8、圧力制御弁9、気液分離器10、気液分離器11、温度制御器(図示なし)及び圧送制御器(図示なし)を含む構成をしている。各構成機器は管路Pで接続され、熱交換器7と反応器4間の管路Pの外周面には管路P内を流動する廃液及び水又は処理流体の温度を保持するために保温カバーを周設している。
【0045】
水槽2は、水道水などの水W1を収容するものであり、取り外し自在で容易に洗浄できる構成としている。廃液槽3は、処理される廃液Lを収容するもので、同様に取り外し自在で容易に洗浄できる構成としている。
【0046】
気液分離器10は、廃液槽3と高圧ポンプ5との間に配設され、廃液L中に気泡を含有する状況が発生した場合においても気体と液体とを分離し、分離した液体のみを高圧ポンプ5に送り、分離した気体を廃液槽3へ戻す。なお、気液分離器10は、廃液槽3と高圧ポンプ5との間に配設されていればよく、水槽2からの水W1の流路との合流部までの廃液槽3からの廃液Lの流路、廃液槽3からの廃液Lの流路と水槽2からの水W1の流路との合流部、または前記合流部後の流路で高圧ポンプ5の上流側に配設されていればよい。
【0047】
高圧ポンプ5は、水槽2、廃液槽3及び気液分離器10の下流側に配設され、水槽2内の水W1又は廃液槽3内の廃液Lを、第一段階の水W1の圧送開始から、第二段階の廃液L圧送を経て、第三段階の水W1の圧送完了までの間、運転し続け反応器4内の廃液L及び水W1に超臨界状態の圧力をもたらす。
【0048】
反応器4は、廃液Lの超臨界水酸化反応に適した触媒が封入されており、廃液槽3から供給される有機物を含んだ廃液Lを超臨界水酸化反応によって無害化を図るものである。反応器4には加熱器6、温度センサー17及び温度制御器が設置されている。
【0049】
温度制御器により、温度センサー17で検知した温度と超臨界状態をもたらす設定温度との差が生じた場合は、反応器4に周設された加熱器6を作動させたり、又は作動停止させる温度制御がなされる。
【0050】
熱交換器7は、往路7aと復路7bからなる二重管タイプであり(図2参照)、反応器4に隣接して設けられている。そして、往路7aを通過する常温の廃液L及び水W1と、反応器4からの復路7bを通過する高温の処理流体とを熱交換させるので、熱交換器7の往路7aの下流側に配設された反応器4に周設された加熱器6の省エネルギー化ができ、熱交換器7の復路7bの下流側に配設された冷却器8を水冷式でなく空冷式の冷却器8にすることができる。
【0051】
また、熱交換器7は、水W1又は廃液Lの通過を遅らせるための遅延部材(コイル)12を、往路7aに内設している。これにより、熱交換器7の伝熱効果を向上させることができ、前記熱交換器7の小型化を実現させることができる。なお、遅延部材12はコイルに限定されるものではなく、いわゆる邪魔板などを内設することもできる。
【0052】
また、水W1又は廃液L及び処理流体の熱交換器7内における通過を遅らせる遅延部材12を往路7a及び/又は復路7bに内設又は内蔵してもよい。
【0053】
冷却器8は、熱交換器7の復路7bの下流側に配設された空冷式クーラーであり、処理流体を冷却し常温まで降温させる。本実施形態における空冷式クーラーは、螺旋状のパイプP1のみで構成している。なお、空冷式クーラーの構造はこれに限定されるものではなく、パイプに隣接してファンを設けることもできる。
【0054】
圧力制御弁9は、冷却器8の下流側に配設され、圧力を設定すると圧力制御弁9より上流側を設定圧力より過大な圧力から保護すると同時に設定圧力に制御する。
【0055】
よって、高圧ポンプ5を作動させて高圧ポンプ5の下流側から前記圧力制御弁9の上流側との間に配設された熱交換器7、反応器4、冷却器8及び管路P内の圧力を昇圧させて臨界圧力以上の設定圧力に到達させ、その後は圧力制御弁9により設定圧力に維持する制御をする。
【0056】
気液分離器11は、圧力制御弁9の下流側に設けられ、常温及び大気圧となった生成水W2と生成ガスGに分離する。生成水W2は受槽14で受けた後、放流する。また、生成ガスGは、そのまま大気中に放出する。
【0057】
前記遅延部材12を熱交換器7内に内設することにより高い伝熱効率を実現させたことから、熱交換器7の長さを短縮でき、反応器4に周設した加熱器6を小型化でき、冷却器8を水冷式でなくコイル状の空冷式クーラーにできたことにより、廃液処理装置1の卓上サイズ化を実現した。
【0058】
さらに、熱交換器7、反応器4、加熱器6、冷却器8及び圧力調整弁9を廃液処理装置1の上面側に配置することによって、部品交換などのメンテナンス性を向上させることができる。
【0059】
これらによって、廃液槽3の収容量が500ミリリットルから10リットル、最大設定圧力30MPa、最大設定温度450°Cの仕様の場合には、縦約0.28m、横約0.79m、高さ約0.68mの卓上サイズまで小型化でき、机上に載置して研究者等が操作できる大きさにすることができた。
【0060】
圧送制御器は、水W1と廃液Lの圧送順序、圧送量、圧送開始タイミング、圧送終了タイミング及び廃液処理装置1の作動終了を制御する。
【0061】
圧送制御器は、第一段階で、水槽2の水W1を水計量器15で水重量を計量しながら所定量を高圧ポンプ5により圧送する制御をする。
【0062】
第一段階における水W1の所定量は、水W1が、反応器4を通過する際に加熱器6によって加熱され臨界温度以上の設定温度まで昇温されて熱交換器7に達している状態で、第二段階における圧送された廃液Lが熱交換器7に到達するように設定する。
【0063】
そのため、第一段階における水W1の所定量は、水W1の圧送が開始されて、熱交換器7内の流体の温度が設定温度に到達する時間までに圧送される水量を基に算出する。
【0064】
第二段階で、第一段階の水W1が所定量圧送された後、水W1の管路Pに配設された開閉弁V1が閉となると同時に廃液Lの管路Pに配設された開閉弁V2が開となり、廃液槽3に収容された廃液Lを、廃液計量器16で残存廃液量を計量しながら高圧ポンプ5により全量圧送する制御をする。
【0065】
第三段階で、第二段階の廃液槽3の廃液Lを廃液計量器16で廃液重量を計量しながらゼロになるまで全て送出した後に、廃液Lの管路Pに配設された開閉弁V2が閉になると同時に水W1の管路Pに配設された開閉弁V1が開となり、再び水槽2の水W1を、反応器4に周設された加熱器6で臨界温度以上に昇温された処理流体が全て気液分離器11を通過するまで、水計量器15で計量しながら所定量を自動的に圧送する制御をする。
【0066】
第三段階における水W1の所定量は、図1において、気液分離器11から水W1用管路Pに配設された開閉弁V1までの管路P内、気液分離器11内、圧力制御弁9内、冷却器8内、反応器4内、熱交換器7内、高圧ポンプ5内及び気液分離器10内の廃液、水又は処理流体が流動する部分の内容積をすべて加算した内容積を基に算出する。
【0067】
第三段階では、水W1で廃液処理装置1を構成する各構成機器および管路を洗浄させる。この洗浄により混ぜてはいけない廃液を誤って混ぜてしまうということを生じさせないという効果もある。
【0068】
また、圧送制御器は、第三段階の水W1を所定量圧送したことを水計量器15で検知後、廃液処理装置1を自動的に停止させる制御をする。
【0069】
したがって、廃液L及び水W1を収容し温度設定及び圧力設定をした後は廃液処理装置1の作動開始釦を押すだけで廃液処理が自動的に行われるので、廃液処理装置1の操作を極めて容易にすることができる。
【0070】
本実施形態に係る廃液処理装置1の作用について説明する。
【0071】
事前に、廃液Lの超臨界水酸化反応に適する固体化された触媒を反応器4に封入しておき、廃液Lの種類に応じて臨界温度以上の温度及び臨界圧力以上の圧力を設定する。なお、あらかじめ廃液の種類別に臨界温度以上の温度及び臨界圧力以上の圧力を設定し記憶させておくことにより、廃液の種類を選択すればあらかじめ設定された温度及び圧力を自動的に設定させることもでき、この場合、研究者等は廃液の種類を選択すればよい。
【0072】
次に、研究者等は廃液L、及び酸化剤として希釈した過酸化水素水を廃液槽3に、水W1を水槽2に注入した後に、廃液処理装置1の作動開始の釦を押す。この押釦操作によって各構成機器の作動が開始され、廃液処理装置1は廃液Lを気液分離器11で処理するまで自動的に廃液処理を行う。なお、酸化剤は過酸化水素水に限定されない。
【0073】
第一段階として、水槽2の水W1を水計量器15で計量しながら所定量を圧送する。圧送された水W1は、高圧ポンプ5によって、熱交換器7の往路7aを通って反応器4に送られ、そこで、加熱器6によって加熱され臨界温度以上の設定温度に到達した後、熱交換器7の復路7bに到達する。
【0074】
そして第二段階として、圧送された常温の廃液Lが熱交換器7の往路7aに到達して、復路7bの高温な処理流体との間で熱交換を行って、常温から臨界温度以上の設定温度に大幅に近づけた温度、例えば300°C近傍の温度まで昇温され、反応器4に供給される。このとき、熱交換器7の往路7aには遅延部材12が内設されているので、水W1及び廃液Lの流れを乱れた流れにすることができ、水W1及び廃液Lの熱交換器7内における滞留時間を長くすることができるので、高い伝熱効果が得られ十分な熱交換が行われる。
【0075】
熱交換器7で昇温され、反応器4に圧送された廃液Lは、そこで加熱器6により臨界温度以上の設定温度まで昇温され超臨界水酸化処理によって無害化された後、高温の処理流体となって熱交換器7の復路7b内を流動する。このとき、往路7a内を流動する常温の廃液L及び水W1との間で熱交換を行って冷却され降温されると共に、往路7a内の廃液L及び水W1を加熱する。
【0076】
なお、反応器4内の圧力は、高圧ポンプ5と圧力制御弁9によって設定圧力を維持するように制御され、反応器4内の温度は温度センサー17と加熱器6によって設定温度を維持するように制御される。
【0077】
熱交換器7の復路7b内を流動し臨界温度以上の設定温度から常温に大幅に近づけた温度、例えば100°C近傍の温度まで降温された処理流体は、空冷式クーラーである冷却器8内を流動しながら常温まで冷却された後、気液分離器11に達し、そこで生成水W2と生成ガスGに分離される。分離された生成水W2は受槽14に貯められた後、放流され、生成ガスGはそのまま大気中に放出される。
【0078】
第三段階では、第二段階の廃液Lを廃液計量器16で計量しながら全量圧送した後に、処理流体がすべて気液分離器11を通過するように、水W1を水計量器15で計量しながら所定量圧送した後に、廃液処理装置1の作動を自動的に停止する。
【符号の説明】
【0079】
1 廃液処理装置
2 水槽
3 廃液槽
4 反応器
5 高圧ポンプ
6 加熱器
7 熱交換器
7a 往路
7b 復路
8 冷却器
9 圧力制御弁
10 気液分離器
11 気液分離器
12 遅延部材
14 受槽
15 水計量器
16 廃液計量器
17 温度センサー
G 生成ガス
L 廃液
P 管路
P1 螺旋状のパイプ
V1 開閉弁
V2 開閉弁
W1 水
W2 生成水
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【特許文献1】特開2002−177975号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む廃液を超臨界水を用いて酸化分解する廃液処理装置であって、廃液を収容する廃液槽と、水を収容する水槽と、前記廃液槽と高圧ポンプとの間に配設した気液分離器と、前記廃液及び水を交互に圧送する圧送制御手段と、圧送された廃液を超臨界水酸化処理する反応器と、該反応器内の圧力を設定圧力に制御する圧力制御手段と、前記反応器内の温度を設定温度に制御する温度制御手段と、前記反応器に隣接して設けられ、外管及び/又は内管に通過遅延手段を内設又は内蔵し、かつ前記反応器の上流側管路内を流動する圧送された廃液及び水と、前記反応器の下流側管路内を流動する前記反応器からの高温の処理流体とを熱交換させる熱交換器と、該熱交換器の下流側に設けられ前記処理流体を冷却する冷却手段と、該冷却手段の下流側に設けられ前記処理流体を生成水と生成ガスに分離する気液分離器と、を含む手段からなることを特徴とする廃液処理装置。
【請求項2】
有機物を含む廃液を超臨界水を用いて酸化分解する廃液処理装置であって、廃液及び水を交互に圧送する圧送制御手段が、廃液を収容する廃液槽及び水を収容する水槽のそれぞれに配設された計量手段と、廃液又は水の管路に配設された開閉弁と、高圧ポンプ及び圧送制御器とから構成され、前記圧送制御手段が、第一段階で水槽の水を所定量圧送し、第二段階で前記水が臨界温度以上に昇温されて熱交換器に到達しているときに常温の廃液が熱交換器に到達するように、廃液槽の廃液の圧送を開始して、廃液を全量圧送し、第三段階で前記廃液圧送後に各構成機器及び管路を洗浄する水を所定量圧送し、前記水圧送後に廃液処理装置の作動を停止させる制御をすることを特徴とする請求項1記載の廃液処理装置。
【請求項3】
有機物を含む廃液を超臨界水を用いて酸化分解する廃液処理装置であって、熱交換器の下流側に設けられ処理流体を冷却する冷却手段が、空冷式冷却手段であることを特徴とする請求項1または2に記載の廃液処理装置。
【請求項4】
有機物を含む廃液を超臨界水を用いて酸化分解する廃液処理装置であって、反応器内の温度を設定温度に制御する温度制御手段が、熱交換器と、反応器に周設させた加熱器と、反応器に設置した温度センサーと、該温度センサーが検知した温度に応じて前記加熱器の作動を制御する温度制御器とから構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の廃液処理装置。
【請求項5】
有機物を含む廃液を超臨界水を用いて酸化分解する廃液処理装置であって、反応器内の圧力を設定圧力に制御する圧力制御手段が、冷却器の下流側に配設された圧力制御弁と、高圧ポンプとから構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の廃液処理装置。
【請求項6】
有機物を含む廃液を超臨界水を用いて酸化分解する廃液処理方法であって、廃液を収容する工程と、水を収容する工程と、前記廃液収容工程と圧送工程との間に配設した気液分離工程と、前記廃液及び水を交互に圧送する工程と、圧送された廃液を超臨界水酸化処理する反応工程と、前記反応工程の圧力を設定圧力に制御する圧力制御工程と、前記反応器内の温度を設定温度に制御する温度制御工程と、前記反応工程に隣接して設けられ、外管及び/又は内管に流体の通過を遅延させる方法を備え、かつ前記反応工程の上流側管路内を流動する圧送された廃液及び水と、前記反応工程の下流側管路内を流動する前記反応工程からの高温の処理流体とを熱交換させる熱交換工程と、該熱交換工程の下流側に設けられ前記処理流体を冷却する冷却工程と、該冷却工程の下流側に設けられ前記処理流体を生成水と生成ガスに分離する気液分離工程と、を含む工程からなることを特徴とする廃液処理方法。
【請求項7】
有機物を含む廃液を超臨界水を用いて酸化分解する廃液処理方法であって、廃液及び水を交互に圧送する工程が、廃液を収容する工程及び水を収容する工程のそれぞれの収容量を計量しつつ、第一段階で水を所定量圧送し、第二段階で前記水が臨界温度以上に昇温されて熱交換器に到達しているときに常温の廃液が熱交換器に到達するように、廃液の圧送を開始して、廃液を全量圧送し、第三段階で廃液圧送後に各構成機器及び管路を洗浄する水を所定量圧送し、前記水圧送後に廃液処理装置の作動を停止させるように制御する工程であることを特徴とする請求項6記載の廃液処理方法。
【請求項8】
有機物を含む廃液を超臨界水を用いて酸化分解する廃液処理方法であって、熱交換工程の下流側に設けられ処理流体を冷却する工程が、空冷式冷却工程であることを特徴とする請求項6または7に記載の廃液処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate