説明

廃液回収装置及び液体噴射装置

【課題】廃液吸収材に対してより多くの廃液を効率よく吸収させることができる廃液回収装置及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】排出される廃インクを吸収するインク吸収材30と、インク吸収材30を軸線S1を中心として回転させる駆動モーター36と、を備え、インク吸収材30は、インク吸収材30の回転中心部で廃インクを受容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排出された廃液を回収する廃液回収装置、及び該廃液回収装置を備えた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体を媒体に対して噴射する液体噴射装置の一種として、インクジェット式のプリンターが広く知られている。こうしたプリンターの中には、インク(液体)を噴射する液体噴射ヘッドから排出される廃インク(廃液)を収容するための廃液回収容器を備えるものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の廃インクユニット(廃液回収容器)には、複数の円筒状のインク吸収体が互いの外周面を接触させた状態で筐体内に収容されている。また、この廃インクユニットには、これらのインク吸収体のうち廃インクを受容する位置に配設されたインク吸収体を回転させる際に駆動される駆動モーターが設けられている。そのため、廃インクを受容したインク吸収体が駆動モーターから伝達される駆動力に基づいて回転すると、このインク吸収体に外周面を接触させて隣り合う他のインク吸収体も連動して回転する。その結果、廃インクを受容したインク吸収体の外周面から、これと隣り合うインク吸収体の外周面への廃インクの伝播が促進され、廃インクを受容する位置に配設されたインク吸収体における廃インクの吸収能力が良好に維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−173204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、廃インクは、重力に従って鉛直下方には浸透しやすいが、水平方向には浸透しにくい。そこで、上記の廃インクユニットでは、インク吸収体における径方向の外側寄りの部分で廃インクを受容することにより、廃インクを、受容された位置からインク吸収材の外周面側に向けて浸透し易くしている。そして、外周面まで浸透した廃インクを、隣り合うインク吸収体に浸透させている。しかしながら、この場合には、受容された位置からインク吸収材の径中心の近傍領域に向けては廃インクが浸透しにくい。また同様に、隣り合うインク吸収体の外周面に伝播された廃インクも、そのインク吸収体における外周面から径中心の近傍領域に向けては浸透しにくい。したがって、これらのインク吸収材の径中心の近傍領域を廃インクの吸収用領域として十分に活用できない虞があった。また、隣り合う円筒状のインク吸収体同士の接触面積が小さいため、廃インクが浸透しにくくなるという虞もあった。そのため、廃インクを受容するインク吸収体から最も離れたインク吸収体にはほとんど廃インクが浸透しない状態となった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、廃液吸収材に対してより多くの廃液を効率よく吸収させることができる廃液回収装置及び液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の廃液回収装置は、排出される廃液を吸収する廃液吸収材と、前記廃液吸収材を回転させる回転機構と、を備え、前記廃液吸収材は前記廃液吸収材の回転中心部で前記廃液を受容する。
【0008】
上記構成によれば、回転機構が廃液吸収材を回転させると、廃液吸収材の回転中心部に吸収された廃液には、廃液吸収材の回転中心から遠ざかる方向に遠心力が作用する。そのため、廃液吸収材における回転中心部で受容された廃液は、廃液吸収材の回転中心から遠ざかる方向に向けて浸透し拡散する。したがって、廃液吸収材は、その広範な部位を通じてより多くの廃液を効率よく吸収することができる。
【0009】
また、本発明の廃液回収装置において、前記廃液吸収材を回転させる速度は、前記廃液吸収材を回転させていないときに前記廃液が前記廃液吸収材内を浸透する範囲よりも大きい範囲まで浸透するように遠心力を作用させる速度である。
【0010】
上記構成によれば、廃液吸収材を回転させる速度は、廃液に対して遠心力が作用するような速度である。また、その遠心力は、廃液吸収材を回転していない場合と比べて、廃液が浸透する範囲が広くなるような遠心力である。このため、廃液吸収材を回転していない場合よりも広範囲にわたって廃液を浸透させることができる。
【0011】
また、本発明の廃液回収装置において、前記廃液吸収材は、前記回転中心部寄りの部分である第1吸収部と、前記第1吸収部よりも前記回転中心部から遠い第2吸収部とを有し、前記第2吸収部は前記第1吸収部よりも前記廃液の保持力が大きい。
【0012】
上記構成によれば、廃液の受容部位となる第1吸収部は、回転中心部寄りの部分であるため、廃液吸収材の回転時に遠心力が働き難いけれども、廃液の保持力が相対的に小さいため、廃液吸収材の回転時には廃液が回転中心から遠ざかる方向に浸透し易い。一方で、第2吸収部は、廃液吸収材の回転時に遠心力が大きく働くため、廃液が回転中心部から遠ざかる方向に拡散し易い。また、第2吸収部は、廃液の保持力が大きいため、回転中心部から遠ざかる方向に拡散した廃液を良好に保持する。したがって、廃液吸収材は、回転中心部から離れた第2吸収部に廃液を迅速且つ安定に保持させることができる。
【0013】
また、本発明の廃液回収装置において、前記廃液吸収材は、前記廃液吸収材の回転中心となる軸線は、水平面と交差する方向に延びており、前記回転中心部に鉛直方向上側が開口した凹部を有し、該凹部で前記廃液を受容する。
【0014】
上記構成によれば、廃液吸収材は、凹部で廃液を受容することによって、廃液に対する接触面積が増大するため、排出された廃液を凹部の内面を通じて迅速に吸収することができる。また、廃液吸収材は、凹部の鉛直方向上側が開口しているため、凹部に排出された廃液を廃液吸収材内に浸透させるまでの間は凹部内に保持することができるとともに、凹部の内面から廃液吸収材内に廃液を遠心力によって浸透・拡散させることができる。
【0015】
また、本発明の廃液回収装置は、前記凹部の底面の高さを変更する変更手段を更に備える。
上記構成によれば、変更手段が凹部の底面の高さを上昇させることにより、鉛直上方には浸透し難い廃液を廃液吸収材の上方寄りの部分に浸透させることができる。そのため、廃液吸収材に対して上下方向への広範囲に亘って廃液を拡散させることができる。
【0016】
また、本発明の廃液回収装置において、前記変更手段は、前記廃液が前記廃液吸収材に対して排出されるに連れて前記凹部の底面の高さを上昇させる。
上記構成によれば、廃液吸収材に対して廃液を下側から順に吸収させることにより、排出された廃液が廃液吸収材に吸収されずに廃液吸収材から溢れることを抑制しつつ、廃液吸収材に対して上下方向への広範囲に亘って廃液を吸収させることができる。
【0017】
また、本発明の液体噴射装置は、ターゲットに対して液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドから排出された廃液を回収する上記構成の廃液回収装置とを備えた。
【0018】
上記構成によれば、上記廃液回収装置の発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る第1の実施形態のインクジェット式プリンターの斜視図。
【図2】(a)は同実施形態のメンテナンスユニットの模式図、(b)はインク吸収材の斜視図、(c)はインク吸収材の平面図。
【図3】(a)〜(d)はインク吸収材を模式的に示す平面図であって、(a)は廃インクの受容領域が最初に形成された状態を示す平面図、(b)は図3(a)に示す状態から廃インクが径方向外側に拡散した状態を示す平面図、(c)は図3(b)に示す状態から廃インクの受容領域が更に形成された状態を示す平面図、(d)は比較例のインク吸収材に廃インクの受容領域が形成された状態を示す平面図。
【図4】本発明に係る第2の実施形態のメンテナンスユニットの模式図。
【図5】(a)〜(d)は同実施形態のインク吸収材を模式的に示す正面図であって、(a)は廃インクの受容領域が最初に形成された状態を示す正面図、(b)は図5(a)に示す状態から廃インクが拡散した状態を示す正面図、(c)は図5(b)に示す状態から廃インクの受容領域が更に形成された状態を示す正面図、(d)は図5(c)に示す状態から廃インクが拡散した状態を示す正面図。
【図6】本発明に係る第3の実施形態のメンテナンスユニットの模式図。
【図7】(a)〜(d)は同実施形態のインク吸収材を模式的に示す正面図であって、(a)は廃インクの受容領域が最初に形成された状態を示す正面図、(b)は図7(a)に示す状態から廃インクが径方向外側に拡散した状態を示す正面図、(c)は図7(b)に示す状態から廃インクの受容領域が更に形成された状態を示す正面図、(d)は図7(c)に示す状態から廃インクが径方向外側に拡散した状態を示す正面図。
【図8】(a)〜(c)は同実施形態のインク吸収材を模式的に示す正面図であって、(a)はインク吸収材における下方寄りの部分の全域に廃インクが吸収された状態を示す正面図、(b)は図8(a)に示す状態から変位部材が上方に変位した状態を示す正面図、(c)は図8(b)に示す状態から廃インクの受容領域が更に形成された状態を示す正面図。
【図9】(a)は本発明に係る別の実施形態のインク吸収材の平面図、(b)は同実施形態のインク吸収材が型抜かれた型材の模式図、(c)は比較例のインク吸収材が型抜かれた型材の模式図。
【図10】(a)は同実施形態のインク吸収材と第1〜第3実施形態のインク吸収材との体積比を示す模式図、(b)は比較例のインク吸収材と第1〜第3実施形態のインク吸収材との体積比を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
以下、本発明を液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンターに具体化した第1の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、図1に示すように、鉛直方向における重力方向を下方向、反重力方向を上方向とする。また、鉛直方向と交差する方向であって、プリンターに給送された用紙が画像の形成時において搬送される搬送方向を前方向、その搬送方向の反対方向を後方向とする。さらに鉛直方向および搬送方向の双方と交差する方向であって液体噴射ヘッドが往復移動する方向すなわち走査方向を、前方から見て、それぞれ右方向、左方向と呼ぶことにする。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る液体噴射装置としてのインクジェット式プリンター(以下、「プリンター」という。)11は、平面視で矩形状をなすフレーム12を備えている。フレーム12内には支持台13が左右方向に延設されると共に、当該支持台13上には紙送りモーター14を有する紙送り機構により記録用紙Pが後方側から前方側に向かって給送される。また、フレーム12内における支持台13の上方には、当該支持台13の長手方向(左右方向)と平行に延びるガイド軸15が架設されている。
【0022】
ガイド軸15には、キャリッジ16が、ガイド軸15の軸線方向(左右方向)に沿って往復移動可能に支持されている。また、フレーム12内の後面においてガイド軸15の両端部と対応する位置には、駆動プーリー17及び従動プーリー18が回転自在に支持されている。駆動プーリー17にはキャリッジ16を往復移動させる際の駆動源となるキャリッジモーター19が連結されると共に、これら一対のプーリー17,18間には、キャリッジ16を固定したタイミングベルト20が掛装されている。したがって、キャリッジ16は、キャリッジモーター19の駆動により、ガイド軸15にガイドされながらタイミングベルト20を介して左右方向に移動する。
【0023】
キャリッジ16の下面には液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド21が設けられている。一方、キャリッジ16上には記録ヘッド21に対してインクを供給するための複数(本実施形態では5つ)のインクカートリッジ23が着脱可能に搭載されている。これら各インクカートリッジ23は、記録ヘッド21の下面にて構成されるノズル形成面21a(図2参照)に形成された複数のノズル開口列(図示略)と個別に対応するものであると共に、記録ヘッド21内に形成されたインク流路(図示略)を介して対応するノズル列にインクを個別に供給する。
【0024】
さらに、フレーム12内の一端部(図1では右端部)、すなわち、記録用紙Pが至らない非印刷領域には、プリンター11の電源オフ時や記録ヘッド21をメンテナンスする場合にキャリッジ16を位置させるためのメンテナンス位置となるホームポジションHPが設けられている。そして、このホームポジションHPの下方となる位置には、記録ヘッド21からの記録用紙Pに対するインクの噴射が良好に維持されるように、各種のメンテナンス動作を行うメンテナンスユニット24が設けられている。
【0025】
図2(a)に示すように、メンテナンスユニット24は、記録ヘッド21のノズルから排出される廃液としての廃インクを受容するキャップ25と、当該キャップ25に対して接続される排出チューブ26と、排出チューブ26を通じてキャップ25内を吸引する吸引ポンプ27と、キャップ25を昇降させるための昇降装置(図示略)とを備えている。そして、キャリッジ16がホームポジションHPに移動した状態において昇降装置の駆動に基づきキャップ25が上昇した場合には、記録ヘッド21の下面であるノズル形成面21aに対してキャップ25が各ノズル列を囲んだ状態で当接する。また、キャップ25が記録ヘッド21のノズル形成面21aに対して当接した状態で吸引ポンプ27が駆動した場合、キャップ25内に負圧が蓄積して記録ヘッド21のノズル内からインクが吸引されて廃液回収装置としての廃インクタンク28に対して回収される。
【0026】
図2(a)〜(c)に示すように、廃インクタンク28は、略円柱箱体形状のタンク本体29を備えている。タンク本体29の内部には、円柱状の廃液吸収材としてのインク吸収材30が収容されている。インク吸収材30は、円柱状の第1吸収部としての第1吸収材31と、第1吸収材31を外側から囲む円環状の第2吸収部としての第2吸収材32とを有している。そして、第2吸収材32の内周面は、第1吸収材31の外周面に対して隙間なく密着している。また、第2吸収材32は、第1吸収材31よりも空隙部分の比率が小さく(換言すると、毛管力が大きく)、廃インクの保持力が大きい。
【0027】
第1吸収材31における上面の略中央部には、鉛直方向を深さ方向とする上側が開口した平面視略円形状の凹部33が凹設されている。凹部33の開口は、タンク本体29の上壁部の略中央部に形成された開口部34を介して挿入される排出チューブ26の下流端に対して上下に対向している。そして、廃インクは、排出チューブ26の端部から凹部33の内側に排出される。なお、凹部33の底面33aは、第1吸収材31の高さ方向の中央位置よりも第1吸収材31の下面寄りに位置している。また、第1吸収材31には、複数(本実施形態では8つ)の切り欠き部35が凹部33の内側面33bから径方向外側に向けて形成されている。切り欠き部35は、内側面33bと第1吸収材31の外面との中間付近まで形成されている。これらの切り欠き部35は、凹部33の内側面33bの上下方向全域に亘って延びており、凹部33の開口中心を中心として等角度間隔に配置されている。
【0028】
また、タンク本体29の底面の略中央部には、回転機構としての駆動モーター36の回転軸37が連結されている。この場合、タンク本体29の底面の中心位置は、水平面と交差する鉛直方向に延びる回転軸37の軸線S1上に位置している。また、タンク本体29に収容されたインク吸収材30の凹部33の開口中心は、回転軸37の軸線S1上に位置している。このため、凹部33が廃インクを受容する液体受容部である。また、凹部33は回転軸37の軸線S1を含んでおり、インク吸収材30の回転中心部でもある。また、インク吸収材30は、第1吸収材31が軸線S1寄りに位置すると共に、第2吸収材32が第1吸収材31よりも軸線S1から離れている。なお、図2(a)では、タンク本体29とインク吸収材30との間に隙間を示しているが、これは図をわかりやすくするためである。実際には、インク吸収材30はタンク本体29の内面に対して隙間なく密着している。そのため、駆動モーター36の回転軸37の回転に伴ってタンク本体29が回転すると、インク吸収材30はタンク本体29と一体となって回転軸37の軸線S1を中心として回転する。
【0029】
次に、上記のように構成されたプリンター11の作用について、特に、インク吸収材30に吸収された廃インクを拡散させる際の作用に着目して以下説明する。なお、作用の説明の際には、タンク本体29及び駆動モーター36の回転軸37は省略する。
【0030】
さて、メンテナンスユニット24が記録ヘッド21に対してメンテナンス動作を実行すると、インク吸収材30の凹部33は、排出チューブ26の端部から排出された廃インクを受容する。すなわち、インク吸収材30は、軸線S1から最も遠い部分と最も近い部分との中間部分よりも軸線S1寄りに位置する凹部33を通じて廃インクを受容する。すると、凹部33に受容された廃インクは、インク吸収材30から毛管力が作用することにより、凹部33の内面に対して浸透して吸収される。そして、インク吸収材30には、凹部33の内面に沿って廃インクの受容領域38が形成される。なお、本実施形態において廃インクの受容領域38とは、排出チューブ26から排出された廃インクがインク吸収材30に受容されて浸透し始めてから30秒程度経過した時点で、インク吸収材30が廃インクを浸透・拡散させている領域を示している。この時点では、インク吸収材30を回転していない状態として示しているが、回転しながら廃インクを受容してもよい。
【0031】
この場合、図3(a)に示すように、凹部33の内側面33bに形成された切り欠き部35は、凹部33に排出された廃インクと凹部33の内面との接触面積を増大させている。そのため、廃インクは、図3(d)に示すように、凹部33の内側面33bに切り欠き部35を形成しない場合と比較して、切り欠き部35の内面を含めた表面積の広い凹部33の内面を通じて、インク吸収材30の広範な部位に浸透して吸収される。したがって、凹部33に受容された廃インクは、凹部33の内側面33bに切り欠き部35を形成しない場合と比較して、インク吸収材30に対してより速やかに浸透して吸収される。
【0032】
続いて、駆動モーター36の回転軸37が回転駆動することにより、インク吸収材30を回転させる。インク吸収材30に吸収された廃インクには、インク吸収材30の回転に伴ってインク吸収材30の回転中心となる回転軸37の軸線S1から遠ざかる方向に遠心力が作用する。この場合、凹部33の開口中心が回転軸37の軸線S1上に位置しているため、凹部33の内面に沿って形成された受容領域38の廃インクには、凹部33の開口中心から遠ざかる方向に遠心力が作用する。インク吸収材30を回転させなくても、インク吸収材30の毛管力により廃インクは凹部33の開口中心から遠ざかる方向に(すなわち、径方向外側に向けて)自然に浸透する。しかし、自然の浸透力にさらに遠心力が作用するようにインク吸収材30を回転させることで、廃インクが凹部33の開口中心からより遠ざかる方向へ浸透して受容領域38よりも外側に広がった浸透領域A1を形成する(図3(b)参照)。なお、排出された廃インクは、インク吸収材30を回転させたとしても、すぐに第2吸収材32の外周面側まで浸透することはなく、廃インクの浸透は途中で止まる。
【0033】
そして次に、図3(c)に示すように、インク吸収材30には、排出チューブ26の端部から排出された廃インクによって受容領域38が新たに形成される。そして、廃インクの排出と回転による浸透を繰り返することにより、途中で浸透が止まっていた廃インクが徐々に回転中心から遠ざかる方向へ浸透し、最終的に外周面まで浸透していく。
【0034】
この場合、回転中心寄りに位置する第1吸収材31は、廃インクの保持力が低く、廃インクの浸透性(流動性)が高い。そのため、第1吸収材31は、インク吸収材30の回転時に遠心力が働き難いけれども、廃インクを回転中心から遠ざかる方向に速やかに拡散させる。一方で、回転中心から離れて位置する第2吸収材32は、廃インクの保持力が高く、廃インクの浸透性(流動性)が低い。しかしながら、第2吸収材32は、インク吸収材30の回転時に遠心力が大きく働くため、廃インクを回転中心から遠ざかる方向に速やかに拡散させる。
【0035】
なお、第2吸収材32は、廃インクの浸透性(流動性)が低いため、廃インクを第1吸収材31に向けて径方向内側に拡散させ難い。そのため、インク吸収材30の回転が停止された後であっても、第2吸収材32に拡散された廃インクは、第1吸収材31に向けて拡散することが抑制されて第2吸収材32に保持される。
【0036】
また、本実施形態では、凹部33がインク吸収材30の回転中心に位置している。そのため、凹部33における廃インクの受容動作とインク吸収材30の回転動作が反復して行われた場合、インク吸収材30は、その回転中心となる凹部33の内面とその回転中心から最も遠く離れた第2吸収材32の外周面との間の全領域が廃インクの浸透・拡散可能領域となり、その全領域において廃インクを吸収保持し得る。したがって、インク吸収材30は、その広範な部位を通じてより多くの廃インクを吸収することが可能となる。
【0037】
上記第1実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)駆動モーター36が軸線S1を中心としてインク吸収材30を回転させると、インク吸収材30に吸収された廃インクには、インク吸収材30の回転中心から遠ざかる方向に遠心力が作用する。そのため、インク吸収材30における回転中心寄りの部分で受容された廃インクは、インク吸収材30の回転中心から遠ざかる方向となる径方向外側に向けて放射状に浸透する。そして、インク吸収材30は、その回転中心寄りの部分とその回転中心から最も離れた部分との間の全領域が廃インクの浸透・拡散可能領域となり、その全領域において廃インクを吸収保持し得る。したがって、インク吸収材30を回転させた場合は、インク吸収材30を回転しない場合に比べて、その広範な部位を通じてより多くの廃インクを効率よく吸収することができる。また、インク吸収材30を回転させた場合は、インク吸収材30を回転しない場合に比べて、廃インクがより速くインク吸収材30内に広く浸透する。そのため、廃インクが浸透しきる前に廃インクタンク28が倒れた場合に、インク吸収材30内に浸透しきっていない廃インクが漏れ出す可能性を低くすることができる。
【0038】
(2)駆動モーター36は、インク吸収材30を回転させて廃インクに遠心力を作用させることにより、インク吸収材30の回転中心から遠ざかる方向への廃インクの拡散を補助する。そのため、廃インクは、インク吸収材30の回転時に作用する遠心力によってインク吸収材30に拡散される。すなわち、廃インクは、浸透力だけでなく遠心力によってインク吸収材30に対して拡散される。そのため、廃インクをインク吸収材30に対して速やかに拡散させることができる。このため、インク吸収材30を回転させる速度は、廃インクの浸透力を上回るような遠心力を作用させる速度である。なお、本願の先行技術文献である特許文献1に記載の廃インクユニットもインク吸収材を回転させている。しかし、特許文献1に記載の廃インクユニットでは、円筒形状のインク吸収材の外周面同士を接触させてインクを浸透させている。この場合、本実施形態のように遠心力が作用するような速度で回転させると、インク吸収材同士の接触時間が短くなるため、廃インクは浸透しにくくなる。特許文献1に記載の廃インクユニットは、廃インクを浸透させやすくするためには、遠心力が作用しない速度でインク吸収材を回転させる必要がある。この点で、本実施形態は特許文献1に記載の廃インクユニットとは思想が異なる。
【0039】
(3)廃インクの受容部位となる第1吸収材31は、軸線S1寄りの部分であるため、インク吸収材30の回転時に遠心力が働き難いけれども、廃インクの保持力が相対的に小さいため、インク吸収材30の回転時には廃インクが回転中心から遠ざかる方向に浸透し易い。一方で、第2吸収材32は、インク吸収材30の回転時に遠心力が大きく働くため、廃インクが回転中心から遠ざかる方向に拡散し易い。また、第2吸収材32は、廃インクの保持力が大きいため、回転中心から遠ざかる方向に拡散した廃インクを良好に保持する。したがって、インク吸収材30は、回転中心から離れた第2吸収材32に廃インクを迅速且つ安定に保持させることができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図4及び図5に従って説明する。なお、第2の実施形態は、凹部33の底面33aの高さが第1の実施形態と異なる。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する構成について主に説明し、第1実施形態と同一又は相当する構成については同一符号を付すだけにして重複説明を省略する。
【0040】
さて、図4に示すように、本実施形態では、第1吸収材31の上面の略中央部に凹部33が凹設されており、この凹部33の底面33aは第1吸収材31の高さ方向の中央位置よりも第1吸収材31の上面寄りに位置している。
【0041】
そして、メンテナンスユニット24が記録ヘッド21に対してメンテナンス動作を実行すると、排出チューブ26から排出される廃インクが凹部33に受容される。そして、図5(a)に示すように、廃インクは、インク吸収材30から毛管力が作用することにより、凹部33の内面を通じてインク吸収材30に対して拡散して吸収されて、廃インクの受容領域38が形成される。
【0042】
続いて、駆動モーター36の回転軸37が回転駆動することにより、インク吸収材30を回転させる。すると、インク吸収材30に吸収された廃インクには、インク吸収材30の回転に伴ってインク吸収材30の回転中心となる回転軸37の軸線S1から遠ざかる方向に遠心力が作用する。この場合、凹部33の開口中心が回転軸37の軸線S1上に位置しているため、凹部33の内面に形成された受容領域38の廃インクには、凹部33の開口中心から遠ざかる方向に遠心力が作用する。そして、廃インクは、遠心力に従って凹部33の開口中心から遠ざかる方向へ(すなわち、径方向外側に向けて)浸透する。また、廃インクは、重力に従って鉛直下方にも浸透する。そのため、図5(b)に示すように、廃インクは凹部33の開口中心から遠ざかるように受容領域38から斜め下方に浸透して受容領域38よりも外側に広がった浸透領域A1を形成する。
【0043】
そして次に、図5(c)に示すように、インク吸収材30には、排出チューブ26の端部から排出された廃インクによって受容領域38が新たに形成される。続いて、駆動モーター36の回転軸37が回転駆動することにより、インク吸収材30を回転させる。すると、受容領域38の廃インクは、遠心力に従って凹部33の開口中心から遠ざかる方向へ(すなわち、径方向外側に向けて)浸透する。また、廃インクは、重力に従って鉛直下方にも浸透する。そのため、図5(d)に示すように、廃インクは、受容領域38から遠ざかるように斜め下方に浸透して受容領域38よりも外側に広がった浸透領域A2を形成する。また同様に、浸透領域A1の廃インクは、遠心力に従って凹部33の開口中心から更に遠ざかるように斜め下方に浸透して、第2吸収材32の外周面側まで浸透する。
【0044】
すなわち、廃インクの排出と回転による浸透を繰り返すことにより、廃インクが徐々に回転中心から遠ざかる方向へ浸透していく。したがって、インク吸収材30は、その回転中心となる凹部33の内面とその回転中心から最も遠く離れた第2吸収材32の外周面側との間の全領域が廃インクの浸透・拡散可能領域となり、その全領域において廃インクを吸収保持し得る。
【0045】
また、本実施形態では、インク吸収材30における上方寄りの部分から浸透する廃インクは、重力に従って鉛直下方に拡散する。この拡散は、数時間から数日かけてゆっくりと行われる。そして、廃インクの排出と重力による鉛直下方への浸透を繰り返すことにより、インク吸収材30には、凹部33が形成された上方寄りの部分から下方寄りの部分に向けての順に、凹部33に受容された廃インクが保持される。そのため、インク吸収材30は、その上下方向の略全域を通じてより多くの廃インクを吸収することが可能となる。
【0046】
上記第2の実施形態によれば、上記第1の実施形態の効果(1)〜(3)に加えて、以下に示す効果を得ることができる。
(4)凹部33の底面33aが第1吸収材31の高さ方向の中央位置よりも第1吸収材31の上面寄りに位置しており、凹部33に受容された廃インクは、インク吸収材30における凹部33が形成された上方寄りの部分から重力に従って鉛直下方に浸透する。そのため、インク吸収材30は、その上下方向の略全域を通じてより多くの廃インクを吸収することができる。
【0047】
なお、上記第2の実施形態は、以下のような変形例に変更してもよい。
・上記第2の実施形態において、インク吸収材30に凹部33を設けることなく、インク吸収材30の上面で廃インクを受容するようにしてもよい。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図6〜図8に従って説明する。なお、第3の実施形態は、凹部33の底面33aの高さを変更可能である点が上記各実施形態と異なる。したがって、以下の説明においては、上記各実施形態と相違する構成について主に説明し、上記各実施形態と同一又は相当する構成については同一符号を付すだけにして重複説明を省略する。
【0048】
さて、図6に示すように、本実施形態では、第1吸収材31の上面の略中央部には、第1吸収材31を上下方向に貫通する平面視略円形状の貫通部40が形成されている。そして、第1吸収材31の下面における貫通部40の開口には、タンク本体29の底壁部の略中央部に形成された貫通孔41を介して略円柱状の変位部材42が挿入されている。なお、変位部材42の外周面と貫通孔41の内面との間には、タンク本体29の内側を液密状に封止する図示しないシール部材が設けられている。
【0049】
変位部材42は、廃インクに対する吸収性を有さない材質によって構成されており、上下方向に細長く延びる形状を有している。また、変位部材42には、長手方向において貫通部40に挿入される側とは反対側の部分にラック43が形成されている。変位部材42のラック43には、変位部材42の長手方向と直交する方向に沿う軸線を中心に回転するピニオン44が噛合されている。ピニオン44は、図示しない駆動モーターによって正逆両方向に回転駆動される。そして、駆動モーターの駆動に伴ってピニオン44が回転することにより、ピニオン44とラック43が噛合した状態の変位部材42は上下方向に変位する。
【0050】
なお、変位部材42の平面視形状は、貫通部40の内面の平面視形状と略同一となっている。そのため、変位部材42の外周面が貫通部40の内面に対して隙間なく当接した状態で、変位部材42が貫通部40の内側を上下方向に変位する。そして、貫通部40の内面と変位部材42の上面は、インク吸収材30の上面に開口した凹部33を構成する。具体的には、貫通部40の内面が凹部33の内側面33bを構成すると共に、変位部材42の上面が凹部33の底面33aを構成する。そのため、変位部材42の上下方向の変位に伴って、凹部33の底面33aの高さが変更される。すなわち、本実施形態では、変位部材42及びピニオン44によって、廃インクを受容する凹部33の底面33aの高さを変更する変更手段が構成されている。
【0051】
また、タンク本体29の底壁部には、有底略筒状のカバー45がその開口端を当接させた状態で固定されている。そして、カバー45は、変位部材42におけるタンク本体29の底壁部から下側に突出した部分を覆っている。また、カバー45の底面の略中央部には、駆動モーター36の回転軸37が連結されている。この場合、カバー45の底面の中心位置は回転軸37の軸線S1上に位置している。また、カバー45によって覆われる変位部材42は、凹部33の底面を構成する上面の中心が回転軸37の軸線S1上に位置している。そして、駆動モーター36の回転軸37の回転に伴ってカバー45が回転すると、カバー45に連結されたタンク本体29が回転すると共に、インク吸収材30がタンク本体29と一体となって回転する。なお、変位部材42及びピニオン44は、カバー45によって支持されている。そのため、駆動モーター36の回転軸37の回転に伴ってカバー45が回転すると、変位部材42及びピニオン44は、カバー45と一体となって回転する。
【0052】
そして、メンテナンスユニット24が記録ヘッド21に対してメンテナンス動作を実行する場合には、まず、図7(a)に示すように、変位部材42を可動範囲における最下方位置に変位させることにより、凹部33の底面33aを第1吸収材31の下面よりも僅かに上方に配置する。続いて、吸引ポンプ27を駆動させることにより、キャップ25内から排出チューブ26を通じて排出される廃インクが凹部33に受容される。すると、廃インクは、凹部33の内側面33bを構成するインク吸収材30から毛管力が作用することにより、凹部33の内側面33b(貫通部40の内面)を通じてインク吸収材30に対して拡散して吸収されて、廃インクの受容領域38が形成される。
【0053】
続いて、駆動モーター36の回転軸37が回転駆動することにより、インク吸収材30を回転させる。すると、インク吸収材30に吸収された廃インクには、インク吸収材30の回転に伴ってインク吸収材30の回転中心となる回転軸37の軸線S1から遠ざかる方向に遠心力が作用する。この場合、凹部33の底面33aの中心が回転軸37の軸線S1上に位置しているため、凹部33の内側面33bに形成された受容領域38の廃インクには、凹部33の底面33aの中心から遠ざかる方向に遠心力が作用する。そして、図7(b)に示すように、廃インクは、遠心力に従って凹部33の開口中心から遠ざかる方向へ(すなわち、径方向外側に向けて)浸透して受容領域38よりも外側に広がった浸透領域A1を形成する。なお、排出された廃インクは、インク吸収材30を回転させたとしても、すぐに第2吸収材32の外周面側まで浸透することはなく、廃インクの浸透は途中で止まる。
【0054】
そして次に、図7(c)に示すように、インク吸収材30には、排出チューブ26の端部から排出された廃インクによって受容領域38が新たに形成される。続いて、駆動モーター36の回転軸37が回転駆動することにより、インク吸収材30を回転させる。すると、図7(d)に示すように、受容領域38の廃インクは、遠心力に従って凹部33の開口中心から遠ざかる方向へ(すなわち、径方向外側に向けて)浸透して受容領域38よりも外側に広がった浸透領域A2を形成する。また同様に、浸透領域A1の廃インクは、遠心力に従って凹部33の開口中心から更に遠ざかる方向へ(すなわち、径方向外側に向けて)浸透して、第2吸収材32の外周面側まで浸透する。
【0055】
すなわち、廃インクの排出と回転による浸透を繰り返すことにより、廃インクが徐々に回転中心から遠ざかる方向へ浸透していく。したがって、図8(a)に示すように、インク吸収材30は、その回転中心となる凹部33の内面とその回転中心から最も遠く離れた第2吸収材32の外周面側との間の全領域が廃インクの浸透・拡散可能領域となり、その全領域において廃インクを吸収保持し得る。
【0056】
そして、図8(b)に示すように、インク吸収材30における下方寄りの部分の全域に廃インクが保持されると、ピニオン44が駆動モーターの駆動によって図8(b)に示す右回り方向に回転する。この場合、インク吸収材30における下方寄りの部分の全域に廃インクが保持されたか否かは、例えば、タンク本体29がプリンター11に装着されてからの駆動モーター36の回転軸37の回転数が所定の閾値に達したか否かに基づいて判定される。
【0057】
すると、変位部材42が上方に変位して貫通部40内への進入量を増大させることにより、凹部33の底面33aが上方に移動する。すなわち、本実施形態では、廃インクがインク吸収材30に排出されるに連れて凹部33の底面33aの高さが上昇する。そして、図8(c)に示すように、排出チューブ26の端部から凹部33に排出された廃インクが受容領域38を形成する。この場合、廃インクの受容領域38は、変位部材42を変位させて凹部33の底面33aの高さを上昇させる前の受容領域よりも上方に形成される。以上を繰り返すと、インク吸収材30には、下方寄りの部分から上方寄りの部分に向けての順に、凹部33に受容された廃インクが保持される。すなわち、本実施形態では、遠心力による廃インクの径方向外側への拡散を行った後に、凹部33の底面33aを上昇させた上で、遠心力による廃インクの径方向外側への拡散を順次行う。そのため、インク吸収材30は、その上下方向の略全域を通じてより多くの廃インクを吸収することが可能となる。
【0058】
上記第3の実施形態によれば、上記第1の実施形態の効果(1)〜(3)に加えて、以下に示す効果を得ることができる。
(5)ピニオン44が変位部材42を上方に変位させて凹部33の底面33aを上昇させることにより、鉛直上方には浸透し難い廃インクをインク吸収材30の上方寄りの部分に浸透させることができる。そのため、インク吸収材30に対して上下方向に広範囲に亘って廃インクを拡散させることができる。
【0059】
(6)インク吸収材30に対して廃インクを下側から順に吸収させることにより、排出された廃インクがインク吸収材30に吸収されずにインク吸収材30から溢れることを抑制しつつ、インク吸収材30に対して上下方向に広範囲に亘って廃インクを吸収させることができる。
【0060】
なお、上記第3の実施形態は、以下のような変形例に変更してもよい。
・上記第3の実施形態において、インク吸収材30の凹部33に廃インクが排出されるに連れて変位部材42を鉛直下方に変位させて凹部33の底面33aを降下させるようにしてもよい。この場合、廃インクは、インク吸収材30には、上方寄りの部分から下方寄りの部分に向けての順に、凹部33に受容された廃インクが保持される。
【0061】
・上記第3の実施形態において、変位部材42を上下に変位させる機構はラック&ピニオン機構に限定されず、変位部材42を上下に変位させることができる構成であれば任意の機構を採用することができる。
【0062】
・上記第3の実施形態において、変位部材42は、タンク本体29の底壁部を上下に貫通することなく、タンク本体29の内側に収容されるようにしてもよい。この場合、例えば、変位部材42とタンク本体29の内底面との間にアクチュエータを設け、このアクチュエータの駆動によって変位部材42を上下に変位させるようにしてもよい。
【0063】
・上記第3の実施形態において、変位部材42は、廃インクに対して吸収性を有する材質によって構成してもよい。
なお、上記各実施形態は、以下のような別の実施形態に変更してもよい。
【0064】
・上記各実施形態において、図9(a)に示すように、インク吸収材30は、平面視六角形状の第1吸収材31と、第1吸収材31の外側面を外側から覆う平面視六角形状の第2吸収材32とによって構成してもよい。
【0065】
この構成によれば、図9(b)に示すように、矩形板状の基材50からインク吸収材30を型抜きする際に、型抜かれるインク吸収材30同士が隙間なく隣り合う。そのため、図9(c)に示すように、矩形板状の基材50から平面視円形状のインク吸収材30を型抜きする場合よりも、基材50を効率よく利用しつつインク吸収材30を型抜くことができる。
【0066】
また、この構成によれば、図10(a)(b)に示すように、第1〜第3実施形態における円柱状のインク吸収材の断面積領域R(図10(a)(b)において点線で示す)との対比においても、インク吸収材30の断面積領域は断面四角形状をなす比較例のインク吸収材130の断面積領域よりも大きくなる。そのため、同一の大きさの領域に対してより大きな平面視形状を有するインク吸収材30を配置することができる。
【0067】
・上記各実施形態において、回転軸37の軸線S1は鉛直方向に対して傾斜してもよい。
・上記各実施形態において、インク吸収材30は、第1吸収材31及び第2吸収材32の廃インクの保持力が互いに等しくてもよいし、第2吸収材32の方が第1吸収材31よりも廃インクの保持力が小さくてもよい。
【0068】
・上記各実施形態において、凹部33は、インク吸収材30の上面の中心寄りの位置であれば、インク吸収材30の上面の中心から外れた位置に形成してもよい。
・上記各実施形態において、インク吸収材30の回転時における回転速度を変化させるようにしてもよい。この場合、インク吸収材30の回転中心を中心とした周方向に慣性力が作用して同方向への廃インクの拡散を補助することができる。
【0069】
・上記各実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式のプリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置がある。あるいは、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
11…液体噴射装置としてのプリンター、21…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、28…廃液回収装置としての廃インクタンク、30…廃液吸収材としてのインク吸収材、31…第1吸収部としての第1吸収材、32…第2吸収部としての第2吸収材、33…凹部、33a…底面、36…回転機構としての駆動モーター、42…変更手段を構成する変位部材、44…変更手段を構成するピニオン、S1…軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出される廃液を吸収する廃液吸収材と、
前記廃液吸収材を回転させる回転機構と、
を備え、
前記廃液吸収材は、前記廃液吸収材の回転中心部で前記廃液を受容することを特徴とする廃液回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載の廃液回収装置において、
前記廃液吸収材を回転させる速度は、前記廃液吸収材を回転させていないときに前記廃液が前記廃液吸収材内を浸透する範囲よりも大きい範囲まで浸透するように遠心力を作用させる速度であることを特徴とする廃液回収装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の廃液回収装置において、
前記廃液吸収材は、前記回転中心部寄りの部分である第1吸収部と、前記第1吸収部よりも前記回転中心部から遠い第2吸収部とを有し、前記第2吸収部は前記第1吸収部よりも前記廃液の保持力が大きいことを特徴とする廃液回収装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の廃液回収装置において、
前記廃液吸収材の回転中心となる軸線は、水平面と交差する方向に延びており、
前記廃液吸収材は、前記回転中心部に鉛直方向上側が開口した凹部を有し、該凹部で前記廃液を受容することを特徴とする廃液回収装置。
【請求項5】
請求項4に記載の廃液回収装置において、
前記凹部の底面の高さを変更する変更手段を更に備えることを特徴とする廃液回収装置。
【請求項6】
請求項5に記載の廃液回収装置において、
前記変更手段は、前記廃液が前記廃液吸収材に排出されるに連れて前記凹部の底面の高さを上昇させることを特徴とする廃液回収装置。
【請求項7】
ターゲットに対して液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドから排出された廃液を回収する請求項1〜請求項6のうち何れか一項に記載の廃液回収装置と
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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