説明

廃熱ボイラー、廃熱ボイラーの操業方法及びノズル部材

【課題】炉から供給される排ガス中の揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等を由来とする強固な鋳付きの発生を未然に防止でき、廃熱ボイラーの操業を停止して鋳付きの除去作業を行う必要がなく、安定して効率的な操業を行うことが可能な廃熱ボイラー、この廃熱ボイラーの操業方法及びこの廃熱ボイラーにおいて使用されるノズル部材を提供する。
【解決手段】炉から排出される排ガスの廃熱を回収する廃熱ボイラー10であって、前記排ガスが導入される導入口14と前記排ガスが外部へ排出される排出口とを備えたボイラー本体11と、このボイラー本体11内部に向けて不活性ガスを導入する不活性ガス導入部と、を有し、前記不活性ガス導入部は、ボイラー本体11内部の部材表面及びボイラー本体11の内壁面の少なくともいずれか一方に対して、連続的または間欠的に、不活性ガスを吹き付けるノズル部46を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製錬炉や焼却炉等で発生した高温の排ガスから廃熱を回収する廃熱ボイラー、この廃熱ボイラーの操業方法及びこの廃熱ボイラーにおいて使用されるノズル部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉱石やスクラップ等の製錬を行う製錬炉や、ゴミ等を焼却する焼却炉等、高温の排ガスを発生させる各種炉には、その高温の排ガスから廃熱を回収して利用するために、例えば特許文献1に示すような廃熱ボイラーが接続されている。
この廃熱ボイラーは、筒状をなすボイラー本体と、このボイラー本体内に配設された多数の蒸発管と、を備えており、排ガスの熱を蒸発管等で回収するように構成されている。
【0003】
ところで、前述の廃熱ボイラーにおいては、各種炉から排ガスとともに、亜鉛や鉛等の揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等が送り込まれるので、ボイラー本体の内壁面や蒸発管等の部材の表面には、排ガス中の揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等を由来とする鋳付きが生じることがある。
このような鋳付きが生じた場合には、熱の回収効率が大幅に低下するとともに、排ガスの通気抵抗が増すことになる。
【0004】
そこで、従来では、定期的に廃熱ボイラーの操業を停止して、例えば特許文献2に記載されたスートブローを用いて鋳付きを除去していた。このスートブローは、廃熱ボイラーの内部に装入され、その先端から高圧のエア又は蒸気を噴出することによって、ボイラー本体の内壁面や蒸発管等の部材の表面に堆積した揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等を除去する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−047378号公報
【特許文献2】特開2003−074803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2に記載されたスートブローにおいては、ボイラー本体の内壁面や蒸発管等の部材の表面に薄く堆積した揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等については対応可能であるものの、強固に形成された鋳付きを除去することはできなかった。また、スートブローにおいては、例えば3MPaといった比較的高圧のエアや蒸気を用いることになるため、これらの高圧に対応する設備を設ける必要があった。
【0007】
また、スートブロー等で対応できないような鋳付きを除去する際には、ブレーカ等の工具を用いて人力で行う必要があった。このような人力による鋳付き除去作業は非常に過酷な作業であって、効率的に行うことはできなかった。
さらに、発生した鋳付きを除去する際には、廃熱ボイラーの操業を停止することになるため、この廃熱ボイラーに接続された炉の操業も停止することになり、炉の処理効率が大幅に低下するといった問題があった。
【0008】
本発明は、上述した状況に鑑みてなされたものであって、炉から供給される排ガス中の揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等を由来とする強固な鋳付きの発生を未然に防止でき、廃熱ボイラーの操業を停止して鋳付きの除去作業を行う必要がなく、安定して効率的な操業を行うことが可能な廃熱ボイラー、この廃熱ボイラーの操業方法及びこの廃熱ボイラーにおいて使用されるノズル部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る廃熱ボイラーは、炉から排出される排ガスの廃熱を回収する廃熱ボイラーであって、前記排ガスが導入される導入口と前記排ガスが外部へ排出される排出口とを備えたボイラー本体と、このボイラー本体内部に向けて不活性ガスを導入する不活性ガス導入部と、を有し、前記不活性ガス導入部は、前記ボイラー本体内部の部材表面及び前記ボイラー本体の内壁面の少なくともいずれか一方に対して、連続的または間欠的に、不活性ガスを吹き付けるノズル部を備えていることを特徴としている。
【0010】
このような構成とされた廃熱ボイラーにおいては、ボイラー本体内部に向けて不活性ガスを導入する不活性ガス導入部を有し、この不活性ガス導入部が、前記ボイラー本体内部の部材表面及び前記ボイラー本体の内壁面の少なくともいずれか一方に対して、連続的または間欠的に、不活性ガスを吹き付けるノズル部を備えていることから、このノズル部から不活性ガスが吹き付けられることによって、排ガス中の揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等がボイラー本体内部の部材表面やボイラー本体の内壁面に堆積することが抑制され、強固な鋳付きの発生を未然に防止することができる。
【0011】
すなわち、排ガス中の揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等がボイラー本体内部の部材表面やボイラー本体の内壁面に堆積して強固な鋳付きを発生させる前に、不活性ガスによってこれら揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等を除去しているのである。なお、間欠的に不活性ガスを吹き付ける場合には、揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等が不活性ガスによって除去不可能な厚さで堆積する以前に不活性ガスを吹き付けるように、不活性ガスを吹き付ける間隔を設定する必要がある。
【0012】
また、不活性ガスをボイラー内部に導入する構成とされていることから、この不活性ガスによって、排ガス中の揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等が酸化することが防止され、鋳付きの発生がより確実に抑制されることになる。
さらに、排ガス中の揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等が厚く堆積する前に、不活性ガスによって吹き飛ばしていることから、スートブローのように高圧の不活性ガスを用いる必要がない。
【0013】
ここで、前記ボイラー本体は、前記導入口から後段側に向かうにしたがい漸次下方側に向けて延在する斜底部を備えており、前記ノズル部は、前記斜底部の内壁面に対して、不活性ガスを吹き付けるように配設されていることが好ましい。
排ガスの導入口から後段側に向かうにしたがい漸次下方側に向けて延在する斜底部を備えている場合には、この斜底部に鋳付きが生じやすい。これは、導入口を通じてボイラー本体内に導入された際に、排ガスの流速が急激に低下することにより、排ガス中に含まれている揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等が、導入口の近傍で落下し易く、前記斜底部に堆積しやすいためである。よって、この斜底部の内壁面に対して、連続的又は間欠的に、不活性ガスを吹き付けるノズル部を配設することによって、この斜底部における鋳付きの発生を抑制することができ、安定した操業を行うことができる。
【0014】
本発明に係る廃熱ボイラーの操業方法は、炉から排出される排ガスの廃熱を回収する廃熱ボイラーにおいて、その内部での鋳付きの発生を防止する廃熱ボイラーの操業方法であって、前記排ガスが導入される導入口と前記排ガスが外部へ排出される排出口とを備えたボイラー本体の内部において、前記ボイラー本体内部の部材表面及び前記ボイラー本体の内壁面の少なくともいずれか一方に対して、連続的または間欠的に、不活性ガスを吹き付けることを特徴としている。
【0015】
この構成の廃熱ボイラーの操業方法によれば、前記ボイラー本体内部の部材表面及び前記ボイラー本体の内壁面の少なくともいずれか一方に対して、連続的または間欠的に、不活性ガスを吹き付けるので、排ガス中の揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等がボイラー本体内部の部材表面やボイラー本体の内壁面に堆積して強固な鋳付きを発生させる前に、不活性ガスによってこれら排ガス中の揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等を除去することができ、強固な鋳付きの発生を未然に防止することができる。よって、鋳付き除去のために、操業を停止する必要がなく、廃熱ボイラーの操業を安定して効率的に実施することが可能となる。
【0016】
ここで、前記ボイラー本体は、前記導入口から後段側に向かうにしたがい漸次下方側に向けて延在する斜底部を備えており、前記斜底部の内壁面に対して、連続的または間欠的に、不活性ガスを吹き付けることが好ましい。
この場合、前述のように鋳付きが発生しやすい斜底部に対して、連続的または間欠的に、不活性ガスを吹き付ける構成とされていることから、この斜底部における鋳付きの発生を未然に防止することができ、安定した操業を行うことが可能となる。
【0017】
また、予め前記ボイラー本体内部を観察して前記鋳付きが発生する起点を特定しておき、この起点に向けて前記不活性ガスを吹き付けることが好ましい。
この場合、前記鋳付きが発生する起点を予め特定しておき、この起点に対して不活性ガスを吹き付けることにより、確実に鋳付きの発生を抑制することができる。また、前述の起点に対して局所的に不活性ガスを吹き付けることから、不活性ガスの使用量を大幅に削減することができる。
【0018】
さらに、前記不活性ガスの吐出圧力Pが0.5MPa≦P≦0.6MPaの範囲内に設定され、前記不活性ガスの流量Lが、10m/min≦L≦15m/minの範囲内に設定されていることが好ましい。
この場合、前記不活性ガスの吐出圧力Pが0.5MPa以上、流量Lが10m/min以上に設定されていることから、排ガス中の揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等を確実に除去することができる。また、前記不活性ガスの吐出圧力Pが0.6MPa以下、流量Lが15m/min以下に設定されていることから、スートブロー等と比較して、不活性ガスの圧力及び流量が低く設定されることになり、高圧に対応した設備を設ける必要がなく、かつ、不活性ガスの使用量を削減することができる。
【0019】
本発明に係るノズル部材は、前述の廃熱ボイラーにおいて使用されるノズル部材であって、内部に冷却媒体が流通される冷却配管が設けられた冷却ブロック体を有し、この冷却ブロック体に、不活性ガスの供給路及びノズル部が設けられていることを特徴としている。
【0020】
この構成のノズル部材によれば、内部に冷却媒体が流通される冷却配管が設けられた冷却ブロック体に、不活性ガスの供給路及びノズル部が設けられていることから、高温のボイラー本体内部に配設しても、ノズル部材が溶融してしまうおそれがない。よって、ボイラー本体内部の所望の位置にノズル部材を配設して、不活性ガスを吹き付けることが可能となり、強固な鋳付きの発生を未然に防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
このように、本発明によれば、炉から供給される排ガス中の揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等を由来とする強固な鋳付きの発生を未然に防止でき、廃熱ボイラーの操業を停止して鋳付きの除去作業を行う必要がなく、安定して効率的な操業を行うことが可能な廃熱ボイラー、この廃熱ボイラーの操業方法及びこの廃熱ボイラーにおいて使用されるノズル部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態である廃熱ボイラーの説明図である。
【図2】本発明の実施形態である廃熱ボイラーの導入口近傍を示す説明図である。
【図3】図2におけるX−X断面矢視図である。
【図4】本発明の実施形態である廃熱ボイラーに使用されるノズル部材の概略説明図である。
【図5】本発明の他の実施形態である廃熱ボイラーの導入口近傍を示す説明図である。
【図6】実施例において、従来例の廃熱ボイラーで発生した鋳付きの状態を示す説明図である。
【図7】実施例において、本発明例の廃熱ボイラーで発生した鋳付きの状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の一実施形態である廃熱ボイラー、この廃熱ボイラーの操業方法及びこの廃熱ボイラーにおいて使用されるノズル部材について、添付した図面を参照して説明する。
本実施形態である廃熱ボイラー10は、銅精鉱から粗銅を得る非鉄製錬設備において使用されるものである。この非鉄製錬設備は、銅精鉱を酸化させてスラグ及びマットからなる熔体を生成する溶錬炉1と、この溶錬炉1から供給された熔体を保持し、スラグとマットとを分離する分離炉と、分離炉で分離されたマットをさらに製錬して粗銅を得る溶銅炉と、を備えている。
【0024】
ここで、本実施形態である廃熱ボイラー10は、前述の非鉄製錬設備に備えられた製錬炉のうち溶錬炉1に接続するものとされている。
この溶錬炉1においては、銅精鉱やフラックスを空気や酸素と共に炉内へと供給するランスを備えており、その内部がスラグ及びマットの融点以上の温度(例えば、1200℃〜1300℃)とされている。
【0025】
この溶錬炉1には、図1に示すように、その天井部2に排気口3が設けられており、この排気口3には、溶錬炉1から排出される高温の排ガスを本実施形態である廃熱ボイラー10へと導入する立ち上がり煙道5が接続されている。
この立ち上がり煙道5は、排気口3に連通されて上方に向けて延在する縦孔を備えた本体部6と、この縦孔に連通するとともに縦孔と交差する方向に延在する連通孔を備えた連設部7と、を有している。なお、本実施形態においては、縦孔が鉛直方向に延在させられており、連通孔は、縦孔と直交する方向(水平方向)に延在させられている。
【0026】
廃熱ボイラー10は、図1に示すように、筒状をなすボイラー本体11を備えており、このボイラー本体11の一端(図1において左側)に排ガスを導入する導入口14が設けられ、他端(図1において右側)に排ガスを外部へと排出する排出口15が設けられている。
そして、このボイラー本体11の一端側部分(導入口14側部分)が火炉20とされ、他端側部分(排出口15側部分)が対流伝熱部30とされている。
【0027】
火炉20は、立ち上がり煙道5との接続部である導入口14を通じて、立ち上がり煙道5から排ガスを取り入れる構成とされている。
この火炉20の天井部22には、排ガスとともに火炉20内に取り込まれた亜鉛や鉛等の揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等を除去するためのスクリーン管23が複数配設されている。このスクリーン管23は、火炉20の天井部22から下方に向けて延設されており、蒸発管として機能している。なお、このスクリーン管23は、火炉20の幅方向及び延在方向において所定の間隔をあけて複数配列されている。
【0028】
また、火炉20の底部には、排ガスとともに火炉20内に取り込まれた揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等を外部に排出するためのホッパー24が設けられている。このホッパー24は、下方に向かうにしたがい漸次幅狭となるように構成されている。
そして、導入口14とホッパー24との間には、導入口14から他端側に向かうにしたがい漸次下方側に向けて延在して、火炉20の底部に設けられたホッパー24に接続される斜底部25が設けられている。
【0029】
対流伝熱部30は、火炉20との接続部から略水平方向に延びる管状をなしており、その内部には、排ガスから熱を回収するための本体蒸発管33が、天井部32から下方に向けて延設されている。この本体蒸発管33は、対流伝熱部30の幅方向及び延在方向において所定の間隔をあけて複数配列されている。ここで、本体蒸発管33は、前述の火炉20に配設されたスクリーン管23よりも密に配列されている。
また、この対流伝熱部30の底部には、排ガスとともに対流伝熱部30内に取り込まれた揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等を外部に排出するためのホッパー34が設けられている。このホッパー34は、下方に向かうにしたがい漸次幅狭となるように構成されている。
【0030】
そして、本実施形態においては、図2及び図3に示すように、立ち上がり煙道5とボイラー本体11の導入口14との接続部分の下部に、冷却ジャケットが配設されている。この冷却ジャケットは、図4に示すように、銅ブロック体41の内部に水冷配管42が配設されたものであり、高温雰囲気である火炉20内においても銅ブロック体41が溶融しないように構成されている。
この銅ブロック体41には、図4に示すように、冷却配管42とは別に不活性ガスの供給路45及びノズル部46が設けられている。すなわち、この水冷ジャケットが、本実施形態におけるノズル部材40とされているのである。
【0031】
ノズル部材40(冷却ジャケット)の供給路45には、図示しない不活性ガス供給手段が接続されており、供給路45を介してノズル部46から火炉20(ボイラー本体11)の内部に向けて不活性ガスが吹き出される構成とされている。
そして、このノズル部材40のノズル部46は、図3に示すように、火炉20の幅方向中央部に配置されており、前述の斜底部25の内壁面に向けられている。すなわち、このノズル部材40のノズル部46は、斜底部25の幅中央部に向けて不活性ガスを吹き付ける構成とされているのである。
【0032】
ここで、ノズル部46が向けられた斜底部25の幅中央部は、鋳付きの発生の起点となる箇所に相当する。
詳述すると、排ガスの導入口14から他端側に向かうにしたがい漸次下方側に向けて延在する斜底部25が設けられた部分においては、導入口14を通じて火炉20内に排ガスが導入された際に排ガスの流路面積が広くなることから、排ガスの流速が急激に低下し、排ガス中に含まれている揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等が導入口14の近傍で落下し易くなり、斜底部25に堆積することになる。そして、斜底部25の幅方向中央部に揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等が堆積することで、鋳付きが成長していくのである。すなわち、この斜底部25の幅方向中央部が鋳付きの発生の起点となっているのである。
なお、このような鋳付きの発生の起点については、ノズル部材40を配設する前に、予めボイラー本体11内部を観察しておくことで特定することができる。そして、この起点に向けて窒素ガスを吹き付けるようにノズル部材40を配設しているのである。
【0033】
なお、本実施形態においては、不活性ガスとして窒素ガスを用いている。
ここで、ノズル部46から吐出される窒素ガスの吐出圧力Pは0.5MPa≦P≦0.6MPaの範囲内に設定され、窒素ガスの流量Lが、10m/min≦L≦15m/minの範囲内に設定されている。
また、ノズル部46からは、窒素ガスが連続的又は間欠的に吐出される構成とされており、本実施形態では、窒素ガスが連続的に吐出される構成とされている。
【0034】
このような構成とされた廃熱ボイラー10が接続された溶錬炉1においては、ランスを用いて銅精鉱及びフラックスが酸素とともに炉内へと供給される。このとき、溶錬炉1内の熔体が跳ね上がって熔体の飛沫が発生する。また、炉内の可燃成分が燃焼することによってダストが発生する。さらに、亜鉛や鉛等が揮発することになる。このように溶錬炉1内から発生する排ガスには、亜鉛や鉛等の揮発成分、ダスト、熔体の飛沫等が含まれることになる。
【0035】
そして、溶錬炉1から排出された排ガスは、立ち上がり煙道5を介して廃熱ボイラー10のボイラー本体11内に導入される。
導入口14を通じてボイラー本体11内に導入された排ガスは、火炉20及び対流伝熱部30を通過して排出口15から外部へと排出されることになる。排ガスが火炉20内を通過する際には、火炉20の壁面に配設された水管(図示なし)やスクリーン管23によって熱が回収され、また、排ガスが対流伝熱部30を通過する際には、本体蒸発管33によって熱が回収される。
【0036】
このとき、排ガスに含まれる揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等が、ボイラー本体11の内壁面やボイラー本体11内に配設されたスクリーン管23や本体蒸発管33等の部材の表面に付着、堆積することになる。特に、前述のように、火炉20の斜底部25の内壁面には、多くの揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等が落下することになるが、本実施形態では、ノズル部材40によって窒素ガスが斜底部25に向けて吹き付けられていることから、揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等が堆積する前に吹き飛ばされ、火炉20のホッパー24へと排出される。
【0037】
このような構成とされた本実施形態である廃熱ボイラー10においては、火炉20の斜底部25の内壁面に向けて不活性ガスである窒素ガスを吹き付けるノズル部材40が配設されているので、排ガス中の揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等が斜底部25に厚く堆積して鋳付きが発生する前に、窒素ガスによってこれら揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等を吹き飛ばしてホッパー24へと排出することができ、斜底部25において強固な鋳付きの発生を未然に防止することができる。
【0038】
また、不活性ガスである窒素ガスをボイラー本体11の内部に導入する構成とされていることから、窒素ガスによって、排ガス中の揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等が酸化することが防止され、鋳付きの発生がより確実に抑制されることになる。
さらに、斜底部25の内壁面に対して窒素ガスを連続的に吹き付ける構成としていることから、斜底部25の内壁面には窒素ガスが絶えず流通することになり、排ガス中の揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等の堆積を確実に抑制することができる。
【0039】
また、排ガス中の揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等が厚く堆積する前に、窒素ガスによって吹き飛ばす構成としていることから、スートブローのように高圧の窒素ガスを用いる必要がない。
具体的には、窒素ガスの吐出圧力Pが0.5MPa≦P≦0.6MPaの範囲内に設定され、窒素ガスの流量Lが、10m/min≦L≦15m/minの範囲内に設定されているので、スートブロー等と比較して、窒素ガスの圧力及び流量が低く設定されることになり、高圧に対応した設備を設ける必要がなく、かつ、窒素ガスの使用量を削減することができる。さらに、排ガス中の揮発成分、ダスト及び熔体の飛沫等を確実に吹き飛ばして除去できる。
【0040】
また、本実施形態では、予めボイラー本体11内部を観察しておくことによって、鋳付きの発生の起点を斜底部25の幅方向中央部と特定し、この起点である斜底部25の幅方向中央部に向けて窒素ガスを吹き付ける構成としていることから、確実に鋳付きの発生を防止することができる。また、起点に対して局所的に窒素ガスを吹き付けることから、窒素ガスの使用量を大幅に削減することができる。
【0041】
さらに、本実施形態では、立ち上がり煙道5とボイラー本体11の導入口14との接続部分の下部に配設された水冷ジャケットを、窒素ガスを吹き付けるノズル部材40としており、具体的には、水冷配管が配設された銅ブロック体41に窒素ガスの供給路45及びノズル部46を設けていることから、高温のホイラー本体11内部に配設しても、ノズル部材40が溶融してしまうおそれがない。よって、ボイラー本体11内部の所望の位置にノズル部材40を配設して窒素ガスを吹き付けることが可能となり、鋳付きの発生を確実に抑制することが可能となる。
【0042】
以上、本発明の実施形態である廃熱ボイラー、この廃熱ボイラーの操業方法及びこの廃熱ボイラーにおいて使用されるノズル部材について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、非鉄製錬設備の溶錬炉に接続される廃熱ボイラーとして説明したが、これに限定されることはなく、溶銅炉、自溶炉等、他の非鉄製錬炉や、ゴミ等を焼却する焼却炉、ロータリーキルン炉等の各種炉に本発明の廃熱ボイラーを適用してもよい。
【0043】
また、本実施形態では、火炉の斜底部の幅中央部に向けて不活性ガスである窒素ガスを吹き付ける構成として説明したが、これに限定されることはなく、図5に示すように、斜底部の幅中央部以外の部分にも窒素ガスが吹き付けられるように、ノズル部材140を構成してもよい。すなわち、銅ブロック体141に供給路145と複数のノズル部146を設けてもよい。さらに、火炉120(ボイラー本体111)の導入口114側のコーナ部にノズル部148を設けて窒素ガスを吹き付けてもよい。
さらに、ボイラー本体の内壁面だけではなく、ボイラー本体内に配設された部材表面に不活性ガスを吹き付けてもよい。但し、本体蒸発管等は、熱を効率良く回収するために高温の排ガスに接触させることが好ましいことから、不活性ガスの吹き付けは、本体蒸発管以外に対して行うことが好ましい。
【0044】
また、不活性ガスとして窒素ガスを用いたものとして説明したが、これに限定されることはなく、アルゴン等の他の不活性ガスであってもよい。
さらに、ノズル部材によって不活性ガスを連続的に吹き付ける構成として説明したが、これに限定されることはなく、間欠的に不活性ガスを吹き付けてもよい。この場合、排ガス中の揮発成分、ダスト、熔体の飛沫等が不活性ガスによって除去不可能な厚さに堆積する前に、不活性ガスを吹き付けるように、不活性ガスの吹き付け間隔を調整する必要がある。
【実施例】
【0045】
以下に、本発明の効果について、確認実験を行った結果について説明する。
比較例として、前述の実施の形態で説明した廃熱ボイラーを用いて、窒素ガスの吹き付けを行わずに排ガスからの廃熱回収を行った。
また、本発明例として、前述の実施の形態で説明した廃熱ボイラーを用いて、窒素ガスの吹き付けを連続的に行って排ガスからの廃熱回収を行った。なお、窒素ガスの吐出圧力を0.55MPaとし、流量を13m/minとした。
【0046】
排ガス流量を600Nm/minとし、廃熱ボイラー入口部分(導入口)の排ガス温度を1240℃となるように調整し、2日間の操業を行った。そして、操業終了後の鋳付きの状態について観察した。観察結果を図6及び図7に示す。
【0047】
比較例では、斜底部において厚い鋳付きが生じていた。この鋳付きの厚さt1は約300mmであった。
一方、窒素ガスを連続的に吹き付けた本発明例では、斜底部において僅かに鋳付きが生じており、この鋳付きの厚さt2は約30mmであった。
このように、窒素ガスを斜底部に向けて連続的に吹き付けることによって、斜底部における鋳付きの成長が抑制されることが確認された。
【符号の説明】
【0048】
10 廃熱ボイラー
11 ボイラー本体
14 導入口
15 排出口
25 斜底部
40 ノズル部材
41 銅ブロック体(冷却ブロック体)
42 水冷配管(冷却配管)
45 供給路
46 ノズル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉から排出される排ガスの廃熱を回収する廃熱ボイラーであって、
前記排ガスが導入される導入口と前記排ガスが外部へ排出される排出口とを備えたボイラー本体と、このボイラー本体内部に向けて不活性ガスを導入する不活性ガス導入部と、を有し、
前記不活性ガス導入部は、前記ボイラー本体内部の部材表面及び前記ボイラー本体の内壁面の少なくともいずれか一方に対して、連続的または間欠的に、不活性ガスを吹き付けるノズル部を備えていることを特徴とする廃熱ボイラー。
【請求項2】
前記ボイラー本体は、前記導入口から後段側に向かうにしたがい漸次下方側に向けて延在する斜底部を備えており、
前記ノズル部は、前記斜底部の内壁面に対して、不活性ガスを吹き付けるように配設されていることを特徴とする請求項1に記載の廃熱ボイラー。
【請求項3】
炉から排出される排ガスの廃熱を回収する廃熱ボイラーにおいて、その内部での鋳付きの発生を防止する廃熱ボイラーの操業方法であって、
前記排ガスが導入される導入口と前記排ガスが外部へ排出される排出口とを備えたボイラー本体の内部において、前記ボイラー本体内部の部材表面及び前記ボイラー本体の内壁面の少なくともいずれか一方に対して、連続的または間欠的に、不活性ガスを吹き付けることを特徴とする廃熱ボイラーの操業方法。
【請求項4】
前記ボイラー本体は、前記導入口から後段側に向かうにしたがい漸次下方側に向けて延在する斜底部を備えており、
前記斜底部の内壁面に対して、連続的または間欠的に、不活性ガスを吹き付けることを特徴とする請求項3に記載の廃熱ボイラーの操業方法。
【請求項5】
予め前記ボイラー本体内部を観察して前記鋳付きが発生する起点を特定しておき、この起点に向けて前記不活性ガスを吹き付けることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の廃熱ボイラーの操業方法。
【請求項6】
前記不活性ガスの吐出圧力Pが0.5MPa≦P≦0.6MPaの範囲内に設定され、前記不活性ガスの流量Lが、10m/min≦L≦15m/minの範囲内に設定されていることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の廃熱ボイラーの操業方法。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の廃熱ボイラーにおいて使用されるノズル部材であって、
内部に冷却媒体が流通される冷却配管が設けられた冷却ブロック体を有し、この冷却ブロック体に、不活性ガスの供給路及びノズル部が設けられていることを特徴とするノズル部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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