説明

廃食油を用いた混合バイオマス燃料の製造装置および製造方法、混合バイオマス燃料を用いた農業用燃焼装置

【課題】廃食油と化石燃料を均一にかつ効率よく混合し、品質に優れる混合バイオマス燃料を製造する製造装置と製造方法を提供する。混合バイオマス燃料を用いた農業用燃焼装置を提供する。
【解決手段】主燃料配管Lから供給される化石燃料流体が順次通過する縮径部103とスロート部104と拡径部105とを備え、廃食油配管Lからスロート部104に供給された廃食油流体を、スロート部104内を通過する主燃料流体と混合促進させる混合促進部100と、スロート部104の出口を通過して拡径部105内で拡張された混合燃料流体に縦渦を発生させる縦渦発生部200とを備える。農業用燃焼装置は、ノズル部405の近傍にノズル部周囲から吐出される空気流にシート状の旋回流シートと旋回流シート中の気流に縦渦を同時に発生させる混合促進プレート500を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃食油を用いた混合バイオマス燃料の製造装置および製造方法と、製造された混合バイオマス燃料を用いた農業用燃焼装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策として、温室効果ガスの主要因の一つである二酸化炭素(CO)などの排出が少ない社会の実現、すなわち低炭素社会の実現に向けた取り組みが種々行われている。例えば、二酸化炭素を排出しない電気自動車の普及、電力消費量を削減する省エネ家電や工場設備の普及、太陽光発電や風力発電の普及、石油等の化石燃料に代わる代替燃料の普及などである。従来の化石燃料に代わる代替燃料としては、トウモロコシやサトウキビを原料とする自動車用のバイオマスアルコール燃料の例や、一般家庭や飲食店、学校等から排出される廃食油(てんぷら油等)を原料とするバイオマスディーゼル燃料等の例がある。
【0003】
後者の廃食油を例にすると、そのままでは不純物を多く含むため燃料には適さず、精製する必要がある。廃食油を精製してバイオマス燃料を得る方法(特許文献1、特許文献2)が知られている。また、廃食油を灯油と混合して燃料化する方法(特許文献3)が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2009−179542号公報
【特許文献2】特開2008−24841号公報
【特許文献3】特開2008−62212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前者の方法は、多数の反応行程を経るなど精製工程が複雑であり、燃料の製造コストが高く付く問題がある。後者の方法は、単に混合するだけなので、混合された燃料の品質が悪く、燃焼不十分によるカロリー不足やすすの発生等の問題を伴う。したがって、いずれの方法も、回収された廃食油を効率よく燃料として利用できる方法とは言えない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、廃食油と化石燃料を均一にかつ効率よく混合し、品質に優れる混合バイオマス燃料の製造装置と製造方法を提供すること、これにより、回収された廃食油を効率よく燃料として再利用し、低炭素社会の実現を促進できる装置と方法を提供すること、さらには製造された混合バイオマス燃料を用いた農業用燃焼装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る混合バイオマス燃料の製造装置は、主燃料配管から供給される主燃料流体が順次通過する縮径部とスロート部と拡径部とを備え、廃食油配管からスロート部に供給された廃食油流体を、スロート部内を通過する主燃料流体と混合促進させる混合促進手段と、スロート部の出口を通過して拡径部内で拡張された混合燃料流体に縦渦を発生させる縦渦発生手段とを備えることを主要な特徴とする。
【0008】
本発明に係る混合バイオマス燃料の製造装置は、縦渦発生手段が、筒状のケーシング内に混合燃料流体の流れ方向と直交する向きに配置された縦渦発生プレートを備え、縦渦発生プレートには、拡径部内で拡張された混合燃料流体を通過させる複数の流通口と、各流通口を通過する混合燃料流体の流れ方向と直交する方向に対し傾斜する斜面を有する複数の縦渦発生突起とを備えることを第2の特徴とする。
【0009】
本発明に係る混合バイオマス燃料の製造装置は、混合促進手段において、筒状のケーシングの側壁にスロート部に開口する廃食油供給通路が形成され、廃食油供給通路に廃食油配管が接続されていることを特徴とすることを第3の特徴とする。
【0010】
本発明に係る混合バイオマス燃料の製造装置は、混合促進手段において、スロート部に空気または水の供給管が接続されていることを第4の特徴とする。
【0011】
本発明に係る混合バイオマス燃料の製造装置は、混合促進手段において、筒状のケーシングの側壁に、廃食油供給通路と反対位置にスロート部に開口する水・空気供給通路が形成され、水・空気供給通路に水または空気の供給管が接続されていることを第5の特徴とする。
【0012】
本発明に係る混合バイオマス燃料の製造装置は、混合促進手段の上流において、主燃料に廃食油の一部を予備混合する予備混合手段を備えることを第6の特徴とする。
【0013】
本発明に係る混合バイオマス燃料の製造装置は、予備混合手段は、混合容器の接線方向に主燃料と廃食油をそれぞれ供給し、内部に渦流を発生させる構成であることを第7の特徴とする。
【0014】
本発明に係る混合バイオマス燃料の製造装置は、主燃料が化石燃料であることを第8の特徴とする。
【0015】
本発明に係る混合バイオマス燃料の製造方法は、本発明に係る製造装置を用い、混合促進手段により、スロート部に供給した廃食油を主燃料流体と混合促進させて一次混合燃料流体を生成する一次混合燃料流体生成工程と、縦渦発生手段により、拡径部内で拡張された一次混合燃料流体に縦渦を発生させて二次混合燃料流体を得る二次混合燃料流体生成工程とを備えることを主要な特徴とする。
【0016】
本発明に係る混合バイオマス燃料の製造方法は、一次混合燃料流体生成工程において、スロート部に水または空気を供給していずれか一方を主燃料および廃食油と混合促進させてエマルジョン化された一次混合燃料流体を生成することを第2の特徴とする。
【0017】
本発明に係る農業用燃焼装置は、本発明の製造方法により製造された混合バイオマス燃料を用い、ノズル部から混合バイオマス燃料を噴出させ、ノズル部周囲から吐出される空気流と混合して着火により燃焼させる農業用燃焼装置であって、ノズル部の近傍にノズル部周囲から吐出される空気流にシート状の旋回流シートと旋回流シート中の気流に縦渦を同時に発生させる混合促進手段が設けられていることを主要な特徴とする。
【0018】
本発明に係る農業用燃焼装置は、混合促進手段が、混合促進プレートを備え、混合促進プレートには、中央開口部の周囲に放射状に延びる複数の空気流案内スリットと、空気流案内スリットに流入した空気流をシート状の旋回流シートに形成する旋回流シート形成フードと、旋回流シート形成フードの出口から吹き出された旋回流シート中の気流に縦渦を発生させる縦渦発生突起が設けられていることを第2の特徴とする。
【0019】
本発明に係る農業用燃焼装置は、ノズル部のノズル噴出口に噴射角度を広角化するテーパー部が設けられていることを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明に係る混合バイオマス燃料の製造装置によると、混合促進手段により、スロート部に供給した廃食油流体を、スロート部内を通過する主燃料流体と混合促進させるとともに、縦渦発生手段により、スロート部の出口を通過して拡径部内で拡張された混合燃料流体に縦渦を発生させて微細化を促進させることにより、化石燃料等の主燃料と廃食油が均一かつ微細に混合された混合バイオマス燃料を、効率よく製造することができるという優れた効果を奏する。
【0021】
また、本発明に係る混合バイオマス燃料の製造方法によると、品質に優れた混合バイオマス燃料を、複雑な工程を経ることなく低コストで製造することができるという優れた効果を奏する。
【0022】
さらに、本発明に係る混合バイオマス燃料の燃焼装置によると、本発明の製造方法により製造された混合バイオマス燃料を用い、ノズル部の近傍にノズル部周囲から吐出される空気流に旋回流と旋回流中の気流に縦渦を同時に発生させる混合促進手段を設けることにより、ノズル部周囲から吐出される空気流に三次元的な渦流を形成してノズル部から噴出される混合バイオマス燃料との混合を促進し、燃焼効率を向上させることができる。これにより、間欠運転を行なう農業用燃焼装置においては、廃食油を利用する際の問題であった燃焼不良やすす発生といった不具合を解消することができ、農業用燃焼装置として特に優れるという効果を奏する。
【0023】
そして、本発明によれば、廃食油の回収と再利用を促進し、低炭素社会の実現に大いに貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る混合バイオマス燃料の製造装置S1の全体構成を示している。
【0025】
図1において、混合バイオマス燃料の製造装置(以下、「製造装置」という)S1は、主燃料(A重油、灯油等)を供給する主燃料配管Lと、精製された廃食油を供給する廃食油配管と、水を供給する水供給配管Lと、空気を供給する空気供給配管Lを備え、主燃料配管Lの下流に混合促進部100と縦渦発生部200が設けられている。
【0026】
主燃料配管Lは、ポンプ1および流量調整弁2により圧力および流量が調整された主燃料(以下、「化石燃料」という)を混合促進部100へと圧送し、廃食油配管Lは、ポンプ1および流量調整弁2により圧力および流量が調整された廃食油を混合促進部100の後述するスロート部104へと圧送するようになっている。また、水供給配管L、空気供給配管Lは、それぞれポンプ1および流量調整弁2により圧力および流量が調整された水または空気を、その途中からの水・空気供給配管Lを介して混合促進部100の後述するスロート部104へと圧送するようになっている。なお、符号3は流量計、符号4は逆止弁である。また、ポンプ1はインバーター制御されるようになっている。
【0027】
混合促進部100は、主燃料配管L、廃食油配管Lから予め設定された混合率で供給される化石燃料と廃食油を混合促進して一次混合燃料流体を得るもので、水供給配管Lまたは空気供給配管Lから水または空気を予め設定された混合率で供給することにより化石燃料と廃食油の一次混合燃料流体をエマルジョン化することもできる。混合促進部100は、図2に示すように、主燃料配管Lに接続される主燃料導入管5にフランジ101Aを介して接続される筒状のケーシング101を備え、ケーシング101の内部通路102には、主燃料導入管5に導入された化石燃料が最初に通過する縮径部103と、縮径部103から続くスロート部104と、スロート部104から続く拡径部105が順次形成されている。
【0028】
縮径部103は、主燃料導入管5の出口からスロート部104の入口に向かうに従い、内径が次第に小さくなるテーパー形状の内部通路とされている。縮径部103から続くスロート部104は、混合促進部100の全幅において、その内部通路が最も狭い部分である。スロート部104から続く拡径部105は、スロート部104の出口から離れるに従い、内径が次第に大きくなるテーパー形状の内部通路とされている。
【0029】
スロート部104には、ケーシング101の側壁に設けられた廃食油供給通路106と、廃食油供給通路106の反対側に位置してケーシング101の側壁に設けられた水・空気供給通路107とが、それぞれ連通している。廃食油供給通路106には前述の廃食油供給管Lが、水・空気供給通路107には前述の水・空気供給配管Lがそれぞれ接続されている。
【0030】
そして、かかる混合促進部100は、まず、主燃料導入管5の出口から縮径部103の入口に流入した化石燃料が縮径部103内でまず加圧されてスロート部104内で高速化され、最小圧力位置であるスロート部104内に廃食油供給通路106から廃食油が供給されると、高速で通過する化石燃料との圧力差により、廃食油が自然状態で吸引され、両者が混合されるようになっている。そして、化石燃料と廃食油の混合流体が、スロート部104の出口から拡径部105内で急激に開放され拡張されると、微細化が促進され、これにより混合促進された一次混合燃料流体が得られるようになっている。
【0031】
また、スロート部104内に廃食油供給通路106から廃食油が供給されると同時に水・空気供給通路107から水(または空気)が供給されると、高速で通過する化石燃料との圧力差により、廃食油および水(または空気)が自然状態で吸引され、三者が混合されるようになっている。そして、化石燃料と廃食油と水(または空気)の混合流体が、スロート部104の出口から拡径部105内で急激に開放され拡張されると、混合流体の微細化が促進され、これにより混合促進されエマルジョン化された一次混合燃料流体が得られるようになっている。
【0032】
縦渦発生部200は、混合促進部100で混合促進された一次混合燃料流体中に縦渦構造を発生させて、より一層の混合促進を図るもので、図3に示すように、混合促進部100の下流側にフランジ201Aを介して接続される筒状のケーシング201を備え、ケーシング201の内部通路202には、一次混合燃料流体の流れと直交する向きに縦渦発生プレート203が配置されている。縦渦発生プレート203は1枚でも複数枚でもよい。縦渦発生の数を増加させるには複数枚配置するのが望ましいが、内部通路202を通過する一次混合燃料流体に与える抵抗を考慮して決定するのがより望ましい。
【0033】
図4は縦渦発生プレート203の正面図を、図5は縦渦発生プレート203の作用を示している。図4に示すように、縦渦発生プレート203は、ケーシング201の内部通路202の内周面に沿って取り付けられる外周リング204の内側に、放射状に延びる複数本(図示例では8本)の支持部材205を介して内リング206が配置された構造を有している。内リング206の内側には一次混合燃料流体が通過する中央流通口207が設けられると共に、内リング206と外周リング204の間には周方向に沿って多数個(図示例では8個)の周辺流通口208が設けられている。そして、各支持部材205には、周辺流通口208を通過する一次混合燃料流体に多数の縦渦を発生させる三角形状の縦渦発生突起(ヴォルテックスジェネレータ)209が複数設けられている。
【0034】
図5(A)は、図4の一点鎖線Aで囲む支持部材205の部分拡大図であり、支持部材205に形成された縦渦発生突起209を示すと共に、縦渦発生突起209の作用を示している。支持部材205に縦渦発生突起209を形成するには、まず、図5(A)に示すように、支持部材205に他方の側端を残して幅方向に延び一方の側端に開口する切込205aを複数入れる。次に、各切込205aにより一方の側端側に形成される角部を、図5(A)のように斜めに折り曲げて起立させ、さらに支持部材205上面からの折り曲げ角度αを90度未満に抑えて傾斜させる。この時の傾斜角度αは、30度から75度の範囲が望ましい。これにより一次混合燃料流体の流れ方向と直交する二方向に対していずれも傾斜する傾斜面209aを有する三角形状かつ平板状の縦渦発生突起209を形成する。また、角部を斜めに折り曲げることにより、一次混合燃料流体の一部が縦渦発生突起209の近傍を通過する切欠部205bが形成される。このようにして、縦渦発生プレート203に、三角形状でかつ平板状の縦渦発生突起209を均等間隔でかつ放射状に配置する。
【0035】
そして、縦渦発生プレート203を通過する一次混合燃料流体のうち、中央付近の一次混合燃料流体は、中央流通口207をそのまま通過し、また、周辺の一次混合燃料流体は、各周辺開口部208を通過する際に、各縦渦発生突起208により、多数の縦渦が発生させられる。後者をより具体的に説明すると、縦渦発生突起209付近(特に切欠部205b)を通過する流体は、縦渦発生突起209の傾斜面209aに当接して向きを斜めに変えながら突起209の縁を越えようとし、図5(B)に示すように、流体の流れ方向に略沿った中心軸O(紙面と直交する方向)の回りを回転する縦渦として形成される。この縦渦の巻き込み運動により、一次混合燃料流体中の化石燃料の微細成分と廃食油の微細成分がより混合促進される(二次混合される)。
【0036】
縦渦発生プレート203を通過した後の二次混合燃料流体は、縦渦発生部200の出口に接続された二次混合燃料配管L(図1)を通り、図示しない貯留タンクに混合バイオマス燃料として貯留されるようになっている。
【0037】
図6は本発明に係る製造装置S1にオプションとして用いられる予備混合部300を示している。
【0038】
予備混合部300は、混合促進部100に供給される廃食油の一部を、混合促進部100に供給される化石燃料と予め混合する装置で、例えば廃食油の粘度が高い場合、予備混合部300と混合促進部100の二段階に分けて供給することにより、化石燃料と十分に混合された混合バイオマス燃料を得ることができる。
【0039】
予備混合部300には、主燃料配管Lと廃食油配管Lの各上流から分岐された主燃料配管L’と廃食油配管L’が予備混合容器301の側面下部に180度反対向きに接続されている。また、水供給配管Lと空気供給配管Lの各上流側から分岐された水供給配管L’と空気供給配管L’が水・空気供給配管L’を介して予備混合容器301の上面に接続されている。
【0040】
主燃料配管L’は、混合促進部100に供給される化石燃料をポンプ1および流量調整弁2により圧力および流量が調整された状態で予備混合部300へと圧送し、廃食油配管L’は、混合促進部100に供給される廃食油の一部をポンプ1および流量調整弁2により圧力および流量が調整された状態で予備混合部300へと圧送するようになっている。また、水供給配管L’、空気供給配管L’は、混合促進部100に供給される水または空気の一部をそれぞれポンプ1および流量調整弁2により圧力および流量が調整された状態で、その途中からの水・空気供給配管L’を介して予備混合部300へと圧送するようになっている。
【0041】
予備混合部300は、図7および図8に示すように、円筒形の予備混合容器301の内部に内筒302が同軸線上に配置され、内筒302の内部に予備混合室303が形成されている。内筒302の側周面下部には、内筒302の接線方向に延びて互いに180度反対方向を向く主燃料導入管304と廃食油導入管305がそれぞれ接続されている。主燃料導入管304と廃食油導入管305の各先端出口は予備混合室303内に進入し、互いに180度反対の位置に開口している。また、予備混合容器301の上面中央には水・空気導入部306が設けられ、予備混合容器301の下面中央には予備混合燃料流体の排出部307が設けられている。
【0042】
図7に示すように、主燃料導入管303から予備混合室303内に接線方向に流入した化石燃料流体および廃食油導入管304から接線方向に予備混合室303内に流入した廃食油流体は、予備混合室303の内周面に沿って旋回しながら互いに予備混合され、図8に示すように、予備混合燃料流体の旋回流Rとなって予備混合室303内を上昇する。予備混合室303の上部には上に行くに従って拡径するテーパー部308が設けられており、テーパー部308のテーパー作用により、旋回流Rの上昇が促進される。そして、予備混合室303の上部混合室309の天井付近で反転して中央付近を下降し、下部の排出部307を通じて予備混合容器の下方に配置された貯留容器310の予備混合燃料貯留室311内に排出され、予備混合燃料として貯留されるようになっている。
【0043】
また、混合流体として、水または空気を水・空気導入部306から予備混合容器301の上部混合室309内に流入させると、上部混合室309内で化石燃料と廃食油の混合流体の旋回流Rと共に混合しながら、下降し、エマルジョン化された予備混合燃料流体を下部の排出部307から予備混合燃料貯留室311内に排出し、エマルジョン化された予備混合燃料を貯留することができるようになっている。
【0044】
排出部307から予備混合燃料貯留室311内に排出される予備混合燃料流体は、圧力が急激に開放されて混合が促進される。予備混合燃料貯留室311内に貯留された予備混合燃料は、貯留容器310の下部の排出部312から予備混合燃料配管Lを通して、図1の主燃料供給配管Lに合流されるようになっている。
【0045】
そして、主燃料供給配管Lに送られた予備混合燃料は、ポンプ1により混合促進部100へと圧送され、廃食油供給配管Lからポンプ1により混合促進部100のスロート部104へと圧送される廃食油の残りと混合促進され、あるいはこれに加えて水・空気供給配管Lからスロート部104へと圧送される水または空気の残りと混合促進され、縦渦発生部200内で発生する縦渦によりさらに微細化が促進される。これにより、化石燃料と廃食油が均一かつ微細に混合された混合バイオマス燃料が、さらにはエマルジョン化された混合バイオマス燃料が得られる。
【0046】
図9ないし図13は、図1の製造装置S1によって製造された混合バイオマス燃料を用いた燃焼装置を示すもので、図9中、符号S2は、農業ハウス内の暖房用の加温機や農作物等の乾燥用ボイラーに用いて好適な農業用の燃焼装置を示している。
【0047】
図9(A)および(B)に示すように、燃焼装置S2は、バーナー部400を備え、送風機401の回転ファン402によりケーシング403内に空気流を発生させてケーシング403の先端開口部404から空気流を吐出させると共に、ケーシング403の先端中央のノズル部405から噴出させた混合バイオマス燃料と混合して着火により燃焼させ、温風または熱風を生成するようになっている。なお、符号406は回転ファン402を回転駆動するモータ、符号407はモータ406を駆動する電源を示している。
【0048】
上記構成のバーナー部400において、ケーシング403の先端開口部404には、ノズル部405の周囲から吐出される空気流にシート状(層状)の旋回流(以下、「旋回流シート」という)を形成するとともに、旋回流シート中の気流に縦渦を発生させることにより、ノズル部405から噴出される混合バイオマス燃料との混合を促進する混合促進プレート500が取り付けられている。混合促進プレート500は、図10に示すように、円板状のプレート本体501の中央にノズル部405から噴出された混合バイオマス燃料を通過させる中央開口部502が設けられ、中央開口部502の周囲には、中心から放射状に延びる複数(図示例では8つ)の空気流案内スリット503が設けられている。
【0049】
空気流案内スリット503は、ケーシング403の先端開口部404から吐出される空気流を整流化して通過させ、後述する旋回流シート形成フード504の旋回流案内通路505に案内するもので、図11に示すように、空気流案内スリット503の出口に、同スリット503の出口の一方の側縁(図11の左側)から起立する起立部504aと、起立部504aの上端から水平に屈曲して同スリット503の上方を覆う水平部504bから構成される旋回流シート形成フード504が、同スリット503の全長に亘り、設けられている。
【0050】
そして、各空気流案内スリット503に流入した空気流は、旋回流シート形成フード504の内部の旋回流案内通路505を通り、略直角に屈曲して起立部504aの反対側にある案内通路出口505aから一様に同一方向に吹き出され、案内通路出口505aから吹き出された空気流は、図12に示すように、全体として層状の旋回流シートRを形成させるようになっている。
【0051】
各旋回流シート形成フード504には、旋回流シートR中の気流に縦渦を発生させる三角形状の縦渦発生突起(ヴォルテックスジェネレータ)506が複数設けられている。各旋回流シート形成フード504に縦渦発生突起506を形成するには、まず、旋回流シート形成フード504の水平部504bの側端から幅方向に延びる切込506aを複数入れる。次に、各切込506aにより側端に形成される角部を、斜めに折り曲げて起立させ、さらに水平部504b上面からの折り曲げ角度αを90度未満に抑えて傾斜させる。この時の折り曲げ角度αは、30度から75度の範囲が望ましい。これにより空気流案内スリット503に流入する空気流の流れ方向と直交する二方向に対して傾斜する傾斜面506bを有する三角形状かつ平板状の縦渦発生突起506が形成される。また、角部を斜めに折り曲げることにより、空気流案内スリット503に流入した空気流の一部が縦渦発生突起209の近傍を通過する切欠部506cが形成される。このようにして、混合促進プレート500に、三角形状でかつ平板状の縦渦発生突起506を均等な間隔でかつ放射状に配置する。
【0052】
そして、混合促進プレート500の各空気流案内スリット503を通過した空気流は、図12に示すように全体としてシート状の旋回流シートRとなって混合促進プレート500の中央開口部502のノズル部405から噴出される混合バイオマス燃料と混合されるが、空気流の旋回流シートR中の個々の流れに縦渦発生突起506により縦渦を発生させることにより3次元的な渦流を形成し、より一層の混合促進を図ることができる。図11を参照して説明すると、空気流案内スリット503に流入した空気流は、全体として案内通路出口505aから一様に吹き出されるが、切欠部506c付近の空気流は縦渦発生突起209の斜面209aに沿って流れるとともに突起506の縁を越えようとし、空気流の流れ方向に略沿った中心軸の回りを回転する縦渦を形成する。この縦渦の巻き込み運動が旋回流シートR中の個々の気流に加わって3次元的な渦流を形成し、もってノズル部405から噴出された混合バイオマス燃料との混合を促進し、燃焼効率を向上させる。
【0053】
図13は、ノズル部405の拡大図であり、ノズル部405には、混合燃料配管Lおよびケーシング403内の混合燃料供給管Lを通して混合バイオマス燃料が供給されるようになっており、ノズル部405の混合燃料通路408の先端のノズル噴出口409は、噴出方向に行くに従い拡径されるテーパー部とされている。これにより、ノズル噴出口409から噴出される混合バイオマス燃料の圧力が急激に開放されて、混合バイオマス燃料の均一噴霧化が促進される。これによっても、混合促進プレート500を通過した空気流との混合がより一層促進され、燃焼効率がより向上する。なお、ノズル噴出口409のテーパー部の開き角度αは、10度から60度の範囲が望ましい(図示例の場合、ノズル径0.2mm、出口径0.3mm、開き角度15度である)。
【0054】
上記構成の農業用燃焼装置S2が適用される農業ハウス内の暖房用加温機や農作物等の乾燥用ボイラーは、温度センサーおよび湿度センサーにより運転制御されるため、燃焼と停止を繰り返す間欠運転とされる。間欠運転を繰り返す従来の農業用燃焼装置の燃料に廃食油を用いる場合、燃焼不良、すす発生、目詰まりによる供給空気不足等の不具合を生じさせやすい。ところが、上記構成の農業用燃焼装置S2に図1の製造装置S1で得られた混合バイオマス燃料を用いると、燃焼効率が高いので、間欠運転であっても、上記不具合を防止することができる。
【0055】
かくして、本発明に係る廃食油を用いた混合バイオマス燃料の製造装置S1を用いることにより、化石燃料と廃食油を均一かつ微細に混合して品質の優れた混合バイオマス燃料を製造することができ、また、同混合バイオマス燃料を用いた農業用燃焼装置S2を用いることにより、混合バイオマス燃料を効率よく燃焼させることができる。そして、本発明の実施により、廃食油の回収と再利用を促進し、低炭素社会の実現に大いに貢献することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る混合バイオマス燃料の製造装置および製造方法は、化石燃料と廃食油を均一に混合させて混合バイオマス燃料を得ることのできる製造装置と製造方法として、また、本発明に係る混合バイオマス燃料を用いた燃焼装置は、農業用加温機や農業用ボイラーなどの各種農業用途に用いて好適な燃焼装置として幅広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る混合バイオマス燃料の製造装置の全体構成図、
【図2】図1の製造装置における混合促進部の拡大説明図、
【図3】図1の製造装置における縦渦発生部の拡大説明図、
【図4】縦渦発生部における縦渦発生プレートの正面図、
【図5】(A)は縦渦発生プレートの一点鎖線Aで囲まれる部分拡大図で、縦渦発生突起の作用図、(B)はその補足説明図、
【図6】図1の製造装置にオプションとして用いられる予備混合部の全体構成図、
【図7】図6の予備混合部における予備混合容器の平面図、
【図8】図6の予備混合部における予備混合容器の作用図、
【図9】(A)は図1の製造装置により製造された混合バイオマス燃料を用いる農業用燃焼装置の側面図、(B)はその平面図、
【図10】図9の農業用燃焼装置に用いられる混合促進プレートの正面図、
【図11】図10のB−B線矢視断面図で、混合促進プレートに設けられた縦渦発生突起の作用図、
【図12】図10の混合促進プレートにより、吹き出された空気流がシート状の旋回流シートを形成しかつ旋回流シートの個々の気流に縦渦が生じている様子を示す作用図、
【図13】(A)は図9の農業用燃焼装置に用いられるノズル部の正面図、(B)は(A)のC−C線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ポンプ
2 流量調整弁
3 流量計
4 逆止弁
5 主燃料導入管
100 混合促進部
101,201,403 ケーシング
101A,201A フランジ
102,202 内部通路
103 縮径部
104 スロート部
105 拡径部
106 廃食油供給通路
107 水・空気供給通路
200 縦渦発生部
203 縦渦発生プレート
204 外周リング
205 支持部材
205a,506a 切込
205b,506c 切欠部
206 内リング
207 中央流通口
208 周辺流通口
209,506 縦渦発生突起
209a,506b 傾斜面
300 予備混合部
301 予備混合容器
302 内筒
303 予備混合室
304 主燃料導入管
305 廃食油導入管
306 水・空気導入部
307,312 排出部
308 テーパ部
309 上部混合室
310 貯留容器
311 予備混合燃料貯留室
400 バーナー部
401 送風機
402 回転ファン
404 先端開口部
405 ノズル部
406 モータ
407 電源
408 混合燃料通路
409 ノズル噴出口
500 混合促進プレート
501 プレート本体
502 中央開口部
503 空気流案内スリット
504 旋回流シート形成フード
504a 起立部
504b 水平部
505 旋回流案内通路
505a 案内通路出口
,L’主燃料配管
,L’廃食油配管
,L’水供給配管
,L’空気供給配管
,L’水・空気供給配管
二次混合燃料配管
予備混合燃料配管
混合燃料配管
混合燃料供給管
R 旋回流
旋回流シート
α,α 折り曲げ角度
α ノズル噴出口のテーパー部の開き角度
S1 混合バイオマス燃料の製造装置
S2 混合バイオマス燃料の燃焼装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主燃料配管から供給される主燃料流体が順次通過する縮径部とスロート部と拡径部とを備え、廃食油配管からスロート部に供給された廃食油流体を、スロート部内を通過する主燃料流体と混合促進させる混合促進手段と、スロート部の出口を通過して拡径部内で拡張された混合燃料流体に縦渦を発生させる縦渦発生手段とを備えることを特徴とする、混合バイオマス燃料の製造装置。
【請求項2】
縦渦発生手段が、筒状のケーシング内に混合燃料流体の流れ方向と直交する向きに配置された縦渦発生プレートを備え、縦渦発生プレートには、拡径部内で拡張された混合燃料流体を通過させる複数の流通口と、各流通口を通過する混合燃料流体の流れ方向と直交する方向に対し傾斜する斜面を有する複数の縦渦発生突起とを備えることを特徴とする、請求項1記載の混合バイオマス燃料の製造装置。
【請求項3】
混合促進手段において、筒状のケーシングの側壁にスロート部に開口する廃食油供給通路が形成され、廃食油供給通路に廃食油配管が接続されていることを特徴とする、請求項1または請求項2記載の混合バイオマス燃料の製造装置。
【請求項4】
混合促進手段において、スロート部に空気または水の供給管が接続されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の混合バイオマス燃料の製造装置。
【請求項5】
混合促進手段において、筒状のケーシングの側壁に、廃食油供給通路と反対位置にスロート部に開口する水・空気供給通路が形成され、水・空気供給通路に水または空気の供給管が接続されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の混合バイオマス燃料の製造装置。
【請求項6】
混合促進手段の上流において、主燃料に廃食油の一部を予備混合する予備混合手段を備えることを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の混合バイオマス燃料の製造装置。
【請求項7】
予備混合手段は、混合容器の接線方向に主燃料と廃食油をそれぞれ供給し、内部に渦流を発生させる構成であることを特徴とする、請求項6記載の混合バイオマス燃料の製造装置。
【請求項8】
主燃料が化石燃料であることを特徴とする、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の混合バイオマス燃料の製造装置。
【請求項9】
請求項1記載の製造装置を用い、混合促進手段により、スロート部に供給した廃食油を主燃料流体と混合促進させて一次混合燃料流体を生成する一次混合燃料流体生成工程と、縦渦発生手段により、拡径部内で拡張された一次混合燃料流体に縦渦を発生させて二次混合燃料流体を得る二次混合燃料流体生成工程とを備えることを特徴とする、混合バイオマス燃料の製造方法。
【請求項10】
一次混合燃料流体生成工程において、スロート部に水または空気を供給していずれか一方を主燃料および廃食油と混合促進させてエマルジョン化された一次混合燃料流体を生成することを特徴とする、請求項9記載の混合バイオマス燃料の製造方法。
【請求項11】
請求項9記載の製造方法により製造された混合バイオマス燃料を用い、ノズル部から混合バイオマス燃料を噴出させ、ノズル部周囲から吐出される空気流と混合して着火により燃焼させる農業用燃焼装置であって、ノズル部の近傍にノズル部周囲から吐出される空気流にシート状の旋回流シートと旋回流シート中の気流に縦渦を同時に発生させる混合促進手段が設けられていることを特徴とする農業用燃焼装置。
【請求項12】
混合促進手段が、混合促進プレートを備え、混合促進プレートには、中央開口部の周囲に放射状に延びる複数の空気流案内スリットと、空気流案内スリットに流入した空気流をシート状の旋回流シートに形成する旋回流シート形成フードと、旋回流シート形成フードの出口から吹き出された旋回流シート中の気流に縦渦を発生させる縦渦発生突起が設けられていることを特徴とする、請求項11記載の農業用燃焼装置。
【請求項13】
ノズル部のノズル噴出口に噴射角度を広角化するテーパー部が設けられていることを特徴とする、請求項11または請求項12記載の農業用燃焼装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−246560(P2011−246560A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119941(P2010−119941)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)東北経済産業局、平成21年度低炭素社会に向けた技術発掘・社会システム実証モデル事業の委託研究成果に係る、及び産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(502270198)富士エネルギー株式会社 (4)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(510145901)有限会社千田清掃 (1)
【Fターム(参考)】