説明

建具、構造材等のアルミ建材

【課題】 アルミ建材に不可避的に生じる結露水の付着状態を改善してその粒状の目立ちを解消する。
【解決手段】 アルミ建材のサッシ1に用いるアルミ押出材の表面に微細多数の結露低減溝2を形成して、この結露低減溝2の毛管現象によって、その縦置き配置のとき、これに生じる結露水を長手方向に液送自在とし、横置き配置のとき長手方向に拡散自在とする。結露低減溝2は、溝深さを20乃至300μm、溝幅を100乃至500μm、隣接の山幅を、30乃至100μmとして、アルミの押出成形によって形成し、その表面処理として複合皮膜を形成することによって、サッシ1の結露の目立ちを解消することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッシ枠、サッシ框、カーテンウオール枠、ドア、ドア枠、サンルームや勉強部屋における支柱や梁等の各種建築用途に用いて室内外の温度差によって生じる結露を低減するに好適に用い得る建具、構造材等のアルミ建材に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のアルミ建材に生じる結露の対策として、例えば、下記特許文献1は、硬質又は軟質塩化ビニールの室内側の断熱層、スチレン発泡ボードの中間の断熱層、両面延着テープによる内側の接着層によって3層に積層した断熱系の板材を、該接着層によってアルミ建材、特にサッシ枠の室内側露出部分に接着することによって、被覆カバーして、結露の発生を抑制するものとされ、下記特許文献2は、アルミ建材、特にサッシ枠を、アルミ押出材の枠本体と、塩化ビニール、アクリル樹脂等の合成樹脂押出材の室内枠及びカバー枠とによって構成するとともに枠本体の室内側立上片を室内枠とカバー枠により挟持するように被覆カバーして、同じく結露の発生を抑制するものとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−243194号公報
【特許文献2】特開2002−180752号公報
【特許文献3】特開2006−326907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、上記特許文献1のようにアルミ建材を断熱系の板材等によってカバーするものや、上記特許文献2のようにアルミ建材をアルミ押出材と合成樹脂押出材によって構成して室内側を合成樹脂押出材によってカバーするものは、それぞれ結露の発生を防止し得るとしても、アルミ建材の室内側においてアルミの質感を備えないものとなるとともにこれらカバーのための後加工や異種押出材の使用を必要とするから、アルミ建材の生産が煩雑化したり、カバー材による大幅なコストアップを招いたりする可能性があり、アルミ建材の用途やコストに照らすと、これらによる結露の防止措置の採用は、常に適当なものとすることはできない。
【0005】
また、上記断熱系の板材に代えて、上記特許文献3のように異分野で使用される液体搬送フィルムによって、アルミ建材をカバーすることを想定し得るとしても、この場合、アルミ質感を維持し得るものとなる可能性があるが、なお、上記特許文献1、2と同様に生産の煩雑性とコストアップを招く可能性が残されている。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、その解決課題とするところは、アルミであることによって不可避的に生じる結露の問題を、その発生を許容するも結露水の付着状態を改善してその粒状の目立ちを解消することによって、用途を問わずに汎用的に使用し得るようにした建具、構造材等のアルミ建材を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に沿って、アルミ建材に用いるアルミ押出材の全面又は室内側露出面のように一部に微細多数の結露低減溝を形成して、該結露低減溝の毛管現象によって、該アルミ押出材の縦置き配置のとき、これに生じる結露水を長手方向に液送自在とし、横置き配置のとき長手方向に拡散自在として、結露の発生を許容するも、アルミ形材の親水性を確保することによって、該アルミ形材に付着した結露水の付着状態を改善し、その粒状による目立ちを解消して、結露低減作用を確保したものであって、即ち、請求項1に記載の発明を、表面に微細多数の結露低減溝を長手方向全長に配置して、毛管現象によって、結露水を長手方向に液送する縦置き配置と結露水を長手方向に拡散する横置き配置を自在としたアルミ押出材を用いて形成してなることを特徴とする建具、構造材等のアルミ建材としたものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、上記結露低減溝を、アルミ押出材の押出成形時に同時に成形してその配置を行うことによって、アルミ押出材に対する結露水の低減のための後加工を不要として、可及的低コストにして確実に結露水低減作用を確保したものとするように、これを、上記結露低減溝を、アルミ押出材の押出成形によって配置してなることを特徴とする請求項1に記載の建具、構造材等のアルミ建材としたものである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、同じく上記に加えて、アルミ建材を、常法に従って表面処理を施すことによって、上記結露低減作用を維持しつつ、耐食性、耐候性等の表面処理性能を確保したものとするように、これを、上記結露低減溝を配置したアルミ押出材に、陽極酸化皮膜層及び熱硬化塗膜層を形成具備してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の建具、構造材等のアルミ建材としたものである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、結露低減溝の毛管現象を良好に確保して、結露低減作用を有効に確保したものとするように、これを、上記アルミ押出材の結露低減溝を断面台形状乃至断面円弧形状に形成してなることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の建具、構造材等のアルミ建材としたものである。
【0011】
請求項5に記載の発明は、同じく上記に加えて、結露低減溝の溝深さを好ましい形態のものとして、同じく結露低減作用を有効に確保したものとするように、これを、上記アルミ押出材の結露低減溝の溝深さを20乃至300μmとしてなることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の建具、構造材等のアルミ建材としてものである。
【0012】
請求項6に記載の発明は、同じく上記に加えて、結露低減溝の溝幅を好ましい形態のものとして、同じく結露低減作用を有効に確保したものとするように、これを、上記アルミ押出材の結露低減溝の溝幅を100乃至500μmとしてなることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の建具、構造材等のアルミ建材としたものである。
【0013】
請求項7に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記結露低減溝隣接の山幅を好ましい形態のものとして、同じく結露低減作用を有効に確保したものとするように、これを、上記結露低減溝隣接の山幅を、30乃至100μmとしてなることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6に記載の建具、構造材等のアルミ建材としたものである。
【0014】
請求項8に記載の発明は、同じく上記に加えて、アルミ押出材に上記陽極酸化皮膜層と熱硬化皮膜層を備えたものとするとき、該熱硬化皮膜層を親水化処理の皮膜層とすることによって、これを備えない通常の熱硬化皮膜層を用いた場合に比して、結露低減作用の更に有効に確保したものとし得ることから、これを、上記アルミ押出材の熱硬化塗膜層を、親水化処理を施した熱硬化塗膜層としてなることを特徴とする請求項2、3、4、5、6又は7に記載の建具、構造材等のアルミ建材としたものである。
【0015】
本発明は、これらをそれぞれ発明の要旨として、上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は以上のとおりに構成したから、請求項1に記載の発明は、アルミ建材に用いるアルミ押出材の全面又は室内側露出面のように一部に微細多数の結露低減溝を形成して、該結露低減溝の毛管現象によって、該アルミ押出材の縦置き配置のとき、これに生じる結露水を長手方向に液送自在とし、横置き配置のとき長手方向に拡散自在として、結露の発生を許容するも、アルミ形材の親水性を確保することによって、該アルミ形材に付着した結露水の付着状態を改善し、その粒状による目立ちを解消して、結露低減作用を確保して、アルミであることによって不可避的に生じる結露の問題を、その発生を許容するも結露水の付着状態を改善してその粒状の目立ちを解消することによって、用途を問わずに汎用的に使用し得るようにした建具、構造材等のアルミ建材を提供することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、上記結露低減溝を、アルミ押出材の押出成形時に同時に成形してその配置を行うことによって、アルミ押出材に対する結露水の低減のための後加工を不要として、可及的低コストにして確実に結露水低減作用を確保したものとすることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、同じく上記に加えて、アルミ建材を、常法に従って表面処理を施すことによって、上記結露低減作用を維持しつつ、耐食性、耐候性等の表面処理性能を確保したものとすることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、結露低減溝の毛管現象を良好に確保して、結露低減作用を有効に確保したものとすることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、同じく上記に加えて、結露低減溝の溝深さを好ましい形態のものとして、同じく結露低減作用を有効に確保したものとすることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、同じく上記に加えて、結露低減溝の溝幅を好ましい形態のものとして、同じく結露低減作用を有効に確保したものとすることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、同じく上記に加えて、結露低減溝隣接の山幅を好ましい形態のものとして、同じく結露低減作用を有効に確保したものとすることができる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、同じく上記に加えて、アルミ押出材に上記陽極酸化皮膜層と熱硬化皮膜層を備えたものとすることによって、これを備えない通常の熱硬化皮膜層を用いた場合に比して、結露低減作用を更に有効に確保したものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】窓サッシの室内側の背面図である。
【図2】結露低減溝の形状を示すアルミ押出材の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下図面の例に従って本発明を更に具体的に説明すれば、図1において符号1は、アルミ押出材を用いて形成した建具、構造材等のアルミ建材、本例にあって、例えば、建物の窓に設置して引き違い開閉するように、サッシ枠11と、サッシ框13にガラスを装着したサッシ戸12を備えたサッシであり、該サッシ1におけるアルミ押出材は、その表面に微細多数の結露低減溝2を長手方向全長に配置して、毛管現象によって、結露水を長手方向に液送する縦置き配置と結露水を長手方向に拡散する横置き配置を自在としたものとしてある。本例にあって該アルミ押出材の上記結露低減溝2は、上記サッシ枠11及びサッシ框13の表面、特にその室内側に露出する単一乃至複数の表面の一部に配置し、また、該アルミ押出材は、これに陽極酸化皮膜層及び熱硬化塗膜層を形成具備したものとしてあり、本例にあって該熱硬化塗膜層は、これを、親水化処理を施した熱硬化塗膜層としたものとしてある。
【0026】
本例にあって上記アルミ押出材の結露低減溝2は、これを、アルミ押出材の押出成形によって配置してある。即ち、結露低減溝2は、押出成形したアルミ押出材に対して、例えば、フォトエッチング処理を施すことによって、その表面に微細多数配置する如くに、アルミ押出材の後加工によっても形成することが可能であるが、本例にあってはアルミ押出材の押出成形時に、該押出成形に使用する成形金型の、上記室内側に露出する単一又は複数の表面に該結露低減溝用のダイス面を配置して、アルミ押出材の押出成形と同時成形することによって、これを形成してあり、これによって、アルミ押出材の成形後に後加工を施すことなく、アルミ押出材の押出成形によって完結的に該結露低減溝2を形成したものとしてある。
【0027】
アルミ押出材に形成する結露低減溝2は、毛管現象を良好に呈するものであることが必要であり、該毛管現象に適したものであれば、上記サッシ枠11、サッシ框13として用いて、縦置き配置に際してその長手方向に向けた液送、即ち、結露水の液滴を消失して、アルミ押出材の全面を濡れた状態とするように下方に落下させることができ、また、横置き配置に際してその長手方向に向けた拡散、即ち、同じく結露水の液滴を消失して、アルミ押出材の全面を濡れた状態とするように側方に流下させることができる。
【0028】
このとき、結露低減溝2の断面形状は、三角形、四角形、台形乃至円形等適宜のものとすることができるが、本例にあっては、例えば断面台形状に形成したものとしてある。該結露低減溝2は、その溝深さ、溝幅及び該結露低減溝隣接の山幅によっても、毛管現象の程度に影響する可能性があることから、上記サッシAのようにアルミ押出材における好ましい溝深さ、溝幅及び結露低減溝隣接の山幅を、毛管作用、特に、実験による結露水の液送及び拡散の性能との関係を含めて検討した。
【0029】
その結果、アルミ押出材における上記結露低減溝2の溝深さは、これを20乃至300μmとするのが好ましく、アルミ押出材における上記結露低減溝2の溝幅は、これを100乃至500μmとするのが好ましく、また、アルミ押出材における結露低減溝隣接の山幅は、これを、30乃至100μmとするのが好ましいことが判明した。従って、本例にあってサッシAにおけるサッシ枠とサッシ框の上記室内側に露出する表面に形成した結露低減溝2の溝深さ、溝幅及び山幅をそれぞれ該範囲のものとしてある。
【0030】
即ち、結露低減溝2の溝深さは、これが20μmを下回ると、特に陽極酸化皮膜層及び熱硬化塗膜層を備えたものにあっては、溝深さが不足して、毛管作用が充分に得られず、縦置き配置の場合の結露水の液送及び横置き配置の場合の結露水の拡散が双方とも不十分となり、表面に結露水の液滴が残る傾向が生じるとともに結露低減溝2の形成に高精度が要求される傾向を生じる一方、溝深さが300μmを上回ると、縦置き配置の場合の結露水の液送及び結露水の拡散に特段の問題は生じないが、アルミ押出材に配置した結露低減溝2が筋目状に幾分肉視されるようになり、該溝深さを更に深くすると塵埃の付着可能性を招く傾向を生じるに至る。
【0031】
また、横置き配置の場合にあっては、その溝深さが50μm乃至100μmを下回ると、同様に結露水の液滴は殆ど残らない傾向となるが、50μmを下回ると液滴が若干残る傾向が生じるので、横置き配置のものについて、該結露低減溝2の溝深さは、これを50μm以上とするのが好ましい。従って、サッシ以外の構造材に見られるように同一アルミ押出材を縦置き配置と横置き配置の双方に使用することが想定される場合、結露水低減溝2形成の精度を確保する等の溝深さを共通化する必要がある場合には、該溝深さを50乃至300μmとし、更には100μm以上300μmとするのが、特に好ましい。
【0032】
結露低減溝2の溝幅は、100μmを下回ると、溝幅が不足して毛管作用が充分に得られず、縦置き配置の場合の結露水の液送及び横置き配置の場合の結露水の拡散が双方とも不十分となり、表面に結露水の液滴が残る傾向が生じる一方、500μmを上回ると溝幅が過大になって、同じく毛管作用が充分に得られず、同様に結露水の液滴が残る傾向を生じる。溝幅は、特段に結露水低減溝2の形成に影響することはないが、毛管作用の発揮の面から、これを上記100乃至500μmとするのが好ましい。
【0033】
アルミ押出材における結露低減溝2隣接の山幅は、これを、30乃至100μmとするのが好ましい。即ち、結露低減溝2隣接の山幅(結露低減溝2の山谷における山の幅)が30μmを下回ると、結露低減溝2の形成に高精度が要求される傾向を生じる一方、結露低減溝2隣接の山幅が、100μmを上回ると、該山幅が過大となって、同様に結露水の液送及び拡散が不十分となって結露水の液滴が残る傾向が生じる。従って、該結露低減溝2隣接の山幅は、これを30乃至100μmとするのが好ましく、また、結露水低減溝2形成の精度を確保する必要がある場合には、該結露低減溝2隣接の山幅を50乃至100μmとするのが特に好ましい。
【0034】
アルミ押出材は、サッシAとしての表面処理性能を確保するため、押出成形した結露低減溝2を覆うように、上記陽極酸化皮膜層及び熱硬化塗膜層を形成具備してある。このとき、該陽極酸化皮膜層は、本例にあって結露低減溝を形成したアルミ押出材に、常法に従って硫酸浴中で陽極酸化処理を施すことによって、これを形成してあり、熱硬化塗膜層は、該陽極酸化処理又は該これと必要に応じて金属塩浴中で二次電解着色処理を施した後に、アクリルメラミン系の塗料浴中で電着塗装処理を施し且つ焼付炉中で電着塗料の熱硬化処理を施すことによって、電着塗膜層として、これを形成してある。
【0035】
本例にあって陽極酸化皮膜層は、これを、例えば10μm程度、上記熱硬化塗膜層は、これを、例えば10μmとしてあり、これによって、上記アルミ押出材に形成した結露低減溝2に載置するように形成される熱硬化塗膜層によって上記結露低減溝2による結露水の液送及び拡散の毛管作用を可及的に維持するようにしてある。
【0036】
上記電着塗膜層とした熱硬化塗膜層は、熱硬化塗膜が一般に70°程度以上の高い水接触角を有していることから、上記アルミ押出材に結露低減溝を配置しても、熱硬化塗膜が、その毛管作用による液送と拡散を相当程度阻害する可能性があり、このため、該電着塗膜層とした熱硬化塗膜層は、これに親水化処理を施してあり、該親水化処理を施すことによって、結露低減溝2の毛管作用阻害の可能性を解消するようにして、該結露低減溝2がその毛管作用を可及的有効に発揮し得るようにしてある。親水化処理は、例えば、シリカ系の親水処理を施すことによって、これを行ったものとしてあり、該親水化処理によって結露低減溝2の結露低減作用を可及的高度に発揮したものとしてある。
【0037】
以上のようにアルミ押出材、特に陽極酸化皮膜層と熱硬化塗膜層を備えたアルミ押出材によって形成したサッシ枠及び/又はサッシ框の上記室内側の露出面に結露低減溝2を配置することにより、サッシAは、結露の発生を許容するも、結露水の付着状態を改善して、その粒状の液滴を解消し、熱伝導性の良好なアルミ押出材を用いたサッシAに不可避的に生じる結露の問題を解決することができる。このとき、結露の発生を許容することから、例えば縦置き配置のサッシ縦枠、サッシ縦框の下端に常法に従って結露受部材を設置すれば、液送による結露水の目立ちを防止し、また、横置き配置のサッシ横枠、サッシ横框の下端の長手方向全長に結露受溝を設置すれば、拡散した結露水が溢れて重力によって下方に流下することがあっても、同様に結露水の目立ちを防止することができる。
【0038】
本発明において結露低減溝2は、長手方向全長にアルミ押出材に平行な微細多数の溝によって形成するものであるところ、該結露低減溝を、例えばメッシュ状にする如くにアルミ押出材の長手方向に直交する如くに交差溝を配置することが、例えば、フォトエッチング処理を施すことによって可能となるが、この場合、上記結露低減溝に比して、縦置き配置にあっては僅か乍ら、横置き配置にあっては時々それぞれ結露水の液滴が残る傾向を招く可能性があるから、結露水低減溝をメッシュ状にする如くに交差溝を配置することは結露水の液送乃至拡散に有効であるとはいえない。
【0039】
アルミ建材の用途に用いるアルミ押出材は、一般に陽極酸化皮膜層と熱硬化塗膜層を備えることになるところ、陽極酸化皮膜層は、結露低減溝を充填することはなく、その毛管作用に影響しないから、皮膜厚さは、これを適宜に設定することができ、また、二次電解着色を施すことも毛管作用に影響しないから、該アルミ押出材は常法に従った二次電解着色の陽極酸化皮膜層とすることができる。一方、熱硬化塗膜層は、これを、上記電着塗膜層によるものとすることによってその厚さを可及的に抑制して高性能の熱硬化塗膜層とすることができるが、例えば塗膜着色に適した粉体塗装塗膜層を用いて着色の熱硬化塗膜層とする場合、塗膜厚が厚くなる傾向があるところ、該塗膜厚が厚くなるときは、結露水低減溝の溝深さを深くする等、塗膜厚によって結露水低減溝が被覆充填されることによって毛管作用を確保し得るようにすることが必要である。
【0040】
アルミ建材は、室内外に露出するように用いて室内外の温度差を生じることによって室内側に結露を生じる可能性のある用途に使用される単一又は複数のアルミ押出材によって形成されたものであり、上記サッシの他、カーテンウオール枠、ドア、ドア枠、サンルームや勉強部屋における支柱や梁、冷暖房用配管を内蔵した結露水の液滴滴下促進用のパネル等に、本発明を好適に適用できる。
【0041】
これらを含めて本発明の実施に当って、アルミ建材、アルミ押出材、結露低減溝、陽極酸化皮膜層、熱硬化塗膜層、親水化処理等の形状、構造、材質、配置形態、処理方法、用途等は上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものすることができる。
【実施例1】
【0042】
厚さ1.5mmの各2枚のアルミ板(AL1100)にフォトエッチングによって、溝深さを20μm、40μm、100μm及び200μm、溝幅を150乃至300μmとし、結露低減溝隣接の山幅をそれぞれ50乃至100μmとすることによって溝深さを異にする4種の結露低減溝を形成した。図2に、このうち溝深さ100μmのマイクロスコープ測定の断面形状に基づいて作図した、結露低減溝の形状を示すアルミ押出材の部分拡大断面図を示す。各アルミ板にそれぞれ陽極酸化皮膜層10μm及び熱硬化塗膜層(クリヤーの電着塗膜層)10μmを形成し、更にそれぞれシリカ系親水剤塗布による親水化処理を施し、熱硬化塗膜層の水接触角を表面の平坦面において10°程度として、結露試験用に2枚毎のサンプルA乃至Dとした。
【0043】
結露試験は、結露試験機にて屋外条件を−10℃、室内条件を23℃、相対湿度60%に設定し、室内側サッシに上記2枚毎のサンプルA乃至Dを、それぞれ両面テープによって縦置き及び横置きに配置して接着固定し、該サンプルA乃至Dの結露状態をそれぞれ観察した。観察は、設置1日経過後に肉視によって行い、結露水の液滴が全く残らないものを◎、結露水の液滴が殆ど残らないものを○、結露水の液滴が若干残るものを△、結露水の液滴が多量に残るものを×とする4段階評価を行った。なお、対比のために結露低減溝と親水化処理を省略した2枚のサンプルEを作成して結露状態を観察して同様に評価した。その結果を表1に示す。
【比較例1】
【0044】
上記厚さ1.5mmのアルミ板(AL1100)に、同様に陽極酸化皮膜層と熱硬化塗膜層を形成し、熱硬化塗膜層の表面に断熱塗料(大日本塗料株式会社製断熱塗料 商標エコクール)を150μm厚さに塗布して2枚のサンプルFとし、結露状態を観察して同様に評価を行った。その結果を同じく表1に示す。
【比較例2】
【0045】
上記実施例1と同様に、溝深さ50μm、溝幅200μm、結露低減溝隣接の山幅を50μmにした結露低減溝に同様に直交溝を横断的に配置し、フォトエッチングによって縦横にメッシュ状をなす微細溝を形成して2枚のサンプルGとし、結露状態を観察し同様に評価した。その結果を同じく表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1に示すように、縦置き配置にあっては、サンプルA(溝深さ20μm)、サンプルB(溝深さ40μm)、サンプルC(溝深さ100μm)、サンプルD(200μm)のいずれにあっても結露水の液滴は全く残らないが、横置きとしたときサンプルA(溝深さ20μm)では結露水の液滴が若干残り、サンプルB(溝深さ40μm)、サンプルC(溝深さ100μm)では殆ど残らず、サンプルD(200μm)では全く残らない結果であった。一方、サンプルE(溝深さ0)では、縦置き、横置きの双方とも結露水の液滴が多量に残り、一般に北側の窓に設置のサッシ室内側に見られる結露の状況を呈した。サンプルF(断熱塗料塗布)では、縦置き、横置きの双方とも短時間の観察では結露水は見られないが、1日経過後では、同じく結露水の液滴が多量に残る結果であった。また、サンプルG(メッシュ状の微細溝)では、縦置き配置の場合に結露水の液滴は殆ど残らないが、横置きの場合に、結露水の液滴が相当程度残る結果であった(多量に残る程ではないので、表1では△と×の中間として△〜×と表示した)。
【0048】
従って、アルミ押出材に相当するアルミ板に数十程度以上の溝深さの結露低減溝を形成すること、これに陽極酸化皮膜層と熱硬化塗膜層を形成して、該熱硬化塗膜層に親水化処理を施すことによって、毛管作用による縦置き配置のときの結露水の液送、横置き配置のときの結露水の拡散による結露低減作用を得られること、このとき縦置き配置のものにあって溝深さは、これを20μm以上とすること、横置き配置のものにあっては、結露水の液滴が若干残ることがあるも、その実用性の障害となるものではないので、その溝深さは、これを50μm以上、特に100μm以上とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0049】
1 サッシ
11 サッシ枠
12 サッシ戸
13 サッシ框
2 結露低減溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に微細多数の結露低減溝を長手方向全長に配置して、毛管現象によって、結露水を長手方向に液送する縦置き配置と結露水を長手方向に拡散する横置き配置を自在としたアルミ押出材を用いて形成してなることを特徴とする建具、構造材等のアルミ建材。
【請求項2】
上記結露低減溝を、アルミ押出材の押出成形によって配置してなることを特徴とする請求項1に記載の建具、構造材等のアルミ建材。
【請求項3】
上記結露低減溝を配置したアルミ押出材に、陽極酸化皮膜層及び熱硬化塗膜層を形成具備してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の建具、構造材等のアルミ建材。
【請求項4】
上記アルミ押出材の結露低減溝を断面台形状乃至断面円弧形状に形成してなることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の建具、構造材等のアルミ建材。
【請求項5】
上記アルミ押出材の結露低減溝の溝深さを20乃至300μmとしてなることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の建具、構造材等のアルミ建材。
【請求項6】
上記アルミ押出材の結露低減溝の溝幅を100乃至500μmとしてなることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の建具、構造材等のアルミ建材。
【請求項7】
上記結露低減溝隣接の山幅を、30乃至100μmとしてなることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6に記載の建具、構造材等のアルミ建材。
【請求項8】
上記アルミ押出材の熱硬化塗膜層を、親水化処理を施した熱硬化塗膜層としてなることを特徴とする請求項2、3、4、5、6又は7に記載の建具、構造材等のアルミ建材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−231580(P2011−231580A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105141(P2010−105141)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】