説明

建具枠の躯体取付金具および躯体取付構造

【課題】 建具枠を躯体開口部に取り付けるに際して、躯体が鉄筋構造でも木造構造でも同一の取付金具を使用することができるようにする。
【解決手段】躯体取付金具を一対の固定片と、水平部と、これら固定片と水平部の端部同士をそれぞれ連結する連結部とで形成すると共に、水平部には先端が前記一対の固定片を結ぶ線上に至る高さに設定した起立片を突成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具枠を躯体に取り付けるに際して躯体が鉄筋造りであっても木造造りであっても同一の金具で取り付けられる建具枠の躯体取付金具および躯体取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
躯体開口部にドアやサッシその他の建具を取り付ける場合には建具枠体に躯体取付金具(アンカー)を設け、該金具(アンカー)を躯体に固定するようにしている(特許文献1,2)。
【特許文献1】特開2001−55872号公報
【特許文献2】実開平5−83268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、躯体開口部が形成される建物には大別して鉄筋構造や木造構造があり、それら構造によって取付金具(アンカー)の固定方法が異なるためそれぞれ専用の取付金具(アンカー)を用意して対処している。
このため、取付金具(アンカー)の生産効率も悪いばかりか在庫管理上も合理性に欠けるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、叙述の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、室内外方向に延設した見込み辺の両端側を建物躯体側に折曲した見付け辺の先端側をそれぞれ対向状に折曲形成した躯体側折曲片を有する建具枠の躯体取付金具であって、該金具は前記躯体側折曲片に固定される一対の固定片と、前記見込み片の躯体側面に当接して設けられる水平部と、固定片と水平部の端部同士をそれぞれ連結する連結部とで形成すると共に、水平部には先端位置を前記一対の固定片を結ぶ線上に至る高さに設定した起立片が突成されていることを特徴とするものである。
また、室内外方向に延設した見込み辺の両端側を建物躯体側に折曲した見付け辺の先端側をそれぞれ対向状に折曲形成した躯体側折曲片を有する建具枠の躯体取付構造であって、前記建具枠には前記躯体側折曲片に固定される一対の固定片と、見込み片の躯体側面に当接して設けられる水平部と、固定片と水平部の端部同士をそれぞれ連結する連結部で形成すると共に、水平部には先端位置を前記一対の固定片を結ぶ線上に至る高さに設定した起立片が突成された躯体取付金具が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1,2の発明により、建具枠をが取り付ける躯体構造が鉄筋でも木造でも同一の取付金具を用いることができるので、生産性の向上と在庫管理等の効率化が図れると共に建具枠の躯体取り付け作業を円滑に行うことができる。
また、取付金具が建具枠の補強を兼ねるように構成したので建具枠を薄板で形成した場合であっても枠の変形を防止し躯体に確りと固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
つぎに、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図面において、1はドア体の正面図であって、該ドア体1は上枠3と下枠4および左右縦枠5,5とで囲繞形成されるドア枠2に扉6がピボット6aを介して開閉自在に支承されている。
上枠3は、薄板鋼板を折曲することによって形成されており、室内外方向に延設した見込み辺3aの両端側を建物躯体側に折曲して見付け辺3bを形成し、更に見付け辺3bの先端側をそれぞれ対向方向に折曲形成した躯体側折曲片3cとで構成されている。
また、見込み辺3aは、室内側と室外側にそれぞれ配設した水平部3d,3dと、該水平部3d,3d間に形成され中央部にピボット6a先端側を嵌入する溝部3gを有し下方側に突出する凸部3e,3eとで構成されている。 なお、溝部3gはその底面3fが水平部3d,3dを結ぶ仮想線上に位置するよう設定されている。
凸部3eには扉6の上端面に向けて気密材7が設けられており、扉6の閉鎖時に上枠3と扉6との間隙を塞いで気密性を確保するようになっている。
一方、縦枠5は、中央側に長手方向二条の溝部5d,5dが形成された見込み辺5aと、該見込み辺5aの両端側を建物躯体側に折曲してなる見付け辺5bと、見付け辺5bの先端側をそれぞれ対向方向に折曲形成した躯体側折曲片5cとで形成されている。 また、溝部5d,5dは略同一深さに形成されており該溝部5d,5dには気密材8を装着することによって扉6の閉鎖時に縦枠5,5と扉6との間隙を塞いで気密性を確保するようになっている。
【0007】
つぎに、躯体取付金具を図5乃至7に基づいて説明する。
図5において、9は、本実施形態において上枠3に取り付けられる躯体取付金具であって、該躯体取付金具9は、水平部9aと、該水平部9aの両端を同方向にそれぞれ折曲した連結部9b,9bと、該連結部9b,9bの先端側をそれぞれ反対方向に折曲形成した一対の固定片9c,9cとで断面略ハット型に形成されている。連結部9bの高さは、後述するように躯体取付金具9の固定片9cを上枠3の躯体側折曲片3cに固定した際、水平部9aが上枠3の見込み辺3aの背面に当接するように設定してある。
また、水平部9aの中央部には該水平部9aの一部分を背面側に切り起こして二本の起立片9d,9dが離間突成されると共に起立片9d,9d間位置には螺子孔9eおよび孔9fが穿設され、さらに固定片9cにも孔9gが穿設されている。 なお、起立片9dは、その先端が前記一対の固定片9c,9cを結ぶ仮想線X−X上に位置する高さに設定されている。
【0008】
図6に示す躯体取付金具10は、本実施形態においては縦枠5に取り付けられるものであるが、金具自体は水平部10aと、該水平部10aの両端を同方向にそれぞれ折曲した連結部10b,10bと、該連結部10b,10bの先端側をそれぞれ反対方向に折曲形成した一対の固定片10c,10cとで断面略ハット型に形成されていることは上述した上枠用の躯体取付金具9と同様であるが、このものは躯体取付金具9に比して連結部10b,10bの高さが低く設定されており、水平部10aの中央部に打ち抜き穴10gが穿設された状態で該水平部10aの一部分を背面側に切り起こして二本の起立片10d,10dが離間突成されると共に、水平部10aには打ち抜き穴10gを挟むようにして左右に孔10e,10eが穿設され、さらに固定片10cにも孔10fが穿設されている。
連結部10bの高さは、後述するように躯体取付金具10の固定片10cを縦枠5の躯体側折曲片5cに固定した際、水平部10aが縦枠5の見込み辺5aの背面に当接するように設定してある。
なお、起立片10dは、その先端が前記一対の固定片10c,10cを結ぶ仮想線X−X上に位置する高さに設定されていることは躯体取付金具9と同様である。
【0009】
このように形成した躯体取付金具9,10は、図4に示すように上枠3および縦枠5の背面側に所定間隔を存して複数個が固定される。
図中(A)は、躯体取付金具9を上枠3に固定した場合を示す図であって、
左右の固定片9c,9cを上枠3の躯体側折曲片3cに孔9gを介して挿通したリベット11により固定されており、この状態で水平部9aは上枠3の見込み辺3aを構成する水平部3dと溝部3gの底面3fとに当接しており、水平部9aと底面3fは溝部3g内において貫通螺子12によって螺子孔9eにより固定されている。
また、(B)は、躯体取付金具10を縦枠5に固定した場合を示す図であって、
固定片10c,10cを縦枠5の躯体側折曲片5cに孔10fを介して挿通したリベット11により固定されており、この状態で水平部10aは縦枠5の溝部5d,5dに当接している。
【0010】
叙述のように躯体取付金具9,10を取り付けたドア枠2の躯体開口部への取り付けを図2,図3に基づいて説明する。
図中(A)は、躯体が鉄筋構造の場合を示すものであり、躯体開口部にドア枠2をセットした後に上枠3については、躯体に埋設された鉄筋14を躯体取付金具9に設けられた二本の起立片9d,9dのうちいずか一方の起立片9dに溶接固定することで、また縦枠5についても同様に躯体に埋設された鉄筋14を躯体取付金具10に設けられた二本の起立片10d,10dのうちいずか一方の起立片10dに溶接固定することで取り付けられる。
また、躯体が木造構造の場合には(B)に示すように躯体開口部にドア枠2をセットし木造躯体部15とドア枠2との間に塞ぎ板16等を挿入して躯体開口部内でのドア枠2の位置決めと上下左右移動を規制した後に、上枠3については溝部3g側から孔9fを挿通する木螺子13を木造躯体部15に螺入することで、また縦枠5についても同様に二条の溝部5d,5d側から孔10e,10eを挿通する木螺子13を木造躯体部15に螺入することで取り付けられる。 そして、
この場合においては起立片9d,10dが溝部3g,5dの底面と塞ぎ板16との間隙を維持して木螺子13の螺入による枠の変形が防止される。
【0011】
なお、上記実施形態に示した躯体取付金具9,10は、いずれも起立片9d,10dは水平部9a,10aを打ち抜き形成したものを示したが図7のようにすることもできる。このものは、水平部17bの長手方向両端部を折曲することによって起立片17a,17aを形成するようにしたものであって、この場合には水平部17bに切欠部が生じないので強度的にも優れた躯体取付金具17とすることができる。
【0012】
叙述のように本発明に係る躯体取付金具は、躯体が鉄筋構造であっても木造構造であっても同一仕様の金具で良く、生産性の向上と在庫管理等の効率化が図れると共に建具枠の躯体取り付け作業を円滑に行うことができる。
また、取付金具が建具枠の補強を兼ねるように構成したので建具枠を薄板で形成した場合であっても枠の変形を有効に防止し躯体に確りと固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ドア体の正面図である。
【図2】図2(A)は、躯体が鉄筋構造における図1のA−A断面図である。 図2(B)は、躯体が木造構造における図1のA−A断面図である。
【図3】図3(A)は、躯体が鉄筋構造における図1のB−B断面図である。 図3(B)は、躯体が木造構造における図1のB−B断面図である。
【図4】図4(A)は、躯体取付金具を上枠に取り付けた場合を示す状態図で ある。図4(B)は、躯体取付金具を縦枠に取り付けた場合を示す状態図 である。
【図5】図5(A),(B)は、それぞれ躯体取付金具の正面図、底面図であ る。
【図6】図6(A),(B)は、それぞれ躯体取付金具の正面図、底面図であ る。
【図7】図7(A),(B)は、それぞれ他の実施形態における躯体取付金具 の正面図、底面図である。
【符号の説明】
【0014】
1 ドア体
2 ドア枠
3 上枠
5 縦枠
3a,5a 見込辺
3b,5b 見付辺
3c,5c 躯体側折曲片
6 扉
9,10 躯体取付金具
9a,10a 水平部
9b,10b 連結部
9c,10c 固定片
9d,10d 起立片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内外方向に延設した見込み辺(3a,5a)の両端側を建物躯体側に折曲した見付け辺(3b,5b)の先端側をそれぞれ対向状に折曲形成した躯体側折曲片(3c,5c)を有する建具枠の躯体取付金具(9,10)であって、該金具(9,10)は前記躯体側折曲片(3c,5c)に固定される一対の固定片(9c,10c)と、前記見込み片(3a,5a)の躯体側面に当接して設けられる水平部(9a,10a)と、固定片(9c,10c)と水平部(9a,10a)の端部同士をそれぞれ連結する連結部(9b,10b)とで形成すると共に、水平部(9a,10a)には先端位置を前記一対の固定片(9c,10c)を結ぶ線上に至る高さに設定した起立片(9d,10d)が突成されていることを特徴とする建具枠の躯体取付金具(9,10)。
【請求項2】
室内外方向に延設した見込み辺(3a,5a)の両端側を建物躯体側に折曲した見付け辺(3b,5b)の先端側をそれぞれ対向状に折曲形成した躯体側折曲片(3c,5c)を有する建具枠の躯体取付構造であって、前記建具枠には前記躯体側折曲片(3c,5c)に固定される一対の固定片(9c,10c)と、前記見込み片(3a,5a)の躯体側面に当接して設けられる水平部(9a,10a)と、固定片(9c,10c)と水平部(9a,10a)の端部同士をそれぞれ連結する連結部(9b,10b)とで形成すると共に、水平部(9a,10a)には先端位置を前記一対の固定片(9c,10c)を結ぶ線上に至る高さに設定した起立片(9d,10d)が突成された躯体取付金具(9,10)が設けられていることを特徴とする建具枠の躯体取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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