説明

建具用シートおよびそれを用いてなる建具

【課題】
建築物の開口部における採光、通気等の建具本来の目的を損なうことなく、建築物の開口部の耐震性を高めるともに、地震時に開口部が壊れ塞がれることを防ぎ、避難口を確保することができる建具を提供する。
【解決手段】
本発明の建具用シートは、建築物の開口部に設置される建具の骨組みに貼り付けるシート状物であって、該シート状物に、引張強度が500〜10,000MPaで、かつ、引張弾性率が20〜1,500GPaの範囲内の高強度高弾性繊維が含まれることを特徴とする。また、本発明の建具は、建築物の開口部に設置される建具であって、該建具の骨組みに、上記特定強度の高弾性繊維を含む建具用シートを貼り付けてなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の開口部に設置される建具およびこの建具の骨組みに貼り付ける建具用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の建築物において、該建築物の耐震性を高くするため、建築物外壁または内部に、あるいは窓や襖などの既存開口部に耐力壁を新設ないしは増設する
ことが知られている。
【0003】
しかしながら、既存の開口部に耐力壁を設置した場合には、採光が十分取れなくなる、建築物内部での移動が制限されるなど、居住者、利用者の快適性、利便性が悪くなるという問題があった。
【0004】
そこで、このような問題を解決すべく、採光の取れる既存建築物の耐震補強壁として、既存建築物の開口部にブレースを備えた枠体を、窓や扉等の建具の両面に挟み付けて設置することが提案されている(特許文献1参照)。しかし、建具の両面にブレースを設置すると、いかにも見た目が悪いなど意匠性に欠ける。
【0005】
また、建築物の開口部の軸組に建具を緊結して耐震性を高める方法が提案されている(非特許文献1参照)。しかし、この方法は建具を軸組に固定するため、開口部として活用ができなくなり、利便性が損なわれる。
【0006】
一方、紙の片側表面または表裏面に、重量含有率で40%以上80%以下の範囲で一方向に引き揃えて整列された繊維を配合した熱可塑性樹脂板から成る補強層を、溶融一体化させて積層した高強度複合紙を建築用間仕切等の板状製品に用いる技術が提案されている(特許文献2参照)。しかし、該高強度複合紙は、繊維を配合した熱可塑性樹脂板を紙に積層したものであるため、剛性は備えているものの、透光性、透湿性がほとんどなく、障子等の採光部に使用することができないという問題がある。
【特許文献1】特開2000−328791号公報(請求項1、図1)
【特許文献2】特開平8−34095号公報(請求項1、図1)
【非特許文献1】「建築技術」(株式会社建築技術)平成11年8月号 第594号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、既存建築物の開口部にあって、間仕切、採光、開閉といった建具本来の目的、機能を損なうことなく、建築物の耐震性を高め得る建具用シートおよび該シートを用いてなる建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、
(1)建築物の開口部に設置される建具の骨組みに貼り付けるシート状物であって、該シート状物に、引張強度が500〜10,000MPaで、かつ、引張弾性率が20〜1,500GPaの範囲内の高強度高弾性繊維が含まれていることを特徴とする建具用シート。
【0009】
(2)前記シート状物は、紙、不織布、織編物から選ばれる少なくとも1種類のものであることを特徴とする前記(1)に記載の建具用シート。
【0010】
(3)前記シート状物に対する高強度高弾性繊維の含有量は、10〜100重量%の範囲内であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の建具用シート。
【0011】
(4)建築物の開口部に設置される建具であって、該建具の骨組みに、引張強度が500〜10,000MPaで、かつ、引張弾性率が20〜1,500GPaの範囲内の高強度高弾性繊維を含むシート状物を貼り付けてなる建具。
【0012】
(5)前記シート状物は、紙、不織布、織物から選ばれる少なくとも1種類のもので構成されていることを特徴とする前記(4)に記載の建具。
【0013】
(6)前記シート状物に対する高強度高弾性繊維の含有量が、10〜100重量%の範囲内であることを特徴とする前記(4)または(5)に記載の建具。
【0014】
(7)前記建具に、建築物の開口部に固定するための固定機構が備えられていることを特徴とする(4)〜(6)のいずれかに記載の建具。
【0015】
(8)前記建具の骨組みの一部が、繊維強化プラスチックからなることを特徴とする(4)〜(7)のいずれかに記載の建具。
【0016】
(9)前記建具が、引き戸であることを特徴とする(4)〜(8)のいずれかに記載の建具。
【発明の効果】
【0017】
本発明の建具用シートによれば、建具の骨組みに引張強度が500〜10,000MPaで、かつ、引張弾性率が20〜1,500GPaの範囲内の高強度高弾性繊維を含むシート状物を貼り付けてなる建具としたので、建具自体の剛性、面内耐力を高めることが可能となり、地震時や台風等の強風時の水平荷重に対する耐力が向上し、建築物の倒壊を防ぎ、さらには避難口としての開口部が塞がれることを防ぐことが可能となる。すなわち、建具本来の目的を損なうことなく、建築物の開口部の耐震性を高め、地震等の災害時に建具が設置された開口部が壊れて塞がれることを防ぎ、避難口を確保することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、前記課題について鋭意検討した結果、建築物の開口部に設置される障子や襖等のシート状物の貼り付けを要する建具において、上記特定強度の高強度高弾性繊維を含有する建具用シートを用いることにより、かかる課題を解決することを究明したものである。
【0019】
以下、本発明の建具用シート及びこのシートを用いた建具について、説明する。
【0020】
1.建具用シート
本発明において、「建具」とは、建築物の開口部に設けられる窓、ドアや、障子、襖等の引き戸をいい、本発明における「シート状物」とは、上記建具の骨組みに貼り付けられる、織編物、不織布、紙、フィルム等の単体あるいはこれら単体を2層以上重ね合わせた積層体等からなる平面状シートをいう。
【0021】
建具は、和洋いずれの形式の建築物に用いるにしても組み付け後の剛性が必要であるとともに障子、襖などを必要とする日本建築の場合はシート状物自体にある程度の通気性や透湿性、更には外観上の意匠性が必要である。これら特性を全て備える材料としては、紙、不織布、織編物から選ばれる少なくとも1種類以上を積層した複合紙が好ましい。そして、通常の剛性に加えて更に耐震性をも備える建具用シートとするには、該シートに、引張強度が500〜10,000MPaで、かつ、引張弾性率が20〜1,500GPaの各範囲内、好ましくは引張強度が1,000〜9,000MPaで、かつ、引張弾性率が50〜1,300GPaの各範囲内の強度特性を有する高強度高弾性繊維が含まれることが必要である。引張強度が500MPa未満では、地震時や台風等の強風時に建物に作用する水平荷重に耐えることができない。一方、10,000MPaを超えると建具の強度が必要以上に高くなり、建物内での壁の耐力バランスが崩れ、他の壁等の崩壊を招く可能性が高くなるからである。また、引張弾性率が20GPa未満では地震時や台風等の強風時に建物に水平荷重が作用した際の変形量が大きくなり形状を保つことができない。一方、1,500GPaを超えると建具の剛性が必要以上に高くなり、建物内での壁の耐力バランスが崩れ、他の壁等の崩壊を招く可能性が高くなるからである。
【0022】
かかる高強度高弾性繊維としては、合成繊維や無機繊維が挙げられ、例えば、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維等の合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等の無機繊維である。特に、パラ系アラミド繊維、超高強力ポリエチレン繊維、ポリケトン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール系繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、およびセラミック繊維等が引張強度、引張弾性率が好ましい範囲にあるという理由により好ましい。シート状物全体に含まれる高強度高弾性繊維の割合としては、建具に必要な強度、剛性、コスト等により異なるが、好ましくは、10〜100重量%、より好ましくは25〜90重量%含まれるものが良い。シート状物に高強度高弾性繊維が10重量%以上含まれることにより、シート状物の幅方向や長さ方向での強度バラツキを少なくすることが可能となり、100重量%とすることによりもっとも高強度高弾性繊維の強度特性を活用でき、強度、剛性の高い建具用シート状物とすることが可能となり、耐震性の非常に高い建具用シートを得ることができる。
【0023】
ここで、10〜100重量%の範囲の高強度高弾性繊維をシート状物に含ませる方法としては、例えばシート状物が紙の場合、所定量の高強度高弾性繊維をパルプ等と混合して混抄紙とする方法や、シート状物が不織布の場合は、綿、ナイロン繊維、あるいはポリエステル繊維等の汎用繊維と混合して混綿不織布とする方法、さらにシート状物が織編物の場合、織物の経糸、あるいは緯糸の一方に高強度高弾性繊維を用い、他方にポリエステル繊維等汎用繊維を用いた交織織物や、経糸・緯糸それぞれに高強度高弾性繊維と他の繊維を交互に配置した混用織物、さらには高強度高弾性繊維と他の繊維を混合して紡績した混合紡績糸を用いて織編物とする方法等が挙げられる。また、シート状物が紙の場合は、シートとしての形態を保ち、シート自体の引張強力を高いものとするために、抄紙工程により得られた紙にバインダー等を付与することや、カレンダー装置による加熱・加圧下での処理を行っても良い。
【0024】
シート状物の目付としては、50〜1,000g/mであることが好ましい。特にシート状物が紙や不織布である場合、目付を50g/m以上とすることで、高強度高弾性繊維が均一に分散しシート状物の強度バラツキを小さくすることや、シート状物の形態を保持することが可能となり、建具の骨組みに貼り付けた際に、建具の剛性を高めることが可能となる。したがって、建具の剛性を高くするためには、シート状物の目付を高くすることが好ましいが、障子等適度な通気性、透光性が求められる建具については、50〜200g/m程度の目付が好ましい。
【0025】
シート状物の通気量としては、JIS L 1096 8.27.1 A法(フラジール形法)により求めた値が、1〜30cm/cm/sの範囲内であることが好ましい。シート状物の通気量が1cm/cm/s未満の場合は、通気性がほとんどなく、障子の機能の一つである透湿性が損なわれる。また、通気量が30cm/cm/sを超える場合は、通気量が大き過ぎ間仕切りとしての役目を果たさない。なお、襖等通気性を必要としない建具についてはこの限りではなく、建具の剛性を高めるために、シート状物の目付は高い程好ましい。
【0026】
さらに、本発明のシート状物は、シート状物の剛性を高くすることを目的に、シート状物に樹脂をシート状物に対して5〜70重量%程度含浸して繊維強化プラスチック(以下、FRPと略す)とすることも可能である。シート状物に含浸する樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等いずれのものでも良く、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミノアミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等が使用される。
【0027】
2.建具
本発明の「建具」とは、建築物の開口部に設置される、例えば障子、襖等の引き戸や、蝶番等で回転するドア等の建具であって、これら建具の骨組みに、前述した引張強度が500〜10,000MPaで、かつ、引張弾性率が20〜1,500GPaの範囲内の高強度高弾性繊維を含むシート状物である前記建具用シートが貼り付けてなるものである。
【0028】
ここで、建具の骨組みとしては、既存、新設を問わず一般的な木製の障子枠や襖の枠などいずれのものを用いること可能である。好ましくは、高強度高弾性繊維からなるFRPを骨組みの少なくとも一部に用いることで、一般的に用いられる建具に比べ、建具の重量を軽く出来るとともに、建築物の重量を低減し、地震時の地震力等の水平荷重を著しく低減することが可能となる。この高強度高弾性繊維からなるFRPとは、高強度高弾性繊維を補強材とし、樹脂と一体化したものであればいずれのものでも良く、ハンドレイアップ法、スプレーアップ法、モールディングコンパウンド法、フィラメントワインディング法等の製法により得ることができる。また、FRPに用いる樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等いずれのものでも良い。好ましくは、万一の火災時等で樹脂が溶融しないという点から熱硬化性樹脂が良い。
【0029】
3.建具の固定機構
上述した本発明に係る建具用シートを用いた建具は、次に述べる建具固定機構を併設すると、更に耐震性を高めることが出来る。
【0030】
この固定機構は、建具とこの建具をはめ込む開口部とを連結して建具を固定するものである。
【0031】
この固定機構を有する建具を示したのが図1〜図3で、このうち図1は障子の正面図、図2は図1の障子のA−A´断面における矢印方向断面図、図3は襖の正面図である。
これらの図において、符号1が前述のシート状物(本発明の建具用シート)を、2が建具の骨組みを、3が固定機構を現している。また、図4〜図8は、いずれも固定機構3の上記建具への適用例で、このうち図4および図5に示す実施形態は、下方の建具枠4の案内溝近傍に設けた凹部4aに固定機構3の固定棒3aを落とし込むタイプ、図6および図7に示す実施形態は、上方の建具枠4の案内溝近傍に設けた凹部4aに固定機構3の固定棒3aを突き上げるタイプを示している。また、図8の実施形態のものは、建具の骨組2の側面に固定された固定機構3のバネ3aで建具枠4に圧力をかけることにより固定するタイプである。また、建具に既に取り付けられた猿(サル:和風建具を施錠や固定のためにつかう落とし桟機構のこと)を活用することもできる。通常は、建具をこれら機構で固定しない状態でスライドできる状態とし、地震時等に手動あるいは自動で作動できるようにするのが好ましい。該建具を固定する機構は、建具1つに対して、開口部の上、横、下側の場所を問わず、幾つでも取り付けることができ、建具の大きさと固定具合に応じ適宜選択する。本発明の建具は、左右に動く引き戸であることが好ましく、地震の際に水平荷重が作用した場合においても開口部の耐震性を高め、開口状態を維持できることから避難口の確保も可能となる。
【実施例】
【0032】
次に、本発明の実施例を説明する。
【0033】
[測定方法]
(1)目付
JIS P 8124に準拠し、作製したシート状物を25cm角にサンプリングしてその重量を測定し、目付を求めた。
【0034】
(2)通気量
JIS L 1096 8.27.1 A法に準拠して測定し、シート状物について通気量を求めた。
【0035】
(3)壁倍率
「壁倍率」とは、本発明の建具の耐震性の程度を示す指標であり、壁の長さ1mあたりの基準耐力が水平荷重1.96kNであることを壁倍率1.0と定義するものであり、以下の計算式により求めるものである。
壁倍率=Pa×(1/1.96)×(1/L)
ここで、
Pa:短期許容せん断耐力(kN)
L :試験体の壁長さ(m)
なお、前記Paは、建築基準法施行令第46条第4項表1(八)の規定に基づく認定に係る性能評価に該当するものを対象とした「木造の耐力壁及びその倍率 試験業務方法書」(財団法人日本建築センター平成12年6月1日制定BR住−504−01)に準拠し、軸組寸法幅1820mm、高さ2730mmとし、該軸組の内側に幅920mm、高さ2700mmの建具をはめ込み、タイロッド式の面内せん断試験装置を用いた試験により求めた。
【0036】
実施例1
高強度高弾性繊維として、繊維長6mm、単糸繊度1.67dtexのパラ系アラミド繊維“ケブラー”(登録商標)29(東レ・デュポン(株)製)カットファイバー10重量%を用い、亜硫酸パルプ90重量%の割合で湿式抄紙法にて目付50g/mの本発明の建具用シートである紙を作製した。なお、“ケブラー” (登録商標)29は、引張強度2920MPa、引張弾性率70.5GPaの繊維である。次にこの紙を用い、幅920mm、丈2700mmの荒間無地障子の木枠に、障子糊S−150−E((株)ミツエ製)を用いて貼り付けて本発明の建具である障子とした。
【0037】
そして、この障子に対して、以下の測定方法により、建具用シート部分の目付、通気量および障子の壁倍率を測定した。その結果、表1に示す目付、通気量および壁倍率が得られた。
【0038】
実施例2
今度は“ケブラー” (登録商標)29のカットファイバーを50重量%、亜硫酸パルプを50重量%とした他は、実施例1と同様にして建具用紙と障子を作製した。
【0039】
また、実施例1と同様の測定方法にて、目付、通気量および壁倍率を求めた。得られた目付、通気量および壁倍率を表1に示す。なお、この実施例では、図4と図6に示した固定機構3を障子の四隅に設けた障子についても同様に壁倍率を測定した(固定1)。
【0040】
実施例3
高強度高弾性繊維として、繊維長6mmの炭素繊維“トレカ” (登録商標)T300(東レ(株)製)を30重量%用い、亜硫酸パルプ70重量%の割合としたほかは、実施例1と同様にして建具用紙と障子を作製し、実施例1と同様に目付、通気量および壁倍率を求めた。
た。なお、“トレカ” (登録商標)T300は、引張強度3530MPa、引張弾性率230GPaの繊維である。得られた目付、通気量および壁倍率を表1に示す。
【0041】
実施例4
高強度高弾性繊維として、繊維長6mm、単糸繊度1.7dtexの“ザイロン”(登録商標)AS(東洋紡績(株)製)カットファイバーを40重量%、“ケブラー” (登録商標)パルプ30重量%を用い、亜硫酸パルプ30重量%の割合としたほかは、実施例1と同様にして建具用紙と障子を作製し、実施例1と同様に目付、通気量および壁倍率を求めた。なお、“ザイロン” (登録商標)ASは、引張強度5800MPa、引張弾性率180GPaの繊維である。得られた目付、通気量および壁倍率を表1に示す。
【0042】
実施例5
幅900mm、丈1800mmの襖の下地骨両面に下張りとして実施例2で作製した紙3枚を障子ふすま用でんぷんのりS−300−I((株)ミツエ製)を用いてそれぞれ貼り付けて積層し、上張りは貼り付けず襖とした。
【0043】
そして、この襖に対して実施例1と同様に目付、通気量および壁倍率を求めた。得られた目付、通気量および壁倍率を表2に示す。なお、図8に示す固定機構3を襖の上下に設けた場合についても壁倍率を測定した(固定2)。
【0044】
比較例1
市販のレーヨン障子紙エスロン(登録商標)(丸三製紙(株)製)を用い、実施例1と同様にして障子を作製し、実施例1と同様にして壁倍率を測定した。なお、上記障子紙のレーヨン繊維は、引張強度が330MPa、引張弾性率が12GPaの繊維である。
【0045】
比較例2
実施例5の下張りとして比較例1と同じ紙を実施例5と同様に貼り付けて襖とした。そして、この襖に対して、実施例1と同様にして壁倍率を測定した。
【0046】
以上の実施例と比較例の結果を纏めて示したのが次の表1および表2である。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
表1および表2のとおり、建具用シート状物に高強度高弾性繊維を含んでなるものとしたことにより、いずれの実施例においても比較例に比べて、壁倍率が格段に向上し、本発明の建具を住宅等の建築物の開口部に用いた場合には、地震等の災害時に建築物が傾くなどした場合においても、開口部が壊れ塞がれることを防ぐことが可能となり、耐震性能が格段に向上する。よって避難口を確保することも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の建具用シートおよびこのシートを貼り付けてなる建具は、障子、襖に限らず、ドア、網戸、窓などに適用することできる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の建具用シートが貼り付けられた障子の概略正面図である。
【図2】図1の障子のA−A’断面における矢印方向の断面図である。
【図3】本発明の建具である襖の概略正面図である。
【図4】図4Aは本発明に係る建具に併設した建具固定機構の概略正面図、図4Bは図4Aの建具のB−B’断面における矢印方向の断面図である。
【図5】図5Aは図4と異なる本発明の実施形態に係る建具に併設されている固定機構の概略正面図、図5Bは図5Aの建具のC−C’断面における矢印方向の断面図である。
【図6】図6Aは図5と異なる本発明の実施形態に係る建具に併設されている固定機構の概略正面図、図6Bは図6Aの建具のD−D’断面における矢印方向の断面図である。
【図7】図7Aは図6と異なる本発明の実施形態に係る建具に併設されている固定機構の概略正面図、図7Bは図7Aの建具のE−E’断面における矢印方向の断面図である。
【図8】図8Aは図7と異なる本発明の実施形態に係る建具に併設されている固定機構の概略正面図、図8Bは図8Aの建具のF−F’断面における矢印方向の断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1:シート状物(建具用シート)
2:建具の骨組み
3:建具の固定機構
4:建具枠
5:開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の開口部に設置される建具の骨組みに貼り付けるシート状物であって、該シート状物に、引張強度が500〜10,000MPaで、かつ、引張弾性率が20〜1,500GPaの範囲内の高強度高弾性繊維が含まれていることを特徴とする建具用シート。
【請求項2】
前記シート状物は、紙、不織布、織編物から選ばれる少なくとも1種類のものであることを特徴とする請求項1に記載の建具用シート。
【請求項3】
前記シート状物に対する高強度高弾性繊維の含有量が、10〜100重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の建具用シート。
【請求項4】
建築物の開口部に設置される建具であって、該建具の骨組みに、引張強度が500〜10,000MPaで、かつ、引張弾性率が20〜1,500GPaの範囲内の高強度高弾性繊維を含むシート状物を貼り付けてなることを特徴とする建具。
【請求項5】
前記シート状物は、紙、不織布、織編物から選ばれる少なくとも1種類のもので構成されていることを特徴とする請求項4に記載の建具。
【請求項6】
前記シート状物に対する高強度高弾性繊維の含有量は、10〜100重量%の範囲内であることを特徴とする請求項4または5に記載の建具。
【請求項7】
前記建具に、建築物の開口部に固定するための固定機構が備えられていることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の建具。
【請求項8】
前記建具の骨組みの一部が、繊維強化プラスチックからなることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の建具。
【請求項9】
前記建具が、引き戸であることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−146526(P2007−146526A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343465(P2005−343465)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】