説明

建具用ランナー

【課題】連結距離を調整するための機構部分の部品点数を少なくすることができ、コスト低減ができ、支軸及び連結距離を調整するための機構部分のランナー部材並びに戸板取付部材への組み付けの容易化が図れる建具用ランナーを提供すること。
【解決手段】戸枠Fの上縁に設けられたガイドレールRに係合し走行するガイドローラ11を有するランナー部材12と、戸板Dの上端角部に固定される戸板取付部材13と、ランナー部材12と戸板取付部材13とを連結する支軸16とを有する。連結距離調整機構は、一端にドライバーTの先端部と噛合しドライバーTを回すことで回転するドライバー駆動式歯車17を備え、支軸16が、ランナー部材12又は戸板取付部材13のいずれか一方にねじ部を介して軸方向移動可能に連結されると共に他方に引抜き不能に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊戸式における戸板を開閉可能かつ高さ調整可能に建込むための建具用ランナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
吊戸式の戸板を該戸板の上方に備えるガイドレールに吊り込むための建具用ランナーは、ガイドレールに係合し走行するガイドローラを有するランナー部材と、戸板の上端角部に固定される戸板取付部材と、ランナー部材と戸板取付部材とを連結する支軸とを備えて成る。
【0003】
建具用ランナーは、戸板の下端と床との隙間間隔を所定寸法に保ったときに戸板の上端とガイドローラとの間隔が種々の寸法になるので、支軸によるランナー部材と戸板取付部材との連結距離を調整する連結距離を調整するための機構とを備えている。
【0004】
従来の、連結距離を調整するための機構部分を備えた建具用ランナーとして、例えば、下記の特許文献1及び2に記載のものが知られている。
【0005】
特許文献1に記載された建具用ランナーは、ガイドレールを走行するガイドローラを有する移動体(ランナー部材)と、開閉体(戸板)の上端側に埋設固定される開閉体連結具に下端部を固定連結され移動体に対し上下方向に螺動可能であるボルト形のシャフトと、移動体の内部に設けられシャフトを上下方向に移動調整するシャフト調整手段とからなる。
シャフト移動歯車体は、シャフト移動歯車体と、回転調整体とからなる。シャフト移動歯車体は、雌ねじ部と傘歯車部を有し雌ねじ部が移動体の内部でシャフトの雄ねじ部に螺合している。回転調整体は、歯車部と操作部を有し歯車部がシャフト移動歯車体の歯車部に噛合し操作部がドライバーの先端部を受容係合し該ドライバーで回転されシャフト移動歯車体を回転する。
【0006】
特許文献2に記載されたものと同様の建具用ランナーを図15から図17に示す。図15は縦断した正面図である。図16は図15におけるXVI−XVI矢視図、図17は図15におけるXVII−XVII矢視図である。この建具用ランナーは、ガイドレールRに係合し走行するガイドローラ2を有するランナー部材3と、戸板Dの上端角部に固定される戸板取付部材4と、ランナー部材3と戸板取付部材4とを連結する支軸5とを備えて成る。支軸5によるランナー部材3と戸板取付部材4との連結距離を調整する連結距離を調整するための機構は、支軸5の上部をランナー部材3に固定し、戸板取付部材4の内部において支軸5の下部に雄ねじ部5aを設け、この雄ねじ部に対応し、雌ねじ部と歯車部を有する第1の傘歯車6を回転可能・軸方向移動不能に備えると共に、戸板取付部材4の内部であって軸方向が雄ねじ部5aに直交する水平軸7に第2の傘歯車8を備え、第1の傘歯車6と第2の傘歯車8とが噛合してなる。水平軸7の外端面の+溝にドライバーの先端を押し当てドライバーを回すことにより第2の傘歯車8を回転すると共に、第2の傘歯車8と噛合する第1の傘歯車6が回転し、第1の傘歯車6と螺合する支軸5が螺動し、ランナー部材3と戸板取付部材4との連結距離を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−27072号公報
【特許文献2】特開平10−72967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び2に係る建具用ランナーでは、互いに噛合する一対の傘歯車を備えており、両傘歯車が精密に噛合しないと両傘歯車が円滑に噛み合い回転できず、支軸に加わる負荷が支軸を螺動させる際に大きな抵抗となる。しかし、それぞれに遊びがある二個の傘歯車同士を円滑に噛み合うように加工精度・組付精度を保持するが難しいという問題点がある。加えて、上下調整機構について、部品点数が多く、組付け作業に時間がかかり、製作コストがかかる。
また、特許文献2に係る建具用ランナーでは、戸板を開閉する際に生じる衝撃や振動が戸板を持ち上げるように作用することにより戸板の跳ね上がりが起きるおそれがある。これを防ぐためには、別途跳ね上がりを防止するためのピン(図示省略)などを支軸に設ける必要がある。
【0009】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、連結距離を調整するための機構部分について、ドライバーを回す力が確実に伝わり部品点数を少なくコスト低減を図ることができ、支軸及び連結距離を調整するための機構部分のランナー部材並びに戸板取付部材への組み付けの容易化が図れる建具用ランナーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具用ランナーは、戸枠の上縁に設けられたガイドレールに係合し走行するガイドローラを有するランナー部材と、戸板の上端角部に固定される戸板取付部材と、ランナー部材と戸板取付部材とを連結する支軸と、を有し、支軸は、一端にドライバーの先端部と噛合しドライバーを回すことで回転するドライバー駆動式歯車を備え、ランナー部材又は戸板取付部材のいずれか一方にねじ部を介して軸方向移動可能に連結されると共に他方に引抜き不能に連結され、ドライバー駆動式歯車をドライバーで回転させることによりランナー部材と戸板取付部材との連結距離が変化することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、従来の2個の傘歯車同士の噛合構造に変えてドライバーを回すことでドライバーを回す力を確実に受け取り回転するドライバー駆動式歯車を備えたので、ドライバーを回すことでドライバー駆動式歯車が円滑に回転し支軸によるランナー部材と戸板取付部材との連結距離を変更することができ、該連結距離を調整するための機構部分について、従来に比べて部品点数・加工コストを低減することができ、支軸及び連結距離を調整するための機構部分のランナー部材並びに戸板取付部材への組み付けの容易化が図れる。
【0012】
本発明に係る建具用ランナーは、ランナー部材又は戸板取付部材のいずれか一方に、ドライバーの先端部を外部からドライバー駆動式歯車に噛合する位置へ挿入した際にこの挿入状態を保持する操作孔を有する構成であることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、操作孔に挿入してドライバー駆動式歯車と噛合するドライバーの先端部の姿勢が安定するから、ドライバーの回転がドライバー駆動式歯車に円滑に伝わり、ランナー部材と戸板取付部材との連結距離を調整しやすい。
また操作孔はランナー部材又は戸板取付部材のいずれか一方に設ける成形部であり、独立部品として設けるものでないから、部品点数・加工コスト・組付工数を低減することができる。
【0014】
本発明に係る建具用ランナーは、ランナー部材と支軸の上部とが螺合することでランナー部材が支軸を支持し、支軸の下部は戸板取付部材に軸回転可能に連結され、支軸の下端にドライバー駆動式歯車を一体的に備え、戸板取付部材に操作孔が戸板取付部材の戸板側端面から内部へ水平に設けられる構成であることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、ランナー部材と戸板取付部材との連結距離を調整するための機構部分について、ランナー部材と戸板取付部材と支軸以外の分離独立した部品を無くすことができ、建具用ランナー全体としての部品点数を最少にして組み付けの容易化が図れると共にコスト低減が図れる。
【0016】
本発明に係る建具用ランナーは、ランナー部材又は戸板取付部材のいずれか一方に取り付けられ、ドライバー駆動式歯車の歯車部に係合して回転不能とするロック部を有する構成であることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、ガイドローラがガイドレールに係合し走行し戸板を開閉する際に生じる振動がドライバー駆動式歯車に長期間にわたり繰り返し作用しても該ドライバー駆動式歯車が回転することが無くランナー部材と戸板取付部材との連結距離が一定に保持される。
【0018】
本発明に係る建具用ランナーは、戸板取付部材の内部であって前記支軸の下端の下側に、前記支軸が前記戸板取付部材に対し相対的に下降する場合に前記支軸の下端に当接して前記支軸の前記相対的下降を不可とする当接部を備える構成であることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、戸板を開閉する際に生じる衝撃や振動が戸板を持ち上げるように作用すると、当接部が支軸の下端に当接し戸板取付部材に対し支軸の相対的下降を不可とするから、戸板の跳ね上がりを防止できる。
【0020】
本発明に係る建具用ランナーは、ロック部が、ランナー部材又は戸板取付部材のいずれか一方に連結されるアーム部と、このアーム部に連設されドライバー駆動式歯車の歯車部に係合する係合部と、を有し、アーム部が、可撓性を有し、ドライバーの先端部が操作孔に挿入されていない状態において係合部をドライバー駆動式歯車の歯車部に係合するよう押圧する一方、ドライバーの先端部が操作孔に挿入されるとアーム部がドライバーに押圧されて撓み、係合部がドライバー駆動式歯車の歯車部から退避して係合が解除される構成であることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、通常時、ロック部の係合部がドライバー駆動式歯車の歯車部に係合しドライバー駆動式歯車の回転をロックするので、戸板の開閉により該戸板に長期間にわたり衝撃や振動が加わっても支軸によるランナー部材と戸板取付部材との連結距離が一定に保持され、そして、ドライバーの先端部が操作孔に挿入されると、ロック状態が解除され、ドライバーを回してドライバー駆動式歯車を回転させることができ、支軸によるランナー部材と戸板取付部材との連結距離を変更でき、この変更後、ドライバーを操作孔から抜くと、ロック部の係合部がドライバー駆動式歯車の歯車部に係合しドライバー駆動式歯車の回転を再びロックし、ランナー部材と戸板取付部材との新たな連結距離に保持する。
【0022】
本発明に係る建具用ランナーは、戸板取付部材が、戸板に固定される固定ホルダと、この固定ホルダに対して着脱自在であって支軸を介してランナー部材に連結された着脱ホルダとからなり、ロック部が、着脱ホルダに取り付けられる構成であることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、固定ホルダと着脱ホルダとを分離して戸板取付部材の内部を開放し、ガイドローラを有するランナー部材と支軸と着脱ホルダとを連結した着脱ホルダにロック部を組み付け、該着脱ホルダを戸板に固定した固定ホルダに組み付けることができ、組付容易性を担保できる。
【0024】
本発明に係る建具用ランナーは、係合部が、ドライバー駆動式歯車の歯車部に係合している状態において該歯車部の板面に対して垂直な係合面と、操作孔に挿入されるドライバーの先端部で押動される係合面が歯車部から退避している状態においてドライバーの軸方向に垂直にドライバーに当接する当接面と、を有する構成であることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、ドライバーの先端部を操作孔に挿入させると、ドライバーの先端部が係合部の当接面に当接停止し、この状態で該ドライバーの先端部がドライバー駆動式歯車の歯車部に適切に噛合すると共に、係合面がドライバー駆動式歯車の歯車部との噛合を離脱する。もって、ドライバーの先端部を操作孔に挿入させるワンタッチ操作により、ドライバーの先端部とドライバー駆動式歯車との適切な噛合及びドライバー駆動式歯車のロック解除を行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る建具用ランナーによれば、従来の2個の傘歯車同士の噛合構造に変えてドライバーを回すことでドライバーを回す力を確実に受け取り回転するドライバー駆動式歯車を備えたので、ドライバーを回すことでドライバー駆動式歯車が円滑に回転し支軸によるランナー部材と戸板取付部材との連結距離を変更することができる。そのため、連結距離を調整するための機構部分について、部品点数を少なくすることができ、コスト低減を図ることができ、支軸及び連結距離を調整するための機構部分のランナー部材並びに戸板取付部材への組み付けの容易化が図れる建具用ランナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る建具用ランナーを示す斜視図である。
【図2】図1の建具用ランナーの使用状態を一部断面して示す正面図である。
【図3】図1の建具用ランナーの使用状態を縦断正面図である。
【図4】図2におけるIV−IV矢視図である。
【図5】図2におけるV−V矢視図である。
【図6】図3におけるVI−VI断面図である。
【図7】図3におけるVII−VII断面図である。
【図8】図1の建具用ランナーについて、ランナー部材と戸板取付部材との連結距離を調整するところを示す斜視図である。
【図9】図3に対応する縦断正面図であって、ランナー部材と戸板取付部材との連結距離を調整するところを示す図である。
【図10】図9におけるX−X断面図であって、ロック部を除外して視た図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る建具用ランナーを示す縦断面図であって、ランナー部材と戸板取付部材との連結距離を調整するところを示す図である。
【図12】図11におけるXII−XII断面図である。
【図13】図11の建具用ランナーの使用状態を縦断正面図である。
【図14】本発明の第3の実施形態に係る建具用ランナーを示す縦断面図であって、ランナー部材と戸板取付部材との連結距離を調整するところを示す図である。
【図15】従来の建具用ランナーを示す縦断正面図である。
【図16】図15におけるXVI−XVI矢視図である。
【図17】図15におけるXVII−XVII矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る建具用ランナーの実施形態を図面に基いて説明する。
【0029】
〔第1の実施形態〕
図1から図10は、本発明の第1の実施形態に係る建具用ランナーを示す。
図1から図3に示すように、建具用ランナー1は、戸枠Fの上辺部下面に設けられた箱形のガイドレールRに係合し四輪走行するガイドローラ11を有するランナー部材12と、戸板Dの上端角部に固定される戸板取付部材13と、ランナー部材12と戸板取付部材13とを連結する支軸16とを有する。また、建具用ランナー1は、ランナー部材12と戸板取付部材13との連結距離を調整するための連結距離調整機構を備える。
【0030】
図1,図2に示すように、戸板取付部材13は、戸板Dの上端角部に固定される固定ホルダ14と、この固定ホルダ14に対して着脱自在である着脱ホルダ15とからなる。
【0031】
図2,図3に示すように、固定ホルダ14は、戸板Dの肉厚内に形成された矩形空間に収容され戸板Dの側端より水平方向にねじ込むタッピンねじ21及び戸板Dの上端より垂直下方にねじ込むタッピンねじ22で戸板Dに固定される。
【0032】
図4から図6に示すように、ガイドレールRは、下面部が両側に別れかつ下面部の上面がレール面になっている箱形のアルミ製押出型材よりなる。ガイドレールRは、上面部を戸枠Fの上部枠部の下面に当て、タッピンねじをレール間の隙間に通し該タッピンねじで上面部を戸枠Fの上部枠部に固定される。
【0033】
図1,図3,図4に示すように、着脱ホルダ15は、支軸16を介してランナー部材12に連結された組立体とされ、ランナー部材12及びランナー部材12に備えた四輪のガイドローラ11を箱形のガイドレールR内に収容し支軸16をレール間の隙間に通しガイドレールRより垂下した状態で固定ホルダ14に連結される。
【0034】
図1,図3に示すように、着脱ホルダ15は、固定ホルダ14の正面側及び裏面側の一対の翼部14a,14b間に戸板Dの側端より水平方向に挟入され、下部に備えた可撓性を有するロックレバー23の突起23aが固定ホルダ14の下面部に設けた開口24に係合することにより固定ホルダ14に連結される。また着脱ホルダ15は、戸板Dの端面に臨むロックレバー23の先端を摘んで持ち上げて突起を開口24から離脱させると戸板Dの端面外方へ引くことで固定ホルダ14から分離される。
【0035】
図3に示すように、連結距離調整機構は、支軸16の下端にドライバーTの先端部と噛合しドライバーTを回すことで回転するドライバー駆動式歯車17を一体に備えると共に支軸16の上半部に雄ねじ部16aを備え、支軸16を着脱ホルダ15に設けた軸受部15aの軸孔に下方から通すことにより着脱ホルダ15に対し支軸16を上方へ引抜き不能かつ軸回転可能に連結すると共に、支軸16に設けた雄ねじ部16aをランナー部材12に設けた雌ねじ12aに螺合することによりランナー部材12が支軸16を支持し、さらに支軸16の上端の筒状小径部16bにリング25を被嵌し筒状小径部16bをフレア加工してリング25を離脱不能とすることによりランナー部材12に対し支軸16が下方へ引抜き不能に連結された構成である。
【0036】
図8から図10に示すように、着脱ホルダ15には、ドライバーTの先端部を外部からドライバー駆動式歯車17に噛合する位置へ挿入した際にこの挿入状態を保持する操作孔18が戸板取付部材13の戸板Dの側端面から内部へ水平に設けられ、この操作孔18にドライバーTの先端部を通しと噛合しドライバーTを回すことで回転する。
【0037】
図3,図6,図7,図9に示すように、着脱ホルダ15には、戸板取付部材13の内部に位置するように、ドライバー駆動式歯車17の歯車部17aに係合して該ドライバー駆動式歯車17を回転不能にするロック部19が付設されている。このロック部19は、ランナー部材12又は戸板取付部材13のいずれか一方に連結されるアーム部191と、このアーム部191に連設されドライバー駆動式歯車17の歯車部17aに係合する係合部192と、を有する。アーム部191は、可撓性を有し、ドライバーTの先端部が操作孔18に挿入されていない状態において係合部192をドライバー駆動式歯車17の歯車部17aに係合するよう押圧する。歯車部17aの歯と歯の間に係合部192が入り込んだ状態で、ガタツキ(バックラッシ)があるが、このガタツキによる支軸16の回転遊びは数度以内に抑制される。
【0038】
また、係合部192が歯車部17aの歯の上に位置する場合には、 歯車部17aに係合部192が嵌合しないため支軸16が回転する可能性があるが、この場合であっても、歯車部17aの歯車が8枚であること、歯車同士の間の面には傾斜が設けられていることから、支軸16の回転は1/8回転以内に抑えられる。雄ねじ部16aのピッチは1mmであるから、このような支軸16の回転による連結距離の変動は1/8mm程度であり、無視しうる。ドライバーTの先端部が操作孔18に挿入されると係合部192及びアーム部191がドライバーTに押圧されてアーム部191が撓み、係合部192がドライバー駆動式歯車17の歯車部17aから退避して係合が解除される。この状態において、アーム部191がその復元力によりドライバーTを歯車部17に押し付けるから、ドライバーTからの駆動を支軸16にスムーズに伝えることができる。
【0039】
図3中の部分拡大図に示すように、係合部192は、ドライバー駆動式歯車17の歯車部17aに係合している状態において歯車部17aの板面に対して垂直な係合面192aと、操作孔18に挿入されるドライバーTの先端部で押動される係合面192aが歯車部17aから退避している状態においてドライバーTの軸方向に垂直にドライバーTに当接する当接面192bと、を有する。
【0040】
図3に示すように、着脱ホルダ15には、戸板取付部材13の内部であって支軸16の下端の下側に、支軸16が戸板取付部材13に対し相対的に下降する場合に支軸16の下端(歯車部17aの歯の端面)に当接して支軸16の相対的下降を不可とする当接部20を備えている。
【0041】
上記構成の建具用ランナー1によれば、ランナー部材12と戸板取付部材13との連結距離を調整する機構として、支軸16の下端に一体にドライバー駆動式歯車17を備えて支軸16の下端を戸板取付部材13に対し回転自在脱出不能にすると共に、支軸16の上半部とランナー部材12とを螺合構造とし支軸16をランナー部材12に対し螺動自在としたことにより、ドライバーTの先端部をドライバー駆動式歯車17の歯車部17aに噛合しドライバーTを回してドライバー駆動式歯車17を回転することで支軸16を螺動させることができ、ランナー部材12と戸板取付部材13との連結距離を変化させることができる。この構成によれば、該連結距離を調整するための機構部分について、従来に比べて部品点数・加工コストを低減することができ、支軸及び連結距離を調整するための機構部分のランナー部材並びに戸板取付部材への組み付けの容易化が図れる。
【0042】
上記構成の建具用ランナー1によれば、戸板取付部材13にドライバーTの先端部の挿入姿勢が安定する操作孔18を備えたので、ドライバーTの先端部を操作孔18に挿入しドライバーTを回す操作をする際に、ドライバーTの先端部をドライバー駆動式歯車17に良好に噛合した状態を保持できるから、ドライバーTの回転がドライバー駆動式歯車17に円滑に伝わり歯車部17aをこじり損壊する力を無くすことができ、ランナー部材と戸板取付部材との連結距離を調整しやすい。また操作孔18はランナー部材12又は戸板取付部材13のいずれか一方に設ける成形部であり、独立部品として設けるものでないから、部品点数・加工コスト・組付工数を低減することができる。
【0043】
上記構成の建具用ランナー1によれば、ドライバー駆動式歯車17が支軸16と一体に設けられ戸板取付部材13から上方へ離脱不能であり、ランナー部材12が支軸16を螺合により支持する構成であるから、連結距離調整機構について、ランナー部材12と戸板取付部材13と支軸16に対し分離独立した部品を無くすことができ、建具用ランナー1全体としての部品点数を低減し、組み付けの容易化が図れると共にコスト低減が図れる。
【0044】
上記構成の建具用ランナー1によれば、戸板取付部材13の内部において支軸16と一体にドライバー駆動式歯車17の歯車部17aに係合して回転不能とするロック部を備えたので、ガイドローラ11がガイドレールRに係合し走行し戸板Dを開閉する際に生じる振動がドライバー駆動式歯車17に長期間にわたり繰り返し作用しても該ドライバー駆動式歯車17が回転することが無くランナー部材12と戸板取付部材13との連結距離が一定に保持される。
【0045】
上記構成の建具用ランナー1によれば、支軸16の下端の下側に、支軸16の相対的下降を不可とする当接部20を備えたので、戸板Dを開閉する際に生じる衝撃や振動が戸板Dを持ち上げるように作用すると、当接部20が支軸16の下端に当接し戸板取付部材13に対し支軸16の相対的下降を不可とするから、戸板Dの跳ね上がりを防止できる。
【0046】
上記構成の建具用ランナー1によれば、ロック部が、戸板取付部材13の内部に位置するように着脱ホルダ15に差込式に設けたアーム部191と、このアーム部191に連設された係合部192とを備えてなるので、支軸16を着脱ホルダ15に取り付けてからロック部を取り付けてドライバー駆動式歯車17の回転をロックすることができる。そして、ドライバーTの先端部を操作孔18に挿入すると、ドライバーTの先端部がアーム部191を押し退けるので係合部192がドライバー駆動式歯車17の歯車部17aから離脱しロック解除が行われるから、ドライバーTを回してドライバー駆動式歯車17を回転させることができ、ランナー部材12と戸板取付部材13との連結距離を変更できる。この変更後、ドライバーTを操作孔18から抜くと、ロック部の係合部192がドライバー駆動式歯車17の歯車部17aに係合しドライバー駆動式歯車17の回転を再びロックする。
【0047】
上記構成の建具用ランナー1によれば、戸板取付部材13が、固定ホルダ14と着脱ホルダ15とからなり、ロック部19が着脱ホルダ15に水平に設けた小径孔に差込まれ、先端の脱出防止爪で嵌着して取り付けられる構成であるので(図7)、固定ホルダ14と着脱ホルダ15とを分離して戸板取付部材13の内部を開放し、ガイドローラ11を有するランナー部材12と支軸16と着脱ホルダ15とを組立体とし、該組立体の着脱ホルダ15にロック部19を組み付け、該着脱ホルダ15を戸板Dに固定した固定ホルダ14に組み付けることができ、組付が容易である。
【0048】
上記構成の建具用ランナー1によれば、ドライバーTの先端部を操作孔18に挿入させると、ドライバーTの先端部が係合部192の当接面192bに当接停止し、この状態で該ドライバーTの先端部がドライバー駆動式歯車17の歯車部17aに適切に噛合すると共に、係合面192aがドライバー駆動式歯車17の歯車部17aとの噛合を離脱する。そのため、ドライバーTの先端部を操作孔18に挿入させるワンタッチ操作により、ドライバーTの先端部とドライバー駆動式歯車17との適切な噛合及びドライバー駆動式歯車17のロック解除を行うことができる。
【0049】
〔第2の実施形態〕
図11から図13は、本発明の第3の実施形態に係る建具用ランナーを示す。
図11は、建具用ランナーを示す縦断面図であって、ランナー部材と戸板取付部材との連結距離を調整する様子を示す図である。図12は、図11におけるXII−XII断面図、図13は、図11の建具用ランナーの使用状態を示す縦断正面図である。
【0050】
この実施形態に係る建具用ランナー1Aは、第1の実施形態に係る建具用ランナー1のロック部と相違するロック部19Aを有する。建具用ランナー1Aの他の構成は第1の実施形態に係る建具用ランナー1と同一であるので、各構成要素について第1の実施形態と同一の符号を付し、説明は省略する。
【0051】
この実施形態に係るロック部19Aは、固定ホルダ14に設けられ、より詳細には、戸板Dの跳ね上がりを防止するための当接部20Aに設けられている。ロック部19Aは、固定ホルダ14に着脱ホルダ15を組み付けることで、図11,図12に示すように、係合部192がドライバー駆動式歯車17の歯車部17aの歯と歯の間に挟入しドライバー駆動式歯車17の回転をロックし、かつ、支軸16が着脱ホルダ15に対して相対的下降を不可となるように、歯車部17aの下側に近接する。
【0052】
この実施形態に係るロック部19Aは、ドライバーTの先端部を操作孔18に挿入すると、ドライバーTの先端部により係合部192の当接面192bが押されてアーム部191が撓み、係合部192がドライバーTの先端延長方向に押し出されドライバー駆動式歯車17の歯車部17aから離脱すると共に、ドライバーTの先端部が歯車部17aに噛合する(図13)。ドライバーTの先端部を操作孔18から引き抜くと、係合部192がドライバー駆動式歯車17の回転をロックする位置に復帰する。
【0053】
〔第3の実施形態〕
図14は、本発明の第3の実施形態に係る建具用ランナーを示す。
この実施形態に係る建具用ランナー1Bは、第1の実施形態と同様に、ランナー部材12Bと、戸板取付部材13Bと、ランナー部材12Bと戸板取付部材13Bとを連結する支軸16Bとを有する。
【0054】
ランナー部材12Bと戸板取付部材13Bとの連結距離を調整する機構は、ランナー部材12Bの内部にドライバー駆動式歯車17Bを回転可能・軸方向移動不能に備え、このドライバー駆動式歯車17Bに形成した雌ねじ部と支軸16Bの上半部に設けた雄ねじ部とが螺合し、支軸16Bの下端部が着脱ホルダ15に固定された構成であるから、ドライバーTの先端部をドライバー駆動式歯車17Bの歯車部に噛合しドライバーTを回してドライバー駆動式歯車17Bを回転させることにより支軸16Bがランナー部材12Bに対し軸方向に相対的移動し、ランナー部材12Bと戸板取付部材13Bとの連結距離を調整できる。
【0055】
この実施形態に係る建具用ランナー1Bは、ランナー部材12Bにドライバー駆動式歯車17Bを備えたことに対応し、ドライバーTの先端部を外部から前記ドライバー駆動式歯車17Bに噛合する位置へ挿入した際にこの挿入状態を保持する操作孔18Bをランナー部材12Bに備えている。
【0056】
この実施形態に係る建具用ランナーにおいても、支軸16Bの下端の下側に、支軸16Bが戸板取付部材13Bに対し相対的に下降する場合に支軸16Bの下端に当接して支軸16Bの相対的下降を不可とする当接部(図示省略)を固定ホルダ14Bに備えている。
【0057】
以上のように、本発明の建具用ランナーは、ドライバーを回してドライバー駆動式歯車を回転することにより支軸を着脱ホルダまたはランナー部材に対して軸方向に移動させる という連結距離調整機構に特徴があり、上記の実施形態に限定されるものでない。例えば、ランナー部材の内部でおいて支軸にドライバー駆動式歯車を一体に備え、支軸の下端部を着脱ホルダに対し離脱不能かつ回転可能に連結し、支軸の下半部に雄ねじ部を形成しこの雄ねじ部を着脱ホルダに形成する雌ねじ部に螺合した構成としても良い。
本発明の建具用ランナーは、ランナー部材を連結部材に対して首振り自在に連結することにより、引戸のみならず折戸にも適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1,1A,1B 建具用ランナー
F 戸枠
D 戸板
R ガイドレール
T ドライバー
11 ガイドローラ
12,12B ランナー部材
13,13B 戸板取付部材
14,14B 固定ホルダ
15 着脱ホルダ
16,16B 支軸
17,17B ドライバー駆動式歯車
17a 歯車部
18,18B 操作孔
19,19A ロック部
191 アーム部
192 係合部
192a 係合面
192b 当接面
20 当接部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸枠の上縁に設けられたガイドレールに係合し走行するガイドローラを有するランナー部材と、
戸板の上端角部に固定される戸板取付部材と、
前記ランナー部材と前記戸板取付部材とを連結する支軸と、を有し、
前記支軸は、一端にドライバーの先端部と噛合し該ドライバーを回すことで回転するドライバー駆動式歯車を備え、前記ランナー部材又は前記戸板取付部材のいずれか一方にねじ部を介して軸方向移動可能に連結されると共に他方に引抜き不能に連結され、
前記ドライバー駆動式歯車をドライバーで回転させることにより前記ランナー部材と前記戸板取付部材との連結距離が変化する、
ことを特徴とする建具用ランナー。
【請求項2】
前記ランナー部材又は前記戸板取付部材のいずれか一方に、ドライバーの先端部を外部から前記ドライバー駆動式歯車に噛合する位置へ挿入した際にこの挿入状態を保持する操作孔を有する、請求項1に記載の建具用ランナー。
【請求項3】
前記ランナー部材と前記支軸の上部とが螺合することで前記ランナー部材が前記支軸を支持し、
前記支軸の下部は前記戸板取付部材に軸回転可能に連結され、
前記支軸の下端に前記ドライバー駆動式歯車を一体的に備え、
前記戸板取付部材に前記操作孔が前記戸板取付部材の戸板側端面から内部へ水平に設けられた、請求項2に記載の建具用ランナー。
【請求項4】
前記ランナー部材又は前記戸板取付部材のいずれか一方に取り付けられ、前記ドライバー駆動式歯車の歯車部に係合して回転不能とするロック部を有する、請求項1から3のいずれかに記載の建具用ランナー。
【請求項5】
前記戸板取付部材の内部であって前記支軸の下端の下側に、前記支軸が前記戸板取付部材に対し相対的に下降する場合に前記支軸の下端に当接して前記支軸の前記相対的下降を不可とする当接部を備えた、請求項1から4のいずれかに記載の建具用ランナー。
【請求項6】
前記ロック部が、前記ランナー部材又は前記戸板取付部材のいずれか一方に連結されるアーム部と、このアーム部に連設され前記ドライバー駆動式歯車の歯車部に係合する係合部と、を有し、
前記アーム部が、可撓性を有し、ドライバーが前記操作孔に挿入されていない状態において前記係合部を前記ドライバー駆動式歯車の歯車部に係合するよう押圧する一方、ドライバーが前記操作孔に挿入されると前記アーム部がドライバーに押圧されて撓み、前記係合部が前記ドライバー駆動式歯車の歯車部から退避して係合が解除される、請求項4に記載の建具用ランナー。
【請求項7】
前記戸板取付部材が、前記戸板に固定される固定ホルダと、この固定ホルダに対して着脱自在であって前記支軸を介して前記ランナー部材に連結された着脱ホルダとからなり、
前記回転ロック部が、前記着脱ホルダに取り付けられる、請求項4に記載の建具用ランナー。
【請求項8】
前記係合部が、前記ドライバー駆動式歯車の前記歯車部に係合している状態において該歯車部の板面に対して垂直な係合面と、ドライバーの先端部が前記操作孔に挿入されドライバーの先端部に押動され前記係合面が前記歯車部から退避している状態においてドライバーの軸方向に垂直にドライバーに当接する当接面と、を有する、請求項6に記載の建具用ランナー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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