説明

建具用芯材及びこれを用いた建具

【課題】 ホルマリン規制のなされた合板を用いた芯材からなる建築用建具にあっても、ヒラタキクイ虫などによる害虫被害を充分に防止する。
【解決手段】 合板の少なくとも片面に、防虫剤を含浸してなる紙又は不織布を貼着した建具用芯材、及びこの建具用芯材に化粧版を貼り付けた内装ドアなどの建具を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建具用の芯材に関する。本発明の建具用芯材は防虫作用及び害虫の抑制作用があり建築用の木材、特に建築用内装建具の芯材に巣くうヒラタキクイ虫など、木材を喰う害虫を駆除する。また、本発明はこの芯材を用いた建具、特に内装ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅の洋風化が進みこれに伴い内装ドアなど、芯材を組み立てた枠に化粧版を貼り付けた建具が広く用いられている。図1は従来の内装ドアを示す一部破断斜視図である。この内装ドア10の作製にあたっては、所定の寸法に裁断した芯材1を組み立て、その外側に矩形の外枠材2を取り付けてドアの骨組みを形成する。最後に、この骨組の両面に化粧板3を張り付けて内装ドア10が完成する。
このような芯材1を作製するには、適当な積層枚数の合板を単独で用いるかあるいは貼り合わせて、必要な厚みの積層した合板をまず製造する。ついで、この積層した合板を所定の幅に裁断(小割り)し、適当な長さに切断して規格のドア用芯材を作製する。
【0003】
従来、このような芯材用の合板の製造に用いられる接着剤としては、尿素樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系などの接着剤が代表的であるが、これらの接着剤の使用により合板から微量のホルマリン(ホルムアルデヒド)が発生し環境汚染、特にシックハウス症候群と称される環境被害を生ずる場合があった。このため、住宅内部の表面材などに用いられる接着剤は、ホルマリンの放出のないものを使用するよう建築基準があらためられ、また表面材以外でも環境汚染の懸念がない材料を用いることが勧められている。
一方、このようなホルマリンの放出は、合板に生息し或いは産卵されたヒラタキクイ虫など木材の害虫の駆除或いは活動の抑制に寄与していた。前記のとおり、環境対策のためホルマリン規制が行われるに至り、逆に害虫による芯材の被害の拡大の懸念が極めて大きい。
【0004】
【特許文献1】特開平11−42604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らはホルマリン規制に伴う芯材の害虫被害を防止すべく種々検討を行った結果、合板に防虫剤を含浸した紙、不織布を貼り合わせることにより前記課題を達成することができるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は合板の少なくとも片面に、防虫剤を含浸してなる紙又は不織布を貼着してなる建具用芯材を提供するものである。本発明の建具は典型的にはドアである。また、本発明は請求項1の芯材に化粧版を貼り付けてなる建具、特に内装ドアに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ホルマリン規制のなされた合板を用いた芯材からなる建築用建具にあっても、ヒラタキクイ虫などの害虫被害を充分防止することができる。
【発明の詳細な記述】
【0008】
図2は本発明の芯材を作製するところを示す説明図である。まず、合板11の片面に接着剤12を塗布し(a)、これに和紙13を貼り付ける(b)。ついで、この和紙13に対してローラにより防虫剤14の溶液を含浸塗布する(c)。
上記の合板11としては、通常の建具内部の芯材用の合板がいずれも用いられてよい。また合板に貼り付けられる紙は、和紙のほか、所定の強度を備える洋紙、不織布、合成繊維混抄紙などが用いられてもよい。これら合板と紙類とを貼り合わせる接着剤としては酢酸ビニル重合体など木工用の接着剤として公知の接着剤をいずれも用いることができる。
前記防虫剤としては、駆除する害虫に応じて適宜の木材用の防虫剤が用いられてよい。通常、合板に用いられるラワン材には、ヒラタキクイ虫などが巣くっていることが多い。このような害虫駆除に用いられる代表的な防虫剤としては、ウッディ(ケミホルツ(株)製)などが挙げられる。
【0009】
防虫剤を紙に含浸させるには、防虫剤を水など適宜の溶媒に分散、溶解し、この溶液を前記のように合板11に貼り付けた紙に塗布、或いは噴霧する。また、紙を防虫剤の溶液に浸漬するか、或いは紙にスプレー、塗布を行うなどして防虫剤が含浸或いは塗布された紙を準備し、この紙を合板に貼り付けてもよい。さらに、まず合板に防虫剤溶液を塗布し、これに紙を貼り付けてもよい。このようにして、和紙などの紙を防虫剤を担持する基材としたことにより、防虫剤の使用コストを低減しつつ優れた防虫効果を得ることができる。
【0010】
つぎに、この合板11の反対面に接着剤12’を塗布し(d)、他の合板11と貼り合わせる(e)。このように張り合わせた複数組の合板11をプレス15に挟み圧着を行う(f)。さらに、貼り合わされた2枚の合板11を所定間隔に設定した回転刃16により裁断(g:小割り)して製品の芯材1を得る(h)。得られた芯材1は、図1に示すように設定された長さに切断されて組み立てられ、外枠材2を取り付けた後、表面の化粧版3を貼り付けて内装ドア10などの建具とする。
【実施例】
【0011】
つぎに、本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明する。
[実施例1]
3層の複層積層合板(厚さ12mm)11の片面に木工用接着剤(酢酸ビニル重合体)12を塗布し(a)、これに和紙(坪量25g/m)13を貼り付けた(b)。一方、防虫剤(ウッディ(ケミホルツ(株)製)1kgを水10リットルに溶解した溶液を調製した。この防虫剤溶液をローラにより前記和紙13上に塗布し含浸した(乾燥付着量10g/m) (c)。ついで、和紙を貼り付けていない合板面に前記木工用接着剤12’を塗布し(d)、同様にして和紙を貼り付け防虫剤を含浸して準備した合板と貼り合わせた(e)(f)。貼り合わされた合板11を所定間隔に設定した回転刃16により裁断(g)して製品芯材1を製造した(h)。得られた合板を常法により裁断し芯材として用いて内装ドアを作成した。このドアからは害虫による被害は見られなかった。
【0012】
[実施例2]
実施例1で用いた防虫剤溶液を和紙(坪量25g/m)にスプレーした。3層の複層積層合板(厚さ12mm)の片面に接着剤(酢酸ビニル重合体系)を塗布し、前記の防虫剤を含浸した和紙を貼り付けた。ついで、和紙を貼り付けていない合板面に前記木工用接着剤を塗布し、同様にして和紙(防虫剤含浸)を貼り付けた合板と貼り合わせた。得られた合板を常法により裁断し芯材として用いて内装ドアを作成した。このドアからは害虫による被害は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明の芯材はホルムアルデヒド規制のなされた合板を材料として内装ドアに用いた場合も充分な防虫効果を呈する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の防虫芯材を用いた内装ドアを示す一部破断斜視図である。
【図2】本発明の芯材の製造方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0015】
1 芯材 2 外枠材 3 化粧板 11 合板 12、12’ 接着剤
13 和紙 14 防虫剤 15 プレス 16 回転刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合板の少なくとも片面に、防虫剤を含浸してなる紙又は不織布を貼着してなる建具用芯材。
【請求項2】
建具がドアである請求項1の建具用芯材。
【請求項3】
請求項1の芯材に化粧版を貼り付けてなる建具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−316430(P2006−316430A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137567(P2005−137567)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(305024721)有限会社南山商店 (2)
【Fターム(参考)】