説明

建具

【課題】ガラスと枠体とが相対変位しても接着剤が損傷され難い建具を提供する。
【解決手段】矩形状に枠組みされて開口を形成する枠体と、前記開口に設けられたガラスと、を有する建具であって、前記枠体は、前記開口を形成する縁部に、見込み方向における一方側から中央に向かって突出し前記ガラスが当接される当接突起を有し、前記ガラスは、周端部が全周に渡り前記枠体と対向して前記開口を覆い、前記当接突起より外周側に間隔を隔てた位置にて、前記枠体と接着剤にて接着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、矩形状に枠組みされた枠体が形成する開口にガラスが設けられた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、矩形状に枠組みされた枠体が形成する開口にガラスが設けられた建具としては、例えば、四周枠状の窓枠本体に窓ガラスが嵌め込まれた固定窓が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような窓ガラスが嵌め込まれた固定窓は、窓枠本体の室内側内周縁に突設した押さえ鍔の室外側面に窓ガラスの周縁室内面を当て付け、押さえ鍔の室外側面に設けられた凹部内に隙間なく充填した接着剤により窓ガラスが押さえ鍔に接着されていることが示されている。
【特許文献1】実開平4−84696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
窓ガラスと押さえ鍔(窓枠本体)とは、材質が異なるため線膨張率が相違するので、温度の変化により、窓ガラスと押さえ鍔とが窓ガラスの面に沿う方向に相対変位し、窓ガラスと押さえ鍔とを接着している接着剤に剪断力が作用する場合がある。このとき、上記従来の固定窓のように、窓ガラスが押さえ鍔の凹部内に隙間なく充填した接着剤により接着されていると、窓ガラスと押さえ鍔とが窓ガラスの面に沿う方向に相対変位した際に、凹部を形成する押さえ鍔の縁により、接着剤が損傷される虞があるという課題がある。
【0004】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ガラスと枠体とが相対変位しても接着剤が損傷され難い建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために本発明の建具は、矩形状に枠組みされて開口を形成する枠体と、前記開口に設けられたガラスと、を有する建具であって、前記枠体は、前記開口を形成する縁部に、見込み方向における一方側から中央に向かって突出し前記ガラスが当接される当接突起を有し、前記ガラスは、周端部が全周に渡り前記枠体と対向して前記開口を覆い、前記当接突起より外周側に間隔を隔てた位置にて、前記枠体と接着剤にて接着されていることを特徴とする建具である。
このような建具によれば、ガラスが当接される当接突起より外周側にてガラスと枠体とを接着している接着剤と当接突起とは間隔が隔てられているので、線膨張率の相違により接着剤に剪断力が作用し変形したとしても、変形した接着剤と当接突起の接触を回避させたり、接触し難くさせることが可能である。このため、当接突起により接着剤が損傷を受けることを防止することが可能である。すなわち、ガラスと枠体とが相対変位しても接着剤が損傷されない建具を提供することが可能である。
【0006】
かかる建具であって、前記ガラスは、前記接着剤より当該ガラスの周縁側に接着されていない領域を有していることが望ましい。
このような建具によれば、たとえガラスの周端が他の部材に当接されていたとしても、接着剤よりガラスの周縁側に空隙を備えることが可能である。このため、線膨張率の相違による剪断変形にて接着剤がガラスの周縁側に変形したとしても、当接された他の部材により接着剤が損傷を受けることを防止することが可能である。
【0007】
かかる建具であって、前記接着剤は、当該接着剤の供給部と前記枠体とが相対移動して所定の位置から供給が開始されるとともに前記開口を囲むように一周して前記所定の位置にて供給が終了され、前記所定の位置は、矩形状に形成された前記枠体における一対のコーナー部分間の直線部分に位置することが望ましい。
接着剤が開口を囲むように一周して矩形状の枠体に供給される場合には、矩形状の直線部分よりコーナー部分に供給する際の方が相対移動の速度が低くなるため、所定面積当たりに供給される接着剤の量がコーナー部の方が多くなる。また、接着剤の供給開始時は供給部内の圧力が上昇している場合があり、接着剤の供給量が多くなる場合がある。このため、コーナー部分を供給開始位置とすると、コーナー部分への供給量が過多となり、供給された接着剤と当接突起との間に空隙が設けられない虞がある。そこで上記建具のように供給開始位置を矩形状の直線部分とすることにより、接着剤の集中を防止し、供給された接着剤と当接突起との間に空隙を備えることが可能である。
【0008】
かかる建具であって、前記所定の位置となる前記枠体の前記直線部分は、前記枠体がなす矩形状の長辺側の前記直線部分であることが望ましい。
線膨張率の相違による接着剤の変形は、部材の長さが長い方が大きく変形する。このため縦横の長さが異なる枠体の場合には、縦と横の長さにおいて長い方が大きく変形する。接着剤は枠体を構成する各枠材の長手方向に沿って供給されており、剪断変形により接着剤が損傷を受ける場合は、供給方向と交差する方向に剪断力が作用する場合である。このため、接着剤が損傷を受ける可能性がある剪断変形は縦と横の長さにおいて短い側が交差する方向に変形する場合なので、短い方の枠材側には接着剤が多く供給されやすい供給開始位置が配置されないように、長い直線部分となる枠材側に供給開始位置を設定することにより、剪断変形に対する耐久性がより高い建具を提供することが可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガラスと枠体とが相対変位しても接着剤が損傷され難い建具を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る建具について図面を参照して説明する。
【0011】
本実施の形態に係る建具1は、図1、図2に示すような、障子が上下方向に移動して室内外を連通する空間を開閉可能な上げ下げ窓を構成する建具1である。以下の説明では、建具1を室内側から見たときに上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向または見付け方向、室内外方向である奥行き方向を見込み方向として示す。また、障子や框体等を単体で説明する場合であっても、障子や框体等が枠体に取り付けられた状態に基づいて、上下方向、室内側、室外側、見付け方向、及び、見込み方向を示す。
【0012】
建具1は、躯体2に取り付けられた窓枠3と、窓枠3の内側の空間における上側の領域を閉塞して移動不能に設けられた固定障子5と、上下方向に移動して下側の領域を開閉自在に設けられた可動障子10と有している。また、固定障子5は見込み方向において窓枠3のほぼ半分から室外側の領域に配置され、可動障子10は窓枠3のほぼ半分から室内側の領域に設けられている。
【0013】
固定障子5及び可動障子10は、樹脂製の押出成形部材である4本の框材6a、11aが、各框材6a、11aの両端部を45度に切断し、互いに異なる框材6a、11aの端部同士を突き合わせて接合されて矩形状の枠体としての框体6、11が形成されている。矩形状をなす框体6、11にて囲まれている開口6b、11dには、ガラス4が設けられている。固定障子5及び可動障子10がガラス4を保持する構造は、同様なので、ここでは可動障子10の框体11を例に挙げて説明する。
【0014】
可動障子10の框体11を構成する各框材11aは、長手方向に連通する中空部を形成する框本体12と、框体11の内周側における室内側の領域に、内周側に突出されて室外側からガラス4が当接されるガラス当接部13と、框体11の内周側であって室外側の領域に凹設され、ガラス当接部13と対向してガラス4を保持するための押縁18が装着される押縁装着部14とを有している。
【0015】
そして、4本の框材11aが矩形状に枠組みされた框体11は、矩形状に繋がった框本体12の内周側に、見込み方向において中央より室内側に突出されたガラス当接部13が全周に渡って形成されており、框体11の内周部における室外側の縁部には各框材11aの長手方向に沿って設けられた溝状の押縁装着部14が全周に渡って設けられている。また、下框10aには室内側に突出させて可動障子10を上下に移動させるための把持部15が設けられている。
【0016】
ガラス4は、室内に臨む面4aの周縁部が框体11のガラス当接部13に全周に渡って当接され、室外に臨む面4bの周縁部が押縁18に当接されている。このとき押縁18の室内側の部位、すなわちガラス4と対向する部位には、軟質の樹脂でなるシール材18aが設けられており、框体11に取り付けられたガラス4は、シール材18aにて当接された押縁18によりガラス当接部13に押圧されて、押縁18とガラス当接部13とにより挟持されている。また、ガラス4の下端4cと下框(下側の框材)10aの上面11bとの間、及び、ガラス4の左右の端部4dと左右の縦框(左右の框材)10bの内側面11cとの間には、ガラス4の上下方向の位置及び見付け方向の位置を決めるためのセッティングブロック19が介在されている。
【0017】
ガラス当接部13は、図3に示すように、框体11が形成する開口11dの内周側の縁部が室外側に僅かに突出されてガラス4が当接される当接突起13aと、框本体12と当接突起13aとの間を繋ぐ室内側壁部13bとを有している。すなわち、室内側壁部13bの室外側面13cは、当接突起13aの室外側の縁より僅かに室内側に位置しており、室内側壁部13bの室外側面13cとガラス4との間には、接着剤20が介在されてガラス4が框体11に接着されている。
【0018】
接着剤20は、例えば、湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤やUV併用反応性ホットメルト接着剤であり、矩形状をなす框体11における室内側壁部13bの室外側面13cに接着剤20が供給された状態でガラス4が当接突起13aに当接されて接着される。このため、ガラス4と室外側面13cとの間に介在された状態における接着剤20の厚みは、室内側壁部13bの室外側面13cより当接突起13aが室外側に突出している高さに揃えられている。
【0019】
框体11にガラス4が接着された状態で、接着剤20と当接突起13aとは上下方向に間隔が隔てられており、接着剤20と当接突起13aとの間には空隙22が設けられている。また、ガラス4の外周端部には、接着剤20より外周側、すなわち接着剤20にて接着された領域4eより外周側に、接着されていない領域4fが設けられている。このため、他の部材の一例としての例えばセッティングブロック19などがガラス4より室内側に突出されていたとしても、接着剤20とセッティングブロック19との間にも空隙24が設けられている。
【0020】
ガラス4を框体11に接着している接着剤20は、図4に示すように、接着剤20を供給するための接着剤供給部としてのノズル30と框体11とが相対移動しつつノズル30から接着剤20を吐出させて框体11に供給される。具体的には、例えば、まず矩形状に形成された框体11を室内側壁部13bの室外側面13cが上方を向くように配置する。次に、框体11の長手方向、すなわち、縦と横との長さのうち長い方の框材(本実施形態では縦框)10bの室外側面13cにノズル30が位置するように配置する。このとき、ノズル30は縦框10bの長手方向における中央付近に配置される。また、ノズル30から供給される接着剤20が框体11の内周側の縁、すなわち各框材11aの当接突起13aから離れた位置に供給されるようにノズル30を配置する。このときノズル30が配置された位置が接着剤20の供給開始位置及び供給終了位置(以下、供給開始終了位置という)Xとなる。
【0021】
その後、ノズル30から一定の速度にて接着剤20を供給しつつ、ノズル30を当接突起13aと間隔を隔てるとともに当接突起13aに沿うように相対移動させる。このとき、矩形状の角部では速度を落としてノズル30を移動させる。ノズル30が当接突起13aに沿って一周して、供給開始終了位置Xに戻ったらノズル30の移動を停止させるとともに接着剤20の供給も停止する。
【0022】
上記実施形態の建具1によれば、ガラス4が当接される当接突起13aより外周側にてガラス4と框体11とを接着している接着剤20と当接突起13aとは、間隔が隔てられているので、ガラス4と框材11aとの線膨張率の相違により接着剤20が、例えば図5のように剪断変形したとしても、接着剤20の変形を当接突起13aと接着剤20との間の空隙22にて吸収させることが可能である。このため、たとえ接着剤20が当接突起13a側に変形しても接着剤20は当接突起13aと接触し難いので、当接突起13aにより接着剤20が損傷を受けることを防止することが可能である。すなわち、ガラス4と框体11とが相対変位しても接着剤20が損傷され難い建具1を提供することが可能である。
【0023】
また、ガラス4の周縁がセッティングブロック19等のような他の部材に当接されていたとしても、ガラス4の接着剤20より周縁側に空隙24を備えているので、ガラス4と框材11aとの線膨張率の相違による剪断変形にて接着剤20がガラス4の周縁側に変形しても、当接された他の部材により接着剤20が損傷を受けることを防止することが可能である。
【0024】
上述したように、接着剤20は開口11dを囲むように一周して矩形状の框体11に供給され、矩形状の直線部分よりコーナー部分に供給する際の方が相対移動の速度を遅いので、所定面積当たりに供給される接着剤20の量は図6に示すようにコーナー部分の方が多くなる。また、接着剤20の供給開始時はノズル30及びノズル30に繋がったホース(不図示)内の圧力が高まっている場合が多いため、供給開始時も接着剤20の供給量が多くなる場合がある。さらに、接着剤20の供給開始位置は、供給終了位置でもあるため、供給開始時に吐出された接着剤20の上に供給終了直前の接着剤吐出されることになり、さらに接着剤20が多く供給される可能性が高い。このため、供給開始終了位置Xを矩形状の框体11における一対のコーナー部分間に位置する直線部分とすることにより、接着剤20がさらにコーナー部分に集中することを防止して、供給された接着剤20と当接突起13aとの間の空隙22が埋められてしまうことを防止することが可能である。
【0025】
また、ガラス4と框材11aとの線膨張率の相違による接着剤20の変形は、框材11aの長さが長い方が大きく変形する。このため縦横の長さが異なる框体11の場合には、縦と横の長さにおいて長い方が大きく変形する。接着剤20は框体11を構成する各框材11aの長手方向に沿って供給されているので、接着剤20が当接突起13にて損傷されるような剪断変形は、供給方向と交差する方向に生じる。すなわち、接着剤20の剪断変形は縦と横の長さにおいて短い方が大きく変形するので、短い方の框材11a側には接着剤20が多く供給されやすい供給開始終了位置Xが配置されないように、長い直線部分となる框材11a側に供給開始終了位置Xを設定することにより、剪断変形に対する耐久性がより高い建具1を提供することが可能である。このとき、接着剤20の供給開始終了位置Xを、框体11の縦横の長さが長い方の縦框10bの長手方向における中央付近としたので、供給開始終了位置Xに供給された接着剤20とコーナー部分に供給された接着剤20とが混ざりあって広がることを防止することが可能である。
【0026】
上記実施形態においては、建具1を上げ下げ窓を構成する建具としたが、これに限らず、引き違い窓、片引き窓、スイング式の窓、FIX窓など、ガラスの周端部が枠状の部材に接着される建具であれば構わない。
【0027】
また、上記実施形態においては、ガラスが枠体としての框体に接着されている例について説明したが、ガラスは窓枠などの枠体に接着されていても良い。
【0028】
また、ガラス4を接着する接着剤20を供給する際には、ノズル30を固定して框体11等の部材を移動しつつ接着剤20を供給しても良い。また、接着剤20は框などの枠状の部材に供給することなく、ガラス側に供給しても良い。
【0029】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態に係る建具を縦断面図である。
【図2】本実施形態に係る建具の水平断面図である。
【図3】框体とガラスとの接合部を示す断面図である。
【図4】框体に接着剤を供給する方法を説明するための模式図である。
【図5】接着剤が剪断変形した状態を説明するための断面図である。
【図6】框体に供給された接着剤の状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0031】
1 建具、4 ガラス、6 框体、6a 框材、6b 開口、10 可動障子、
10b 縦框、11 框体、11a 框材、11d 開口、13 ガラス当接部、
13a 当接突起、20 接着剤、22 空隙、24 空隙、30 ノズル、
X 供給開始終了位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状に枠組みされて開口を形成する枠体と、
前記開口に設けられたガラスと、を有する建具であって、
前記枠体は、前記開口を形成する縁部に、見込み方向における一方側から中央に向かって突出し前記ガラスが当接される当接突起を有し、
前記ガラスは、周端部が全周に渡り前記枠体と対向して前記開口を覆い、前記当接突起より外周側に間隔を隔てた位置にて、前記枠体と接着剤にて接着されていることを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具であって、
前記ガラスは、前記接着剤より当該ガラスの周縁側に接着されていない領域を有していることを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の建具であって、
前記接着剤は、当該接着剤の供給部と前記枠体とが相対移動して所定の位置から供給が開始されるとともに前記開口を囲むように一周して前記所定の位置にて供給が終了され、
前記所定の位置は、矩形状に形成された前記枠体における一対のコーナー部分間の直線部分に位置することを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項3に記載の建具であって、
前記所定の位置となる前記枠体の前記直線部分は、前記枠体がなす矩形状の長辺側の前記直線部分であることを特徴とする建具。

【図4】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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