説明

建具

【課題】外観品質を損なうことなく障子を開けた状態に維持すること。
【解決手段】一端部を開口枠10に揺動可能に支持させる一方、他端部を障子20の下框22に揺動可能、かつ下框22に沿って移動可能に支持させ、開口枠10に対する障子20の開放位置を制限するリンク部材50と、開口枠10に対して障子20が開移動した場合にリンク部材50の他端部に設けたスライドピン52を着脱可能に収容するピン収容溝64を有したピン保持体60と、スライダ40を介して操作ハンドル30に連係したストッパ片70とを備え、ピン保持体60は、ピン収容溝64にスライドピン52が収容された状態でストッパ片70が係合位置に配置された場合にスライドピン52の逸脱を阻止する一方、ストッパ片70が非係合位置に配置された場合にスライドピン52の逸脱を許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口枠に対して障子を開閉可能に配設した建具に関するもので、特に、開口枠に対して障子を開けた状態に維持することのできる建具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術としては、例えば特許文献1に記載のものが提供されている。この建具は、開口枠と障子との間にリンク部材を備えている。リンク部材は、互いにスライド可能に設けた外筒と内筒とを備えるもので、外筒の基端部が開口枠に対して揺動可能に支持されている一方、内筒の基端部が障子に揺動可能に支持されている。外筒と内筒との間には、ストッパ手段が設けられている。ストッパ手段は、外筒と内筒との相対移動を制限するもので、例えば外筒の先端部に設けられている。
【0003】
この建具では、ストッパ手段を解除操作した状態であれば、外筒と内筒とが相対的にスライドすることによってリンク部材の全長が延びるため、開口枠に対して障子を開移動させることができる。一方、障子が所定の開放位置にある状態でストッパ手段を操作し、これを機能させれば、外筒と内筒との相対移動が阻止され、リンク部材の全長が短くならない。従って、風を受ける等、障子に対して閉める方向に外力が加えられた場合にも、障子を開けた状態に維持することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平5−4531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、開口枠に対して障子の開放位置を制限するリンク部材は、開口枠に対して障子が開移動した場合、外部に露出された状態とならざるを得ず、これに付設されるストッパ手段も外部に露出されることになる。特に、リンク部材の中間部に構成されたストッパ手段については、障子を開放した場合、外部からもっとも視認しやすい位置に配置されることになる。このため、特許文献1の建具にあっては、外観品質を考慮した場合、必ずしも好ましいとはいえない。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、外観品質を損なうことなく障子を開けた状態に維持することのできる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、開口枠に対して障子を開閉可能に配設した建具において、一端部を前記開口枠に揺動可能に支持させる一方、他端部を前記障子の框に揺動可能、かつ前記框に沿って移動可能に支持させ、前記開口枠に対する前記障子の開放位置を制限するリンク部材と、開状態及び閉状態に切り替え可能に構成し、開状態においては前記リンク部材のスライドを許容する一方、閉状態においては前記框に対する前記リンク部材のスライドを阻止するストッパ手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、ストッパ手段として框に対するリンク部材のスライドを阻止するものを適用している。従って、ストッパ手段を外部から視認できない位置に構成することもきわめて容易である。
【0009】
また、本発明は、上述した建具において、前記障子は、框に設けた操作ハンドルの閉位置への操作により前記開口枠に対する開移動が阻止される一方、前記操作ハンドルの開位置への操作により前記開口枠に対して開移動可能となるように構成し、前記操作ハンドルと前記ストッパ手段との間には、互いの間を連係し、前記操作ハンドルが閉位置に配置された場合に前記ストッパ手段を閉状態に移行させる一方、前記操作ハンドルが開位置に配置された場合に前記ストッパ手段を開状態に移行させる連係手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、框に設けた操作ハンドルを操作することによってストッパ手段の操作を行うようにしているため、ストッパ手段の操作性が良好となる。
【0011】
また、本発明は、上述した建具において、前記ストッパ手段は、前記開口枠に対して前記障子が開移動した場合に前記リンク部材の他端部に設けたスライドピンを着脱可能に収容するピン収容溝を有したピン保持体と、前記框に対して移動可能に配設するとともに、前記連係手段を介して前記操作ハンドルに連係し、前記操作ハンドルが閉位置に移動した場合に係合位置に配置される一方、前記操作ハンドルが開位置に移動した場合に非係合位置に配置されるストッパ片とを備え、前記ピン保持体は、前記ピン収容溝に前記スライドピンが収容された状態で前記ストッパ片が係合位置に配置された場合に前記スライドピンの逸脱を阻止する一方、前記ストッパ片が非係合位置に配置された場合に前記スライドピンの逸脱を許容することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、スライドピンがピン保持体のピン収容溝に収容された状態で操作ハンドルを閉位置に操作すれば、スライドピンのピン収容溝からの逸脱を阻止することで障子を開けた位置に維持することができる。
【0013】
また、本発明は、上述した建具において、前記ピン保持体は、前記框に対して移動可能に配設し、前記係合位置に配置されたストッパ片に対して係合可能となる係合可能位置と、前記係合位置に配置されたストッパ片との係合状態を解除する係合解除位置との間を移動することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、ピン保持体のピン収容溝にスライドピンが収容されていない状態で操作ハンドルを閉位置に操作した場合にも、スライドピンの移動によってピン保持体が係合解除位置に移動することでストッパ片との係合状態が解除されるため、その後にスライドピンをピン収容溝に収容させることができる。さらに、この状態から障子が閉じる方向に移動すれば、ピン収容溝にスライドピンが収容された状態のピン保持体が係合可能位置に移動する。この結果、ストッパ片がピン保持体に係合し、障子が開いた状態に維持されることになる。
【0015】
また、本発明は、上述した建具において、前記ピン保持体は、前記ピン収容溝の幅を拡開可能に構成し、拡開した場合に前記スライドピンを挿通させるものであり、前記ストッパ片は、前記係合位置に配置された場合に前記ピン収容溝の拡開を阻止することによって前記スライドピンの逸脱を阻止することを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、ストッパ片が係合位置に配置された場合、ピン収容溝の拡開が阻止され、ピン収容溝に収容されたスライドピンの逸脱が阻止される。
【0017】
また、本発明は、上述した建具において、前記障子は、水平方向に沿った軸心を中心として前記開口枠に回転可能に配設し、前記開口枠に対して下框を外側に突き出すように開移動するものであり、前記操作ハンドルは、前記下框の見込み面に配設し、かつ前記障子の見込み方向に沿った軸心を中心に回転させることによって開位置と閉位置との間を移動するものであり、前記リンク部材は、前記下框の下面と前記開口枠の下枠との間に設けたものであることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、下框の下面にストッパ手段が配設されることになり、障子が開いた状態においても、下框によってストッパ手段を覆い隠すことが可能となり、その外観品質を維持することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ストッパ手段として框に対するリンク部材のスライドを阻止するものを適用しているため、リンク部材が外部に露出した状態においてもストッパ手段を外部から視認できない位置に構成することが容易である。また、連係手段を設ければ、框に設けた操作ハンドルを操作することによってストッパ手段の操作も行うことができるため、ストッパ手段の操作性が損なわれる恐れもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である建具を室内側から見た正面図である。
【図2】図2は、図1に示した建具の障子が開いた状態を室内側から見た斜視図である。
【図3】図3は、図1に示した建具において障子が閉じ、かつ操作ハンドルが閉位置にある状態の要部拡大正面図である。
【図4−1】図4−1は、図3に示した建具の障子を下方から見た概念図である。
【図4−2】図4−2は、図4−1に示した建具の要部拡大平面図である。
【図5】図5は、図1に示した建具において障子が開き、かつ操作ハンドルが開位置にある状態の要部拡大正面図である。
【図6−1】図6−1は、図4−1に示した状態から操作ハンドルを開位置に移動させた際の障子を下方から見た概念図である。
【図6−2】図6−2は、図6−1に示した建具の要部拡大平面図である。
【図7−1】図7−1は、図6−1に示した状態から障子を開けた際の障子を下方から見た概念図である。
【図7−2】図7−2は、図7−1に示した建具の要部拡大平面図である。
【図8−1】図8−1は、図7−1に示した状態から障子がさらに開いた際の障子を下方から見た概念図である。
【図8−2】図8−2は、図8−1に示した建具の要部拡大平面図である。
【図9−1】図9−1は、図8−1に示した状態から操作ハンドルを閉位置に移動させた際の障子を下方から見た概念図である。
【図9−2】図9−2は、図9−1に示した建具の要部拡大平面図である。
【図10】図10は、図1に示した建具において障子が開き、かつ操作ハンドルが閉位置にある状態の要部拡大正面図である。
【図11−1】図11−1は、図10に示した障子を下方から見た概念図である。
【図11−2】図11−2は、図11−1に示した建具の要部拡大平面図である。
【図12−1】図12−1は、障子が開き、かつスライドピンがピン保持体のピン収容溝に到達する以前に操作ハンドルを閉位置に移動させた状態の要部拡大平面図である。
【図12−2】図12−2は、図12−1に示す状態から障子がさらに開いた際の要部拡大断面図である。
【図12−3】図12−3は、図12−2に示す状態から障子がわずかに閉じた際の要部拡大断面図である。
【図13】図13は、図1に示した建具の変形例を室内側から見た正面図である。
【図14】図14は、図13に示した建具の要部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
図1及び図2は、本発明の実施の形態である建具を示したものである。ここで例示する建具は、開口枠10に対して水平方向に沿った軸心を中心として障子20が回転可能に配設してあり、開口枠10に対して下框22を外側に突き出すように開移動するようにした、いわゆる突き出し窓、あるいはすべり出し窓である。開口枠10は、上枠11、下枠12及び左右一対の縦枠13を四周枠組みすることによって構成した矩形状を成すものである。障子20は、上框21、下框22及び左右一対の縦框23a,23bを四周框組みし、さらにこれらの框21,22,23a,23bの間にガラス板等の面材24を支持させて構成したものである。この障子20には、下框22において上面となる見込み面の中央部に操作ハンドル30が取り付けてあるとともに、下框22及び一対の縦框23a,23bにスライダ(連係手段)40が配設してある。
【0023】
操作ハンドル30は、障子20の見込み方向に沿った軸心を中心に回転させることにより、開位置と閉位置との間を移動し、その出力部31が下框22の長手方向に沿って移動するものである。本実施の形態では、図1中の実線で示した状態が操作ハンドル30の閉位置であり、図1中の二点鎖線で示した状態が操作ハンドル30の開位置である。操作ハンドル30の出力部31は、操作ハンドル30が閉位置に配置された場合、下框22に対してもっとも左側となる位置に配置され、操作ハンドル30が開位置に配置された場合、下框22に対してもっとも右側となる位置に配置される。
【0024】
スライダ40は、下框22の下面から一対の縦框23a,23bの下端部に至る部位に図示せぬガイドを介して配設し、個々の框22,23の長手方向に沿ってスライド可能となる一連のもので、下框22の下面において操作ハンドル30の出力部31に係合している。図には明示していないが、下框22とそれぞれの縦框23a,23bとの会合部に配置されたスライダ40は、弾性的に屈曲した状態にあり、下框22に沿って配置されたスライダ40が左右方向にスライドした場合に、縦框23a,23bに沿って配置されたスライダ40をそれぞれ上下方向に沿ってスライドさせることが可能である。より具体的に説明すると、操作ハンドル30の出力部31が図1において左方に移動した場合、下框22に沿って配置したスライダ40が左方にスライドし、図1において左方に位置する縦框(以下、区別する場合に「左縦框23a」という)に沿って配置したスライダ40が上方にスライドし、図1において右方に位置する縦框(以下、区別する場合に「右縦框23b」という)に沿って配置したスライダ40が下方にスライドする。同様に、操作ハンドル30の出力部31が図1において右方に移動した場合、下框22に沿って配置したスライダ40が右方にスライドし、左縦框23aに沿って配置したスライダ40が下方にスライドし、右縦框23bに沿って配置したスライダ40が上方にスライドする。
【0025】
スライダ40には、それぞれの端部に錠装置45が連結してある。錠装置45は、開口枠10の縦枠13と障子20の縦框23a,23bとの間に構成され、スライダ40がスライドした場合に開口枠10と障子20との間を解錠状態と施錠状態とに切り替えるものである。図には明示していないが、錠装置45としては、例えばスライダ40の端部にロックピンを配設する一方、縦枠13の対応する部位にロックプレートを配設することによって構成することができる。すなわち、操作ハンドル30が閉位置に操作された場合にロックプレートに対してロックピンを開口枠10の見込み方向に対向させれば、ロックピンがロックプレートに当接することで、開口枠10に対する障子20の開移動を阻止した施錠状態となる。これに対して操作ハンドル30が開位置に操作された場合、ロックプレートに対してロックピンを開口枠10の見込み方向に非対向となる位置まで移動させれば、開口枠10に対する障子20の開移動が可能な解錠状態となる。尚、建具に適用する錠装置45としては、必ずしもこれらの構成に限られることはなく、操作ハンドル30が開位置と閉位置との間を移動した場合に解錠状態と施錠状態とに切り替わるものであれば、その他の構成からなるものを適用しても構わない。
【0026】
一方、この建具には、図3〜図11−2に示すように、障子20にリンク受部材25が設けてあるとともに、開口枠10と障子20との間にリンク部材50が設けてある。リンク受部材25は、下框22の長手方向に沿ったスライド溝25a及び逃げ溝25bを有したもので、下框22に配設したスライダ40を覆った状態で下框22の下面に固定してある。これらスライド溝25a及び逃げ溝25bは、障子20の見込み方向に沿った幅の中央部において下框22の長手方向に互いに並設したものである。より具体的に説明すると、スライド溝25aは、図3においてリンク受部材25の右側に位置する端部から長手方向の中心よりもわずかに左側となる部位にまで形成した比較的長さの大きなスリット状の切欠であり、逃げ溝25bは、スライド溝25aからわずかに距離を離してリンク受部材25の左側に位置する端部に形成した比較的長さの小さいスリット状の切欠である。
【0027】
リンク部材50は、開口枠10に対して障子20を開移動させた場合にこれら開口枠10と障子20との間に介在することにより、開口枠10に対する障子20の開放位置を制限するものである。本実施の形態では、図3〜図11−2に示すように、下枠12の上面と下框22の下面との間に単一の部材からなるリンク部材50を設けるようにしている。リンク部材50の一端部は、上下方向に沿った支持ピン51を介して下枠12に取り付けてあり、支持ピン51の軸心を中心に下枠12に対して揺動することが可能である。これに対してリンク部材50の他端部は、上下方向に沿ったスライドピン52を有しており、このスライドピン52をリンク受部材25のスライド溝25aに挿通させることにより、スライドピン52の軸心を中心に下框22に対して回転可能、かつスライド溝25aに沿って移動可能に支持させてある。
【0028】
開口枠10に対して障子20を完全に閉めた場合、リンク部材50は、下枠12と下框22との間において下框22の長手方向に沿って配置され、スライドピン52が図3においてリンク受部材25のスライド溝25aにおいてもっとも右側となる部位に配置される。開口枠10に対して障子20を開移動させると、リンク部材50は、支持ピン51及びスライドピン52の軸心を中心として適宜揺動するとともに、スライドピン52が図3においてスライド溝25aを適宜左方に移動し、図2に示すように、開口枠10と障子20との間に掛け渡した状態に配置される。スライドピン52がスライド溝25aのもっとも左側に配置されると、スライドピン52の移動が阻止され、開口枠10に対する障子20の開放位置が制限されることになる。
【0029】
図3〜図11−2に示すように、リンク受部材25と下框22に配設したスライダ40との間には、収容空間25Aが構成してあり、この収容空間25Aにピン保持体60及びストッパ片70が配設してある。
【0030】
ピン保持体60は、リンク受部材25に対して下框22の長手方向に沿って移動可能に配設したもので、ガイドピン61及びピン挟持片62を有している。ガイドピン61は、直方体状を成す保持体本体63に上下方向に沿って保持させたもので、その突出端部がリンク受部材25の逃げ溝25bに挿通してあり、リンク受部材25に対するピン保持体60の移動範囲を規定するように機能する。ピン挟持片62は、リンク受部材25のスライド溝25aに対してその上方部を覆う大きさに形成した突出部分であり、保持体本体63から図3において右側に突出するように設けてある。ピン挟持片62は、ガイドピン61が逃げ溝25bにおいてスライド溝25aからもっとも離隔した位置に配置された場合にもスライド溝25aにおいて図3のもっとも左側に位置する部分を覆うだけの長さを有している。
【0031】
このピン挟持片62には、ピン収容溝64が形成してある。ピン収容溝64は、ピン挟持片62の突出端部からスライド溝25aに対向するように形成したスリット状の切欠であり、ピン収容部64a、狭幅部64b、導出傾斜面64c及び導入傾斜面64dを有している。ピン収容部64aは、ピン収容溝64のもっとも奥方に設けた部分であり、リンク部材50に設けたスライドピン52の外径にほぼ等しい幅を有して形成してある。狭幅部64bは、ピン収容溝64の開口側に形成した部分であり、通常状態においてはスライドピン52の外径よりも幅の狭い間隔を有して形成してある。導出傾斜面64cは、狭幅部64bの奥側端部からピン収容部64aに向けて漸次幅が広がるように形成した傾斜部分である。導入傾斜面64dは、狭幅部64bの終端部からピン挟持片62の突出端部に向けて漸次幅が広くなるように形成した傾斜部分である。導入傾斜面64dのもっとも先端側に位置する部分は、スライドピン52の外径よりも大きな幅を有するように形成してある。
【0032】
上記のような構成を有するピン保持体60は、例えば弾性に富んだ合成樹脂材によって保持体本体63及びピン挟持片62が一体に成形してあるとともに、ピン挟持片62が保持体本体63に比べて薄肉に形成してあり、外力を加えた場合、ピン収容溝64における狭幅部64bの相互間隔を比較的容易に弾性的に拡開することが可能である。
【0033】
ストッパ片70は、ピン保持体60よりも図3において右側に配置され、リンク受部材25に対して下框22の長手方向に沿って移動可能に配設したもので、スライダ連結部71、スライドピン通過用凹部72及び一対の係合アーム73を有している。スライダ連結部71は、直方体状を成すストッパ片本体74の上面から上方に突出した凸状部である。このスライダ連結部71は、下框22に配設したスライダ40の連結孔41に嵌合することにより、スライダ40がスライドした場合にストッパ片70を連動させるものである。スライドピン通過用凹部72は、ストッパ片本体74の下面においてリンク受部材25のスライド溝25aに対向する部位に形成した凹溝であり、スライド溝25aの長手方向に沿って形成してある。このスライドピン通過用凹部72は、スライドピン52の直径よりも大きな幅を有して形成してあり、リンク受部材25に対してストッパ片70が任意の位置に配置された場合にも、スライド溝25aに沿って移動するスライドピン52がストッパ片70に干渉しないようにするものである。一対の係合アーム73は、リンク受部材25のスライド溝25aに対してその両側となる部位に互いにほぼ平行となるように配設した突出部分である。一対の係合アーム73の相互間隔は、ピン保持体60に設けたピン挟持片62に外力が加えられていない場合に、ピン挟持片62の両側に当接可能となる大きさに構成してある。これら一対の係合アーム73は、ピン保持体60に比べて硬質となる合成樹脂材によってストッパ片本体74と一体に成形してあり、外力を加えた場合にも、容易に拡開することはない。
【0034】
このストッパ片70は、図5に示すように、操作ハンドル30が開位置に配置された場合にリンク受部材25の収容空間25Aにおいてもっとも右側となる部位に位置する(非係合位置)。この状態から操作ハンドル30を閉位置に移動させると、スライダ40を介してストッパ片70が左側に移動する(係合位置)。操作ハンドル30が閉位置に配置された場合、図3及び図4−1、図4−2に示すように、ガイドピン61が逃げ溝25bのもっとも右側に配置された状態(係合可能位置)のピン保持体60に対しては、一対の係合アーム73をピン挟持片62の両側に当接させることが可能である。従って、外力が加えられた場合にもピン挟持片62に形成したピン収容溝64における狭幅部64bの相互間隔を拡開することを阻止することができる(閉状態)。これに対して、ガイドピン61が逃げ溝25bのもっとも左側に配置された状態(係合解除位置)のピン保持体60に対しては、図8−1、図8−2に示すように、一対の係合アーム73をピン挟持片62に接触させることができない。従って、外力を加えることにより、狭幅部64bの相互間隔を拡開することが可能となる(開状態)。
【0035】
上記のように構成した建具では、上述したように、操作ハンドル30を閉位置に配置させた場合、錠装置45が施錠状態となり、開口枠10に対して障子20を閉じた状態に維持することができる。この場合、図3〜図4−2に示すように、スライドピン52がリンク受部材25のスライド溝25aにおいてもっとも右側となる位置に配置された状態にある。またこのとき、ストッパ片70が係合位置に配置され、一対の係合アーム73がピン保持体60のピン挟持片62に当接された状態となっている。
【0036】
この状態から、操作ハンドル30を開位置に配置させると、錠装置45が解錠状態となり、開口枠10に対して障子20を開けることが可能となる。この場合、図6−1、図6−2に示すように、ストッパ片70が非係合位置に移動し、一対の係合アーム73がピン保持体60のピン挟持片62から離隔するため、ピン挟持片62に形成したピン収容溝64の狭幅部64bは、相互間隔を拡開することが可能な状態となる。従って、図7−1〜図8−2に示すように、障子20が開移動するに従ってスライドピン52がスライド溝25aを移動すると、スライドピン52がピン挟持片62の導入傾斜面64dに当接し、その後、狭幅部64bが拡開することでスライドピン52がピン収容溝64のピン収容部64aに収容されることになる。スライドピン52がピン収容溝64のピン収容部64aに到達した時点で狭幅部64bは、弾性復元力によって復帰し、相互間隔がスライドピン52の外径よりも狭い間隔となる。尚、スライドピン52がピン収容部64aに収容された時点においては、スライドピン52によってピン保持体60が左方に移動し、ガイドピン61が係合解除位置に配置された状態にある。
【0037】
スライドピン52がピン保持体60のピン収容部64aに収容された後、操作ハンドル30を閉位置に操作すると、図9−1、図9−2に示すように、ストッパ片70が係合位置に配置された状態となる。従って、この状態から開口枠10に対して障子20をわずかに閉じる方向に移動させると、スライドピン52の移動に伴ってピン保持体60がストッパ片70に近接する方向に移動して係合位置となり、図10、図11−1、図11−2に示すように、一対の係合アーム73の間にピン挟持片62が挿入された状態となる。
【0038】
一方、スライドピン52がピン収容部64aに収容される以前の状態において操作ハンドル30を閉位置に操作した場合には、係合アーム73によって狭幅部64bの拡開が阻止されるため、図12−1に示すように、スライドピン52が導入傾斜面64dに当接してもピン収容部64aには至らない。
【0039】
しかしながら、そのまま障子20を開移動させれば、図12−2に示すように、スライドピン52に当接したピン保持体60が係合解除位置に移動し、係合アーム73から離隔した状態となるため、この時点でスライドピン52をピン収容部64aに収容させることが可能となる。従って、この状態から開口枠10に対して障子20をわずかに閉じる方向に移動させると、スライドピン52の移動に伴ってピン保持体60がストッパ片70に近接する方向に移動して係合位置となり、図12−3に示すように、ピン収容部64aにスライドピン52を収容させた状態で、一対の係合アーム73の間にピン挟持片62が挿入される。
【0040】
図11−2及び図12−3に示す状態においては、一対の係合アーム73によってピン挟持片62の変形が阻止され、外力を加えた場合にも、ピン収容溝64の狭幅部64bを拡開させることが困難となる。この結果、スライドピン52がスライド溝25aの左方側に拘束され、リンク部材50が開口枠10と障子20との間に掛け渡された状態となり、障子20に対して風が当たる等、外力が作用した場合にも、障子20を開いた状態に維持することができるようになる。
【0041】
尚、図8−1、図8−2に示す状態から操作ハンドル30が開位置のままで障子20を閉める方向に移動させると、あるいは図11−1、図11−2に示す状態から操作ハンドル30を開位置に配置させた後に障子20を閉める方向に移動させると、スライドピン52が導出傾斜面64cに当接し、導出傾斜面64cの傾斜作用によって狭幅部64bが拡開されることになる。従って、スライドピン52がピン保持体60のピン収容溝64から逸脱し、スライドピン52がリンク受部材25のスライド溝25aに沿って右側に移動する。この結果、開口枠10に対して障子20を閉じることができるようになる。
【0042】
ここで、上述した建具においては、下框22に対するリンク部材50のスライドを阻止することによって障子20を開いた状態に維持するようにしている。下框22に対するリンク部材50のスライドを阻止するための構成要素、つまり、リンク部材50のスライドピン52、リンク受部材25、ピン保持体60、ストッパ片70、スライダ40のいずれをも下框22や縦框23a,23bによって覆い、障子20を開閉させた際に外部から視認できない位置に構成することができる。しかも、下框22に設けた操作ハンドル30を操作することで、上述した構成要素52,25,60,70,40を操作することができるため、その操作性が何ら損なわれることはない。
【0043】
尚、上述した実施の形態では、戸先框となる下框と下枠との間にリンク部材を設けるようにしているが、必ずしも戸先框と開口枠との間に設ける必要はない。例えば、上述した実施の形態であれば、縦框と開口枠の縦枠との間にリンク部材を設けるようにしても構わない。
【0044】
また、上述した実施の形態では、開口枠に対して下框を外側に突き出すように開移動するようにした建具を例示しているが、必ずしもこれに限定されず、例えば開口枠に対して障子がスライドすることによって開移動するものに適用することも可能である。
【0045】
さらに、上述した実施の形態では、障子の框に設けた操作ハンドルの操作に連係させてストッパ部材を開状態と閉状態とに切り替えるようにしているが、本発明は必ずしもこれに限定されない。
【0046】
例えば、図13及び図14に示す建具の変形例では、障子20の下框22に設けたリンク受部材25の両側からストッパ片170のストッパ操作部175を外部に露出させ、ストッパ操作部175を介してリンク受部材25の外部からストッパ片170を直接操作できるように構成している。すなわち、この変形例に示すストッパ片170は、実施の形態で示したストッパ片70に対して、スライダ40の連結孔41に嵌合するスライダ連結部71を省略する一方、ストッパ片本体174の両側にストッパ操作部175を形成し、各ストッパ操作部175をリンク受部材25の両側に形成した操作スライド孔25cから外部に突出するように設けてある。このストッパ片170が一対の係合アーム173を有し、これら係合アーム173をピン保持体60に設けたピン挟持片62の両側に当接させることでピン収容溝64に収容されたスライドピン52の逸脱を阻止する点、並びにストッパ片本体174の下面においてリンク受部材25のスライド溝25aに対向する部位にスライドピン52との干渉を避けるスライドピン通過用凹部172が設けてある点は、それぞれ実施の形態と同様である。尚、変形例において実施の形態と同様の構成に関しては同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略している。
【0047】
上記のように構成した変形例の建具においても、下框22に対するリンク部材50のスライドを阻止することによって障子20を開いた状態に維持するようにしている。従って、下框22に対するリンク部材50のスライドを阻止するための構成要素、つまり、リンク部材50のスライドピン52、リンク受部材25、ピン保持体60、ストッパ片170、スライダ40のいずれをも下框22や縦框23a,23bによって覆い、障子20を開閉させた際に外部から視認できない位置に構成することができる。しかも、開口枠に対して障子を開けた状態であれば、図13に示すように、下框22の下方においてストッパ操作部175を操作することができ、リンク受部材25の内部に配設したストッパ片170を操作することができるため、その操作性が損なわれる恐れはない。尚、変形例を構成する場合、ストッパ操作部175は、必ずしもストッパ片170と一体に成形する必要はなく、ストッパ片170に後から操作ピンを設けるようにしても構わない。
【符号の説明】
【0048】
10 開口枠
20 障子
25 リンク受部材
25a スライド溝
25b 逃げ溝
30 操作ハンドル
31 出力部
40 スライダ
45 錠装置
50 リンク部材
51 支持ピン
52 スライドピン
60 ピン保持体
61 ガイドピン
62 ピン挟持片
63 保持体本体
64 ピン収容溝
64a ピン収容部
64b 狭幅部
64c 導出傾斜面
64d 導入傾斜面
70,170 ストッパ片
71 スライダ連結部
72,172 スライドピン通過用凹部
73,173 係合アーム
74,174 ストッパ片本体
175 ストッパ操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口枠に対して障子を開閉可能に配設した建具において、
一端部を前記開口枠に揺動可能に支持させる一方、他端部を前記障子の框に揺動可能、かつ前記框に沿って移動可能に支持させ、前記開口枠に対する前記障子の開放位置を制限するリンク部材と、
開状態及び閉状態に切り替え可能に構成し、開状態においては前記リンク部材のスライドを許容する一方、閉状態においては前記框に対する前記リンク部材のスライドを阻止するストッパ手段と
を備えたことを特徴とする建具。
【請求項2】
前記障子は、框に設けた操作ハンドルの閉位置への操作により前記開口枠に対する開移動が阻止される一方、前記操作ハンドルの開位置への操作により前記開口枠に対して開移動可能となるように構成し、
前記操作ハンドルと前記ストッパ手段との間には、互いの間を連係し、前記操作ハンドルが閉位置に配置された場合に前記ストッパ手段を閉状態に移行させる一方、前記操作ハンドルが開位置に配置された場合に前記ストッパ手段を開状態に移行させる連係手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記ストッパ手段は、
前記開口枠に対して前記障子が開移動した場合に前記リンク部材の他端部に設けたスライドピンを着脱可能に収容するピン収容溝を有したピン保持体と、
前記框に対して移動可能に配設するとともに、前記連係手段を介して前記操作ハンドルに連係し、前記操作ハンドルが閉位置に移動した場合に係合位置に配置される一方、前記操作ハンドルが開位置に移動した場合に非係合位置に配置されるストッパ片と
を備え、前記ピン保持体は、前記ピン収容溝に前記スライドピンが収容された状態で前記ストッパ片が係合位置に配置された場合に前記スライドピンの逸脱を阻止する一方、前記ストッパ片が非係合位置に配置された場合に前記スライドピンの逸脱を許容することを特徴とする請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記ピン保持体は、前記框に対して移動可能に配設し、前記係合位置に配置されたストッパ片に対して係合可能となる係合可能位置と、前記係合位置に配置されたストッパ片との係合状態を解除する係合解除位置との間を移動することを特徴とする請求項3に記載の建具。
【請求項5】
前記ピン保持体は、前記ピン収容溝の幅を拡開可能に構成し、拡開した場合に前記スライドピンを挿通させるものであり、
前記ストッパ片は、前記係合位置に配置された場合に前記ピン収容溝の拡開を阻止することによって前記スライドピンの逸脱を阻止することを特徴とする請求項3に記載の建具。
【請求項6】
前記障子は、水平方向に沿った軸心を中心として前記開口枠に回転可能に配設し、前記開口枠に対して下框を外側に突き出すように開移動するものであり、
前記操作ハンドルは、前記下框の見込み面に配設し、かつ前記障子の見込み方向に沿った軸心を中心に回転させることによって開位置と閉位置との間を移動するものであり、
前記リンク部材は、前記下框の下面と前記開口枠の下枠との間に設けたものである
ことを特徴とする請求項2に記載の建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−256527(P2011−256527A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129281(P2010−129281)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】