説明

建具

【課題】構造の複雑化や大型化を招くことなく面材の閉鎖状態を維持する維持装置を有した建具を提供すること。
【解決手段】規制装置30によって縦框14A,14Bを引き寄せる際に、操作ハンドル22の回動操作により、上側の突出ピン35を受け部32の当接部39下面に当接させ、突出ピン35によって受け部32を上方に移動させるとともに、下方に移動する突出ピン36と上方に移動する係止部38とを係合させることで、突出ピン36と受け部32の係止部38とが互いに逆向きに移動する相対移動距離を大きくすることができる。従って、連動バー33,34のスライド距離を増幅させるための複雑な機構や、操作ハンドル22の回動操作量を大きくする必要がなく、非係止状態においては突出ピン36と係止部38とを確実に離隔させ、かつ係止状態においては突出ピン36と係止部38とを確実に係合させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体に開閉自在に支持された面材の閉鎖状態を維持する維持装置を有した建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開き窓等の建具として、閉じた面材の戸先側の端縁(戸先框)を閉鎖方向に引き寄せる引き寄せ装置(引き寄せ錠)を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の建具は、2枚のドア(面材)を備えた両開きドアであって、一方の面材における戸先框に引き寄せ装置の本体が設けられ、他方の面材における戸先框に受け具が設けられている。また、一方の面材には、ハンドルと、このハンドル操作に連動して上下移動する移動杆とが設けられ、引き寄せ装置の本体には、移動杆に連動して揺動する揺動駒と、この揺動駒に固定された支軸とが設けられている。この支軸は、揺動駒の揺動に伴い他方の面材に向かって突出し、支軸と受け具とが係合することで、面材の戸先框同士が閉鎖方向に引き寄せられるようになっている。また、特許文献1に記載の建具において、他方の面材における戸先框には、ハンドルおよび錠杆を有したグレモン錠(ドアロック装置)が設けられており、ハンドル操作によって錠杆を上下に進退移動させ、戸先框の上下端部から突出した錠杆を上下枠に係合させることで、面材が施錠されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭62−40044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来の引き寄せ装置では、移動杆の上下動に連動させて揺動駒が揺動し、この揺動によって支軸が突出するという構成であるため、引き寄せ装置の本体が大型化してしまい、戸先框の見付け寸法や面材の見込み寸法に影響を及ぼすという問題がある。すなわち、戸先框の内部に設けた移動杆に対して見付け方向外側(他方の面材側)に揺動駒が配置され、さらに非係止位置に揺動した揺動駒が他方側に突出しないように収容されることから、戸先框の見付け寸法を拡大する必要がある。さらに、揺動駒を揺動自在に支持するための支軸や、支軸を受ける側板などが戸先框に内蔵されることから、戸先框の見込み寸法つまり面材の見込み寸法が大型化してしまうこととなる。
なお、揺動駒を設けずに移動杆に支軸を固定し、移動杆とともに支軸を上下動させる構成が考えられるものの、この場合に面材を開放するためには、上下いずれかの非係止位置に移動させた支軸と受け具とが干渉しないように、移動杆の上下移動量を拡大する必要がある。このため、従来のハンドル操作を移動杆の上下移動に変換する機構を改良しなければならず、この変換機構が大型化あるいは複雑化し、その結果戸先框の見付け寸法や面材の見込み寸法を小型化することが困難となる。
【0005】
本発明の目的は、構造の複雑化や大型化を招くことなく面材の閉鎖状態を維持する維持装置を有した建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建具は、開閉自在に設けられる面材と、この面材を閉じた際に当該面材の戸先部と対向する対向部と、この対向部に対して前記戸先部を係止して前記面材の開放移動を規制する規制装置とを備えた建具であって、前記規制装置は、前記戸先部および対向部のうちの一方に設けられる主動部と、前記戸先部および対向部のうちの他方に設けられる受け部とを備え、前記主動部は、規制位置と非規制位置とに切り換え操作可能な操作部と、この操作部に連動して互いに逆向きにスライド移動する一対の移動部と、これら一対の移動部の各々に設けられて前記受け部側に突出する一対の突出部とを有し、前記受け部は、前記一対の突出部のうちの第1突出部を係止可能な係止部と、前記一対の突出部のうちの第2突出部に当接可能な当接部とを有して形成されるとともに、前記戸先部および対向部の他方に支持されて係止位置と非係止位置との間を移動自在に設けられ、前記面材を閉じた状態において、前記操作部の規制位置への操作によって前記一対の移動部が互いに逆向きの規制方向に移動することで、前記第2突出部が前記当接部に当接して前記受け部が係止位置に向かって移動され、この受け部と逆向きに移動する前記第1突出部が前記係止部に係止され、この係止によって前記面材の開放移動が規制され、前記操作部の非規制位置への操作によって前記一対の移動部を互いに逆向きの非規制方向に移動させることで、前記受け部が非係止位置に向かって移動されるとともに、前記係止部による前記第1突出部の係止が外れて前記面材の規制が解除されることを特徴とする。
【0007】
このような本発明によれば、一対の移動部の各々に設けた突出部を受け部側に突出させ、第1突出部を受け部の係止部に係止させるようにしたので、移動部に突出部を直接連結してコンパクトに構成することができ、戸先部の見付け寸法を必要最小限な大きさで構成することができる。また、従来の揺動体のような可動部を移動部と突出部との間に設ける必要がないことから、戸先部および面材の見込み寸法を最小化することができる。さらに、本発明では、移動部に伴って突出部をスライド移動させる構成において、第2突出部が当接部に当接して受け部が係止位置に向かって移動し、この受け部と逆向きに移動する第1突出部を係止部に係止させることで、移動部のスライド移動距離に対して第1突出部と係止部との相対移動距離を約2倍とすることができる。従って、操作部の操作を移動部に伝達する際にスライド量を増幅させるための複雑な機構を設けなくても、第1突出部と係止部とを大きく相対移動させることができ、操作部における規制位置と非規制位置との切り換え操作を従来から大きく変更することなく、第1突出部を係止部に係止させる状態と非係止の状態とを確実に切り換えることができる。
【0008】
この際、本発明の建具では、前記受け部の当接部は、規制方向に移動する前記第2突出部と当接可能な第1当接部と、非規制方向に移動する前記第2突出部と当接可能な第2当接部とを有し、前記操作部の規制位置への操作に伴って前記第2突出部を規制方向に移動させることで、この第2突出部が前記第1当接部に当接して前記受け部が係止位置に向かって移動され、前記操作部の非規制位置への操作に伴って前記第2突出部を非規制方向に移動させることで、この第2突出部が前記第2当接部に当接して前記受け部が非係止位置に向かって移動されることが好ましい。
このような構成によれば、当接部に第1当接部と第2当接部とを設け、第2突出部の規制方向および非規制方向の移動に対応して第1当接部または第2当接部と当接させることで、受け部を係止位置および非係止位置の両方へ確実に移動させることができる。
なお、ここでは、第1および第2の当接部を設けて各々を第2突出部と当接させるように構成したが、これに限らず、第2突出部を2箇所に設け、これらの規制方向および非規制方向の移動に対応していずれかの第2突出部と当接部とを当接させるように構成してもよい。
【0009】
さらに、本発明の建具では、前記面材は、その吊り元側が上下方向に延びる回動軸によって回動支持され、前記戸先部および対向部は、それぞれ上下に延びて設けられており、前記受け部は、上下方向に移動自在かつ係止位置が上方で非係止位置が下方に位置して設けられ、前記係止部によって前記第1突出部の見込み方向への移動を規制することで前記面材の開放移動を規制可能に構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、上下方向に移動自在な受け部として非係止位置を下方にもうけたことで、第2突出部が非規制方向に移動して当接部との当接が外れた場合に、受け部が重力で落下して自動的に非係止位置に戻り、面材の開放移動の規制が解除された状態とすることができる。すなわち、受け部が非係止位置まで自由落下するように構成すれば、第2突出部などの非規制方向への移動を用いて強制的に非係止位置に復帰させる場合と比較して、非係止位置における当接部と第2突出部との上下方向におけるクリアランスを確保することができ、面材の開閉に伴う当接部と第2突出部との干渉を防止することができる。なお、受け部が非係止位置へ自由落下するように構成した場合であっても、第2突出部などを用いた受け部の強制移動を併用することが可能であり、強制移動させることで自由落下のきっかけとなり、非係止位置へ受け部を確実に復帰させることができる。
【0010】
また、本発明の建具では、前記受け部は、前記係止部と前記当接部とに渡って設けられるとともに前記戸先部および対向部の他方に支持される支持部を有し、前記係止部、当接部および支持部が一体に形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、受け部を一体成形することで、安価かつ簡便に受け部を製造することができるとともに、戸先部および対向部の他方に対する受け部の支持構造も簡単化することができる。さらに、受け部の当接部に第2突出部を当接させて係止位置に移動させつつ係止部に第1突出部を係止させる際に、当接部と係止部とに逆向きに作用する力に対し、それによって生じる反力を支持部が保持することで、戸先部や対向部に余分な付加応力を生じさせないようにでき、補強材などを不要にして戸先部や対向部の大型化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る建具を示す正面図である。
【図2】前記建具を示す縦断面図である。
【図3】前記建具を示す横断面図である。
【図4】前記建具に設けられる第1形態の規制装置を示す横断面図である。
【図5】前記建具における面材の戸先部を正面から見た縦断面図である。
【図6】前記戸先部における解錠状態を正面から見た縦断面図である。
【図7】前記第1形態の規制装置の一部を示す側面図および縦断面図である。
【図8】前記第1形態の規制装置の動作を説明する図である。
【図9】前記建具に設けられる第2形態の規制装置を示す側面図および縦断面図である。
【図10】前記第2形態の規制装置の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3において、本実施形態の建具としての両開き窓1は、建物開口部に設けられる枠体としての窓枠2と、この窓枠2で囲まれた内部に開閉自在に支持される面材としての2枚の障子10とを有して構成されている。窓枠2は、上枠3、下枠4および左右の縦枠5,6とを四周枠組みして構成されている。2枚の障子10は、それぞれ上框11、下框12および左右の縦框13,14を四周框組みした内部に、ガラスパネル15を嵌め込んで構成されている。2枚の障子10のうち、図1、3の左側の障子10Aは、吊り元側の縦框13Aが丁番16を介して縦枠5に支持され、図1、3の右側の障子10Bは、吊り元側の縦框13Bが丁番16を介して縦枠6に支持され、これらの障子10A,10Bは、それぞれ戸先側の縦框(戸先框)14A,14Bを互いに突き合わせた状態で閉じるとともに、屋外側に向かって開放可能に構成されている。ここで、障子10Aは、障子10Bを閉じた状態で閉鎖可能であり、障子10Bは、障子10Aが開放された状態で開閉可能に構成されている。
【0013】
図3および図4に示すように、縦框14A,14Bは、それぞれ矩形中空状の縦框本体141と、ガラスパネル15を保持するパネル保持部142とを有し、縦框14Aには、縦框本体141の屋外側端部から見付け方向外側(障子10B側)に延出する見付け片部143が形成され、縦框14Bには、縦框本体141の屋内側端部から見付け方向外側(障子10A側)に延出する見付け片部144が形成されている。そして、見付け片部143,144には、それぞれ気密材145,146(図3参照)が取り付けられ、障子10A,10Bを閉じた状態において、気密材145が縦框14Bに当接し、気密材146が縦框14Aに当接することで気密性が確保できるようになっている。このような戸先側の縦框14A,14Bには、上枠3および下枠4に係合して各障子10A,10Bを施錠するグレモン錠20と、互いの縦框14A,14B同士を室内外方向(見込み方向)に引き寄せて障子10Aの開放移動を規制する規制装置30とが設けられている。すなわち、障子10Aの縦框14Aによって戸先部が構成され、障子10Bの縦框14Bによって対向部が構成されている。
【0014】
グレモン錠20は、図5、図6にも示すように、縦框14A,14Bの各々に設けられ、縦框本体141の屋内側側面に固定される台座21と、この台座21に回動可能に支持される操作ハンドル22と、縦框本体141内部に固定されて操作ハンドル22の回動操作を上下動に変換する変換機構23と、この変換機構23に連結されて上方に延びる上リンケージバー24および下方に延びる下リンケージバー25と、上下のリンケージバー24,25の先端に連結される錠杆26,27と、上枠3および下枠4にそれぞれ設けられて錠杆26,27と係合可能な図示しない錠受けとを備えて構成されている。操作ハンドル22は、図5に示すように、把持部が下方に延びる状態(施錠位置)と、この規制位置から略90°だけ回動して図6に示すように、把持部が略水平に延びる状態(解錠位置)との間を回動操作可能になっている。
【0015】
変換機構23は、その内部に適宜なカムやリンクを有して構成され、操作ハンドル22の回動操作を変換して上下のリンケージバー24,25を上下動させるようになっている。上リンケージバー24は、図5に示す操作ハンドル22が施錠位置にある状態において、上方に移動して錠杆26を上枠3の錠受けに係合させ、図6に示す操作ハンドル22が解錠位置にある状態において、下方(変換機構23側)に移動して錠杆26と錠受けとの係合を解除するように、上下移動可能に構成されている。下リンケージバー25は、図5に示す操作ハンドル22が施錠位置にある状態において、下方に移動して錠杆27を上枠3の錠受けに係合させ、図6に示す操作ハンドル22が解錠位置にある状態において、上方(変換機構23側)に移動して錠杆27と錠受けとの係合を解除するように、上下移動可能に構成されている。以上のように、上リンケージバー24と下リンケージバー25とは、操作ハンドル22の操作に連動して互いに上下逆向きに移動するように構成されている。
【0016】
〔第1形態の規制装置〕
第1形態の規制装置30は、図7にも示すように、縦框14Aに設けられる主動部31と、縦框14Bに設けられる受け部32とを備えて構成されている。主動部31は、障子10Aに設けられるグレモン錠20と部品の一部を兼用するものであって、操作部としての前記操作ハンドル22と、上下のリンケージバー24,25に各々連結される一対の移動部としての連動バー33,34と、各連動バー33,34に固定されて縦框14B側に突出する一対の突出部としての突出ピン35,36とを備えて構成されている。ここで、突出ピン36が第1突出部であり、突出ピン35が第2突出部である。受け部32は、縦框14Bの見込み面141Bに支持される支持部37と、この支持部37から縦框14A側に突出して突出ピン36を係止可能な係止部38と、支持部37から縦框14A側に突出して突出ピン35に当接可能な当接部39とを備え、これらの支持部37、係止部38および当接部39が金属板材から折り曲げ加工によって一体に形成されている。なお、受け部32としては、金属板材から折り曲げ加工によって一体に形成するものに限らず、樹脂の射出成形等、他の材料で一体に形成してもよく、また、別体の複数部材を連結することで形成してもよい。
【0017】
主動部31の操作ハンドル22は、前記グレモン錠20における施錠位置である規制位置と解錠位置である非規制位置との間で切り換え操作可能になっている。連動バー33,34は、それぞれ連結部材33A,34Aを介して上下のリンケージバー24,25に連結されるとともに、縦框14Aの見込み面141Aに形成された案内溝147に沿って上下スライド移動自在に支持されている。これらの連動バー33,34は、操作ハンドル22の操作に連動して上下のリンケージバー24,25とともに上下移動し、操作ハンドル22を非規制位置から規制位置へ操作することで、連動バー33が上方に移動するとともに連動バー34が下方に移動し、操作ハンドル22を規制位置から非規制位置へ操作することで、連動バー33が下方に移動するとともに連動バー34が上方に移動するようになっている。突出ピン35,36は、連動バー33,34に支持された円筒部材で構成され、突出ピン35は、連動バー33の下端部に取り付けられて連動バー33とともに上下移動し、突出ピン36は、連動バー34の上端部に取り付けられて連動バー34とともに上下移動するように構成されている。なお、突出ピン35,36は、連動バー33,34の端部(下端部、上端部)に取り付けるものに限らず、中間部など他の部分に取り付けてもよい。
【0018】
受け部32の支持部37には、上下2箇所の長孔37Aが形成され、これらの長孔37Aに挿通した段付きビス37Bを縦框14Bの見込み面141Bに固着することで、受け部32が見込み面141Bに沿って上下摺動自在に支持されている。係止部38は、支持部37の下端部の屋外側端部から縦框14Aに向かって突出するとともに屋内側に折れ曲がる断面L字状に形成され、この折れ曲がった先端縁(屋内側端縁)38Aで突出ピン36を係止可能になっている。また、係止部38の先端縁38Aには、上下に曲面状の面取りが形成されており、突出ピン36を係止する際にスムーズに案内しつつ、縦框14Aを屋内側に付勢して引き寄せるようになっている。当接部39は、支持部37の上端部から縦框14A側に向かって略水平に突出して形成され、この当接部39の下面に突出ピン35が当接可能になっている。このような受け部32は、図7に実線で示すように、長孔37Aの上端に段付きビス37Bが当接する位置まで自然に落下し、係止部38が突出ピン36を係止しない非係止位置とし、図7に二点鎖線で示すように、当接部39に当接した突出ピン35によって押し上げられるとともに、下方に移動した突出ピン36を係止部38が係止する係止位置との間を上下移動可能に構成されている。この際、図7の実線で示す状態においては、当接部39の下面と突出ピン35の上面とが離間してクリアランスを確保することで、この状態で障子10Aを開放する際や開放状態の障子Aを閉鎖する際に、当接部39に突出ピン35が干渉することを防ぐことができる。
【0019】
以上の規制装置30は、操作ハンドル22を非規制位置から規制位置へ回動操作することで、係止部38が突出ピン36を係止することにより縦框14A,14B同士を見込み方向に引き寄せて障子10Aの開放移動を規制し、操作ハンドル22を規制位置から非規制位置へ回動操作することで、係止部38による突出ピン36の係止が外れて規制を解除するとともに解錠して障子10Aを開放可能とするように構成されている。以下、図8も参照して規制装置30の動作を説明する。なお、ここでは、障子10Bが閉鎖されるとともに障子10Bのグレモン錠20が施錠された状態において、障子10Aを開閉する場合について説明する。
【0020】
先ず、障子10Aを閉じる際には、図8(A)に示すように、操作ハンドル22を非規制位置から規制位置に向かって回動操作し、これに連動する連動バー33,34を互いに離れる逆向きの規制方向に移動させ、これらとともに突出ピン35,36を移動させる。すなわち、上側の連動バー33および突出ピン35を上方に移動させ、下側の連動バー34および突出ピン36を下方に移動させる。さらに、図8(B)に示すように、操作ハンドル22の回動操作を続けることで、上側の突出ピン35を受け部32の当接部39下面に当接させ、突出ピン35によって受け部32を上方に移動させるとともに、下方に移動する突出ピン36と上方に移動する係止部38とを係合させる。図8(C)に示すように、操作ハンドル22を規制位置まで操作することで、上側の突出ピン35によって受け部32を係止位置まで上昇させ、下降する突出ピン36を係止部38に係止させる。このように突出ピン36を係止部38で係止することで、縦框14Bに対する見込み方向屋外側への縦框14Aの移動が規制装置30によって規制されるとともに、縦框14Bに対して縦框14Aが屋内側に引き寄せられ、互いの気密材145,146が縦框本体141に密接させられるようになっている。なお、この際、障子10Aのグレモン錠20も施錠状態となって、上枠3および下枠4に対して障子10Aの開放移動が規制される。
【0021】
次に、障子10Aを開く際には、図8(D)に示すように、操作ハンドル22を規制位置から非規制位置に向かって回動操作し、これに連動する連動バー33,34を互いに近づく逆向きの非規制方向に移動させ、これらとともに突出ピン35,36を移動させる。すなわち、上側の連動バー33および突出ピン35を下方に移動させ、下側の連動バー34および突出ピン36を上方に移動させる。さらに、図8(E)に示すように、操作ハンドル22の回動操作を続けることで、上方に移動する突出ピン36と下方に移動する係止部38との係合が外れ、下方に移動する上側の突出ピン35とともに受け部32が自然落下し、受け部32が非係止位置まで下降した後も操作ハンドル22を非規制位置まで操作することで、当接部39下面から離れた突出ピン35が図8(A)に示す初期位置に移動する。このように突出ピン36と係止部38との係止を外すことで、縦框14Bに対する縦框14Aの規制が解除されるとともに、障子10Aのグレモン錠20も解錠状態となって、障子10Aが開放移動可能な状態となる。なお、受け部32が自然落下により非係止位置まで下降するとしたが、自然落下に限らず、突出ピン35が移動した際に他の構成により受け部32を非係止位置まで下降するようにしてもよい。例えば、バネなどによって常時下方へ付勢されている受け部32に対して、その付勢力に抗して突出ピン35で受け部32を上方に持ち上げる構成としてもよい。この場合、突出ピン35が下方に移動することで受け部32がバネなどによって下方に強制的に付勢されるため、受け部32が非係止位置まで下降することができる。
【0022】
〔第2形態の規制装置〕
第2形態の規制装置30Aは、前記第1形態と比較して、受け部32Aの形態が相違するもので、主動部31の構成は第1形態と同様である。
受け部32Aは、図9に示すように、支持部37と、係止部38と、当接部39とを備え、当接部39が第1当接部39Aおよび第2当接部39Bの上下一対で構成されている。これら第1および第2の当接部39A,39Bは、それぞれ支持部37から縦框14A側に略水平に突出するとともに屋内側に折れ曲がる断面L字状に形成されるとともに、第1当接部39Aの下側に突出ピン35が当接可能で、第2当接部39Bの上側に突出ピン35が当接可能になっている。すなわち、図9に実線で示す非係止位置の状態から、係止位置に向かって移動する突出ピン35が第1当接部39Aに当接することで、図9に二点鎖線で示す係止位置まで受け部32Aが押し上げられ、逆に非係止位置に向かって移動する突出ピン35が第2当接部39Bに当接することで、非係止位置に向かって受け部32Aが押し下げられるか、または、落下のきっかけとなって受け部32Aが非係止位置に自然落下するように構成されている。なお、第1および第2の当接部39A,39Bは、断面L字状に形成するものに限らず、第1形態の規制装置同様に、支持部37から縦框14A側に向かって略水平に突出して形成してもよい。
【0023】
第2形態の規制装置30Aの動作を、図10を参照して説明すると、障子10Aを閉じる際の動作は第1形態と略同様であり、図10(A)〜(C)に示すように、操作ハンドル22の非規制位置から規制位置への回動操作によって、突出ピン35を受け部32Aの第1当接部39Aに当接させて受け部32Aを上方に移動させるとともに、突出ピン36を係止部38で係止させる。一方、障子10Aを開く際には、図10(D)に示すように、操作ハンドル22の規制位置から非規制位置への回動操作によって、突出ピン35を下方に移動させて第2当接部39Bに当接させることで、受け部32Aを下方に移動させる。さらに、図10(E)に示すように、突出ピン36と係止部38との係合が外れることで、受け部32Aが非係止位置まで自然落下し、操作ハンドル22を非規制位置まで操作することで、突出ピン35,36が図10(A)に示す初期位置に移動する。なお、埃等の外的要因で受け部32Aが非係止位置まで自然落下しない場合であっても、第2当接部39Bに当接させた突出ピン35で受け部32Aを押し下げることで、非係止位置の近傍まで受け部32Aが移動されるようになっている。また、突出ピン35が初期位置に移動した状態において、第1当接部39Aの下面と突出ピン35の上面とが離間してクリアランスを確保するとともに、第2当接部39Bの上面と突出ピン35の下面とが離間してクリアランスを確保することで、この状態で障子10Aを開放する際や開放状態の障子Aを閉鎖する際に、第1当接部39Aおよび第2当接部39Bに突出ピン35が干渉することを防ぐことができる。
【0024】
以上のような本実施形態によれば、規制装置30,30Aによって縦框14A,14Bを引き寄せる際に、主動部31の突出ピン36と受け部32,32Aの係止部38とが互いに逆向きに移動することで、これらの相対移動距離を約2倍とすることができる。従って、連動バー33,34のスライド距離を増幅させるための複雑な機構を変換機構23に設けなくてもよいし、操作ハンドル22の回動操作量を大きくしなくてもよくでき、非係止状態においては突出ピン36と係止部38とを確実に離隔させ、かつ係止状態においては突出ピン36と係止部38とを確実に係合させることができる。従って、規制装置30,30A自体や縦框14A,14Bの大型化を招くことなく、かつ操作性を良好に維持したままで障子10A,10Bの引き寄せ操作を確実に実施することができる。さらに、規制装置30,30Aとグレモン錠20とで部品を兼用したことで、部品点数を削減しつつ、障子10A,10Bの施錠と引き寄せの両機能を効率的に実現することができる。
【0025】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態においては、両開き窓1を例示したが、本発明の建具としては、両開き窓1に限らず、各種の開閉形式や開閉方向の窓であってもよい。具体的には、例えば、窓枠内部に1枚の障子が開閉可能に設けられた開き窓(片開き窓)に前記規制装置を設けてもよい。この開き窓の場合には、障子の戸先側縦框(戸先部)に主動部を設けるとともに窓枠の縦枠(対向部)に受け部を設けてもよいし、戸先側縦框(戸先部)に受け部を設けて縦枠(対向部)に主動部を設けてもよい。さらに戸先部としては、縦框に限らず、上框や下框の戸先側であってもよく、その場合の対向部としては、窓枠の上枠や下枠であればよい。なお、開き窓以外の建具としては、縦、横辷り出し窓や、突き出し窓、内倒し窓などが例示でき、面材の開放方向は屋外側、屋内側のいずれであってもよく、規制装置は開放方向と逆向きに面材を引き寄せる構成であればよい。さらに、本発明の建具は、面材がスライド開閉自在な引き違い窓や片引き窓などであってもよく、この場合には、主動部の突出部を適宜な方向に突出させるとともに受け部の係止部を適宜な形状とすることで、面材を閉鎖方向に引き寄せるような構成にできる。
【0026】
また、前記実施形態では、規制装置30,30Aとグレモン錠20とで部品を兼用した構成であったが、これに限らず、規制装置30,30Aとは別体の錠装置を設けてもよいし、錠装置を省略してもよい。
また、前記実施形態では、縦框14A,14Bの高さ方向略中央の1箇所に規制装置30,30Aを設けたが、適宜な間隔で2箇所以上に規制装置を設けてもよい。
さらに、前記実施形態の規制装置30,30Aでは、主動部31の突出ピン35,36が連動バー33,34に設けられ、これらの連動バー33,34がグレモン錠20のリンケージバー24,25に連結されていたが、これに限らず、突出ピン35,36をリンケージバー24,25に取り付けてもよいし、連動バー33,34を変換機構23に連結してもよい。
また、前記実施形態の規制装置30Aでは、受け部32Aに第1および第2の当接部39A,39Bを設けて、これらに突出ピン35を当接させる構成としたが、これに限らず、突出ピン35に替えて上下2つの突出部を設け、これらの間に受け部32の当接部39を配置する構成としてもよい。
また、当接部39の下面において、屋内側に向かうにつれて下方に向かう傾斜面(第2形態の規制装置では、第1当接部39Aの下面に同傾斜面、第2当接部39Bの上面に屋内側に向かうにつれて上方に向かう傾斜面)を設けてもよい。このようにすることで、障子10Aを開放状態から閉鎖方向へ移動させる際に、突出ピン35と当接部39(第1当接部39A、第2当接部39B)とが何らかの理由により離間せずクリアランスが確保できていなかった場合でも、前述した傾斜面に突出ピン35が摺接して突出ピンを当接部39の下方に位置(第1当接部39Aと第2当接部39Bの間に位置)させることが可能となる。
また、第2形態の規制装置では、係止部38に対して第1当接部39Aおよび第2当接部39Bが上方となる位置に設けたが、これに限らず、係止部38に対して下方となる位置に設けてもよい。
【0027】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0028】
1…両開き窓(建具)、10,10A,10B…障子(面材)、14A…縦框(戸先部)、14B…縦框(対向部)、22…操作ハンドル(操作部)、30,30A…規制装置、31…主動部、32…受け部、33,34…連動バー(移動部)、35…突出ピン(第2突出部)、36…突出ピン(第1突出部)、37…支持部、38…係止部、39…当接部、39A…第1当接部、39B…第2当接部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉自在に設けられる面材と、この面材を閉じた際に当該面材の戸先部と対向する対向部と、この対向部に対して前記戸先部を係止して前記面材の開放移動を規制する規制装置とを備えた建具であって、
前記規制装置は、前記戸先部および対向部のうちの一方に設けられる主動部と、前記戸先部および対向部のうちの他方に設けられる受け部とを備え、
前記主動部は、規制位置と非規制位置とに切り換え操作可能な操作部と、この操作部に連動して互いに逆向きにスライド移動する一対の移動部と、これら一対の移動部の各々に設けられて前記受け部側に突出する一対の突出部とを有し、
前記受け部は、前記一対の突出部のうちの第1突出部を係止可能な係止部と、前記一対の突出部のうちの第2突出部に当接可能な当接部とを有して形成されるとともに、前記戸先部および対向部の他方に支持されて係止位置と非係止位置との間を移動自在に設けられ、
前記面材を閉じた状態において、前記操作部の規制位置への操作によって前記一対の移動部が互いに逆向きの規制方向に移動することで、前記第2突出部が前記当接部に当接して前記受け部が係止位置に向かって移動され、この受け部と逆向きに移動する前記第1突出部が前記係止部に係止され、この係止によって前記面材の開放移動が規制され、
前記操作部の非規制位置への操作によって前記一対の移動部を互いに逆向きの非規制方向に移動させることで、前記受け部が非係止位置に向かって移動されるとともに、前記係止部による前記第1突出部の係止が外れて前記面材の規制が解除される建具。
【請求項2】
前記受け部の当接部は、規制方向に移動する前記第2突出部と当接可能な第1当接部と、非規制方向に移動する前記第2突出部と当接可能な第2当接部とを有し、
前記操作部の規制位置への操作に伴って前記第2突出部を規制方向に移動させることで、この第2突出部が前記第1当接部に当接して前記受け部が係止位置に向かって移動され、前記操作部の非規制位置への操作に伴って前記第2突出部を非規制方向に移動させることで、この第2突出部が前記第2当接部に当接して前記受け部が非係止位置に向かって移動される請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記面材は、その吊り元側が上下方向に延びる回動軸によって回動支持され、前記戸先部および対向部は、それぞれ上下に延びて設けられており、
前記受け部は、上下方向に移動自在かつ係止位置が上方で非係止位置が下方に位置して設けられ、前記係止部によって前記第1突出部の見込み方向への移動を規制することで前記面材の開放移動を規制可能に構成されている請求項1または請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記受け部は、前記係止部と前記当接部とに渡って設けられるとともに前記戸先部および対向部の他方に支持される支持部を有し、前記係止部、当接部および支持部が一体に形成されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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