説明

建具

【課題】枠部材の交換性に優れ、かつ枠部材の熱変形に起因した問題を防止すること。
【解決手段】躯体Fに支持させた開口枠10と、開口枠10よりも室内側に位置する部位に配設した額縁部材40とを備え、開口枠10に支持させた枠部材31によって開口枠10の室内側の見込み面と額縁部材40の室外側の見込み面とを覆うようにした建具において、額縁部材40を躯体Fに支持させ、枠部材31は額縁部材40との互いに対向する見込み面の間のみを接着剤50にて接着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関するもので、より詳細には、開口枠よりも室内側に位置する部位に、額縁部材を装着するようにした建具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガラス窓等の建具には、開口枠の見込み面を枠部材によって覆うようにしたものが提供されている。枠部材は、例えば合成樹脂を材料として成形され、その縁部が室内側に延設されており、額縁部材において室外側に位置する見込み面に重ねて配設されている(例えば、特許文献1参照)。この建具では、開口枠と枠部材とによって収容部を構成し、この収容部に額縁部材の縁部を収容させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−84513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
合成樹脂製の枠部材によって開口枠の見込み面を覆うようにした建具によれば、意匠性の点で有利となるばかりでなく、アルミニウム等の金属が剥き出しとなった建具に比べて防露性の点でも有利となる。しかしながら、合成樹脂製の枠部材には、日射等の影響による温度変化によって熱変形を来す恐れがある。枠部材が熱変形を来した場合には、額縁部材から離隔することになり、外観品質上の問題を招来するばかりでなく、額縁部材の取付強度が低下する等、建具としての品質を損なう要因となる。
【0005】
こうした問題を解決するには、例えば収容部の内部に流動性を有した接着剤を充填し、収容部と額縁部材との間を接着剤によって接着することが考えられる。つまり、枠部材と額縁部材との間を接着すれば、枠部材の熱変形を事態を未然に防止し、建具の品質低下を防止することができるようになる。しかしながら、収容部に充填した接着剤は、挿入される額縁部材によって収容部の奥方に押しやられるため、開口枠と枠部材との接合部や開口枠と額縁部材との接合部に至り、それぞれの相互間をも接着する恐れがある。このため、枠部材と開口枠との接着状態を解除することが困難となり、例えば枠部材を交換する必要が生じた場合には、開口枠ごと交換せざるを得ないという問題を招来することになる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、枠部材の交換性に優れ、かつ枠部材の熱変形に起因した問題を防止することのできる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、躯体に支持させた開口枠と、前記開口枠よりも室内側に位置する部位に配設した額縁部材とを備え、前記開口枠に支持させた枠部材によって前記開口枠の室内側の見込み面と前記額縁部材の室外側の見込み面とを覆うようにした建具において、前記額縁部材を躯体に支持させ、かつ前記枠部材は前記額縁部材との互いに対向する見込み面の間のみを接着剤にて接着したことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、枠部材と額縁部材との間を接着剤によって接着しているため、枠部材に熱変形を来した場合にも額縁部材から離隔する事態を防止することができ、外観品質や額縁部材の取付強度を低下させる恐れがない。しかも、接着剤は枠部材と額縁部材との間を接着するだけであり。開口枠と枠部材とは、この接着剤にて接着されないため、額縁部材と躯体との間及び枠部材と開口枠との間を互いに容易に分離することができる。
【0009】
また、本発明は、上述した建具において、前記額縁部材の室外側端部と前記枠部材の当該額縁部材に対向する面との間には、前記額縁部材が配設された際に前記接着剤を貯留するための貯留空間を設けたことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、枠部材と額縁部材との間の接着剤が額縁部材の挿入の際に奥方へ移動したとしても、これを貯留空間に留めておくことができ、枠部材と開口枠との接合部に接着剤が至る事態を防止できる。
【0011】
また、本発明は、上述した建具において、前記額縁部材は、板状を成す額縁本体と、前記額縁本体の室外側縁部に装着される固定具とを備え、前記固定具は、第1挟持片と、第2挟持片とを有し、前記第1挟持片と前記第2挟持片との間に前記額縁本体を挟持し、前記躯体の室内側の見込面と対向する前記第2挟持片を介して躯体に固着具を締結することにより、前記固定具を躯体に支持させたことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、額縁部材を固定具とこれに挟持される額縁本体とで構成し、躯体に対してはネジ等の固着具によって固定具を支持させるようにしているため、固定具並びに額縁部材を躯体に対して強固に固定することができる。しかも、予め固定具の第1挟持片と枠部材との間を接着した状態で固定具に額縁本体を挟持させることができるため、枠部材を接着する接着剤が奥方に移動する事態を招来することがない。
【0013】
また、本発明は、上述した建具において、前記第1挟持片は、全面が前記枠部材によって覆われる大きさに形成したことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、第1挟持片の全面が枠部材によって覆われるため、外観品質を損なうことがない。
【0015】
また、本発明は、上述した建具において、前記固定具には、前記第1挟持片及び前記第2挟持片の少なくとも一方に、これら第1挟持片及び第2挟持片の相互間隔を減少させる突起を形成したことを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、第1挟持片及び第2挟持片の相互間に額縁本体を圧入しさえすれば、これら第1挟持片と第2挟持片との間に額縁本体をより確実に挟持することが可能となる。
【0017】
また、本発明は、上述した建具において、前記開口枠は、室内側に向けて延設し、前記枠部材に対向して配置される対向片部を有し、かつこの対向片部に係合突起を形成し、前記係合突起を前記額縁部材の裏面に係合させることにより、前記開口枠を介して前記額縁部材を躯体に支持させることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、係合突起及び開口枠を介して額縁部材を躯体に支持させることができる。しかも、開口枠に対向片部を設けるようにしているため、部品点数が増大することもない。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、枠部材と額縁部材との間を接着剤によって接着しているため、枠部材に熱変形を来した場合にも額縁部材から離隔する事態を防止することができ、外観品質や額縁部材の取付強度を低下させる恐れがない。しかも、接着剤は枠部材と額縁部材との間を接着するだけであり。開口枠と枠部材とは、この接着剤にて接着されないため、額縁部材と躯体との間及び枠部材と開口枠との間を互いに容易に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1である建具の要部拡大横断面図である。
【図2】図2は、図1に示した建具の横断面図である。
【図3】図3は、図1に示した建具の縦断面図である。
【図4】図4は、図1に示した建具に適用する固定具の斜視図である。
【図5】図5は、図4に示した固定具の断面図である。
【図6】図6は、図1に示した建具において額縁部材を取り付ける状態を示す要部横断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態2である建具の要部拡大横断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態3である建具の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1である建具の要部を拡大して示したものである。ここで例示する建具は、図2及び図3に示すように、柱や窓台、まぐさ等の躯体Fに支持させた開口枠10の内部にガラスパネル20を固定設置した、いわゆる嵌め殺し窓と称されるものである。本実施の形態1では、特に、スペーサ部材21を挟んで2枚のガラス板22を積層した複層ガラスパネル20を適用した建具を例示している。尚、図2及び図3の符号OWは建造物の外装壁、符号IWは建造物の内装壁である。
【0023】
開口枠10は、上下左右4つの枠11を四周枠組みすることにより、ガラスパネル20よりも大きな矩形状に構成したものである。枠11のそれぞれは、見付け方向に延在する支持用ヒレ部12を介して躯体Fに支持ネジ13を締結することにより、躯体Fに支持させてある。
【0024】
開口枠10を構成する各枠11には、それぞれの見込み面において室外側に位置する部分に取付片14が突設してあり、かつ見込み面において室内側に位置する部分にパネル押え30が配設してある。取付片14は、枠11と一体に成形したヒレ状の突出部分であり、互いの先端面によってガラスパネル20よりも小さい矩形の開口を画成している。尚、それぞれの枠11は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金の押し出し型材によって構成したものを適用している。
【0025】
パネル押え30は、枠11の取付片14との間にガラスパネル20を保持するためのもので、個々の枠11に対して着脱可能に取り付けてある。図2及び図3からも明らかなように、本実施の形態1では、上枠11及び2つの縦枠11に対して共通のパネル押え30が設けてある一方、下枠11Lに対しては別個のパネル押え30Lが設けてある。
【0026】
上枠11及び縦枠11のパネル押え30は、それぞれ合成樹脂材によって成形した枠部材31と押え縁部材32とによって構成してある。
【0027】
枠部材31は、枠11の見込み面を覆う枠カバー部31aと、枠カバー部31aにおいて室内側に位置する側縁部から枠11の見込み面に対して離反する方向に屈曲した立上り部31bと、立上り部31bの端部から室内方向に向けて屈曲した額カバー部31cとを一体に成形したものである。額カバー部31cは、立上り部31bから室内側に向けて平板状に延在し、その裏面が躯体Fに対向するものである。額カバー部31cの延在縁部には、リップ部31dが設けてある。リップ部31dは、額カバー部31cから躯体Fに向けてわずかに突出した部分であり、額カバー部31cの全長に渡って形成してある。
【0028】
この枠部材31は、枠カバー部31aの室外側に位置する側縁部を枠11の中間係合ヒレ15に係合させた後、枠カバー部31aを介して枠11に取付ネジ16を締結することにより、枠11に対して着脱可能に取り付けてある。図からも明らかなように、枠部材31には、室外側に位置する側縁部に立上り部31bに対向する立壁部31eが設けてある。
【0029】
押え縁部材32は、一対の係合爪32aを介して枠部材31の立上り部31b及び立壁部31eに着脱可能に係合し、枠11の取付片14に対向して配置されるものである。図1及び図2に示すように、取付片14及び押え縁部材32は、互いに対向する部位にそれぞれパッキン23を備えており、これらのパッキン23を介して互いの間にガラスパネル20を挟持している。
【0030】
これに対して開口枠10の下枠11Lには、室内側に位置する側縁部に取付片14と同等に突出した内壁部17が設けてある。このため、下枠11Lのパネル押え30は、合成樹脂材によって成形した枠部材31Lによってのみ構成してある。具体的に説明すると、下枠11Lに設けた枠部材31Lは、下枠11Lの見込み面を覆う下枠カバー部31aLと、下枠カバー部31aLにおいて室内側に位置する側縁部から下枠11Lの見込み面に対して離反する方向に屈曲した下枠立上り部31bLと、下枠立上り部31bLの端部から室内方向に向けて屈曲した下枠額カバー部31cLと、下枠カバー部31aLにおいて室外側に位置する側縁部から下枠11Lの見込み面に近接する方向に屈曲した押え壁部31fLとを一体に成形したものである。下枠額カバー部31cLは、下枠立上り部31bLから室内側に向けて平板状に延在し、その裏面が躯体Fに対向するものである。下枠額カバー部31cLの延在縁部には、リップ部31dLが設けてある。リップ部31dLは、下枠額カバー部31cLから躯体Fに向けてわずかに突出した部分であり、下枠額カバー部31cLの全長に渡って形成してある。
【0031】
この枠部材31Lは、押え壁部31fLの端部を下枠11Lの中間係合ヒレ15Lに係合させるとともに、下枠立上り部31bLから下枠11Lの見込み面に向けて突出した係合片部31gLを下枠11Lの内壁部17に係合させることにより、下枠11Lに対して着脱可能に取り付けてある。図3に示すように、下枠11Lの取付片14及び枠部材31は、互いに対向する部位にそれぞれパッキン23を備えており、これらのパッキン23を介して互いの間にガラスパネル20を挟持している。
【0032】
一方、開口枠10の各枠11には、室内側に位置する部位に額縁部材40が配設してある。平板状を成す額縁本体41と、額縁本体41の縁部に装着した固定具42とを備えて構成したもので、開口枠10よりも室内側に位置する部位に額縁状に設けてある。
【0033】
固定具42は、図4及び図5に示すように、矩形の平板状を成す連結片42aと、連結片42aの両側縁部から互いに対向する方向に向けて屈曲した第1挟持片42b及び第2挟持片42cとを金属の薄板によって一体に成形したものである。図1〜図3に示すように、第1挟持片42bは、枠部材31の額カバー部31c及び枠部材31Lの下枠額カバー部31cLによってその全面を覆うことのできる大きさに形成してある。第2挟持片42cは、連結片42aからの突出量が第1挟持片42bよりも大きくなるように構成したもので、ネジ挿通孔43及び一対の突起44を有している。
【0034】
ネジ挿通孔43は、固定具42を躯体Fに対して支持させる際に固定ネジ45を挿通させるためのものである。図4及び図5に示すように、第2挟持片42cにおいてネジ挿通孔43の周囲に位置する部分は、漏斗状に成形してあり、図1〜図3に示すように、固定ネジ45を挿通させた場合、第2挟持片42cから固定ネジ45の頭部が突出しないように頭部を収容することが可能である。
【0035】
突起44は、図4及び図5に示すように、第2挟持片42cにおいて一対の平行に形成したスリット44aの間を曲げ加工することによって固定具42と一体に成形したものである。これらの突起44は、第1挟持片42bと第2挟持片42cとの相互間隔をわずかに減少させるように、第2挟持片42cから第1挟持片42bに向けて突出する一方、押圧した場合に弾性的に変形して退行するものである。本実施の形態1では、固定具42の板厚分だけ第1挟持片42bと第2挟持片42cとの相互間隔が減少するように突起44が設けてある。
【0036】
上記の構成を有した固定具42は、図1〜図3に示すように、連結片42aの外表面を枠11の室内側に向いた見付け面(以下、「内方見付け面11a」という)に当接させるとともに、第1挟持片42bの全面が枠部材31の額カバー部31c及び枠部材31Lの下枠額カバー部31cLによって覆われる位置に配置され、躯体Fとの間に適宜スペーサSを介在させた状態で、第2挟持片42cのネジ挿通孔43を介して躯体Fに固定ネジ45を締結することにより、躯体Fに支持させてある。第1挟持片42bと枠部材31の額カバー部31c及び枠部材31Lの下枠額カバー部31cLとの間は、予めゲル状もしくは液状の接着剤50を塗布しておき、固定具42の連結片42aを枠11の内方見付け面11aに当接させた際に接着させるようにしている。ここで、図1からも明らかなように、固定具42の連結片42aと枠部材31の立上り部31bとの間には、固定具42の連結片42aを枠11の内方見付け面11aに当接させた際にも貯留空間RSを確保するようにしている。従って、固定具42の連結片42aを枠11の内方見付け面11aに当接させる際に、予め塗布したゲル状もしくは液状の接着剤50が奥方に移動したとしても、この貯留空間RSに留めておくことができ、枠部材31と開口枠10との接合部に接着剤50が至る事態を防止することができる。
【0037】
躯体Fに支持させた固定具42に対しては、図6に示すように、第1挟持片42bと第2挟持片42cとの間に縁部を挿入することによって額縁本体41を支持させる。すなわち、第1挟持片42bと第2挟持片42cとの間に挿入された額縁本体41は、第2挟持片42cに設けた突起44の弾性力によって第1挟持片42bに押圧された状態に維持され、これら第1挟持片42b及び第2挟持片42cの間に挟持されることになり、固定具42を介して躯体Fに支持される。額縁部材40を固定具42に挿入する場合には、作業性を考慮して、予め4枚の額縁部材40を互いに組み立て額縁状に構成しておくことが好ましい。尚、スペーサSと躯体Fとの間及びスペーサSと額縁本体41との間は、それぞれゲル状や液状の接着剤50によって接着してある。
【0038】
図2及び図3に示すように、額縁本体41は、それぞれの室外側に位置する見込み面を覆う枠部材31の額カバー部31c及び枠部材31Lの下枠額カバー部31cLとの間に段差が生じないように、外部に露出した部分の板厚が固定具42に挟持させた部分よりも大きくなるように構成してある。より具体的には、額縁本体41の見付け面において室外側に位置する部位に、額カバー部31c及び下枠額カバー部31cLの板厚に相当する段状の凹部41aを形成することにより、相対的に外部に露出した部分の板厚を大きく構成している。尚、図には明示していないが、固定具42は、額縁本体41の全長に渡って配設しても良いが、額縁本体41の一部に設けるように構成しても構わない。
【0039】
上記のように構成した建具では、開口枠10の見込み面が合成樹脂製の枠部材31によって覆われるため、意匠性の点で優れたものになるばかりでなく、防露性の点でも有利となる。しかも、額縁本体41を覆う枠部材31の額カバー部31c及び枠部材31Lの下枠額カバー部31cLは、固定具42の第1挟持片42bに対して接着してある。従って、日射等の影響による温度変化によっても枠部材31や枠部材31Lに熱変形が発生する事態を防止することができ、額縁本体41から離隔するなどして外観品質を低下させたり、額縁部材40の取付強度が低下する事態を招来する恐れもない。加えて、額縁本体41を覆う枠部材31の額カバー部31c及び枠部材31Lの下枠額カバー部31cLを接着する接着剤50は、固定具42の第1挟持片42bとの間に設けたものである。従って、固定具42の第1挟持片42bと第2挟持片42cとの間に対して額縁本体41を抜き差しした場合にも、接着剤50が削り落とされる等の問題が起こることもない。
【0040】
さらに、額縁部材40の固定具42と躯体Fとの間及び枠部材31と開口枠10との間がそれぞれ着脱可能に支持させてある。具体的には、額縁部材40の固定具42は、第2挟持片42cを介して固定ネジ45を締結することによって躯体Fに支持させてあり、枠部材31は、枠カバー部31aの室外側に位置する側縁部を枠11の中間係合ヒレ15に係合させた後、枠カバー部31aを介して枠11に取付ネジ16を締結することによって枠11に支持させてある。下枠11Lの枠部材31Lは、押え壁部31fLの端部を下枠11Lの中間係合ヒレ15Lに係合させるとともに、下枠立上り部31bLから下枠11Lの見込み面に向けて突出した係合片部31gLを下枠11Lの内壁部17に係合させることにより、下枠11Lに支持させてある。従って、固定具42と躯体Fとの結合状態及び枠部材31と開口枠10との結合状態を解除することで互いを容易に分離することができ、開口枠10を交換することなく枠部材31の交換が可能となる。しかも、枠部材31の額カバー部31cと固定具42の第1挟持片42bとの間を接着剤50によって接着しているため、枠部材31に熱変形を来した場合にも額縁部材40の固定具42から離隔する事態を防止することができる。
【0041】
尚、上述した実施の形態1では、固定具42を固定ネジ45によって直接躯体Fに締結するようにしているため、額縁部材40の取付強度をより大きく確保することができるが、本発明はこれに限定されない。例えば、上述した実施の形態1の構成に加え連結片42aと枠11の内方見付け面11aとの間を接合手段(図示せず)によって接合しても良く、両者の併用により、取付強度をより向上させるように構成することも可能である。尚、連結片42aと枠11の内方見付け面11aとの間を接合する接合手段としては、ゲル状や液状の接着剤、あるいは両面テープを用いることができるし、ネジ等の締結部材を用いて接合しても良い。
【0042】
また、上述した実施の形態1では、額縁本体41の固定具42に挟持させる部分の厚みが、第1挟持片42bと第2挟持片42cとの相互間距離にほぼ等しいものを例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、額縁本体41の固定具42に挟持させる部分の厚みが第1挟持片42bと第2挟持片42cとの相互間距離より小さくても良い。但し、この場合には、額縁部材40と固定具42との間に隙間が生じてしまうため、当該隙間に板部材等のスペーサを介在させて額縁部材40の固定具42に挟持させる部分の厚みを第1挟持片42bと第2挟持片42cとの相互間距離と同じに設定しておくことが好ましい。このような構成にすれば、固定具42によって額縁本体41を確実に挟持することができる。
【0043】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2である建具を示したものである。ここで例示する建具は、実施の形態1と同様、柱や窓台、まぐさ等の躯体Fに支持させた開口枠10の内部にガラスパネル20を固定設置した嵌め殺し窓であり、実施の形態1とは枠11′の構成及び額縁部材40′の構成が異なっている。
【0044】
すなわち、実施の形態2の開口枠10を構成する枠11′には、対向片部18が設けてある。対向片部18は、枠11′の内方見付け面11aにおいて躯体Fに近接した部位から室内側に向けて屈曲した部分であり、枠部材31の額カバー部31cに対してほぼ平行となるように延在している。この対向片部18には、枠部材31の額カバー部31cに対向する部位に係合突起19が形成してあるとともに、ネジ挿通孔18aが形成してある。係合突起19は、額カバー部31cに近接するに従って漸次室外側に傾斜するように突出した部分である。ネジ挿通孔18aは、枠11′を躯体Fに対して支持させる際に固定ネジ45を挿通させるためのものである。
【0045】
一方、実施の形態2で用いる額縁部材40′は、平板状を成すもので、室外側に位置する縁部に挿入傾斜面46及び係止面47が設けてある。挿入傾斜面46は、額縁部材40′の縁部において対向片部18に近接する隅部に形成したもので、室外側に向けて漸次対向片部18から離隔する方向に傾斜している。係止面47は、額縁部材40′において対向片部18に対向する裏面に形成した平面であり、室内側に向けて設けてある。より具体的には、額縁部材40′の裏面に凹溝48を形成することにより、その室外側に位置する平面を係止面47として構成してある。係止面47を設ける位置は、額カバー部31cの端面を額縁部材40′に形成した段状凹部41aの端面に当接させた場合に、対向片部18の係合突起19が当接する位置である。
【0046】
尚、実施の形態2において実施の形態1と同様の構成に関しては、同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略している。
【0047】
この建具においては、枠11′の対向片部18が躯体Fとの間に適宜スペーサSを介在させた状態で、ネジ挿通孔18aを介して躯体Fに固定ネジ45を締結することにより、枠11′が躯体Fに支持させてある。この枠11′に対して額縁部材40′を取り付けるには、枠部材31の額カバー部31cにおいて対向片部18に対向する内表面に予めゲル状もしくは液状の接着剤50を塗布しておく。この状態から額カバー部31cと対向片部18との間に額縁部材40′の縁部を挿入すると、挿入傾斜面46が係合突起19に当接することになる。しかしながら、さらに額縁部材40′を挿入させれば、挿入傾斜面46の傾斜作用によって係合突起19が弾性的に変形して退行することになり、額縁部材40′の挿入が許容される。額縁部材40′の挿入が進行し、係止面47が係合突起19の先端を通過すると、係合突起19が弾性復元力によって再び対向片部18から突出した状態に復帰し、係止面47に対向した状態となる。従って、額縁部材40′が脱落方向に移動しようとしても、係合突起19が係止面47に当接することによってこれが阻止されることになる。
【0048】
一方、額縁部材40′と枠部材31の額カバー部31cとの間においては、額縁部材40′の挿入に伴って凹部41aの表面に順次接着剤50が塗布されることになり、両者の間が接着された状態に維持される。
【0049】
上記のように構成した建具では、開口枠10の見込み面が合成樹脂製の枠部材31によって覆われるため、意匠性の点で優れたものになるばかりでなく、防露性の点でも有利となる。しかも、額縁部材40′を覆う枠部材31の額カバー部31cは、額縁部材40′に対して接着剤50により接着してある。従って、日射等の影響による温度変化によっても枠部材31に熱変形が発生する事態を防止することができ、額縁部材40′から離隔するなどして外観品質を低下させたり、額縁部材40′の取付強度が低下する等の問題を招来する恐れもない。
【0050】
ここで、上記の建具においては、額カバー部31cの先端に対向片部18に向けて突出するリップ部31dが設けてある。従って、このリップ部31dの作用により、額縁部材40′を挿入する際に凹部41aの表面と額カバー部31cにおいて予め接着剤50を塗布した内表面との間に一定の隙間が確保されることになり、接着剤50のすべてが削り落とされる事態を招来することがない。しかも、額カバー部31cの端面を額縁部材40′に形成した凹部41aの端面に当接させた場合にも、額カバー部31cと立上り部31bと当該立上り部31bに形成した枠11′の内方見付け面11aの端部を覆う室内方向突出部31gとで形成される略凹状の貯留空間RSを確保するようにしている。従って、額縁部材40′を挿入する際に、予め塗布したゲル状もしくは液状の接着剤50が奥方に移動したとしても、この貯留空間RSに留めておくことができ、枠部材31と開口枠10との接合部に接着剤50が至る事態を防止することができる。
【0051】
さらに、額縁部材40′と躯体Fとの間及び枠部材31と開口枠10との間がそれぞれ着脱可能に支持させてある。具体的には、額縁部材40′は、枠11′の対向片部18に設けた係合突起19を係止面47に当接させることで、開口枠10を介して躯体Fに支持させてあり、枠部材31は、枠カバー部31aの室外側に位置する側縁部を枠11′の中間係合ヒレ15に係合させた後、枠カバー部31aを介して枠11′に取付ネジ16を締結することによって枠11′に支持させてある。従って、額縁部材40′と開口枠10との間の結合状態及び枠部材31と開口枠10との結合状態を解除することで互いを容易に分離することができ、開口枠10を交換することなく枠部材31の交換が可能となる。
【0052】
尚、上述した実施の形態2では、枠部材31の係合突起19を額縁部材40′の裏面に形成された係止面47に当接させることにより、開口枠10を介して額縁部材40′を躯体Fに支持させているが、本発明はこれに限定されない。例えば、上述した実施の形態2の構成に加え額縁部材40′の室外側端部と枠11の内方見付け面11aとの間を接合手段(図示せず)によって接合しても良く、両者の併用により、取付強度をより向上させるように構成することも可能である。額縁部材40′と枠11の内方見付け面11aとの間を接合する接合手段としては、ゲル状や液状の接着剤、あるいは両面テープを用いることができる。接合手段としてゲル状や液状の接着剤を用いた場合には、額縁部材40′と枠11との間の接着剤が額縁部材40′の挿入の際に額縁部材40′の室外側端部と枠11との対向面に広がり奥方へ移動する恐れがあるが、奥方へ移動した接着剤を貯留空間RSに留めておくことができ、枠部材31と開口枠10との接合部に接着剤が至る事態を防止できる。
【0053】
また、上述した実施の形態1及び実施の形態2では、建具として嵌め殺し窓を例示しているが、その他の建具にももちろん適用することが可能である。例えば、図8に示す実施の形態3のように、開口枠10に対して障子であるガラスパネル120が室外側に向けて押し開くように構成した建具にも適用可能である。実施の形態3で示す建具は、具体的には「縦辷り出し窓」と称されるもので、左側に位置する縦框(以下、「左框121」という)を中心として右側に位置する縦框(以下、「右框122」という)が回転可能であり、右框122が室外側に突出した場合に開口枠10が開くことになる。
【0054】
開口枠10に設けた枠部材130は、枠11の見込み面を覆う枠カバー部130aと、枠カバー部130aにおいて室内側に位置する側縁部から枠11の見込み面に対して離反する方向に屈曲した枠立上り部130bと、枠立上り部130bの端部から室内方向に向けて屈曲した額カバー部130cと、枠カバー部130aにおいて室外側に位置する側縁部から枠11の見込み面に近接する方向に屈曲した枠支持部130dと、枠カバー部130aにおいて枠支持部130dよりも室内側に位置する部位から枠11の見込み面に対して離反する方向に突出し、突出端部に係着部130fを有した受支持部130eとを合成樹脂材によって一体に成形したものである。額カバー部130cは、固定具42の第1挟持片42bを覆うことのできる大きさを有したものである。受支持部130eには、室内側に位置する面に受具131が取り付けてある。受具131は、枠部材130の受支持部130eを介して枠11の中間ヒレ15′に取り付けられた部材である。
【0055】
この枠部材130は、受支持部130eの係着部130fを枠11の中間ヒレ15′に係着させた後、枠カバー部130aを介して枠11に取付ネジ16を締結することにより、枠11に対して着脱可能に取り付けてある。さらに、額カバー部130cと固定具42の第1挟持片42bとの間は、ゲル状もしくは液状の接着剤50によって接着してある。
【0056】
一方、ガラスパネル120には、右框122にカムラッチハンドル132が設けてある。カムラッチハンドル132は、右框122の室内側に位置する見付け面に取り付けられ、見込み方向に沿った軸を中心として回転することが可能である。このカムラッチハンドル132は、係合部132aを受具131に当接させた場合、開口枠10に対してガラスパネル120の右框122が室外側に移動するのを阻止し、開口枠10に対してガラスパネル120を閉じた状態に維持する。この状態から、カムラッチハンドル132を回転操作し、係合部132aと受具131との当接状態を解除すれば、右框122と縦枠11との係合状態も解除されることになり、右框122を室外側に突出させることにより、開口枠10を開くことが可能となる。尚、図8に示す実施の形態3において、実施の形態1と同様の構成に関しては、同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略している。
【0057】
上記のように構成した建具では、開口枠10の見込み面が合成樹脂製の枠部材130によって覆われるため、意匠性の点で優れたものになるばかりでなく、防露性の点でも有利となる。しかも、額縁本体41を覆う枠部材130の額カバー部130cは、固定具42の第1挟持片42bに対して接着してある。従って、日射等の影響による温度変化によっても枠部材130に熱変形が発生する事態を防止することができ、額縁本体41から離隔するなどして外観品質を低下させる恐れもない。加えて、額縁本体41を覆う枠部材130の額カバー部130cを接着する接着剤50は、固定具42の第1挟持片42bとの間に設けたものである。従って、固定具42の第1挟持片42bと第2挟持片42cとの間に対して額縁本体41を抜き差しした場合にも、接着剤50が削り落とされたり剥がれたりする等の影響を与えることがない。しかも、固定具42の連結片42aと枠部材130の立上り部130bとの間には、固定具42の連結片42aを枠11の内方見付け面11aに当接させた際にも貯留空間RSを確保するようにしている。従って、固定具42の連結片42aを枠11の内方見付け面11aに当接させる際に、予め塗布したゲル状もしくは液状の接着剤50が奥方に移動したとしても、この貯留空間RSに留めておくことができ、枠部材130と開口枠10との接合部に接着剤50が至る事態を防止することができる。
【0058】
さらに、額縁部材40の固定具42と躯体Fとの間及び枠部材130と開口枠10との間がそれぞれ着脱可能に支持させてある。具体的には、額縁部材40の固定具42は、第2挟持片42cを介して固定ネジ45を締結することによって躯体Fに支持させてあり、枠部材130は、受支持部130eの係着部130fを枠11の中間ヒレ15′に係着させた後、枠カバー部130aを介して枠11に取付ネジ16を締結することによって支持させてある。従って、固定具42と躯体Fとの結合状態及び枠部材130と開口枠10との結合状態を解除することで互いを容易に分離することができ、開口枠10を交換することなく枠部材130の交換が可能となる。しかも、枠部材130の額カバー部31cと固定具42の第1挟持片42bとの間を接着剤50によって接着しているため、枠部材130に熱変形を来した場合にも額縁部材40の固定具42から離隔する事態を防止することができる。
【0059】
ここで、図8に示す実施の形態3のように、開口枠10に対してガラスパネル120が室外側に移動することによって開口枠10を開口させる建具では、カムラッチハンドル132の係合部132aが受具131に当接された状態にあると、室内外の圧力差によってガラスパネル120が室外側に引っ張られた場合、支持用ヒレ部12の端部を中心として縦枠11が室外側に捲れ上がるように力が作用することになる。
【0060】
しかしながら、実施の形態3によれば、固定具42と枠部材130との間が接着剤50により接着され、かつ固定具42と躯体Fとの間が固定ネジ43によって締結されている。しかも、固定ネジ43の締結方向は、支持用ヒレ部12を躯体Fに締結する支持ネジ13の締結方向に対してほぼ直角となる。従って、カムラッチハンドル132の係合部132aが枠部材130の受具131に当接された状態において、室内外の圧力差によってガラスパネル120が室外側に引っ張られた場合にも、縦枠11が室外側に捲れ上がるような事態を有効に防止できる。
【符号の説明】
【0061】
10,10′ 開口枠
11,11L 枠
15 中間係合ヒレ
16 取付ネジ
18 対向片部
19 係合突起
30,30L パネル押え
31,31L,130 枠部材
40,40′ 額縁部材
41 額縁本体
42 固定具
42b 第1挟持片
42c 第2挟持片
44 突起
45 固定ネジ
47 係止面
50 接着剤
F 躯体
RS 貯留空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体に支持させた開口枠と、前記開口枠よりも室内側に位置する部位に配設した額縁部材とを備え、前記開口枠に支持させた枠部材によって前記開口枠の室内側の見込み面と前記額縁部材の室外側の見込み面とを覆うようにした建具において、
前記額縁部材を躯体に支持させ、かつ前記枠部材は前記額縁部材との互いに対向する見込み面の間のみを接着剤にて接着したことを特徴とする建具。
【請求項2】
前記額縁部材の室外側端部と前記枠部材の当該額縁部材に対向する面との間には、前記額縁部材が配設された際に前記接着剤を貯留するための貯留空間を設けたことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記額縁部材は、板状を成す額縁本体と、前記額縁本体の室外側縁部に装着される固定具とを備え、
前記固定具は、第1挟持片と、第2挟持片とを有し、前記第1挟持片と前記第2挟持片との間に前記額縁本体を挟持し、
前記躯体の室内側の見込面と対向する前記第2挟持片を介して躯体に固着具を締結することにより、前記固定具を躯体に支持させたことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項4】
前記第1挟持片は、全面が前記枠部材によって覆われる大きさに形成したことを特徴とする請求項3に記載の建具。
【請求項5】
前記固定具には、前記第1挟持片及び前記第2挟持片の少なくとも一方に、これら第1挟持片及び第2挟持片の相互間隔を減少させる突起を形成したことを特徴とする請求項3に記載の建具。
【請求項6】
前記開口枠は、室内側に向けて延設し、前記枠部材に対向して配置される対向片部を有し、かつこの対向片部に係合突起を形成し、前記係合突起を前記額縁部材の裏面に係合させることにより、前記開口枠を介して前記額縁部材を躯体に支持させることを特徴とする請求項1に記載の建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−202118(P2012−202118A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67900(P2011−67900)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】