説明

建具

【課題】固定障子とする障子を建て込む際の窓枠の傷付きを防止できるとともに障子の建て込み作業性を向上させることができる建具を提供すること。
【解決手段】端部キャップ20の第2底面部24を屋外側上面部材3Fの上面に載置し、屋外側上面部材3Fの上面に第2底面部24を摺接させつつ固定障子8をスライドさせ、さらに端部キャップ20の壁部28の摺接底面281を屋外側下レール3Bの上面に摺接させつつ固定障子8をスライドさせ、壁部28を凹み部3Gに挿入して固定障子8を下降させて位置決めすることで、外召合せ框14Aや下框12を下枠3の屋外側上面部材3Fや屋外側下レール3B等に直接摺接させずに固定障子8を建て込むことができ、下枠3への傷付きを防止することができるとともに、摩擦抵抗を低減させて建て込み作業の作業性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関し、詳しくは、窓枠内部に固定される少なくとも1枚の障子を備えた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、窓枠内部に固定した方立や縦骨でガラスパネルを移動不能に支持し、このようなガラスパネルによって嵌め殺し部(Fix部)を構成した片引き窓などが知られている(例えば、特許文献1参照)。この片引き窓では、窓枠において、Fix部に対応した部分にガラス保持部が設けられ、その屋外側に可動障子を開閉自在に支持するレールなどの開閉支持部が設けられている。このため、窓枠の構造が複雑になるとともに、建て込み作業も煩雑になってしまうという問題があった。
そこで、方立や縦骨を用いずに、可動障子と同様の構成を有した障子を窓枠内部に固定し、この障子(固定障子)によってFix部を構成した窓が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この窓では、窓枠のレール部に左右移動自在に支持された障子を固定手段で固定することでFix部が構成され、固定手段の固定を解除すれば障子を開放することかできるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2584651号公報
【特許文献2】実開昭62−96479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献2に記載されたような窓では、固定障子をも開閉可能に支持するために、戸車を取り付けるなど可動障子と同等の仕様にしておく必要があることから、固定障子としては構成部品等が過剰となってコストが増大するという問題がある。
一方、開閉不能な仕様として戸車等を省略した固定障子を窓枠内に建て込むことも考えられるが、その場合には、戸車が省略されていることで、障子の下端縁(下框や縦框の下端)が下枠に直接載置された際に下枠を傷付けてしまう可能性がある。さらに、窓枠内に建て込んだ障子を左右に移動させて位置決めする際に、下枠の傷をさらに拡げてしまうとともに、金属同士が摺接することによる大きな摩擦抵抗が生じて作業性が低下するという問題もある。
【0005】
本発明の目的は、固定障子とする障子を建て込む際の窓枠の傷付きを防止できるとともに障子の建て込み作業性を向上させることができる建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建具は、下枠を有した窓枠と、この窓枠内部に固定される少なくとも1枚の障子とを備えた建具であって、前記下枠は、当該下枠の長手方向に沿って延びるとともに上方に立ち上がる立上部を有し、この立上部の一部には、当該立上部の上面から下方に向かって凹んだ凹み部が形成され、前記障子の下端縁には、前記立上部の上面に載置されて摺動可能かつ前記立上部を受け入れ可能な摺動部材が設けられ、前記摺動部材には、前記立上部の上面に摺接可能かつ前記凹み部に挿入可能な摺接壁部が上下に延びて形成されることを特徴とする。
【0007】
以上の本発明によれば、障子の下端縁に設けた摺動部材を下枠の立上部上面に載置してから、摺接壁部の底面を立上部の上面に摺接させて障子を移動させ、摺接壁部を凹み部に挿入して障子を位置決めすることで、摺動部材を介して障子を立上部等の下枠に建て込むことができる。従って、下枠への傷付きを防止することができるとともに、摩擦抵抗を低減させて建て込み作業の作業性を向上させることができる。さらに、摺動部材の摺接壁部を立上部の凹み部に挿入して障子を位置決めすることで、下枠の長手方向に沿ってスライドさせた障子を所定位置で下降させる、つまり摺接壁部を凹み部に落とし込むだけで位置決めが完了し、障子の自重によって容易には位置決めが解除されないことから、建て込み作業を容易かつ確実に実施することができる。
【0008】
この際、本発明の建具では、前記摺動部材には、前記摺接壁部の底面よりも上方に凹んだ凹溝部が形成され、前記障子を下降させた際に前記凹溝部に前記立上部を受け入れ可能に構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、障子を下降させて凹溝部に立上部を受け入れることで、摺接壁部および凹み部による下枠の長手方向に沿った障子の位置決めのみならず、凹溝部と立上部との係合による見込み方向の障子の位置決めも同時に行うことができ、建て込み作業の作業性を向上させつつ位置決め精度を高めることができる。
【0009】
さらに、本発明の建具では、前記下枠の立上部は、前記下枠の略全長に渡って形成された立上片と、前記固定される障子の下方から外れた位置の前記立上片に沿って取り付けられた上面部材とを有して構成され、前記凹み部は、前記立上片に形成され、前記摺動部材には、前記摺接壁部の底面よりも下方にて略水平面に沿って延びる平坦面部が形成され、この平坦面部が前記上面部材の上面に載置されて摺動可能に構成され、前記摺接壁部の底面が前記立上片の上面に摺接可能に構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、固定した障子に隣接して開口部となる側の下枠に上面部材を設けておくことで、この開口部の下枠上面をフラットに形成することができ、開口部から出入りする際の利便性を高めることができる。そして、このような上面部材を設けた場合でも、摺動部材に平坦面部を形成して上面部材の上面に摺動させることで、上面部材への傷付きを防止することができる。さらに、平坦面部が摺接壁部の底面よりも下方に形成されているので、障子を建て込む際に、先ず平坦面部が上面部材に載置され、下枠の長手方向に障子をスライドさせて平坦面部が上面部材の端部を越えたときに、平坦面部と摺接壁部の底面との段差分だけ障子が下降してから摺接壁部の底面が立上片の上面に載置されることとなる。従って、摺動部材と立上部との摺動状態が作業者から判別しやすくなって、障子の建て込み作業を一層容易かつ確実に実施することができる。
【0010】
また、本発明の建具では、前記摺動部材は、前記障子の縦框の下端部に取り付けられる端部部材で構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、縦框の端部部材によって摺動部材を構成することで、端部部材とは別に摺動部材を用意する場合と比較して部品点数を削減することができる。また、端部部材(摺動部材)を設ける縦框を、障子に隣接して開口部となる側の縦框とすれば、開口部において露出する下枠の傷付きを確実に防止することができ、建具の良好な外観を確保することができる。
【0011】
この際、本発明の建具では、前記摺動部材は、樹脂製であって、前記縦框の下端部には、前記摺接壁部に隣接して設けられる金属製の垂下面部が形成され、前記障子を下降させた際に前記摺接壁部とともに前記垂下面部が前記凹み部に挿入されることが好ましい。
このような構成によれば、縦框の金属製の垂下面部を摺接壁部とともに凹み部に挿入することで、樹脂製の摺動部材の摺接壁部のみならず、縦框の垂下面部によっても障子を位置決めすることができ、位置決めの強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る建具を示す縦断面図である。
【図2】前記建具を示す横断面図である。
【図3】前記建具に設けられる固定障子の下部を示す斜視図である。
【図4】前記固定障子の下端部に設けられる端部部材を示す斜視図である。
【図5】前記固定障子の下部における固定構造を示す斜視図である。
【図6】前記固定構造を屋内側から見た斜視図である。
【図7】前記固定障子の建て込み手順を示す斜視図である。
【図8】図7の手順を下方から見た斜視図である。
【図9】図7、8に続く前記固定障子の建て込み手順を示す斜視図である。
【図10】図9に続く前記固定障子の建て込み手順を示す斜視図である。
【図11】前記固定障子の上部における固定構造を示す斜視図である。
【図12】前記固定構造の固定手順を示す斜視図である。
【図13】前記固定構造のに用いる固定部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2において、実施形態に係る建具としての片引き窓1は、上枠2、下枠3および左右の縦枠4,5を四周枠組みした窓枠6と、この窓枠6の内部に開閉自在に支持される屋内側の可動障子7と、この可動障子7よりも屋外側にて窓枠6に固定される固定障子8と、この固定障子8よりも屋外側にて窓枠6に開閉自在に支持される網戸9とを備えて構成されている。可動障子7および固定障子8は、それぞれアルミ形材製の上框11、下框12および左右の縦框13,14を四周框組みした内部にガラスパネル(複層ガラス)15を嵌め込んで構成されている。可動障子7は、その下框12に設けられた戸車12Aが下枠3の屋内側下レール3Aに案内されることで、左右開閉自在に支持されている。一方、固定障子8には戸車が設けられておらず、その下框12が下枠3の屋外側下レール(立上片)3Bに載置されている。そして、可動障子7を閉じることで、その縦框13と固定障子8の縦框14とが見込み方向に重なり、すなわち、可動障子7の縦框13で内召合せ框13Aが構成され、固定障子8の縦框14で外召合せ框14Aが構成されている。一方、可動障子7を固定障子8の屋内側に重ねて開放することで、固定障子8の外召合せ框14Aと縦枠5との間に開口部6Aが形成されるようになっている。
【0014】
上枠2は、それぞれ下方に開口して凹溝状に形成された屋内側障子支持部2Aおよび屋外側障子支持部2Bを有して形成され、屋内側障子支持部2Aに可動障子7の上端縁が摺動可能に支持され、屋外側障子支持部2Bに固定障子8の上端縁が見込み方向に移動不能に支持されている。
図2中、左側の縦枠4は、見付け方向内方に開口した屋外側障子支持部4Aを有して形成され、この屋外側障子支持部4Aに固定障子8の戸先側の縦框13(戸先框13B)が見込み方向に移動不能に支持されている。図2中、右側の縦枠5は、見付け方向内方に開口した屋内側障子支持部5Aを有して形成され、この屋内側障子支持部5Aに閉じた可動障子7の戸先側の縦框14が引き寄せられて見込み方向に移動不能に支持されるようになっている。
【0015】
下枠3は、それぞれ下枠3の長手方向に沿って延びる屋内側下レール3Aおよび屋外側下レール3Bと、これらの間すなわち下枠3の見込み方向中間位置にて各レール3A,3Bを平行に延びる中間仕切片3Cとを有して形成されている。また、下枠3の長さ方向略中央の召合せ部、つまり可動障子7を閉じた状態で内召合せ框13Aと外召合せ框14Aとが見込み方向に並んで重なる位置の下方には、各召合せ框13A,14Aに当接可能な気密部材である風止め板3Dが取り付けられている。さらに、風止め板3Dよりも固定障子8側(図2中、左側)には、屋内側下レール3Aと中間仕切片3Cとに渡って樹脂製の屋内側上面部材3Eが取り付けられ、風止め板3Dよりも開口部6A側(図2中、右側)には、屋内側下レール3Aと屋外側下レール3Bとに渡るとともに中間仕切片3Cに係合されるアルミ形材製の屋外側上面部材(上面部材)3Fが取り付けられている。以上の下枠3において、屋外側下レール3Bと屋外側上面部材3Fとによって立上部が構成され、これらの上面に後述する固定障子8の端部キャップ20が摺接可能に構成されている。
【0016】
固定障子8の外召合せ框14Aは、図3〜図6にも示すように、金属製であるアルミ形材製の縦框本体14Bと、この縦框本体14Bの屋内側に係合する樹脂製の押縁14Cとを有して構成されている。縦框本体14Bは、開口部6A側にて見込み方向に延びる見込み面部141と、この見込み面部141の屋外側端部から見付け方向内側(ガラスパネル15側)に延びる屋外側見付け面部142と、見込み面部141の屋内側端部から見付け方向内側に屈曲して延びる屋内側見付け面部143と、屋内外の見付け面部142,143に渡って見込み方向に延びる連結面部144と、これらで囲まれた中空部145とを有して形成されている。そして、連結面部144に押縁14Cが係合されて取り付けられ、この押縁14Cと屋外側見付け面部142との間にガラスパネル15の側端縁が保持されるようになっている。このような外召合せ框14Aの下端部には、端部部材(摺動部材)としての端部キャップ20が取り付けられている。
【0017】
端部キャップ20は、樹脂製の一体成形部材であって、外召合せ框14Aの中空部145に下方から圧入されて係合される挿入部21と、外召合せ框14Aの見込み面部141外面に沿って設けられて挿入部21との間に見込み面部141を挟み込むキャップ側面部22と、挿入部21の下端部に連続するとともに外召合せ框14Aの屋外側見付け面部142の下端縁に沿って延びる第1底面部23と、挿入部21の下端部に連続するとともに第1底面部23よりも屋内側に設けられる第2底面部(平坦面部)24と、これら第1および第2の底面部23,24の間に位置して上方に凹溝状に形成される凹溝部25とを有して形成されている。さらに、端部キャップ20は、第2底面部24の屋内側端縁から立ち上がり下框12の気密材保持溝12Bに連続して形成される気密材保持部26と、気密材保持部26の下框12側端部と第2底面部24とを連結する立上片部27とを有して構成されている。これらの気密材保持溝12Bおよび気密材保持部26には、図1に示すような気密材としてのモヘア12Cが下框12からキャップ側面部22近傍に至るまで連続して保持され、このモヘア12Cが屋内側上面部材3Eに当接するようになっている。
【0018】
凹溝部25は、屋外側下レール3Bを略隙間なく受け入れ可能な見込み方向の幅寸法を有するとともに、キャップ側面部22側に開口して外召合せ框14Aの見付け方向内方に連続して形成され、当該凹溝部25の内方側端部(左右方向ガラスパネル15側端部)は、図3に示すように壁部(摺接壁部)28で塞がれている。この壁部28は、第1および第2の底面部23,24よりも若干(例えば、1mm〜数mm程度)高い位置に設けられる摺接底面281と、この摺接底面281の凹溝部25側に連続して上がり勾配を有した傾斜面部282と、この傾斜面部282から凹溝部25上面まで連続して立ち上がる表面部283と、凹溝部25と反対側にて摺接底面281の端縁に連続して立ち上がる背面部284とを有して構成されている。背面部284の表面は、立上片部27とフラットに形成され、これらの立上片部27および背面部284と面一な状態で外召合せ框14Aの連結面部144が設けられ、連結面部144の下端から垂下された垂下面部144Aが背面部284の直上まで延びて形成されている。この垂下面部144Aの下端縁位置は、少なくとも壁部28の上端位置すなわち凹溝部25の上端位置よりも下方まで延びて設けられている。
【0019】
以上のような端部キャップ20が取り付けられた外召合せ框14Aおよび固定障子8は、図5に示すように、下枠3の屋外側下レール3Bに形成された凹み部3Gに壁部28が挿入されるとともに、凹溝部25に屋外側下レール3Bを受け入れることで位置決めされ、さらに図6に示すように、下枠3に係止された金属製の固定片3Hを屋内側見付け面部143にビス止め固定することで、下枠3に対して移動不能に固定されるようになっている。ここで、凹み部3Gは、風止め板3Dの屋外側に対向する位置に設けられ(図7参照)、屋外側下レール3Bをその上面から下方に向かって切り欠いて形成され、この凹み部3Gの上部開口側における一方側(図7の左側)には、壁部28の傾斜面部282に摺接可能な傾斜面3Iが形成されている。さらに、凹み部3Gは、端部キャップ20の壁部28が挿入された状態において、外召合せ框14Aの垂下面部144Aの先端部も凹み部3Gに挿入される程度の深さ寸法を有して形成されている。また、固定片3Hは、全体L字形に形成された金属板材からなり、風止め板3Dの屋外側で中間仕切片3Cとの間に挿通されるとともに、中間仕切片3Cの基端部を切り欠いて形成された係止孔3J(図8参照)に係止されている。
【0020】
固定障子8の建て込み手順としては、先ず、図7および図8に示すように、外召合せ框14Aを固定位置よりも開口部6A側に位置させた状態で、下枠3の上方から固定障子8を下降させて下枠3の上面に載置する。この際、固定障子8の上端縁(上框11および縦框13,14の上端部)は上枠2の屋外側障子支持部2Bに挿入され、すなわち、けんどん式で窓枠6内部に固定障子8が建て込まれ、固定障子8の下端縁側では、端部キャップ20の第2底面部24が屋外側上面部材3Fの上面に載置される。なお、図示を省略するが、固定障子8の戸先框13B側においては、この戸先框13Bの下端部に設けられた端部キャップが屋外側下レール3Bに載置されている。次に、図9に示すように、端部キャップ20の第2底面部24を屋外側上面部材3Fの上面に摺接させつつ固定障子8をスライドさせ、さらに、図10に示すように、端部キャップ20の摺接底面281を屋外側下レール3Bの上面に摺接させつつ固定障子8をスライドさせてから、壁部28を凹み部3Gに挿入して、固定障子8を下降させる。この際、固定障子8の戸先框13B側においても、屋外側下レール3Bに設けられた切欠きに端部キャップの一部を落とし込むようにする。
【0021】
以上のように固定障子8は、端部キャップ20の壁部28の表面部283および背面部284と垂下面部144Aとが凹み部3Gに係止されることで、下枠3の長手方向に移動不能に位置決めされるとともに、端部キャップ20の凹溝部25に屋外側下レール3Bを受け入れることで、見込み方向にも位置決めされるようになっている。さらに、固定障子8は、中間仕切片3Cの係止孔3Jに係止された固定片3Hを外召合せ框14Aにビス止め固定することで、上方への移動が規制され、これにより外召合せ框14Aの下端部(端部キャップ20)が下枠3から浮き上がらず、位置決め状態を維持できるようになっている。
【0022】
一方、固定障子8の上部側における固定構造は、図11〜図13に示すように、外召合せ框14Aの上端部に固定されるとともに上枠2の屋外側障子支持部2Bに係合される固定部材30を有して構成されている。ここで、屋外側障子支持部2Bには、見込み方向に延びる上枠上面部2Cと、この上枠上面部2Cの屋外側端部から下方に延びる上枠見付け面部2Dと、上枠上面部2Cの屋内端部側にて屋外側に開口した溝状の係止溝部2Eとが、それぞれ上枠2の長手方向に連続して形成されている。また、外召合せ框14Aの上端部には、端部キャップ14Dが取り付けられている。
固定部材30は、樹脂製の一体成形部材であって、外召合せ框14Aの見込み面部141に固定される固定部31と、この固定部31に連続して水平方向に延び固定障子8の端部キャップ14Dと上枠上面部2Cとの間に挿入される挿入部32とを有して形成されている。
【0023】
固定部31は、外召合せ框14Aの見込み面部141に沿って上下および見込み方向に延びる平板状に形成され、ビス33によって見込み面部141に固定されるようになっている。挿入部32は、2つの上面部34,35と、屋内外の側面部36,37と、底面部38とを有して中空状に形成され、この中空内部には上下に延びるリブ部39が設けられている。2つの上面部34,35は、それぞれ上枠上面部2Cに摺接可能に設けられるとともに、屋内側の上面部34は、その屋内側端縁が係止溝部2Eに係止可能に構成されている。また、底面部38は、端部キャップ14Dの上面に対して摺接可能あるいは接近した状態で対向可能に設けられている。また、屋外側の側面部37には、上下の切り欠き溝に挟まれて屋内外方向に弾性変形可能な弾性片部371と、この弾性片部371の略中央から屋外側に突出した係合部としての係合突起372とが形成され、係合突起372は、上枠2の上枠見付け面部2Dに形成された係合孔2Fに係合可能に構成されている。
【0024】
以上の固定部材30の取付手順としては、前述のように建て込んで下枠3に対して固定障子8を位置決めした状態で、図11に示すように、上面部34の屋内側端縁を上枠2の係止溝部2Eに係止させかつ2つの上面部34,35を上枠上面部2Cに当接させた固定部材30を、開口部6A側から固定障子8に向かってスライドさせる。この際、係合突起372が上枠見付け面部2Dに当接して屋内側に押し込まれることで、弾性片部371が付勢状態で屋内側に撓むこととなる。さらに、固定障子8をスライドさせて挿入部32を端部キャップ14Dと上枠上面部2Cとの間に挿入し、係合突起372が上枠見付け面部2Dの係合孔2Fまで押し込むことで、図12に示すように、弾性片部371の付勢力によって係合突起372が屋外側に押し出されて係合孔2Fに係合する。このように係合突起372を係合孔2Fに係合させたら、ビス33で固定部31を見込み面部141に固定して固定部材30の取り付けが完了する。このように固定部材30の挿入部32を端部キャップ14Dと上枠上面部2Cとの間に挿入することで、固定障子8の上方への移動が規制され、固定障子8が窓枠6に対して移動不能に固定されることとなる。
【0025】
以上の実施形態によれば、端部キャップ20の第2底面部24を屋外側上面部材3Fの上面に載置し、屋外側上面部材3Fの上面に第2底面部24を摺接させつつ固定障子8をスライドさせ、さらに端部キャップ20の壁部28の摺接底面281を屋外側下レール3Bの上面に摺接させつつ固定障子8をスライドさせ、壁部28を凹み部3Gに挿入して固定障子8を下降させて位置決めすることで、外召合せ框14Aや下框12を下枠3の屋外側上面部材3Fや屋外側下レール3B等に直接摺接させずに(または、直接摺接することを抑制しつつ)固定障子8を建て込むことができる。従って、アルミ等の金属よりも軟らかくかつ摺動性がよい樹脂製の端部キャップ20を摺接させることで、下枠3への傷付きを防止することができるとともに、摩擦抵抗を低減させて建て込み作業の作業性を向上させることができる。さらに、端部キャップ20の壁部28を凹み部3Gに落とし込むだけで固定障子8の位置決めが完了し、固定障子8の自重によって容易には位置決めが解除されないことから、建て込み作業を容易かつ確実に実施することができる。さらに、凹み部3Gによって固定障子8を位置決めしてから、固定片3Hを外召合せ框14Aにビス止め固定するとともに、固定部材30を外召合せ框14A上端部と上枠上面部2Cとの間に挿入して固定することで、安定した状態で固定作業を実施することができ、建て込み作業の作業性をさらに向上させることができる。
【0026】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態においては、片引き窓1を例示して説明したが、本発明の建具は、片引き窓1に限らず、少なくとも1枚の固定障子を有したものであればよく、その開閉形式は特に限定されない。また、片引き窓1では、可動障子7が固定障子8よりも屋内側に設けられた内動片引き形式のものを例示したが、可動障子7が固定障子8よりも屋外側に設けられた外動片引き形式のものであってもよい。
【0027】
また、前記実施形態では、壁部28や摺接底面281、第2底面部24などを有して外召合せ框14Aの下端部に取り付けられる端部キャップ20を摺動部材としたが、これに限らず、摺動部材は、固定障子8の下端縁のいずれの位置に設けられていてもよく、従って、下框12の長手方向途中位置に摺動部材が設けられていてもよい。さらに、前記実施形態では、固定障子8における戸先框13Bの下端部に設けられる端部キャップに関しては詳しく説明しなかったが、端部キャップ20と同様の構成を有したものが戸先框13Bに取り付けられていてもよいし、他の構成を有するものが取り付けられていてもよい。さらには、戸先框13Bの下端部の端部キャップを省略して、戸先框13Bの下端縁を直接下枠3に摺接させるようにしてもよい。この場合、戸先框13Bの下端縁との摺接によって下枠3に傷が付く可能性があるものの、このように戸先框13Bの下端縁が摺接する部分は、固定した固定障子8によって隠蔽されるため、その部分の下枠3に傷が付いても特に大きな問題とはならない。
【0028】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0029】
1…片引き窓(建具)、2…上枠、3…下枠、3B…屋外側下レール(立上片)、3F…屋外側上面部材(上面部材)、3G…凹み部、6…窓枠、8…固定障子、14A…外召合せ框(縦框)、20…端部キャップ(摺動部材、端部部材)、24…第2底面部(平坦面部)、25…凹溝部、28…壁部(摺接壁部)、30…固定部材、31…固定部、32…挿入部、144A…垂下面部、372…係合突起(係合部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下枠を有した窓枠と、この窓枠内部に固定される少なくとも1枚の障子とを備えた建具であって、
前記下枠は、当該下枠の長手方向に沿って延びるとともに上方に立ち上がる立上部を有し、この立上部の一部には、当該立上部の上面から下方に向かって凹んだ凹み部が形成され、
前記障子の下端縁には、前記立上部の上面に載置されて摺動可能かつ前記立上部を受け入れ可能な摺動部材が設けられ、
前記摺動部材には、前記立上部の上面に摺接可能かつ前記凹み部に挿入可能な摺接壁部が上下に延びて形成される建具。
【請求項2】
前記摺動部材には、前記摺接壁部の底面よりも上方に凹んだ凹溝部が形成され、前記障子を下降させた際に前記凹溝部に前記立上部を受け入れ可能に構成されている請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記下枠の立上部は、前記下枠の略全長に渡って形成された立上片と、前記固定される障子の下方から外れた位置の前記立上片に沿って取り付けられた上面部材とを有して構成され、前記凹み部は、前記立上片に形成され、
前記摺動部材には、前記摺接壁部の底面よりも下方にて略水平面に沿って延びる平坦面部が形成され、この平坦面部が前記上面部材の上面に載置されて摺動可能に構成され、前記摺接壁部の底面が前記立上片の上面に摺接可能に構成されている請求項1または請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記摺動部材は、前記障子の縦框の下端部に取り付けられる端部部材で構成されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の建具。
【請求項5】
前記摺動部材は、樹脂製であって、前記縦框の下端部には、前記摺接壁部に隣接して設けられる金属製の垂下面部が形成され、前記障子を下降させた際に前記摺接壁部とともに前記垂下面部が前記凹み部に挿入される請求項4に記載の建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−82613(P2012−82613A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229486(P2010−229486)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】