説明

建物の壁構造、サッシ、及び建物の壁の構築方法

【課題】建物の外面又は内面を構成するサッシを容易に取り付ける。
【解決手段】下地鉄骨50に、原則として下側から順番に断熱パネル100を取り付けていく。また、建物10の開口部となる部位にはサッシ200が取り付ける。また、下側に配置された断熱パネル100のパネル側段差部122又はサッシ200のサッシ側段差部222を、上側に配置する断熱パネル100のパネル側垂下片部132又はサッシ200のサッシ側垂下片部232が覆うように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁構造、サッシ、及び建物の壁の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐火性能および断熱性能を確保するため建物の外壁を断熱パネルで構成した建物構造が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、建物の外壁の開口部に窓枠として用いるサッシ(建材)が設けられている(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
そして、スターター材を介して断熱パネルをサッシ上に固定支持させると共に、断熱パネルとスターター材及びサッシとの間にコーキング剤を充填してシールした施工構造が開示されている(例えば、特許文献3を参照)。
【0005】
ここで、サッシと断熱パネルとで外壁の外面を構成する場合、断熱パネルが取り付けられる下地鉄骨とは別に専用のサッシ用の鉄骨下地を設けて、このサッシ用の鉄骨下地にサッシを取り付けることが一般的とされている。よって、サッシと断熱パネルとで外壁の外面を構成する建物は、断熱パネルのみで外壁を構成する場合と比較し、施工が複雑であり、施工時間がかかることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4410571号
【特許文献2】特許2007−211492号公報
【特許文献3】特許2004−197365号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事実を考慮し、パネルと共に建物の外面(建物外部の壁面)又は内面(建物内部の壁面)を構成するサッシを容易に取り付けることができる建物の壁構造、サッシ、及び建物の壁の構築方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、左右方向に間隔をあけて配置された縦材と、前記縦材に取り付けられ、前記建物の外面又は内面を構成する複数のパネルと、前記縦材に取り付けられ、前記パネルと共に前記建物の外面又は内面を構成する複数のサッシと、を備える。
【0009】
請求項1の発明では、建物の外面又は内面を構成する複数のパネルが取り付けられる縦材に、パネルと共に建物の外面又は内面を構成する複数のサッシを取り付けるので、別途専用の鉄骨下地を設けてサッシを取り付ける構成と比較し、施工が容易である。
【0010】
請求項2の発明は、前記サッシは、上端部前面に凹設され、上側に配置された前記パネルの下端部前面から垂下するパネル側垂下片部によって覆われるサッシ側段差部と、下端部前面から垂下し、下側に配置された前記パネルの上端部前面に凹設されたパネル側段差部を覆うサッシ側垂下片部と、を備える。
【0011】
請求項2の発明では、サッシの上端部前面に凹設されたサッシ側段差部が上側に配置されたパネルの下端部前面から垂下するパネル側垂下片部によって覆われ、サッシの下端部前面から垂下するサッシ側垂下片部が下側に配置されたパネルの上端部前面に凹設されたパネル側段差部が覆われる。よって、サッシとパネルとの間に、例えば、別途スターター材を挟んでサッシが取り付けられる構成と比較し、施工が容易である。
【0012】
請求項3の発明は、上側に配置されたサッシの前記サッシ側垂下片部が、前記上側に配置されたサッシの下側に配置されたサッシの前記サッシ側段差部を覆うように、サッシ同士が上下に並んで配置されている部位を有する。
【0013】
請求項3の発明では、サッシ同士を上下方向に容易に配置して縦材に取り付けられる。
【0014】
請求項4の発明は、前記サッシが前記建物の外面又は内面に着脱するために必要な該サッシの上下方向の移動代が、該サッシの下端と、該サッシの下側に配置された前記パネル又は前記サッシの上端と、の間に形成されている。
【0015】
請求項4の発明では、サッシを上下方向にケンドン式に移動させることで、建物の外面又は内面に着脱することができるので、サッシの交換、位置変更、及び後付け等の施工が容易である。
【0016】
請求項5の発明は、前記サッシの角部には、隣接する前記パネル又は前記サッシとの境界との隙間を止水する止水部材が設けられている。
【0017】
請求項5の発明では、サッシの角部に設けられた止水部材によって止水性能が向上する。
【0018】
請求項6の発明は、パネルと共に建物の外面又は内面を構成するサッシ本体と、前記サッシ本体の上端部前面に凹設され、前記パネルの下端部前面から垂下するパネル側垂下片部によって覆われることが可能なように構成されたサッシ側段差部と、前記サッシ本体の下端部前面から垂下し、前記パネルの上端部前面に凹設されたパネル側段差部を覆うことが可能なように構成されたサッシ側垂下片部と、を備える。
【0019】
請求項6の発明では、サッシの上端部前面に凹設されたサッシ側段差部が上側に配置されたパネルの下端部前面から垂下するパネル側垂下片部によって覆われ、サッシの下端部前面から垂下するサッシ側垂下片部が下側に配置されたパネルの上端部前面に凹設されたパネル側段差部が覆われる。よって、サッシ側段差部とサッシ側垂下片部とが設けられていないサッシと比較し、施工が容易である。
【0020】
請求項7の発明は、上端部前面に凹設されたパネル側段差部と下端部前面から垂下したパネル側垂下片部とを有するパネルと、上端部前面に凹設されたサッシ側段差部と下端部前面から垂下したサッシ側垂下片部とを有するサッシと、を、前記パネル側段差部又は前記サッシ側段差部を、上側に配置する前記パネル側垂下片部又は前記サッシ側垂下片部が覆うように、左右方向に間隔をあけて配置された縦材に、前記パネル又は前記サッシを取り付けていく。
【0021】
請求項7の発明では、パネル側段差部又はサッシ側段差部を、上側に配置する前記パネル側垂下片部又は前記サッシ側垂下片部が覆うように、パネル又はサッシを縦材に取り付けていくので、施工が容易である。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、パネルと共に建物の外面又は内面を構成するサッシを容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る建物の外壁を面外方向外側から見た正面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】図1の4−4線断面図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】(A)はサッシの上側の角部の止水構造を示す一部を切欠いた斜視図であり、(B)はサッシの下側の角部の止水構造を示す斜視図である。
【図7】外壁の施工方法の一例を(A)〜(C)へと順番に示す工程図である。
【図8】図1に示す本発明の一実施形態の建物の外壁の変形例を示す拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1〜図7を用いて、本発明の一実施形態に係る建物の外壁について説明する。
なお、各図において、建物10の外壁12の面外方向外側(正面側、外面側、表側)方向を矢印OUTで示し、鉛直方向上側を矢印UPで示し、正面視における建物10の外壁12の左側方向を矢印LEFTで示す。なお、矢印OUTと反対側方向が建物10の面外方向内側(内面側、裏側、室内側)方向であり、鉛直方向上側を矢印UPと反対側方向が鉛直方向下側であり、矢印LEFTと反対側方向が正面視における建物10の右側方向である。
【0025】
<構造>
まず、建物10の外壁12の構造について説明する。
【0026】
図1に示すように、縦材の一例としての下地鉄骨50が、鉛直方向を長手方向として配置されると共に、建物10の基礎14、スラブ、梁等の躯体に左右方向に間隔をあけて固定されている(図7も参照)。下地鉄骨50の裏側には、下地鉄骨50を連結する左右方向を長手方向として配置された横材20(図7参照)が、上下方向に間隔をあけて取り付けられている。
【0027】
なお、図7における横材20の配置間隔は一例である。例えば、図7よりも配置間隔が広くてもよい。また、横材20は無くてもよい。
【0028】
図1に示すように、これら下地鉄骨50に、建物10の外面(建物外部の壁面)を構成する外壁パネルの一例としての断熱パネル100と、断熱パネル100と共に建物10の外面を構成し窓枠として用いるサッシ(建材)200と、が取り付けられている。そして、このように複数の断熱パネル100とサッシ200とが上下及び左右に多段に配置され、下地鉄骨50に取り付けられることで、建物10の外壁12が構成されている。
【0029】
図4に示すように、本実施形態では、下地鉄骨50は、軸方向(長手方向、鉛直方向)と直交する断面形状が矩形状の中空の鉄骨部材とされている。なお、下地鉄骨50は、本実施形態のような構成に限定されない。例えば、H形鋼などの形鋼であってもよい。
【0030】
図2〜図4に示すように、断熱パネル100は、表裏二枚の金属製の外皮材112と金属製の内皮材114との間に、高密度ロックウールや発泡性合成樹脂等の断熱材116が芯材として挟まれたパネル本体110を有している。
【0031】
図2と図3とに示すように、パネル本体110の上端部にはパネル側凸部120が設けられると共に、下端部にはパネル側凸部120が係合(嵌合)するパネル側凹部130が設けられている。
【0032】
上端部のパネル側凸部120は、パネル本体110の面外方向の厚みよりも幅狭とされ、上端面の一部を除き外皮材112及び内皮材114で被覆されている。また、パネル側凸部120の前面側(外面側)の凹設部分を前側のパネル側段差部122とし、後面側の凹設部分を後側のパネル側段差部124とする。
【0033】
下端部のパネル側凹部130は、パネル側凸部120が係合(嵌合)するよう構成され、下端面の一部を除き除き外皮材112及び内皮材114で被覆されている。前面側(外面側)の外皮材112を後面側(裏面側)に向けて折り返すことにより、下端部前面から垂下する前側のパネル側垂下片部132が形成されている。同様に後面側の内皮材114を前側面(裏面側)に向けて折り返すことにより、下端部後面から垂下する後側のパネル側垂下片部134が形成されている。
【0034】
そして、図2に示すように、上下方向に並んで配置された下側の断熱パネル100のパネル側凸部120のパネル側段差部122、124を、上側の断熱パネル100のパネル側凹部130のパネル側垂下片部132,134が挟み係合(嵌合)する。なお、本実施形態ではパネル側垂下片部132,134の幅をパネル側段差部122,124の厚みよりも若干狭くなるように設定されており、パネル側垂下片部132,134が弾性変形することで、パネル側凸部120が挿入され、パネル側垂下片部132,134がパネル側段差部122,124を挟み込むように構成されている。
【0035】
また、断熱パネル100は、パネル側凸部120の前側のパネル側段差部122からドリルビス等の固定具60を打ち込むことで、下地鉄骨50に固定されている。なお、固定具60の頭部62は、パネル側垂下片部132によって覆われ、前面側からは固定具60の頭部62が見えないように構成されている。
【0036】
なお、本実施形態においては、上下の断熱パネル100の間は、セラミックファイバー142とゴム製のパッキン144とで構成されたシール部材140でシールされている。
【0037】
図1に示すように、サッシ200は、建物10の外壁開口部に設けられた固定窓(嵌め殺し窓、FIX窓)とされている。図3と図5とに示すように、サッシ200は、サッシ本体210と、サッシ本体210の上端部に設けられたサッシ側凸部220と、サッシ本体210の下端部に設けられたサッシ側凹部230と、を有している。
【0038】
図3〜図5に示すように、サッシ本体210は、四周を枠組みしたアルミ製の窓枠212を有し、窓枠212の中に二枚のガラスパネル(複層ガラス)214,216が嵌め込まれている。また、サッシ本体210の面外方向の厚みは、断熱パネル100のパネル本体110の面外方向の厚みと略同じとされている。
【0039】
図3と図5とに示すように、サッシ本体210の下端部のサッシ側凹部230は、断熱パネル100のパネル側凹部130と略同様の外形とされ断熱パネル100のパネル側凸部120が挿入することが可能な形状とされている。同様にサッシ本体210の上端部のサッシ側凸部220は、断熱パネル100のパネル側凸部120と略同様の外形とされパネル側凹部130に挿入することが可能な形状とされている。
【0040】
上端部のサッシ側凸部220は、サッシ本体210の面外方向の厚みよりも幅狭とされている。また、サッシ側凸部220の前面側(外面側)の凹設部分を前側のサッシ側段差部222とし、後面側の凹設部分を後側のサッシ側段差部224とする。
【0041】
下端部のサッシ側凹部230は、下端部前面から垂下するサッシ側垂下片部232が形成されることによって構成されている。なお、本実施形態では、パネル側垂下片部134に相当する部位はサッシ200のサッシ側下端部後面にはない構成となっている。
【0042】
下端部のサッシ側凹部230の上面部分は、面外方向外側に向かって下り勾配の傾斜面252が形成されている。また、サッシ本体210とサッシ側凹部230との境界部分の外壁面部分には、水抜切欠部254が形成されている。
【0043】
そして、下側に配置された断熱パネル100のパネル側凸部120がサッシ200の下端部のサッシ側凹部230に挿入されると共に、パネル側段差部122をサッシ側垂下片部232が覆うように配置されている。なお、パネル側段差部122をサッシ側垂下片部232との間には若干隙間が形成されているが、後述する止水部材156の垂下部157(図6(B)参照)が挟まれ、この隙間が埋まるように構成されている。
【0044】
また、上側に配置された断熱パネル100のパネル側凹部130にサッシ200の上端部のサッシ側凸部220が挿入されると共に、パネル側垂下片部132,134が挟みパネル側段差部222,224を覆うように配置されている。なお、本実施形態ではパネル側垂下片部132,134の幅をパネル側段差部222,224の厚みよりも若干狭くなるように設定されており、パネル側垂下片部132,134が弾性変形することで、サッシ側凸部220が挿入され、パネル側垂下片部132,134がサッシ側段差部222,224を挟み込むように構成されている。
【0045】
図3〜図5に示すように、サッシ200は、上端部の裏面と下端部の裏面とが、下地鉄骨50に設けられた取付部材の一例としてL字形状のブラケット70にボルト15及びナット16等によって取り付けられている。なお、サッシ200の上端部は、ブラケット70に上部に設けられたブラケット80がサッシ200の自重を受けると共にボルト17及びナット18によってサッシ200の高さを調整することが可能なように、取り付けられている。
【0046】
図5に示すように、サッシ200同士が上下方向に並んで配置された箇所(図1も参照)は、下側に配置されたサッシ200のサッシ側凸部220に、上側のサッシ200の下端部のサッシ側凹部230が挿入されると共に、サッシ側段差部222をサッシ側垂下片部232が覆うように配置されている。
【0047】
図3に示すように、断熱パネル100及びサッシ200を下地鉄骨50に取り付けた状態では、サッシ200のサッシ本体210の下端210Tと、断熱パネル100の上端100Uとの間には、移動代(間隔)Eが設けられている。なお、図5に示すように、サッシ200同士が上下方向に並んで配置された箇所は、サッシ200のサッシ本体210の下端210Tとサッシ200の上端200Uとの間にも同様に移動代(間隔)Eが設けられる。
【0048】
図1に示すように、断熱パネル100の横方向の長さ及び縦方向の長さと、サッシ200の横方向の長さ及び縦方向の長さと、は略同じとされている。別の言い方をすると、サッシ200は、面外方向に見た外形が断熱パネル100の外形と同形状又は略同形状となるように構成されている。
【0049】
また、図3と図4とに示すように、断熱パネル100のパネル本体110の厚みとサッシ200のサッシ本体210の面外方向の厚みとが略同じとされている。よって、断熱パネル100及びサッシ200を下地鉄骨50に取り付けた状態において、断熱パネル100のパネル本体110の前面110Aとサッシ200のサッシ本体210の前面210Aとは、面一又は略面一となる(外壁12の外面12Aが面一又は略面一となる)。
【0050】
また、図4に示すように、隣接する断熱パネル100及びサッシ200との境界は止水部材150で止水されている。
【0051】
図6(A)に示すように、サッシ200の上部の角部には、隣接する断熱パネル100又はサッシ200との境界との隙間を止水する止水部材152が嵌め込まれている。更に、サッシ200の上端部の内部には、横方向に沿って止水部材154が貼り付けられている。
【0052】
また、図6(B)に示すように、サッシ200の下部の角部には、隣接する断熱パネル100又はサッシ200との境界との隙間を止水する止水部材156が嵌め込まれている。止水部材156の略直方体の本体部155は、サッシ200のサッシ本体210の下端210Tに設けられた移動代Eを埋めるように構成されている。また、本体部155から垂下する垂下部157は、サッシ側垂下辺部232とパネル側段差部122との間に挟まれるように構成さている。
【0053】
なお、本実施形態では止水部材152,156は、EPDM等のゴム製とされているが、これに限定されない。例えば、発泡ゴム製であってもよい。
【0054】
<施工方法>
つぎに、断熱パネル100とサッシ200とを、上下及び左右に多段に並置して、建物10の外壁12を施工する壁面施工方法について、図7を用いて説明する。なお、本施工方法(外壁の構築方法)は一例であって、これに限定されるものではない。なお、下地鉄骨50への断熱パネル100とサッシ200の取付構造は、既に説明したので、ここでは説明を省略する。
【0055】
図7(A)〜図7(C)へと順番に示すように、下地鉄骨50に原則として下側から順番に断熱パネル100を取り付けていく。また、建物10の開口部となる部位にはサッシ200を取り付ける。また、下側に配置された断熱パネル100のパネル側段差部122又はサッシ200のサッシ側段差部222を、上側に配置する断熱パネル100のパネル側垂下片部132又はサッシ200のサッシ側垂下片部232が覆うように取り付けていく(図2、図3、図5も参照)。
【0056】
<作用及び効果>
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0057】
建物10の外面を構成する複数の断熱パネル100が取り付けられる下地鉄骨50に、複数のサッシ200を取り付ける。サッシ200は、面外方向に見た外形が断熱パネル100の外形と同形状又は略同形状となるように構成されている。また、断熱パネル100の仕口形状とサッシ200の外形とが略同形状となっている。
【0058】
そして、サッシ200の上端部前面に凹設されたサッシ側段差部222が上側に配置された断熱パネル100の下端部前面から垂下するパネル側垂下片部132によって覆われ、サッシ200の下端部前面から垂下するサッシ側垂下片部232が下側に配置された断熱パネル100の上端部前面に凹設されたパネル側段差部122が覆われる。また、サッシ200同士が上下方向に並んで配置された箇所は、サッシ200の上端部前面に凹設されたサッシ側段差部222が上側に配置されたサッシ200の下端部前面から垂下するサッシ側垂下片部232で覆われる。
【0059】
したがって、例えば、断熱パネル100を取り付ける下地鉄骨50を切断して別に専用のサッシ用の下地鉄骨を設け、このサッシ用の下地鉄骨にサッシが取り付けられる構成と比較し、施工が容易である。更に、サッシ200同士を上下方向に並べて容易に下地鉄骨50に取り付けられる。
【0060】
また、断熱パネル100を取り付ける金属工(作業者)が、サッシ200を取り付けることが可能である。よって、施工効率が向上し工期の短縮が図れると共に、施工管理を合理化することができる
【0061】
また、サッシ200のサッシ側垂下片部232が、下側に配置された断熱パネル100のパネル側段差部122又はサッシ200のサッシ側段差部222で覆い、サッシ側垂下片部232が水返部材としての機能を果たすので、止水性能が確保されている。また、サッシ200の角部にできる隙間を止水部材152,156で止水されている。特に、止水部材156の本体部155で下端210Tに設けられた移動代Eを埋めて止水し、垂下部157でサッシ側垂下辺部232とパネル側段差部122との間を埋めて止水する。
【0062】
なお、仮にサッシ側垂下片部232とパネル側段差部122又はサッシ側段差部222との隙間から水が浸入したとしても、左右方向両側に水が流れ、サッシ200の左右方向両端部を伝って下側に落下する。そして、図3の矢印Mで示すように、落下した水滴は、傾斜面252に沿って流れ、水抜切欠部254から排水されるように構成されている。よって、例えば、サッシの水返部材や水切部材等を別途設けることが不要となる。また、これにより外壁12をよりフラットに構築することができる。
【0063】
ここで、サッシ200の厚みを断熱パネル100と同じ又は略同じとすることで、外面12Aを面一又は略面一としつつ、断熱パネル100が取り付けられる下地鉄骨50にサッシ200も取り付けることが可能となる。なお、「面一又は略面一とは」サッシ200が若干張り出した構成や逆にサッシ200が若干内側に配置されている構成も含まれる。なお、サッシの厚みが断熱パネル100よりも厚い場合は、断熱パネル100が取り付けられる下地鉄骨50を切断し、内側に位置する専用のサッシ用の下地鉄骨を設け、このサッシ用の下地鉄骨に幅厚のサッシを取り付けることで、断熱パネル100の外面と面一とする必要がある。
【0064】
また、このようにサッシ200を下地鉄骨50に取り付ける構造とし、また断熱パネル100と略同じ外形とすることで、サッシ200の位置の変更(レイアウト変更)が自由となる。よって、サッシ200に配置位置を取り付けの直前まで変更でき、建築主の要望に容易に応えることができる。
【0065】
また、図3と図5とに示すサッシ200のサッシ本体210の下側に設けた移動代Eを、サッシ200を上下方向にずらして建物10に着脱するために必要な隙間以上に設定することで、施工後にサッシ200をケンドン式に上下方向に移動して容易に着脱することができる。よって、施工後にサッシ200の位置を変更する必要が生じた場合、移動代Eが設けられていない構成と比較し、容易に変更することができる。なお、本実施形態では、移動代Eを止水部材156の本体部155で埋めている。よって、サッシ200を上下方向に移動する場合は、止水部材156を切断する等して取り除く。止水部材156はゴムや発泡体であるので、容易に取り除くことができる。
【0066】
<変形例>
つぎに上記実施形態の変形例について説明する。
【0067】
上記実施形態では、サッシ200は、面外方向に見た外形が断熱パネル100の外形と同形状又は略同形状となるように構成されていたが、これに限定されない。例えば、図8に示す変形例のように、左右方向の長さが断熱パネル100よりも短いサッシ201であってもよい。この場合、断熱パネル100と同じ外形となるように、サッシ201の左右にスペーサパネル又はスペーササッシとしてのスペーサ部材101を設ければよい。
【0068】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態及び変形例に限定されない。
【0069】
例えば、上記実施形態では、下地鉄骨50に原則として下側から順番に断熱パネル100を取り付け、建物10の開口部となる部位にサッシ200を取り付けていった。しかし、下側から順番に取り付けていかなくてもよい。例えば、サッシ200の納入が間に合わなかった場合や納入されたサッシ200の種類を変更する場合等には、サッシ200よりも上側の断熱パネル100を先に取り付けてもよい。また、このような場合、上記実施形態のように、サッシ200のサッシ本体210の下端210Tと断熱パネル100の上端100Uとの間に、移動代(間隔)Eが設けられていると、容易にサッシ200を後施工で取り付けることができるので、好適である。
【0070】
また、例えば、上記実施形態では、サッシ200は、断熱パネル100が取り付けられた下地鉄骨50に、取付部材の一例としてL字形状のブラケット70を介して取り付けられていたが、これに限定されない。下地鉄骨50に直接サッシ200が取り付けられる構成であってもよい。つまり、サッシは縦材に直接又は取付部材を介して取り付けられる。
【0071】
また、例えば、上記実施形態では、サッシ200は縦材の一例としての下地鉄骨50にのみに取り付けられていた。しかし、これに限定されない。例えば、下地鉄骨50の裏側に配置された横材20等の他の部材にも固定部材等を介して取り付けられていてもよい。つまり、サッシが縦材と他の部材との両方に取り付けられた構成であってもよい。但し、上記実施形態のように、サッシは縦材のみに取り付けられた構成であることが好ましい。そして、上記実施形態のように、サッシが縦材にのみ取り付ける構成とすることで、施工が容易となり、施工時間が大幅に短縮される。
【0072】
また、例えば、上記実施形態では、縦材の一例としての下地鉄骨50は、建物10の基礎14、スラブ、梁等の躯体に左右方向に間隔をあけて固定されていた。しかし、縦材が躯体の一部を兼ねるような建物構造であってもよい。
【0073】
また、例えば、上記実施形態では、断熱パネル100の後面にはパネル側垂下片部132を設けたが、これに限定されない。例えば、断熱パネルにパネル側垂下片部が設けられていない構成であってもよい。また、例えば、上記実施形態では外壁パネルの一例として断熱パネル100を用いたが、これに限定されない。例えば、鋼板パネルやALC板等であってもよい。
【0074】
また、例えば、上記実施形態ではサッシ200は、複層ガラスのサッシを一例として説明したが、これに限定されない。例えば、単板ガラスや三層ガラスのサッシであってもよい。
【0075】
また、例えば、上記実施形態ではサッシ200は、固定窓(嵌め殺し窓、FIX窓)であったがこれに限定されない。例えば、突き出し(排煙・換気)機構を有する窓であってもよいし、ブラインド状の羽根板(桟)を取り付けて固定することで外部に対して目隠しをしながら換気ができるように構成されたガラリ(通気口)であってもよい。なお、ガラリの場合、サッシのフレーム(本体)が外壁パネルと面一又は略面一となるように構成する。つまり、ブラインド状の羽根板(桟)が外壁パネルよりも外側にはみ出ていても、サッシのフレーム(本体)が外壁パネルと面一又は略面一であれば、面一又は略面一とされる。
【0076】
また、上記実施形態では、本発明を建物の外壁構造に適用した例で説明したが、これに限定されない。本発明は建物の内壁構造にも適用することができる。すなわち、内壁パネルと共に建物の内面(建物内部の壁面)を構成するサッシ、内壁パネルとサッシとで建物の内面を構成する内壁構造及び内壁の構築方法にも本発明を適用することができる。例えば、上記実施形態における外面及び外壁を内面及び内壁としたような構造となる。
【0077】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない
【符号の説明】
【0078】
10 建物
12 外壁
12A 外面
50 下地鉄骨(縦材の一例)
100 断熱パネル(パネルの一例)
110 パネル本体
122 パネル側段差部
132 パネル側垂下片部
152 止水部材
156 止水部材
200 サッシ
210 サッシ本体
222 サッシ側段差部
232 サッシ側垂下片部
E 移動代

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に間隔をあけて配置された縦材と、
前記縦材に取り付けられ、前記建物の外面又は内面を構成する複数のパネルと、
前記縦材に取り付けられ、前記パネルと共に前記建物の外面又は内面を構成する複数のサッシと、
を備える建物の壁構造。
【請求項2】
前記サッシは、
上端部前面に凹設され、上側に配置された前記パネルの下端部前面から垂下するパネル側垂下片部によって覆われるサッシ側段差部と、
下端部前面から垂下し、下側に配置された前記パネルの上端部前面に凹設されたパネル側段差部を覆うサッシ側垂下片部と、
を備える請求項1に記載の建物の壁構造。
【請求項3】
上側に配置されたサッシの前記サッシ側垂下片部が、前記上側に配置されたサッシの下側に配置されたサッシの前記サッシ側段差部を覆うように、サッシ同士が上下に並んで配置されている部位を有する、
請求項2に記載の建物の壁構造。
【請求項4】
前記サッシが前記建物の外面又は内面に着脱するために必要な該サッシの上下方向の移動代が、該サッシの下端と、該サッシの下側に配置された前記パネル又は前記サッシの上端と、の間に形成されている、
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の建物の壁構造。
【請求項5】
前記サッシの角部には、隣接する前記パネル又は前記サッシとの境界との隙間を止水する止水部材が設けられている、
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の建物の壁構造。
【請求項6】
パネルと共に建物の外面又は内面を構成するサッシ本体と、
前記サッシ本体の上端部前面に凹設され、前記パネルの下端部前面から垂下するパネル側垂下片部によって覆われることが可能なように構成されたサッシ側段差部と、
前記サッシ本体の下端部前面から垂下し、前記パネルの上端部前面に凹設されたパネル側段差部を覆うことが可能なように構成されたサッシ側垂下片部と、
を備えるサッシ。
【請求項7】
上端部前面に凹設されたパネル側段差部と下端部前面から垂下したパネル側垂下片部とを有するパネルと、
上端部前面に凹設されたサッシ側段差部と下端部前面から垂下したサッシ側垂下片部とを有するサッシと、
を、
前記パネル側段差部又は前記サッシ側段差部を、上側に配置する前記パネル側垂下片部又は前記サッシ側垂下片部が覆うように、
左右方向に間隔をあけて配置された縦材に、前記パネル又は前記サッシを取り付けていく、
建物の壁の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−50009(P2013−50009A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189716(P2011−189716)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】