説明

建物の換気システム

【課題】花粉飛散時期において、出入りや通風換気による窓等の開放時、並びに勝手口等の開放時に外気中に含まれる花粉が室内に侵入するのを低減することができる建物の換気システムを提供する。
【解決手段】
建物の開口部の近傍に備えられた吸引口から内気を室外に排出する排気手段と、前記開口部が開放状態にあるときに開口部からの外気を前記吸引口から吸引させるように前記排気手段を制御する制御手段とを具備せしめて建物の換気システムを構成する。更に給気手段を設けると共に、制御手段を、開口部の開閉検知手段と排気手段運転制御手段と給気手段運転制御手段とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物の換気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特定の花粉に対するアレルギー有症者が建物に居住している場合、建物内への花粉の侵入を防止するため、あるいは花粉で汚染された室内を浄化するために、例えば特許文献1や特許文献2に記載されたシステムを建物に組み込むことが行われてきた。
【0003】
特許文献1に開示されたシステムは、外気を花粉除去フィルターで浄化して室内に給気すると共に、室内空気を花粉除去フィルターで再度浄化して室内に循環させる常時給排気を行う換気システムである。また、特許文献2に開示されたシステムは、花粉飛散時期を含む冬期以外の時期では、花粉をサイクロン式分離器で除去した外気を室内に強制給気して第2種換気を行い、冬期では、花粉をサイクロン式分離器で除去した外気を強制給気すると共に、室内空気を強制排気して第1種換気を行うものである。
【0004】
【特許文献1】特開2006−46683号公報
【特許文献2】特開2006−46682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
花粉が飛散する時期はおおむね気候的には暑くも寒くもない穏やかな時期であるので、開口部を開放して自然の外気を室内に取り入れたいという要求が考えられる。しかし、前記特許文献に記載されたシステムは何れも、開口部を閉鎖した状態で換気量や外気の進入ルートを制御して花粉の侵入を防止するように構成されたものであり、上記の要求を満たすものではない。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、花粉飛散時期において、出入りや通風換気による窓等の開放時、並びに勝手口等の開放時に外気中に含まれる花粉が室内に侵入するのを低減することができる建物の換気システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の発明によれば、
建物の開口部の近傍に備えられた吸引口から内気を室外に排出する排気手段と、
前記開口部が開放状態にあるときに開口部からの外気を前記吸引口から吸引させるように前記排気手段を制御する制御手段と、
を具備することを特徴とする建物の換気システムが提供される。
ここで、建物の開口部とは、住宅などの建物の窓や玄関、勝手口等の出入り口のような、建物の外部と内部を連通させる開口を意味し、特に、新鮮な外気を屋内に取り込むために開閉がなされ得るあらゆる開口部を含む。
第一の発明では、開放された開口部から花粉等を含む外気が流入してきた場合、外気は排気手段によって開口部の近傍の吸引口から吸引されて室外に排出され、外気に含まれる花粉等の室内への侵入が防止又は低減される。
【0008】
第二の発明によれば、第一の発明において、前記制御手段が、前記開口部の開閉状態を検知する開閉検知手段と、該開閉検知手段からの信号に応じて前記排気手段の運転を制御する排気手段運転制御手段とを具備することを特徴とする建物の換気システムが提供される。
第二の発明では、開閉検知手段が開口部の開閉状態を検知し、その信号に応じて排気手段運転制御手段が排気手段の運転を制御し、排気手段の作動態様が開口部の開閉状態によって切換えられる。
【0009】
第三の発明によれば、第二の発明において、外気を室内に供給する給気手段を更に具備し、前記制御手段が、前記開閉検知手段からの信号に応じて該給気手段の運転を制御する給気手段運転制御手段を更に具備することを特徴とする建物の換気システムが提供される。
第三の発明では、開口部の開閉状態に応じて、給気手段の運転制御がなされる。よって、開口部の開閉状態に応じて、換気システム全体の制御がなされる。
【0010】
第四の発明によれば、第三の発明において、前記制御手段が、前記開口部が開放状態の場合は前記排気手段を大風量で運転させると共に、前記給気手段を小風量で運転させるか又は停止させる一方、前記開口部が閉鎖状態の場合は前記排気手段と前記給気手段を常時換気モードで運転させるように構成したことを特徴とする建物の換気システムが提供される。
第四の発明では、開放された開口部から花粉等を含む外気が流入してきた場合、排気手段を大風量で運転させて外気を開口部近傍の吸引口から吸引する一方、給気手段を小風量運転とし、開口部が閉鎖状態にあるときは、給気手段と排気手段は常時換気モードで運転される。ここで、常時換気モードとは、強制給気と強制排気が同風量かつ低風量で行われる換気モードのことを言う。
【0011】
更に、第五の発明によれば、第一から第四の発明の何れか一において、前記吸引口を前記開口部の下方の床面に配置したことを特徴とする建物の換気システムが提供され、また第六の発明によれば、第一から第五の発明の何れか一において、前記吸引口には、複数の透孔を有するカバー部材が配設されると共に、該カバー部材より吸引口内側には、防虫網が張設されたことを特徴とする建物の換気システムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
第一の発明によれば、開口部の近傍に吸引口を設け、開口部から流入してきた外気を排気手段によって吸引口から吸引して室外に排出するようにしたので、外気に含まれる花粉等が室内へ入ってくる間際にその侵入を防止し又は花粉等の侵入量を低減させることができる。従って、開口部を開放して自然の風の流れを感じ心地よさを享受しながらも花粉アレルギー者への影響を防止又は低減することができる。
第二の発明によれば、開口部の開閉状態を開閉検知手段によって検知し、その信号に応じて排気手段を運転するようにしたので、開口部の開閉に応じて排気手段を緻密に制御することができ、運転に必要なエネルギー量を低減することができる。
第三の発明によれば、第3種の常時換気システムとして機能させることができ、しかも開口部の開放時の換気モードと開口部の閉鎖時の換気モードを切換えることができる。
【0013】
第四の発明によれば、開口部が閉鎖されている状態では、排気手段の風量が抑えられ、しかもその風量に対応した給気手段も備えているので、開口部の閉鎖時は第3種の常時換気システムとして機能する。換言すると、第3種の常時換気システムに開閉検知手段と運転制御手段を付加するのみで、開口部を開放した際に侵入する花粉の除去を行うことができる。従って、建築基準法で定められた常時換気設備と一体化したシステムとすることができ、設備の初期費用、維持費ともに軽減することができる。
第五の発明によれば、吸引口を開口部の下方の床面に配置したので、重力により落下中の花粉を効率よく吸引することができる上、落下中には吸引しきれず床面に落ちてしまった花粉をも吸引することができる。また、開口部が閉鎖され排気手段が小風量での運転となっている冬季は、開口部からのダウンドラフトを吸引口で吸引することができるので、室内への冷気の拡散が低減される。従って、室内の温熱環境が向上しエネルギー消費量を低減することができる。
第六の発明によれば、吸引口にカバー部材を設けたので、居住者は吸引口を気にせずにその上を歩行することができることは勿論、意匠的にも好ましい床面とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る換気システムの好適な実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施形態に係る換気システムを戸建住宅に設置した状態を示す要部の断面図、図2は同じく平面図である。
図1中、1は住宅の居室を示し、その建物外周を構成する面に窓枠2aが設置され、その窓枠2aに引き違いの掃き出し窓(開口部)2bが設置されている。居室1の床は、RC造の布基礎3の上端面に支持されたALC(軽量気泡コンクリート)からなる床パネル4aの上面に、断熱材等(不図示)を介して、木製フローリングからなる床仕上げ材4bが敷設されて構成されている。また、床パネル4aの下方と地盤面5との間は床下空間6となっており、他の諸室の床下空間と連続している。そして、床パネル4aもしくは他の部屋の床パネルの一部に開口が設けられ、その開口に着脱自在な蓋が設けられて、床下空間6に潜入するための床下点検口(不図示)が構成されている。また居室1の上には、天井面を構成する天井材7が敷設され、天井材7の上は天井裏空間8となっている。
【0015】
本発明の好適な実施形態に係る換気システムは、外気を居室1内に給気する給気ファン(給気手段)10と、内気を居室1外に排出する排気ファン(排気手段)11と、掃き出し窓2bの開閉に応じて給気ファン10及び排気ファン11を制御する制御手段12を具備し、更に制御手段12は、掃き出し窓2bの開閉状態を検知する開閉センサー(開閉検知手段)13と、開閉センサー13からの信号に基づいて給気ファン10の運転を制御する給気ファン運転制御手段(給気手段運転制御手段)14と、開閉センサー11からの信号に基づいて排気ファン10の運転を制御する排気ファン運転制御手段(排気手段運転制御手段)15とを具備してなる。
【0016】
給気ファン10は、図示しない支持部材によって支持されて天井裏空間8に収容されており、その吸込み側には、天井裏の外周を構成する壁面に形成された開口に一端が連通せしめられた吸込みダクト10aの基端が接続され、その吹出し側には天井材7に形成された開口(グリル等が備えられた天井給気口10d)に一端が連通せしめられた吹出しダクト10bの基端が取付けられている。給気ファン10は、外気を吸引できるものであれば、シロッコファン、プロペラファン等、如何なる構造のものでも構わないが、ファン本体と該ファン本体を駆動する交流モーターを含む駆動部を具備してなり、給気ファン運転制御手段14がその駆動部に接続され、給気ファン運転制御手段14からの制御信号に基づいて、駆動部がファン本体の運転・停止及び/又は風量(回転数)制御を行い、掃き出し窓2bが閉鎖状態にあるときの常時換気モードと、掃き出し窓2bが開放状態にあるときの窓開放換気モードに切り替えられるようになっている。また、吸込みダクト10aが接続された壁面の開口には、がらり10cが設けられ、そのがらり10cの内側に花粉除去フィルター(不図示)が取外し可能に取付けられており、給気ファン10が作動せしめられると、がらり10cを通った外気は、その中に浮遊する花粉が花粉除去フィルターによって除去された状態で、吸込みダクト10aに吸引され、天井給気口10dを通って居室1内に流入せしめられる構成となっている。
【0017】
なお、前記花粉除去フィルターは、がらり10cの内側近傍ではなく、がらり10cと給気ファン10の吸込み側の間の吸込みダクト10a中の任意の箇所に設けられてもよいし、あるいはメンテナンス等を配慮して、天井給気口10dのグリル等の内側に配設されてもよい。花粉除去フィルターとして利用できるフィルターとしては様々なものが知られているが、例えばへパ(HEPA)フィルター、ウルパ(ULPA)フィルター、静電フィルターなどを利用でき、具体例として松下電工製の集塵フィルター(CZ-SAE2)が挙げられる。
【0018】
排気ファン11は、掃き出し窓2bが閉鎖状態にあるときは、給気ファン10によって天井給気口10dから居室1内に供給された空気を居室1外に排気させるように常時換気モードで運転されるが、掃き出し窓2bが開放されそこから外気が導入される場合には、その外気を居室1外に排出させる窓開放換気モードで運転されるもので、図示しない支持部材によって支持されて床下空間6に収容されている。すなわち、床パネル4aの掃き出し窓2bの近傍には、給気ファン10によって天井給気口10dから居室1内に吸気された空気や、掃き出し窓2bを通じて居室1内に入り込んだ外気を吸引するための吸引口16が設けられている。吸引口16の下方には、吸引口16より若干大きなサイズの一面が開口された略直方体状の吸込みボックス17が、開口した一面を吸引口16に連通させ、開口縁部を床パネル4aの下面に固定されて取り付けられている。吸込みボックス17の一側面には透孔17aが穿設され、排気ファン11の吸込み側に一端が連結された吸込みダクト11aの他端が透孔17aに連結されている。また吸引口16には、吸引口16を上方から覆うグレーチング状のカバー部材16aが、その上面高さを床の上面高さ(床仕上げ材4bの上面高さ)と一致させて着脱自在に取付けられ、更にカバー部材16aの下面には、カバー部材16aを通過して吸引口16から吸込みボックス17内に入り込む虫等を捕捉するために防虫網16bが張設されている。ここで、カバー部材16aの吸引口16への取付け方は任意であり、例えば図示例のように、床パネル4aの開口縁部上に枠材16cを介して受け面16dを形成し、床仕上げ材4bと略同一厚さのカバー部材16の外周縁をその受け面16dに載置して取り付ける。
【0019】
更に排気ファン11の排気側には吹出しダクト11bの一端が接続され、吹出しダクト11bの他端は、布基礎3に形成された複数の通気口(不図示)の一つに接続されており、排気ファン11によって排気された空気は吹出しダクトを通じて通気口から屋外に排出されようになっている。
排気ファン11は、内気と掃き出し窓2bから流入する外気を排出できる容量のものであれば、給気ファン10と同様に、シロッコファン、プロペラファン等、如何なる構造のものでも構わないが、ファン本体と該ファン本体を駆動する交流モーターを含む駆動部を具備してなり、排気ファン運転制御手段15が駆動部に接続され、排気ファン運転制御手段15からの制御信号に基づいて、ファン本体の運転・停止及び/又は風量(回転数)制御がなされる構成となっている。
【0020】
開閉センサー13は、窓枠2a又はその近傍に固定して取り付けられた磁気センサー13aと、掃き出し窓2bの例えば窓枠に固定して取付けられた磁石13bとを具備してなる。磁石13bは、地磁気よりも強い磁束密度を発する永久磁石の微小片であり、例えば希土類ネオジム系磁石、希土類サマリウム−コバルト系磁石、フェライト系磁石など、種々の汎用磁石が利用可能である。磁気センサー13aは、リードスイッチ、磁気抵抗効果センサー、ホールセンサーなど、永久磁石の磁場を所望とする近接距離において判別可能なセンサーであれば如何なるタイプのものでもよい。本実施形態においては、磁気センサー13aは、磁石13bが離れていき(つまり、掃き出し窓2bが窓枠2aから離れていき)、所定距離以上になったときに、これを磁束密度の変化により検知して、窓開放の検知信号を発する。また逆に掃き出し窓2bが開放状態から閉鎖され、磁石13bが磁気センサー13aに近づいていくる場合は、所定距離まで近接したときに、窓閉鎖の検知信号を発するように構成されている。この磁気センサー13aと磁石13bは、2枚引き違い窓の場合は、各戸の開閉を検知できるように2組、3枚引き違い窓の場合は3組等々、複数組である。
尚、開閉センサー13として、本実施形態では磁気センサー13aと磁石13bの組合せを用いたが、窓の開閉を検知できるものであれば、光センサーなど、他の如何なるセンサーを用いてもよい。
【0021】
給気ファン運転制御手段14は、給気ファン11の駆動部に接続されたCPU等の演算部を具備してなり、開閉センサー13の磁気センサー13aにリード線によって接続されると共に、図3のブロック図に示すように、開閉センサー13からの信号を受信し、掃き出し窓2bの開閉を判別する給気ファン信号処理手段14aと、給気ファン信号処理手段14aからの掃き出し窓2bの開閉信号に基づいて給気ファン11の作動を制御する給気ファン風量制御手段14bと、開閉センサー13からの信号を受信し、掃き出し窓2bの開閉を判別する排気ファン信号処理手段15aと、排気ファン信号処理手段15aからの掃き出し窓2bの開閉信号に基づいて排気ファン11の作動を制御する排気ファン風量制御手段15bとを具備してなる。
【0022】
より具体的には、複数の磁気センサー13aからの信号を受信し、少なくとも一つの磁気センサー13aが掃き出し窓2bの開放状態を検知している場合、給気ファン信号処理手段14a及び排気ファン信号処理手段15aは、開放信号を給気ファン風量制御手段14b及び排気ファン風量制御手段15bに送信し、給気ファン風量制御手段14bは給気ファン10に作動停止信号(もしくは風量低減信号)を送信する一方、排気ファン風量制御手段15bは排気ファン11に風量増大信号を送信する構成となっている。
一方、全ての磁気センサー13aが閉鎖状態を検知している場合には、閉鎖信号を給気ファン風量制御手段14b及び排気ファン風量制御手段15bに送信し、給気ファン風量制御手段14bは給気ファン10に作動開始信号(もしくは風量増加信号)を送信する一方、排気ファン風量制御手段15bは排気ファン11に風量低減信号を送信する構成となっている。
このように、制御手段12は、開閉センサー13からの信号に基づき、給気ファン10及び排気ファン11の運転状態を、主に排気ファン11が大風量で利用される窓開放換気モードと、給気ファン10と排気ファン11の給排気量がバランスしている常時換気モードとの間で切り替える。
【0023】
次に、図4に示したフローチャートを参照しながら、本実施形態に係る換気システムの作動の流れを説明する。
先ず、掃き出し窓2bが閉鎖状態にある場合、換気システムは常時換気モードで運転されている(ステップS1)。すなわち、給気ファン10は例えば0.5回/hの換気回数となる低風量で運転され、がらり10cから流入した外気は、花粉除去フィルターによって花粉除去がなされた後、天井給気口10dから居室1内に流入せしめられる。このとき、排気ファン11も給気ファン10によって給気される風量と同じ風量の低風量で運転され、居室1内に流入された清浄な外気は、吸引口16に排気ファン11によって吸引され、床下空間6内の吹出しダクト11bを通って通風口から屋外に排出される。
この状態で、家人が例えば新鮮な外気を居室1に取り込もうとして掃き出し窓2bを開放すると、開放センサー13がその開放を検知し(ステップS2)、開放信号を給気ファン運転制御手段14に送信し、給気ファン運転制御手段14が給気ファン10の運転を停止させる(もしくは風量を低減させる)(ステップS3)。また開放センサー13は開放信号を排気ファン運転制御手段15にも送信し、排気ファン運転制御手段15が排気ファン11の風量を増大させる(ステップS4)。掃き出し窓2bから流入する外気には花粉が含まれているが、吸引口16は掃き出し窓2bの近傍に設けられているので、家人がいる居室1内に吹き込むことなく排気ファン11によって吸引口16に吸い込まれていき、吹出しダクト11bを通って通気口から屋外に排気される。よって、家人は花粉に悩まされることなく外気を取り込み、爽快感を味わうことができる。
【0024】
次に、家人が掃き出し窓2bを閉鎖すると、開閉センサー13がその閉鎖を検知し(ステップS5)、閉鎖信号を給気ファン運転制御手段14及び排気ファン運転制御手段15に送信し、給気ファン運転制御手段14及び排気ファン運転制御手段15がそれぞれ給気ファン10及び排気ファン11を同風量の低風量で運転させ、換気システムは常時換気モード運転に戻る(ステップS1)。
このように、家人が掃き出し窓2bを開放すると、掃き出し窓2bの開放が検知され、自動的に給気ファン10の運転が停止されると共に排気ファン11が高風量に切り替えられ、掃き出し窓2bから流入する花粉等を含んだ外気は吸引口16から吸引されて屋外に排気される。吸引口16は掃き出し窓2bの近傍に設置されているので、居室1内に花粉が入り込むことはなく、効果的な花粉除去ができる。
また掃き出し窓2bを閉鎖した場合は、掃き出し窓2bの閉鎖が検知され、自動的に常時換気モード運転に戻る。常時換気モード運転では、外気が給気ファン10から居室1内に吸引されるが、花粉除去フィルターが設置されているので、花粉が除去された空気が居室内に給気される。
【0025】
前記換気システムにおいては、排気用の吸引口16を掃き出し窓2bの近傍に設けているので、掃き出し窓2bを開放しても、外気に含まれる花粉が居室1の内部まで入ってくる間際にその侵入を効果的に防止し又は花粉の侵入量を大きく低減させることができ、花粉が飛散する温暖な時期に掃き出し窓2bを開放して自然の外気を居室1内に取り込むことができる。また花粉除去フィルターを設ける必要はない。
また、掃き出し窓2bの開閉状態を開閉センサー13によって検知し、その信号に応じて給気ファン10及び排気ファン11を運転するようにしたので、掃き出し窓2bの開閉に応じて給排気ファン10及び11を緻密に制御することができ、運転に必要なエネルギー量を大きく低減することができる。
更に、吸引口16を掃き出し窓2bの下方の床面に配置したので、十分な吸引面積を確保することができ、また重力により落下中の花粉を効率よく吸引することができる上、落下中には吸引しきれず床面に落ちてしまった花粉をも吸引することができる。
【0026】
一方、掃き出し窓2bが閉鎖されている状態では、排気ファン11の風量が抑えられ、しかもその風量に対応した状態で給気ファン10が運転されるので、掃き出し窓2bの閉鎖時には前記換気システムは、いわゆる第3種の常時換気システムとして機能する。すなわち、通常の第3種の常時換気システムに、主たる機器として開閉センサー13と運転制御手段14及び15を付加するのみで、掃き出し窓2bを開放した際に侵入する花粉の除去を行うことができる。従って、建築基準法で定められた常時換気設備と一体化したシステムとすることができ、設備の初期費用、維持費ともに軽減することができる。
また、吸引口16を掃き出し窓2b下方の床面に配置したので、通常は掃き出し窓2bが閉鎖され排気ファン11が小風量での運転となっている冬季は、掃き出し窓2bからのダウンドラフトを吸引口16で吸引することができ、居室1内への冷気の拡散が低減される。従って、居室1内の温熱環境が向上し、暖房のためのエネルギー消費量を低減することができる。
更に、掃き出し窓2bの近傍の床面に吸引ボックス17を設置したので、防虫網16bを通過したゴミはその底に溜まり、容易に取り除くことができる。また誤って吸引口16に落としてしまった小物も容易に回収することができる。また吸引口16にはカバー部材16aを取付けたので、家人は吸引口16を気にせずにその上を歩行することができることは勿論、意匠的にも好ましい床面とすることができる。
【0027】
前記換気システムでは、建物の開口部として引き違いの掃き出し窓を例示したが、窓の形式は任意であり、例えば腰窓や出窓でもよい。但し、窓の形式に応じて吸引口の設置位置等は適宜変更されうる。
例えば、腰窓の場合、前記の実施形態と同様に、窓近傍の床面に吸引口を設けてもよいが、窓の直ぐ下の壁面に吸引口を形成し、床下空間に設置されている排気ファンまでダクトで連結するようにすることもできるし、床面と壁面の双方に吸引口を設置してもよい。
また出窓の場合は、壁面から外方に張り出している棚状部分に吸引口を設け、床下空間に設置されている排気ファンまでダクトで連結するようにすることができる。但し、前記実施形態におけるように、常時換気モードでの運転を考慮すると、出窓の閉鎖状態での空気流れを円滑にするためには、床面にも吸引口を配置しておくのが好ましい。
更に、開口部は、例えば玄関や勝手口など、窓以外でもよく、その場合も、吸引口は開口部近傍の床面、壁面等に設置できる。
【0028】
また前記換気システムでは、給気ファンを設置して常時換気システムを構成したが、常時換気システムとはしない場合には、給気ファンを設置せず、排気ファンによる花粉の除去のみを行うようにすることも可能である。この場合、排気ファンは、開口部の開閉に応じたON−OFF作動とすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る換気システムを示す側断面図である。
【図2】図1の実施形態に係る換気システムの要部の平面図である。
【図3】図1の換気システムのブロック図である。
【図4】図1の実施形態に係る換気システムの作動の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0030】
1 居室
2a 窓枠
2b 掃き出し窓(開口部)
3 布基礎
4a 床パネル
4b 床仕上げ材
5 地盤面
6 床下空間
7 天井材
8 天井裏空間
10 給気ファン(給気手段)
10a 吸込みダクト
10b 吹出しダクト
10c がらり
10d 天井給気口
11 排気ファン(排気手段)
11a 吸込みダクト
11b 吹出しダクト
12 制御手段
13 開閉センサー(開閉検知手段)
13a 磁気センサー
13b 磁石
14 給気ファン運転制御手段(給気手段運転制御手段)
14a 給気ファン信号処理手段
14b 給気ファン風量制御手段
15 排気ファン運転制御手段(排気手段運転制御手段)
15a 排気ファン信号処理手段
15b 排気ファン風量制御手段
16 吸引口
16a カバー部材
16b 防虫網
16c 枠材
16d 受け面
17 吸引ボックス
17a 透孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口部の近傍に備えられた吸引口から内気を室外に排出する排気手段と、
前記開口部が開放状態にあるときに開口部からの外気を前記吸引口から吸引させるように前記排気手段を制御する制御手段と、
を具備することを特徴とする建物の換気システム。
【請求項2】
前記制御手段が、前記開口部の開閉状態を検知する開閉検知手段と、該開閉検知手段からの信号に応じて前記排気手段の運転を制御する排気手段運転制御手段とを具備することを特徴とする請求項1に記載の建物の換気システム。
【請求項3】
外気を室内に供給する給気手段を更に具備し、前記制御手段が、前記開閉検知手段からの信号に応じて該給気手段の運転を制御する給気手段運転制御手段を更に具備することを特徴とする請求項2に記載の建物の換気システム。
【請求項4】
前記制御手段が、前記開口部が開放状態の場合は前記排気手段を大風量で運転させると共に、前記給気手段を小風量で運転させるか又は停止させる一方、前記開口部が閉鎖状態の場合は前記排気手段と前記給気手段を常時換気モードで運転させるように構成したことを特徴とする請求項3に記載の建物の換気システム。
【請求項5】
前記吸引口を前記開口部の下方の床面に配置したことを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の建物の換気システム。
【請求項6】
前記吸引口には、複数の透孔を有するカバー部材が配設されると共に、該カバー部材より吸引口内側には、防虫網が張設されたことを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の建物の換気システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−236387(P2009−236387A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82202(P2008−82202)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】