説明

建物内の雰囲気制御

建物内の雰囲気状態を制御する方法およびシステム(10)である。建物の内部に調和した流体を供給し(100)、建物の内部のさまざまな位置において1つまたは複数の雰囲気パラメータを検知する(102)。そして、実験的雰囲気マップを生成し(104)、それをテンプレート雰囲気マップと比較する(106)。パターン差を特定し(108)、そのパターン差を低減する是正処置を決定する(110/112/114)。是正処置決定に従って、調和した流体の量、特性および分布のうちの1つまたは複数を変更してもよい(116)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本発明は、以下の係属出願に関連する。すなわち、Patel他による、2001年10月5日に出願され「SMART COOLING OF DATA CENTERS」と題する米国特許出願第09/970,707号と、Nakagawa他による、2002年2月19日に出願され「DESIGNING LAYOUT FOR INTERNET DATACENTER COOLING」と題する米国特許出願第XX/XXX,XXX号と、Friedrich他による、YYYY年月DD日に出願され「DATA CENTER ENERGY MANAGEMENT」と題する米国特許出願第XX/XXX,XXX号と、である。上に列挙した相互参照の各々は、本発明の譲受人に譲渡されており、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
本発明は、建物内の雰囲気状態を制御することに関する。建物の1つのタイプは、多数の電子パッケージを収容するデータセンタである。各電子パッケージは、データセンタにわたって分散された複数のラックのうちの1つに配置される。ラックは、米国電子機械工業会(Electronics Industry Association)(EIA)エンクロージャとして規定される場合があり、複数のパーソナルコンピュータ(PC)ボードを収容するように構成される場合がある。PCボードは、通常、プロセッサ、マイクロコントローラ、高速ビデオカード、メモリ、半導体デバイス等の複数の電子パッケージを含む。これらの電子パッケージは、それぞれのコンポーネントの動作中に比較的大量の熱を放散する。たとえば、複数のマイクロプロセッサを備える一般的なPCボードは、およそ250Wの電力を消費する可能性がある。このため、この種のPCボードを40個収納するラックは、およそ10KWの電力を消費する可能性がある。
【0003】
所与のラックの電子パッケージによって放散される熱を除去するために必要な電力は、概して、パッケージを動作させるために必要な電力の約10%に等しい。しかしながら、データセンタの複数のラックによって放散される熱を除去するために必要な電力は、概して、ラック内のパッケージを動作させるために必要な電力の約50%に等しい。データセンタにおいて空気を冷却するために必要な追加の熱力学的仕事から、データセンタのラック間のさまざまな熱負荷を放散させるために必要な電力の量に格差が生じる。ラックは、通常、熱を放散するコンポーネントにわたり空気等の冷却流体を移動させるように動作するファンによって冷却されるが、データセンタは、加熱された戻り空気を冷却するリバースパワーサイクルを使用することが多い。データセンタおよび凝縮器において冷却流体を移動させることに関する仕事に加えて、温度低下を達成するために必要なさらなる仕事により、消費電力が上述した50%に達することが多い。したがって、データセンタ全体の冷却は、電子パッケージの個々のラックの冷却において直面する問題よりはるかに重大な問題を提示する。
【0004】
適切な動作を実質的に保証するために、かつ、データセンタのラックに配置された電子パッケージの寿命を延ばすために、パッケージの温度を所定の安全動作範囲内に維持する必要がある。最大動作温度を超えた温度で動作することにより、電子パッケージに取り返しのつかない損傷がもたらされる可能性がある。さらに、温度が上昇するに従い、半導体電子デバイス等の電子パッケージの信頼性が低下する、ということも立証されている。したがって、動作中に電子パッケージがもたらす熱エネルギーを、動作および信頼性要件が確実に満足されるようにする割合で除去しなければならない。データセンタのサイズが比較的大きくかつそこに含まれる電子パッケージの数が多いため、データセンタを所定温度範囲内で冷却することは費用がかかることが多い。
【0005】
データセンタは、通常、1つまたは複数の空調ユニットの動作によって冷却される。空調ユニットの圧縮器は、通常、データセンタを十分に冷却するために必要な冷却容量の最低約30%を必要とする。凝縮器、空気移動装置(ファン)等の他の構成要素は、通常、必要な冷却容量のさらに20%を必要とする。たとえば、100個のラックがあり各ラックが10KWの最大電力消費を有する高密度データセンタでは、概して、1MWの冷却容量が必要である。1MWの容量の熱除去を伴う空調ユニットでは、概して、空気移動装置、たとえばファン、ブロワ等を駆動するために必要なパワーに加えて最低300KWの入力圧縮器パワーが必要である。
【0006】
従来のデータセンタ空調ユニットは、データセンタの分散した位置特定の必要性に基づいてそれらの冷却出力を変更しない。通常、データセンタにおける動作中の電子コンポーネント間の作業の分布はランダムであり、制御されない。作業の分散のために、データセンタの1つの位置で、最大容量で動作しているコンポーネントがある場合がある一方で、データセンタの別の位置で、最大容量を下回るさまざまなパワーレベルで動作しているコンポーネントがある場合もある。さらに、従来の冷却システムは、通常、必要性に係らず、連続的に100%の容量で動作し、それによりすべての電子パッケージを冷却する。言い換えれば、データセンタは、全体的な部屋レベルで空調され、それによりデータセンタのラックに含まれる熱を生成するコンポーネントを十分に冷却するために不必要に高い運用費用をもたらす。さらに、従来技術による冷却の試みは、温度分布を監視し調整する比較的不正確かつ単純な方法を使用しており、結果としてデータセンタ冷却効率が最適とはならない。
【発明の開示】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、建物内の雰囲気状態を制御する方法が提供される。本方法は、建物の内部に調和した流体を供給するステップと、建物の内部のさまざまな位置において1つまたは複数の雰囲気パラメータを検知するステップと、を含む。そして、検知するステップの結果から、実験的雰囲気マップを生成し、それをテンプレート雰囲気マップと比較する。実験的雰囲気マップとテンプレート雰囲気マップとの間のパターン差を特定し、そのパターン差を低減する是正処置を決定する。最後に、調和した流体の量、特性および分布のうちの1つまたは複数を変更する。本発明の別の態様によれば、本発明の方法の実施形態を実行するシステムが提供される。
【0008】
本発明の特徴および利点は、図面を参照して以下の説明から当業者には明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、その精神および範囲から逸脱することなく多数の実施形態が可能であるため、その適用において、説明しまたは図示するいかなる特定の構成の詳細にも限定されない。まず、本発明の原理を、簡略化のためかつ例示のために限られた数の実施形態のみを参照することによって説明する。本明細書では、本発明の限られた数の実施形態でしか開示しないが、当業者は、同じ原理をすべてのタイプの雰囲気制御システムに等しく適用可能でありかつそれらにおいて実施することができる、ということを容易に理解するであろう。さらに、発明者の本発明の占有と、本発明をいかに作成しかつ/または使用するかと、出願時に発明者に既知である、本発明を実行する際の最良の形態と、を適度に明瞭に伝えるために、多数の特定の詳細を示す。しかしながら、当業者には、本発明をこれらの特定の詳細に限定することなく実施してもよい、ということが明らかとなろう。場合によっては、本発明を不必要に不明確にしないようにするため、既知の方法および構造については詳細に説明しなかった。最後に、本明細書で使用する用語は、説明するためのものであり、限定するためのものではない。したがって、以下の詳細な説明は限定する意味でとられるべきではなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲とそれらの等価物とによって規定される。
【0010】
概して本発明によれば、方法および関連システムを、建物内の1つまたは複数の雰囲気状態を制御するように構成する。より詳細には、調和した流体の量、特性および分布のうちの1つまたは複数をデータセンタ内で調整するように本方法およびシステムを構成する。本方法およびシステムを、雰囲気マップ作成およびパターン認識に基づき、すなわち、入力として、データセンタにわたってさまざまな別個のセンサ位置において測定された1つまたは複数の雰囲気パターンを使用して、かかる制御を達成するように構成する。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、データセンタ内における、放散する熱の量が多いラックを有する位置に対して実質的に有利にする、すなわち冷却流体流を増加させることにより、かつ、放散する熱の量が少ないラックを有する位置に対して実質的に有利にしない、すなわち冷却流体流を減少させることにより、データセンタ内で冷却流体、あるいは調和空気を戦略的に分散させることによって、通常データセンタを冷却するために必要なエネルギーの量を相対的に低減させることができる。したがって、冷却システムの装置、たとえば圧縮器、ファン等を、ラックからの予想される熱放散のほぼ100%で動作させるのではなく、実際の位置および区域特定の冷却の必要性に従って動作させることができる。さらに、ラックを、データセンタにわたってそれらの予期された熱負荷に従って配置することにより、データセンタにわたってさまざまな場所に配置されるコンピュータ室空調(CRAC)ユニットがより効率的に動作することができるようにすることができる。別の観点から言えば、ラックの位置決めおよび冷却戦略を、データセンタにわたる冷却流体流のモデリングおよび計測学の実施態様を通して決定してもよい。さらに、データセンタにわたる冷却流体流の体積流量率および速度を求めるために数値モデリングを実施してもよい。
【0012】
図面を特に詳細に参照すると、図1には、本発明の実施形態によって使用してもよいシステム10の概略図が示されている。システム10は、概して、雰囲気センサ12と、中央処理装置(CPU)14と、雰囲気制御システム16と、を有する。雰囲気制御システム16は、本出願の譲受人に譲渡され参照によりその全体が本明細書に援用される、Patel他により2001年10月5日に出願された同時係属米国特許出願第09/970,707号によって例示される高性能冷却システムであってもよい。別法として、空調装置システム、加湿機システム、濾過システム、火災鎮圧システム等を含む、雰囲気状態を制御することに関するいかなるタイプのシステムを使用してもよい、と考えられる。
【0013】
雰囲気センサ12は、1つまたは複数の雰囲気パラメータを測定するために使用され、熱電対、温度変換器、サーミスタ等の温度センサを包含する。温度センサ12はまた、湿度センサ、気圧センサ、流体速度センサ、パーティクルセンサ、煙センサ等を含んでもよい。雰囲気センサ12を、データセンタタイプの建物(図示せず)中の、雰囲気を制御されることが望まれる複数の部分にわたって配置する。特に、雰囲気センサ12を、種々の方法で配置してもよい。たとえば、雰囲気センサ12を、さまざまな位置および高さにランダムに分散させてもよく、あるいは所定の座標格子に従って整列させてもよく、あるいは通気孔および/またはラックの位置に位置合せして配置してもよく、あるいはコンピュータによる流体力学モデルからの推奨に従って配置してもよい。いずれの場合も、数万平方フィートもの寸法になる非常に大型のデータセンタには、何千もの雰囲気センサ12を分散させる必要のある可能性がある、と考えられる。雰囲気センサ12は、有線または無線の遠隔測定を介してCPU14と電子的に通信する。いずれの場合も、CPU14は、各雰囲気センサ12の位置を、各々の出力を「マップ化する」ことができるように追跡することができる。
【0014】
CPU14は、スタンドアロンパーソナルコンピュータ、データセンタのラックのうちの1つにドッキングされた1つまたは複数のコンピュータボード、コンピュータチップ等であってもよく、いずれにしても、CPU14には、さまざまなソフトウェアがロードされている。第1に、CPU14は、温度マップ作成ソフトウェア18等の雰囲気状態のマップを生成するソフトウェアを有する。温度マップ作成ソフトウェア18は、何千ものセンサ信号等、何千もの入力データ点を処理しマップ状の情報を出力することができる。たとえば、温度マップは、別々の温度のさまざまな等温領域を画定する温度等高線、すなわち等温線から構成される。これらの等温線中の最も過酷な部分は、通常「ホットスポット」として知られる。ホットスポットは、必ずしも任意の所与の温度センサに正確な位置で対応しなくてもよく、さまざまな温度センサの間に位置してもよい。それにも係らず、温度マップ作成ソフトウェアは、温度センサの既知の位置から実際のホットスポットの位置を外挿しまたは三角測量することができる。そのため、温度センサがデータセンタのさまざまな経緯度座標位置において或る範囲の高さの中で配置される場合、温度マップ作成ソフトウェアは、ホットスポットの座標位置だけではなくその高さも三角測量することができる。温度センサ読取値は、温度マップを作成するために使用される、温度データと温度勾配を計算するためのデータとを提供する。正確なまたは包括的な温度データがない場合、温度勾配を使用して、最急勾配法等のような数学的最適化技法によりデータセンタのホットスポットの位置を特定することができる。概して、三角測量は、比較的正確かつ効率的な近似技法を提供するので、もし必要があれば、より少なくよりまばらに分散させた温度センサを使用して、設備費および故障モードを軽減することが可能である。
【0015】
第2に、CPU14は、パターン認識ソフトウェア20としてより一般的に知られる、かかるマップにおいてパターン差を認識するソフトウェアを有する。かかるソフトウェアは、基本的に、人間の介入なしにパターンの特定を行う解読プロセスを含む。第3に、CPU14には、戦略的ソフトウェア22がロードされており、それを使用して、マップ作成ソフトウェア18の出力を受け入れ、それを処理し、冷却システム16にコマンドを出力することにより、パターン差を最小限にするかまたは除去する一連の是正処置を決定する。MATLABのような商用の汎用的な数学的最適化ソフトウェアを、温度マップを生成しパターン認識によりホットスポットを特定するように適合させてもよい、と考えられる。また、この時点で、上述したことを行うために特定用途向けのニューラルネットワークアルゴリズムを使用することも可能である、ということも考えられる。
【0016】
これに応じて、冷却システム16を使用して、データセンタを冷却するために使用する冷却流体の量、特性および分布のうちの1つまたは複数を変更する。冷却システム16は、チラーユニット24を包含するが、当業者は、本発明と使用するために、たとえば冷蔵システム、冷却塔システム、クーラ・コンデンサシステム等を含む、多数の他のタイプの冷却システムが通常既知であり入手可能である、ということを理解するであろう。いずれの場合も、冷却システム16はまた、1つまたは複数の速度可変の空気移動装置すなわちブロワ26と、1つまたは複数の遠隔制御されるダンパすなわち通気孔28と、を有する。当業者は、暖房、換気および空調(HVAC)の関連技術においてブロワ、通気孔等を接続する換気構造が既知であることを理解するであろう。
【0017】
冷却流体の量、特性および/または分布を変更し、それによりデータセンタ内の雰囲気状態を調整するように、冷却システム制御変数の任意の組合せを変更することが可能である。たとえば、冷却流体の冷却特性、すなわち、温度、湿度、粒子カウント等を変更するように、冷却器サイクルを、動作容量の0%と100%との間で増減させてもよい。調和した空気等の冷却流体の特性を変更するために、ブロワ26の速度および/または阻流を調整してもよく、通気孔28の開口率を個々にまたはまとめて変更してもよい。また、通気孔28が個々のブロワ(図示せず)を有する場合、これらのブロワの速度を調整してもよい。調和した空気の分布を変更するために、複数の冷却器、ブロワおよび通気孔のうちの1つまたは複数を、データセンタ内の1つまたは複数のホットスポット位置に目標を絞るように戦略的に調整してもよい。たとえば、データセンタの一角が、データセンタ全体中で冷却を要する最も重要な部分であることを要求している場合、最も近い冷却器(複数可)、ブロワ(複数可)および通気孔(複数可)を選択してもよく、他の比較的遠い冷却器(複数可)、ブロワ(複数可)および通気孔(複数可)を停止するかまたは縮小してもよい。他の任意の適度に予測される雰囲気制御システム制御変数を調整してもよい、と考えられる。
【0018】
ここで図2を参照すると、上述した実施形態に加えて、本発明の方法の実施形態は、温度センサと冷却システムとの間のCPUの協働を含む。本発明の方法を、本明細書で開示したもの以外の他のシステムを使用して実施することも可能であり、そのため本発明の方法はそれによって限定されない。本明細書で開示するシステムは、単に、本方法の多くのあり得る物理的明示のうちの1つである。上述したように、冷却システムは、ブロック100に示すように、データセンタ内の機器を冷却するためにデータセンタ内に冷却流体を供給する。ブロック102において、さまざまな位置でデータセンタ内の温度を検知し、それをCPUに通信する。
【0019】
温度マップ作成ソフトウェアは、ブロック104に示すように、地点特定の温度センサデータを、そこから実験的温度マップを生成することにより、情報に変換する。上述したように、温度マップは、数学的最適化技法に基づいて別々のセンサ位置からホットスポットを三角測量することができる。いくつかの状況において、たとえば、所与のラックの電子パッケージが、例外的に高い使用率で使用されることにより例外的な量のパワーを消費し、データセンタ冷却システムが、過熱を軽減するために十分な調和した流体を供給することができない場合に、ホットスポットが発生することが知られている。
【0020】
温度マップ作成ステップを、一瞬に、スナップショットで、またはサンプリングにより実行してもよいが、別法として、このステップをリアルタイムに行ってもよい。また、温度マップを、サーモグラフィ技術を用いることにより、データセンタの機器によって放出される熱の赤外線検出に基づいて、個別の温度センサを用いることなく生成してもよい、と考えられる。さらに、温度マップを、データセンタ内の電子パッケージおよび/またはラックのパワー消費の関数で温度を推定することにより生成してもよい、と考えられる。このように、温度検知およびマップ生成ステップを、サーモグラフィ機器およびソフトウェアかまたはパワー引出しからの推測温度を用いて達成してもよい。
【0021】
温度マップはまた、データセンタオペレータに対し強力な視覚的ツールも提供する。通常のデータセンタは、各ラックの各電子パッケージの温度性能が、隣接するパッケージおよびラックの性能にさまざまな規模にまで影響する、高度に熱的に相互依存している環境である。したがって、温度マップは、データセンタの地形内で温度相互依存性を特定する、絵により情報を与える方法も提供する。
【0022】
ブロック106に示すように、パターン認識ソフトウェアは、実験的温度マップをテンプレート温度マップと比較する。テンプレート温度マップを、マスタまたはモデル温度マップと呼んでもよい。テンプレートは、基本的に、最適に動作しているデータセンタ冷却システムの温度マップを表す。テンプレートを動的なものとして、現動作状態からリアルタイムで生成されてもよく、あるいは、静的なものとして、比較ステップ106の前に生成されてもよい。FLOVENT/AIRPACK等の計算流体力学(CFD)ソフトウェアツールが広く入手可能であり、当業者には既知である。CFDツールは、モデリングのために、データセンタ内のラックからの熱負荷、データセンタ内を流れる冷却流体の速度、データセンタにおける温度、気圧等を含む、さまざまな入力を受け入れる。CFDモデリングを、データセンタの設計およびレイアウトに際して、ラックおよび通気孔の位置を提案するために使用してもよい。代替的に、CFDモデリングを使用して、冷却システム変数を調整することによってエミュレートされる、マスタ、テンプレートまたはモデル温度マップを出力してもよい。これに関して有益なのは、本出願の譲受人に譲渡されその全体が参照により本明細書に援用される、Nakagawa他による2002年2月19日に出願され「DESIGNING LAYOUT FOR INTERNET DATACENTER COOLING」と題する米国特許出願第XX/XXX,XXX号である。
【0023】
実験的温度マップをモデル温度マップと比較した後またはその間、ブロック108に示すように、それらのパターン差を認識するためにパターン認識ソフトウェアも適用する。パターン認識は、一般に、テンプレートマッチング、マスキング等とも呼ばれる。たとえば、データセンタ冷却の場合、温度ホットスポットを特定することができる。特定すると、ブロック110に示すように初期分類ステップを行う。いくつかの等温線が、所定範囲内の温度、サイズ等を越える場合があり、したがってそれらを除去または低減のための目標とすることができる。あるいは、すべての等温線が所定範囲内の温度、サイズ等である場合、冷却システムは、ブロック112に示すように、単に現動作状態および設定を維持する。
【0024】
パターン差を認識すると、ブロック114に示すように、戦略的ソフトウェアを使用して、データセンタ内のパターン差を除去するかまたは少なくとも低減するために必要な是正処置を決定する。通気孔の位置、ブロワの容量および冷却器の容量等の制御変数データを使用して、データセンタをいかに効率よく冷却するかを確定する。さらに、等温線の位置、サイズおよび強度等の温度マップデータも使用する。特に、上述したデータセットを相関させることにより、最適に効率的な一連の是正処置を展開する。
【0025】
ブロック116において、選択された是正処置に基づき、冷却システムの調和した流体の量、特性および分布のうちの1つまたは複数を変更する。たとえば、ホットスポット等温線のサイズおよび/または強度が比較的小さい場合、冷却システムは、単に、等温線の位置に最も近い通気孔の開口サイズを調整すればよい。一方、等温線のサイズおよび/または強度が比較的大きい場合、冷却器サイクルを増大させることに加えて、複数の通気孔を調整してもよい。同様に、冷却システムが複数の冷却器を含む場合、等温線に最も近い冷却器のサイクルを増大させてもよい。概して、データセンタにおける、パターン差が所定の許容可能な範囲内にあることを示す位置に対し、冷却流体の量および/または特性を低減させまたは維持することができる。対照的に、データセンタにおける、パターン差が所定の許容可能範囲外であることを示す位置に対し、冷却流体の量を増大させかつ/または特性を向上させてもよい。最後に、本方法は、温度検知ステップから調和した空気源を変更するステップまでが連続ループとなるように実行される。
【0026】
当業者は、本発明が、部屋レベルで行う拡散した冷却ではなく、管理された位置特定の冷却により、データセンタを冷却することに関連するエネルギー消費を実質的に低減することができる、ということを理解するであろう。より詳細には、冷却システム制御に対する入力として実際の温度測定値を追跡し使用するより正確な方法により、冷却システムを、従来技術に比較して相対的により効率的に動作させることができる。言い換えれば、本発明は、大量の離散した、位置ごとに固有の温度データ点を抽出し、それらを温度マップの形式でより連続した流体状の情報に変換する方法を提供する。本発明は、何千ものセンサや、単に数個の適切に配置されたセンサを必要とする用途での使用に適している。いずれにしても、本発明は、ホットスポットの位置、サイズおよび強度を評価しまたは三角測量する際に、センサ位置間の空間の使用が可能となり、従来技術が可能とするものよりも正確なホットスポットの低減がなされる。したがって、従来技術に比較して、所与のサイズのデータセンタに対し、本発明は、より正確かつ効率的な冷却方法を提供し、それにより、必要な冷却装置がより少なくかつ小さくなり、エネルギー消費が少なくなる。
【0027】
本発明を、限られた数の実施形態に関して説明したが、当業者により、他の形態を採用することができることが明らかである。言い換えれば、本発明の教示は、特許請求の範囲の限定の任意の妥当な置換形態または等価形態を包含する。たとえば、本方法ステップを実行する他のモードを、本明細書で説明したものに加えて使用することができ、本方法を、本明細書で開示した特定のシステムとは無関係に実施することができる。当業者は、本発明により、データセンタ冷却以外のものを含む他の適用が可能である、ということを理解するであろう。したがって、本発明は、データセンタの冷却のみに限定されず、むしろ、粒子濾過、HVAC等を含む他の多くの環境制御システムに広く適用される。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のシステムの実施形態の概略図である。
【図2】本発明の方法の実施形態のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の雰囲気状態を制御する方法であって、
前記建物内に調和した流体を供給するステップ(100)と、
前記建物内の複数の位置において少なくとも1つの雰囲気パラメータを検知するステップ(102)と、
前記検知するステップの結果から実験的雰囲気マップを生成するステップ(104)と、
前記実験的雰囲気マップをテンプレート雰囲気マップと比較するステップ(106)と、
前記実験的雰囲気マップと前記テンプレート雰囲気マップとのパターン差を特定するステップ(108)と
を有することを特徴とする建物内の雰囲気状態を制御する方法。
【請求項2】
前記パターン差を低減する是正処置を決定するステップ(110/112/114)と、
前記決定するステップに従って前記調和した流体の量、特性、および分布のうちの少なくとも1つを変更するステップ(116)と
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の建物内の雰囲気状態を制御する方法。
【請求項3】
前記供給するステップは、複数の通気孔(28)のうちの少なくとも1つと、少なくとも1つのブロワ(26)と、少なくとも1つの調和した空気源(24)とを有するシステム(10)を動作させるステップを含み、
さらに、前記決定するステップは、
前記パターン差の位置、サイズ、および強度のうちの少なくとも1つを、前記複数の通気孔の位置、前記少なくとも1つのブロワの速度、および前記少なくとも1つの調和した空気源の容量のうちの少なくとも1つに相関させることを含むことを特徴とする、請求項2に記載の建物内の雰囲気状態を制御する方法。
【請求項4】
前記生成するステップは、温度マップ作成ソフトウェア(18)を使用して、前記検知するステップからの入力を処理し、前記実験的雰囲気マップの形式で出力を生成することを有することを特徴とする、請求項1に記載の建物内の雰囲気状態を制御する方法。
【請求項5】
内部に機器を有するデータセンタを冷却する方法であって、
前記データセンタ内の前記機器を冷却するように前記データセンタ内に冷却流体を供給するステップ(100)と、
前記データセンタ内の複数の位置で温度を検知するステップ(102)と、
前記検知するステップの結果から前記データセンタの実験的温度マップを生成するステップ(104)と、
前記実験的温度マップをテンプレート温度マップと比較するステップ(106)と、
前記実験的温度マップと前記テンプレート温度マップとのパターン差を特定するステップ(108)と
を有することを特徴とする内部に機器を有するデータセンタを冷却する方法。
【請求項6】
前記パターン差を低減するために、是正処置を決定するステップ(110/112/114)と、
前記決定するステップに従って前記冷却流体の量、特性、および分布のうちの少なくとも1つを変更するステップ(116)と
をさらに有することを特徴とする、請求項5に記載の内部に機器を有するデータセンタを冷却する方法。
【請求項7】
前記供給するステップは、複数の通気孔(28)のうちの少なくとも1つと、少なくとも1つのブロワ(26)と、少なくとも1つの調和した空気源(24)とを有するシステム(10)を動作させるステップを有することを特徴とする、請求項6に記載の内部に機器を有するデータセンタを冷却する方法。
【請求項8】
前記決定するステップは、前記パターン差の位置、サイズ、および強度のうちの少なくとも1つを、前記複数の通気孔の位置、前記少なくとも1つのブロワの速度、および前記少なくとも1つの調和した空気源の容量のうちの少なくとも1つに相関させることを有することを特徴とする、請求項7に記載の内部に機器を有するデータセンタを冷却する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−504919(P2006−504919A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−586537(P2003−586537)
【出願日】平成15年4月16日(2003.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2003/011545
【国際公開番号】WO2003/089845
【国際公開日】平成15年10月30日(2003.10.30)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】