説明

建物用庇の取付部構造

【課題】庇パネルに負荷される上向きの衝撃荷重や繰返し荷重を緩衝して、破損や変形を防止する。
【解決手段】壁面12に固定された壁取付材11の支持壁部32により、庇パネル15の基端部を下方から支持するとともに、庇パネル15の基端部上面に固定されたパネル取付材14を、連結構造部13を介して壁取付材11に連結し、連結構造部13は、壁取付材11の上面壁部33から上方に向かって突出された台形断面の受歯部61に、パネル取付材14に設けられた鉤歯部62を上方から嵌合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の軒先や窓の上部の外壁面から張り出すように取り付けられる建物用庇の取付部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された庇板1は、図7に示すように、建物の外壁面2にアンカーボルト4を介して取り付けられた保持枠3に固定されている。この保持枠3は、外壁面2に面して取り付けられる背面板5と、この背面板5の前面に、互いに対向する一対の上下保持板6,7を突設したもので、押出成形された型材により構成されている。庇板1は、上下保持板6,7間に嵌合され、上下保持板6,7と庇板1とを貫通する取付ボルト8により固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4192199号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成において、特に突風に庇板1が煽られると、庇板1に上向きの衝撃荷重が発生する。このときに生じる回転モーメントDMにより、上保持板6および下保持板7と背面板5コーナ部a,bに応力が集中し、破損するおそれがある。またこの突風による繰り返し荷重により、コーナ部a,bに金属疲労が生じて破断や破損、変形がしやすいという問題があった。
【0005】
本発明は、庇パネルに対する上向きの衝撃荷重や繰返し荷重を緩衝して応力を分散させ、破損や変形を防止することができる建物用庇の取付部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、
壁面から庇パネルが突出して取り付けられる建物用庇の取付部構造であって、
押出成形されて壁面に固定される壁取付材と、押出成形されて庇パネルの基端部に固定されるパネル取付材とを具備し、
前記壁取付材は、壁面取付具により壁面に幅方向に沿って固定される背面壁部と、当該背面壁部から突出されて前記庇パネルの基端部を下方から支持する支持壁部と、当該支持壁部の上方に対面して前記背面壁部から突出された上面壁部とを有し、
前記パネル取付材は、前記庇パネルの基端部上面に固定される押さえ壁部を有し
前記壁取付材とパネル取付材とを連結する連結構造部に、前記上面壁部から上方に向かって突出されて、前面および背面の少なくとも一方が傾斜面に形成された台形断面の受歯部と、前記パネル取付材に設けられて前記受歯部に上方から嵌合される鉤歯部とを有するものである。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、
連結構造部は、鉤歯部と前記背面壁部とが近接されて、庇パネルに上方への荷重が負荷された時に、鉤歯部が前記背面壁部に当接し、上方への荷重を支持するように構成されたものである。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の構成において、
支持壁部に、庇パネルの基端下縁部を係止する下位置決め部を形成するとともに、上面壁部に庇パネルの基端上縁部を係止する上位置決め部を形成したものである。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の構成において、
壁取付材の支持壁部と庇パネルとパネル取付材の押さえ壁部とを貫通して固定する固定具を有し、
押さえ壁部に、前記固定具を回り止めする突起部が形成されたものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、壁面に取り付けられた壁取付材に、庇パネルの基端部底面を支持させると同時に、庇パネルに取り付けられたパネル取付材を、連結構造部を介して壁取付材に連結したので、連結構造部における受歯部と鉤歯部の弾性変形や噛み合い部のずれにより、庇パネルに加わる上下方向の荷重を一旦緩衝して、上面壁部と背面壁部の上コーナ部に伝達させることができる。これにより、大きい衝撃力が直接、上コーナ部に伝達されるのを防止することができ、突風などによる衝撃力や繰り返し荷重による庇パネルの取付部の破損や変形を未然に防止することができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、弾性変形を利用して鉤歯部を背面壁部に当接させることで、この当接部と上面壁部と背面壁部の上コーナ部とで、庇パネルに負荷させる上方への荷重を支持することができ、庇パネルの下方で巻き上げるような突風による負荷に対する強度を増大させることができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、庇パネルの基端部を、壁面に固定された壁取付材の支持壁部に沿って上面壁部の間に挿入し、上下位置決め部により庇パネルを位置決めした後、パネル取付材を上方から庇パネルの基端部に組み付けることで、庇パネルを容易に精度良く壁取付材に取り付けることができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、固定具により庇パネルとパネル取付材と壁取付材とを一体に固定することにより、部品点数を削減でき、回り止め部により固定具の頭部を回り止めして、固定具の締め付け作業を容易に行え、作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る建物用庇の取付部構造の実施例を示し、連結構造部の縦断面図である。
【図2】建物用庇の全体斜視図である。
【図3】建物用庇の分解斜視図である。
【図4】建物用庇の縦断面図である。
【図5】(a)〜(d)は壁取付材およびパネル取付材を示し、(a)はパネル取付材の横断面図、(b)は壁取付材の縦断面図、(c)および(d)はそれぞれ壁取付材の受歯部の変形例を示す部分断面図である。
【図6】(a)〜(d)は連結構造部に発生する応力を示し、(a)は庇パネルの先端部に下方への荷重が負荷された時の説明図、(b)は(a)に示すイ部の拡大図、(c)は庇パネルの先端部に上方への荷重が負荷された時の説明図、(d)は(c)に示すロ部の拡大図である。
【図7】従来の庇取付部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0015】
以下、本発明に係る建物用庇の実施例を図1〜図6に基づいて説明する。
図2〜図4に示すように、この建物用庇は、壁面12に左右方向(幅方向)に固定される壁取付材11と、庇パネル15の基端部に取り付けられるパネル取付材14と、壁取付材11に基端部底面が支持された庇パネル15をパネル取付材14を介して壁取付材11に連結固定する連結構造部13と、庇パネル15の先端縁に見切りブラケット16を介して取り付けられる先端見切り材17と、壁取付材11およびパネル取付材14の上面と底面とをそれぞれ覆う上下カバー材18,19と、壁取付材11の両端面を覆う端板58とを具備している。上記壁取付材11、パネル取付材14、庇パネル15、先端見切り材17および上下カバー材18,19は、それぞれ押し出し成形された軽合金製(アルミニウム合金製)の型材で、それぞれ長さ方向に同一断面に形成されている。
【0016】
(庇パネル)
庇パネル15は、長さ方向(基端−先端方向)に中空部が形成された中間パネル21と、長さ方向に中空部が形成された端部パネル22からなり、これら中間パネル21および端部パネル22には対称構造の結合部21a,22aが左右の側辺部にそれぞれ形成され、これら結合部21a,22aを長さ方向にスライドさせて係合し、ピンを嵌入することにより、中間パネル21同士、および中間パネル21と端部パネル22とを連結して一体に組み立てることができる。また図1に示すように、庇パネル15の基端側に、固定ボルト24(固定具)により庇パネル15とパネル取付材14とを一体固定するボルト穴26が幅方向に所定間隔ごとに形成されている。さらにパネル21,22の中空部に、雨音などの軽減のために吸音材25が内装される。
【0017】
前記先端見切り材17には、前縁カバー17aに形成したものと、雨樋17bを形成したものとがある。端板17cは、先端見切り材17の両端面をそれぞれ閉鎖する端板である。
【0018】
(壁取付材)
壁取付材11は、図1,図5に示すように、壁面12に面して取り付けるためのアンカーボルト(壁面取付具)23のボルト穴37が所定間隔ごとに形成される背面壁部31と、この背面壁部31の下端部から略水平(庇勾配だけ下方に傾斜して)に折り曲げられて庇パネル15の基端部を下方から支持する支持壁部32と、背面壁部31の中央上部から先端側に支持壁部32に対面して平行に突出された上面壁部33とを具備している。
【0019】
背面壁部31は、支持壁部32と上面壁部33間に設けられた厚肉状の垂直壁34と、この垂直壁34から上方に伸びる薄肉状の立上壁35とを有している。垂直壁34の前面で上下方向の中央部に、ボルト穴37を穿孔する時に穿孔具(ドリル)の位置決めをする位置決め溝38が形成されている。これらボルト穴37から壁面12にそれぞれ打ち込まれたアンカーボルト23に、ナットが装着されて締め付けられ、壁取付材11が壁面12に一体に固定される。また立上壁35の上端部に、前部下方に傾斜して折り曲げられた後取付片36が突設され、上カバー材18の後端係止部18rをビス18bにより取り付けるように構成されている。
【0020】
支持壁部32は、上面で中央より少し奥側に庇パネル15の挿入を規制して位置決めする下係止片(下位置決め部)42Dが突設され、この下係止片42Dより先端側に庇パネル15の基端部を下方から支持する支持面41が形成されている。また支持壁部32の底面基端側と先端面とに、下カバー材19の前縁部と後縁部とをそれぞれ係止する前後係止爪43F,43Rが形成されている。さらに支持壁部32の底面で支持面41の反対面に、固定ボルト24を挿入するボルト穴48を穿孔する時に穿孔具(ドリル)の位置決めをする位置決め溝44が形成されている。
【0021】
上面壁部33は、垂直壁34の上端部から先端側に伸びる厚肉状の基部45と、この基部45から前方に突出された薄肉状のガイド壁部46と、基部45から上方に突出される受歯部61(連結構造部13)とを有し、ガイド壁部46の先端に、庇パネル15の挿入を規制して庇パネル15の基端上縁部を位置決めし仮固定可能な上係止段部(上位置決め部)42Uが形成されている。
【0022】
(パネル取付材)
パネル取付材14は、庇パネル15の基端上面部に当接される押さえ壁部51と、この押さえ壁部51から段部54U,54Dを介して基端側にガイド壁部46に隙間をあけて対面される中間壁部52と、この中間壁部52の基端部に形成されて下方に開口された鉤歯部62(連結構造部13)とを具備し、この鉤歯部62は、前歯62Fの下端部に中間壁部52が連結されるとともに、前歯62Fの上端部に連結壁62Cを介して後歯62Rが連結されて下方に突出され、チャンネル形断面に形成されて受歯部61に密に嵌合できるように形成されている。
【0023】
前記中間壁部52は、底面に形成された段部54から基端側がガイド壁部46の上面に所定隙間をあけて対面される。また押さえ壁部51の先端部には、上カバー材18の前部を係止する前取付片47が突設されている。さらに押さえ壁部51の上面には、段部(回り止め部)54との間で固定ボルト24の頭部を回り止めする突起(回り止め部)55が形成され、この突起55と段部54との間に、固定ボルト24のボルト穴56を形成するときに穿孔具(ドリル)の位置決めをする位置決め溝57が形成されている。
【0024】
ここで、庇パネル15は、複数の中間パネル21を結合部21aおよびピンを介して組み立て、左右側部に端部パネル22を結合部22aおよびピンを介して組み立てることにより、必要な幅を確保している。また壁取付材11と上下カバー材18,19と先端見切り材17は、庇パネル15の全幅にわたる1本のものが使用され、さらにパネル取付材14は、全幅に対して複数に分割した定尺もの、たとえば2〜4枚の中間パネル21に対して1本のパネル取付材14で固定可能なものが使用される。58は上下カバー材18,19の両端部にビスを介して取り付けられる端板である。
【0025】
(連結構造部)
固定ボルト24により、パネル取付材14を庇パネル15の基端部上面に取り付けるとともに、庇パネル15の基端部を支持壁部32に固定している。
【0026】
連結構造部13は、固定ボルト24と、壁取付材11の垂直壁34の上端部で、上面壁部33の基部(歯支持部)45から上方に突出された台形断面の受歯部61と、この受歯部61に密に嵌合される鉤歯部62と、嵌合された鉤歯部62の後歯62Rが弾性変形で当接されるパネル取付材14の立上壁35とで構成されている。鉤歯部62には、前歯62Fと後歯62Rの間に結合溝63が形成され、また受歯部61の背面と立上壁35との間に後歯62Rが嵌合される収容溝64が形成されている。
【0027】
前記受歯部61は、図5(a),(b)および図6に示すように、前傾斜面61fおよび後傾斜面61rがそれぞれ傾斜角θで傾斜する等角台形断面に形成されており、これに対応して、鉤歯部62の結合溝63の前後の傾斜側面63f,63rが傾斜角θで傾斜する等角台形断面に形成されている。したがって、受歯部61を結合溝63に噛み合わせて固定ボルト24を締め付けることにより、受歯部61の前傾斜面61fと結合溝63の傾斜側面63fとが密に面接触し(密接前面65F)、受歯部61の後歯面61rと結合溝63の後の傾斜側面63rとが密に面接触される(密接後面65R)。また図6(b)に示すように、固定ボルト24を締め付けた状態で、受歯部61の歯先面と結合溝63の底面(連結壁62C)とに隙間δ1が生じ、かつ後歯62Rと収容溝64の底面(基部45)との間に隙間δ2が生じるように、受歯部61と鉤歯部62が形成されている。さらにガイド壁部46と中間壁部52との間に隙間δ3が形成されている。ここで前記傾斜角θの適正値は、0°〜30°の範囲であり、たとえば5°〜15°が好適である。ここで傾斜角θが30°を超えると、後述する緩衝作用が小さくなるからである。
【0028】
もちろん、上記受歯部61と結合溝63の断面形状は、固定ボルト24の締め付けで、受歯部61と結合溝63が密にかつ均一に面接触する断面形状であればよく、不等角台形断面や図5(c),(d)に示す直角台形断面であってもよい。ここで、受歯部61と結合溝63との2つの傾斜角θ=0°となる矩形断面にしないのは、噛み合わせのための許容誤差により、隙間が生じてガタ付きが生じ、衝撃荷重が発生するおそれがあるからである。
【0029】
また、鉤歯部62が結合溝63に噛み合った状態で、図6(b)に示すように、収容溝64に嵌合された後歯62Rと、立上壁35とが近接されて揺動許容隙間εが形成されている。ここで、揺動許容隙間εを形成したのは、後歯62Rと立上壁35を接触させた場合、製造誤差などにより、密接後面65Rが面接触しない場合が生じると、衝撃荷重の発生などの不具合が生じるおそれがあるためである。
【0030】
(建物用庇の取付手順)
上記構成において、上記建物用庇を壁面12に取り付ける作業手順を説明する。
1)壁取付材11、庇パネル15およびパネル取付材14に、ボルト穴37,48,56をそれぞれ所定の位置に形成する。
【0031】
壁取付材11を壁面12の所定位置に位置決めし、ボルト穴37を介して壁面12にアンカーボルト23を打ち込み、ナットを介して壁取付材11を壁面12に取り付ける。まず、左の端部パネル22の基端部を、壁取付材11の支持壁部32で支持面41に沿って挿入し、上係止段部42U,下係止片42Dにより位置決めし仮止めする。次いで、端部パネル22の結合部22aにピンを嵌入した後、結合部22aを先端部から中間パネル21の結合部21aを係合して後方にスライドさせ、その基端部を支持面41に沿って挿入し、上係止段部42U,下係止片42Dにより位置決めし、端部パネル22と中間パネル21とを結合して仮止めする。さらに次の中間パネル21を、同様の手順で結合部22a.22aとピンにより組み付ける。
【0032】
2)所定個数の中間パネル21が組み立てられると、パネル取付材14を上方から当て付けて鉤歯部62を壁取付材11の受歯部61に嵌合させ、さらに固定ボルト24を各ボルト穴56,26,48に貫入させる。そして、固定ボルト24の頭部を段部54と突起55の間に係合させて固定ボルト24を回り止めした状態で、ナットを装着して締め付け、庇パネル15の一部をパネル取付材14を介して壁面12に取り付ける。
【0033】
次に、既設の中間パネル21に結合部21aおよびピンを介して新規の中間パネル21を順次係合して組み付け、最後に端部パネル22を組み立てる。
同様にして、パネル取付材14を上方から当て付けて鉤歯部62を壁取付材11の受歯部61に嵌合させ、さらに固定ボルト24により庇パネル15の全体をパネル取付材14を介して壁面12に取り付ける。
【0034】
3)庇パネル15の前縁部に、複数のビスにより見切りブラケット16を取り付け、これら見切りブラケット16を介して先端見切り材17を装着し、端板17cを取り付けて固定する。また上カバー材18の前縁爪部18fをパネル取付材14の前取付片47に係合し、後縁係止部18を後取付片36にビス18b止めして固定する。さらに、下カバー19の前縁爪部19fを支持壁部32の前係止爪43Fに係合させ、後縁爪部19rを後係止爪43Rに係止する。
【0035】
さらに壁面12で上カバー材18の後縁係止部18rと後取付片36との取付部に上シール材18sを充填する。
(連結構造部の作用)
上記構成において、庇パネル15の片持ち荷重は、壁面12に取り付けられた壁取付材11に支持されている。ここで、壁取付材11と壁面12とが一体の剛体であり、また庇パネル15とパネル取付材14とが一体の剛体と考えることができる。庇パネル15に荷重が負荷されると、壁取付材11の背面壁部31と上面壁部33が連結される上コーナ部UCと、背面壁部31と支持壁部32の下コーナ部DCとで支持される。
【0036】
図6(a)(b)に示すように、例えば積雪などで、庇パネル15に下方への荷重が負荷されて回転モーメントDMが発生すると、連結構造部13では、支持壁部32の支持面41と固定ボルト24の交点を支点Pとして、パネル取付材14を前方に引き起こす方向の回転モーメントM1が発生する。この回転モーメントM1によって、受歯部61と鉤歯部62では、密接後面65Rに圧縮する方向の力F1が作用して、密接後面65Rで回転モーメントM1が支持され、密接前面65Fに離間する方向の力が作用する。また、圧縮する方向の力F1は、密接後面65Rに垂直な分力F1xと、密接後面65Rに沿う分力F1yとの合力と考えられ、この密接後面65Rに沿う分力F1yにより密接後面65Rに滑りやずれが生じる。さらにこの回転モーメントM1により、受歯部61、鉤歯部62などの連結構造部13を構成する部材が弾性変形する。このため、庇パネル15に下方への衝撃荷重が発生すると、連結構造部13における滑りやずれと弾性変形とで一旦緩和された後、上コーナ部UCに伝達される。
【0037】
また図6(c)(d)に示すように、たとえば巻き上げられる突風により、庇パネル15に上方への荷重が負荷され、上方への回転モーメントUMが発生することにより、支点Pを中心として、パネル取付材14を下方に押し込む方向の回転モーメントM2が発生する。この回転モーメントM2によって、受歯部61と鉤歯部62では、密接前面65Fに圧縮する方向の力F2が作用して密接前面65Fで回転モーメントM2が支持され、密接後面65Rに離間する方向の力が作用する。また圧縮する方向の力F2は、密接前面65Fに垂直な分力F2xと、密接前面65Fに沿う分力F2yとの合力と考えられ、この密接前面65Fに沿う分力F2yにより密接前面65Fに滑りやずれが生じる。さらにこの回転モーメントM2により連結構造部13を構成する部材が弾性変形する。このため、庇パネル15に上方への衝撃荷重が発生すると、連結構造部13の滑りやずれと弾性変形で一旦緩和された後、上コーナ部UCに伝達される。
【0038】
さらに回転モーメントM2により、連結構造部13の構成部材が弾性変形すると、後歯62Rが背面壁部31の立上壁35に当接部Qで当接され、回転モーメントM2による力F3が立上壁35と上コーナ部UCの広い部分で支持され。これにより、庇パネル15に対する上方への負荷に対する強度を増大させることができる。
【0039】
したがって、庇パネル15に衝撃荷重が加わった場合でも、連結構造部13により一旦緩衝して、上コーナ部UCに伝達することができ、突風による衝撃を緩和することができ、破損や変形を未然に防止することができる。
【0040】
また台風などにより、庇パネル15に上下方向の荷重が長時間繰り返し負荷された場合であっても、連結構造部13で一旦緩衝して上コーナ部UCに伝達するので、壁取付部材11の上下コーナ部UC,DCにおける金属疲労を軽減することができ、破損を未然に防止することができる。
【0041】
(実施例の効果)
上記実施例によれば、壁面12に取り付けられた壁取付材11の支持壁部32により、庇パネル15の基端部底面を支持させると同時に、庇パネル15に取り付けられたパネル取付材14を、連結構造部13を介して壁取付材11の上面壁部33に連結したので、連結構造部13における受歯部61と鉤歯部62における噛み合い部の滑りやずれ、弾性変形により、庇パネル15に加わる上下方向の荷重を一旦緩衝して上コーナ部UCに伝達させることができる。したがって、大きい衝撃荷重が庇パネル15から直接上コーナ部UCに負荷されるのを防止することができ、突風などによる衝撃力や繰り返し荷重による壁取付材11の上下コーナ部UC,DCの破損や変形を未然に防止することができる。
【0042】
また、鉤歯部62の後歯62Rが嵌合される収容溝64では、庇パネル15に負荷される上方への荷重で、弾性変形された後歯62Rを立上壁35の当接部Qで当接させて荷重を支持させることができる。これにより、壁取付材11の上コーナ部UCと上記当接部とで庇パネル15の上方への荷重を支持することができ、巻き上げるような突風に対する上下コーナ部UC,DCの強度を増大させることができる。
【0043】
さらに、壁面12に固定された壁取付材11の支持壁部32と上面壁部33とに、庇パネル15の基端部を位置決めするとともに基端部を係止可能な下係止片42Dおよび上係止段部42Uを設けたことにより、庇パネル15を容易かつ精度良く位置決めし、壁取付材11に装着することができる。
【0044】
さらにまた、固定ボルト24により庇パネル15、パネル取付材14および壁取付材11を一体に固定することにより、部品点数を削減できる。また突起部55と段部54の間で固定ボルト24の頭部を回り止めすることができるので、固定ボルト24の締め付け作業を容易に行え、作業性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0045】
UC 上コーナ部
DC 下コーナ部
11 壁取付材
12 壁面
13 連結構造部
14 パネル取付材
15 庇パネル
18 上カバー材
19 下カバー材
21 中間パネル
22 端部パネル
23 アンカーボルト(第1固定具)
24 固定ボルト(第2,第3固定具)
26 ボルト穴
31 背面壁部
32 支持壁部
33 上面壁部
34 垂直壁
35 立上壁
37 ボルト穴
41 支持面
42U 上係止段部(上位置決め部)
42D 下係止片(下位置決め部)
45 基部
46 ガイド壁部
48 ボルト穴
54 段部(回り止め部)
55 突起(回り止め部)
56 ボルト穴
61 受歯部
61f 前傾斜面
61r 後傾斜面
62 鉤歯部
62F 前歯
62R 後歯
63 結合溝
63f 前傾斜面
63r 後傾斜面
64 収容溝
65F 密接前面
65R 密接後面
δ1 隙間
δ2 隙間
δ3 隙間
ε 揺動許容隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面から庇パネルが突出して取り付けられる建物用庇の取付部構造であって、
押出成形されて壁面に固定される壁取付材と、押出成形されて庇パネルの基端部に固定されるパネル取付材とを具備し、
前記壁取付材は、壁面取付具により壁面に幅方向に沿って固定される背面壁部と、当該背面壁部から突出されて前記庇パネルの基端部を下方から支持する支持壁部と、当該支持壁部の上方に対面して前記背面壁部から突出された上面壁部とを有し、
前記パネル取付材は、前記庇パネルの基端部上面に固定される押さえ壁部を有し、
前記壁取付材とパネル取付材とを連結する連結構造部に、前記上面壁部から上方に向かって突出されて、前面および背面の少なくとも一方が傾斜面に形成された台形断面の受歯部と、前記パネル取付材に設けられて前記受歯部に上方から嵌合される鉤歯部とを有する
ことを特徴とする建物用庇の取付部構造。
【請求項2】
連結構造部は、鉤歯部と前記背面壁部とが近接されて、庇パネルに上方への荷重が負荷された時に、鉤歯部が前記背面壁部に当接し、上方への荷重を支持するように構成された
ことを特徴とする請求項1記載の建物用庇の取付部構造。
【請求項3】
支持壁部に、庇パネルの基端下縁部を係止する下位置決め部を形成するとともに、上面壁部に庇パネルの基端上縁部を係止する上位置決め部を形成した
ことを特徴とする請求項1または2記載の建物用庇の取付部構造。
【請求項4】
壁取付材の支持壁部と庇パネルとパネル取付材の押さえ壁部とを貫通して固定する固定具を有し、
押さえ壁部に、前記固定具を回り止めする回り止め部が形成された
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の建物用庇の取付部構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−140817(P2011−140817A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2439(P2010−2439)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 〔刊行物名〕内国パンフレット アルミ軽量ひさし RS VISOR RS−K型(KT−00412−09−0) 〔納品者〕 株式会社キンキ印刷プロ 〔納品年月日〕 平成21年12月10日〔刊行物等〕 〔刊行物名〕内国カタログ アルミ軽量ひさし RS VISOR(KT−00312−09−0) 〔納品者〕 株式会社キンキ印刷プロ 〔納品年月日〕 平成21年12月19日
【出願人】(000133319)株式会社ダイケン (53)
【Fターム(参考)】