説明

建物

【課題】建物の劣化診断を支援する機能を建物に持たせる場合の外観の見栄え低下を抑制する。
【解決手段】建物の外壁面には、建物ユニット34A,34Bの連結部分を隠蔽する胴差30が建物の全周に亘って配設されており、各外壁面には、胴差30内に配置された温度センサ44及び湿度センサ46、胴差30の上面に設けられた紫外線センサ48、建物ユニット34Aの一部の外観を撮影するカメラ50等を備えた情報収集部が各々設けられており、個々の情報収集部は胴差30に収容された通信線56を介して管理装置と各々接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物に係り、特に、複数の外壁面のうちの少なくとも2面に胴差が設けられた建物に関する。
【背景技術】
【0002】
建物ユニットが複数個連結されて成るユニット建物等では、外観の見栄えの向上等を目的として、建物ユニット同士の連結部分(例えば建物の1階部分を構成する建物ユニットと建物の2階部分を構成する建物ユニットとの連結部分)を外部から隠蔽する胴差が設けられている。この胴差に関連して特許文献1には、胴差化粧カバーの裏面に給気空間を設けると共に、胴差化粧カバーを給気空間と外部とを連通する隙間が形成される形状とし、給気空間の温度を温度センサによって検出し、給気空間からの外気を送風路にて室内空間に導くファンのオンオフを、温度センサによって検出された給気空間の温度に基づいて制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−371639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建物の性能や機能、見栄え等を維持して建物の長寿命化を図るためには、建物の劣化度合いに応じて外壁の再塗装や構成部材の交換等のメンテナンス作業を行う必要がある。メンテナンス作業の実施時期(実施サイクル)は、建物の劣化の標準的な進行速度に基づき作業の種類毎に予め設定されていることが一般的であるが、建物の劣化の実際の進行速度は、日射量や風通し等の立地条件によって個々の建物毎に相違するので、メンテナンス費用の抑制や構成部材の有効利用の観点から、個々の建物毎に劣化度合いを診断し、診断した劣化度合いに応じて個々の建物毎にメンテナンス作業の実施時期を決定することで、個々の建物毎にメンテナンス作業の実施時期の最適化を図ることが望ましい。
【0005】
しかしながら、建物の劣化度合いを診断するためには、建物の劣化度合いの診断に用いる温度や湿度を検知するセンサを建物の外壁面やその近傍(の望ましくは複数箇所)に配設する必要があるが、上記センサの配設に伴い、センサによる検知結果等を伝送する電気配線も設ける必要があるので、センサの配設に伴って建物の外観の見栄えが著しく損なわれるという問題があった。
【0006】
これに対して特許文献1には、外気導入機構を建物の胴差部分に設けることは記載されているものの、建物の外壁面やその近傍にセンサを配設する場合に、建物の外観の見栄え低下を抑制するための構成については何ら記載されていない。
【0007】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、建物の劣化診断を支援するための機能を建物に持たせる場合の外観の見栄え低下を抑制できる建物を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る建物は、複数の外壁面のうちの少なくとも2面に胴差が設けられた建物であって、温度及び湿度の少なくとも一方を検知する検知手段が設けられ、前記検知手段による検知結果を管理装置へ伝送するための電気配線が前記胴差内に収容されていることを特徴としている。
【0009】
請求項1記載の発明に係る建物には、温度及び湿度の少なくとも一方を検知する検知手段が設けられており、検知手段による検知結果を管理装置へ伝送するための電気配線が設けられており、検知手段と管理装置により、建物の劣化診断を支援するための機能が実現される。
【0010】
ここで、請求項1記載の発明に係る建物は、複数の外壁面のうちの少なくとも2面に胴差が設けられているが、胴差は建物ユニット同士の連結部分等を外部から隠蔽するためのものであり、建物ユニット同士の連結部分等に沿って連続して設けられているので、胴差が設けられている範囲は、検知手段による検知結果を管理装置へ伝送するための電気配線を配設する範囲と重複している。また、胴差は建物の強度を確保するための構造体ではないので、胴差内に電気配線を収容する等の目的で形状等を変更することも容易である。
【0011】
請求項1記載の発明では、これを利用し、検知手段による検知結果を管理装置へ伝送するための電気配線を胴差内に収容している。これにより、建物ユニット同士の連結部分等に加え、上記の電気配線も胴差によって外部から隠蔽されるので、建物の劣化診断を支援するための機能を建物に持たせる場合に、建物の外観の見栄えが低下することを抑制することができる。
【0012】
なお、請求項1記載の発明において、例えば請求項2に記載したように、検知手段は、胴差内に収容されているか、又は、建物の屋内のうち胴差から所定距離以内の位置に配置されていることが好ましい。これにより、建物に設けられている検知手段も胴差によって外部から隠蔽されることになり、建物の外観の見栄えを向上させることができる。
【0013】
また、請求項1又は請求項2記載の発明において、管理装置は建物外に設置されていてもよいが、建物の屋内に設置され、建物に設けられている検知手段と電気配線を介して接続されていてもよく、この場合、請求項3に記載したように、検知手段による検知結果を電気配線を介して受信し、受信した検知結果について、記憶手段に蓄積記憶させる第1の管理処理、建物の屋内に設置された表示手段に表示させる第2の管理処理、及び、通信回線を介して接続された管理センタへ送信する第3の管理処理のうちの少なくとも1つを行うように構成することができる。
【0014】
また、請求項1〜請求項3の何れかに記載の発明において、例えば請求項4に記載したように、検知手段は、温度及び湿度の少なくとも一方を建物の複数の外壁面のうちの少なくとも2面について各々検知し、管理装置は、検知手段によって検知された温度及び湿度の少なくとも一方を、建物の個々の外壁面毎に区別して管理する管理処理を行うように構成することが好ましい。一般に、建物の外壁面への日射量は建物の個々の外壁面毎に異なり、日射量に応じて温度や湿度、紫外線量等が相違することで、建物の劣化度合いも建物の個々の外壁面毎に相違することになる。これに対して請求項4記載の発明では、温度及び湿度の少なくとも一方を建物の複数の外壁面のうちの少なくとも2面について各々検知し、検知された温度及び湿度の少なくとも一方を建物の個々の外壁面毎に区別して管理するので、検知された物理量に基づき、建物の劣化度合いを外壁面単位で診断することが可能となる。
【0015】
また、請求項1〜請求項4の何れかに記載の発明において、検知手段は、例えば請求項5に記載したように、温度及び湿度の少なくとも一方以外に紫外線量も検知する構成であってもよい。
【0016】
また、請求項1〜請求項5の何れかに記載の発明において、例えば請求項6に記載したように、建物の構成部材を被写体とする画像を撮影する撮影手段を更に設け、撮影手段によって撮影された画像を管理装置へ伝送するための電気配線も胴差内に収容するようにしてもよい。
【0017】
また、請求項6記載の発明において、撮影手段は、胴差内に収容されているか、又は、建物の屋内のうち胴差から所定距離以内の位置に配置されていてもよく、この場合、例えば例えば請求項7に記載したように、胴差には、胴差に照射された光を撮影手段による撮影対象の前記構成部材が照明されるように導く導光部が設けられていることが好ましい。これにより、建物の構成部材を被写体とする画像が撮影手段によって撮影される場合に、発光手段等を別途設けて構成部材を照明する必要が無くなり、建物の構成部材を撮影するための構成を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明は、温度及び湿度の少なくとも一方を検知する検知手段を設け、検知手段による検知結果を管理装置へ伝送するための電気配線を、複数の外壁面のうちの少なくとも2面に設けられた胴差内に収容したので、建物の劣化診断を支援するための機能を建物に持たせる場合の外観の見栄え低下を抑制できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態に係る建物の側面図である。
【図2】建物に胴差を係止する部分を示す斜視図である。
【図3】胴差配設部位のうち情報収集部が設けられた箇所の断面図である。
【図4】建物に設けられた情報収集・管理システムの概略構成を示すブロック図である。
【図5】(A)は累積紫外線量と色差(褪色量)との関係の一例を示す線図、(B)は累積紫外線量に基づく外観部材のメンテナンス時期の決定を説明するための線図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。図1には本実施形態に係る二階建ての建物10が示されている。建物10はユニット建物であり、建物ユニットが複数個連結されて構成されている。なお、建物10は単一の建物ユニットで構成することも可能である。また、個々の建物ユニットとしては、例えば各々矩形枠状に組まれた天井フレームと床フレームとの間に4本の柱が立設された構成(図示省略)を採用することができるが、これに限られるものではなく、箱形の他の架構構造であってもよい。
【0021】
図1に示すように、建物10には、外壁部材や外観設置部品、外装部材等の各種の外観部材(例えば塗装された外壁部材12、屋根葺き材14、アルミ部材(例えばサッシ16やベランダ笠木18等)、樹脂部材(例えば樋20や換気扇フード22等)、板金部材(例えばシャッターケース24や土台水切、屋根板金等))が設けられている。
【0022】
より詳しくは、建物10の南面には、図1(A)に示すように、塗装された外壁部材12以外に、屋根葺き材14、アルミサッシ16、ベランダ笠木18、樋20、換気扇フード22、シャッターケース24等が設けられている。また建物10の北面には、図1(B)に示すように、塗装された外壁部材12以外に、屋根葺き材14、アルミサッシ16、樋20、換気扇フード22、勝手口庇26等が設けられている。また建物10の西面には、図1(C)に示すように、塗装された外壁部材12以外に、屋根葺き材14、アルミサッシ16、樋20、換気扇フード22、シャッターケース24等が設けられている。更に建物10の東面には、図1(D)に示すように、塗装された外壁部材12以外に、屋根葺き材14、アルミサッシ16、換気扇フード22等が設けられている。
【0023】
また、図1(A)〜(D)に示すように、建物10の外壁面のうち、建物10の1階部分と2階部分との境界に相当する高さ位置には、建物10の1階部分を構成する建物ユニットと建物10の2階部分を構成する建物ユニットとの連結部分を外部から隠蔽する長尺状の胴差30が、建物10のおよそ全周に亘って配設されている。
【0024】
図3に示すように、建物10の1階部分に対応する外壁部材12Aは、建物10の1階部分を構成する建物ユニット(図3では、当該建物ユニットに符号「34A」を付し、その一部を示す)とブラケット36を介して連結される一方、建物10の2階部分に対応する外壁部材12Bは、建物10の2階部分を構成する建物ユニット(図3では、当該建物ユニットに符号「34B」を付し、その一部を示す)とブラケット36を介して連結され、図2及び図3に示すように、外壁部材12Aの上端部と外壁部材12Bの下端部との間には間隙が形成されている。この間隙は建物10のおよそ全周に亘って連続しており、外壁部材12Aの上端部には、間隙に沿っておよそ一定の間隔でブラケット32がねじ38によって取り付けられている。
【0025】
ブラケット32は、ベース部分の全体形状がおよそ矩形状かつ扁平な形状とされ、ベース部分から垂直に突出すると共に先端部が上方へ向けて屈曲された形状の爪部32Aが形成されている。また胴差30は、その断面形状が、およそコ字状で、かつコ字状の両端部から内側へ突出する一対の突出部が設けられ、内部に空間30Aが形成された形状とされている。また、胴差30の一対の突出部のうちの一方(突出部30B)は、先端部が、爪部32Aの先端部とブラケット32のベース部分との間隙に挿入された場合に、爪部32Aの先端部とブラケット32のベース部分とによって挟持されて保持される形状とされている。
【0026】
これにより、胴差30に設けられている一対の突出部のうちの突出部30Bが上側に位置する向きで、胴差30の長手方向が外壁部材12A,12Bの隙間に沿い、胴差30のうち一対の突出部が設けられている側が間隙を隔てて外壁部材12A,12Bの隙間と対向し、かつ突出部30Bの下端部が爪部32Aの先端部よりも上方に位置するように胴差30を配置した状態で、胴差30が外壁部材12やブラケット32のベース部分に当接する迄胴差30を移動させた後に、胴差30を下方へ移動させることで、突出部30Bの先端部が爪部32Aの先端部とブラケット32のベース部分とに挟持されることで胴差30がブラケット32に係止され、建物ユニット34,38の連結部分及び外壁部材12A,12Bの隙間が胴差30によって外部から隠蔽されるように、胴差30が建物10に配設されることになる。
【0027】
ところで、前述した外観部材は、紫外線等の影響により、塗装の劣化や板金部材や樹脂部材の褪色等の劣化が生じるが、外観部材の劣化度合いは外観部材に照射された紫外線量(詳しくは累積紫外線量)等によって異なり、外観部材への照射紫外線は建物10の立地条件(建物10への日照量)や外観部材が設けられた外壁面の向きによって相違する。また、建物ユニットの構成部材(例えば天井フレームや床フレーム、柱等の構造材)や、建物ユニット34と外壁部材12との間に配設される断熱材についても、例えば結露等の影響で錆の発生や黴の付着等の劣化が生じるが、これらの部材の劣化度合い(錆の発生や黴の付着等の有無やその進行度合い)は、各部材の周囲環境(温度や湿度等)によって異なり、各部材の周囲環境についても、建物10の立地条件(建物10への日照量や風通し)や各部材の配設位置(例えば各部材の近傍に存在する外壁面の向き等)によって相違する。
【0028】
このため、本実施形態に係る建物10は、建物10を構成する各部材(外観部材や他の部材)の劣化度合いを診断するための情報を収集・管理すると共に、建物10の周囲の敷地内への侵入者の有無の検出も併せて行うために、図4に示す情報収集・管理システム40が設けられている。情報収集・管理システム40は、建物10の互いに異なる外壁面(東西南北の各面)に配置された4個の情報収集部42を備えている。個々の情報収集部42は、対応する外壁面のうち胴差30の配設位置付近に各々設けられている。
【0029】
すなわち、個々の情報収集部42は温度センサ44、湿度センサ46、紫外線量センサ48、カメラ50及び人感センサ52を各々備えており、図3に示すように、このうち温度センサ44及び湿度センサ46は、胴差30の内部空間30A内の温度及び湿度を検出可能なように内部空間30A内に設けられている。また紫外線量センサ48は、対応する外壁面に照射される紫外線量を検出可能なように、胴差30の上面上に設けられている。またカメラ50は、建物ユニットの一部の構成部材の外観(図3の例では建物ユニット34Aの天井フレームを構成する部材の外観)を撮影可能なように、外壁部材12Aの上端部付近に設けられている。また人感センサ52は、建物10の周囲でかつ対応する外壁面の近傍の敷地内に存在する人間を検出可能なように、胴差30の下面に取り付けられている。
【0030】
なお、人感センサ52は全ての情報収集部42に設けられている必要はなく、建物10の周囲の敷地のうち、人の立ち入りが少ない範囲に対応する情報収集部42(例えば玄関が設けられた外壁面(図1の例では図1(B)に示す北に面した外壁面)以外の外壁面に配置された情報収集部42)にのみ人感センサ52を設けるようにしてもよい。人感センサ52としては、敷地内に存在する人間を赤外線又は超音波によって検出する構成を採用することができる。また、胴差30のうちカメラ50が設けられた位置に対応する箇所には、側面に孔30Cが穿設されており、この孔30Cの開口を閉止する透明部材54が設けられている。透明部材54(孔30C)は、透明部材54を透過した光がカメラ50による撮影対象の部材に照射されるように配置位置が調整されている。このように、透明部材54は請求項7に記載の導光部に対応している。
【0031】
また、胴差30の内部空間30Aには、胴差30の長手方向に沿って(建物10の全周に亘って)通信線56及び給電線58が収容されており、通信線56及び給電線58は、その中間部の複数箇所が、胴差30の内部空間30Aに胴差30の長手方向に沿って一定間隔で設けられた配線支持手段に支持されている。個々の情報収集部42は通信線56及び給電線58に各々接続され、給電線58を介して供給された電力により作動すると共に、各センサの検出結果及びカメラ50によって撮影された画像を通信線56を経由して送信する。また、建物10の室内には室温センサ60、湿度センサ62及び化学物質濃度センサ64が各々配設されている。これらのセンサも通信線56に接続されており、これらのセンサの検出結果も通信線56を経由して送信される。
【0032】
また、建物10の屋内には管理装置66が設置されている。管理装置66はマイクロコンピュータ等から成り、CPU66A、メモリ66B、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等から成る不揮発性の記憶部66Cを備えている。管理装置66は通信線56に接続されており、個々の情報収集部42から通信線56を経由して受信した各種情報(各センサの検出結果やカメラ50によって撮影された画像)は、記憶部66Cに設けられた情報蓄積領域に蓄積記憶される。また管理装置66には、建物10の居室内の温度・湿度を調整する空調装置68、建物10の居室の換気を行うシャッタ装置70、建物10の屋内(例えば居室内)に設けられ各種の情報を表示可能でタッチパネルが設けられたディスプレイ72、及び、音等により警報を出力可能な警報装置74が各々接続されており、空調装置68、シャッタ装置70及び警報装置74の作動や、ディスプレイ72への情報表示は管理装置66によって制御される。
【0033】
更に、管理装置66は、インターネット等のネットワーク76を介し、複数の建物10の状態を管理する集中管理センタ(のコンピュータ)78と接続されており、記憶部66Cの情報蓄積領域に蓄積記憶された情報は集中管理センタ78へ転送される。
【0034】
なお、上記構成において、温度センサ44及び湿度センサ46は本発明に係る検知手段に、紫外線量センサ48は請求項5に記載の検知手段に、カメラ50は請求項6に記載の撮影手段に各々対応している。また、通信線56は本発明における電気配線に、管理装置66は本発明における管理装置(詳しくは請求項3に記載の管理装置)に、記憶部66Cは請求項3に記載の記憶手段に、ディスプレイ72は請求項3に記載の表示手段に、集中管理センタ78は請求項3に記載の外部装置に各々対応している。
【0035】
次に本実施形態の作用を説明する。本実施形態に係る情報収集・管理システム40は、建物10の互いに異なる外壁面に配置された4個の情報収集部42を備えており、個々の情報収集部42は温度センサ44、湿度センサ46、紫外線量センサ48、カメラ50及び人感センサ52を各々備えている。このため、個々の情報収集部42を建物10の互いに異なる外壁面に単に配置した場合、多数のセンサやカメラ、それらと接続される通信線56及び給電線58が建物10の個々の外壁面に各々取り付けられることになり、建物10の外観の見栄え(美観)は著しく低下する。
【0036】
これに対して本実施形態では、通信線56及び給電線58が胴差30の内部空間30A内に収容されているので、通信線56及び給電線58は胴差30によって外部から隠蔽されている。また、個々の情報収集部42の温度センサ44及び湿度センサ46は胴差30の内部空間30A内に各々配置され、カメラ50は胴差30の配設位置近傍の建物10内に各々配置されているので、個々の情報収集部42の温度センサ44、湿度センサ46及びカメラ50についても胴差30によって外部から隠蔽されている。更に、個々の情報収集部42の紫外線量センサ48は目立ち難い胴差30の上面に各々配置されている。これにより、情報収集・管理システム40を建物10に設けることで、建物10の外観の見栄え(美観)が低下することを抑制することができる。
【0037】
なお、個々の情報収集部42の人感センサ52は、本実施形態では胴差30の下面に取り付けられているので、他のセンサやカメラ50よりは目立ち易いが、人感センサ52については、目立つことによって建物10への部外者の侵入を抑止する防犯効果も期待できるので、胴差30の下面に取り付けることが望ましい。なお、人感センサ52も胴差30の内部空間30Aに収容し、透明部材54と同様の部材を介して敷地内に存在する人間を検出するようにしてもよく、この態様は防犯効果よりも建物10の外観の見栄え(美観)の向上を優先したい等の場合に有効である。
【0038】
また、情報収集・管理システム40の個々の情報収集部42は、温度センサ44及び湿度センサ46によって胴差30の内部空間30A内の温度及び湿度を定期的に(例えば一定時間毎に)検出し、紫外線量センサ48によって対応する外壁面に照射される紫外線量を定期的に(例えば一定時間毎に)検出し、カメラ50によって建物ユニットの一部の構成部材の外観を定期的に(例えば1日1回)撮影し、人感センサ52は、対応する外壁面の近傍の敷地内への侵入者の有無を常時検出する。そして、各センサの検出結果及びカメラ50によって撮影された画像に、個々の情報収集部42毎に予め設定されたIDを付加し、通信線56を介して管理装置66へ送信する。
【0039】
管理装置66は、何れかの情報収集部42から各センサの検出結果や画像を受信する毎に、受信した情報のうち人感センサ52の検出結果以外の情報を、受信した情報に付加されているIDと共に記憶部66Cの情報蓄積領域に蓄積記憶させる。この処理は請求項3に記載の第1の管理処理に対応している。
【0040】
また、建物10の居住者によって防犯モードがオンされた場合、管理装置66は情報収集部42から受信した情報に含まれる人感センサ52の検出結果に基づき、建物10の周囲の敷地内に存在している人間が検出されたか否かを判定する。防犯モードがオンされている状態で、建物10の周囲の敷地内に存在している人間が検出された場合、敷地内に存在している人間は敷地内に無断で侵入した部外者である可能性が高い。
【0041】
このため、上記場合に管理装置66は、警報装置74から警報音を出力させることで部外者に警告すると共に、建物10の敷地内に部外者が侵入したことをネットワーク76経由で外部装置(例えば警備会社や警察署等のコンピュータ)へ通報する。これにより、部外者が建物10内へ侵入することを未然に防止することができる。
【0042】
また管理装置66は、建物10の居住者により、記憶部66Cの情報蓄積領域に蓄積記憶されている情報の表示がディスプレイ72に設けられたタッチパネルを介して指示された場合、表示対象の情報を読み出し、必要に応じて演算を行って表示させる。情報の表示形態は、例えば表示対象の情報が紫外線量であれば、建物10の完成時点又は最後に実施したメンテンス作業からの累積紫外線量を各外壁面毎に演算し、演算結果を数値やグラフ形式で表示させる形態や、指定された期間内における指定された時間単位 (例えば1日単位や1週間単位、1月単位等)毎の積算紫外線量を各外壁面毎に演算し、演算した積算紫外線量の推移をグラフ形式や表形式で表示させる形態を適用することができる。また、表示対象の情報が画像であれば、最新の画像のみを表示させたり、最新の画像と過去の任意の時点で撮影された画像とを各々表示させる形態を適用することができる。上記の処理は請求項3に記載の第2の管理処理に対応している。
【0043】
また管理装置66は、記憶部66Cの情報蓄積領域に蓄積記憶されている情報(人感センサ52を除く各センサの検出結果及び画像)を、これらの情報に付加されているIDと共に、集中管理センタ78へ定期的に送信する。なお、情報の送信タイミングは、一定の時間間隔(例えば1日1回や1週間に1回、1月に1回、1年に1回等)でもよいし、情報記憶領域に蓄積記憶されている情報のデータ量が閾値に達する毎でもよいし、集中管理センタ78から情報の送信が要求される毎であってもよい。上記の集中管理センタ78への情報の送信も請求項3に記載の第3の管理処理に対応している。
【0044】
なお、管理装置66は、建物10の屋内に配設された室温センサ60、湿度センサ62及び化学物質濃度センサ64の検出結果もこれらのセンサが各々受信し、受信した検出結果に基づいて空調装置68やシャッタ装置70の作動を制御する処理を行う。この空調装置68やシャッタ装置70の作動制御は、情報収集部42の温度センサ44や湿度センサ46、紫外線量センサ48の検出結果も用いて行うようにしてもよい。
【0045】
集中管理センタ78は、建物10の管理装置66から受信した情報に基づき、建物10を構成する各構成部材の劣化度合いを判定し、メンテナンス作業の実施時期を決定する処理を行う。
【0046】
具体的には、例えば外観部材は紫外線によって褪色等の劣化が生じるが、例として図5(A)に示すように、外観部材への累積紫外線線量と、新品の外観部材の色を基準とする外観部材の色差ΔE(すなわち外観部材の褪色量)と、の関係を実験等によって求めると共に、外観部材の色差ΔEに対してメンテナンス作業を実施する基準としての閾値ΔELを設定することで、これらの情報に基づき、外観部材の褪色量が閾値ΔELに達するときの累積紫外線量の閾値VLを求めることができる。
【0047】
このため、集中管理センタ78は、建物10の管理装置66から受信した情報のうち、建物10の各外壁面毎の紫外線量の検出結果に基づいて、現在の外観部材が建物10に取り付けられてから現時点迄の累積紫外線量Vを建物10の各外壁面毎に演算し、累積紫外線量Vの演算結果と、現在の外観部材が建物10に取り付けられてから現時点迄の経過時間と、に基づいて、経過時間と累積紫外線量Vとの関係(図5(B)に二点鎖線で示す関係)を回帰分析等によって建物10の各外壁面毎に求め、求めた関係に基づき累積紫外線量Vが閾値VLに達する迄の経過時間(時期)を建物10の各外壁面毎に求めることで、外観部材の褪色量が閾値ΔELに達する時期、すなわち外観部材のメンテナンス作業の実施時期を建物10の各外壁面毎に求める(決定する)ことができる。
【0048】
これにより、紫外線量が比較的高い南に面した外壁面については、当該外壁面に設けられた外観部材の褪色量が閾値ΔELに達する時期(メンテナンス作業の実施時期)として、図5(B)に示す時期tsが算出・決定される一方、紫外線量が比較的低い北に面した外壁面については、当該外壁面に設けられた外観部材の褪色量が閾値ΔELに達する時期(メンテナンス作業の実施時期)として、図5(B)に示す時期tnが算出・決定される。なお、他の方角(東/西)に面した外壁面についても、同様にして外観部材の褪色量が閾値ΔELに達する時期(メンテナンス作業の実施時期)が算出・決定される。
【0049】
集中管理センタ(のコンピュータ)78によって建物10の各外壁面毎に決定された外観部材のメンテナンス作業の実施時期はメンテナンス作業者へ通知され、メンテナンス作業者は、建物10の各外壁面毎の外観部材のメンテナンス作業を、通知された実施時期に各々実施する。
【0050】
また、例えば建物ユニットの構成部材(例えば天井フレームや床フレーム、柱等の構造材)や建物ユニット34と外壁部材12との間に配設される断熱材(以下、これらを屋内部材と総称する)は、例えば結露の影響で錆の発生や黴の付着等の劣化が生じる。ここで、結露が生じる可能性が高い環境条件(温度・湿度の範囲)は既知であるので、屋内部材を上記の環境条件(結露発生環境条件)に晒し、屋内部材の錆の発生や黴の付着を観察する等の実験を行うことで、錆や黴により屋内部材の交換等のメンテナンス作業が必要な状態となる迄の時間の閾値TLを求めることができる。
【0051】
そして、集中管理センタ78は、建物10の管理装置66から受信した情報のうち、建物10の各外壁面毎の温度・湿度の検出結果に基づいて、当該検出結果が表す温度・湿度が結露発生環境条件に合致するか否かを建物10の各外壁面毎に判定し、合致する場合は各外壁面毎の結露発生環境累積時間Tに積算する。また集中管理センタ78は、結露発生環境累積時間Tと、屋内部材が建物10に取り付けられてから現時点迄の経過時間と、に基づいて、経過時間と結露発生環境累積時間Tとの関係を回帰分析等によって建物10の各外壁面毎に求め、求めた関係に基づき結露発生環境累積時間が閾値TLに達する迄の経過時間(時期)を建物10の各外壁面毎に求めることで、錆や黴により屋内部材の交換等のメンテナンス作業が必要な状態となる時期、すなわち屋内部材のメンテナンス作業の実施時期を建物10の各外壁面毎に求める(決定する)ことができる。
【0052】
集中管理センタ(のコンピュータ)78によって建物10の各外壁面毎に決定された屋内部材のメンテナンス作業の実施時期もメンテナンス作業者へ通知される。メンテナンス作業者は、集中管理センタ78が建物10の管理装置66から受信した情報に含まれる画像(カメラ50によって撮影された構成部材の外観を表す画像)を参照し、構成部材の結露の有無や構成部材の錆の発生の有無、錆の進行状況を確認することで、必要に応じて屋内部材のメンテナンス作業の実施時期を変更(調整)し、建物10の各外壁面毎の屋内部材のメンテナンス作業を通知された実施時期又は変更(調整)後の実施時期に各々実施する。
【0053】
上記のメンテナンス作業により、建物10の性能や機能、見栄え等が維持され、建物10の長寿命化が図られる。また、建物10の各外壁面毎に外観部材や屋内部材の劣化度合いが判定(診断)され、劣化度合いに応じて各外壁面毎にメンテナンス作業の実施時期が最適化されることで、メンテナンス費用の抑制や建物10の構成部材の有効利用を実現することができる。
【0054】
また、メンテナンス作業によって新品と交換されることで建物10から取り外された部材が、建物10に取り付けられている間、どのような環境に晒されていたかは、集中管理センタ78が建物10の管理装置66から受信した情報によって判断可能であるので、建物10から取り外された部材に上記情報を添付し、建物10又は部材の製造メーカへ送ることで、建物10の製造メーカによる部材の選定、或いは、部材の製造メーカによる部材の改良や新規開発等に役立てることも可能となる。
【0055】
なお、情報収集部42の温度センサ44、湿度センサ46、紫外線量センサ48、カメラ50及び人感センサ52の配置位置は図3に示した配置位置に限られるものではなく、建物10の外観の見栄え(美観)を損なわない範囲内で適宜変更可能である。例えば温度センサ44及び湿度センサ46はカメラ50と同様に外壁部材12の屋内側に配置することも可能であり、紫外線量センサ48についても、例えば胴差30の一部分を紫外線を透過する透明部材に置き換えることで、当該透明部材の内側(胴差30の内部空間30A内)に配置することも可能である。
【0056】
また、上記では人感センサ52を設け、人感センサ52の検出結果に基づいて建物10の敷地内に部外者が侵入したことを検知する構成を説明したが、人感センサに代えてカメラを設け、このカメラによって撮影された画像に基づいて建物10の敷地内に部外者が侵入したことを検知するようにしてもよいし、人感センサ52及び上記のカメラを各々設け、人感センサ52の検出結果と上記のカメラによって撮影された画像を併用して、建物10の敷地内に部外者が侵入したことを検知するようにしてもよいし、部外者の侵入を検知する構成を省略してもよい。
【0057】
また、上記では本発明に係る検知手段として、温度センサ44、湿度センサ46及び紫外線量センサ48を各々設けた態様を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば温度センサ44及び湿度センサ46の少なくとも一方のみ設けてもよいし、結露の有無を検出する結露センサ等、他のセンサを検知手段として追加してもよい
【0058】
更に、上記では情報収集部42で収集された情報(各センサの検出結果及びカメラ50によって撮影された画像)を、建物10の各外壁面毎のメンテナンス作業の実施時期の決定に用いる態様を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、建物10の各外壁面毎のメンテナンス作業を同一の時期に実施できるように、メンテナンス作業で交換する部材の耐用年数を建物10の各外壁面毎に相違させるにあたり、建物10の各外壁面毎の部材の耐用年数の選定に情報収集部42で収集された情報を用いることも可能である。
【0059】
また、上記では情報収集部42を建物10の個々の外壁面に各々設けた態様を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、紫外線量が最大となる外壁面(例えば南面)と結露の発生確率が最も高い外壁面(例えば北面)に情報収集部42を設ける等のように、外壁面の少なくとも2面に情報収集部42が設けられた構成であればよく、一部の外壁面への情報収集部42の配置を省略してもよ。また、本発明に係る建物についても、上記で説明したように、全周に胴差30が配設された建物10に限られるものではなく、情報収集部42と同様に少なくとも2面(情報収集部42を設ける外壁面)に胴差30が配設された建物であれば、本発明を適用可能である。
【0060】
また、上記では検知手段及び撮影手段を各々設けた構成を例に説明したが、これに限定されるものではなく、本発明は検知手段のみが設けられている態様も権利範囲に含むものである。
【0061】
更に、上記では管理装置66が建物10に設けられた態様を説明したが、管理装置66の設置を省略し、各センサの検出結果やカメラ50によって撮影された画像が外部の集中管理センタ78へ直接送信される構成を採用することも可能である。この場合、集中管理センタ78が本発明における管理装置として機能することになる。
【0062】
また、上記では本発明に係る建物として、ユニット建物から成る建物10を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数の外壁面のうちの少なくとも2面に胴差が設けられた建物であれば、ユニット建物以外の建物であっても本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
10 建物
30 胴差
40 情報収集・管理システム
42 情報収集部
44 温度センサ(検知手段)
46 湿度センサ(検知手段)
48 紫外線量センサ(検知手段)
50 カメラ(撮影手段)
54 透明部材(導光部)
56 通信線(電気配線)
66 管理装置
78 集中管理センタ(外部装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の外壁面のうちの少なくとも2面に胴差が設けられた建物であって、
温度及び湿度の少なくとも一方を検知する検知手段が設けられ、
前記検知手段による検知結果を管理装置へ伝送するための電気配線が前記胴差内に収容されていることを特徴とする建物。
【請求項2】
前記検知手段は、前記胴差内に収容されているか、又は、前記建物の屋内のうち前記胴差から所定距離以内の位置に配置されている請求項1記載の建物。
【請求項3】
前記管理装置は前記建物の屋内に設置され、前記建物に設けられている前記検知手段と前記電気配線を介して接続され、前記検知手段による検知結果を前記電気配線を介して受信し、受信した検知結果について、記憶手段に蓄積記憶させる第1の管理処理、前記建物の屋内に設置された表示手段に表示させる第2の管理処理、及び、通信回線を介して接続された外部装置へ送信する第3の管理処理のうちの少なくとも1つを行う請求項1又は請求項2記載の建物。
【請求項4】
前記検知手段は、温度及び湿度の少なくとも一方を前記建物の複数の外壁面のうちの少なくとも2面について各々検知し、
前記管理装置は、前記検知手段によって検知された温度及び湿度の少なくとも一方を、前記建物の個々の外壁面毎に区別して管理する管理処理を行う請求項1〜請求項3の何れか1項記載の建物。
【請求項5】
前記検知手段は、温度及び湿度の少なくとも一方以外に紫外線量も検知する請求項1〜請求項4の何れか1項記載の建物。
【請求項6】
前記建物の構成部材を被写体とする画像を撮影する撮影手段を更に備え、
前記撮影手段によって撮影された画像を前記管理装置へ伝送するための電気配線も前記胴差内に収容されている請求項1〜請求項5の何れか1項記載の建物。
【請求項7】
前記撮影手段は、前記胴差内に収容されているか、又は、前記建物の屋内のうち前記胴差から所定距離以内の位置に配置され、
前記胴差には、前記胴差に照射された光を前記撮影手段による撮影対象の前記構成部材が照明されるように導く導光部が設けられている請求項6記載の建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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