説明

建物

【課題】階段下空間を利用して異なる部屋間で物を受け渡しすることができる建物を提供する。
【解決手段】1階に、第1部屋11と第2部屋12とが階段下空間10を挟んで設けられ、第1部屋11と階段下空間10とを仕切る壁に第1開口部14が設けられ、第2部屋12と階段下空間10とを仕切る壁に第2開口部18が設けられ、階段下空間10に、物を収容可能な箱体21が第1開口部14と第2開口部18との間を往復移動可能に設けられているので、階段下空間10において、第1開口部14と第2開口部18との間で、物が収容された箱体21を往復移動させることによって、第1開口部14に面する第1部屋11と第2開口部18に面する第2部屋12との間で物を受け渡しすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上階床と下階床との間に階段が設けられ、この階段の下方が階段下空間となっている建物に関する。
【背景技術】
【0002】
上階床と下階床との間に階段が設けられ、この階段の下方が階段下空間となっている建物の一例として特許文献1に記載のものが知られている。
この建物では、階段の踊り場の下に収納空間(階段下空間)を設け、この収納空間にキャスター付収納家具を出入自在に設けている。収納空間への出入口(開口部)は、当該収納空間を形成する壁に設けられており、この出入口から収納空間にキャスター付収納家具が出し入れ自在となっている。
このような建物では、キャスター付収納家具を移動させて、収納空間から外に出すことが可能となるので、比較的長時間かかる作業を行う場合には、収納空間の外で作業をするようにすれば、奥行きが深く、狭いものとなりがちな収納空間の内部において作業をする場合における不便を感じることがなく、使い勝手を良いものとすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−170368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の建物では、キャスター付収納家具を開口部から階段下空間に出し入れできるが、キャスター付収納家具に収納された物を階段下空間を利用して異なる部屋間で受け渡しすることはできず、階段下空間の有効利用が十分ではなかった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、階段下空間を利用して異なる部屋間で物を受け渡しすることができる建物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、例えば図1〜図4に示すように、上階床と下階床との間に階段5が設けられ、この階段5の下方が階段下空間10となっている建物において、
下階に、第1部屋11と第2部屋12とが前記階段下空間10を挟んで設けられ、
前記第1部屋11と前記階段下空間10とを仕切る壁に第1開口部14が設けられ、前記第2部屋12と前記階段下空間10とを仕切る壁に第2開口部18が設けられ、
前記階段下空間10には、物を収容可能な箱体21が前記第1開口部14と前記第2開口部18との間を往復移動可能に設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、階段下空間10において、第1開口部14と第2開口部18との間で、物が収容された箱体21を往復移動させることによって、第1開口部14に面する第1部屋11と第2開口部18に面する第2部屋12との間で物を受け渡しすることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の建物において、
前記第1部屋11は、玄関2に隣接して設けられ、かつ当該玄関2から行き来可能な部屋11であり、
前記第2部屋12は、ランドリー機器15を備えた部屋12であることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、外出先から帰宅した住人等は、玄関2から第1部屋11に入って、当該第1部屋11で着替えた衣服を、第1開口部14から箱体21に入れ、この箱体21を第2開口部18に向けて移動させることができる。
第2部屋12では、箱体21から衣服を第2開口部18を通して取り出し、ランドリー機器15に入れて、洗濯、乾燥等を行える。
したがって、花粉等の異物が付着した衣服を、建物の居室等に持ち込むことなく、洗濯、乾燥等が行える。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の建物において、
前記階段下空間10の床または天井には、レール20が前記第1開口部14と第2開口部18との間に設けられ、このレール20を前記箱体21が往復移動することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、階段下空間10の床または天井に設けられたレール20を箱体21が往復移動するので、第1開口部14と第2開口部18との間で箱体21を安定的に往復移動させるこができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の建物において、
前記階段5が途中に踊り場5aを有する折り返し階段5であり、この踊り場5aの下方に前記箱体21が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、踊り場5aの下面が水平となるので、斜め方向に延在する階段の下に設ける場合に比して、大きく、かつ直方体状の箱体21を使用できる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の建物において、
前記階段下空間10には、前記箱体21の往復移動経路外に、収納スペース22,23が設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、箱体21の往復移動経路外に、収納スペース22,23が設けられているので、この収納スペース22,23に、物を収納し、第1開口部14および第2開口部18の双方から取り出すことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、階段下空間において、第1開口部と第2開口部との間で、物が収容された箱体を往復移動させることによって、第1開口部に面する第1部屋と第2開口部に面する第2部屋との間で物を受け渡しすることができる。したがって、階段下空間の有効利用を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る建物の一例を示すもので、一つの住戸の1階の平面図である。
【図2】同、一つの住戸の2階の平面図である。
【図3】同、一つの住戸の縦断面図である。
【図4】同、一つの住戸の階段下空間を示す概略斜視図である。
【図5】同、アパート全体を示すもので、(a)は1階の平面図、(b)は2階の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態の建物は、メゾネット形式のアパートであり、例えば、図5に示すように、3戸の住戸(建物)1・・・で構成されている。これら3戸の住戸1はすべて同じレイアウトになっている。
図1は、前記アパートの一つの住戸の1階の平面図、図2は同、2階の平面図、図3は縦断面図、図4は、階段下空間を示す概略斜視図、図5はアパートの平面図である。
【0019】
図1に示すように、住戸1の1階の端部には玄関2が設けられ、この玄関2に廊下3が接続されている。廊下3の突き当たりには、寝室4が設けられ、また、廊下3の端部に面して階段5が設けられている。
この階段5は2階床(上階床)と1階床(下階床)との間に設けられ、2階床と1階床とを接続するものである。この階段5は、その途中に踊り場5a(図2参照)が設けられた折返し階段5となっている。
【0020】
図2および図3に示すように、踊り場5aの上方は2階の天井まで吹き抜ける吹抜け空間6となっており、踊り場5aの一部は書斎や子育て空間として使用される。また、吹抜け空間6は屋根に設けられた天窓6aまで延在している。
2階には部屋7、配膳台付きキッチン8、リビング9が設けられており、配膳台付きキッチン8の上方には、小屋裏収納8aが設けられている。この小屋裏収納8aを形成する壁には、小屋裏収納8aを吹抜け空間6に連通させるための孔8bが形成されている。
また、部屋7と吹抜け空間6を仕切る壁には、部屋7を吹抜け空間6に連通させるための窓7aが設けられている。
【0021】
図1、図3、図4に示すように、階段5の下方は、階段下空間10となっている。この階段下空間10は踊り場5aの下方に存在する第1階段下空間10aと、踊り場5aを除く階段5の下方に存在する第2階段下空間10bとから構成されており、これらは連通している。
前記玄関2に隣接して第1部屋11が設けられており、前記廊下3の端部に隣接して第2部屋12が設けられている。これら第1部屋11と第2部屋12とは階段下空間10を挟んで設けられている。
第1部屋11は、玄関2に隣接して設けられており、当該玄関2の玄関ホール2aから行き来可能な部屋となっている。すなわち、玄関2と第1部屋11とを仕切る壁には、戸13が設けられており、この戸13を開けて玄関ホール2aから第1部屋11に行き来可能となっている。第1部屋11は収納室としての機能を有しており、当該第1部屋11には衣類やその他の物を収納する家具や棚が備えられている。
第1部屋11と前記階段下空間10とを仕切る壁には、第1開口部14が設けられており、この第1開口部14は折戸14aによって開閉可能となっている。
【0022】
前記第2部屋12は、ランドリー機器15を備えた部屋であり、本実施の形態では、洗面室12を構成している。ランドリー機器15としては、洗濯機、乾燥機等が挙げられる。この洗面室12に隣接して、当該洗面室12から出入り可能な浴室16が設けられ、この浴室16に隣接してトイレ17が設けられている。
第2部屋(洗面室)12と前記階段下空間10とを仕切る壁には、第2開口部18が設けられており、この第2開口部18は折戸18aによって開閉可能となっている。また、第2開口部18は前記第1開口部14と対向して設けられている。
【0023】
前記階段下空間10の床には、レール20,20が設けられている。すなわち、階段下空間10の第1階段下空間10aの床には、レール20,20が第1開口部14と第2開口部18との間において直線状に設けられている。
一方、第1階段下空間10aには、上面が開口した直方体状の箱体21が設けられている。この箱体21の下面四隅部には、それぞれ車輪21aが取り付けられており、これら車輪21aが前記レール20,20を往復動するようになっている。例えば、レール20,20には、車輪21aが移動可能にはまり込む凹溝が形成されており、この凹溝内を車輪21aが転動することによって、箱体21がレール20,20上を往復動するようになっている。なお、凹溝の底面は第1部屋11および第2部屋12の床面とほぼ等しい高さとなっている。
【0024】
また、前記車輪21aはその向きを変更可能なキャスター状となっており、車輪21aはレール20,20から離れて、第1部屋11または第2部屋12に移動可能となっている。したがって、箱体21は、階段下空間10から第1部屋11および第2部屋12に移動して、これらの床面上では自由に移動可能となっている。
また、箱体21の高さは、第1開口部14および第2開口部18の上縁部より低くなっている。したがって、箱体21を第1開口部14または第2開口部18側に寄せた場合に、箱体21の上端と第1開口部14および第2開口部18の上縁部との間から衣服等の物を箱体21に収容できるようになっている。
さらに、箱体21の幅は、第1開口部14および第2開口部18の左右の開口幅とほぼ等しいか若干小さめに設定されており、これによって、箱体21は第1開口部14または第2開口部18を通って第1部屋11または第2部屋12に移動可能となっている。
【0025】
また、階段下空間10には、箱体21の往復移動経路外に、収納スペース22,23が設けられている。すなわち、階段下空間10の第1階段下空間10aには、前記レール20,20の外側に収納スペース22が設けられ、前記第2階段下空間10bに収納スペース23が設けられている。これら収納スペース22,34には、収納家具や棚を備えてもよい。収納スペース22に物を収納したり、収納スペース22から物を取り出す場合、例えば箱体21を第1開口部14または第2開口部18側に寄せたうえで、第2開口部18または第1開口部14から物を出し入れすればよい。また、収納スペース23に物を収納したり、収納スペース23から物を取り出す場合、例えば箱体21を第1開口部14側に寄せたうえで、第2開口部18から物を出し入れすればよい。また、箱体21を階段下空間10から第1部屋11または第2部屋12に移動させたうえで、第1開口部14または第2開口部18から物を出し入れしてもよい。
【0026】
本実施の形態によれば、階段下空間10において、第1開口部14と第2開口部18との間で、物が収容された箱体21を往復移動させることによって、第1開口部14に面する第1部屋11と第2開口部18に面する第2部屋12との間で物を受け渡しすることができる。したがって、階段下空間の有効利用を図れる。
また、外出先から帰宅した住人等は、玄関2から第1部屋11に入って、当該第1部屋11で着替えた衣服を、第1開口部14から箱体21に入れ、この箱体21を第2開口部18に向けて移動させることができる。
第2部屋12では、箱体21から衣服を第2開口部18を通して取り出し、ランドリー機器15に入れて、洗濯、乾燥等を行える。
したがって、花粉等の異物が付着した衣服を、建物の居室等に持ち込むことなく、洗濯、乾燥等が行える。
【0027】
さらに、階段下空間10の床に、レール20,20が第1開口部14と第2開口部18との間に設けられ、このレール20,20を箱体21が往復移動するので、第1開口部14と第2開口部18との間で箱体を安定的に直線上で往復移動させるこができる。
また、階段5の踊り場5aの下方に箱体21が設けられており、踊り場5aの下面が水平となるので、斜め方向に延在する階段5の下に設ける場合に比して、大きく、かつ直方体状の箱体21を使用できる。
また、階段下空間10において、箱体21の往復移動経路外に、収納スペース22,23が設けられているので、この収納スペース22,23に、物を収納し、第1開口部14および第2開口部18の双方から取り出すことができる。
【0028】
なお、本実施の形態では、階段下空間10の床に、レール20,20を設けたが、これに代えて、階段下空間10の天井にレールを設けてもよい。この場合、箱体21の上部に当該レールを転動するローラを設ければよい。
また、本実施の形態では、本発明をアパートに適用した場合を例にとって説明したが、本発明は戸建ての住宅にも適用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 住戸(建物)
2 玄関
5 階段
5a 踊り場
10 階段下空間
11 第1部屋
12 第2部屋
14 第1開口部
15 ランドリー機器
18 第2開口部
20 レール
21 箱体
22,23 収納スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上階床と下階床との間に階段が設けられ、この階段の下方が階段下空間となっている建物において、
下階に、第1部屋と第2部屋とが前記階段下空間を挟んで設けられ、
前記第1部屋と前記階段下空間とを仕切る壁に第1開口部が設けられ、前記第2部屋と前記階段下空間とを仕切る壁に第2開口部が設けられ、
前記階段下空間には、物を収容可能な箱体が前記第1開口部と前記第2開口部との間を往復移動可能に設けられていることを特徴とする建物。
【請求項2】
請求項1に記載の建物において、
前記第1部屋は、玄関に隣接して設けられ、かつ当該玄関から行き来可能な部屋であり、
前記第2部屋は、ランドリー機器を備えた部屋であることを特徴とする建物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建物において、
前記階段下空間の床または天井には、レールが前記第1開口部と第2開口部との間に設けられ、このレールを前記箱体が往復移動することを特徴とする建物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の建物において、
前記階段が途中に踊り場を有する折り返し階段であり、この踊り場の下方に前記箱体が設けられていることを特徴とする建物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の建物において、
前記階段下空間には、前記箱体の往復移動経路外に、収納スペースが設けられていることを特徴とする建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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