説明

建築図面管理システム

【課題】 本発明は、数千枚程度の施工図を必要とする大規模な建築物をカバーでき、3次元CADを施工段階で使用することによって、3次元CADによる利点を生かした建築図面管理システムを提供することを目的とする。
【解決手段】 全体設計端末1で作成された枠データ300をサーバ4に送信し、サーバ4中の記憶部44に記憶させる。次に部分設計端末2をサーバ4に接続し、必要なレイヤ枠データを取得し、取得したレイヤ枠データを加工し、加工したレイヤ枠データをサーバ4に送信する。送信されたレイヤ枠データは、サーバ4中の前記記憶部44に記憶される。毎日、現場管理端末3とサーバ4を接続して、建築現場で枠データをサーバ4から取得し、これを変換プログラム34で3次元図面データに変換して、建築図面チェックをリアルタイムに行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の設計・施工・管理に使用・作成される膨大な施工図面を共通の枠で作成し、これをサーバで一括管理することにより、リアルタイムに図面のチェックを行える建築図面管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の企画・設計・施工・管理という一連の業務プロセスには、設計事務所、施工業者、建築物管理者の他にも資材・設備機器メーカーに至るまで多くの関係者が関与し、膨大な数の図面が作成されている。近年、CAD(Computer Aided Design)の導入により、設計業務の効率化と図面情報の電子化が図られているが、現実には、各図面担当者がCAD図面データを紙に出力し、それを現場に持ち寄って打ち合わせし、図面データのチェック、修正、変更作業を繰り返している。このように、建築現場施工図作成上の非能率・非効率な現状は、図面情報の電子化が図られた現在においても大きく変わっていない。
【0003】
また、2次元CADで作成した図面は2次元図面であるため、2次元図面から3次元モデルとしての建築物の形状認識は多くの経験を要する。このため、設計ミスや干渉チェックを2次元図面作成段階から見つけ出すのは困難である。
【0004】
このような問題点を解決するため、近年では、3次元的にX、Y、Z軸で表現された建築物を表現できる機能をもった3次元CADが一般的に普及してきた。3次元CADは、建築物を3次元表現できるため、設計者自身も建築物のあらゆる角度から視覚的に検証でき、設計ミス、干渉チェックを設計段階から見つけやすい利点がある。現在、3次元CADによる建築物のモデリングは、外観や室内の検討やプレゼンテーション等の企画、基本設計段階によく使われている。
【0005】
近年、インターネットの発達により、さまざまなデータのやりとりが容易になっている現状においては、CADによって作成された図面の電子データもインターネットを使ってやりとりできるようになってきており、建築図面管理システムにおいても生かされつつある。
【0006】
特許文献1においては、3次元のオブジェクト指向型CADによって作成された3次元図面と2次元図面(躯体図、平面詳細図等)を連動させた図面データをサーバに保存しておき、そのサーバと設計業者、現場管理者等の端末をインターネットによって接続して、各端末から図面データを見ることができるようにした技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−197126
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1において想定されている3次元CADは、3次元のオブジェクト指向型CADである。3次元のオブジェクト指向型CADは、一般的に建築物の壁、サッシ、ドア等のあらかじめ部品登録されたオブジェクトを配置設計するものであり、図面も設計図、施工図合わせても200枚程度の小住宅や小規模建築物の3次元CADとして一般的には使用されているものであり、図面も設計図、施工図合わせても数千枚程度の大規模な建築物をカバーできない。また、3次元のオブジェクト指向型CADは、施工段階における各工事業者が作成する施工図の要求をかなえる機能を有していない。
【0008】
また、建築物3次元モデルを施工段階で利用する場合、建築物3次元モデルの詳細設計が最終的なものでないと利用できない。現在の建築現場では、3次元CADで施工図を作成していない。コスト的にも時間的にも施工段階での3次元モデル作成は困難であるからである。設計段階で作成された建築物3次元モデルは、基本設計データを基にした建築物3次元モデルであって、これは、通常打ち合わせ用として用いられる。
【0009】
以上のような問題に鑑みて、本発明は、数千枚程度の施工図を必要とする大規模な建築物をカバーでき、3次元CADを施工段階で使用することによって、3次元CADによる利点を生かした建築図面管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記に挙げた目的を達成するために、第1の発明は、枠データを記憶する記憶手段を備えたサーバと、前記枠データを生成する生成手段と、前記サーバに前記枠データを送信する第1の送信手段とを備えた第1の端末と、前記枠データを前記サーバから取得する第1の取得手段と、前記第1の取得手段により取得した枠データを加工し、前記加工した枠データを前記サーバに送信する第2の送信手段とを備えた第2の端末と、前記枠データを前記サーバから取得する第2の取得手段と、前記第2の取得手段により取得した枠データを検証する検証手段を備えた第3の端末と上記前記第1の端末乃至前記第3の端末と前記サーバとの間をインターネット網を介して接続する通信回線とを備えたことを特徴とする。
【0011】
第2の発明は、前記枠データは、階層枠データ、領域枠データ、レイヤ枠データからなることを特徴とする。
【0012】
第3の発明は、前記第1の端末において、前記階層枠データ中の所定の領域を複数の領域に分割して前記領域枠データを生成する領域枠データ生成手段と、前記領域枠データから複数の前記レイヤ枠データを生成するレイヤ枠データ生成手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
第4の発明は、前記記憶手段において、前記枠データを階層枠データ、領域枠データ、レイヤ枠データの順にアーキテクチャ構造を1つの組として、前記1つの組を日別に異なったデータとして記憶することを特徴とする。
【0014】
第5の発明は、前記第2の端末において、第1の枠データ選択画面上のレイヤ枠ボタンをクリックすることによって、レイヤ枠データを表示させる第1の枠データ表示手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
第6の発明は、前記第3の端末において、第2の枠データ選択画面上の階層枠ボタン、領域枠ボタン、又はレイヤ枠ボタンをクリックすることによって、階層枠データ、領域枠データ、又はレイヤ枠データを前記第3の端末の表示部に表示させる第2の枠データ表示手段を備えたことを特徴とする。
【0016】
第7の発明は、前記第3の端末において、その取得した前記枠データを前記検証手段において検証し、その結果、前記枠データの修正が必要な場合は、前記枠データの修正要求を前記第2の端末に送信する修正要求送信手段と、修正が必要ない場合は、チェック済信号を前記サーバに送信するチェック済信号送信手段と、前記サーバが備えた記憶部にチェック済の旨を記憶するチェック済記憶手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、サーバと、第1の端末と、第2の端末と、第3の端末と上記前記第1の端末乃至前記第3の端末と前記サーバとの間をインターネット網を介して接続する通信回線とを備えているので、設計業者によって、統一された形式の枠データを使って作成された図面データを現場においてリアルタイムに3次元図面データに変換してチェックでき、建築の工程を細かく管理でき、建築の作業の効率を上げることができる。
【0018】
第2の発明によれば、前記枠データは、階層枠データ、領域枠データ、レイヤ枠データからなるので、階層レベル、領域レベル、レイヤレベルで枠データを簡単にチェックできる。
【0019】
第3の発明によれば、前記第1の端末において、前記階層枠データ中の所定の領域を複数の領域に分割して前記領域枠データを生成する領域枠データ生成手段と、前記領域枠データから複数の前記レイヤ枠データを生成するレイヤ枠データ生成手段とを備えているので、簡単に領域枠データ、レイヤ枠データを作成することができる。
【0020】
第4の発明によれば、前記記憶手段において、前記枠データを階層枠データ、領域枠データ、レイヤ枠データの順にアーキテクチャ構造を1つの組として、前記1つの組を日別に異なったデータとして記憶するので、枠データを見る時に、見たい部分のデータを階、領域、又はレイヤを指定するだけで迅速に見ることができる。また、前記図面データを日ごとに記憶してあるから、過去における枠データを見ることができるので、建築設計の全体的な進み具合等も把握することが可能となる。
【0021】
第5の発明によれば、前記第2の端末において、第1の枠データ選択画面上のレイヤ枠ボタンをクリックすることによって、レイヤ枠データを表示させる第1の枠データ表示手段を備えているので、前記第2の端末で枠データを表示させる操作が簡単になる。
【0022】
第6の発明によれば、前記第3の端末において、第2の枠データ選択画面上の階層枠ボタン、領域枠ボタン、又はレイヤ枠ボタンをクリックすることによって、階層枠データ、領域枠データ、又はレイヤ枠データを前記第3の端末の表示部に表示させる第2の枠データ表示手段を備えているので、前記第3の端末で図面データを表示させる操作が簡単になる。
【0023】
第7の発明によれば、前記第3の端末において、その取得した前記枠データを前記検証手段において検証し、その結果、前記枠データの修正が必要な場合は、前記枠データの修正要求を前記第2の端末に送信する修正要求送信手段と、修正が必要ない場合は、チェック済信号を前記サーバに送信するチェック済信号送信手段と、前記サーバが備えた記憶部にチェック済の旨を記憶するチェック済記憶手段とを備えているので、現場で検証した結果がすぐに図面データに反映されることになり、全体として仕事を迅速に進めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の建築図面管理システムを図面を参照して、以下具体的に説明する。図1は、本発明が適用された建築図面管理システムの全体構成の一例を示したものである。インターネット網5を介して、全体設計端末1、部分設計端末2、現場管理端末3がそれぞれサーバ4に接続できるようになっている。
【0025】
なお、全体設計端末1、部分設計端末2、現場管理端末3がサーバ4に接続する時に、セキュリティを考慮して、サーバ4に接続認証機能プログラムを設け、上記各端末がサーバ4に接続する場合にIDとパスワードを要求するようにしてもよい。
【0026】
全体設計端末1は、2次元図面データ、3次元図面データを扱える機能を有しており、例えば、3次元CAD装置を用いて構成される。部分設計端末2は、2次元図面データを作成する機能を有しており、例えば、2次元CAD装置を用いて構成される。現場管理端末3は、2次元図面データ、3次元図面データを扱える機能を有しており、例えば、3次元CAD装置を用いて構成される。本発明においては、枠データという用語を用いているが、枠データとは、2次元図面として作成された平面図の図面データ、正面図の図面データ、背面図の図面データ、右側面図の図面データ、左側面図の図面データ,天井見上げ図の図面データを1つの組とした図面データを指し、この枠データは、階、領域、レイヤ別の種類がある。この枠データは、2次元CAD装置、3次元CAD装置で用いられている図面作成・加工プログラムで作成・加工できる。
【0027】
[全体設計端末及び部分設計端末の動作]
次に本発明の実施の形態における建築図面管理システムの動作について、図2〜図12を使って説明する。図2は、全体設計端末1とサーバ4、部分設計端末2とサーバ4の動作を示すフローチャート図である。
【0028】
まず、図2のステップS101においては、全体設計端末1で、階層枠データ100を作成する。階層枠データ100は、例えば、図3において示すような階層枠データ表示画面の態様で表示部15に表示され、階毎の平面図100a、正面図100b、背面図100c、右側面図100d、左側面図100e,天井見上げ図100fからなる。
【0029】
次に全体設計端末1の構成について図4を参照して説明する。図4は、全体設計端末1のブロック図を示している。全体設計端末1は、入力部11、全体設計端末1中の各種信号を制御する制御部12、図面作成・加工プログラム等にしたがって演算を行う演算部13、図面作成・加工プログラム等が記憶されている図面作成・加工部14a、2次元図面データを3次元の図面データに変換する変換部14b、枠データ生成部14c、表示部15、作成された枠データを記憶しておくデータメモリ部16、枠データを送受信する機能を備えた通信部17を備えている。
【0030】
全体設計端末1で階層枠データ100を作成する場合、まず図3の左上にある階表示部60にこれから作成しようとする階層枠データの階数、例えば「1階」と入力する。入力部11から制御部12に図面作成・加工プログラム呼び出し信号を送り、これを受けた制御部12は、図面作成・加工部14aから図面作成・加工プログラムを呼び出す。次に入力部11から入力したデータは、演算部13で図面作成・加工プログラムにしたがって演算され、演算結果は、データメモリ部16に記憶され、表示部15においては、たとえば、図3に示すように表示される。図面作成・加工プログラムは、例えば、3次元CAD装置で使用されている図面作成・加工プログラムでよい。
【0031】
また、作成した100a〜100fから構成される階層枠データ100が建築構造物として不整合部分があるか否かを確認する場合は、作成された階層枠データ100を3次元図面データに変換して確かめる。この場合は、入力部11から制御部12に変換プログラム呼び出し信号を送り、これを受けた制御部12は、変換部14bに格納されている階層枠データを3次元図面データに変換する変換プログラムを変換部14bから呼び出す。演算部13で変換プログラムにしたがって、階層枠データ中の平面図の図面データ、正面図の図面データ、背面図の図面データ、右側面図の図面データ、左側面図の図面データ,天井見上げ図の図面データを組み上げて、3次元図面データに変換され、データメモリ部16に記憶され、表示部15上に3次元図面データとして表示される。これを検証して、建築構造物として不整合部分があるか否かを確認する。ここで変換プログラムは、例えば、3次元CADで使用されている2次元図面データを3次元図面データに変換する変換プログラムを用いる。
【0032】
次に図2のステップS102において、全体設計端末1で作成した階層枠データ100から領域枠データ200、レイヤ枠データ300を作成する。階層枠データ100は、図3の階層枠データ表示画面中の平面図100a、天井見上げ図100fにおいて、例えば、Y1線、Y2線、Y3線、X1線、X2線によって、2つの領域1、領域2に分けられているが、領域枠データ200は、この領域1又は領域2の部分についてのみの枠データである。領域枠データ200も階毎の平面図200a、正面図200b、背面図200c、右側面図200d、左側面図200e,天井見上げ図200fからなり、例えば、画面上において、図5において示すような領域枠データ表示画面の態様で出力される。レイヤ枠データ300も階毎の平面図300a、正面図300b、背面図300c、右側面図300d、左側面図300e,天井見上げ図300fからなり、例えば、画面上において、図6において示すようなレイヤ枠データ表示画面の態様で出力される。レイヤ枠データ300は、領域枠データ200を部分設計端末を使用する業者数分だけ複製した枠データである。また、レイヤ枠データ300は、部分設計端末を使用する業者が設計に際して使用する枠データであり、レイヤ枠データ300上に各設計業者が設計作業を行う。このレイヤ枠データ300への設計作業によって、サッシ施工図、設備施工図等が作成されることになる。レイヤ枠データ300は、領域枠データ200の複製であるのでその表示画面も図6に示すように領域枠データ200の表示画面態様とほぼ同様になる。
【0033】
ある領域枠データ200、又はレイヤ枠データ300が領域1か領域2かは、図5の左上方にある参照番号69、又は図6の左上方にある参照番号64にそれぞれ「1階―領域1」、「1階―領域1―レイヤ4」のように示されている。
【0034】
領域枠データ200及びレイヤ枠データ300を生成する領域枠データ生成ステップ及びレイヤ枠データ作成ステップについて図7に示すフローチャートで説明する。ステップS001において、階層枠データ100より、通り芯データを取り出す。通り芯データは、例えば、図3に示す通り芯Y1線、Y2線、Y3線、X1線、X2線等の線分情報(始点、終点の座標データ、及び始点から終点へのベクトル)によって構成される。ステップS002において、ステップS001で得られた線分情報をもとに、それぞれの通り芯どうしの交点座標を計算する。ステップS003において、ステップS002で得られた交点座標により、一領域を認識し、一領域を構成する通り芯データ(一領域を構成する前記線分情報)を得る。一領域を認識するには、例えば、ある通り芯の線分情報のうち終点から見て、ベクトル方向時計回りに90度回転において最短距離にある交点を終点とする新たな線分を作り、さらに、その終点から前記と同様の動作を繰り返し、最初の終点に対応する始点を終点とする線分情報とする線分が作られた時点で一領域が認識されることになる。ステップS004においては、ステップS003において認識された一領域を枠データ所定位置に配置する。これは、図5に示すような態様で表示部15に出力される。ステップS005において、全ての領域において、ステップS003〜S004の過程作業が終了したか否かを判断し、終了していない場合は、他の一領域について、ステップS003〜S004の作業が行われる。全ての領域について、枠データ所定位置の配置が終了したら、ステップS006で領域枠データが完成し、領域枠データの生成が終了する。ステップS007において、レイヤ数指定部61に必要なレイヤ数を入力し、ステップS008において、その入力されたレイヤ数の数だけ領域枠データが作成されたかを判断する。入力されたレイヤ数の数だけ領域枠データが生成されていない場合は、ステップS004にフィードバックし、入力されたレイヤ数の数だけ領域枠データが生成されるまで繰り返される。入力されたレイヤ数の数だけ領域枠データが生成されると、ステップS009において、レイヤ枠データ300の作成が完成する。
【0035】
以上のような内容を持つ領域枠データ生成ステップ及びレイヤ枠データ作成ステップは、例えば、図3に示すようにマウスポインタ63を枠データ作成ボタン62に当て、クリックすることによって行う。クリックすることによって、制御部12に枠データ生成信号が送信され、それを受けて枠データ生成部14cから枠データ生成プログラムが呼び出され、演算部13で前記ステップS001〜ステップS009に従った演算動作が行われ、その結果生成された領域枠データ200、又はレイヤ枠データ300は、データメモリ部16に記憶される。
【0036】
以上のようにしてレイヤ枠データ300が作成されたら、ステップS103において、図6に示すようにマウスポインタ63を送信ボタン65に当て、クリックする。データメモリ部16に記憶されたレイヤ枠データ300が通信部17でレイヤ枠データ信号1000に変換され、インターネット網5を介して、サーバ4に送信される。
【0037】
図2のステップS104において、レイヤ枠データ信号1000をサーバ4で受信し、ステップS105において、レイヤ枠データ300を記憶部44に記憶する。
【0038】
ここでサーバ4について、図8のサーバ4のブロック図を参照して説明する。サーバ4は、枠データを送受信する機能を備えた通信部41、サーバ4中の各種信号を制御する制御部42、検索プログラム等にしたがった演算を行う演算部43、枠データ等を記憶する記憶部44、端末から要求された枠データ等を記憶部44から検索する検索プログラムを記憶した検索部45を備えている。
【0039】
以上のようにして、レイヤ枠データ300をサーバ4の記憶部44に記憶させたら次に図2のステップS106において、インターネット網5を介して、部分設計端末2をサーバ4に接続し、レイヤ枠データ選択画面要求信号1001を送信する。ステップS107において、サーバ4は、レイヤ枠データ選択画面要求信号1001を受信すると、ステップS108において、レイヤ枠データ選択画面信号1002を部分設計端末2に送信する。
【0040】
ここで部分設計端末2について、図9の部分設計端末2のブロック図を参照して説明する。2次元設計端末2は、入力部21、部分設計端末2中の各種信号を制御する制御部22、図面作成・加工プログラム等にしたがった演算を行う演算部23、図面作成・加工プログラム等を記憶した図面作成・加工部24、枠データを表示できる機能を備えた表示部25、作成された枠データを記憶しておくデータメモリ部26、枠データを送受信する機能を備えた通信部27を備えている。
【0041】
図2のステップS109において、レイヤ枠データ選択画面信号1002を部分設計端末2において受信し、表示部25に表示する。表示部25には、例えば、図10に示すような階層枠、領域枠、レイヤ枠順の階層構造になったレイヤ枠データ選択画面202が表示される。部分設計端末2から階層枠、領域枠を選択しても、階層枠データ、領域枠のデータは閲覧はできるが、加工できないようになっている。レイヤ枠データ選択画面202の右上には、日又は、期間を入力できる期間入力部66がある。階層枠データ、領域枠のデータを閲覧できるようにすることによって、自分のレイヤの施工図作成の際、参考にできる。
【0042】
表示部中の各レイヤは、例えば、レイヤ1は、サッシ工事業者レイヤ、レイヤ2は、電気工事業者のレイヤ、レイヤ3は、機械設備工事のレイヤ等のように各部門別のレイヤとなっている。各工事業者は、自分の担当レイヤにおけるレイヤ枠データのみを取得して、設計業務を行う。図2のステップS110において、レイヤ枠データ選択画面202中から必要なレイヤ枠データを選択し、必要レイヤ枠データ要求信号1003を送信する。具体的には、入力部21から、例えば、図10に示すように部分設計端末2のレイヤ枠データ選択画面202中の自分の担当のレイヤボタン部分にマウスポインタ63を当てクリックすることによって、制御部22に信号を送り、通信部27を通じてサーバ4に必要レイヤ枠データ要求信号1003を送る。例えば、サッシ工事業者は、レイヤ枠データ選択画面202中のレイヤ1ボタンにマウスポインタ63を当てて、クリックする。
【0043】
図2のステップS111において、サーバ4は、その必要レイヤ枠データ要求信号1003を受ける。ステップS112において、受信した必要レイヤ枠データ要求信号1003は、通信部41を通じて、制御部42に送られ、制御部42は、検索部46から検索プログラムを呼び出し、演算部43で検索プログラムにしたがって演算して、要求信号に応じたレイヤ枠データを記憶部44から検索して、そのレイヤ枠データ300を部分設計端末2に送信する。
【0044】
図2のステップS113において、部分設計端末2においてレイヤ枠データ信号1004を受信し、要求したレイヤ枠データを得ると、例えば、図6に示すような画面が表示部25に表示される。要求したデータか否かは、画面左上にある参照番号64に表示された「階―領域―レイヤ」の表示で確認する。例えば、要求したレイヤ枠データが「1階―領域1―レイヤ4」の場合は、参照番号64に表示された「階―領域―レイヤ」の表示も「1階―領域1―レイヤ4」になる。
【0045】
図2のステップS114において、そのレイヤ枠データを加工し、新たなレイヤ枠データを作成し、その加工したレイヤ枠データをサーバ4に送信する。この場合は、図9に示す入力部21から、制御部22に図面作成・加工部24を起動させる信号を送り、その信号を受けて制御部22が図面作成・加工部24から図面作成・加工プログラム24を呼び出し、図面作成・加工プログラム24にしたがって、入力部21から入力されたデータが演算部23で演算され、演算結果がデータメモリ部26に記憶され、表示部25に出力される。図面作成・加工部24は、例えば、2次元CAD装置で使用されている図面作成・加工プログラムがある。
【0046】
部分設計端末2によって作成されたレイヤ枠データは、例えば、図11、12に示すようにレイヤ枠データ表示画面上に表示される。図11は、「1階―領域1―レイヤ1」のレイヤ枠データを加工して、サッシ業者が新たなレイヤ枠データを作成した例であり、図12は、「1階―領域1―レイヤ2」のレイヤ枠データを加工して、電気工事業者が新たなレイヤ枠データを作成した例である。
【0047】
以上のようにして加工されたレイヤ枠データは、例えば、マウスポインタ63を送信ボタン65に当て、クリックすることによって、加工されたレイヤ枠データがレイヤ枠データ信号1005として送信される。レイヤ枠データ信号1005は、図9に示される通信部27、インターネット網5を介して、サーバ4に送信される。
【0048】
図2のステップS115において、レイヤ枠データ信号1005は、図8のサーバ4で受信され、記憶部44に記憶される。記憶部44は、例えば、図13に示すような階層枠データ、領域枠データ、レイヤ枠データの順にアーキテクチャ構造を1つの組として、日別に異なったデータとして記憶されている。所定日に、複数回、加工したレイヤ枠データを送信した場合は、その日の間ならレイヤ枠データは更新され、ある日において最終的に送ったレイヤ枠データがその日におけるレイヤ枠データとして、記憶されることになる。日が変わると、レイヤ枠データは、別の日のデータとして別に記憶される。
【0049】
[現場管理端末の動作]
各設計業者は、以上のことを日々繰り返してレイヤ枠データを完成させていく。これと時間的に平行して、現場管理者は、その各設計業者が作成したレイヤ枠データについてチェックしていく。現場管理者がレイヤ枠データをチェックする時の現場管理端末3とサーバ4の動作を図14〜図17を使って以下説明する。
【0050】
まず、現場管理端末3について、図15の現場管理端末3のブロック図を参照して説明する。現場管理端末3は、入力部31、現場管理端末3中の各種信号を制御する制御部32、変換プログラム等にしたがった演算を行う演算部33、変換プログラム等が記憶された変換部34、枠データを表示できる機能を備えた表示部35、サーバ4から受信した枠データを記憶しておくデータメモリ部36、枠データを送受信する機能を備えた通信部37を備えている。
【0051】
図14は、現場管理端末3とサーバ4の動作を示すフローチャートである。図14のステップS201において、現場管理端末3をインターネット網5を通じて、サーバ4に接続し、枠データ選択画面要求信号2000をサーバ4に送信する。ステップS202において、サーバ4が枠データ選択画面要求信号2000を受信したら、ステップS203において、サーバ4は、現場管理端末3に枠データ選択画面信号2001を送信する。ステップS204において、現場管理端末3が枠データ選択画面信号2001を受信したら、現場管理端末3の表示部35には、例えば、図16に示すような枠データ選択画面203が表示される。
【0052】
図14のステップ204において、現場管理端末3の表示部35に表示された枠データ選択画面203において、画面右上にある期間指定部66において日や期間を特定する。日や期間は、現場管理端末3の入力部31から期間指定部66に入力することによって特定する。このようにして日や期間を特定した後、例えば、現場管理端末3の表示画面中の階層枠ボタン、又は領域枠ボタン、又はレイヤ枠ボタン部分にマウスポインタ63を当てクリックすると、信号が制御部32から通信部37を通じて、日、期間、階層枠データ、領域枠データ、レイヤ枠データを特定した要求枠データ信号2002がサーバ4へ送信される。
【0053】
図14のステップS206において、要求枠データ信号2002がサーバ4で受信されると、ステップS207において、要求枠データ信号に応じた枠データが記憶部44から検索して取り出される。検索の動作は、サーバ4の制御部42が検索部46から検索プログラムを呼び出し、検索プログラムにしたがって、日、期間、階層枠データ、領域枠データ、レイヤ枠データを特定する枠データが記憶部44から検索され、その検索結果がサーバ4から現場管理端末3に送信されるようになっている。
【0054】
図16の期間指定部66において日のみを特定した場合は、その特定した日のみの枠データを閲覧できる。例えば、期間入力部66に2004年6月16日と入力すると2004年6月16日分の枠データが得られる。期間指定部66において期間を指定した場合は、その指定した期間に記憶された枠データを閲覧できる。例えば、期間初日が2004年6月16日の場合に期間指定部66に2004年6月16日から2004年6月20日と入力するとその間に蓄積された枠データが得られる。
【0055】
また、階層枠ボタンをクリックするとその階の階層枠データを要求することになる。例えば、図16の「2階」の部分にマウスポインタ63を当てクリックすると、「2階」部分の階層枠データを取得できる。ある特定の階の特定領域を指定するとその特定の階の特定領域の枠データを全て要求することになる。図16の3階の下位にある領域2のボタン部分に、マウスポインタ63を当てクリックすると、3階の下位にある領域2のボタン部分の領域枠データを取得できる。図14のステップS208において、枠データ信号2003を現場管理端末で受信し、枠データを得る。
【0056】
以上のようにして得られた枠データを現場で検証してそれを修正する方法について以下説明する。図14のステップS209において、枠データについて、建築現場で閲覧する場合は、3次元図面データとして見た方が建築物の不整合をチェックできる。この場合は、現場管理端末3の入力部31から枠データを3次元図面データ400に変換を要求する信号を制御部32へ送ると、制御部32は、変換部34から変換プログラムを呼び出す。演算部33で変換プログラムにしたがって、枠データ中の平面図の図面データ、正面図の図面データ、背面図の図面データ、右側面図の図面データ、左側面図の図面データ,天井見上げ図の図面データを組み上げ3次元図面データに変換する演算が行われ、演算結果がデータメモリ部36に記憶される。表示部35には、例えば、図17に示すような3次元図面データ400が表示される。参照番号67においてどの部分の3次元図面データかが示されている。表示部35に表示された操作部68にマウスポインタ63を当てて、3次元図面データを操作していろいろな角度から建築物の不整合をチェックする。なお、変換プログラムは、例えば、3次元CAD装置で使用されている2次元図面データを3次元図面データに変換する変換プログラムを用いる。
【0057】
ステップS210において、前記のようにして3次元図面データに変換した枠データで構造物に不整合部分があるか否かをチェックし、不整合部分がある場合は、以下のようにして不整合部分を修正する。現場管理端末から部分設計端末2に不整合部分についての修正内容を含む修正要求データ信号2004を送信し、ステップS212において、部分設計端末2は、修正要求データ信号2004を受信し、ステップS213において、部分設計端末2で枠データを修正し、修正した枠データを修正枠データ信号2005として、インターネット網5を介して、現場管理端末3に送信する。修正枠データ信号2005を受信した現場管理端末3は、再びステップS208からの動作に戻り、以後ステップS210において、枠データに不整合部分がなくなるまで繰り返されることになる。
【0058】
得られた枠データを現場で検証して修正の必要がない場合は、ステップ210において、ステップS211に進み、現場管理端末3から枠データチェック済信号2006をサーバ4に送信する。ステップS214において、サーバ4は、枠データチェック済信号2006を受信し、その旨の情報が図8の記憶部44に記憶される。ここで枠データチェック済信号が送られた枠データには、以後、その枠データを受信した場合、例えば、「チェック済」等その旨の表示がされることになる。
【0059】
このように、現場においては、リアルタイムにその時点までに出来上がっている枠データをリアルタイムに閲覧できるので、建築の状況を把握できることになり、効率良い作業ができる。また、レイヤ枠データを元に加工して作成したレイヤ枠データがそのまま3次元図面データに変換できる基礎となるので、建築現場では容易に施工図面のチェックができる。もし何か問題あれば、部分設計端末2でレイヤ枠データを元に設計した部分設計業者に施工図面をリアルタイムに修正・変更の指示ができ、施工図作成過程において迅速に対応が可能となる。
【0060】
また、枠データが日ごとに記憶されているので、例えば、現場管理端末に、日ごとの枠データを一定時間経過ごとにその枠データがスライドするような機能を持たせ、それを画面上に3次元図面データとして、図15の表示部35に表示させることによって、どの日にどの程度の仕事の進み具合があったか等、施工図面作成過程の全体が見渡せるので、現在の建築物の施工図作成の案件において、そのデータを生かして、更に効率良い作業に資することになる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の建築図面管理システムの全体構成の一例を示す図である。
【図2】全体設計端末とサーバとの間の動作、部分設計端末とサーバとの間の動作を示すフローチャートである。
【図3】全体設計端末によって作成した階層枠データの一部を表示部に出力した図である。
【図4】本発明の建築図面管理システムで使用する全体設計端末のブロック図である。
【図5】領域枠データを表示部に表示した図である。
【図6】レイヤ枠データを表示部に表示した図である。
【図7】領域枠データ及びレイヤ枠データ生成の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明の建築図面管理システムで使用するサーバのブロック図である。
【図9】本発明の建築図面管理システムで使用する部分設計端末のブロック図である。
【図10】レイヤ枠データ選択画面を表示部に出力した図である。
【図11】レイヤ枠データを使ってアルミサッシ業者が加工をした枠データを表示部に出力した図である。
【図12】レイヤ枠データを使って電気工事業者が加工をした枠データを表示部に出力した図である。
【図13】本発明の建築図面管理システムで使用する記憶部の構成を示す図である。
【図14】現場管理端末とサーバ、現場管理端末と部分設計端末との間の動作を示すフローチャートである。
【図15】本発明の建築図面管理システムで使用する現場管理端末のブロック図である。
【図16】枠データ選択画面を表示部に出力した図である。
【図17】現場管理端末において、枠データを変換プログラムで3次元図面データに変換した態様を表示部に出力した図である。
【符号の説明】
【0062】
1 全体設計端末
2 部分設計端末
3 現場管理端末
4 サーバ
5 インターネット網
11、21、31 入力部
12、22、32、42 制御部
13、23、33、43 演算部
14a、24 図面作成・加工部
14b、34 変換部
14c 枠データ生成部
15、25、35 表示部
16、26、36 データメモリ部
17、27、37、41 通信部
44 記憶部
45 検索部
60 階表示部
61 レイヤ数入力部
62 枠データ作成ボタン
63 マウスポインタ
64、67、69 部分表示部
65 送信ボタン
66 期間指定部
68 操作部
100 階層枠データ
200 領域枠データ
202 レイヤ枠データ選択画面
203 枠データ選択画面
300 レイヤ枠データ
400 3次元図面データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠データを記憶する記憶手段を備えたサーバと、
前記枠データを生成する生成手段と、前記サーバに前記枠データを送信する第1の送信手段とを備えた第1の端末と、
前記枠データを前記サーバから取得する第1の取得手段と、前記第1の取得手段により取得した枠データを加工し、前記加工した枠データを前記サーバに送信する第2の送信手段とを備えた第2の端末と、
前記枠データを前記サーバから取得する第2の取得手段と、前記第2の取得手段により取得した枠データを検証する検証手段を備えた第3の端末と
上記前記第1の端末乃至前記第3の端末と前記サーバとの間をインターネット網を介して接続する通信回線と
を備えたことを特徴とする建築図面管理システム。
【請求項2】
前記枠データは、階層枠データ、領域枠データ、レイヤ枠データからなることを特徴とする請求項1に記載の建築図面管理システム。
【請求項3】
前記第1の端末において、前記階層枠データ中の所定の領域を複数の領域に分割して前記領域枠データを生成する領域枠生成手段と、前記領域枠データから複数の前記レイヤ枠データを生成するレイヤ枠データ生成手段とを備えたことを特徴とする請求項1又は、請求項2に記載の建築図面管理システム。
【請求項4】
前記記憶手段において、前記枠データを階層枠データ、領域枠データ、レイヤ枠データの順にアーキテクチャ構造を1つの組として、前記1つの組を日別に異なったデータとして記憶することを特徴とする請求項1乃至3に記載の建築図面管理システム。
【請求項5】
前記第2の端末において、レイヤ枠データ選択画面上のレイヤ枠ボタンをクリックすることによって、レイヤ枠データを表示させる第1の枠データ表示手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4に記載の建築図面管理システム。
【請求項6】
前記第3の端末において、枠データ選択画面上の階層枠ボタン、領域枠ボタン、又はレイヤ枠ボタンをクリックすることによって、階層枠データ、領域枠データ、又はレイヤ枠データを前記第3の端末の表示部に表示させる第2の枠データ表示手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至5に記載の建築図面管理システム。
【請求項7】
前記第3の端末において、その取得した前記枠データを前記検証手段において検証し、その結果、前記枠データの修正が必要な場合は、前記枠データの修正要求を前記第2の端末に送信する修正要求送信手段と、修正が必要ない場合は、チェック済信号を前記サーバに送信するチェック済信号送信手段と、前記サーバが備えた記憶部にチェック済の旨を記憶するチェック済記憶手段とを備えたことを特徴とする請求項1乃至5に記載の建築図面管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−4109(P2006−4109A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178790(P2004−178790)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(503470827)
【Fターム(参考)】