説明

建築物の吹き付け塗装方法

【課題】剥離・脱落の恐れのない、タイルに代わる『新しい感覚の多彩模様の建築物用壁面材』を得ることができ、かつ、タイル施工と同程度のコストで施工することのできる建築物の吹き付け塗装方法を提供する。
【解決手段】建築物の壁面22上の樹脂モルタル23の上に、色の異なる第1〜第3の吹き付け材7、8、9を、それぞれ玉状に同時に吹き付け、玉状の第1〜第3の吹き付け材7、8、9を、押圧しながら均し、押圧しながら均した第1〜第3の吹き付け材7、8、9の上から、その全面及び樹脂モルタル23の露出面に、第1〜第3の吹き付け材7、8、9と色の異なる第4の吹き付け材10を表層吹きし、表層吹きした第4の吹き付け材10の表面を、第1〜第3の吹き付け材7、8、9が露出するまで平面状に研磨する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の吹き付け塗装方法に関する。さらに詳細には、本発明は、吹き付けた吹き付け材が建築物の壁面から剥離・脱落する恐れがなく、かつ、タイル施工と同程度のコストで建築物の壁面を施工することができる建築物の吹き付け塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の壁面のタイル施工部分が経時的に劣化し、躯体と張りモルタルとの間、あるいは、張りモルタルとタイルとの間に浮きが発生することがしばしばあった。そして、最悪の場合には、建築物の壁面からタイルが剥離・脱落し、人身事故に繋がる恐れがあった。
【0003】
このため、従来、タイル施工に替わる建築物の壁面を仕上げる工法として、圧縮空気の力を利用してスプレーガン等から吹き付け材を噴射して塗装する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この吹き付け塗装方法は、適度に粉砕した天然石等の骨材を合成樹脂中に混入してなる混合材(吹き付け材)の異なる色のもの複数種を、1機のスプレーガン内の別個のタンクにそれぞれ用意し、当該複数種の混合材を複数の吹き付け口を有する多頭式スプレーガンの別個の吹き付け口(噴出ノズル)から同時に吹き付けることにより、非混合多色状に塗布するようにしたものである。そして、この吹き付け塗装方法によれば、吹き付けた吹き付け材が建築物の壁面から剥離・脱落する恐れのない建築物用壁面材が得られる。
【特許文献1】特公平5−9587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の吹き付け塗装方法では、建築物の壁面の下地調整に用いられる樹脂モルタルを隠すために、吹き付け層の厚みを厚くする必要があった。すなわち、上記従来の吹き付け塗装方法では、吹き付け材を多量に使用する必要があり、これが施工コストの高騰に繋がるという問題があった。
【0005】
その一方で、タイル施工と同程度のコストで建築物の壁面を施工することができる建築物の吹き付け塗装方法の出現が強く要望されていた。
【0006】
そこで、本発明者は、かかる点に鑑み、タイル施工と同程度のコストで、タイルに代わる『新しい感覚の多彩模様の建築物用壁面材』を得るために鋭意研究を重ね、本発明をするに至った。
【0007】
本発明は、従来技術における前記課題を解決するためになされたものであり、吹き付けた吹き付け材が建築物の壁面から剥離・脱落する恐れのない、タイルに代わる『新しい感覚の多彩模様の建築物用壁面材』を得ることができ、かつ、タイル施工と同程度のコストで建築物の壁面を施工することができる建築物の吹き付け塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係る建築物の吹き付け塗装方法は、建築物の壁面に、骨材と合成樹脂とを含む吹き付け材の異なる色のもの複数種を、それぞれ玉状に同時に吹き付ける工程と、それぞれ玉状に吹き付けた前記複数種の吹き付け材を、押圧しながら均す工程と、押圧しながら均した前記複数種の吹き付け材の上から、骨材と合成樹脂とを含む、前記複数種の吹き付け材と色の異なる吹き付け材を表層吹きする工程と、表層吹きした前記吹き付け材の表面を、前記複数種の吹き付け材が露出するまで研磨する工程とを備えたことを特徴とする。
【0009】
この建築物の吹き付け塗装方法によれば、建築物の壁面にそれぞれ玉状に吹き付けた複数種の(色の異なる)吹き付け材を、押圧しながら均して、建築物の壁面に沿った方向に引き伸ばし、押圧しながら均した前記複数種の吹き付け材の上から、前記複数種の吹き付け材と色の異なる吹き付け材を表層吹きし、表層吹きした前記吹き付け材の表面を、前記複数種の吹き付け材が露出するまで研磨するようにしたことにより、少ない量の吹き付け材を用いて、ベース材(表層吹きした吹き付け材)の色の上に大小入り混じった多色の玉状模様が散りばめられたパターンの、『新しい感覚の多彩模様の建築物用壁面材』を得ることができる。この場合、吹き付け材として、骨材と合成樹脂とを含むものを用いており、これらは柔軟性と接着力を有しているため、吹き付けた吹き付け材が建築物の壁面から剥離・脱落する恐れはない。すなわち、この建築物の吹き付け塗装方法によれば、吹き付けた吹き付け材が建築物の壁面から剥離・脱落する恐れのない、タイルに代わる『新しい感覚の多彩模様の建築物用壁面材』を得ることができ、かつ、タイル施工と同程度のコストで建築物の壁面を施工することができる。
【0010】
また、前記本発明の建築物の吹き付け塗装方法においては、前記各吹き付け材として、骨材5〜90重量部と合成樹脂10〜95重量部とを含む吹き付け材を用いるのが好ましい。
【0011】
また、前記本発明の建築物の吹き付け塗装方法においては、前記骨材として、セラミックス骨材、天然石骨材及び焼き付け骨材からなる群から選ばれる少なくとも1つを用いるのが好ましい。
【0012】
また、前記本発明の建築物の吹き付け塗装方法においては、前記合成樹脂としてアクリル樹脂エマルジョンを用いるのが好ましい。
【0013】
また、前記本発明の建築物の吹き付け塗装方法においては、表層吹きした前記吹き付け材の表面を研磨した後、その表面に透明な樹脂によってトップコートを施すのが好ましい。この好ましい例によれば、建築物用壁面材の耐久性及び耐候性を向上させることができると共に、汚染を防止することもできる。また、この場合には、前記透明な樹脂として、アクリル−シリコン系塗料又はフッ素系塗料を用いるのが好ましい。尚、このように、トップコートとして親水性の材質のものを使用すれば、塵埃が付着し難く、一旦付着した塵埃も雨水等によって容易に洗い流すことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、吹き付けた吹き付け材が建築物の壁面から剥離・脱落する恐れのない、タイルに代わる『新しい感覚の多彩模様の建築物用壁面材』を得ることができ、かつ、タイル施工と同程度のコストで建築物の壁面を施工することのできる建築物の吹き付け塗装方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、実施の形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
【0016】
吹き付け材としては、次の成分に調合したものを用いた。すなわち、
(1)セラミックス骨材 61.60重量部
(2)アクリル樹脂エマルジョン(固形分50%) 25.20重量部
(3)増粘剤(ヒドロキシメチルセルロース) 11.35重量部
(4)pH調整剤(アンモニア水) 0.17重量部
(5)消泡剤(アルコール系) 0.03重量部
(6)造膜助剤(アルコール系) 0.39重量部
(7)水 1.26重量部
作業性や貯蔵の便のために、増粘剤、pH調整剤、消泡剤、造膜助剤等を混入しているが、本発明の必須の構成要素ではない。すなわち、本発明で用いる吹き付け材は、骨材と合成樹脂とを含むものであればよく、骨材5〜90重量部と合成樹脂10〜95重量部とを含むものであるのが好ましい。尚、造膜助剤とは、エマルジョンの透明造膜の温度を下げるためのものである。
【0017】
合成樹脂としては、アクリル樹脂エマルジョンのほかに、その他のエマルジョン系や、エポキシ系、ウレタン系のものを使用することもできる。
【0018】
ここでは、骨材としてセラミックス骨材を使用しているが、セラミックス骨材のほかに、天然石骨材や焼き付け骨材を使用することもできる。
【0019】
セラミックス骨材は、粘土に適当な色を有する無機顔料、例えば酸化鉄、酸化亜鉛等を混合し、1200〜1400℃で焼成してセラミックスとし、それを粉砕したものである。天然石骨材は、天然石を破砕して分級したものを、そのまま使用するものであり、白色では珪砂、大理石の顆粒、寒水石等が使用され、黒色では美濃黒等が使用される。焼き付け骨材は、天然石の顆粒(通常は、珪砂が多く使用されている)に、無機顔料(通常は金属の酸化物が使用され、白色として酸化チタン、黄色としてチタンイエロー、青色としてコバルト、緑色としてクロム、黒色としてカーボン等が使用されている)を混合して、天然石の表面に800〜1000℃で焼き付けて作られる。実際に使用されている骨材の多くはこの焼き付け骨材である。尚、100〜300℃の温度で作る場合には、寒水石が使用される場合もある。
【0020】
骨材の粒度分布としては、吹き付け材を建築物の壁面に吹き付けて得られる建築物用壁面材の強度や美観から、次のようなものを採用した。すなわち、
メッシュ 分布
3〜 20 30重量%
20〜200 40重量%
200〜350 30重量%
メッシュとは、1インチ(25.4mm)当たりの篩目の数をいう。
【0021】
本実施の形態においては、玉状に吹き付けられる吹き付け材(玉吹き用の吹き付け材)として、上記のような成分を有し、異なる色のセラミックス骨材をそれぞれ用いた第1〜第3の吹き付け材が使用される。ここで、第1の吹き付け材のセラミックス骨材としては、白色のものを用いた。また、第2の吹き付け材のセラミックス骨材としては、薄いベージュ色のものを用いた。また、第3の吹き付け材のセラミックス骨材としては、薄いベージュ色のものに茶色のものを混入した、やや濃いベージュ色のものを用いた。また、表層吹き用の吹き付け材として、上記のような成分を有し、第1〜第3の吹き付け材のセラミックス骨材と色の異なるセラミックス骨材を用いた第4の吹き付け材が使用される。ここで、第4の吹き付け材のセラミックス骨材としては、薄いベージュ色のものに黒色のものを混入した、濃いベージュ色のものを用いた。
【0022】
以下、上記のような第1〜第4の吹き付け材を建築物の壁面に吹き付けて建築物用壁面材を得る方法について説明する。図1は、本発明の一実施の形態における建築物の吹き付け塗装方法を示す工程断面図、図2は、本発明の一実施の形態における建築物の吹き付け塗装方法を示すフローチャート、図3は、本発明の一実施の形態における建築物の吹き付け塗装方法を用いて得られた建築物用壁面材を示す平面図、図4は、当該方法において玉吹き用の吹き付け材を吹き付けるために用いられる3頭式スプレーガンを示す斜視図、図5は、当該方法において表層吹き用の吹き付け材を吹き付けるために用いられる装置を示す概略構成図である。
【0023】
図4に示すように、3頭式スプレーガンには、3つのタンク1、2、3が設けられており、各タンク1、2、3に色の異なる第1〜第3の吹き付け材7、8、9をそれぞれ別々に収容しておくことができるようにされている。また、タンク1、2、3には、それぞれ別個に噴出ノズル4、5、6が設けられており、タンク1、2、3内の第1〜第3の吹き付け材7、8、9を圧縮空気によって噴出ノズル4、5、6からそれぞれ噴出させることができるようにされている。ここで、噴出ノズル4、5、6の口径は11〜13mmであり、吹き圧は2〜3kg/cm2に設定されている。噴出ノズル4、5、6は、ほぼ一点に集中するようにその角度が調整されている。実際にぴったり一点に集中させると、第1〜第3の吹き付け材7、8、9が混合するか、又は積層して一色となるため、第1〜第3の吹き付け材7、8、9を非混合多色状に塗布することが困難となる。しかし、実際には、焦点がぴったり一致していても、人が3頭式スプレーガンを手に持って塗布するために、壁面との距離や角度がずれ、あまり問題とはならない。
【0024】
尚、第1〜第3の吹き付け材7、8、9を吹き付けるに際しては、必ずしも以上のような3頭式スプレーガンを使用する必要はなく、3つの手持ち式の単頭ガン等を使用することもできる。
【0025】
図5において、11はスプレーガンであり、スプレーガン11には表層吹き用の吹き付け材としての第4の吹き付け材を供給するための装置12からホッパー13で調合された第4の吹き付け材が導管14を介して圧送される。第4の吹き付け材は、エアーコンプレッサー(図示せず)を用いて発生させた吹き圧5〜7kg/cm2の圧縮空気によって吹き付けられ、建築物の外壁等に塗装される。
【0026】
スプレーガン11は、塗装ノズル15の口径が5〜7mmに形成されており、エアーノズル(図示せず)の後退又は前進によって塗装ノズル15が開閉するように構成されている(いわゆる、ニードル弁方式)。すなわち、ピストン(図示せず)には二重構造のエアーノズルが取り付けられており、切換弁16を切り換えることによってピストンが後退又は前進し、圧縮空気及び第4の吹き付け材が噴射又は遮断される。尚、第4の吹き付け材の噴射は、適宜のサイクルで間欠的に行われる。
【0027】
フロースイッチ(図示せず)によって切換弁16を作動させて、圧縮空気を流路17に流すと、スプレーガン11内のピストンが図5の右方向に後退し、ピストンに取り付けられたエアーノズルが連動して後退する。これにより、塗装ノズル15が開口する。そして、塗装ノズル15が開口すると同時に、流路17を流れていた圧縮空気が流路18を流れ、この圧縮空気が遮断弁19の作動部に供給されて遮断弁19が開く。その結果、圧縮空気供給路20とエアーノズルへの圧縮空気供給路21とが導通し、圧縮空気が圧縮空気供給路21からエアーノズルを経て塗装ノズル15から噴出する。このとき、塗装ノズル15は開口しているので、第4の吹き付け材が塗装ノズル15へ供給され、第4の吹き付け材はエアーノズルから供給される圧縮空気によって塗装ノズル15から噴射される。
【0028】
尚、第4の吹き付け材を吹き付けるに際しては、必ずしも以上のようなスプレーガン11を使用する必要はなく、例えば、手持ち式の単頭ガンや、噴出ノズルの口径及び吹き圧が適切に設定された上述の3頭式スプレーガンを使用することもできる。
【0029】
まず、図1(a)に示すように、建築物の壁面(躯体)22上に、金ゴテを用いて樹脂モルタル23を約1mmの厚みで塗布することにより、建築物の壁面22を平坦化して下地調整を行った(図2のステップ1)。次いで、樹脂モルタル23の上に、エアースプレーを用いてシーラー(図示せず)を吹き付けた(図2のステップ2)。シーラーとしては、神東塗料(株)製のシントーコンクリートGシーラーを用いた。
【0030】
次に、図1(b)に示すように、シーラーを吹き付けた樹脂モルタル23の上に、図4に示す3頭式スプレーガンを用いて、色の異なる第1〜第3の吹き付け材7、8、9を、それぞれ玉状に同時に吹き付けた(玉吹き)(図2のステップ3)。この場合、玉状に吹き付けた第1〜第3の吹き付け材7、8、9の球相当径は、大きいもので10〜15mmであった。第1〜第3の吹き付け材7、8、9の吹き付け量は、1.0〜3.0kg/m2である。尚、第1〜第3の吹き付け材7、8、9は大きな玉状でランダムに吹き付けられるので、この段階では、所々に樹脂モルタル23が露出した状態となっている。
【0031】
次に、図1(c)に示すように、樹脂モルタル23の上に吹き付けられた玉状の第1〜第3の吹き付け材7、8、9が乾燥する前に、当該玉状の第1〜第3の吹き付け材7、8、9を、ローラ(図示せず)を用いて、押圧しながら均した(図2のステップ4)。これにより、玉状の第1〜第3の吹き付け材7、8、9が樹脂モルタル23の面内方向(建築物の壁面に沿った方向)に引き伸ばされ、第1〜第3の吹き付け材7、8、9は、それぞれ、厚みが約1mm、図1(c)の右側から見た場合の円相当径が大きいもので20〜30mmになった。そして、その結果、樹脂モルタル23の露出面積は、図1(b)の場合よりも小さくなった。
【0032】
次に、図1(d)に示すように、押圧しながら均した第1〜第3の吹き付け材7、8、9の上から、その全面及び樹脂モルタル23の露出面に、図5に示す装置を用いて、第1〜第3の吹き付け材7、8、9とは色の異なる第4の吹き付け材10を約1mmの厚みで吹き付けた(表層吹き)(図2のステップ5)。表層吹き用の第4の吹き付け材10の吹き付け量は、1.0〜3.0kg/m2である。この場合、全面に第4の吹き付け材10を吹き付けているので、この段階では、第1〜第3の吹き付け材7、8、9は第4の吹き付け材10の下に隠れた状態となっている。以下、第1〜第4の吹き付け材7、8、9、10からなる層を『吹き付け層』という。
【0033】
ステップ3(玉吹き)、ステップ5(表層吹き)で使用する第1〜第4の吹き付け材7、8、9、10の量の合計は、2.0〜6.0kg/m2であり、従来の吹き付け塗装方法で使用される吹き付け材の量5.0〜16.0kg/m2に比べてかなり少なくなっている。従って、本実施の形態の吹き付け塗装方法によれば、タイル施工と同程度のコストで建築物の壁面を施工することができる。
【0034】
次に、図1(e)に示すように、第1〜第4の吹き付け材7、8、9、10が完全に乾燥した後、グラインダー(図示せず)を用いて、表層吹きした第4の吹き付け材10の表面を、第1〜第3の吹き付け材7、8、9が露出するまで(すなわち、吹き付け層の厚みが約1mmとなるまで)平面状に研磨した(図2のステップ6)。これにより、第4の吹き付け材10の下に隠れていた第1〜第3の吹き付け材7、8、9が現れ、ベース材(表層吹きした第4の吹き付け材10)の色の上に、第1〜第3の吹き付け材7、8、9による大小入り混じった多色の玉状模様が散りばめられたパターンが形成された。尚、ステップ4において、玉状に吹き付けた第1〜第3の吹き付け材7、8、9を押圧しながら均しており、これにより、玉状の第1〜第3の吹き付け材7、8、9が樹脂モルタル23の面内方向(建築物の壁面に沿った方向)に引き伸ばされているので、第1〜第3の吹き付け材7、8、9による模様は大きなものとなっている。
【0035】
尚、本実施の形態においては、樹脂モルタル23上に吹き付けた玉状の第1〜第3の吹き付け材7、8、9を樹脂モルタル23の面内方向(建築物の壁面に沿った方向)に引き伸ばし、その上から全面に第4の吹き付け材10を表層吹きしているので、研磨厚みの多少に関わらず、第1〜第3の吹き付け材7、8、9による同じ模様を得ることができる(骨材発色)。
【0036】
最後に、第1〜第3の吹き付け材7、8、9による模様が形成された吹き付け層の表面に、透明なアクリル−シリコン系塗料を用いて全体に100μmの膜厚で超耐候性トップコート(図示せず)を塗布した(図2のステップ7)。アクリル−シリコン系塗料としては、神東塗料(株)製のハイテントップ半艶クリヤーを用いた。このように、仕上げ塗装の表面を超耐候性トップコート仕上げによって被覆したことにより、建築物用壁面材の耐久性及び耐候性を向上させることができると共に、汚染を防止することもできる。尚、トップコートとしてアクリル−シリコン系塗料を用いているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、透明な樹脂であればよい。例えば、トップコートとしてフッ素系塗料を用いることもできる。このように、トップコートとして親水性の材質のものを使用すれば、塵埃が付着し難く、一旦付着した塵埃も雨水等によって容易に洗い流すことができる。
【0037】
以上の工程により、建築物の吹き付け塗装が完了し、ベース材(表層吹きした第4の吹き付け材10)の色の上に、第1〜第3の吹き付け材7、8、9による大小入り混じった多色の玉状模様が散りばめられたパターンの、『新しい感覚の多彩模様の建築物用壁面材』が得られた。粘度の低い塗料の場合には、薄く一色を塗布して使用されるのが通常であり、粘度の高い塗料の場合には、塗布した後に凹凸を付けた模様を表現して使用されるが、上記のような多色からなる多彩玉状模様の建築物用壁面材が得られたのは、3頭式スプレーガン(後述の2頭式、4頭式等のスプレーガンを含む)を用い、かつ、上記骨材発色を利用しているからである。得られた建築物用壁面材の外観の一部を図3に示す。本実施の形態で使用している第1〜第4の吹き付け材7、8、9、10は柔軟性と接着力を有しているので、吹き付けた第1〜第4の吹き付け材7、8、9、10が建築物の壁面から剥離・脱落する恐れはない。
【0038】
尚、本実施の形態においては、第1〜第4の吹き付け材7、8、9、10として、それぞれ、白色、薄いベージュ色、やや濃いベージュ色、濃いベージュ色のもの(ベージュ色系)を用いているが、かかる色の組み合わせに限定されるものではない。色の組み合わせを変えることにより、吹き付け層の表面の模様として何百種類ものパターンを作ることができ、建築物の壁面の表現が豊かになる。すなわち、例えば、緑色系の濃淡で統一したり、青色系、紫色系、ピンク系、グレー系の濃淡で統一したりすることにより、環境に順応した建築物用壁面材を得ることができる。
【0039】
また、本実施の形態においては、色の異なる4種類の吹き付け材を用いているが、用いる吹き付け材の数は特に限定されるものではない。例えば、3種類の吹き付け材を用いても、5種類以上の吹き付け材を用いてもよい。そして、この場合には、玉吹き用のスプレーガンの使用もそれに応じて2頭式、4頭式等に換えられる。
【0040】
また、本実施の形態においては、玉状の吹き付け材を、ローラを用いて、押圧しながら均しているが、必ずしもローラを用いる必要はない。例えば、金ゴテを用いて押圧・均し工程を実施してもよい。
【0041】
また、本実施の形態においては、目地は形成されていないが、例えば、玉吹きする前に樹脂モルタル上に目地棒を貼り付け、吹き付け層の表面を研磨する前に目地棒を除去することにより、目地を形成するようにしてもよい。
【0042】
また、本実施の形態においては、建築物の壁面に直接塗装又は塗布する場合を例に挙げて説明したが、パネル状に形成し、それを建築物の壁面に貼り付けるようにしてもよい。本発明の『建築物』には、構築された物だけでなく、パネル、ボード等の建築物に使用される建材も含まれる。
【0043】
〈トップコートの具体例〉
以下に、本発明に好適なトップコートのより具体的な例を挙げ、その塗布方法についても説明する。
【0044】
第1〜第3の吹き付け材7、8、9による模様が形成された吹き付け層の表面に、まず、艶消し剤を加えないシロキサン架橋型アクリル−シリコン(珪素)重合体を含む下塗りコーティング剤を塗布して、下塗りコーティング層を形成する。この下塗りコーティング剤を塗布すると、下塗りコーティング剤の一部は吹き付け層に浸入するが、浸入しても塗料組成及び塗膜組成の均一性は保たれ、耐久性の高いコーティング層となる。加えて、下塗りコーティング層は吹き付け層とシロキサン結合によって化学結合するため、強固な密着となり、長期間美装状態を保ち、かつ、メンテナンスが不要で耐久性の高いコーティング層となる。
【0045】
下塗りコーティング剤が艶消し剤を含むと、下塗りコーティング剤の一部が吹き付け層に浸入する際に、艶消し剤は下塗りコーティング層に残されてしまい、艶消し剤の濃度が高い部分が生じるために、長期間経過したときに剥離し易くなる。また、研磨によって平面状に形成された吹き付け層の表面は、そのマトリックス樹脂成分が除去されて、骨材が露出しているので、下塗りコーティング剤が浸み込み易くなっている。従って、下塗りコーティング剤が艶消し剤を含むと、艶消し剤が偏在して白色の色むらが出てしまい、美観を損ねてしまう。
【0046】
次に、下塗りコーティング層の上に、艶消し剤を加えたシロキサン架橋型アクリル−シリコン重合体を含む上塗りコーティング剤を塗布して、上塗りコーティング層を形成する。この場合、隣り合うコーティング層同士もシロキサン結合によって化学結合するため、強固な密着となり、耐久性の高いコーティング層となる。また、塗膜は親水性であるため、塵埃が付着し難く、一旦付着した塵埃も雨水等によって容易に洗い流すことができる。その結果、長期間美装状態を保ち、かつ、メンテナンスが不要で耐久性の高い建築物用壁面材が得られる。すなわち、20年を越え、好ましくは30年を越え、さらに好ましくは40年を越える耐久性の高い非汚染仕上げ面が得られる。
【0047】
下塗りコーティング層の上に、上塗りコーティング層よりも相対的に少ない量の艶消し剤を加えたシロキサン架橋型アクリル−シリコン重合体を含む中塗りコーティング剤を塗布して、中塗りコーティング層をさらに形成するのも好ましい。この場合、下塗りコーティング層と中塗りコーティング層、及び、中塗りコーティング層と上塗りコーティング層とが、シロキサン結合によって化学結合するため、強固な密着となり、耐久性の高いコーティング層となる。また、塗膜は親水性であるため、塵埃が付着し難く、一旦付着した塵埃も雨水等によって容易に洗い流すことができる。その結果、長期間美装状態を保ち、かつ、メンテナンスが不要で耐久性の高い建築物用壁面材が得られる。すなわち、20年を越え、好ましくは30年を越え、さらに好ましくは40年を越える耐久性の高い非汚染仕上げ面が得られる。
【0048】
以下においては、下塗りコーティング層を「クリヤー」、中塗りコーティング層を「半艶」、上塗りコーティング層を「艶消し」という場合がある。クリヤーはコーティング剤に艶消し剤を含まず、半艶はコーティング剤100重量部に0を越え6重量部以下の艶消し剤を含み、艶消しはコーティング剤100重量部に6重量部を越え10重量部以下の艶消し剤を含むのが好ましい。
【0049】
コーティング剤に含まれるシロキサン架橋型アクリル−シリコン重合体は、好適には、下記(化1)で示されるモノマーを必須成分として重合して得られる、アルコキシシリル基含有のビニル重合体である。
【0050】
【化1】

【0051】
上記(化1)において、R1は水素原子、メチル基、炭素数6〜25のアリール基及び炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の有機基、R2は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基及び炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の有機基、R3は炭素数1〜3のアルキル基、aは0〜2の整数、mは1〜10の整数を示す。
【0052】
一例として、下記のモノマーを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(1)CH2=CHCOO(CH23Si(OCH33
(2)CH2=C(CH3)COO(CH23Si(OCH33
(3)CH2=C(CH3)COO(CH23Si(CH3)(OCH32
(4)CH2=CHCOO(CH23Si(OC253
(5)CH2=CHCOO(CH23Si(CH3)(OC252
(6)CH2=C(CH3)COO(CH23Si(OC253
(7)CH2=C(CH3)COO(CH23Si(CH3)(OC252
前記モノマーは1種でもよいし、2種以上を混合して使用することもできる。
【0053】
また、前記モノマーと共重合可能なモノマーとしては、アクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、あるいは他のビニルモノマー及びアミド系モノマーを用いることができる。具体的な化合物としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ヘプチルアクリレート、ヘプチルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルモノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、メチロールメタクリルアミド、メトキシメチルアクリルアミド、n−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド等のアミド系モノマーを挙げることができる。これらは1種でもよいし、2種以上を混合して使用することもできる。
【0054】
これらのモノマーをラジカル重合させると、ビニル基が壊裂して重合し、これが主鎖を形成し、好適なアルコキシシリル基含有のビニル重合体を得ることができる。この重合体の好ましい数平均分子量は3000〜100000である。
【0055】
好適なビニル重合体は側鎖にアルコキシシリル基を有するため、触媒によって常温(室温)でも反応が進む。すなわち、脱アルコール反応により、シラノール基同士又は他の水酸基(−OH基)と反応してシロキサン結合(−SiO−、Siは4価であるが2価を省略。以下も同様。)が形成される。あるいは、アルコキシシリル基が加水分解され、シラノール基(−SiOH基)となり、シラノール基同士又は他の水酸基(−OH基)と反応してシロキサン結合(−SiO−)が形成される。このシロキサン結合によって架橋構造となる。このことから、「シロキサン架橋型」という。また、このようにして形成された塗膜は親水性であるため、塵埃が付着し難く、一旦付着した塵埃も雨水等によって容易に洗い流すことができる。
【0056】
中塗り及び/又は上塗りコーティング剤に含まれる艶消し剤は、平均粒子径が1〜20μmの範囲の無機粉体であるのが好ましい。前記平均粒子径は、市販の粒度分布計によって測定することができる。例えば、堀場製作所製のレーザ回折粒度測定器(LA920)、島津製作所製のレーザ回折粒度測定器(SALD2100)などを用いて測定することができる。艶消し剤は、例えば、シリカ、タルク、クレイ、アルミナなどの無機粉体から選択することができる。
【0057】
本発明方法においては、下塗りコーティング剤を塗布して硬化させ(下塗りコーティング層の形成)、その上に上塗りコーティング剤を塗装して硬化させる(上塗りコーティング層の形成)。好ましくは、下塗りコーティング層と上塗りコーティング層との間に中塗りコーティング剤を塗布して硬化させる(中塗りコーティング層の形成)。前記下塗り、中塗り、上塗りの各コーティング剤には、シロキサン架橋型アクリル−シリコン重合体と共に、触媒、溶剤、その他の添加剤を加えることもできる。触媒としては、酸、塩基、有機金属を使用することができる。中でも有機錫が好ましく、有機錫としては、ジオクチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレ−ト)、ジオクチル錫オキサイド又はジブチル錫オキサイドとシリケ−トとの縮合物、ジブチル錫ジオクトエ−ト、ジブチル錫ジラウレ−ト、ジブチル錫ジステアレ−ト、ジブチル錫ジアセチルアセトナ−ト、ジブチル錫ビス(エチルマレ−ト)、ジブチル錫ビス(ブチルマレ−ト)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレ−ト)、ジブチル錫ビス(オレイルマレ−ト)、スタナスオクトエ−ト、ステアリン酸錫、ジ−n−ブチル錫ラルレ−トオキサイド等が挙げられる。また、分子内にS原子を有する錫化合物としては、ジブチル錫ビスイソノニル−3―メルカプトプロピオネ−ト、ジオクチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネ−ト、オクチルブチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネ−ト、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ−ト、ジオクチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ−ト、オクチルブチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ−ト等が挙げられる。触媒は単独でもよく、また、2種類以上併用してもよい。有機錫を使用する場合、触媒の使用量は、シロキサン架橋型アクリル−シリコン重合体成分100重量部に対して0.01重量部以上1重量部以下であるのが好ましく、さらに好ましくは0.1重量部以上0.2重量部以下である。
【0058】
溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のエーテル類;メチルエチルケトン、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、メチルイソブチルケトン、アセトン等のケトン類等が挙げられる。これらの溶剤のうち特に好ましい溶剤は、安全性の観点から、キシレンである。溶剤の使用量は、シロキサン架橋型アクリル−シリコン重合体成分100重量部に対して50重量部以上200重量部以下、好ましくは70重量部以上150重量部以下、さらに好ましくは80重量部以上120重量部以下である。
【0059】
添加剤としては、シリコーンオイル等の消泡剤、ヒンダードフェノール等の紫外線吸収剤、光安定剤、アマイドワックス等のタレ防止剤、レベリング剤等が挙げられる。
【0060】
本発明方法においては、さらに耐久性を上げるために、中塗りコーティング剤を2回塗りするのが好ましい。
【0061】
以下、実施例を用いて、トップコートについてさらに詳細に説明する。尚、下記の実施例に限定されるものではない。
【0062】
(各特性の測定試験方法)
(1)サンシャインウェザーメーターによる促進試験
試験機:スガ試験機社製、型番“WE−SUN−HC−DC”
光源:1灯式・セリウム入り有芯カーボンを上下各4本組み合わせ
光線波長:280〜400nm
放射照度:フィルター付き255±45W/m2、フィルターなし285±50W/m2
光フィルター:耐熱性光学ガラス板使用・8枚1組、255nm以下の短波長成分をカット、355nmまでの成分を10〜50%透過
放出電力:50V、60A(3000W)
雰囲気温度:63±3℃
シャワー:120分中18分間降雨先降り運転
スプレー水量:2100±100ml/min(pH6.0〜8.0、水温16±5℃)試料枚数:70×150mm、76枚
運転サイクル:60Hr
(2)光沢
目視により観察し、次のように評価した。
【0063】
A:天然石に近似する光沢
B:やや艶が目立つ
(3)ひび割れ有無
サンシャインウェザーメーターによる促進試験後の試料表面を目視により観察し、次のように評価した。
【0064】
A:ひび割れなし
B:僅かにひび割れあり、補修必要
C:大きなひび割れあり、補修必要
(4)変色
サンシャインウェザーメーターによる促進試験後の試料表面を目視により観察し、次のように評価した。
【0065】
A:変色なし
B:変色あるが実用的に問題ない程度で目立たない、補修不要
C:やや目立つ変色、補修必要
D:明らかに変色しており、補修必要
(実施例1)
吹き付け層の表面に、コーティング剤用のスプレーノズルを用いて、下塗りコーティング剤と上塗りコーティング剤を順番に塗布した。
(1)下塗りコーティング剤(クリヤー)
ハマトップFCクリヤー(基剤)
アルコキシシリル基含有ビニル重合体(数平均分子量15000) 43重量部
添加剤(消泡剤+光安定剤+顔料分散剤) 1重量部
溶剤(酢酸エチル) 2重量部
溶剤(酢酸ブチル) 2重量部
溶剤(キシレン) 45重量部
基剤 計93重量部
ハマトップFCクリヤー(硬化剤)
有機錫(ジブチル錫ジラウレ−ト)の混合物 1重量部(有機錫は0.1重量部)
溶剤(キシレン) 6重量部
硬化剤 計7重量部
合計100重量部
塗布量100g/m2(乾燥重量(固形分)で50g/m2)1回塗り
(2)上塗りコーティング剤(艶消し)
ハマトップFC艶消しクリヤー(基剤)
アルコキシシリル基含有ビニル重合体(数平均分子量15000) 40重量部
添加剤(消泡剤+光安定剤+顔料分散剤) 1重量部
溶剤(酢酸エチル) 2重量部
溶剤(酢酸ブチル) 2重量部
溶剤(キシレン) 41重量部
艶消し剤(平均粒子径8μmのシリカ)7重量部
基剤 計93重量部
ハマトップFC艶消しクリヤー(硬化剤)
有機錫(ジブチル錫ジラウレ−ト)の混合物 2重量部(有機錫は0.2重量部)
溶剤(キシレン) 5重量部
硬化剤 計7重量部
合計100重量部
塗布量100g/m2(乾燥重量(固形分)で50g/m2)1回塗り
得られた美装仕上げの建築物用壁面材に対してサンシャインウェザーメーターによる促進試験を行ったところ、8000時間後(40年に相当)でもひび割れやクラック、及び変色は無く、耐久性のあることが確認できた。
【0066】
(実施例2)
実施例1において、下塗りコーティング剤を1回塗りして硬化させ、その上に中塗りコーティング剤を2回塗りした以外は、実施例1と同様にスプレー塗装した。
(3)中塗りコーティング剤(半艶)
ハマトップFC半艶クリヤー(基剤)
アルコキシシリル基含有ビニル重合体(数平均分子量15000) 41重量部
添加剤(消泡剤+光安定剤+顔料分散剤) 1重量部
溶剤(酢酸エチル) 2重量部
溶剤(酢酸ブチル) 2重量部
溶剤(キシレン) 42重量部
艶消し剤(平均粒子径8μmのシリカ)5重量部
基剤 計93重量部
ハマトップFC半艶クリヤー(硬化剤)
有機錫(ジブチル錫ジラウレ−ト)の混合物 2重量部(有機錫は0.2重量部)
溶剤(キシレン) 5重量部
硬化剤 計7重量部
合計100重量部
塗布量100g/m2(乾燥重量(固形分)で50g/m2)2回塗り
得られた美装仕上げの建築物用壁面材に対してサンシャインウェザーメーターによる促進試験を行ったところ、7000時間(35年に相当)までは、ひび割れやクラック、及び変色は無く、耐久性のあることが確認できた。
【0067】
(実施例3)
実施例1において、下塗りコーティング剤を1回塗りして硬化させ、その上に中塗りコーティング剤を1回塗りした以外は、実施例1と同様にスプレー塗装した。
【0068】
得られた美装仕上げの建築物用壁面材に対してサンシャインウェザーメーターによる促進試験を行ったところ、7000時間(35年に相当)までは、ひび割れやクラック、及び変色は無く、耐久性のあることが確認できた。
【0069】
(実施例4)
実施例1において、下塗りコーティング剤を塗布しなかった以外は、実施例1と同様にスプレー塗装した。
【0070】
得られた美装仕上げの建築物用壁面材に対してサンシャインウェザーメーターによる促進試験を行ったところ、4000時間(20年に相当)までは、ひび割れやクラック、及び変色は無く、耐久性のあることが確認できた。
【0071】
(実施例5)
実施例2において、下塗りコーティング剤を塗布しなかった以外は、実施例2と同様にスプレー塗装した。
【0072】
得られた美装仕上げの建築物用壁面材に対してサンシャインウェザーメーターによる促進試験を行ったところ、4000時間(20年に相当)までは、ひび割れやクラック、及び変色は無く、耐久性のあることが確認できた。
【0073】
(実施例6)
実施例2において、下塗り及び中塗りコーティング剤を塗布せず、上塗りコーティング剤を2回塗りした以外は、実施例2と同様にスプレー塗装した。
【0074】
得られた美装仕上げの建築物用壁面材に対してサンシャインウェザーメーターによる促進試験を行ったところ、2000時間(10年に相当)までは、ひび割れやクラック、及び変色は無く、耐久性のあることが確認できた。
【0075】
以上の結果を下記(表1)にまとめて示す。
【0076】
【表1】

【0077】
上記(表1)から明らかな通り、実施例1〜3においては、下塗りコーティング剤として艶消し剤を加えないシロキサン架橋型アクリル−シリコン重合体を含むものを塗布したため、耐久性が高くなっている。また、最外層に半艶ないしは艶消し層を形成したため、天然石に近い落ち着いた光沢を有していた。
【0078】
また、実施例4〜6においては、吹き付け層の上に直接半艶ないしは艶消し層を形成したため、耐久性は多少低く、光沢も強すぎるという傾向があった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、吹き付けた吹き付け材が建築物の壁面から剥離・脱落する恐れのない、タイルに代わる『新しい感覚の多彩模様の建築物用壁面材』を得ることができ、かつ、タイル施工と同程度のコストで建築物の壁面を施工することのできる建築物の吹き付け塗装方法を提供することができるので、建築物の外壁面の仕上げに対して有用である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施の形態における建築物の吹き付け塗装方法を示す工程断面図
【図2】本発明の一実施の形態における建築物の吹き付け塗装方法を示すフローチャート
【図3】本発明の一実施の形態における建築物の吹き付け塗装方法を用いて得られた建築物用壁面材を示す平面図
【図4】本発明の一実施の形態における建築物の吹き付け塗装方法において玉吹き用の吹き付け材を吹き付けるために用いられる3頭式スプレーガンを示す斜視図
【図5】本発明の一実施の形態における建築物の吹き付け塗装方法において表層吹き用の吹き付け材を吹き付けるために用いられる装置を示す概略構成図
【符号の説明】
【0081】
1、2、3 タンク
4、5、6 噴出ノズル
7 第1の吹き付け材
8 第2の吹き付け材
9 第3の吹き付け材
10 第4の吹き付け材
11 スプレーガン
12 装置
13 ホッパー
14 導管
15 塗装ノズル
16 切換弁
17、18 流路
19 遮断弁
20、21 圧縮空気供給路
22 建築物の壁面(躯体)
23 樹脂モルタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の壁面に、骨材と合成樹脂とを含む吹き付け材の異なる色のもの複数種を、それぞれ玉状に同時に吹き付ける工程と、
それぞれ玉状に吹き付けた前記複数種の吹き付け材を、押圧しながら均す工程と、
押圧しながら均した前記複数種の吹き付け材の上から、骨材と合成樹脂とを含む、前記複数種の吹き付け材と色の異なる吹き付け材を表層吹きする工程と、
表層吹きした前記吹き付け材の表面を、前記複数種の吹き付け材が露出するまで研磨する工程とを備えた建築物の吹き付け塗装方法。
【請求項2】
前記各吹き付け材として、骨材5〜90重量部と合成樹脂10〜95重量部とを含む吹き付け材を用いる、請求項1に記載の建築物の吹き付け塗装方法。
【請求項3】
前記骨材として、セラミックス骨材、天然石骨材及び焼き付け骨材からなる群から選ばれる少なくとも1つを用いる、請求項1又は2に記載の建築物の吹き付け塗装方法。
【請求項4】
前記合成樹脂としてアクリル樹脂エマルジョンを用いる、請求項1〜3のいずれかに記載の建築物の吹き付け塗装方法。
【請求項5】
表層吹きした前記吹き付け材の表面を研磨した後、その表面に透明な樹脂によってトップコートを施す、請求項1〜4のいずれかに記載の建築物の吹き付け塗装方法。
【請求項6】
前記透明な樹脂として、アクリル−シリコン系塗料又はフッ素系塗料を用いる、請求項5に記載の建築物の吹き付け塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−221148(P2010−221148A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72125(P2009−72125)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(310007553)株式会社ハマキャスト (7)
【Fターム(参考)】