説明

建築物の壁面構造及びその壁面構造に使用する装飾部材

【課題】タイルや石板の重厚感、高級感に暖か味を加えることができ、しかも簡単に模様替えが行える建築物の壁面構造及びその壁面構造に使用する装飾部材を提供する。
【解決手段】壁1の表面に多数の装飾板2を配列して装飾する建築物の壁面構造であって、装飾板2の1枚又は複数枚分の大きさである装飾基板6と、その装飾基板6の正面に額縁状の縁取りを残して凹状に形成した主体設置部6bと、その主体設置部6bに着脱自在に嵌合する装飾主体7と、その装飾主体7を主体設置部6b内に取外し可能な状態に取着する取着手段(磁石8)と、を有する装飾部材5を使用し、複数の装飾板2同士の間に装飾基板6を配置すると共にその装飾基板6の主体設置部6bに装飾主体7を装着して装飾するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物を装飾する壁面構造及びその壁面構造に使用する装飾部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物の壁の表面に装飾板たるタイルや石板を上下左右に配列して装飾することが広く行われている。言うまでもなく前記タイルは陶磁製が主流であり、また、石板は天然の石を板状に加工したものが主流である。
【0003】
室内の壁の表面にタイルや石板を貼り付けた建築物は、重厚感や高級感がある反面、特許文献1で指摘されているように冷たい印象を与える。したがって一般住宅においてタイルや石板を使用する場所は、台所、トイレ、浴室等が主流であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実登第3026197号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、表面を自然に割れたようないわゆる「割肌」に加工して暖か味を演出するようにしたタイルや石板があり、一般家庭の居間等の壁にもタイルや石板等を貼ることが増えつつある。
しかしながら壁一面をタイルや石板で覆った場合には、依然として冷たい印象を与える可能性があり、また、一旦タイルや石板を壁に貼ってしまうと、長期に亘ってその状態で固定されることになるため、飽きが来るのをおそれて躊躇する者も多い。
【0006】
本発明は、上記に鑑みなされたもので、その目的は、タイルや石板の重厚感、高級感に暖か味を加えることができ、しかも簡単に模様替えが行える建築物の壁面構造及びその壁面構造に使用する装飾部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため本発明は、
壁の表面に多数の装飾板を配列して装飾する建築物の壁面構造であって、
前記装飾板の1枚又は複数枚分の大きさである装飾基板と、
その装飾基板の正面に額縁状の縁取りを残して凹状に形成した主体設置部と、
その主体設置部に着脱自在に嵌合する装飾主体と、
その装飾主体を前記主体設置部内に取外し可能な状態に取着する取着手段と、を有する装飾部材を使用し、
複数の前記装飾板同士の間に前記装飾基板を配置すると共にその装飾基板の主体設置部に装飾主体を装着して装飾するようにした建築物の壁面構造を提供する。
【0008】
また、請求項2に記載したように、
前記装飾板を石板又はタイルで形成し、
前記装飾基板を石板又はタイルで形成し、
さらに前記装飾主体は、前記装飾基板の前記主体設置部にほぼ整合する形状の枠体を有し、少なくともその枠体を木又は竹又は紙又は革又は合成樹脂の1種又は2種以上を組み合わせて形成したものである請求項1記載の建築物の壁面構造を提供する。
【0009】
また、請求項3に記載したように、
正面に額縁状の縁取りを残して凹状の主体設置部を形成してなる装飾基板と、
前記主体設置部に着脱自在に嵌合する装飾主体と、
その装飾主体を前記主体設置部内に取り外し可能な状態に取着する取着手段と、を有し、
複数の装飾板を配列して装飾される建築物の壁面に、その装飾板同士の間に配置されるものである請求項1又は2に記載の建築物の壁面構造に使用する装飾部材を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来の装飾板同士の間に装飾部材を配置したため、その装飾部材がアクセントになって暖か味のある印象を抱かせることができる。また、装飾部材の装飾主体を主体設置部に対して着脱自在にしたため、その装飾主体を交換することで簡単に模様替えが行える。
【0011】
また、請求項2のように従来の装飾板と装飾基板を石板又はタイルで形成し、装飾主体の枠体をそれとは異なる材質である木又は竹又は紙又は革又は合成樹脂の1種又は2種以上を組み合わせて形成することで、周囲の装飾板とのコントラストにより装飾部材の暖か味を特に際だたせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】装飾主体を分離して示す分解斜視図である。
【図2】壁の一部を示す正面図である。
【図3】壁の一部を示す斜視図である。
【図4】壁の一部を示す縦断面図である。
【図5】壁に装飾基板を貼り付ける状態を示す分解斜視図である。
【図6】実施形態2の装飾部材を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
以下に本発明の実施形態1を図1〜図5を参照しつつ説明する。
図示したように建築物の壁1の表面には多数の装飾板2,2…が上下左右に適宜な目地間隔を離して配列されている。実施形態1の装飾板2は、陶磁製のタイル又は石を板状に加工した石板であり、図4に示したように壁1の表面に形成したモルタル層3に貼り付けられ、目地間隔に目地材4が充填されている。一方、装飾板2の裏面には、図示しないが左右方向横断状に剥離防止用の凹溝が形成されており、その凹溝にモルタル層3を食い込ませて壁1から剥がれにくくしている。
【0014】
なお、現在では上記のように壁1にモルタル層3を設ける場合の他、壁1に装飾板2を直に釘で打ち付けたり、或は壁1に専用の引っ掛け具を取着して装飾板2を引っ掛けるようにしたものもある。装飾板2の設置構造としては上記のいずれの方式であってもよい。
【0015】
本発明の壁構造は、複数の装飾板2,2…同士の間に本発明の装飾部材5を配置したことを特徴とする。この装飾部材5は、建築物の壁1に対して前記装飾板2と同じ方式で取り付けられる装飾基板6と、その装飾基板6に取り付けられた装飾主体7と、からなる。
【0016】
[装飾基板]
実施形態1の装飾基板6は、前記装飾板2に対して正面視同じ縦横サイズで厚みが若干大きい形状になっており、正面に額縁状の縁取り6aを残して凹状の主体設置部6bを有する。装飾基板6は、前記装飾板2と同じ材質であることがデザイン上好ましく、装飾板2がタイルであればタイル、装飾板2が石板であれば石で形成する。
この装飾基板6には主体設置部6bのコーナー部分に取着手段を構成する磁石8が固着されている。なお、この磁石8は、装飾基板6の裏面と同一面になる長さに形成すればよいのであるが、図4のように装飾基板6の裏面から磁石8(取着手段)の後端部を突出させておくことでモルタル層3への食い込みを強化し、もって剥離防止機能を強化することができる。
【0017】
[装飾主体]
前記装飾主体7は、装飾基板6の前記主体設置部6bにほぼ整合する形状に枠組みした木製の枠体7aを有し、その枠体7aの裏面に紙(和紙)7bを貼り、さらに枠体7aの内側に障子の桟に見立てた木製の飾り桟7cを形成してなる。なお、枠体7aの内側は、自由にデザイン可能であり、例えば図1に示したように異なる形状の飾り桟7cにしたり、或は飾り桟7cとは全く異なる材質、例えば竹、紙、革、合成樹脂等の素材を使って自由なデザインを施すことができる。一例として乳児の手形を付けた粘土板(図示せず)を枠体7aの中に固定したり、或は趣味で自作した作品を枠体7aの中に固定してもよい。
【0018】
装飾主体7のコーナー部分の裏面には、前記取着手段の磁石8に磁着可能な鉄製の磁性板(図示せず)が貼着されており、この磁性板が装飾基板6の磁石8に磁着して装飾基板6の主体設置部6bから装飾主体7が落下しないようになっている。
【0019】
以上のような構成である本発明の装飾部材5の装飾基板6は、周囲の装飾板2と同じ大きさであるため、図5に示したように複数の装飾板2同士の間に整然と配置することができる。そして、壁1に固定した装飾基板6の主体設置部6bに装飾主体7を嵌め込めば、取着手段の磁石8に装飾主体7の磁性板が磁着して落下しない状態に固定される。
【0020】
この状態でタイルの装飾板2,2…と、装飾板2,2…で囲まれた障子調の装飾主体7が調和して、タイルの冷たい印象に暖か味のあるアクセントを加えることができる。
そして、例えば季節の変わり目等に合わせて装飾部材5の装飾主体7を図1のように交換すれば、部屋の雰囲気を簡単に変更することができる。
【0021】
[実施形態2]
図6は実施形態2の装飾部材5を示す分解斜視図である。この実施形態2は、複数枚分の装飾板2に対して1つの装飾部材5を対応させるものであり、装飾基板6が1枚の装飾板2に対応する大きさに分割されている。このように装飾部材5を大きくすることにより、存在感が増すことはもちろん、装飾主体7が大きくなってデザインの幅が広がる効果がある。なお、装飾基板6は、図6のように分割しないで一体成形するようにしてもよい。また、装飾基板6の大きさは装飾板2の整数倍である必要はなく、装飾板2の2.5倍というような大きさであってもよい。
【0022】
以上本発明を実施の形態1,2について説明したが、もちろん本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば実施形態1,2では装飾主体7を取着する取着手段として磁石8を例示したが、ネジ止めするようにしてもよい。また、実施形態1,2では装飾基板6としてタイルと石板を例示したが、薄くした煉瓦や木で装飾基板6を形成してもよく、また、装飾板2も煉瓦で形成してもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 …壁
2 …装飾板
5 …装飾部材
6 …装飾基板
6a…縁取り
6b…主体設置部
7 …装飾主体
7a…枠体
8 …磁石(取着手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁の表面に多数の装飾板を配列して装飾する建築物の壁面構造であって、
前記装飾板の1枚又は複数枚分の大きさである装飾基板と、
その装飾基板の正面に額縁状の縁取りを残して凹状に形成した主体設置部と、
その主体設置部に着脱自在に嵌合する装飾主体と、
その装飾主体を前記主体設置部内に取外し可能な状態に取着する取着手段と、を有する装飾部材を使用し、
複数の前記装飾板同士の間に前記装飾基板を配置すると共にその装飾基板の主体設置部に装飾主体を装着して装飾するようにしたことを特徴とする建築物の壁面構造。
【請求項2】
前記装飾板を石板又はタイルで形成し、
前記装飾基板を石板又はタイルで形成し、
さらに前記装飾主体は、前記装飾基板の前記主体設置部にほぼ整合する形状の枠体を有し、少なくともその枠体を木又は竹又は紙又は革又は合成樹脂の1種又は2種以上を組み合わせて形成したものであることを特徴とする請求項1記載の建築物の壁面構造。
【請求項3】
正面に額縁状の縁取りを残して凹状の主体設置部を形成してなる装飾基板と、
前記主体設置部に着脱自在に嵌合する装飾主体と、
その装飾主体を前記主体設置部内に取り外し可能な状態に取着する取着手段と、を有し、
複数の装飾板を配列して装飾される建築物の壁面に、その装飾板同士の間に配置されるものである請求項1又は2に記載の建築物の壁面構造に使用する装飾部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−219931(P2011−219931A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87520(P2010−87520)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(391019201)有限会社東宏 (1)
【Fターム(参考)】