説明

建築物の設計システム

【課題】 完成後の建築物の外観や施工費用だけではなく、維持費用および修繕費用を含めたトータルコストをシミュレートすることができる建築物の設計システムを提供する。
【解決手段】 クライアント/サーバーモデルを利用して建築物の設計を行うシステムであって、建築物基礎データベース51に格納された基礎データを参照し、3次元オブジェクトを生成する3次元オブジェクト生成手段41を備える。3次元オブジェクト生成手段41は、修正指示手段90による修正指示に基づいて建築物基礎データベース51に格納された基礎データを参照し、3次元オブジェクトを修正して修正後の3次元オブジェクトを生成可能であるとともに、経年変化データベース52に格納された経年変化データを参照し、経年変化後の3次元オブジェクトを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の設計システムに係り、特に電気通信回線を介して建築物の設計を行うことができる建築物の設計システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物を設計する際には、依頼者の注文に応じて設計者が基本設計図を作成し、この基本設計図を依頼者に提示して意見を求め、依頼者の意見に基づいて修正設計図を作成し、修正設計図を再び依頼者に提示して意見を求めるというように、依頼者と設計者との間で何度も意見交換が行われるのが一般的である。
【0003】
この際、依頼者と設計者とが遠隔地に居住する場合には、いちいち設計図を持ち運んで意見交換を行わなければならず、作業効率が悪いという問題があった。また、依頼者に意見を求める場所と、設計者が設計を行う場所が異なっているため、修正設計図に依頼者の意見が十分に反映されない場合もあった。
【0004】
そこで、依頼者のもとへパーソナルコンピュータを持参し、インターネット回線等の電気通信回線を介してサーバーに接続し、依頼者の意見を参考にしながら設計を行う技術が提案されている。例えば、特許文献1の特開2003−346014号「3D画像による商品見積り支援システム」に、自動車、不動産、家具、電化製品等の商品の販売、リース、およびレンタルによる商品取引の際に作成する商品見積書を、コンピュータシステムによりシミュレーションする技術が種々提案されている。
【0005】
この特許文献1に記載されている「3D画像による商品見積り支援システム」は、賃貸マンションや分譲マンションの販売にも適用することができ、例えば、賃貸マンションの場合は、ユーザーの希望通りのレイアウトに変更して具体的に提示することができ、分譲マンションの場合は、間仕切りの着脱を行ったり、ドアーや便器等の備品を変更する等、レイアウト・シミュレーションを行って、依頼者の希望に沿った設計を行うことができるとされている。
【特許文献1】特開2003−346014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、建築物の設計および施工を依頼する依頼者は、完成後の建築物の外観や施工費用だけではなく、経年変化後の建築物の外観や、維持費用および修繕費用を含めた将来的なコストも知りたいと望む場合が多い。例えば、太陽電池を電力源とする建築物は当初の施工コストが割高になるが、将来的な電力料金を勘案するとトータルコストが安くなる場合がある。また、品質の高い部材を用いると施工費用が嵩むが、建築物の見栄えが良くなるとともに耐用年数が増加するのが一般的である。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された「3D画像による商品見積り支援システム」では、施工完了時における建築物の外観や施工費用をシミュレートすることはできるが、その後の維持管理に要する将来的なコストをシミュレートすることはできず、依頼者の意向を十分に反映することができるシステムであるとは言い難かった。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち本発明の目的は、完成後の建築物の外観や施工費用だけではなく、維持費用および修繕費用を含めたトータルコストをシミュレートすることができる建築物の設計システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、クライアント/サーバーモデルを利用して建築物の設計を行うシステムであって、建築物を構成する部材の形状、色彩、大きさ等に関する基礎データを格納した建築物基礎データベース(51)と、建築物を構成する部材の経年変化データを格納した経年変化データベース(52)と、前記建築物基礎データベース(51)に格納された基礎データを参照し、3次元オブジェクトを生成する3次元オブジェクト生成手段(41)と、前記3次元オブジェクト生成手段(41)により生成された3次元オブジェクトを3次元グラフィックス記述言語を用いてフォーマット変換し、3次元表示用ファイルとして出力する3次元表示用ファイル出力手段(42)と、前記3次元表示用ファイル出力手段(42)により出力された3次元表示用ファイルを取得し、建築物の立体画像として表示する表示手段(80)と、前記表示手段(80)により表示された立体画像に基づいて、建築物を構成する部材の修正を指示する修正指示手段(90)と、を備え、前記建築物基礎データベース(51)、前記経年変化データベース(52)、前記3次元オブジェクト生成手段(41)、および前記3次元表示用ファイル出力手段(42)は、サーバー(20)側に備えられるとともに、前記表示手段(80)、および前記修正指示手段(90)は、クライアント(30)側に備えられ、前記サーバー(20)と前記クライアント(30)とは電気通信回線(100)を介して接続され、前記3次元オブジェクト生成手段(41)は、前記修正指示手段(90)による修正指示に基づいて前記建築物基礎データベース(51)に格納された基礎データを参照し、前記3次元オブジェクトを修正して修正後の3次元オブジェクトを生成可能であるとともに、前記経年変化データベース(52)に格納された経年変化データを参照し、経年変化後の3次元オブジェクトを生成可能であることを特徴とする建築物の設計システムが提供される。
【0010】
ここで、前記3次元オブジェクト生成手段(41)は、設計対象となる建築物に対応して複数種類の3次元オブジェクトを生成することである。
また、前記3次元オブジェクト生成手段(41)により生成された3次元オブジェクトを格納する3次元オブジェクトデータベース(53)を備えることが好ましい。
【0011】
また、建築物を構成する部材の単価データを格納した単価データベース(54)と、前記単価データベース(54)に格納された単価データを参照し、建築物の施工費用を演算する施工費用演算手段(43)と、を備えることが好ましい。
【0012】
また、建築物を構成する部材の修繕費用データを格納した修繕費用データベース(55)と、前記修繕費用データベース(55)に格納された修繕費用データを参照し、経年変化後に行う修繕費用を演算する修繕費用演算手段(44)と、を備えることが好ましい。
【0013】
また、建築物を構成する部材の維持費用データを格納した維持費用データベース(56)と、前記維持費用データベース(56)に格納された維持費用データを参照し、建築物の維持費用を演算する維持費用演算手段(45)と、を備えることが好ましい。
【0014】
また、前記サーバー(20)は、アクセス権限の認証を行うユーザー認証手段(46)を備えることが好ましく、前記サーバー(20)および前記クライアント(30)は、それぞれデータの暗号化手段(61,71)および復号化手段(62,72)を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の建築物の設計システムでは、サーバー(20)側に備えられた3次元オブジェクト生成手段(41)により、設計対象となる建築物の3次元オブジェクトおよび経年変化後の3次元オブジェクトを生成し、3次元表示用ファイル出力手段(42)により、生成された3次元オブジェクトを3次元表示用ファイルとして出力してクライアント(30)側に送信し、クライアント(30)側では、表示手段(80)により受信した3次元表示用ファイルを建築物の立体画像として表示する。そして、クライアント(30)側に設けられた修正指示手段(90)により建築物を構成する部材の修正を指示すると、サーバー(20)側の3次元オブジェクト生成手段(41)により修正後の3次元オブジェクトおよび経年変化後の3次元オブジェクトを生成し、3次元表示用ファイル出力手段(42)により、生成された3次元オブジェクトを3次元表示用ファイルとして出力してクライアント(30)側に送信し、クライアント(30)側の表示手段(80)により受信した3次元表示用ファイルを建築物の立体画像として表示する。
【0016】
このように、本発明の建築物の設計システム(10)によれば、依頼者との打合せ現場で表示手段(80)に表示された完成後の立体画像を見ながら、リアルタイムに設計変更を行うことができるので、作業効率を向上させることができるとともに、依頼者の意向を十分に反映した設計および施工を行うことができる。この際、経年変化後の建築物の外観を表示することができるので、依頼者は将来的な展望を踏まえたうえで設計の依頼を行うことができる。
【0017】
また、設計対象となる建築物に対応して複数種類の3次元オブジェクトを生成することにより、依頼者は複数パターンの設計を比較して検討することができるので、より一層、依頼者の意向に沿った設計を行うことができる。
【0018】
また、3次元オブジェクトデータベース53に3次元オブジェクトを格納することにより、後日、格納した3次元オブジェクトを用いて設計を再検討することができるので、より一層、依頼者の意向に沿った設計を行うことができる。
【0019】
また、施工費用演算手段(43)により建築物の施工費用を演算し、修繕費用演算手段(44)により修繕費用を演算し、維持費用演算手段(45)により維持費用を演算することができるので、完成後の建築物の外観や施工費用だけではなく、維持費用および修繕費用を含めたトータルコストをシミュレートすることができる。
【0020】
また、ユーザー認証手段(46)によりアクセス権限の認証を行うことにより、設計段階におけるデータが外部に漏れるおそれがなくなり、設計者と依頼者との間における信頼関係を高めることができる。さらに、暗号化手段(61,71)および復号化手段(62,72)によりサーバー(20)とクライアント(30)の間でデータを暗号化して送受信することができるので、より一層、セキュリティを高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の建築物の設計システムは、完成後の建築物の外観や施工費用だけではなく、維持費用および修繕費用を含めたトータルコストをシミュレートすることができる設計システムであり、例えば、周辺環境との調和を図るため予め綿密な打ち合わせを行い、適切な設計および施工を行う必要がある電力事業者等が管理する大規模建築物の設計に用いられるものである。
【0022】
この建築物の設計システムでは、サーバーとクライアントがインターネット等の電気通信回線を介して接続されている。
【0023】
サーバーは、各種のデータを格納したデータベースと、3次元オブジェクトを生成する3次元オブジェクト生成手段と、生成された3次元オブジェクトを3次元グラフィックス記述言語を用いてフォーマット変換し、3次元表示用ファイルとして出力する3次元表示用ファイル出力手段と、建築物の施工費用を演算する施工費用演算手段と、経年変化後に行う修繕費用を演算する修繕費用演算手段と、建築物の維持費用を演算する維持費用演算手段と、サーバーへのアクセス権限の認証を行うユーザー認証手段と、クライアントとの間で送受信するデータのセキュリティを高めるための暗号化手段および復号化手段とを備えている。
【0024】
クライアントは、3次元表示用ファイルを取得して建築物の立体画像として表示する表示手段と、建築物を構成する部材の修正を指示する修正指示手段と、サーバーとの間で送受信するデータのセキュリティを高めるための暗号化手段および復号化手段とを備えている。
【0025】
この建築物の設計システムでは、依頼者との打合せ現場で表示手段に表示された完成後および経年変化後の立体画像を見ながら、リアルタイムに設計変更を行うことができる。
【実施例1】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は実施例1の建築物の設計システムの全体構成を示すブロック図である。図2は実施例1の建築物の設計システムの詳細構成を示すブロック図である。
実施例1の建築物の設計システム10は、図1に示すように、クライアント/サーバーモデルを利用した設計システム10であり、サーバー20とクライアント30とはインターネット等の電気通信回線100を介して接続されている。なお、電気通信回線100は、公衆電話回線、専用電話回線、光ファイバ、CATV等の有線通信回線を利用したものであってもよいし、無線電話回線、ホットスポット等の無線通信回線を利用したものであってもよいし、有線通信回線と無線通信回線とを組み合わせた複合通信回線を利用したものであってもよい。
【0027】
サーバー20は、例えば設計者の本社等に設置されるもので、サーバーコンピューター40およびその周辺機器と、データベースサーバー50とにより構成される。
このサーバー20は、図2に示すように、各種のデータを格納したデータベース51〜57と、3次元オブジェクトを生成するための3次元オブジェクト生成手段41と、生成された3次元オブジェクトを3次元グラフィックス記述言語を用いてフォーマット変換し、3次元表示用ファイルとして出力するための3次元表示用ファイル出力手段42と、建築物の施工費用を演算するための施工費用演算手段43と、経年変化後に行う修繕費用を演算するための修繕費用演算手段44と、建築物の維持費用を演算するための維持費用演算手段45と、サーバー20へのアクセス権限の認証を行うためのユーザー認証手段46と、クライアント30との間で送受信するデータのセキュリティを高めるための暗号化手段61および復号化手段62とを備えている。
【0028】
クライアント30は、例えば営業担当者が携帯するラップトップコンピュータにより構成される。このクライアント30は、図2に示すように、3次元表示用ファイルを取得して建築物の立体画像として表示するための表示手段80と、建築物を構成する部材の修正を指示するための修正指示手段90と、サーバー20との間で送受信するデータのセキュリティを高めるための暗号化手段71および復号化手段72とを備えている。
【0029】
次に、各データベースおよび各手段を具体的に説明する。
なお、以下に説明する各データベースは、ハードディスク記憶装置等の記憶手段、あるいは記憶手段を備えたデータベースサーバー50により構成されるものである。また、以下に説明する各手段は、コンピュータおよびその周辺機器がアプリケーションプログラムに従い動作することにより構成されるものである。
【0030】
まず、サーバー20に設置されるデータベースおよび手段について説明する。
サーバー20に設置されるデータベースは、建築物基礎データベース51、経年変化データベース52、3次元オブジェクトデータベース53、単価データベース54、修繕費用データベース55、維持費用データベース56、およびユーザーデータベース57からなる。
【0031】
建築物基礎データベース51は、建築物を構成する部材の形状、色彩、大きさ等に関する基礎データを格納したデータベースである。この建築物基礎データベース51に格納される構成部材とは、例えば、構造材、床材、壁材、ドアーや間仕切り等のインテリア、棚や机等の什器、門扉やフェンス等のエクステリアのことである。なお、建築物基礎データベース51に格納される基礎データは、設計者および依頼者の事業規模、営業対象等に応じて適宜変更して設定することができる。
【0032】
経年変化データベース52は、建築物を構成する部材の経年変化データを格納したデータベースである。経年変化データベースでは、例えば外壁が紫外線、潮風、雨水等の影響により変化する度合い等が、建築物の構築環境に応じてデータベース化されている。
この経年変化データには、建築物の周囲に植栽された樹木の成長度を含ませることが好ましい。すなわち、建築物の周囲に植栽された樹木は、年を経ると成長するものであり、成長後の状態を把握することにより、植栽の間隔等を適切に設定することができる。
【0033】
3次元オブジェクトデータベース53は、3次元オブジェクト生成手段41により生成された3次元オブジェクトを格納するためのデータベースである。
単価データベース54は、建築物を構成する部材の単価データを格納したデータベースである。
修繕費用データベース55は、建築物を構成する部材の修繕費用データを格納したデータベースである。
維持費用データベース56は、建築物を構成する部材の維持費用データを格納したデータベースである。
【0034】
ユーザーデータベース57は、サーバー20へのアクセスを許可するユーザーに関するデータとして、ユーザーID、パスワード、操作権限レベル等に関するデータを格納したデータベースである。
【0035】
3次元オブジェクト生成手段41は、建築物基礎データベース51に格納された基礎データを参照し、3次元オブジェクトを生成するための手段である。また、この3次元オブジェクト生成手段41は、修正指示手段90による修正指示に基づいて建築物基礎データベース51に格納された基礎データを参照し、3次元オブジェクトを修正して修正後の3次元オブジェクトを生成するための手段として機能するとともに、経年変化データベース52に格納された経年変化データを参照し、経年変化後の3次元オブジェクトを生成するための手段としても機能する。
【0036】
さらに、3次元オブジェクト生成手段41は、設計対象となる建築物に対応して複数種類の3次元オブジェクトを生成することができる。このように、複数種類の3次元オブジェクトを生成することにより、建築物の設計を行う際に、構成部材の品質や価格を変更して複数の設計案を提案することができ、設計者は設計コンセプトをアピールし易くなり、依頼者にとっても選択余地が広がって自らの意向を設計に反映させ易くなる。
【0037】
3次元表示用ファイル出力手段42は、3次元オブジェクト生成手段41により生成された3次元オブジェクトを3次元グラフィックス記述言語を用いてフォーマット変換し、3次元表示用ファイルとして出力するための手段である。ここで、3次元グラフィックス記述言語は、例えば、3次元仮想空間を構築するためのVRML(Virtual Reality Modeling Language)を用いることができる。
【0038】
施工費用演算手段43は、単価データベース54に格納された単価データを参照し、建築物の施工費用を演算するための手段である。
修繕費用演算手段44は、修繕費用データベース55に格納された修繕費用データを参照し、経年変化後に行う修繕費用を演算するための手段である。
維持費用演算手段45は、維持費用データベース56に格納された維持費用データを参照し、建築物の維持費用を演算するための手段である。
【0039】
ユーザー認証手段46は、サーバー20へのアクセス権限の認証を行うための手段である。このユーザー認証手段46では、ユーザーがキーボード等の入力手段によりユーザーIDおよびパスワード等を入力すると、ユーザーデータベース57に格納されたユーザーデータと照合を行い、正規な操作権限を有するユーザーであると認証された場合にのみ、サーバー20へのアクセスを許可するようになっている。
【0040】
また、ユーザーデータベース57に格納されたユーザーデータに対して操作権限レベルを設定しておき、操作権限レベルに応じた操作のみを許可するように構成することが好ましい。このように操作権限レベルを設定することにより、操作権限レベルに対応してアクセスすることができるデータベースを制限したり、利用できる機能を制限することができる。
【0041】
なお、ユーザー認証手段46に対して入力を行う入力手段は、キーボード等に限られず、指紋読取装置、網膜パターン読取装置等を用いることができる。
【0042】
暗号化手段61は、サーバー20とクライアント30との間で送受信するデータを暗号化するための手段であり、復号化手段62は、サーバー20とクライアント30との間で暗号化して送受信されるデータを復号化するための手段である。
【0043】
暗号方式には、通信を行う両者が共通した鍵を使用する共通鍵暗号方式、公開鍵と秘密鍵を使用する公開鍵暗号方式、公開鍵と共通鍵の両者を使用するハイブリッド方式等がある。また、暗号化において利用されるアルゴリズムには、RSA、DES、Triple DES、AES、IDEA、FEAL、RC2/4/5等がある。実施例1の建築物の設計システム10では、これらの暗号方式およびアルゴリズムのうち、適宜の暗号方式およびアルゴリズムを利用することができる。
【0044】
次に、クライアント30に設置される手段について説明する。
表示手段80は、3次元表示用ファイル出力手段42により出力された3次元表示用ファイルを取得し、建築物の立体画像として表示するための手段であり、例えばラップトップコンピュータの液晶表示器等が表示手段80として機能する。
【0045】
修正指示手段90は、表示手段80により表示された立体画像に基づいて、建築物を構成する部材の修正を指示するための手段であり、例えばラップトップコンピュータのキーボードおよびポインティングデバイス等が修正指示手段90として機能する。
暗号化手段71および復号化手段72は、サーバー20に設置されたものと同様である。
【0046】
次に、実施例1の建築物の設計システム10を用いて建築物の設計処理を行う手順を説明する。
図3は、実施例1の建築物の設計システム10を用いて建築物の設計処理を行う手順を示すフローチャートである。なお、図3において、左側に示すステップはサーバー20側において行われる処理であり、右側に示すステップはクライアント30側において行われる処理である。
【0047】
実施例1の建築物の設計システム10を用いて建築物の設計処理を行うには、設計処理に先立って、インターネット等の電気通信回線100を介して、クライアント30とサーバー20とのリンクを確立させておく必要がある。
【0048】
建築物の設計処理では、図3に示すように、まず、クライアント30において、キーボード等によりユーザーIDおよびパスワードを入力すると(S1)、入力データがサーバー20へ送信され、ユーザー認証手段46によりユーザー認証が行われる(S2)。
【0049】
ここで、ユーザーが正規のアクセス権限を有しない場合には、次のステップに進むことができない。一方、ユーザーが正規のアクセス権限を有する場合には、建築物基礎データベース51に格納された基礎データを参照して3次元オブジェクトを生成するとともに(S3)、経年変化データベース52に格納された経年変化データを参照し、経年変化後の3次元オブジェクトを生成する(S4)。
続いて、生成された3次元オブジェクトを、3次元グラフィックス記述言語を用いてフォーマット変換し、3次元表示用ファイルとして出力する(S5)。
【0050】
続いて、施工費用演算手段43により、単価データベース54に格納された単価データを参照して建築物の施工費用を演算し(S6)、修繕費用演算手段44により、修繕費用データベース55に格納された修繕費用データを参照して経年変化後に行う修繕費用を演算し(S7)、維持費用演算手段45により、維持費用データベース56に格納された維持費用データを参照して建築物の維持費用を演算する(S8)。
【0051】
続いて、3次元表示用ファイルおよび費用表示用ファイルをクライアント30へ送信する(S9)。
クライアント30では、液晶表示器等の表示画面に、建築物の立体画像と諸費用を表示する(S10)。なお、建築物の立体画像は、施工直後および経年変化後のものである。これらの画像および諸費用を表示する際には、全てのデータを同一ウインドウ内に表示してもよいし、各データ毎に別ウインドウとして表示してもよい。
【0052】
建築物の立体画像および諸費用を見ながら、設計者の営業担当者と依頼者との打ち合わせが行われる。そして、表示された建築物の構成部材の修正を行うか否か、すなわち設計処理を完了させるか否かを判断し(S11)、設計変更を行う場合には、キーボード等の修正指示手段90により、建築物を構成する部材の修正を指示する(S12)。
【0053】
構成部材の修正指示を受けたサーバー20は、再度、前述した3次元オブジェクトの生成処理以降の処理(S3〜S9)を行う。この修正処理(S12、S3〜S9)は、依頼者が設計に満足するまで行われる。
依頼者が設計に満足した場合には、設計を完了し、最終的な3次元オブジェクトを3次元オブジェクトデータベース53に格納し(S13)、処理を終了する。
【0054】
上述した実施例1の建築物の設計システム10において、3次元オブジェクトの生成等の処理は、既存のWeb3Dオブジェクト生成システムを利用して行うことができる。このWeb3Dオブジェクト生成システムは、例えば特開2003−168132号公報等に詳しく記載されている。
【0055】
なお、上述した例では、依頼者のもとへ、クライアント30となるラップトップコンピュータを持参し、インターネット回線等の電気通信回線100を介してサーバー20に接続し、依頼者の意見を参考にしながら設計を行うという、クライアント/サーバーモデルを利用した建築物の設計システム10について詳述したが、ASP(Application Service Provider)が管理するサーバー20を利用するといった種々の形態にすることができ、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の建築物の設計システム10は、主に周辺環境との調和を図るため予め綿密な打ち合わせを行い、適切な設計および施工を行う必要がある電力事業者等が管理する大規模建築物の設計に利用できるが、一般的な建築物についても、設計者の所在地と依頼者の所在地が離れており、設計者が依頼者のもとへ出向いて建築物の設計および施工の打ち合わせを行う場合に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1の建築物の設計システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】実施例1の建築物の設計システムの詳細構成を示すブロック図である。
【図3】実施例1の建築物の設計システムを用いて建築物の設計処理を行う手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
10 設計システム
20 サーバー
30 クライアント
40 サーバーコンピューター
41 3次元オブジェクト生成手段
42 3次元表示用ファイル出力手段
43 施工費用演算手段
44 修繕費用演算手段
45 維持費用演算手段
46 ユーザー認証手段
50 データベースサーバー
51 建築物基礎データベース
52 経年変化データベース
53 3次元オブジェクトデータベース
54 単価データベース
55 修繕費用データベース
56 維持費用データベース
57 ユーザーデータベース
61,71 暗号化手段
62,72 復号化手段
80 表示手段
90 修正指示手段
100 電気通信回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライアント/サーバーモデルを利用して建築物の設計を行うシステムであって、
建築物を構成する部材の形状、色彩、大きさ等に関する基礎データを格納した建築物基礎データベース(51)と、
建築物を構成する部材の経年変化データを格納した経年変化データベース(52)と、
前記建築物基礎データベース(51)に格納された基礎データを参照し、3次元オブジェクトを生成する3次元オブジェクト生成手段(41)と、
前記3次元オブジェクト生成手段(41)により生成された3次元オブジェクトを3次元グラフィックス記述言語を用いてフォーマット変換し、3次元表示用ファイルとして出力する3次元表示用ファイル出力手段(42)と、
前記3次元表示用ファイル出力手段(42)により出力された3次元表示用ファイルを取得し、建築物の立体画像として表示する表示手段(80)と、
前記表示手段(80)により表示された立体画像に基づいて、建築物を構成する部材の修正を指示する修正指示手段(90)と、を備え、
前記建築物基礎データベース(51)、前記経年変化データベース(52)、前記3次元オブジェクト生成手段(41)、および前記3次元表示用ファイル出力手段(42)は、サーバー(20)側に備えられるとともに、前記表示手段(80)、および前記修正指示手段(90)は、クライアント(30)側に備えられ、
前記サーバー(20)と前記クライアント(30)とは電気通信回線(100)を介して接続され、
前記3次元オブジェクト生成手段(41)は、前記修正指示手段(90)による修正指示に基づいて前記建築物基礎データベース(51)に格納された基礎データを参照し、前記3次元オブジェクトを修正して修正後の3次元オブジェクトを生成可能であるとともに、前記経年変化データベース(52)に格納された経年変化データを参照し、経年変化後の3次元オブジェクトを生成する、ことを特徴とする建築物の設計システム。
【請求項2】
前記3次元オブジェクト生成手段(41)は、設計対象となる建築物に対応して複数種類の3次元オブジェクトを生成する、ことを特徴とする請求項1の建築物の設計システム。
【請求項3】
前記3次元オブジェクト生成手段(41)により生成された3次元オブジェクトを格納する3次元オブジェクトデータベース(53)を備えた、ことを特徴とする請求項1又は2の建築物の設計システム。
【請求項4】
建築物を構成する部材の単価データを格納した単価データベース(54)と、
前記単価データベース(54)に格納された単価データを参照し、建築物の施工費用を演算する施工費用演算手段(43)と、を備えたことを特徴とする請求項1、2又は3の建築物の設計システム。
【請求項5】
建築物を構成する部材の修繕費用データを格納した修繕費用データベース(55)と、
前記修繕費用データベース(55)に格納された修繕費用データを参照し、経年変化後に行う修繕費用を演算する修繕費用演算手段(44)と、を備えたことを特徴とする請求項1、2、3又は4の建築物の設計システム。
【請求項6】
建築物を構成する部材の維持費用データを格納した維持費用データベース(56)と、
前記維持費用データベース(56)に格納された維持費用データを参照し、建築物の維持費用を演算する維持費用演算手段(45)と、を備えたことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5の建築物の設計システム。
【請求項7】
前記サーバー(20)は、アクセス権限の認証を行うユーザー認証手段(46)を備えたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又6の建築物の設計システム。
【請求項8】
前記サーバー(20)および前記クライアント(30)は、それぞれデータの暗号化手段(61,71)および復号化手段(62,72)を備えたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又7の建築物の設計システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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