説明

建築物用基礎材、建築物用基礎セット、建築物の基礎構造および建築物の基礎施工方法

【課題】作業効率が良く、人件費を削減することができる建築物用基礎材、建築物の基礎構造および建築物の基礎施工方法を提供する。
【解決手段】建築物用基礎材11が、底部21と1対の側壁部22とを有している。各側壁部22は、互いに間隔をあけて対向し、底部21で接続されて内側に基礎溝23を形成している。各側壁部22は、それぞれ上端部に、基礎溝23に沿って型枠板1を載せるための設置部22aと、設置部22aに沿って設置部22aの上の型枠板1の下部側面を支持するための突条22bと、突条22bを挟んで設置部22aと反対側の上端部に、突条22bに沿って設置部22aより低い段差部22cとを有している。接続部材12が、2つの建築物用基礎材11にまたがって各突条22bと嵌合し、各設置部22aおよび各段差部22cの上に取り付け可能な細長い凹凸部を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物用基礎材、建築物用基礎セット、建築物の基礎構造および建築物の基礎施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建物の布基礎の施工方法は、一般に、地盤面を凍結深度まで掘削した後、砕石の敷設、捨てコンクリートの打設、鉄筋の敷設、型枠の設置、ベースコンクリートの打設、布基礎の型枠の設置、布基礎コンクリートの打設、型枠の脱却、埋め戻しの各施工工程から成っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−105777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の布基礎の施工方法では、捨てコンクリート、ベースコンクリートおよび布基礎の打設後、コンクリートが固まるまで待たなければならず、掘削した地盤面を埋め戻すまでに日数がかかり、作業効率が悪いという課題があった。また、コンクリート養生中の人件費も嵩むという課題もあった。一般的には、コンクリートの打設回数が3回で、地盤面の埋め戻すまでに約2週間程度かかっている。また、埋め戻すまでの間に、例えば、冬場の工事では、掘削した地盤面が凍結して基礎の耐力に影響を与えたり、夏場の工事では、雨水が浸入したりしやすく作業効率が悪くなる。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、作業効率が良く、人件費を削減することができる建築物用基礎材、建築物用基礎セット、建築物の基礎構造および建築物の基礎施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る建築物用基礎材は、型枠板の内側にコンクリートを打設して建物の基礎を形成するための建築物用基礎材であって、底部と1対の側壁部とを有し、各側壁部は、互いに間隔をあけて対向し前記底部で接続されて内側に基礎溝を形成し、それぞれ上端部に、前記基礎溝に沿って型枠板を載せるための設置部と、前記設置部に沿って前記設置部の上の型枠板の下部側面を支持するための突条とを有することを、特徴とする。
【0007】
本発明に係る建築物用基礎材は、根切した地盤の上に直接設置して使用される。このため、砕石、捨てコンクリートおよびベースコンクリートが不要であり、捨てコンクリートやベースコンクリートが固まるまで待つ場合に比べて、基礎施工の作業が容易で、作業効率が良い。また、捨てコンクリートやベースコンクリートが固まるまでの待機時間を省くことができるため、その間の人件費を削減することができる。1対の型枠板を互いに対向させて、それぞれ各側壁部の突条で下部側面を支持させて設置部の上に立て、基礎溝および各型枠板の内側にコンクリートを打設することにより、コンクリート材を立ち上げて布基礎を形成することができる。また、型枠板を一方の側壁部の突条で下部側面を支持させて設置部の上に立て、基礎溝から連続して他方の側壁部を越えてコンクリートを打設することにより、ベタ基礎や逆スラブ基礎を形成することもできる。
【0008】
なお、建築物用基礎材は、発泡スチロールやポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂などの合成樹脂から成ることが好ましい。この場合、軽量であるため、砕石、捨てコンクリート、ベースコンクリートなどの材料を使用する場合に比べて、地盤にかかる荷重を低減することができ、地盤の沈下を抑えることができる。また、軽量で運搬が容易である。建築物用基礎材は、廃棄プラスチックなどを押出成型または射出成型して形成されていてもよい。
【0009】
本発明に係る建築物用基礎セットは、本発明に係る建築物用基礎材と接続部材とをそれぞれ複数有し、各建築物用基礎材は各側壁部の前記突条を挟んで前記設置部と反対側の前記上端部に前記突条に沿って前記設置部より低い段差部を有し、各接続部材は2つの前記建築物用基礎材にまたがって各突条と嵌合し各設置部および各段差部の上に取り付け可能な細長い凹凸部を有することを、特徴とする。
【0010】
本発明に係る建築物用基礎セットは、2つの建築物用基礎材にまたがって凹凸部が各側壁部の各突条と嵌合し、各設置部および各段差部の上に各接続部材が取り付けられることにより、2つの建築物用基礎材を接続して容易に一体化させることができる。また、これにより、基礎構造をより強固にすることができる。各建築物用基礎材の段差部が設置部より低いため、各接続部材を取り付けたとき、各建築物用基礎材の外面側から土圧がかかっても、各接続部材が内面側に倒れるのを防止することができる。なお、各接続部材は、各建築物用基礎材と同じ材質から成ることが好ましい。
【0011】
本発明に係る建築物の基礎構造は、本発明に係る建築物用基礎材と、前記建築物用基礎材の前記基礎溝の内部から各側壁部の上端部より上方に立ち上がるよう設けられたコンクリート材とを有することを、特徴とする。
【0012】
本発明に係る建築物の基礎構造は、布基礎であり、根切した地盤の上に建築物用基礎材が直接設置されて形成されている。このため、砕石や捨てコンクリート、ベースコンクリートが不要であり、捨てコンクリートやベースコンクリートが固まるまで待つ場合に比べて、施工作業が容易で、作業効率が良い。1対の型枠板を互いに対向させて、それぞれ各側壁部の突条で下部側面を支持させて設置部の上に立て、基礎溝および型枠板の内側にコンクリートを打設することにより、基礎溝の内部から各側壁部の上端部より上方に立ち上がるようコンクリート材を設けることができる。
【0013】
本発明に係る建築物の基礎構造は、本発明に係る建築物用基礎材と敷設材とコンクリート材とを有し、前記建築物用基礎材は前記底部が地盤の上に設置されて土地を包囲するよう配置され、前記敷設材は前記建築用基礎材で包囲される内側の土地を覆うよう敷設され、前記コンクリート材は前記基礎溝の内部に充填され連続して前記建築物用基礎材の内側の前記側壁部を越えて前記敷設材の上を覆うよう設けられていてもよい。この場合、ベタ基礎や逆スラブ基礎を形成することができる。敷設材は、砕石や合成樹脂板など、いかなるものから成っていてもよい。敷設材が合成樹脂板から成るときには、砕石から成る場合に比べて、地盤にかかる荷重を低減することができ、地盤の沈下を抑えることができる。
【0014】
本発明に係る建築物の基礎構造は、本発明に係る建築物用基礎セットと敷設材とコンクリート材とを有し、各建築物用基礎材は前記底部が地盤の上に設置されて土地を包囲するよう連続して配置され、各接続部材は前記凹凸部が2つの連続する建築物用基礎材の内側となる各側壁部の各突条と嵌合し各設置部および各段差部の上に連続して取り付けられて各建築物用基礎材を接続しており、前記敷設材は各建築用基礎材で包囲される内側の土地を覆うよう敷設され、前記コンクリート材は各建築用基礎材の前記基礎溝の内部に充填され連続して前記接続部材を越えて前記敷設材の上を覆うよう設けられていてもよい。この場合も、ベタ基礎や逆スラブ基礎を形成することができる。各接続部材により、2つの連続する各建築物用基礎材を接続して容易に一体化させることができ、より強固な構造にすることができる。
【0015】
本発明に係る建築物の基礎施工方法は、地盤を根切して根切り底に本発明に係る建築物用基礎材の前記底部を設置し、1対の型枠板を互いに対向させてそれぞれ前記建築物用基礎材の各側壁部の前記突条で下部側面を支持させて前記設置部の上に立てることにより閉じた形状に配置し、前記基礎溝および各型枠板の内側にコンクリートを打設することを、特徴とする。
【0016】
本発明に係る建築物の基礎施工方法では、根切した地盤の根切り底に建築物用基礎材を直接設置するため、砕石や捨てコンクリート、ベースコンクリートが不要であり、捨てコンクリートやベースコンクリートが固まるまで待つ場合に比べて、作業が容易で、作業効率が良い。根切り底に建築物用基礎材を設置した後、根切を基準地盤面まで埋め戻すことにより、根切した地盤面を保護することができる。このため、凍害や雨水の浸入などを容易に防ぐことができる。1対の型枠板を互いに対向させてそれぞれ建築物用基礎材の各側壁部の突条で下部側面を支持させて設置部の上に立てることにより閉じた形状に配置し、基礎溝および各型枠板の内側にコンクリートを打設するため、コンクリート材を立ち上げて布基礎を形成することができる。
【0017】
本発明に係る建築物の基礎施工方法は、土地を包囲するよう地盤を根切し、根切り底に本発明に係る建築物用基礎材の複数を、前記底部を設置し連続させて閉じた形状に配置し、敷設材を各建築用基礎材で包囲される内側の土地を覆うよう敷設し、型枠板を各建築物用基礎材の外側となる前記側壁部の前記突条で下部側面を支持させて前記設置部の上に立てることにより閉じた形状に配置し、コンクリートを各建築物用基礎材の前記基礎溝および前記型枠板で包囲される内側に充填し連続して各建築物用基礎材の内側の前記側壁部を越えて前記敷設材の上を覆うよう打設してもよい。この場合、ベタ基礎や逆スラブ基礎を形成することができる。敷設材は、砕石や合成樹脂板など、いかなるものから成っていてもよい。敷設材が合成樹脂板から成るときには、砕石から成る場合に比べて、地盤にかかる荷重を低減することができ、地盤の沈下を抑えることができる。
【0018】
本発明に係る建築物の基礎施工方法は、土地を包囲するよう地盤を根切し、根切り底に本発明に係る建築物用基礎セットの各建築物用基礎材を、前記底部を設置し連続させて閉じた形状に配置し、前記建築物用基礎セットの各接続部材で、前記凹凸部を2つの連続する建築物用基礎材の内側となる各側壁部の各突条と嵌合させて各設置部および各段差部の上に連続して取り付けることにより各建築物用基礎材を接続し、敷設材を前記建築用基礎セットで包囲される内側の土地を覆うよう敷設し、型枠板を各建築物用基礎材の外側となる前記側壁部の前記突条で下部側面を支持させて前記設置部の上に立てることにより閉じた形状に配置し、コンクリートを各建築物用基礎材の前記基礎溝および前記型枠板で包囲される内側に充填し連続して各接続部材を越えて前記敷設材の上を覆うよう打設してもよい。この場合も、ベタ基礎や逆スラブ基礎を形成することができる。各接続部材により、2つの連続する各建築物用基礎材を接続して容易に一体化させることができ、より強固な基礎構造にすることができる。
なお、本発明に係る建築物基礎構造は、各種建築物の基礎として用いることができ、その建築物基礎構造の上には、通常の施工方法で建築物を施工することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、作業効率が良く、人件費を削減することができる建築物用基礎材、建築物用基礎セット、建築物の基礎構造および建築物の基礎施工方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図5は、本発明の実施の形態の建築物用基礎材、建築物用基礎セット、建築物の基礎構造および建築物の基礎施工方法を示している。
図1および図2に示すように、建築物の基礎構造は、逆スラブ基礎から成り、建築物用基礎材11と接続部材12と敷設材13とコンクリート材14とを有している。
【0021】
図1(a)に示すように、建築物用基礎材11は、合成樹脂のビーズ法ポリスチレンフォームから成り、凹形状の同一の横断面を有して細長く形成されている。建築物用基礎材11は、底部21と1対の側壁部22とを一体的に有している。各側壁部22は、互いに間隔をあけて対向し、底部21で接続されて内側に基礎溝23を形成している。各側壁部22は、同じ高さを有している。建築物用基礎材11は、底面11aが平坦に形成され、外面11bが底面11aに対して垂直に形成されている。建築物用基礎材11は、各側壁部22の上端部に、長さ方向に沿って設置部22aと突条22bと段差部22cとを有している。
【0022】
設置部22aは、基礎溝23に沿って型枠板1を立てて載せるよう、各側壁部22の内面側に設けられている。突条22bは、設置部22aに沿って各側壁部22の幅方向の中央部に設けられている。突条22bは、底面11aに対して垂直方向に突出し、上端が底面11aと平行になっている。突条22bは、設置部22aに型枠板1を立てて載せたとき、その型枠板1の下部側面に当たって下部側面を支持するようになっている。段差部22cは、各側壁部の突条22bを挟んで設置部22aと反対側、すなわち各側壁部22の突条22bより外面11b側に、突条22bに沿って設けられている。段差部22cは、設置部22aより低く形成されている。
【0023】
図2に示すように、建築物用基礎材11は、建築予定の建物の外周に沿って土地を包囲するよう根切した地盤Gの根切り底に底部21を設置し、連続させて閉じた形状に複数配置されている。各建築物用基礎材11は、底面11aを下にして、底面11aおよび突条22bの上端が水平になり、外面11bが鉛直になり、基礎溝23が隣接する各建築物用基礎材11の基礎溝23と連続するよう設置されている。なお、具体的な一例では、各建築物用基礎材11は、圧縮強度が約80kN/平方メートルである。
【0024】
図1(b)に示すように、接続部材12は、建築物用基礎材11と同じ材質のビーズ法ポリスチレンフォームから成り、下方に向かって開口した凹形状の同一の横断面を有して細長く形成されている。接続部材12は、建築物用基礎材11と同じ長さと、建築物用基礎材11の各側壁部22の厚さと同じ幅を有し、上面12aが平坦に形成されている。接続部材12は、下部に、その長さ方向に沿って嵌合溝24と低突部25と高突部26とを有している。接続部材12は、2つの建築物用基礎材11にまたがって、各側壁部22の上端部に取付可能になっている。なお、接続部材12は、嵌合溝24、低突部25および高突部26により、細長い凹凸部が形成されている。
【0025】
嵌合溝24は、建築物用基礎材11の突条22bの幅と同じ幅、突条22bの高さと同じ深さを有し、突条22bに嵌合可能になっている。低突部25および高突部26は、嵌合溝24を挟んで設けられ、高突部26が低突部25より下方に突出している。低突部25は、設置部22aの突条22bからの高低差と同じ突出量、設置部22aの幅と同じ幅を有している。高突部26は、段差部22cの突条22bからの高低差と同じ突出量、段差部22cの幅と同じ幅を有している。
【0026】
図2に示すように、接続部材12は、複数から成り、2つの連続する建築物用基礎材11の内側となる各側壁部22の上端部に連続して取り付けられて各建築物用基礎材11を接続している。各接続部材12は、2つの連続する建築物用基礎材11の各突条22bに各嵌合溝24を嵌合させて、各設置部22aの上に各低突部25が取り付けられ、各段差部22cの上に各高突部26が取り付けられている。これにより、各接続部材12は、各側壁部22の上端部に隙間なくぴったりと取り付けられ、各接続部材12の上面12aが水平になっている。
【0027】
図2に示すように、敷設材13は、ビーズ法ポリスチレンフォーム製の合成樹脂板から成っている。敷設材13は、縁部13aが各接続部材12の上面12aに載せられて、各建築物用基礎材11で包囲される内側の土地を覆うよう敷設されている。
【0028】
図2に示すように、コンクリート材14は、各建築物用基礎材11の基礎溝23の内部に充填され、連続して接続部材12を越えて敷設材13の上を覆うよう設けられている。コンクリート材14は、内部に鉄筋27が配置されて鉄筋コンクリートになっている。
【0029】
建築物の基礎構造は、以下に示す建築物の基礎施工方法により施工される。まず、建築予定の建物の外周に沿って土地を包囲するよう地盤Gを根切し、根切り底に十分な転圧を行い、各建築物用基礎材11を、根切り底に底部21を設置し、連続させて閉じた形状に配置する。このとき、各建築物用基礎材11は、底面11aを下にして、底面11aおよび突条22bの上端が水平になり、外面11bが鉛直になるよう調整砂を使用して設置し、さらに基礎溝23が隣接する建築物用基礎材11の基礎溝23と連続するよう設置する。設置後、根切を基準地盤面まで埋め戻す。2つの連続する建築物用基礎材11の内側となる各側壁部22の上端部に、各接続部材12を連続して取り付けて各建築物用基礎材11を接続する。このとき、各突条22bに各嵌合溝24を嵌合させて、各設置部22aの上に各低突部25を取り付け、各段差部22cの上に各高突部26を取り付ける。敷設材13を、縁部13aを接続部材12の上面12aに載せて、建築物用基礎材11で包囲される内側の土地を覆うよう敷設する。
【0030】
型枠板1を、設置部22aの上に立てることにより閉じた形状に配置する。このとき、各建築物用基礎材11の外側となる側壁部22の突条22bを型枠板1の下部側面に当て、突条22bにより型枠板1の下部側面を支持させ、型枠板1の上部を一般に用いられる支持具で支持させる。なお、支持具は、型枠板1の上部を斜め下方に引っ張って型枠板1を鉛直に保持するためのサポート材と、サポート材を地盤Gに固定する支持杭とから成っている。鉄筋27を、各建築物用基礎材11の基礎溝23および型枠材1で包囲される内側に配置し、さらに連続させて各接続部材12および敷設材13の上に配置する。コンクリートを、建築物用基礎材11の基礎溝23および型枠材1で包囲される内側に充填し、連続して各接続部材12を越えて敷設材13の上を覆うよう打設する。コンクリートが固まった後、型枠板1を取り外す。
【0031】
次に、作用について説明する。
建築物の基礎構造は、根切した地盤Gの根切り底に、建築物用基礎材11の底部21が直接設置される。このため、砕石、捨てコンクリートおよびベースコンクリートが不要であり、捨てコンクリートやベースコンクリートが固まるまで待つ場合に比べて、施工作業が容易で、作業効率が良い。また、捨てコンクリートやベースコンクリートが固まるまでの待機時間を省くことができるため、その間の人件費を削減することができる。また、砕石、捨てコンクリート、ベースコンクリートなどの資材の種類を減らすことができるため、管理費を低減することもできる。
【0032】
根切り底に各建築物用基礎材11を設置した後、根切を基準地盤面まで埋め戻すため、根切した地盤面を保護することができる。このため、凍害や雨水の浸入などを容易に防ぐことができる。各建築物用基礎材11、接続部材12および敷設材13が合成樹脂から成るため、砕石、捨てコンクリート、ベースコンクリートなどの材料を使用する場合に比べて、地盤にかかる荷重を低減することができ、地盤の沈下を抑えることができる。また、軽量で運搬が容易である。
【0033】
従来の逆スラブ基礎では、基礎端部のコンクリート量が多いため重量が大きく、また、基礎端部と中央部との境界の地盤の傾斜部分での転圧が難しいため、その境界付近でクラックが発生しやすい。また、地盤の傾斜部分で、基礎の品質を均一化するのが困難である。これに対し、図2に示す建築物の基礎構造は、施工時に地盤に傾斜部分が発生しないため、クラックの発生を防止することができる。また、品質が統一された建築物用基礎材11を使用することにより、基礎の品質を、容易に均一化することができる。
【0034】
各接続部材12により、2つの建築物用基礎材11を接続して容易に一体化させることができ、より強固な構造にすることができる。各建築物用基礎材11の段差部22cが設置部22aより低いため、各接続部材12を取り付けたとき、各建築物用基礎材11の外面11b側から土圧がかかっても、各接続部材12が基礎溝23の側に倒れるのを防止することができる。各接続部材12の上面12aが水平になっているため、縁部13aをその上面12aに載せることにより、敷設材13を水平に敷設しやすい。
【0035】
建築物の基礎構造は、コンクリート材14と地盤Gとの設置部分が建築物用基礎材11および敷設材13で完全に分離されているため、建築物用基礎材11および敷設材13が、地震や車両通行による振動に対しクッションの役割を果たすことによる免震効果を期待することができる。さらに、浮力のある建築物用基礎材11および敷設材13により、建物全体を面で支えているため、海に浮かぶ船のような構造になり、免震や沈下防止等の効果を期待することができる。
【0036】
なお、図3に示すように、建築物の基礎構造は、敷設材13の縁部13aが接続部材12の上面12aに載せられておらず、敷設材13の周面が接続部材12の側面に接するよう、敷設材13が敷設されていてもよい。この構成でも、逆スラブ基礎やベタ基礎を形成することができる。
【0037】
また、図4に示すように、接続部材12を有さず、各建築物用基礎材11の側壁部22の突条22bに敷設材13の縁部が接するよう、敷設材13が敷設されていてもよい。図3および図4に示すように、接続部材12を有さず、敷設材13が縁部13aの下面に、各建築物用基礎材11の各側壁部22の各突条22bと嵌合し各設置部22aおよび各段差部22cの上に取り付け可能な細長い凹凸部31を有し、各建築物用基礎材11の内側となる各側壁部22の上端部に縁部13aが載せられて、敷設材13が敷設されていてもよい。このとき、敷設材13の凹凸部31が、各建築物用基礎材11の各側壁部22の各突条22bと嵌合し、敷設材13が各設置部22aおよび各段差部22cの上に取り付けられる。これらの構成でも、逆スラブ基礎やベタ基礎を形成することができる。接続部材12を有していないため、型枠板1および鉄筋27を配置した後、コンクリートを基礎溝23および型枠板1で包囲される内側に充填し、連続して各建築物用基礎材11の内側の側壁部22を越えて敷設材13を覆うよう打設することにより、容易に施工することができる。
【0038】
なお、敷設材13は、径40mm以下のクラッシャーランから成っていてもよい。この場合、各建築物用基礎材11の各側壁部22の上端部に載せるとき、その形状に合わせて敷設材13を容易に敷設することができる。
【0039】
図5に示すように、建築物の基礎構造は、布基礎から成り、接続部材12および敷設材13を有さず、建築物用基礎材11の基礎溝23の内部から各側壁部22の上端部より上方に立ち上がるようコンクリート材14が設けられていてもよい。この構成は、1対の型枠板1を互いに対向させて、それぞれ各側壁部22の突条22bを下部側面に当て、突条22bにより下部側面を支持させ、上部を一般に用いられる支持具2で支持させて、設置部22aの上に立てることにより閉じた形状に配置し、基礎溝23および各型枠板1の内側にコンクリートを打設することにより、容易に施工することができる。なお、図6に示すように、支持具2は、互いの間隔を基礎溝23の幅で保持するために1対の型枠板1の上部に架け渡される幅止め2aと、幅止め2aを斜め下方に引っ張って各型枠板1を鉛直に保持するためのサポート材2bと、サポート材2bを地盤Gに固定する支持杭2cとから成っている。
【0040】
このように、建築物用基礎材11は、従来の布基礎や逆スラブ基礎に容易に応用可能な形状を有している。また、布基礎の倒れや沈下を防止することができ、従来の基礎のベースコンクリート部分の役割を果たすこともできる。さらに、布基礎を形成するための型枠材としても使用することができる。
【0041】
建築物用基礎材11は、図1に示す一例では、1メートルあたりの重量が約5kgである。これに対して、従来の布基礎の場合、例えば、厚さ約150mmの砕石、厚さ約50mmの捨てコンクリート、およびベースコンクリートのベースに積載される埋め戻し土の、1メートルあたりの重量が約500kg程度になる。このように、建築物用基礎材11は、地盤面にかかる荷重を、従来の布基礎に比べて約100分の1程度にまで低減することができる。
【0042】
建築物用基礎材11は、断熱性のある合成樹脂から成るため、外断熱工法にも使用することができる。また、基礎溝23の幅を調整することにより、鉄筋コンクリート構造や鉄骨構造などの地中梁の施工にも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態の(a)建築物用基礎材を示す斜視図、(b)建築物用基礎セットの接続部材を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態の建築物の基礎構造を示す断面図である。
【図3】図2に示す建築物の基礎構造の第1の変形例を示す断面図である。
【図4】図2に示す建築物の基礎構造の第2の変形例を示す断面図である。
【図5】図2に示す建築物の基礎構造の布基礎の変形例を示す断面図である。
【図6】図5に示す建築物の基礎構造の布基礎の施工方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 型枠板
11 建築物用基礎材
12 接続部材
13 敷設材
14 コンクリート材
21 底部
22 側壁部
22a 設置部
22b 突条
22c 段差部
23 基礎溝
24 嵌合溝
25 低突部
26 高突部
27 鉄筋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠板の内側にコンクリートを打設して建物の基礎を形成するための建築物用基礎材であって、
底部と1対の側壁部とを有し、
各側壁部は、互いに間隔をあけて対向し前記底部で接続されて内側に基礎溝を形成し、それぞれ上端部に、前記基礎溝に沿って型枠板を載せるための設置部と、前記設置部に沿って前記設置部の上の型枠板の下部側面を支持するための突条とを有することを、
特徴とする建築物用基礎材。
【請求項2】
請求項1記載の建築物用基礎材と接続部材とをそれぞれ複数有し、
各建築物用基礎材は各側壁部の前記突条を挟んで前記設置部と反対側の前記上端部に前記突条に沿って前記設置部より低い段差部を有し、
各接続部材は2つの前記建築物用基礎材にまたがって各突条と嵌合し各設置部および各段差部の上に取り付け可能な細長い凹凸部を有することを、
特徴とする建築物用基礎セット。
【請求項3】
請求項1記載の建築物用基礎材と、
前記建築物用基礎材の前記基礎溝の内部から各側壁部の上端部より上方に立ち上がるよう設けられたコンクリート材とを有することを、
特徴とする建築物の基礎構造。
【請求項4】
請求項1記載の建築物用基礎材と敷設材とコンクリート材とを有し、
前記建築物用基礎材は前記底部が地盤の上に設置されて土地を包囲するよう配置され、
前記敷設材は前記建築用基礎材で包囲される内側の土地を覆うよう敷設され、
前記コンクリート材は前記基礎溝の内部に充填され連続して前記建築物用基礎材の内側の前記側壁部を越えて前記敷設材の上を覆うよう設けられていることを、
特徴とする建築物の基礎構造。
【請求項5】
請求項2記載の建築物用基礎セットと敷設材とコンクリート材とを有し、
各建築物用基礎材は前記底部が地盤の上に設置されて土地を包囲するよう連続して配置され、
各接続部材は前記凹凸部が2つの連続する建築物用基礎材の内側となる各側壁部の各突条と嵌合し各設置部および各段差部の上に連続して取り付けられて各建築物用基礎材を接続しており、
前記敷設材は各建築用基礎材で包囲される内側の土地を覆うよう敷設され、
前記コンクリート材は各建築用基礎材の前記基礎溝の内部に充填され連続して前記接続部材を越えて前記敷設材の上を覆うよう設けられていることを、
特徴とする建築物の基礎構造。
【請求項6】
地盤を根切して根切り底に請求項1記載の建築物用基礎材の前記底部を設置し、
1対の型枠板を互いに対向させてそれぞれ前記建築物用基礎材の各側壁部の前記突条で下部側面を支持させて前記設置部の上に立てることにより閉じた形状に配置し、
前記基礎溝および各型枠板の内側にコンクリートを打設することを、
特徴とする建築物の基礎施工方法。
【請求項7】
土地を包囲するよう地盤を根切し、根切り底に請求項1記載の建築物用基礎材の複数を、前記底部を設置し連続させて閉じた形状に配置し、
敷設材を各建築用基礎材で包囲される内側の土地を覆うよう敷設し、
型枠板を各建築物用基礎材の外側となる前記側壁部の前記突条で下部側面を支持させて前記設置部の上に立てることにより閉じた形状に配置し、
コンクリートを各建築物用基礎材の前記基礎溝および前記型枠板で包囲される内側に充填し連続して各建築物用基礎材の内側の前記側壁部を越えて前記敷設材の上を覆うよう打設することを、
特徴とする建築物の基礎施工方法。
【請求項8】
土地を包囲するよう地盤を根切し、根切り底に請求項2記載の建築物用基礎セットの各建築物用基礎材を、前記底部を設置し連続させて閉じた形状に配置し、
前記建築物用基礎セットの各接続部材で、前記凹凸部を2つの連続する建築物用基礎材の内側となる各側壁部の各突条と嵌合させて各設置部および各段差部の上に連続して取り付けることにより各建築物用基礎材を接続し、
敷設材を前記建築用基礎セットで包囲される内側の土地を覆うよう敷設し、
型枠板を各建築物用基礎材の外側となる前記側壁部の前記突条で下部側面を支持させて前記設置部の上に立てることにより閉じた形状に配置し、
コンクリートを各建築物用基礎材の前記基礎溝および前記型枠板で包囲される内側に充填し連続して各接続部材を越えて前記敷設材の上を覆うよう打設することを、
特徴とする建築物の基礎施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−255156(P2007−255156A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84202(P2006−84202)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(599026418)
【Fターム(参考)】