説明

建築物

【課題】開口部に天井や床からの出っ張りとなる構造部材を設けることなく必要強度が得られるようにして開放的な居住空間を得る。
【解決手段】建築物の開口部における梁1の幅は、柱2の幅よりも大きくしてスラブ方向に延びており、梁1がバルコニー5の床面を構成している。梁成は、居室の天井面と床面の距離とほぼ等しくしてあり、居室内からは開口部4に向って突出物がなく、大きな開口が形成され、開放感のある居室が得られる。また、バルコニー5には、硝子手摺や縦子手摺を採用することができるので、居室内からの視界が開けており、開放的な居室とすることができると共に、バルコニー5の奥行きを深いものとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄筋コンクリート構造、または、鉄骨鉄筋コンクリート構造並びに鉄骨造の建築物において、開口部に突出する部材を設けることなく、採光、換気に優れ、居住者に開放感を与えるようにした建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート構造や鉄骨鉄筋コンクリート構造、並びに鉄骨造の建築物は柱と梁とからなるラーメン構造が一般的であるが、必要強度を得るために梁成が比較的に大きくしてあり、梁が室内側に突出し、開口の高さが制限されて開口部を大きく取ることができず、開放感に欠けると共に採光、換気が十分でないという問題がある。
【0003】
このような問題を解決するため、図4に示す逆梁構造やフラットスラブ構造が提案されている。逆梁工法は、ハイサッシを採用することができ、採光面を大きく取ることができるが、梁がバルコニーの外側に配置される場合は、バルコニーの外柵として利用されるため、外柵が鉄筋コンクリートのフェンスとなって視界を遮り、それに構造部材であるため厚さがあり、バルコニーの奥行きを狭くしている。
フラットスラブは、水平力をも負担する梁兼用のものであり、床全面がかなり厚いものとならざるを得ず、コストがかかるという問題がある。
【0004】
居住空間に突出する部材を設けずに美観を高め、間取りの自由度を高めたものとして特許文献1(特公平4−28064号公報)には、ラーメン構造のコアとそれを囲むショートスパンのラーメン構造によって柱のないフラットな空間を得たり、また、特許文献2(特開2002−121924号公報)には、集合住宅建物として、建物中心部に耐震壁からなる高剛性のコア補強構造体を設け、補強構造体の周囲に跳ね出しスラブを設け、スラブを支持させるものが提案されているが、いずれにしても、建物外周部にはスラブを受ける梁を必要とするので、大きな開口を得ることができなかった。(図5参照)
【特許文献1】特公平4−28064号公報
【特許文献2】特開2002−121924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、開口部に天井や床からの出っ張りとなる大きな断面の構造部材を設けることなく構造物としての必要強度が得られるようにすると共に、圧迫感がなく、開放的な居住空間を構築できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
柱と梁からなる構造の建築物において、開口部の梁の幅を柱の幅より大きくすると共に、開口部の梁に交差する梁の幅を柱の幅以下とすることにより、階高を高くすること無く開口部の大きな開放的な居室が得られるようにしたものである。
また、この梁をバルコニーの床面とすることにより、硝子手摺等を採用できるようにし、更に開放感を与えるものとしたものである。
更に、構造物の強度を複数階で負担するものとし、1階おきにその階の梁成を上下階の梁成より小さなものとし、居住空間においては必要な天井高を確保しつつ建築物の全高を抑え、コストの低減を図ったものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施例に基づいて本発明を説明する。
実施例1
図1に示すように、本発明の建築物は、鉄筋コンクリート構造または鉄骨鉄筋コンクリート構造であり、バルコニー5を設けたタイプである。この実施例は、15階建て程度までを想定したものであるが、それを超える階数の建築物にも適用可能である。
【0008】
柱2は、断面が1000(b)×1000(mm)であり、スパンが6〜8mである。開口部4の梁1は、断面が1400(B)×600(mm)であり、幅が柱の幅より大きくして居室側に延びており、バルコニー5の床面を構成するようにしてある。また、梁成を天井面と床面の間に納まるようにしてあるので、居室内からは開口部4に向って突出物がなく、従来に比較して大きな開口が得られ、開放感のある居室とすることができる。
図2に示すように、開口部4の梁に交差する梁11は、600×900(mm)であり、スラブ3の厚さは通常の居住用建築物と変わらず、200〜250(mm)である。
【0009】
開口部4の外側に設けたバルコニー5の床面は、梁1によって構成されており、梁1の上面には雨水等を排水するため内側に向う傾斜面が形成してある。傾斜の終端には排水溝51が設けてある。
本発明によれば、逆梁を採用した場合と同様に高さ2400mm程度のハイサッシを開口部4に設置することができる。また、逆梁をバルコニー部に設けた場合は、梁が視界を遮ることとなるが、本発明では、順梁とした場合と同様に、硝子手摺や縦子手摺を採用することができるので視界を遮るものがなく開けており、開放的な居室とすることができると共に、バルコニーの奥行きを深いものとすることができる。
【0010】
実施例2
図3に示す例は、バルコニーを設けない場合であり、基本的構造は、実施例1のバルコニーを設けた場合と同様である。
柱2は、断面が1000×1000(mm)であり、梁1の基本断面は1400×600(mm)であるが、1階おきに梁成を100mm程度小さくした梁10を設けることにより、建築高が高くなるのを抑えてコストの低減を図るものである。
【産業上の利用可能性】
【0011】
鉄筋コンクリート構造または鉄骨鉄筋コンクリート構造並びに鉄骨造の建築物の開口部において、梁幅を柱の幅より大きくすることによって梁成を抑制し、開口部に突出する部材を設けることなく構造物としての必要強度が得られるようにし、大きな開口を設定できるようにしたものであり、間取りの自由度が増加すると共に居住者には開放感を与える建築物とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1の構造躯体の側面断面図。
【図2】本発明の実施例1の構造を示す斜視図。
【図3】本発明の実施例2の構造躯体の側面断面図。
【図4】従来の逆梁構造の透視図。
【図5】コア構造体を有する従来技術の構造躯体の平面及び断面図。
【符号の説明】
【0013】
1 梁
2 柱
3 スラブ
4 開口部
5 バルコニー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱と梁からなる構造の建築物において、開口部の梁の幅が柱の幅より大きく、開口部の梁に交差する梁の幅が柱の幅以下である建築物。
【請求項2】
請求項1において、梁をバルコニーの床面とした建築物。
【請求項3】
請求項1において、1階おきに開口部の梁の梁成を上下階の開口部の梁の梁成より小さなものとした建築物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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