説明

建築用パネル体

【課題】 建築用パネル体が受ける風圧荷重を低減して建築パネル体自体の強度並びに支持強度を抑えると共に、プライバシーの保護を確保した建築用パネル体を提供する。
【解決手段】 複数のパネル部材2を連結して形成した建築用パネル体であって、パネル部材2は中間部に形成したガイド傾斜面21と、上部に形成したガイド傾斜面21の上方に位置する第一の鉤状部22と、下部に形成したガイド傾斜面21の下方に位置する第二の鉤状部23と、第一の鉤状部22の水平面221に形成した第一の透孔4と、第二の鉤状部23の水平面231に形成した第二の透孔5とを有し、上側に隣接するパネル部材2の第二の鉤状部23と下側に隣接するパネル部材2の第一の鉤状部22を連結して第一の鉤状部22と第二の鉤状部23により区画された中空部6を形成し、パネル部材のガイド傾斜面に当接する風を第一の透孔4と第二の透孔5を通過させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のパネル部材を連結して形成した建築用パネル体であって、フェンス、門扉、がらり板等に利用される。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の隣地境界に設置するフェンスにおいて、防風効果を奏するものが知られている。風を完全に遮断したいのであれば、開口の無いパネル体によってフェンスを構成すれば良い。しかしながら、開口が全く無いとフェンスのパネル体が風圧をまともに受けるため、フェンスのパネル体並びにパネル体を支持する支柱等の強度を高めなければならず、コストアップを招くものであった。
【0003】
特許文献1には、フェンスパネル体に透孔を設けることにより、この透孔に風を通過させてフェンスパネルが受ける風圧を弱め、支柱の支持力を軽減したフェンスが開示されている。
【0004】
特許文献2には、縦横に丸みを与えた柱状材を配設し、柱状材の間に隙間を設けた防風フェンスが開示されている。
【0005】
さらに特許文献3には、フェンス面と非平行な非平行面に孔を形成した防風機能を有する孔あきフェンスが開示されている。
【0006】
上記、特許文献1〜3によると、フェンスのパネル体に風が通過する孔若しくは隙間を設けることにより、支柱等の支持強度を高めることなく、防風機能を有するフェンスを提供するものである。
しかしながら、特許文献1〜3のようにフェンスパネル体に孔若しくは隙間を設けると、この孔若しくは隙間によってフェンスが透視されるため、プライバシーの保護に劣るものであった。
【0007】
特許文献4には、上下傾斜片を形成した羽根を支柱に設けた目隠しフェンスが開示されている。
特許文献4によれば、羽根の上下が傾斜片となっているので、上下に隣接する羽根の傾斜片が重なり合って、外部からの視線を遮ると共に、隣接する羽根の間に形成された隙間を風が通過するため、フェンスが受ける風圧を低減するものである。
しかしながら、特許文献4に記載のフェンスにおいても、水平方向の視線であれば、羽根によって遮ることができるが、傾斜片と平行な視線となると、フェンスが透視され、プライバシーの保護が十分なものとは言えないものであった。
【0008】
【特許文献1】特開平6−264419号公報
【特許文献2】特開平9−67810号公報
【特許文献3】特開2002−89086号公報
【特許文献4】特開2004−36298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、建築用パネル体が受ける風圧荷重を低減して建築パネル体自体の強度並びに建築パネル体の支持強度を低減すると共に、プライバシーの保護を確実とした建築用パネル体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、このような事情に鑑み鋭意検討を重ねた結果、複数のパネル部材を連結して形成した建築用パネル体であって、パネル部材は中間部に形成したガイド傾斜面と、上部に形成したガイド傾斜面の上方に位置する第一の鉤状部と、下部に形成したガイド傾斜面の下方に位置する第二の鉤状部と、第一の鉤状部の水平面に形成した第一の透孔と、第二の鉤状部の水平面に形成した第二の透孔とを有し、上側に隣接するパネル部材の第二の鉤状部と下側に隣接するパネル部材の第一の鉤状部を連結して第一の鉤状部と第二の鉤状部により区画された中空部を形成し、パネル部材のガイド傾斜面に当接する風を第一の透孔と第二の透孔を通過させたことによって、所期の目的を達成したものである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、第一の透孔と第二の透孔の位置を、パネル部材の長手方向においてずらして形成したことにより、フェンスの透視をより一層確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の建築用パネル体によれば、パネル部材の第一の鉤状部の水平面に第一の透孔を形成し、第二の鉤状部の水平面に第二の透孔を形成し、上下に隣接するパネル部材の第一の鉤状部と第二の鉤状部によって中空部を区画形成したので、第一の透孔と第二の透孔を介して中空部を通り抜ける風の力を段階的に弱めることができ、パネル部材の強度並びに建築用パネル体の支持強度を上げなくても、防風効果を高めることができる。
【0013】
また、第一の透孔と第二の透孔は、上下に隣接するパネル部材の第一の鉤状部と第二の鉤状部によって区画形成される中空部を介して連通するので、建築用パネル体を透視することができず、プライバシーの保護を確実なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づき説明する。
図1乃至図4は本発明建築用パネル体であり、建築用パネル体1は複数のパネル部材2を上下方向に連設することによってパネル部Pを形成し、パネル部Pが枠体3によって囲われている。なお、本発明建築用パネル体1は門扉、がらり板等に適用可能であるが、本実施例においては、フェンスに適用した例に基づいて説明する。
【0015】
パネル部材2はアルミニウム製押出し形材によって形成されており、上下中間位置にガイド傾斜面21が形成され、ガイド傾斜面21を挟んで上側に第一の鉤状部22、下側に第二の鉤状部23が形成されている。第一の鉤状部22はガイド傾斜面21の上方を覆うように屈曲形成しており、第一の鉤状部22の水平面221に第一の透孔4が形成されている。一方、第二の鉤状部23はガイド傾斜面21の下方を覆うように屈曲形成しており、第二の鉤状部23の水平面231に第二の透孔5が形成されている。
【0016】
なお、水平面221と水平面231における第一の透孔4と第二の透孔5の開口率は夫々23%である。本実施例において第一の透孔4と第二の透孔5の形状は円形状としたが、種々の形状を適用しても構わない。また、透孔4,5による開口率も10〜50%の範囲で調整することができる。開口率が50%を超えると、防風効果が低下すると共に水平面221,231の強度低下を招く。逆に、10%を下回ると風圧荷重が増加してパネル部材並びに建築用パネル体の支持強度を高めなければならず、コストアップを招く。
【0017】
第一の鉤状部22の先端部と、第一の鉤状部22の垂直面222におけるガイド傾斜面21側に係合突条223,224が形成されている。また、第二の鉤状部23の先端部と、第二の鉤状部23の垂直面232におけるガイド傾斜面21側にも係合突条233,234が形成されている。上下に隣接するパネル部材2は、上側に位置するパネル部材2の第二の鉤状部23に形成した係合突条233,234を、下側に位置するパネル部材2の第一の鉤状部22に形成した係合突条223,224に係合することによってパネル部材2が上下に連設され、パネル部Pが形成される。
【0018】
上側に隣接するパネル部材2の第二の鉤状部23と、下側に隣接するパネル部材2の第一の鉤状部22によって、中空部6が区画形成され、建築用パネル体1によって仕切られる空間は、第一の透孔4、第二の透孔5及び中空部6を介して通風自在となっている。
【0019】
ガイド傾斜面21の下面には、一部が切りかかれたビスホール24が形成され、該ビスホールには枠体3の縦枠31に形成した透孔311を挿通する螺子7が螺入し、パネル部材2が縦枠31に固着される。
上端に位置するパネル部材2における第一の鉤状部22の水平面221の上面には、一対の係止部225が形成され、該係止部225が枠体3の上横枠32の下面に形成した一対の被係止部321に係止する。一方、下端に位置するパネル部材2の第二の鉤状部23の水平面231の下面には、一対の係止部235が形成され、該係止部235が下横枠33の上面に形成した被係止部331に係止する。
以上のようにして、パネル部材2を連設して形成したパネル部Pが枠体3によって囲われ、建築用パネル体1が形成される。
【0020】
第一の鉤状部22の第一の透孔4と、第二の鉤状部23の第二の透孔5は、パネル部材2の長手方向において位置をずらして形成している。透孔4と透孔5の位置をずらして形成したことにより、透孔4,5の位置を重ねて建築用パネル体1を透視することができず、プライバシーの保護がより確実となる。また、中空部6内において風の流れが屈曲するので、建築パネル体1を通り抜ける風の力をより一層弱めることができる。なお、図3において建築用パネル体1の右側が敷地側あるいは道路側であり、建築用パネル体1の左側面によって風を受ける。
【0021】
本実施例において示した建築用パネル体1によれば、パネル部Pに当たった風(図3において左から右方向への風)は、ガイド傾斜面21によって上方へ向きが変えられる。ガイド傾斜面21の上側には、上方に隣接するパネル部材2の第二の透孔5が開口しており、第二の透孔5に風が流れ込む。第二の透孔5を通り抜けた風は、中空部6に入り、中空部6の上方に位置する第一の透孔4に流れ込み、第一の透孔4を通過した風がパネル部Pを通過したことになる。パネル部Pを通過した風は、第二の透孔5と第一の透孔4によって段階的に弱められ、水平面221と水平面231が受ける風圧は小さくて済むので、パネル部材2に強度アップを施さなくても、風圧に耐え得るものである。さらに、パネル部Pを通過した風は、上方に向きが変換されるので、建築用パネル体を通過した風は、敷地内部の奥まで到達することがない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明建築用パネル体の分解斜視図
【図2】本発明建築用パネル体の要部を拡大した縦断面図
【図3】本発明建築用パネル体の全体縦断面図
【図4】図3におけるA−A線断面図(A)、B−B線断面図(B)
【符号の説明】
【0023】
1 建築用パネル体
2 パネル部材
3 枠体
4 第一の透孔
5 第二の透孔
6 中空部
21 ガイド傾斜面
22 第一の鉤状部
23 第二の鉤状部
221 水平面
231 水平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパネル部材を連結して形成した建築用パネル体であって、パネル部材は中間部に形成したガイド傾斜面と、上部に形成したガイド傾斜面の上方に位置する第一の鉤状部と、下部に形成したガイド傾斜面の下方に位置する第二の鉤状部と、第一の鉤状部の水平面に形成した第一の透孔と、第二の鉤状部の水平面に形成した第二の透孔とを有し、上側に隣接するパネル部材の第二の鉤状部と下側に隣接するパネル部材の第一の鉤状部を連結して第一の鉤状部と第二の鉤状部により区画された中空部を形成し、パネル部材のガイド傾斜面に当接する風を第一の透孔と第二の透孔を通過させたことを特徴とする建築用パネル体。
【請求項2】
第一の透孔と第二の透孔の位置を、パネル部材の長手方向においてずらして形成したことを特徴とする請求項1に記載の建築用パネル体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−274567(P2006−274567A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91716(P2005−91716)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000180302)四国化成工業株式会社 (167)
【Fターム(参考)】