説明

建築用防火シャッター装置

【課題】建築用防火シャッター装置の防火性能の向上を図る。
【解決手段】最上端パネル体3、最下端パネル体4、中間パネル体5とにより構成されるオーバーヘッド式のシャッター装置におけるシャッターカーテン2において、シャッターカーテン2の下端部に、左右方向長尺状で弾性変形自在な第三封止部材22と、左右方向長尺状の耐火性の塞ぎ体23とを表裏方向隣接状に設ける構成とし、前記塞ぎ体23が床面に当接するシャッターカーテン2の全閉姿勢で、第三封止部材22が弾性変形した封止姿勢となるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部を開閉するシャッターカーテンを備えた建築用防火シャッター装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、躯体開口部に設けたシャッターカーテンが、開口部を閉鎖する全閉姿勢と開口部を開放する全開姿勢とに変姿する建築用シャッター装置のなかには、シャッターカーテンにより仕切ることで、火災による炎や煙がシャッターカーテンの一方に形成される防火空間側に侵入するのを防止するようにした防火シャッター装置がある。この場合では、シャッターカーテンを、例えば複数のパネル体を連結して構成されるシャッターカーテン(パネルシヤッター)とした場合では、各パネル体を、金属材からなる表裏面板で所定の板厚を備えたものに形成する一方、全閉姿勢となったシャッターカーテンと躯体との間となる部位、即ち、シャッターカーテンと該シャッターカーテンの左右両側を移動案内するガイドレールとの間、シャッターカーテンと躯体開口部の上端縁部との間、シャッターカーテンの下端部と床面との間を、それぞれ封止部材を用いて封止状にして、火災による炎や煙が防火空間に侵入するのを防止するような構成が必要となる。
【0003】
この改善策として、前記各部位に、封止部材として弾性材からなる第一封止部材を設けるとともに、高温になることにより膨張する第二封止部材を設けて、高温になるまでは第一封止部材による封止をし、火災等で高温になった場合では第二封止部材が熱膨張して封止がなされるようにしたものが提唱されている。
【特許文献1】特開平3−71556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、このものでは、シャッターカーテンの下端部と床面との間を封止する第一、第二封止部材を、第一封止部材の内側に第二封止部材を収納する構成としており、火災により高温となり、外側の第一封止部材が溶融したり、燃えてしまったような場合に、内側の第二封止部材が熱膨張する構成となっている。このため、第一封止部材はシャッターカーテンにより仕切られた火災発生側の空間と防火空間との両者に対向しており、火災発生側の第一封止部材が溶融したり燃焼するような場合では、防火空間側の第一封止部材も溶融したり燃焼する惧れがあって防火性能に劣るという問題がある。さらに、シャッターカーテンは、火災が発生して高温になると、シャッターカーテン自体が熱膨張して火災発生側の空間に対して湾曲状に突出変形することが想定されるが、このとき、前記従来のものでは、溶融したり燃焼した防火空間側の第一封止部材が該側に取り残されてしまい発火要因となる惧れがあるという問題もあり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、躯体開口部に設けたシャッターカーテンが、開口部を閉鎖する全閉姿勢と開口部を開放する全開姿勢とに変姿する建築用防火シャッター装置において、シャッターカーテンの下端部に、左右方向長尺状で弾性変形自在な封止部材と、左右方向長尺状の耐火性の塞ぎ体とを表裏方向隣接状に設けて、前記塞ぎ体が床面に当接するシャッターカーテンの全閉姿勢で、封止部材が弾性変形した封止姿勢となるように構成されている建築用防火シャッター装置である。
請求項2の発明は、塞ぎ体は、シャッターカーテンにより形成される防火空間側となる表裏方向一方側に位置し、該塞ぎ体の他方側に封止部材が設けられている請求項1に記載の建築用防火シャッター装置である。
請求項3の発明は、封止部材は、封止姿勢で塞ぎ体の表裏方向一方側にはみ出すことがないように構成されている請求項1または2に記載の建築用防火シャッター装置である。
請求項4の発明は、封止部材は、表裏方向に空隙部が形成された中空状体とし、上下方向中間部に位置して表裏方向他方側に突出する屈曲部と、該屈曲部の下方に下端ほど尖鋭状となる尖鋭状部とが形成されるものとし、封止部材は屈曲部を基準として弾性変形して折畳み状の封止姿勢となるように構成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の建築用防火シャッター装置である。
請求項5の発明は、封止部材は、下端縁部がシャッターカーテンの表裏方向厚さの中心線よりも表裏方向他方側に位置するように形成されている請求項4に記載の建築用防火シャッター装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、シャッターカーテンの表裏方向の空間を封止部材と塞ぎ体とにより仕切るので、封止性が確実なうえ、防火空間を確実に、かつ、耐火性よく防火できて、防火性能の向上を図れる。
請求項2の発明とすることにより、封止部材が溶融、燃焼しても、その影響を防火空間側に与えることがないうえ、高温になってシャッターカーテンが防火空間から非防火空間側に膨出するように撓んだような場合でも、封止部材が防火空間側に取り残されるようなことがなく、防火性能のさらなる向上を図れる。
請求項3の発明とすることにより、防火空間側で封止部材が溶融、燃焼するようなことを確実に防止できて、防火性能が一層優れる。
請求項4の発明とすることにより、封止部材が折畳み状の封止姿勢に変姿して、封止性が確実になるうえ、封止部材が塞ぎ体を越えて防火空間側にはみ出すのを確実に防止できる。
請求項5の発明とすることにより、封止部材の折畳み状の封止姿勢への変姿が一層確実になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
つぎに、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図面において、1はオーバーヘッド式の建築用防火シャッター装置(防火パネルシャッター装置)であって、該建築用防火シャッター装置1を構成するシャッターカーテン(ドア体)2は、それぞれ左右方向長尺状に形成され、最上端に位置する最上端パネル体3、最下端に位置する最下端パネル体4、そして、これらのあいだに位置する複数枚の中間パネル体5とをそれぞれ揺動自在に連結することにより構成されている。
【0008】
前記各パネル体3、4、5は、金属材により構成されており、それぞれ表裏方向所定のパネル厚Hを有して形成されており、中間パネル体5は、上端縁部に円弧状の外周面を有した連結部5aが形成される一方、下端縁部に前記連結部5aに摺動自在に外嵌して、互いに上下方向に揺動自在(屈曲自在)な連結がなされる連結受け部5bが形成されている。さらに、中間パネル体5の連結部5a側の左右方向両端部には、連結部5aの下方に位置して、先端にガイドローラ6が回転自在に軸承された支軸6aの基端部がそれぞれ支持されている。
また、最上端パネル体3は、下端縁部に中間パネル体5の連結受け部5bと同形状に形成された連結受け部3aが形成されており、最上端パネル体3の下方に隣接する中間パネル体5の連結部5aに摺動自在に外嵌して揺動自在な連結部が構成されている。そして、最上端パネル体3の裏面であって、防火空間側に設定される面の左右両端部には、先端にガイドローラ6が回転自在に軸承された支軸6aの基端部がそれぞれ支持されている。
さらに、最下端パネル体4は、上端縁部に中間パネル体5の連結部5aと同形状に形成された連結部4aが形成されており、最下端パネル体4の上方に隣接する中間パネル体5の連結受け部5bに摺動自在に内嵌して揺動自在な連結部が構成されている。そして、最下端パネル体4の連結部4a側の左右方向両端部には、連結部4aの下方に位置し、先端にガイドローラ6が回転自在に軸承された支軸6aの基端部がそれぞれ支持されている。さらに、最下端パネル体4は、下端部の左右方向両端部に、前記連結部6aに設けられるものと同様のガイドローラ6が支軸6aを介して回転自在に軸承されている。
【0009】
一方、躯体開口部の左右両側部にはそれぞれ左右一対のガイドレールGが設けられているが、各ガイドレールGは、開口部側部に立設される直線状の垂直レール7と、開口部を基準として防火空間側となるシャッターカーテン2の裏面側に位置する躯体の天井部に沿って設けられる直線状の水平レール8と、これら各レール7、8のあいだを連結する湾曲状のR状レール9とを備えて構成されている。前記ガイドレールGの各レール7、8、9は、それぞれ連通状となるガイド溝7a、8a、9aが形成されており、これら各ガイド溝7a、8a、9aに、前記シャッターカーテン2(各パネル体3、4、5)に設けたガイドローラ6が嵌合して移動案内を受けるように構成されている。
【0010】
10は、開口部上方に回転自在に支持される回転軸であって、該回転軸10の左右両端部には一対のワイヤドラム10aが回転軸10と一体回転する状態で外嵌固定されており、これらワイヤドラム10aに巻装されるワイヤ10bの遊端は、シャッターカーテン2を構成する最下端パネル体4に連結されている。さらに、最上端パネル体3の裏面側上下方向中間部には作動アーム11の一端部が上下方向揺動自在に連結されており、該作動アーム11の先端部はシャッターカーテン2の上方に延出し、該延出端部に移動体12が連結されている。一方、水平レール8が設けられる側の躯体天井面には、表裏方向に長い作動レール13が設けられており、該作動レール13に前記移動体12が移動自在に設けられる一方、作動レール13の裏面側端部には駆動装置13aが設けられており、駆動装置13aの駆動に基づいて移動体12が作動レール13に沿って移動するように構成されている。
【0011】
そして、シャッターカーテン2は、駆動装置13aの駆動に基づいて移動体12が表裏方向に移動することにより作動アーム11に牽引され、左右両側部がガイドレールGに案内される状態で移動するように構成されている。これによって、シャッターカーテン2は、垂直レール7に位置して開口部を閉鎖する全閉姿勢と、水平レール8に位置して開口部を開放する全開姿勢とのあいだを移動するように構成されており、該開閉移動の過程で、シャッターカーテン2がガイドレールGのR状レール9を移動する場合では隣接するパネル体3、4、5同士が適宜揺動角度を存した連結状態の折曲姿勢となり、垂直レール7、水平レール8を移動する場合では隣接するパネル体3、4、5同士が直線状に連結する直線姿勢となるように構成されている。因みに、最上端パネル体3に設けられたガイドローラ6は、シャッターカーテン2の全閉姿勢において、垂直レール7の上方となるR状レール9に位置しており、これによって、移動体12によるシャッターカーテン2の開閉作動が円滑になされるように構成されている。
尚、前記回転軸10には、シャッターカーテン2の閉鎖に伴いシャッターカーテン2の荷重にバランスする蓄勢力が付勢されるバランス弾機(図示せず)が介装されており、駆動装置13aによる開閉作動を補助するように構成されている。
【0012】
一方、シャッターカーテン2の移動案内をするガイドレールGは、各パネル体3、4、5の両側部から突出するガイドローラ6の移動案内をする構成であるため、各レール7、8、9と各パネル体3、4、5との間には隙間が形成されている。このため、シャッターカーテン2を全閉姿勢としてシャッターカーテン2の裏面側に形成される防火空間に火や煙が侵入するのを防止するためには、シャッターカーテン2と躯体開口部との間に封止構成が必要となり、つぎのような配慮がなされている。
【0013】
躯体開口部とシャッターカーテン2の左右両側部との間は、開口部両側に立設される垂直レール7にそれぞれ左右方向外方から覆うカバー体14を設け、これらカバー体14と各垂直レール7との間に、それぞれ垂直レール用封止ユニット15を設けることにより封止されるように構成されている。
前記カバー体14は、垂直レール7の上下方向全長にわたって一体的に設けられており、図3(A)に示すように、耐火性材料である金属製板材を折曲し、シャッターカーテン2の表裏面に積層するように設けられる表裏一対の側片14a、14bを備えた断面コ字形状に形成されており、裏面側の側片14bの開口部側の先端部には、各パネル体3、4、5の裏面3b、4b、5cに近接対向する突片14cが形成されている。また、前記垂直レール用封止ユニット15は、垂直レール7の上端部を除く上下方向略全長にわたって設けられており、長尺状の金属製平板材を折曲することにより、垂直レール7の表面側の側片7bに固定される第一支持片15aと、該第一支持片15aの開口部側の端縁部から表面側に突出する第二支持片15bと、該第二支持片15bの突出端部から開口部側に突出し、カバー体14の表面側の側片14aの裏面に沿って支持される第三支持片15cと、該第三支持片15cの開口側の端縁部から裏面側に突出して各パネル体3、4、5の表面3c、4c、5dに近接対向する第四支持片15dとが形成されている。そして、第四支持片15dの先端部に、ゴム質弾性材で構成される長尺状の第一封止部材16の基端部16aが嵌着されており、第一封止部材16の先端側に形成された舌片部16bが全閉姿勢のシャッターカーテン2の表面(3c、4c、5d)に摺接することにより、シャッターカーテン2の表面(3c、4c、5d)側における躯体開口部の側部との間の隙間を封止するように構成されている。
【0014】
さらに、垂直レール用封止ユニット15の第二支持片15bの開口部側の面には、高温になることにより膨張する第二封止部材17が第二支持片15bの全長にわたって設けられている。そして、高温になって第一封止部材16が脱落したり燃焼してしまったような状態になると、第二封止部材17が膨張して、第二支持片15bと第四支持片15dとの間を封止するように設定されている。これによって、躯体開口部両側部であって、垂直レール7のカバー体14配設部位とシャッターカーテン2の左右両側部との間は第一、第二封止部材16、17により封止されて、高温になっても確実な封止ができるように構成されている。
【0015】
ここで、R状レール9を移動するシャッターカーテン2は、所定の揺動角度を存した折曲姿勢となるため、R状レール9には、シャッターカーテン2の表裏面に積層する側片を備えたカバー体と前述の垂直レール用封止ユニット15とを設けることはできない。このため、躯体開口部の左右両側部における封止において、
高温になって第一封止部材16が脱落したり燃焼したような状態になると、垂直レール7の上端部からR状レール9に至る連結部位に隙間が形成され、封止性が損なわれることが想定される。そこで、本実施の形態では、垂直レール7の上端部と全閉姿勢となっている最上端パネル体3との間を封止することにより、垂直レール7の上方に形成される隙間を塞ぐように構成されている。
つまり、最上端パネル体3の左右両側部には、第二封止部材17に対向して最上端パネル体第一封止ユニット18が設けられている。前記最上端パネル体第一封止ユニット18は、図4に示すように、最上端パネル体3の上下方向略全長にわたって設けられており、長尺状の金属製平板材をL字状に折曲することにより、最上端パネル体3の表面3cに固定される固定片18aと、該固定片18aのガイドレールG側の端縁部から表面側に突出し、垂直レール用封止ユニット第二支持片15bに近接対向する突出片18bとが形成されており、前記固定片18aの表面側に前記と同様の第二封止部材17が設けられている。
そして、火災発生等により炎や煙が発生した場合では、第四支持片15dと突出片18bとにより炎や煙が防火空間に回り込むのが防止され、高温になった場合では、最上端パネル体3配設部位において、垂直レール用封止ユニット第二支持片15bの第二封止部材17と、最上端パネル体第一封止ユニット固定片18aの第二封止部材17とが熱膨張し、垂直レール用封止ユニット第二支持片15bと最上端パネル体第一封止ユニット突出片18bとの間が封止されるとともに、最上端パネル体第一封止ユニット固定片18aと垂直レール用封止ユニット第三支持片15c(カバー体表面側側片14a)との間が封止され、これによって、第一封止部材16が脱落するような高温になった状態でも垂直レール7の上端部からR状レール9に至る部位の隙間が確実に封止されるように構成されている。
【0016】
また、躯体開口部の上端縁部とシャッターカーテン2上縁部(最上端パネル体3の上縁部)とにおける封止は、図3(B)に示すように、開口部を構成する上端縁部に上端部用躯体側封止ユニット19を設ける一方、最上端パネル体3に最上端パネル体第二封止ユニット20を設けることにより封止されるように構成されている。
前記上端部用躯体側封止ユニット19は、開口部を構成する躯体上端部の左右方向略全長にわたって裏面側に設けられるものであり、長尺状の金属製平板材を折曲することにより、躯体固定片19aと、該固定片19aの下端縁から裏面側に突出する第一支持片19bと、前記固定片19aの上下方向中間部から裏面側に突出する突出片19cと、該突出片19cの突出先端縁から上方に突出し、全閉姿勢のシャッターカーテン2の最上端パネル体3上端部の表面3cに近接対向する第二支持片19dとが形成されている。そして、第一支持片19bの先端部に前記と同様の第一封止部材16が止着されており、第一封止部材16の舌片部16bが最上端パネル体3の表面3cの上部に摺接することにより、シャッターカーテン2の表面側における躯体開口部の上端部との間の隙間を封止するように構成されている。
さらに、上端部用躯体側封止ユニット19の第二支持片19dには、高温になることにより膨張する前記と同様の第二封止部材17が最上端パネル体3に対向して設けられている。
【0017】
一方、最上端パネル体第二封止ユニット20は、図4に示すように、最上端パネル体3上部に左右方向略全長にわたって設けられるものであり、長尺状の金属製平板材を折曲することにより、最上端パネル体3の上端面に固定されるパネル体固定片20aと、シャッターカーテン2が全閉姿勢になることにより、上端部用躯体側封止ユニット19の第二支持片19dの上方に間隙を存して位置し、突出片19cと上下方向に対向する支持片20bと、該支持片20bの表面側端縁部から下方に突出し、上端部用躯体側封止ユニット19の第二支持片19dと近接対向して相決り状の位置関係となる突片20cとが形成されている。そして、支持片20bの下端面に前記と同様の第二封止部材17が設けられている。
そして、火災発生により炎や煙が発生した場合では、相決り状の位置関係となっている第二支持片19dと突片20cとにより炎や煙が防火空間に回り込むのが防止され、高温になった場合では、上端部用躯体側封止ユニット19の第二支持片19dと、最上端パネル体第二封止ユニット20の支持片20bとに設けられた第二封止部材17がそれぞれ熱膨張することにより、上端部用躯体側封止ユニット第二支持片19dと最上端パネル体3との間が封止されるとともに、最上端パネル体第二封止ユニット支持片20bと突片20cと上端部用躯体側封止ユニット19の突出片19cとにより囲繞される空間が封止され、これによって、第一封止部材16が脱落するような高温になった場合でも、躯体開口部上端部における封止がなされるように構成されている。
【0018】
そして、躯体開口部の下端部における封止に本発明が実施されている。
前記最下端パネル体4は、図5、6に示すように、下端部に下端部用封止ユニット21が設けられている。下端部用封止ユニット21は、左右方向長尺状で弾性変形自在な第三封止部材(本発明の封止部材に相当する)22と、左右方向長尺状で、かつ、第三封止部材22の上下長さよりも短い上下長さを有した金属製の塞ぎ体23とが、表裏方向に隣接する状態で設けられている。
前記下端部用封止ユニット21を構成する塞ぎ体23は、最下端パネル体4の下端面4dに、下方が開口するように形成された蟻溝状の凹部4eに抜止めされる抜止め片23aが形成され、該抜止め片23aから表裏一対の側片23b、23cが下方に延出形成されている。前記一対の側片23b、23cの下端縁には、互に近接する方向に突出する表裏一対の支持片23d、23eがそれぞれ形成されており、抜止め片23aの下方に下端が開口する蟻溝状の支持凹部23fが形成されている。さらに、前記裏面側の側片23cには、下方に延出する塞ぎ片23gが形成されているが、該塞ぎ片23gは、最下端パネル体4の裏面4bと略面一状となる位置関係で形成されている。
【0019】
前記第三封止部材22は、ゴム質弾性材により左右方向長尺状体に形成されており、表裏方向から凹設される状態の細首部22aの下方に、表裏方向に空隙を存する中空状となって弾性変形自在な変形部22bが形成されたものに構成されている。そして、第三封止部材22は、細首部22aを塞ぎ体23の支持凹部23fに嵌入させて、細首部22aの上片部22cを表裏一対の支持片23d、23eに係止させることにより、第三封止部材22が塞ぎ体23に抜止め状に支持されるように構成されている。そして、第三封止部材22は、変形部22bの上下方向中間部に位置し、変形部22bを構成する表裏一対の側片をそれぞれ表面側に突出して屈曲部22dが形成されて、変形部22bが屈曲変形を受けやすくなるように構成されている。さらに、これら各側片の屈曲部22d形成部位は肉薄状に形成されており、これによって、変形部22bが屈曲部22dを基準とする屈曲変形を一層受けやすくなるように構成されている。さらに、屈曲部22dの下方には、下端ほど尖鋭状となる尖鋭状部22eが形成されており、該尖鋭状部22eの下端縁22fは、最下端パネル体4のパネル厚Hの中心線Mよりも表面側に偏寄するように形成されている。さらに、第三封止部材22は、該第三封止部材22が弾性変形しない自然状態において、下端縁22fが前記塞ぎ体23の塞ぎ片23gの下端縁より下方に突出するように形成されている。
【0020】
そして、シャッターカーテン2が閉鎖作動した場合では、塞ぎ体23の塞ぎ片23gよりも下方に突出する第三封止部材22の先端縁22fが先行して床面に当接し、塞ぎ片23gが床面に当接する全閉姿勢となる状態では、第三封止部材22が床面からの押圧力を受けて弾性変形して封止姿勢となるように構成されており、この状態において、第三封止部材22により最下端パネル体4と床面との間が封止されるように設定されている。そして、この場合に、シャッターカーテン2の裏面側に形成される防火空間側には、第三封止部材22とともに塞ぎ体23が対向することにより、第三封止部材22が溶融したり、燃焼するようなことがあっても、塞ぎ体23による封止がなされて防火性能が優れるように構成されている。
さらに、この場合に、防火空間側には塞ぎ体23が対向するように構成されており、第三封止部材22が防火空間側で発火してしまうようなことがなく、防火性能の一層の向上が図れるように構成されている。また、第三封止部材22は肉薄状で弾性変形を受けやすい屈曲部22dが表面側に突出して形成されるとともに、屈曲部22dの下方に尖鋭状部22eに形成され、尖鋭状部22eの下端縁22fが表面側に偏寄して形成されていて、床面に当接して弾性変形する場合では、図6(B)に示すように、屈曲部22dを基準として折畳み状の封止姿勢に弾性変形するように設定されている。これによって、自然状態で尖鋭状部22eの表側の面である表側下端片22gが床面に沿って変形することにより床面に対する封止性の向上が図れるように構成されている。また、折畳まれた尖鋭状部22eは、先端縁22fが塞ぎ体23の塞ぎ片23gを越えて裏面側にはみ出すことがないように寸法設定されており、これによって、防火空間側にはみ出して第三封止部材22が燃焼するような不具合を確実に防止できるように構成されるとともに、シャッターカーテン2が火災発生側の空間に向けて膨出するように撓んだとしても、第三封止部材22は防火空間側の塞ぎ体23により火災発生側に押し出されて、防火空間側の防火性能が低減するような不具合がないよう構成されている。
【0021】
叙述の如く構成された本形態において、パネル体3、4、5を揺動自在に連結したシャッターカーテン2を、R状レール9が形成されたガイドレールGに移動自在に案内させることで、開口部を開閉するよう構成されたオーバーヘッド式のシャッター装置において、シャッターカーテン2の下端部は、全閉姿勢となることに伴い塞ぎ体23に先行して第三封止部材22が床面に当接して弾性変形し、封止姿勢となって床面との間を封止するので、シャッターカーテン2の下端部と床面との間の封止を確実に行うことができる。しかも、このものでは、第三封止部材22と塞ぎ体23との両者により火災発生空間と防火空間との間を仕切るので、防火空間の封止が確実なうえ、防火空間を確実に、かつ、耐火性よく防火できて、防火性能の向上を図ることができる。
【0022】
このように、本発明が実施されたものにあっては、第三封止部材22と塞ぎ体23とにより防火空間を仕切る構成であるが、金属製の塞ぎ体は、防火空間側に配設されているので、第三封止部材22が溶融、燃焼した場合であっても、その影響を防火空間側に与えることがなく、防火性能を一層優れたものにできる。
さらに、シャッターカーテン2が火災発生側の空間(非防火空間)に向けて熱膨張して撓みを生じたとしても、第三封止部材22が塞ぎ片23gにより火災発生側に押しやられて防火空間側に取り残されるような不具合がなく、防火性能のさらなる向上を果せる。
【0023】
しかも、このものでは、第三封止部材22は、床面との当接で弾性変形して封止姿勢となった場合に、塞ぎ片23gよりも防火空間側にはみ出すことがないので、第三封止部材22が防火空間側の発火原因となるようなことを確実に防止できる。
【0024】
そのうえ、このものにおいて、第三封止部材22が床面に当接して折畳み状の封止姿勢に変姿する場合に、第三封止部材22には肉薄状となって弾性変形を受けやすい屈曲部22dが形成され、該屈曲部の下方が尖鋭状部22eに形成されているので、屈曲部22dを基準として予め設定される折畳み状の封止姿勢に変姿するのが容易になって、封止性が確実になるばかりでなく、第三封止部材22が塞ぎ片23gの裏面側にはみ出すのを確実に防止することができる。
【0025】
しかも、第三封止部材22の下端縁22fが表面側に偏寄する形状となっているので、予め設定される折畳み状の封止姿勢への変姿が一層確実に行われて、防火性能に優れた信頼性の高い防火シャッター装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】オーバーヘッド式の建築用防火シャッター装置の一部を切欠いた側面断面図である。
【図2】シャッターカーテンの一部を切欠いた側面断面図である。
【図3】図3(A)、(B)はそれぞれ垂直レールにおける平面断面図、シャッター装置の上部における側面断面図である。
【図4】図4(A)、(B)、(C)はそれぞれ最上端パネル体の正面図、背面図、側面断面図である。
【図5】図5(A)、(B)、(C)はそれぞれ最下端パネル体の正面図、背面図、側面断面図である。
【図6】図6(A)、(B)はそれぞれ第三封止部材の自然状態を説明する側面断面図、第三封止部材の封止姿勢を説明する側面断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 建築用防火シャッター装置
2 シャッターカーテン
3 最上端パネル体
4 最下端パネル体
7 垂直レール
9 R状レール
14 カバー体
15 垂直レール用封止ユニット
16 第一封止部材
17 第二封止部材
18 最上端パネル体第一封止ユニット
19 上端部用躯体側封止ユニット
20 最上端パネル体第二封止ユニット
21 下端部用封止ユニット
22 第三封止部材
22d 屈曲部
22e 尖鋭状部
22f 下端縁
23 塞ぎ体
23g 塞ぎ片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体開口部に設けたシャッターカーテンが、開口部を閉鎖する全閉姿勢と開口部を開放する全開姿勢とに変姿する建築用防火シャッター装置において、シャッターカーテンの下端部に、左右方向長尺状で弾性変形自在な封止部材と、左右方向長尺状の耐火性の塞ぎ体とを表裏方向隣接状に設けて、前記塞ぎ体が床面に当接するシャッターカーテンの全閉姿勢で、封止部材が弾性変形した封止姿勢となるように構成されている建築用防火シャッター装置。
【請求項2】
塞ぎ体は、シャッターカーテンにより形成される防火空間側となる表裏方向一方側に位置し、該塞ぎ体の他方側に封止部材が設けられている請求項1に記載の建築用防火シャッター装置。
【請求項3】
封止部材は、封止姿勢で塞ぎ体の表裏方向一方側にはみ出すことがないように構成されている請求項1または2に記載の建築用防火シャッター装置。
【請求項4】
封止部材は、表裏方向に空隙部が形成された中空状体とし、上下方向中間部に位置して表裏方向他方側に突出する屈曲部と、該屈曲部の下方に下端ほど尖鋭状となる尖鋭状部とが形成されるものとし、封止部材は屈曲部を基準として弾性変形して折畳み状の封止姿勢となるように構成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の建築用防火シャッター装置。
【請求項5】
封止部材は、下端縁部がシャッターカーテンの表裏方向厚さの中心線よりも表裏方向他方側に位置するように形成されている請求項4に記載の建築用防火シャッター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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