説明

建設機械およびその電池パック

【課題】選択されていない制限電力モードでの残電力量が表示できるとともに、電池交換作業が容易な建設機械を提供すること。
【解決手段】電池パック18の出力を制限するために定められた複数の制限電力モードに基づいて建設機械を制御するものであって、蓄電パックの仕様情報及び充電状態、さらに複数の制限電力モードごとに定められた制限電力及び動作電圧に基づいて、複数の制限電力モードごとの蓄電パックの残電力量を算出する管理ユニット11,12と、当該管理ユニットで算出された残電力量に基づいて、複数の制限電力モードごとの残電力量を表示するための表示装置14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄電池の電力を動力に変換する建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械には、蓄電池(バッテリ)を備え、当該蓄電池の電力を動力に変換しているものがある。この種の建設機械としては、例えば、エンジンに代えて蓄電池及び電動機を備え、油圧アクチュエータを駆動するための油圧ポンプを当該電動機で駆動するバッテリ式油圧ショベル(バッテリショベル)や、エンジン、蓄電池及び発電電動機を備えるハイブリッド式油圧ショベルや、蓄電池からの電力で走行用の電動機を駆動するホイールローダ及びダンプトラック等がある。
【0003】
この種の建設機械に備えられる蓄電池は、大容量の出力を有するために高価であるが、エンジンの駆動に使用される軽油に比べて重量当たりのエネルギ出力が低い。そのため、車載できる限られた容量の蓄電池を如何に有効利用して作業量や稼働時間を延ばすかが大きな問題になる。
【0004】
この点を鑑みた建設機械としては、建設機械に設置されたインバータ装置において蓄電池の残量を算出し、当該蓄電池の残量が少ないと判定したら電動アクチュエータの最大出力を制限するものがある(特許文献1参照)。すなわち、この技術では、蓄電池の残量が少ないと判定される前後において、蓄電池の出力を制限するためのモード(以下において「制限電力モード」と称することがある)が複数存在している。また、建設機械ではなく電気自動車に関する技術であるが、蓄電池の残量として残電力量(Wh)を車両側のコントローラで計算し、当該残電力量を表示装置に表示する技術がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−197514号公報
【特許文献2】特開平8−201488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の技術のように複数の制限電力モードに基づいて建設機械を制御する場合には、その時点で選択されている制限電力モードでの蓄電池の残量(残電力量)が表示されるが、その時点で選択されていない他の制限電力モードでの蓄電池の残量(残電力量)は表示することができない。すなわち、例えば、第1及び第2の制限電力モードが自動で切り換えられる場合には、当該第1のモードが選択されている間には、当該第2のモードの残電力量を表示することができない。
【0007】
また、充電池の残電力量を計算する方法としては、(1)当該蓄電池の充電状態(例えば、充電率)と、(2)当該蓄電池の電圧(電池電圧)及び内部抵抗と、(3)各制限電力モードにおける建設機械の制限電圧及び最低電圧を利用するものがある。このうち(1)のデータは充電池の充放電を管理するための制御手段である電池制御装置(電池管理ユニット)によって逐一算出されるものであり、(2)のデータは当該電池制御装置が所持するものであり、(3)のデータは建設機械を制御するための制御手段である主制御装置(建機管理ユニット)が所持するものである。したがって、主制御装置で残電力量を算出する場合には、蓄電池の仕様である(2)のデータを当該主制御装置に予め記憶しておき、電池制御装置から逐一入力される(1)のデータを利用することで算出している。
【0008】
しかし、昨今、安全性を向上させる観点から、電池制御装置と充電池が一体になっている電池パック(例えば、リチウムイオン電池)が多く、充電池を交換する場合には電池制御装置も交換されることになる。すなわち、上記のように主制御装置で残電力量を算出する方法を採用した場合に充電池を仕様の異なるものに交換するときには、主制御装置に記憶した(2)のデータを新しい充電池のものに書き換える必要があり、電池交換作業が煩雑になる。
【0009】
本発明の目的は、選択されていない制限電力モードでの残電力量が表示できるとともに、電池交換作業が容易な建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、蓄電池の電力を動力に変換する建設機械において、前記蓄電池の出力を制限するために定められた複数の制限電力モードに基づいて前記建設機械を制御するものであって、前記蓄電池の仕様情報及び充電状態、さらに前記複数の制限電力モードごとに定められた制限電力及び動作電圧に基づいて、前記複数の制限電力モードごとの前記蓄電池の残電力量を算出する制御手段と、当該制御手段で算出された前記残電力量に基づいて、前記複数の制限電力モードごとの残電力量を表示するための表示装置とを備えるものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、選択されていない制限電力モードでの残電力量が表示されるので実質的な残電力量を確認しながら作業できるとともに、電池交換作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の各実施の形態に係るバッテリ式油圧ショベルの外観図。
【図2】本発明の各実施の形態に係る油圧ショベルに搭載される蓄電システムの構成図。
【図3】本発明の各実施の形態における無負荷時電池電圧OCVと充電率との関数テーブルを示す図。
【図4】本発明の各実施の形態における電池抵抗Rと充電率との関数テーブルを示す図。
【図5】本発明の各実施の形態に係る油圧ショベルにおける制限電力モードごとの制限電力及び最低動作電圧を示す図。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る建機管理ユニットにおいて実行される残電力量算出処理のフローチャート。
【図7】油圧ショベルの状態に応じて制限電力モードが自動的に選択される場合の残電力量の計算例の説明図。
【図8】各制限電力モードにおける総電力量E01,E02及び残電力量E1,E2の計算結果を示す図。
【図9】電池パックの電圧に応じて制限電力モードが自動的に選択される場合における表示装置の表示画面を示す図。
【図10】モード切換装置を介して制限電力モードが手動で選択される場合の残電力量の計算例の説明図。
【図11】モード切換装置からの入力に応じて制限電力モードが手動で選択可能な場合における表示装置の表示画面を示す図。
【図12】制限電力モードが半自動で選択される場合における表示装置の表示画面を示す図。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係る電池管理ユニットにおいて実行される残電力量算出処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1は本発明の各実施の形態に係るバッテリ式油圧ショベル(バッテリショベル)の外観図である。この図に示す油圧ショベルは、ブーム1a、アーム1b及びバケット1cを有する多関節型の作業装置1Aと、上部旋回体1d及び下部走行体1eを有する車体1Bを備えている。
【0014】
ブーム1aは、上部旋回体1dに回動可能に支持されており、油圧シリンダ(ブームシリンダ)3aにより駆動される。アーム1bは、ブーム1aに回動可能に支持されており、油圧シリンダ(アームシリンダ)3bにより駆動される。バケット1cは、アーム1bに回動可能に支持されており、油圧シリンダ(バケットシリンダ)3cにより駆動される。上部旋回体1dは電動モータ(旋回モータ)(図示せず)により旋回駆動され、下部走行体1eは左右の走行モータ(油圧モータ)3e,3f(図示せず)により駆動される。油圧シリンダ3a、油圧シリンダ3b、油圧シリンダ3c及び走行モータ3e,3fは、油圧ポンプ6(図2参照)によってタンク9から汲み上げられる圧油によって駆動される。
【0015】
図2は、本発明の各実施の形態に係る油圧ショベルに搭載される蓄電システムの構成図である。この図に示す蓄電システムは、電池パック18と、電池パック18の出力を制限するために定められた複数の制限電力モード(後の詳述)に基づいて油圧ショベルを制御するための建設機械(建機)管理ユニット(主制御装置)12と、電池パック18の残電力量をメータ表示90するための表示装置14と、制限電力モードをオペレータが所望するものに切り換えるためのモード切換装置19と、電池パック18からの直流電力を交流電力に変換しつつモータ17を制御するためのインバータ装置(電力変換装置)16と、電池パック18の電力によって動力を発生する三相交流モータ(電動機)17と、モータ17によって駆動される油圧ポンプ6を備えている。
【0016】
建機管理ユニット12は、ハードウェア構成として、各種の制御プログラムを実行するための演算処理装置(例えば、CPU)、当該制御プログラムをはじめ各種データを記憶するための記憶装置(例えば、ROM、RAM)等を備えている(いずれも図示せず)。
【0017】
電池パック18は、電池モジュール10と、電池管理ユニット(電池制御装置)11と、電池管理ユニット11を電池モジュール10に接続するための通信線15とを含んでいる。電池パック18は、油圧ショベルから着脱可能であり、電池の劣化や構成部品の不具合等に応じて適宜交換可能となっている。
【0018】
電池モジュール10は、電池単位のモジュールであり、複数の電池(電池セル)を直並列に適宜接続することで構成されている。一般的に、電池モジュール10は、4直列から40直列ぐらいに電池を接続することで構成されており、箱の中に収められている。なお、図2に示した電池パック18では直列に電池モジュール10を接続しているが直並列に接続する等しても良い。
【0019】
電池管理ユニット11は、電池パック18の充電状態(SOC:State of Charge)、劣化度(SOH:State of health)等を計算し、また、電池パック18が過充電・過放電になっていないかを監視している。電池管理ユニット11は、ハードウェア構成として、各種の制御プログラムを実行するための演算処理装置(例えば、CPU)、当該制御プログラムをはじめ各種データを記憶するための記憶装置(例えば、ROM、RAM)等を備えている(いずれも図示せず)。本実施の形態における電池管理ユニット11では、電池パック18の充電状態を示す値として「充電率」を算出するものとする。ここで充電率は、「100%−100×現在の満充電からの放電量/満充電容量」として定義できる。
【0020】
また、電池管理ユニット11には、電池パック18を構成する電池の仕様情報として無負荷時電池電圧OCV[V]及び電池抵抗R[Ω]が記憶されている。また、これらの値(OCV[V],R[Ω])は電池の充電状態に応じて変化するので、本実施の形態における電池管理ユニット11は、充電率[%]と無負荷時電池電圧OCV[V]の関係と、充電率[%]と電池抵抗R[Ω]の関係とをテーブルの形式で記憶している(図3及び図4参照)。無負荷時電池電圧OCV及び電池抵抗Rは、これらのテーブルの情報と電池管理ユニット11によって算出された充電率に基づいて算出される。
【0021】
図3は本発明の各実施の形態における無負荷時電池電圧OCVと充電率との関数テーブル(OCVテーブル)を示す図である。この図において、OCVは、電池が充放電を停止して暫くしてからの電圧OCV[V]と充電率[%]の関数テーブルとなっている。この図の例では充電率は10%刻みになっており、各充電率に対してOCVが設定されている。そのため、算出された充電率がOCVテーブルに格納されていない値である場合には、当該値に最も近い2つ充電率に対応する2つのOCVを利用し、当該2つのOCVから最終的なOCVを算出するものとする。すなわち、充電率15%のときのOCVを求めるには、充電率10%と20%のときのOCVの値から算出すれば良い。
【0022】
また、後述する式(3)におけるOCV(x)のx(放電量[Ah])に換算するには、次式(1)を利用すれば良い。充電率の初期値を算出する方法としては、建設機械を動かす前の電圧に基づいて図3のOCVテーブルより計算するものがある。建設機械を動かしている途中の充電率は、「充電率初期値+電流積分/満充電容量×100」として算出しても良い。また、建設機械を動かしている途中で、抵抗に基づいて電池の開放電圧を推定して、図3のOCVテーブルより、充電率を推定しても良い。
【0023】
【数1】

【0024】
なお、図3のOCVテーブルは電池セルごとの電圧を示している。そのため、電池パック18全体の電圧を算出する場合には、電池パック18に含まれる電池の個数(例えば、直列個数分)を乗じて計算するものとする。なお、OCVテーブルを設定する方法としては、充電率を0%から100%まで10%刻みで変化させ、充放電を停止して2時間放置したときの電圧に基づいてテーブルを作成するものがある。
【0025】
電池の満充電容量は使用するにつれ劣化するため、公知の方法(例えば、特開平6−242193号公報に記載の技術)を用いて電池管理ユニット11で計算して適宜アップデートすることが好ましい。満充電容量の具体的な計算例としては、油圧ショベルが動く前の充電率を図3のOCVテーブルを用いて計算し、動いている最中の放電量を別途計算し、稼働終了後の充電率を図3のOCVテーブルを用い計算し、これら計算した値と次式(2)を利用して求める。なお、電池管理ユニット11には電流計が設けられている。そのため、次式(2)における放電量Qは、当該電流計の出力値(電流値)の積分値として計算すれば良い。
【0026】
【数2】

【0027】
図4は本発明の各実施の形態における電池抵抗Rと充電率との関数テーブル(抵抗テーブル)を示す図である。この図に示す例では、抵抗Rは、電池パック18の充電率[%]と電流値[A](放電側を+(プラス)とする)によって決定される。この抵抗テーブルにおける充電率は10%刻みであるため、図3の場合と同じように、充電率15%の場合の抵抗を算出する場合には充電率10%と20%の値を利用するものとする。一方、電流は20[A]刻みであるため、30[A]の場合の抵抗を算出する場合には、20[A]のデータと40[A]のデータを利用するものとする。
【0028】
なお、抵抗テーブルを設定する方法としては、例えば次のようなものがある。すなわち、例えば、充電率40%で電流20[A]の抵抗を設定する場合には、充電率40%で電流を20[A]にして暫く経過した後(例えば、2分)の電圧Vsの値とOCVの値との差を20[A]の値で割って算出する方法がある。また、抵抗Rは電池が劣化するにつれて値が大きくなるため、抵抗テーブルは、電池の劣化に応じて適宜アップデートすることが好ましい。この場合には、建設機械を動かしている最中で、一定電流、一定時間(例えば、2分)経過した場合の電圧を元に、OCVとの差を電流で割った値Rを求める。さらに、図4の抵抗テーブルにおいて充電率と電流に該当する値をrとし、両者の比(R/r)を求める。そして、当該R/rを図4のテーブルの抵抗の全てに掛けて抵抗テーブルをアップデートする方法がある。
【0029】
なお、電池の抵抗は温度によっても変化するため、図4の因子(充電率及び電流)に温度を加えて抵抗テーブルを設定しても良い。
【0030】
図2に戻り、電池管理ユニット11と建設管理ユニット12は通信線13で接続されており、各管理ユニット11,12に記憶された情報(例えば、OCVテーブル、抵抗テーブル)や各管理ユニット11,12が算出した情報等を通信線13を介してやり取りしている。電池管理ユニット11は、さらに通信線15を介して電池モジュール10と接続されており、電池モジュール10と電圧、温度、電流等の情報をやり取りする。電池パック18の電力は、インバータ16に供給される。
【0031】
建機管理ユニット12は、本実施の形態では、モード切換装置19からの入力に応じた制御電力モードの切換と、インバータ装置16の制御による油圧ポンプ6の制御と、表示装置14の表示制御を主に行う。また、建機管理ユニット12には、複数の制限電力モードごとに定められた油圧ショベルの制限電力及び動作電圧が記憶されている。
【0032】
図5は本発明の各実施の形態に係る油圧ショベルにおける制限電力モードごとの制限電力[kWh]及び最低動作電圧[V]を示す図である。この図に示すように、建機管理ユニット12には制限電力モードの数が記憶されている。本実施の形態では、2つの制限電力モード(第1制限電力モード34、第2制限電力モード35)が存在する。第1制限電力モード34は、油圧ショベルをフルパワーで動かせるモード(フルパワーモード)であり、第2制限電力モード35は電力消費を制限したモード(エコノミーモード(省電力モード))である。ここで、「制限電力」とは、これ以上の電力を出さないという電力の上限値であり、図5の例ではフルパワーモードで50[kW]、エコモードで30[kW]に設定されている。また、「最低動作電圧」とは、これ以下の電圧ではインバータ装置16の動作が保障できないという動作電圧の下限値であり、図5の例では両モードとも170[V]に設定されている。
【0033】
なお、各制限電力モードにおける制限電力の値は設計者等が予め決めた値を用いても良い。また、インバータ装置16やモータ17の温度をセンサ等で検出し、当該検出値に応じて適宜補正した値を制限電力として利用しても良い。この場合の補正の方法としては、例えば、モータ17の温度が外気温よりも相対的に15℃高い場合に、デフォールトの設定値に比べて制限電力を10%下げた値とするものがある。
【0034】
また、上記の例では、インバータ装置16の動作電圧を各制限電力モードの最低動作電圧と設定したが、当該最低動作電圧よりも大きい値であれば設計者等が予め決めた値を動作電圧として利用しても良い。例えば、モータ17の定格電圧より10%小さい値を動作電圧として利用しても良い。さらに、図5の例では、各制限電力モードで共通の値(170[V])を利用しているが、制限電力モード毎に違う値を動作電圧として用いても良い。なお、図5の例では制限電力モードが2つの例であるが、モード数を3つ以上にしても良いことは言うまでもない。
【0035】
モード切換装置19は、建機管理ユニット12に記憶された複数の制限電力モードの中から1の制限電力モードを選択するための装置であり、建機管理ユニット12と接続されている。建機管理ユニット12では、モード切換装置19を介してオペレータに選択された制限電力モードが選択され、当該選択された制限電力モードに基づいて油圧ショベルの駆動が制御される。なお、建機管理ユニット12が、油圧ショベルの状態に応じて制限電力モードを自動的に選択するように構成した場合(例えば、制限電力が最も小さいモード(本実施の形態におけるエコモード)しか選択できない程度に電池パック18の残電力量が少ないとき)には、モード切換装置19に選択されたモードよりも、建機管理ユニット12に自動的に選択されたモードが優先される場合がある。
【0036】
表示装置14は、建機管理ユニット12と接続されており、建機管理ユニット12からの入力値に基づいて、複数の制限電力モードごとの電池パック18の残電力量と、各制限電力モードで油圧ショベルがどれくらいのあいだ稼働できるかを示す残稼働時間(例えば、後の図10参照)とを表示する。表示装置14の画面上は、電池パック18の残電力量と油圧ショベルの残稼働時間を表示するための表示部が設けられている(詳細は後述する)。
【0037】
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る建機管理ユニット12において実行される残電力量算出処理のフローチャートである。この図に示すフローチャートは、油圧ショベルの電源がOFFからONになった時に開始される。まず初めに、電池管理ユニット11から建機管理ユニット12に対して、電池パック18の仕様情報としてOCVテーブル(図3参照)及び抵抗テーブル(図4参照)を入力する処理が実行される(ステップ121)。そして、電池管理ユニット11は電池パック18の充電率(充電状態)及び放電量を算出して建機管理ユニット12に出力する処理を実行し、建機管理ユニット12は当該充電率を入力する処理を実行する(ステップ122)。
【0038】
次に、建機管理ユニット12は、電池管理ユニット11から入力されたOCVテーブル、抵抗テーブル及び充電率に基づいて、その時の充電状態における電池パック18のOCVと抵抗値を算出する処理を実行する(ステップ123)。
【0039】
次に、建機管理ユニット12は、ステップ123で算出した電池パック18のOCV及び抵抗と、複数の制限電力モードごとに定められた制限電力及び動作電圧(図5参照)に基づいて、制限電力モードごとの電池パック18の残電力量を算出する(ステップ124)。次に、この計算例を図7で説明する。ここでは、まず、建機管理ユニット12が、複数の制限電力モードの中から1の制限電力モードを油圧ショベルの状態(以下の例では、各制限電力モードの制限電力と電池パック18の電池電圧)に応じて自動的に選択する場合における計算例について説明する。以下の例では、制限電力モードは、制限電力が相対的に大きい第1制限電力モードが満充電時に選択されており、その後、電池パック18の電池電圧が第1制限電力モードの最低動作電圧に達した時(電池パック18の放電量がx1(後述)に達した時)に、制限電力が相対的に小さい第2制限電力モードが自動的に選択されるものとする。
【0040】
図7は油圧ショベルの状態に応じて制限電力モードが自動的に選択される場合の残電力量の計算例の説明図である。この図に示す縦軸41は電池パック18の電圧[V]を示し、横軸42は電池パック18の放電量[Ah](満充電状態からの放電量[Ah]の積算値)を示す。横軸42上のx0は現在の放電量を示す。また、最低動作電圧43は、建機管理ユニット12に予め記憶され、制限電力モードごとに設定された図5の値(170[V])である。この図における第1電池電圧曲線44は、第1制限電力モード(図5のフルパワーモードに対応)のときの電流で電池パック18を放電した時のカーブを示す。ここで言う第1制限電力モードのときの電流(I)は、次式(3)の解として求めることができる。
【0041】
【数3】

【0042】
上記(3)式において、ステップ123においてOCV及びRが算出されており、制限電力は図5に示したように予め設定されているため、上記(3)式はIについての2次方程式となる。そのため、(3)式からは2つのIの解(以下I1とする)が得られるが、ここでは2つの解のうち小さい方(電流が小さい方(すなわち、予め設定した制限電流以下))の方を選ぶ。ここで、次に次式(4)で得られる曲線が電流I1を流した時の第1電池電圧曲線44となる。
【0043】
【数4】

【0044】
次に、第1電池電圧曲線44が最低動作電圧43に達する放電量x(x1とする)を求める。これは次式(5)を解くことにより得られる。
【0045】
【数5】

【0046】
このとき、第1制限電力モードで油圧ショベルを駆動したときの電池パック18の残電力量E1は、現在の放電量x0から放電量x1までの区間において、式(4)を放電量xで積分した値(領域46の面積)として得られる。なお、第1制限電力モードの総電力量E01(すなわち、満充電の状態からx1まで放電したときの電力量の合計)はx=0からx1までの区間において式(4)を放電量xで積分した値(領域45と領域46の面積の合計)として得られる。なお、総電力量E01は、油圧ショベルの起動時の残電力量から算出しても良い。
【0047】
次に、第2制限電力モードの残電力量E2を求める。これは第1制限電力モードの残電力量E1と同様に求める。初めに式(3)の解(I2とする)を求め、次式(6)で電流I2を流した時の第2電池電圧曲線47を求める。次に、第2電池電圧曲線47が最低動作電圧43に達する放電量x(x2とする)を求める。
【0048】
これにより、第2制限電力モードで油圧ショベルを駆動するときの電池パック18の総電力量E02は、放電量x1から放電量x2までの区間において、式(6)を放電量xで積分した値(領域48と領域49の面積の合計)として得られる。また、第2制限電力モードで油圧ショベルを駆動するときの電池パック18の残電力量E2は、x1>x0の場合(すなわち、第1制限電力モードが選択されている場合)には、放電量x1からx2までの区間において式(6)をxで積分した値(領域48と領域49の面積の合計)となり、x1<x0の場合(すなわち、自動的に第2制限電力モードに切り換わった後)には、放電量x0からx2までの区間において式(6)をxで積分した値(領域48と領域49の面積の合計)となる。
【0049】
【数6】

【0050】
図8は各制限電力モードにおける総電力量E01,E02及び残電力量E1,E2の計算結果を示す図である。この図の例では、第1制限電力モード81と、第2制限電力モード82の2つの情報から構成される。そして、第1制限電力モードの情報は、総電力量83と、残電力量84で構成される。第2制限電力モードも同様に、総電力量と残電力量から構成される。建機管理ユニット12は、これらの計算結果に基づいて各制限電力モードの残電力量及び残稼働時間を表示装置14に表示するための計算を実行する。
【0051】
図9は電池パック18の電圧に応じて制限電力モードが自動的に選択される場合における表示装置14の表示画面を示す図である。ここでは、前述のように各制限電力モードの制限電力及び電池パック18の電圧を基準にして、第1及び第2制限電力モードが予め定められた順番で選択されるものとする。具体的には、まず、電池電圧が第1制限電力モードの動作電圧(170[V])に達するまでの間は第1制限電力モードが選択され、次に第2制限電力モードが選択されるものとする。また、この図に示す表示画面は、選択モード表示部100と、メータ表示部90と、残電力量表示部96と、残稼働時間表示部97を備えている。
【0052】
選択モード表示部100は、建機管理ユニット12によって現在選択されている制限電力モードが表示される部分であり、図示した例では建機管理ユニット12によってフルパワーモード(第1制限電力モード)が選択されている。残電力量表示部96は、電池パック18の残電力量が表示される部分であり、上記の順番で第1及び第2制限電力モードが選択された場合における残電力量の合計値が表示される。なお、図中の例では総電力量に対する百分率[%]で残電力量を表示しているが、電力量[kWh]で表示しても良い。残稼働時間表示部97は、制限電力モードごとに決められた平均電力[W]で油圧ショベルを稼働したときの残稼働時間[h]が表示される部分であり、上記の順番で第1及び第2制限電力モードが選択された場合における残稼働時間の合計値が表示される。
【0053】
メータ表示部90は、現在の電池パック18の残電力量92を視覚的に表示する部分であり、建機管理ユニット12によって現在選択されている制限電力モード(第1制限電力モード)の残電力量を示す第1メータ部93と、建機管理ユニット12によって最後に選択される制限電力モード(第2制限電力モード)の残電力量を示す第2メータ部94と、これまでの消費電力量を示す消費メータ部91から構成されている。図示した例では消費メータ部91は黒で示されている。
【0054】
本実施の形態における現在の電池パック18の残電力量92は、第1制限電力モードの残電力量と第2制限電力モードの残電力量の合計値であり、下記式(7)に基づいて算出している。
【0055】
【数7】

【0056】
また、図示の例において、第1メータ部93と第2メータ部94の境界位置95となる第2制限電力モードの残電力量は下記式(8)に基づいて算出している。
【0057】
【数8】

【0058】
E02:第2制限電力モードの総電力量(Wh)
また、図示した例では残電力量をメータ表示したが、残稼働時間をメータ表示しても良い。この場合には、下記式(9−1)〜(9−3)に基づいて算出すれば良く、第1メータ部93と第2メータ部94の境界位置95となる第2制限電力モードの残電力量は下記式(10−1)〜(10−3)基づいて算出すれば良い。ここで、残稼働時間を算出する際に利用する「各制限電力モードの平均電力量」は、建設機械側での直近の一定時間の値(例えば5分)、予め設定した値、又は過去の実績値を用いても良い。
【0059】
【数9】

【0060】
【数10】

【0061】
ところで、本実施の形態では、最後に選択される第2メータ部91の上部に、最初に選択される第1メータ部93を連結して表示することで2つのモードの残電力量を合計して表示している。このように予め決められた順番にメータ部を連結して表示すると、現在及び今後選択される制限電力モードと残電力量の関係を容易に把握することができる。
【0062】
なお、本実施の形態では2つの制限電力モードが設定されている場合について説明したが、3つ以上の制限電力モードが設定されている場合にも本発明は適用可能である。この場合には、建機管理ユニット12によって現在選択されている制限電力モードの残電力量と、当該選択されている制限電力モードを除いた残りの制限電力モードのうち少なくとも1つの残電力量(例えば、全ての制限電力モードの中で最も制限電力の小さいものの残電力量)を表示すれば良い。
【0063】
上記のようにステップ124において各制限電力モードの残電力量(残稼働時間)を算出する処理を実行したら、当該算出結果を図9のように表示するための表示信号を表示装置14に出力する処理を実行する(ステップ125)。これにより、表示装置14には図9に示したように残電力量(残稼働時間)等が表示される。ステップ125が終了したら、油圧ショベルの電源がOFFに切り換えられたか否かをチェックする処理を実行し(ステップ126)、電源がONであればステップ122以降の処理を繰り返す。一方、電源がOFFであれば一連の処理を終了する。
【0064】
なお、ステップ126は建機管理ユニット12で判定することが好ましい。また、上記の一連の処理を繰り返す周期として、所定の設定値(例えば、100[ms]や1[s])を使用しても良い。また、2周目以降の処理では、ステップ124における総電力量の算出処理を省略しても良い。さらに、ステップ121でOCV・抵抗テーブルを一旦入力した後は、当該テーブルを建機管理ユニット12の記憶装置に記憶しておき、次回の電池パック18の交換まではステップ121を省略しても良い。
【0065】
以上のように構成した本実施の形態によれば、現在選択されていない制限電力モード(第2制限電力モード)に係る残電力量を含めたトータルの残電力量が表示装置14に表示されるので、実質的な残電力量を確認しながら作業を進めることができる。また、電池パックの仕様情報(電池電圧及び内部抵抗)を算出するための情報(OCVテーブル及び抵抗テーブル)を建機管理ユニット12に入力する処理(ステップ121)が一連の残電力量算出処理の中に含まれており、建機管理ユニット12に一旦記憶された交換前の電池パックの仕様情報を新しいものに書き換える作業が不要になるので、電池交換作業を簡易に行うことができる。
【0066】
次に、本実施の形態の変形例として、モード切換装置19を介して第1及び第2制限電力モードが手動で切り換えられる場合の残電力量の計算例を図10で説明する。図10はモード切換装置19を介して制限電力モードが手動で選択される場合の残電力量の計算例の説明図である。この場合は、放電量がx1に達する前でも第2制限電力モードを任意に選択することができるので、2つの制限電力モードの残電力量を個別に算出することになる。
【0067】
この場合における第1制限電力モードで油圧ショベルを駆動するときの電池パック18の残電力量E1の計算は図7を用いて説明した前述の方法と同じであり、式(4)から第1電池電圧曲線44を求め、それを放電量xで積分した値(領域46の面積)から算出することができる。
【0068】
一方、第2制限電力モードにおいては、前述した方法と同様に式(3)で電流I2を求め、式(6)で電流I2を流した時の第2電池電圧曲線47を求める。さらに、電池電圧が最低動作電圧43に達する放電量x2を求める。第2制限電力モードの残電力量E2は、放電量x0から放電量x2までの区間において、式(6)を放電量xで積分した値(領域46、48,49,50の面積の合計)として得られる。また、第2制限電力モード2の総電力量E02は、式(6)を放電量xで0からx2まで積分した値(領域45,46、48,49,50,51の面積の合計)となる。
【0069】
図11はモード切換装置19からの入力に応じて制限電力モードが手動で選択可能な場合における表示装置14の表示画面を示す図である。この図に示す表示画面は、選択モード表示部100と、残電力量表示部96Aと、残稼働時間表示部97Aと、第1メータ表示部90Aと、第2メータ表示部90Bを備えている。
【0070】
残電力量表示部96Aと残稼働時間表示部97Aは、各制限電力モードの残電力量と残稼働時間が表示される部分である。現在選択されている制限電力モードに係る残電力量及び残稼働時間の視認性を向上させる観点から、現在選択されていない制限電力モード(エコモード)に係る残電力量及び残稼働時間は現在選択されているもの(パワーモード)に係る残電力量及び残稼働時間と比較して視認しづらいようにしても良い。すなわち、例えば、図示の例のように網掛け表示にしても良いし、半透明表示にしても良いし、非表示にしても良い。なお、図示の例においてオペレータが手動でエコモードを選んだ場合には、パワーモードが網掛け表示される。
【0071】
第1メータ表示部90Aは、建機管理ユニット12によって現在選択されている制限電力モード(第1制限電力モード)の残電力量92Aを視覚的に表示する部分であり、第1制限電力モードが選択され続けたときの残電力量を示すメータ部93と、これまでの消費電力量を示す消費メータ部91Aから構成されている。
【0072】
第2メータ表示部90Bは、建機管理ユニット12によって現在選択されているものを除いた残りの制限電力モード(第2制限電力モード)の残電力量92Bを視覚的に表示する部分であり、第2制限電力モードが選択され続けたときの残電力量を示すメータ部94と、これまでの消費電力量を示す消費メータ部91Bから構成されている。
【0073】
この場合の例における第1制限電力モードの残電力量92Aは下記式(11)に基づいて算出することができ、第2制限電力モードの残電力量92Bは下記式(12)に基づいて算出することができる。
【0074】
【数11】

【0075】
【数12】

【0076】
また、図示した例では残電力量をメータ表示したが、先の場合と同様に、残稼働時間をメータ表示しても良い。この場合の例における第1制限電力モードの残電力量92Aは下記式(13)に基づいて算出することができ、第2制限電力モードの残電力量92Bは下記式(14)に基づいて算出することができる。
【0077】
【数13】

【0078】
【数14】

【0079】
W2:第2制限電力モードの平均電力(W)
上記のようにステップ124において各制限電力モードの残電力量(残稼働時間)を算出する処理を実行したら、当該算出結果を図11のように表示するための表示信号を表示装置14に出力する処理を実行する(ステップ125)。以降の処理は先に説明した場合と同じなので省略する。
【0080】
以上のように構成した変形例によれば、制限電力モードが手動で切換可能な場合において、現在選択されていない制限電力モードに係る残電力量も表示装置14に表示されるので、当該選択されていない制限電力モードで油圧ショベルを稼働させた場合の残電力量を容易に把握することができる。これにより、実質的な残電力量を確認しながら作業を進めることができるとともに、作業内容及び残電力量を考慮した制限電力モードの選択が容易になる。また、建機管理ユニット12の情報を書き換える手間が軽減されるので電池交換作業も容易である。
【0081】
次に、本実施の形態の他の変形例として、モード切換装置19を介して第1及び第2制限電力モードが手動で切り換えられるが、第1制限電力モードが選択されている場合に電池パック18の電圧が動作電圧に達した時に自動的に第2制限電力モードが選択される場合(以下において「制限電力モードが半自動で選択される場合」と称することがある)の表示例を図12で説明する。
【0082】
図12は制限電力モードが半自動で選択される場合における表示装置14の表示画面を示す図である。この図に示す表示画面は、第1メータ表示部90と、第2メータ表示部90Bと、選択モード表示部100と、残電力量表示部96Aと、残稼働時間表示部97Aを備えている。
【0083】
第1メータ表示部90は、図9で示したメータ表示部90と同じものである。すなわち、第1制限電力モードでは電池電圧が動作電圧まで低下すると第2制限電力モードが自動的に選択される仕様となっており、第1及び第2制限電力モードによる残電力量が同時に表示されている。なお、図示した例のように残電力量で表示する場合、第1制限電力モードの残電力量は上記式(7)を利用すれば良く、稼働時間で表示する場合には上記式(9)を利用すれば良い。
【0084】
上記のようにステップ124において各制限電力モードの残電力量(残稼働時間)を算出する処理を実行したら、当該算出結果を図12のように表示するための表示信号を表示装置14に出力する処理を実行する(ステップ125)。以降の処理は先に説明した場合と同じなので省略する。
【0085】
上記のように構成した変形例によれば、先の変形例の効果に加えて、電池電圧が低下して最終的に自動的に選択される制限電力モード(第2制限電力モード)に係る残電力量を考慮することが容易になるので、実質的な残電力量を考慮して作業を行うことができる。
【0086】
なお、上記2つの変形例では、現在選択されている制限電力モードのメータ表示部と、選択されていない制限電力モードのメータ表示部との双方を表示する仕様としたが、後者に対する前者の視認性を相対的に向上させる観点から、後者を網掛け表示する等して視認性を低下させる処理を実行しても良い(図11で説明した場合と同様な処理を行うことができる)。なお、後者を非表示にする場合には、現在選択されていない制限電力モードの残電力量をメータ表示するか否かを切り換えるための表示切換装置を建機管理ユニット12に別途接続し、当該切換装置を介して表示/非表示を適宜切り換えるようにしても良い。
【0087】
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は残電力量を電池管理ユニット11で算出する点で先の実施の形態と異なる。
【0088】
図13は本発明の第2の実施の形態に係る電池管理ユニット11において実行される残電力量算出処理のフローチャートである。この図に示すフローチャートは、油圧ショベルの電源がOFFからONになった時に開始される。まず初めに、建機管理ユニット12から電池管理ユニット11に対して、各制限電力モードの制限電力値及び動作電圧値(図5参照)を入力する処理が実行される(ステップ21)。なお、モータ温度、インバータ温度又は外気温によって制限電力が変化しないシステムの場合には、工場出荷時又は電池交換時のみにステップ21を行っても良い。
【0089】
次に、電池管理ユニット11は、電池パック18の充電率を算出する処理を実行し(ステップ22)、さらに、当該充電率、OCVテーブル及び抵抗テーブルに基づいて、その時の充電状態における電池パック18のOCVと抵抗値を算出する処理を実行する(ステップ23)。
【0090】
次に、電池管理ユニット11は、ステップ23で算出した電池パック18のOCV及び抵抗と、複数の制限電力モードごとに定められた制限電力及び動作電圧に基づいて、制限電力モードごとの電池パック18の残電力量を算出する(ステップ24)。算出方法の詳細については、先の実施の形態と同様なので省略する。
【0091】
ステップ24において各制限電力モードの残電力量(残稼働時間)を算出する処理を実行したら、当該算出結果を建機管理ユニット12に出力する(ステップ25)。この場合には、例えば図8に示した形式でステップ24の算出結果を出力する方法がある。電池管理ユニット11から算出結果の入力を受けた建機管理ユニット12は、当該算出結果を表示するための表示信号を表示装置14に出力する処理を実行する。この処理の詳細は、先の実施の形態で説明したステップ125と同様なので省略する。これにより、表示装置14に残電力量(又は残稼働時間)等が表示される。
【0092】
ステップ25及び建機管理ユニット12による表示が終了したら、油圧ショベルの電源がOFFに切り換えられたか否かをチェックする処理を実行し(ステップ26)、電源がONであればステップ22以降の処理を繰り返す。一方、電源がOFFであれば一連の処理を終了する。
【0093】
このように、電池管理ユニット11で残電力量を算出しても電池パック18の残電力量(又は残稼働時間)を表示することができるので、第1の実施の形態と同様の効果を発揮することができる。
【0094】
なお、以上の説明では、いわゆるバッテリショベルの場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれだけに限らず蓄電池の電力を動力に変換するシステムを備える建設機械であれば適用可能である。この種の建設機械としては、例えば、蓄電池からの電力で走行用の電動機を駆動するホイールローダ及びダンプトラック等がある。また、電動式の建設機械に限らず、エンジン及び発電電動機で電動アクチュエータを駆動するハイブリッド式の建設機械にも適用可能である。
【符号の説明】
【0095】
6 油圧ポンプ
10 電池モジュール
11 電池管理ユニット
12 建機管理ユニット
14 表示装置
16 インバータ装置
17 モータ
18 電池パック
19 モード切換装置
61 電池開放電圧
62 充電率
71 充電率
72 電流
73 抵抗
90 メータ表示部
92 残電力量
93 第1制限電力モードの残電力量
94 第2制限電力モードの残電力量
96 残電力量表示部
97 残稼働時間表示部
100 選択モード表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池の電力を動力に変換する建設機械において、
前記蓄電池の充放電を監視するためのものであって、前記蓄電池の仕様情報を記憶しており、さらに前記蓄電池の充電状態を算出する電池制御手段と、
蓄電池の出力を制限するために定められた複数の制限電力モードに基づいて前記建設機械を制御するためのものであって、前記複数の制限電力モードごとに定められた制限電力及び動作電圧、さらに前記電池制御手段から入力される前記仕様情報及び前記充電状態に基づいて、前記複数の制限電力モードごとの前記蓄電池の残電力量を算出する主制御手段と、
当該主制御手段で算出された前記残電力量に基づいて、前記複数の制限電力モードごとの残電力量を表示するための表示装置とを備えることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
蓄電池の電力を動力に変換する建設機械において、
蓄電池の出力を制限するために定められた複数の制限電力モードに基づいて前記建設機械を制御するためのものであって、当該複数の制限電力モードごとに定められた制限電力及び動作電圧を記憶した主制御手段と、
前記蓄電池の充放電を監視するためのものであって、前記蓄電池の充電状態を算出し、当該充電状態、前記蓄電池の仕様情報、さらに前記主制御手段から入力される前記複数の制限電力モードごとの前記制限電力及び前記動作電圧に基づいて、前記複数の制限電力モードごとの前記蓄電池の残電力量を算出する電池制御手段と、
前記主制御手段で算出された前記残電力量に基づいて、前記複数の制限電力モードごとの残電力量を表示するための表示装置とを備えることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建設機械において、
前記複数の制限電力モードの中から1の制限電力モードを選択するためのモード切換手段をさらに備え、
前記表示装置には、前記モード切換手段によって選択されている制限電力モードの残電力量と、当該選択されている制限電力モードを除いた残りの制限電力モードのうち少なくとも1つの残電力量とが表示されることを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の建設機械において、
前記主制御手段は、前記複数の制限電力モードの中から1の制限電力モードを前記建設機械の状態に応じて選択し、
前記表示装置には、前記主制御手段によって選択されている制限電力モードの残電力量と、当該選択されている制限電力モードを除いた残りの制限電力モードのうち少なくとも1つの残電力量とが表示されることを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項4に記載の建設機械において、
前記主制御手段は、予め決められた順番に従って前記制限電力モードを選択し、
前記表示装置には、前記複数の制限電力モードごとの残電力量が前記順番で連結して表示されることを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項1に記載の建設機械において、
前記主制御手段は、前記残電力量に基づいて前記複数の制限電力モードごとの前記建設機械の残稼働時間を算出し、
前記表示装置は、前記主制御手段で算出された前記残稼働時間に基づいて、前記前記複数の制限電力モードごとの前記建設機械の残稼働時間を表示することを特徴とする建設機械。
【請求項7】
請求項2に記載の建設機械において、
前記電池制御手段は、前記残電力量に基づいて前記複数の制限電力モードごとの前記建設機械の残稼働時間を算出し、
前記表示装置は、前記電池制御手段で算出された前記残稼働時間に基づいて、前記前記複数の制限電力モードごとの前記建設機械の残稼働時間を表示することを特徴とする建設機械。
【請求項8】
蓄電池の電力を動力に変換する建設機械において、
前記蓄電池の出力を制限するために定められた複数の制限電力モードに基づいて前記建設機械を制御するものであって、前記蓄電池の仕様情報及び充電状態、さらに前記複数の制限電力モードごとに定められた制限電力及び動作電圧に基づいて、前記複数の制限電力モードごとの前記蓄電池の残電力量を算出する制御手段と、
当該制御手段で算出された前記残電力量に基づいて、その時に選択されている制限電力モードの残電力量と、当該選択されている制限電力モードを除いた残りの制限電力モードのうち少なくとも1つの残電力量とを表示するための表示装置とを備えることを特徴とする建設機械。
【請求項9】
蓄電池及び当該蓄電池の充放電を監視するための電池制御手段を有する電池パックと、前記蓄電池の出力を制限するために定められた複数の制限電力モードに基づいて建設機械を制御するための主制御手段とを備える建設機械の電池パックにおいて、
当該電池制御手段は、
前記蓄電池の充電状態を算出する処理と、
当該算出された充電状態、前記蓄電池の仕様情報、さらに前記主制御手段から入力される前記複数の制限電力モードごとの制限電力及び動作電圧に基づいて、前記複数の制限電力モードごとの前記蓄電池の残電力量を算出する処理と、
当該算出した前記複数の制限電力モードごとの残電力量を前記主制御手段に出力する処理とを実行することを特徴とする建設機械の電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−68020(P2013−68020A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208102(P2011−208102)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】