建設機械のジャッキアップ装置
【課題】大型の補助クレーンを用いる必要なく、すなわちユーザに過大な経済的負担を強いることなく、安価に分解、組立、輸送が行なえ、上部旋回体と地面との間のクリアランスが小さい場合でも作業性よく、安定した状態で使用することができる建設機械のジャッキアップ装置を提供する。
【解決手段】ジャッキアップ装置20はセンターフレーム3への取付け用ブラケット23およびそれに取付けられた油圧シリンダ22を有する。センターフレーム3の下面に穴31aを設け、前記ブラケット23に、フレーム受け部29と、そのフレーム受け部29に設けられ、前記穴31aに下方より挿脱可能に嵌めるピン30等の嵌合体とを有する。センターフレーム3に係止させてジャッキアップ装置の落下を防止する落下防止用ピン42等の落下防止手段を有する。前記ピン30等の嵌合体を前記ビーム3bの下面の穴31aに嵌合し、かつ前記落下防止用ピン42等によりジャッキアップ装置20をセンターフレーム3に支持させてセンターフレーム3に着脱可能に取付けられる。
【解決手段】ジャッキアップ装置20はセンターフレーム3への取付け用ブラケット23およびそれに取付けられた油圧シリンダ22を有する。センターフレーム3の下面に穴31aを設け、前記ブラケット23に、フレーム受け部29と、そのフレーム受け部29に設けられ、前記穴31aに下方より挿脱可能に嵌めるピン30等の嵌合体とを有する。センターフレーム3に係止させてジャッキアップ装置の落下を防止する落下防止用ピン42等の落下防止手段を有する。前記ピン30等の嵌合体を前記ビーム3bの下面の穴31aに嵌合し、かつ前記落下防止用ピン42等によりジャッキアップ装置20をセンターフレーム3に支持させてセンターフレーム3に着脱可能に取付けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に設けられてその輸送時等に使用されるジャッキアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クローラクレーン等の建設機械をトレーラにより輸送する場合、従来は建設機械の規模や構造により、一般的には以下のように分割輸送あるいは非分割輸送を行なっている。
【0003】
(1)センターフレームにジャッキアップ装置を有する場合
これは、一般的には、走行体の幅を狭めてもトレーラによる輸送可能な幅(3.2m)以上の幅を有する場合等に採用される構造である。この場合、図12において、サイドフレーム1と共に履帯2を、センターフレーム3の中央部3aから左右に張り出したビーム3bから外して輸送する。このサイドフレーム1をセンターフレーム3のビーム3bから外すため、センターフレーム3の中央部3aの前後左右に取付けてあるジャッキアップ装置4を伸長させてクレーンを地面より浮かせ、補助クレーン(図示せず)によりサイドフレーム1を履帯2と共に吊って外す。5は旋回装置、6は上部旋回体であり、この上部旋回体6には運転室17やパワーユニット18、ウインチ19などが搭載される。この図おいては上部旋回体6に取付けられるブームやその起伏装置等は図示されていない。これらのブームなどは別のトレーラにより輸送する。
【0004】
そしてこのジャッキアップしかつサイドフレーム1を外した状態でセンターフレーム3の下に図12の紙面の左側または右側からトレーラの荷台をトレーラの後進により潜らせ、その後、ジャッキアップ装置4を縮めてセンターフレーム3以上の部分をトレーラの荷台上に載せる。その後、センターフレーム3に旋回装置5を介して設置されていた上部旋回体6は、旋回装置5を作動させて上部旋回体6の向きをトレーラの前後の向きに旋回させて上部旋回体6をトレーラの前後の向きに一致させる。ここで、上部旋回体6の向きを前後の向きにすると、上部旋回体6の幅は輸送制限幅内に収まるように構成されている。また、輸送の際には、ジャッキアップ装置4を水平回動させる等、退避位置に移動させてジャッキアップ装置4がトレーラの荷台から突出しないようにする。このようなジャッキアップ装置4を有する例として特許文献1、2に記載のものがある。
【0005】
(2)センターフレームにジャッキアップ装置を有しない場合
クレーン等の建設機械においては、機械の安定を図るため、図13に示すように、地面から上部旋回体6までのクリアランスHが小さく設計される場合が多い。この場合には、センターフレーム3の高さをトレーラの荷台の高さである1m以上の高さに浮かせるためのジャッキアップ装置をセンターフレーム3に取付け、さらに前述のようにトレーラ輸送時に退避させる移動装置等を実現する場合、スペースが不足する等、ジャッキアップ装置の取付けが困難になる。この場合、補助クレーンにより輸送対象の建設機械全体を吊り上げてサイドフレーム1とともに履帯2を外し、センターフレーム3の下にトレーラの荷台を潜らせて建設機械全体を荷台上に下ろして搭載する。このようにサイドフレーム1や履帯2を取外すのではなく、走行体幅を縮めることで走行体幅が輸送制限幅内に収められ、例えば50t以下の総重量の建設機械の場合には、サイドフレーム1および履帯2を外すことなく、その重量が積載可能な大型のトレーラを用いて輸送する。
【0006】
【特許文献1】特開平11−100191号公報
【特許文献2】特開平11−100192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図12に示したように、ジャッキアップ装置4を有する場合は、ジャッキアップ装置4と地面との間のクリアランスhが小さいと、ジャッキアップ装置4の先端が地面に近くなり、走行時にジャッキアップ装置4を破損させるおそれがある。また、走行体幅を拡縮する構造の場合、走行体幅を狭くして構内を自走する構造とする必要があるが、ジャッキアップ装置4をセンターフレームのビーム3bに取付けると、この走行体幅を縮めることが困難になる。
【0008】
このため、図示のように、ジャッキアップ装置4はセンターフレーム3の中央部3a側に取付ける必要があるが、しかし、ジャッキアップ時に建設機械を安定に支持するには、ジャッキアップ装置4による地面との接地点をなるべく外側(履帯2側)にする必要があるために、ジャッキアップ装置4の油圧シリンダ4aは、中央部3aに枢着軸を設けた水平回動可能な比較的大型のブラケット4bに取付ける必要があり、ジャッキアップ装置4が大型になるという問題点がある。
【0009】
また、このようなジャッキアップ装置4を有するために、走行体幅をあまり縮めることができず、トレーラによる輸送ポジションまで自走により走行する場合、走行体幅が広いままで走行せざるを得ないため、輸送ポジションまでの走行も容易ではない場合があるという問題点がある。
【0010】
一方、図13に示したように、ジャッキアップ装置4を有しない場合は、建設機械全体を補助クレーンにより吊り上げる必要があるため、大型の補助クレーンが必要になるという問題点がある。例えば輸送対象の建設機械の総重量が50tの場合、安全を見込んで吊り上げ可能な荷重が100t程度の大型の補助クレーンを必要とする。そして、ユーザーがその補助クレーンを購入あるいはレンタルする場合には、分解、組立、輸送に要する費用が高価になり、ユーザーの経済的負担が大になるという問題点がある。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑み、大型の補助クレーンを用いる必要なく、すなわちユーザーに過大な経済的負担を強いることなく、安価に分解、組立、輸送が行なえ、上部旋回体と地面との間のクリアランスが小さい場合でも作業性よく安定した状態で使用することが可能となる建設機械のジャッキアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の建設機械のジャッキアップ装置は、走行体フレームをセンターフレームとサイドフレームとにより構成し、前記サイドフレームに履帯を取付けた建設機械のジャッキアップ装置において、ジャッキアップ装置は前記センターフレームへの取付け用ブラケットとそのブラケットに設けたジャッキアップ用の油圧シリンダとを有し、前記ブラケットに、水平方向の移動を阻止する阻止手段と、ジャッキアップ時に前記阻止手段より上方の前記センターフレームの側面に当接する当接部とを有することを特徴とする。
また、請求項2の建設機械のジャッキアップ装置は、走行体フレームをセンターフレームとサイドフレームとにより構成し、前記サイドフレームに履帯を取付けた建設機械のジャッキアップ装置において、 ジャッキアップ装置は前記センターフレームへの取付け用ブラケットとそのブラケットに設けたジャッキアップ用の油圧シリンダとを有し、 前記ブラケットに、前記センターフレームの下面に当接させるフレーム受け部と、前記センターフレームの下面に当接した前記フレーム受け部の水平方向の移動を阻止する阻止手段と、ジャッキアップ時に前記下面より上方の前記センターフレームの側面に当接する当接部とを有することを特徴とする。
【0013】
請求項3の建設機械のジャッキアップ装置は、前記請求項1または2において、前記ブラケットには、前記センターフレームに係止させてジャッキアップ装置の落下を防止する落下防止手段を有することを特徴とする。
【0014】
請求項4の建設機械のジャッキアップ装置は、前記請求項1から3のいずれかにおいて、 前記ブラケットはその上部に吊り下げ用ワイヤロープに接続される接続部を有し、前記ブラケットの接続部を中心として一方に前記センターフレームへの装着部を設け、その反対側にジャッキアップ用油圧シリンダと錘とを設けるとともに、この錘を設けた側の端部にハンドルを設け、ワイヤロープにより支持した状態において、前記ブラケットがほぼ水平姿勢を保ち、かつ前記油圧シリンダがほぼ垂直姿勢を保つことを特徴とする。
【0015】
請求項5の建設機械のジャッキアップ装置は、前記請求項3または4において、前記落下防止手段は、前記ビームの側板部に設けた穴と、前記ブラケットに着脱可能に取付けられ、前記側板部に設けた穴に挿入される落下防止用のピンからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1、2の発明によれば、ジャッキアップ装置がセンターフレームに容易に着脱できるので、旋回体と地面との間のクリアランスが小さい機械に使用する場合でも、走行等を要しない分解輸送時のみにこのジャッキアップ装置をセンターフレームに取付けることにより、比較的大きなストロークを有するシリンダを用い、しかもシリンダの間隔を確保して(すなわち接地点を外側にして)ジャッキアップ装置として使用することができ、作業性、安定性が向上する。
【0017】
また、ジャッキアップ装置のセンターフレームからの取外しが可能であるため、従来のようにセンターフレームに常備したジャッキアップ装置のような移動装置の設置が不要となる。また、作業時や走行時にはジャッキアップ装置を取外しておくため、ジャッキアップ装置がものに衝突して破損することがない。
【0018】
また、ジャッキアップ装置がセンターフレームに着脱可能であるから、ジャッキアップ装置を有しない建設機械においても、センターフレームにジャッキアップ装置を取付けて建設機械を持ち上げることができる。このため、補助クレーンはサイドフレームと履帯を吊り上げる吊り上げ能力を持つものですみ、また、トレーラはサイドフレームと履帯を除いた荷重を持つものを備えればよいため、比較的小型の補助クレーンやトレーラを用いて建設機械の分解、組立、輸送を行なうことが可能となり、分解、組立、輸送を安価に行なうことができる。
【0019】
また、建設機械のセンターフレームへの加工は簡単な加工ですみ、ジャッキアップ取付け座を設ける必要がないため、ジャッキアップ装置を持たない既存の建設機械にも容易に適用できる。
【0020】
また、走行体幅を拡縮できる構造の場合、ジャッキアップ装置を取外せば走行体幅を縮めることができるため、ジャッキアップ装置が走行体幅の拡縮の邪魔にならず、また、走行体幅を縮めた状態で構内等でトレーラのある輸送ポジションまでの走行が可能であり、建設機械の走行路の状況に応じた走行体幅の変更が可能となる。
【0021】
請求項3の発明によれば、ジャッキアップ装置のブラケットには、ジャッキアップ装置の荷重を支える落下防止手段を設けたので、補助クレーンでジャッキアップ装置を支持しておかなくてもジャッキアップ装置をセンターフレームに取付けた状態を維持しておくことができ、建設機械のジャッキアップ作業が容易となる。
【0022】
請求項4の発明によれば、補助クレーンによる吊り下げ状態において、ブラケットがほぼ水平姿勢を保ち、油圧シリンダがほぼ垂直姿勢を保ち、作業員がハンドルを持って持ち上げると、フレーム受け部をセンターフレームの下面に容易に潜らせ、その後ハンドルの持ち上げを止めると、自動的なバランス作用により、労力を要することなく、嵌合体をビーム下面の穴に容易に嵌合させることができるので、ジャッキアップ装置の取付けが容易に行なえる。
【0023】
請求項5の発明によれば、落下防止用のピンの着脱作業を、前方のビームでは走行体の前方から、後方のビームでは走行体の後方から行なえるので、落下防止用のピンの着脱が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1、図2は本発明の第1の実施の形態を、ジャッキアップ装置の建設機械への取付け作業状態で示す側面図である。本発明のジャッキアップ装置はクローラ式油圧ショベルやクレーンあるいはこれらの応用機械に適用されるが、本実施の形態は建設機械がクローラクレーンである場合について示す。1、3は走行体フレームを構成するサイドフレームおよびセンターフレームである。2はその左右のサイドフレーム1にそれぞれ装着された履帯である。サイドフレーム1の両端には走行用油圧モータ(図示せず)により駆動される駆動スプロケット8と従動スプロケット9が取付けられ、履帯2は両端部がこれらのスプロケット8、9に係合して掛け回されるとともに、上下の両側部分がサイドフレーム1の上下に取付けられたローラ10に内面が当接されて装着される。
【0025】
センターフレーム3は、旋回装置5を設置する中央部3aの前後に、それぞれ左右に突出する角筒状のビーム3bを一体に設けてなる。左右のサイドフレーム1はその前後に間隔を有して設けた角筒部1aを有し、各ビーム3bは、対応する角筒部1aに摺動可能に嵌合することにより、走行体幅が拡縮可能である。前記センターフレーム3の中央部3aには拡縮用油圧シリンダ7が内蔵される。
【0026】
ビーム3bには走行体幅の拡幅位置、縮幅位置においてサイドフレーム1をそれぞれ固定するため、図3に示すように、角筒部1aにはビーム3bの側面に沿って移動可能な固定板11を固定する。一方、ビーム3bには、固定板11をピン12により固定するためのピン穴13を有するブラケット14を設ける。図3に示すように縮幅状態では、固定板11の基端側のピン穴15に前記ブラケット14のピン穴13を合わせてこれらのピン穴13、15にピン12を挿着して固定する。拡幅状態では固定板11の先端のピン穴16をブラケット14のピン穴13に合わせてピン12を挿着して固定する。
【0027】
図1、図2において、20は本発明によるジャッキアップ装置であり、図1において、左側のジャッキアップ装置20は補助クレーン(図示せず)のワイヤロープ21により吊下げられた状態で示し、図1の右側および図2ではジャッキアップ装置20をセンターフレーム3のビーム3bにそれぞれ取付けた状態で示す。図1の左側に示すように、ジャッキアップ装置20は、ワイヤロープ21により吊下げた状態において、ジャッキアップ用の油圧シリンダ22がほぼ垂直姿勢となり、ビーム3bへの取付け用ブラケット23はほぼ水平姿勢となるように、ブラケット23のほぼ中間部の上面にワイヤロープ21の接続部24を設け、接続部24を中心としてブラケット23のビーム3bへの装着部の反対側にはバランス用の錘25を設ける。また、ビーム3bへの取付け作業時にビーム3bへの装着部側が下になるように傾斜させるためのハンドル26を設けている。
【0028】
図4はジャッキアップ装置20をビーム3bに装着した状態を拡大して示す側面図、図5はその平面図、図6はその底面図、図7はその正面図である。これらの図に示すように、ブラケット23の下板部27は上板部28よりビーム3bへの突出量を大とし、その突出部をビーム3bの下面に当てるフレーム受け部29としている。そのフレーム受け部29にはその上面に突出させてブラケット23をビーム3bに固定するための嵌合体としてのピン30を固定している。
【0029】
一方、各ビーム3bの下板部31にはそれぞれ前記ピン30を着脱自在に嵌合する穴31aを設けている。また、ブラケット23の下板部27の上面には、このジャッキアップ装置20のビーム3bへの取付け時にビーム3bの側面下部に当接させて前記ピン30の前後位置を前記穴31aに位置合わせするための位置合わせ部32を上方に突出して設けている。
【0030】
ブラケット23の下板部27と上板部28との間には、前記固定板11等を挿通させるための空間部33を形成している。
【0031】
ブラケット23の前記上板部28の先端には、ジャッキアップ時にビーム3bの側面上部(本例ではビーム3bの上板部38)に圧接させる当接部材34を設けている。本実施の形態においては、図8(A)の側面図と図8(B)の平面図に示すように、リブ35により補強した上板部28の先端に当接部材34を取付けるための取付け部材36を固定し、当接部材34と取付け部材36との間に任意枚数のシム37を介在させ、ボルト39の頭部を当接部材34の凹部34aに収容し、かつ当接部材34やシム37に設けた穴40にボルト39を挿通して取付け部材36のねじ穴41にねじ込むことにより、シム37の厚みに応じてビーム3bへの突出量を調整可能とし、これにより、製作誤差等があっても、ジャッキアップ装置20をビーム3bに取付けたとき、すなわちピン30を穴31aに嵌合し、当接部材34をビーム3bに当接させたときに油圧シリンダ22が垂直姿勢になるように調整できるように構成してある。
【0032】
42はブラケット23にジャッキアップ装置20の落下防止用手段として設けたピン、43はその落下防止用ピン42を挿入するためにビーム3bの側板部44に設けた穴、45はその補強板である。これらの詳細は図8(A)、(C)に示されており、46は前記落下防止用のピン42を取付けるために前記ブラケット23の上板部28に設けた取付け部材である。前記ピン42は、この取付け部材46に設けた穴47と前記ビーム3bおよび補強板45の穴43に挿通し、取付け部材46に設けた抜け止め用の突起又はリング49に設けた穴50と、ピン42の頭部に設けた穴51に抜け止めピン52を挿通して抜け止めして取付けられる。
【0033】
このジャッキアップ装置20を用いてこの建設機械のジャッキアップを行なう場合は、図1に示したように、補助クレーンのワイヤロープ21をブラケット23の接続部24に接続して吊り上げる。この吊り上げた状態においては、錘25の作用により、ジャッキアップ装置20のブラケットはほぼ水平姿勢となり、油圧シリンダ22はほぼ垂直姿勢をとる。この状態でジャッキアップ装置20をビーム3bに近接させ、続いてハンドル26を作業員が持って持ち上げかつビーム3b側に押すことにより、フレーム受け部29をビーム3bの下面に潜らせ、その後、ハンドル26側を自重により下ろしてビーム3bの下面の穴31aにフレーム受け部29に設けたピン30を嵌合する。このとき、位置合わせ部32がビーム3bの側面下部に当接することにより、ピン30の走行体前後方向の位置が穴31aに自動的に合わされ、前記ジャッキアップ装置20の自重によるバランス作用とも相俟って労力が軽減され、両者の嵌合が容易となる。
【0034】
続いて落下防止用のピン42を、取付け部材46の穴47と、ビーム3bや補強板45の穴43に遊嵌させ、抜け止めピン52を突起またはリング49の穴50およびピン42の頭部の穴51に挿着して抜け止めする。この状態を図1の右側および図2に示す。この状態では、前記落下防止用のピン42が取付け部材46に固定され、かつビーム3bや補強板45の穴43に嵌合されており、かつブラケット23のフレーム受け部29に設けたピン30がビーム3bの下面の穴31aに嵌合されてブラケット23の横ずれを防止するので、ワイヤロープ21を接続部24から外してもブラケット23、すなわちジャッキアップ装置20がビーム3bから外れて落下することはない。
【0035】
このように、センターフレーム3の4本のビーム3bにそれぞれジャッキアップ装置20を取付けた後、それぞれの油圧シリンダ22のピストンロッド22aの真下にピストンロッド22aの地面へのめり込みを防止するためのフロート55(図2の右側と図4参照)を設置し、4本のジャッキアップ装置20の油圧シリンダ22を互いに並列接続した共通の油圧回路を用いて同時に伸長させて建設機械を持ち上げる。このとき、図4において、油圧シリンダ22が伸長してピストンロッド22aがフロート55を介して地面に圧接することにより、ブラケット23を押し上げる力(反力)F1によりピン30を中心としたモーメント力が発生するが、ブラケット23に設けたピン30がビーム3bの穴31aに嵌合されているため、ブラケット23が矢印a方向へ移動することを阻止するとともに、フレーム受け部29がビーム3bの下面に圧接され、また、ブラケット23の先端の当接部材34がビーム3bの側面(ビーム3bの上板部38の側面)に圧接し、モーメント力がビーム3bの側面に伝達されて受け止められる。このとき、ブラケット23はビーム3bの各部に圧接するため、固定された状態となる。
【0036】
このようにしてこの建設機械を持ち上げ、履帯2が浮いた状態とした後、サイドフレーム1を履帯2とともに補助クレーン(図示せず)により吊り上げて外す。そしてトレーラ(図示せず)を図2の紙面の垂直方向に後進により走行させてセンターフレーム3の下にトレーラの荷台を潜らせ、続いてジャッキアップ装置20の油圧シリンダ22を縮めて建設機械を荷台上に乗せる。その後、ジャッキアップ装置20をセンターフレーム3から外す。
【0037】
なお、前記ジャッキアップ装置20の油圧シリンダ22の駆動に用いる油圧源としては、サイドフレーム1に備えられた走行用油圧モータへの配管に油圧シリンダ22の配管を接続して建設機械の油圧源を用いるものや、独立に設けられた油圧源を用いることができる。
【0038】
このように、本発明は、ジャッキアップ装置20がセンターフレーム3に容易に着脱できるので、旋回体6と地面との間のクリアランスが小さい機械に使用する場合でも、走行等を要しない分解輸送時のみにこのジャッキアップ装置20をセンターフレーム3に取付けることにより、比較的大きなストロークを有する油圧シリンダ22を用い、しかも油圧シリンダ22の間隔を確保して、すなわち接地点を外側にしてジャッキアップ装置20として使用することができ、作業性、安定性が向上する。
【0039】
また、ジャッキアップ装置20のセンターフレーム3からの取外しが可能であるため、従来のようにセンターフレーム3に常備したジャッキアップ装置で必要とした移動装置の設置が不要となる。また、ジャッキアップ装置を持たない建設機械であっても、センターフレーム3にジャッキアップ装置20を取付けて建設機械を持ち上げることが可能となる。このため、補助クレーンはサイドフレーム1を履帯2とともに吊り上げ可能な能力を持つものですみ、また、トレーラはサイドフレーム1と履帯2を除いた荷重を持つものを備えればよいため、比較的小型の補助クレーンやトレーラを用いて建設機械の輸送を行なうことが可能となり、大型の補助クレーンやトレーラを購入あるいはレンタルすることなく、分解、組立、輸送を安価に行なうことができる。
【0040】
また、建設機械のセンターフレーム3への加工は穴31a、47の加工ですみ、ジャッキアップ取付け座を設ける必要がなく、またジャッキアップに伴って発生する反力を取付け座等を介さずにセンターフレーム自体で受ける構造としたので、センターフレームのジャッキアップ取付け部の構造を特別強固なものにすることなく、ジャッキアップ装置を持たない既存の建設機械にも容易に適用できる。
【0041】
また、ジャッキアップ装置20のブラケット23は、ブラケット23の嵌合体であるピン30をビーム3bの下面の穴31aに嵌合し、ジャッキアップ装置20の荷重を支えるたけの落下防止手段であるピン42をビーム3bに装着するだけでジャッキアップ装置20をビーム3bに装着したり、また逆の作業で取外しできるので、センターフレーム3への着脱が容易である。
【0042】
また、本実施の形態のように、落下防止用のピン42の着脱作業を、前方のビームでは走行体の前方から、後方のビームでは走行体の後方から行なえるので、落下防止用のピン42の着脱が容易となる。
【0043】
また、走行体幅を拡縮できる構造の場合、図3で示したようにジャッキアップ装置20を外した状態で走行体幅を縮めることができるため、ジャッキアップ装置20が走行体幅の拡縮の邪魔にならず、また、走行体幅を縮めた状態で構内等でトレーラのある輸送ポジションまでの走行が可能であり、建設機械の走行路の状況に応じた融通性のある対応が可能となる。
【0044】
また、ジャッキアップ装置20をビーム3bから取外すことが可能であるため、ジャッキアップ装置20を建設機械の持ち上げ作業位置に設定したり、走行体幅の縮小のための退避位置にしたり、トレーラ上で荷台からはみ出さない位置にしたりするための移動装置の設置が不要であり、ジャッキアップ装置は小さいスペースで最大限の持ち上げ幅が確保できる構成を採用できるので、図11に示したように上部旋回体6の下面と地面との間のクリアランスHが小さい建設機械にも適用できる。
【0045】
図9は本発明の第2の実施の形態を示す側面図であり、本実施の形態は、ジャッキアップ装置の落下防止手段として、ブラケット23の上面に枢着軸60を中心に上下動可能にビーム3bに掛けるフック61を設け、ジャッキアップ装置20のビーム3bへの取付け時には、フレーム受け部29をビーム3bに潜らせて嵌合体30A(なお、本例では嵌合体30Aは下板部に一体に設けた突起により構成している。)をビーム3bの下面の穴31aに嵌合するとともに、フック61をビーム3bの内側の側面部の上部に掛け、フック61の外端を、ブラケット23の上面に設けた止め板62に止めピン63により固定して、すなわちフック61の端部と止め板62に設けたピン穴に止めピン63を挿入して固定している。このような構成によってもジャッキアップ装置の落下を防止することができる。
【0046】
なお、上記実施の形態においては、フレーム受け部29の水平方向への移動を阻止する手段が、ビーム3bに設けた穴31aとフレーム受け部29に設けた嵌合体30、30Aとにより構成された例について示したが、この代わりに、センターフレーム3の下面に設けた突起部にフレーム受け部29に設けた穴を嵌合させる構成にしてもよく、また、センターフレーム3とフレーム受け部29の双方に穴を設けてこれらの穴に挿着するピンやボルト等の連結具で連結するように構成してもよい。また、センターフレーム3がビーム3bを有しない構造の場合にも本発明を適用することができる。
【0047】
図10、図11は、本発明の第3の実施の形態を示す側面図であり、上述した第1の実施の形態の図4に対応する図面である。図10において、(A)は側面図、(B)は平面図、(C)は(A)のA方向矢視図、(D)は(B)のB断面図、図11は、図10においてサイドフレーム3のビーム3bの幅が異なった場合の実施態様を示す図である。そし
て本実施の形態は、ジャッキアップ装置65のサイドフレーム3bへの装着にあたり、上述した第1の実施の形態のようにサイドフレーム3bの下板部31の穴31aや側板部44の穴43を必要としないものであり、第1の実施の形態との相違点は、ブラケット70のビーム3bへの装着部の構造である。なお、その他の構成は本実施の形態においても同様に採用されるが、一部図示、説明を省略する。以下詳細に説明する。
【0048】
図10、図11において、第1の実施の形態のブラケット23に対応するブラケット70は、上板部71と、下板部72と、それら間に設けられて両者に固着される縦板部73と、上板部71の先端に上板部71と直交するように設けられ、後述する当接部材74を取り付けるための取付部材75とを有する。下板部72は、上述の下板部29と同様、上板部71よりビーム3b側への突出量を大とし、その突出部をビーム3bの下面(下板部31)に当接させるフレーム受け部76を有する。さらにこのフレーム受け部76は、ビーム3bへの装着時にビーム3bの下板部31を越えた位置となるまでさらに延設され、その端部には、ビーム3bの下板部31の側面部31cと当接することによりブラケット70をビーム3bに固定するための固定部材77(阻止手段)を備える。取付部材75は、補強用のリブ78によっては、補強が施されて設けられ、上端が上板部71から上方に突出し、下端が下板部72の上面に固着されている。そしてこの取付部材75の突出部には、孔75aが穿設されてボルト79によって当接部材74が設けられる。当接部材74は、上述の当接部材34と同様の機能を有するもので、ジャッキアップ時にビーム3bの上板部38の側面部に圧接される圧接部74aと、この圧接部74aの上部に設けられブラケット70の落下防止用のピン80を装着するための孔74bを有する。落下防止用のピン80は、前述したように当接部材74に設けられた孔74bに着脱可能に設けられるもので、ブラケット70のビーム3bへの装着時に、その外周面がビーム3bの上板部38の上面に当接してブラケット70の落下を防止する。本実施の形態では、これを2本備える構成となっている。
【0049】
この実施の形態において、固定部材77のビーム3bの下板部31との当接面と当接部材74の圧接部74aとの間の寸法aがビーム3bの幅寸法bとほぼ一致するように構成される。そのため、ジャッキアップ装置65を装着するビーム3bの幅寸法bが図11に示すように図10のものに比べ小さい場合は、当接部材74をボルト79により取外し、寸法aが寸法bとほぼ等しくなるように別の幅寸法を有する当接部材81を選択して取り付ける。82、83はそれぞれビーム3bの上板部、下板部である。
【0050】
次に、本実施の形態おけるジャッキアップ装置65の装着方法を説明する。まず、ピン80を当接部材74から取り外した状態で前述した第1の実施の形態と同様に補助クレーンを用いてジャッキアップ装置65を吊り上げる。そして、クレーンを操作し、ブラケット70の先端をビーム3bに接近させ、固定部材77をビーム3bの下板部31の下方を通って、下板部31の側面部31c側に移動させて、固定部材77の側面を下板部31の側面部31cに当接するように位置させる。この状態にあっては、上述した寸法関係によりブラケット70の当接部材74の圧接部74aはビーム3bの上板部38の側面に当接し得る状態にある。(取付性を考慮して多少の隙間を設けるため必ずしも当接するとは限らない。)次に当接部材74の孔74bにそれぞれピン80を挿通し、ピン80の外周面をビーム3bの上板部38の上面に当接させる。これにより、ブラケット70は、ピン80によって落下が防止されるとともに、この状態においてビーム3bに取付けられた状態となる。このジャッキアップ装置65は、左右にそれぞれ突出するビーム3bに同様の方法により計4ヶ所設けられる。そして、油圧シリンダ22のピストンロッド22aと地面との間にフロート55(図10、図11で省略)を介在させて4本のジャッキアップ装置65の油圧シリンダ22を伸長させることでジャッキアップを行なう。このとき、第1の実施の形態同様、ブラケット70に反力F1が作用し、これによって固定部材77を中心としてモーメント力が発生するが、ブラケット70に設けた固定部材77の側面がビーム3bの下板部31の側面31cと当接することによりブラケット70が矢印c方向に移動することを阻止するとともに、フレーム受け部76がビーム3bの下板部31の下面に圧接され、また、ブラケット70の上板部71の先端の当接部材74の圧接部74aがビーム3bの側面(上板部38の側面)に圧接し、このモーメント力がビーム3bの側面に伝達されて受止められる。このとき、ブラケット70はビーム3bの各部の圧接されるため、確りと固定された状態となる。
【0051】
このように本実施の形態では、ビーム3bにジャッキアップ装置65を装着するための特別な構造を必要としないため、簡単かつ安価に構成できる。さらに、ジャッキアップ装置を有しない、既存の建設機械にも改造などを要せず容易に適用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明によるジャッキアップ装置の第1の実施の形態を建設機械のセンターフレームのビームに取付けている状態で示す側面図である。
【図2】図1のジャッキアップ装置を建設機械のセンターフレームのビームに取付けた状態で示す側面図である。
【図3】本実施の形態のジャッキアップ装置を外して走行体幅を縮めた建設機械を示す正面図である。
【図4】本実施の形態のジャッキアップ装置を建設機械のセンターフレームのビームに取付けた状態を示す拡大側面図である。
【図5】本実施の形態のジャッキアップ装置を建設機械のセンターフレームのビームに取付けた状態を示す平面図である。
【図6】本実施の形態のジャッキアップ装置を建設機械のセンターフレームのビームに取付けた状態を示す底面図である。
【図7】本実施の形態のジャッキアップ装置を建設機械のセンターフレームのビームに取付けた状態を示す正面図である。
【図8】(A)は本実施の形態のジャッキアップ装置を建設機械のセンターフレームのビームに取付けた状態を示す側面断面図、(B)はその平面図、(C)はその落下防止用のピンの取付け構造を示す平面断面図である。
【図9】本発明によるジャッキアップ装置の第2の実施の形態を示す側面図である。
【図10】本発明によるジャッキアップ装置の第3の実施の形態を示すもので、(A)は側面図、(B)は平面図、(C)はA方向矢視図、(D)はB断面図である。
【図11】図10におけるビーム幅が異なる態様における適用状態を示す図である。
【図12】従来のジャッキアップ装置を有する建設機械を示す正面図である。
【図13】従来のジャッキアップ装置を有しない建設機械を示す正面図である。
【符号の説明】
【0053】
1:サイドフレーム、1a:角筒部、2:履帯、3:センターフレーム、3a:中央部、3b:ビーム、5:旋回装置、6:上部旋回体、7:拡縮用油圧シリンダ、8:駆動スプロケット、9:従動スプロケット、10:ローラ、11:固定板、12:ピン、14:ブラケット、13、15、16:ピン穴、17:運転室、18:パワーユニット、19:ウインチ、20、65:ジャッキアップ装置、21:ワイヤロープ、22:油圧シリンダ、23、70:ブラケット、24:接続部、25:錘、26:ハンドル、27:下板部、28:上板部、29、76:フレーム受け部、30:固定用ピン、30A:嵌合体、31:下板部、31a:穴、32:位置合わせ部、33:空間部、34、74、81:当接部材、35、78:リブ、36、75:取付け部材、37:シム、38:上板部、39、79:ボルト、40:穴、41:ねじ穴、42、80:落下防止用ピン、43:穴、44:側板部、45:補強板、46:取付け部材、47:穴、49:突起またはリング、50、51:穴、52:ピン、55:フロート、60:枢着軸、61:フック、62:止め板、63:止めピン、77:固定部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に設けられてその輸送時等に使用されるジャッキアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クローラクレーン等の建設機械をトレーラにより輸送する場合、従来は建設機械の規模や構造により、一般的には以下のように分割輸送あるいは非分割輸送を行なっている。
【0003】
(1)センターフレームにジャッキアップ装置を有する場合
これは、一般的には、走行体の幅を狭めてもトレーラによる輸送可能な幅(3.2m)以上の幅を有する場合等に採用される構造である。この場合、図12において、サイドフレーム1と共に履帯2を、センターフレーム3の中央部3aから左右に張り出したビーム3bから外して輸送する。このサイドフレーム1をセンターフレーム3のビーム3bから外すため、センターフレーム3の中央部3aの前後左右に取付けてあるジャッキアップ装置4を伸長させてクレーンを地面より浮かせ、補助クレーン(図示せず)によりサイドフレーム1を履帯2と共に吊って外す。5は旋回装置、6は上部旋回体であり、この上部旋回体6には運転室17やパワーユニット18、ウインチ19などが搭載される。この図おいては上部旋回体6に取付けられるブームやその起伏装置等は図示されていない。これらのブームなどは別のトレーラにより輸送する。
【0004】
そしてこのジャッキアップしかつサイドフレーム1を外した状態でセンターフレーム3の下に図12の紙面の左側または右側からトレーラの荷台をトレーラの後進により潜らせ、その後、ジャッキアップ装置4を縮めてセンターフレーム3以上の部分をトレーラの荷台上に載せる。その後、センターフレーム3に旋回装置5を介して設置されていた上部旋回体6は、旋回装置5を作動させて上部旋回体6の向きをトレーラの前後の向きに旋回させて上部旋回体6をトレーラの前後の向きに一致させる。ここで、上部旋回体6の向きを前後の向きにすると、上部旋回体6の幅は輸送制限幅内に収まるように構成されている。また、輸送の際には、ジャッキアップ装置4を水平回動させる等、退避位置に移動させてジャッキアップ装置4がトレーラの荷台から突出しないようにする。このようなジャッキアップ装置4を有する例として特許文献1、2に記載のものがある。
【0005】
(2)センターフレームにジャッキアップ装置を有しない場合
クレーン等の建設機械においては、機械の安定を図るため、図13に示すように、地面から上部旋回体6までのクリアランスHが小さく設計される場合が多い。この場合には、センターフレーム3の高さをトレーラの荷台の高さである1m以上の高さに浮かせるためのジャッキアップ装置をセンターフレーム3に取付け、さらに前述のようにトレーラ輸送時に退避させる移動装置等を実現する場合、スペースが不足する等、ジャッキアップ装置の取付けが困難になる。この場合、補助クレーンにより輸送対象の建設機械全体を吊り上げてサイドフレーム1とともに履帯2を外し、センターフレーム3の下にトレーラの荷台を潜らせて建設機械全体を荷台上に下ろして搭載する。このようにサイドフレーム1や履帯2を取外すのではなく、走行体幅を縮めることで走行体幅が輸送制限幅内に収められ、例えば50t以下の総重量の建設機械の場合には、サイドフレーム1および履帯2を外すことなく、その重量が積載可能な大型のトレーラを用いて輸送する。
【0006】
【特許文献1】特開平11−100191号公報
【特許文献2】特開平11−100192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図12に示したように、ジャッキアップ装置4を有する場合は、ジャッキアップ装置4と地面との間のクリアランスhが小さいと、ジャッキアップ装置4の先端が地面に近くなり、走行時にジャッキアップ装置4を破損させるおそれがある。また、走行体幅を拡縮する構造の場合、走行体幅を狭くして構内を自走する構造とする必要があるが、ジャッキアップ装置4をセンターフレームのビーム3bに取付けると、この走行体幅を縮めることが困難になる。
【0008】
このため、図示のように、ジャッキアップ装置4はセンターフレーム3の中央部3a側に取付ける必要があるが、しかし、ジャッキアップ時に建設機械を安定に支持するには、ジャッキアップ装置4による地面との接地点をなるべく外側(履帯2側)にする必要があるために、ジャッキアップ装置4の油圧シリンダ4aは、中央部3aに枢着軸を設けた水平回動可能な比較的大型のブラケット4bに取付ける必要があり、ジャッキアップ装置4が大型になるという問題点がある。
【0009】
また、このようなジャッキアップ装置4を有するために、走行体幅をあまり縮めることができず、トレーラによる輸送ポジションまで自走により走行する場合、走行体幅が広いままで走行せざるを得ないため、輸送ポジションまでの走行も容易ではない場合があるという問題点がある。
【0010】
一方、図13に示したように、ジャッキアップ装置4を有しない場合は、建設機械全体を補助クレーンにより吊り上げる必要があるため、大型の補助クレーンが必要になるという問題点がある。例えば輸送対象の建設機械の総重量が50tの場合、安全を見込んで吊り上げ可能な荷重が100t程度の大型の補助クレーンを必要とする。そして、ユーザーがその補助クレーンを購入あるいはレンタルする場合には、分解、組立、輸送に要する費用が高価になり、ユーザーの経済的負担が大になるという問題点がある。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑み、大型の補助クレーンを用いる必要なく、すなわちユーザーに過大な経済的負担を強いることなく、安価に分解、組立、輸送が行なえ、上部旋回体と地面との間のクリアランスが小さい場合でも作業性よく安定した状態で使用することが可能となる建設機械のジャッキアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の建設機械のジャッキアップ装置は、走行体フレームをセンターフレームとサイドフレームとにより構成し、前記サイドフレームに履帯を取付けた建設機械のジャッキアップ装置において、ジャッキアップ装置は前記センターフレームへの取付け用ブラケットとそのブラケットに設けたジャッキアップ用の油圧シリンダとを有し、前記ブラケットに、水平方向の移動を阻止する阻止手段と、ジャッキアップ時に前記阻止手段より上方の前記センターフレームの側面に当接する当接部とを有することを特徴とする。
また、請求項2の建設機械のジャッキアップ装置は、走行体フレームをセンターフレームとサイドフレームとにより構成し、前記サイドフレームに履帯を取付けた建設機械のジャッキアップ装置において、 ジャッキアップ装置は前記センターフレームへの取付け用ブラケットとそのブラケットに設けたジャッキアップ用の油圧シリンダとを有し、 前記ブラケットに、前記センターフレームの下面に当接させるフレーム受け部と、前記センターフレームの下面に当接した前記フレーム受け部の水平方向の移動を阻止する阻止手段と、ジャッキアップ時に前記下面より上方の前記センターフレームの側面に当接する当接部とを有することを特徴とする。
【0013】
請求項3の建設機械のジャッキアップ装置は、前記請求項1または2において、前記ブラケットには、前記センターフレームに係止させてジャッキアップ装置の落下を防止する落下防止手段を有することを特徴とする。
【0014】
請求項4の建設機械のジャッキアップ装置は、前記請求項1から3のいずれかにおいて、 前記ブラケットはその上部に吊り下げ用ワイヤロープに接続される接続部を有し、前記ブラケットの接続部を中心として一方に前記センターフレームへの装着部を設け、その反対側にジャッキアップ用油圧シリンダと錘とを設けるとともに、この錘を設けた側の端部にハンドルを設け、ワイヤロープにより支持した状態において、前記ブラケットがほぼ水平姿勢を保ち、かつ前記油圧シリンダがほぼ垂直姿勢を保つことを特徴とする。
【0015】
請求項5の建設機械のジャッキアップ装置は、前記請求項3または4において、前記落下防止手段は、前記ビームの側板部に設けた穴と、前記ブラケットに着脱可能に取付けられ、前記側板部に設けた穴に挿入される落下防止用のピンからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1、2の発明によれば、ジャッキアップ装置がセンターフレームに容易に着脱できるので、旋回体と地面との間のクリアランスが小さい機械に使用する場合でも、走行等を要しない分解輸送時のみにこのジャッキアップ装置をセンターフレームに取付けることにより、比較的大きなストロークを有するシリンダを用い、しかもシリンダの間隔を確保して(すなわち接地点を外側にして)ジャッキアップ装置として使用することができ、作業性、安定性が向上する。
【0017】
また、ジャッキアップ装置のセンターフレームからの取外しが可能であるため、従来のようにセンターフレームに常備したジャッキアップ装置のような移動装置の設置が不要となる。また、作業時や走行時にはジャッキアップ装置を取外しておくため、ジャッキアップ装置がものに衝突して破損することがない。
【0018】
また、ジャッキアップ装置がセンターフレームに着脱可能であるから、ジャッキアップ装置を有しない建設機械においても、センターフレームにジャッキアップ装置を取付けて建設機械を持ち上げることができる。このため、補助クレーンはサイドフレームと履帯を吊り上げる吊り上げ能力を持つものですみ、また、トレーラはサイドフレームと履帯を除いた荷重を持つものを備えればよいため、比較的小型の補助クレーンやトレーラを用いて建設機械の分解、組立、輸送を行なうことが可能となり、分解、組立、輸送を安価に行なうことができる。
【0019】
また、建設機械のセンターフレームへの加工は簡単な加工ですみ、ジャッキアップ取付け座を設ける必要がないため、ジャッキアップ装置を持たない既存の建設機械にも容易に適用できる。
【0020】
また、走行体幅を拡縮できる構造の場合、ジャッキアップ装置を取外せば走行体幅を縮めることができるため、ジャッキアップ装置が走行体幅の拡縮の邪魔にならず、また、走行体幅を縮めた状態で構内等でトレーラのある輸送ポジションまでの走行が可能であり、建設機械の走行路の状況に応じた走行体幅の変更が可能となる。
【0021】
請求項3の発明によれば、ジャッキアップ装置のブラケットには、ジャッキアップ装置の荷重を支える落下防止手段を設けたので、補助クレーンでジャッキアップ装置を支持しておかなくてもジャッキアップ装置をセンターフレームに取付けた状態を維持しておくことができ、建設機械のジャッキアップ作業が容易となる。
【0022】
請求項4の発明によれば、補助クレーンによる吊り下げ状態において、ブラケットがほぼ水平姿勢を保ち、油圧シリンダがほぼ垂直姿勢を保ち、作業員がハンドルを持って持ち上げると、フレーム受け部をセンターフレームの下面に容易に潜らせ、その後ハンドルの持ち上げを止めると、自動的なバランス作用により、労力を要することなく、嵌合体をビーム下面の穴に容易に嵌合させることができるので、ジャッキアップ装置の取付けが容易に行なえる。
【0023】
請求項5の発明によれば、落下防止用のピンの着脱作業を、前方のビームでは走行体の前方から、後方のビームでは走行体の後方から行なえるので、落下防止用のピンの着脱が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1、図2は本発明の第1の実施の形態を、ジャッキアップ装置の建設機械への取付け作業状態で示す側面図である。本発明のジャッキアップ装置はクローラ式油圧ショベルやクレーンあるいはこれらの応用機械に適用されるが、本実施の形態は建設機械がクローラクレーンである場合について示す。1、3は走行体フレームを構成するサイドフレームおよびセンターフレームである。2はその左右のサイドフレーム1にそれぞれ装着された履帯である。サイドフレーム1の両端には走行用油圧モータ(図示せず)により駆動される駆動スプロケット8と従動スプロケット9が取付けられ、履帯2は両端部がこれらのスプロケット8、9に係合して掛け回されるとともに、上下の両側部分がサイドフレーム1の上下に取付けられたローラ10に内面が当接されて装着される。
【0025】
センターフレーム3は、旋回装置5を設置する中央部3aの前後に、それぞれ左右に突出する角筒状のビーム3bを一体に設けてなる。左右のサイドフレーム1はその前後に間隔を有して設けた角筒部1aを有し、各ビーム3bは、対応する角筒部1aに摺動可能に嵌合することにより、走行体幅が拡縮可能である。前記センターフレーム3の中央部3aには拡縮用油圧シリンダ7が内蔵される。
【0026】
ビーム3bには走行体幅の拡幅位置、縮幅位置においてサイドフレーム1をそれぞれ固定するため、図3に示すように、角筒部1aにはビーム3bの側面に沿って移動可能な固定板11を固定する。一方、ビーム3bには、固定板11をピン12により固定するためのピン穴13を有するブラケット14を設ける。図3に示すように縮幅状態では、固定板11の基端側のピン穴15に前記ブラケット14のピン穴13を合わせてこれらのピン穴13、15にピン12を挿着して固定する。拡幅状態では固定板11の先端のピン穴16をブラケット14のピン穴13に合わせてピン12を挿着して固定する。
【0027】
図1、図2において、20は本発明によるジャッキアップ装置であり、図1において、左側のジャッキアップ装置20は補助クレーン(図示せず)のワイヤロープ21により吊下げられた状態で示し、図1の右側および図2ではジャッキアップ装置20をセンターフレーム3のビーム3bにそれぞれ取付けた状態で示す。図1の左側に示すように、ジャッキアップ装置20は、ワイヤロープ21により吊下げた状態において、ジャッキアップ用の油圧シリンダ22がほぼ垂直姿勢となり、ビーム3bへの取付け用ブラケット23はほぼ水平姿勢となるように、ブラケット23のほぼ中間部の上面にワイヤロープ21の接続部24を設け、接続部24を中心としてブラケット23のビーム3bへの装着部の反対側にはバランス用の錘25を設ける。また、ビーム3bへの取付け作業時にビーム3bへの装着部側が下になるように傾斜させるためのハンドル26を設けている。
【0028】
図4はジャッキアップ装置20をビーム3bに装着した状態を拡大して示す側面図、図5はその平面図、図6はその底面図、図7はその正面図である。これらの図に示すように、ブラケット23の下板部27は上板部28よりビーム3bへの突出量を大とし、その突出部をビーム3bの下面に当てるフレーム受け部29としている。そのフレーム受け部29にはその上面に突出させてブラケット23をビーム3bに固定するための嵌合体としてのピン30を固定している。
【0029】
一方、各ビーム3bの下板部31にはそれぞれ前記ピン30を着脱自在に嵌合する穴31aを設けている。また、ブラケット23の下板部27の上面には、このジャッキアップ装置20のビーム3bへの取付け時にビーム3bの側面下部に当接させて前記ピン30の前後位置を前記穴31aに位置合わせするための位置合わせ部32を上方に突出して設けている。
【0030】
ブラケット23の下板部27と上板部28との間には、前記固定板11等を挿通させるための空間部33を形成している。
【0031】
ブラケット23の前記上板部28の先端には、ジャッキアップ時にビーム3bの側面上部(本例ではビーム3bの上板部38)に圧接させる当接部材34を設けている。本実施の形態においては、図8(A)の側面図と図8(B)の平面図に示すように、リブ35により補強した上板部28の先端に当接部材34を取付けるための取付け部材36を固定し、当接部材34と取付け部材36との間に任意枚数のシム37を介在させ、ボルト39の頭部を当接部材34の凹部34aに収容し、かつ当接部材34やシム37に設けた穴40にボルト39を挿通して取付け部材36のねじ穴41にねじ込むことにより、シム37の厚みに応じてビーム3bへの突出量を調整可能とし、これにより、製作誤差等があっても、ジャッキアップ装置20をビーム3bに取付けたとき、すなわちピン30を穴31aに嵌合し、当接部材34をビーム3bに当接させたときに油圧シリンダ22が垂直姿勢になるように調整できるように構成してある。
【0032】
42はブラケット23にジャッキアップ装置20の落下防止用手段として設けたピン、43はその落下防止用ピン42を挿入するためにビーム3bの側板部44に設けた穴、45はその補強板である。これらの詳細は図8(A)、(C)に示されており、46は前記落下防止用のピン42を取付けるために前記ブラケット23の上板部28に設けた取付け部材である。前記ピン42は、この取付け部材46に設けた穴47と前記ビーム3bおよび補強板45の穴43に挿通し、取付け部材46に設けた抜け止め用の突起又はリング49に設けた穴50と、ピン42の頭部に設けた穴51に抜け止めピン52を挿通して抜け止めして取付けられる。
【0033】
このジャッキアップ装置20を用いてこの建設機械のジャッキアップを行なう場合は、図1に示したように、補助クレーンのワイヤロープ21をブラケット23の接続部24に接続して吊り上げる。この吊り上げた状態においては、錘25の作用により、ジャッキアップ装置20のブラケットはほぼ水平姿勢となり、油圧シリンダ22はほぼ垂直姿勢をとる。この状態でジャッキアップ装置20をビーム3bに近接させ、続いてハンドル26を作業員が持って持ち上げかつビーム3b側に押すことにより、フレーム受け部29をビーム3bの下面に潜らせ、その後、ハンドル26側を自重により下ろしてビーム3bの下面の穴31aにフレーム受け部29に設けたピン30を嵌合する。このとき、位置合わせ部32がビーム3bの側面下部に当接することにより、ピン30の走行体前後方向の位置が穴31aに自動的に合わされ、前記ジャッキアップ装置20の自重によるバランス作用とも相俟って労力が軽減され、両者の嵌合が容易となる。
【0034】
続いて落下防止用のピン42を、取付け部材46の穴47と、ビーム3bや補強板45の穴43に遊嵌させ、抜け止めピン52を突起またはリング49の穴50およびピン42の頭部の穴51に挿着して抜け止めする。この状態を図1の右側および図2に示す。この状態では、前記落下防止用のピン42が取付け部材46に固定され、かつビーム3bや補強板45の穴43に嵌合されており、かつブラケット23のフレーム受け部29に設けたピン30がビーム3bの下面の穴31aに嵌合されてブラケット23の横ずれを防止するので、ワイヤロープ21を接続部24から外してもブラケット23、すなわちジャッキアップ装置20がビーム3bから外れて落下することはない。
【0035】
このように、センターフレーム3の4本のビーム3bにそれぞれジャッキアップ装置20を取付けた後、それぞれの油圧シリンダ22のピストンロッド22aの真下にピストンロッド22aの地面へのめり込みを防止するためのフロート55(図2の右側と図4参照)を設置し、4本のジャッキアップ装置20の油圧シリンダ22を互いに並列接続した共通の油圧回路を用いて同時に伸長させて建設機械を持ち上げる。このとき、図4において、油圧シリンダ22が伸長してピストンロッド22aがフロート55を介して地面に圧接することにより、ブラケット23を押し上げる力(反力)F1によりピン30を中心としたモーメント力が発生するが、ブラケット23に設けたピン30がビーム3bの穴31aに嵌合されているため、ブラケット23が矢印a方向へ移動することを阻止するとともに、フレーム受け部29がビーム3bの下面に圧接され、また、ブラケット23の先端の当接部材34がビーム3bの側面(ビーム3bの上板部38の側面)に圧接し、モーメント力がビーム3bの側面に伝達されて受け止められる。このとき、ブラケット23はビーム3bの各部に圧接するため、固定された状態となる。
【0036】
このようにしてこの建設機械を持ち上げ、履帯2が浮いた状態とした後、サイドフレーム1を履帯2とともに補助クレーン(図示せず)により吊り上げて外す。そしてトレーラ(図示せず)を図2の紙面の垂直方向に後進により走行させてセンターフレーム3の下にトレーラの荷台を潜らせ、続いてジャッキアップ装置20の油圧シリンダ22を縮めて建設機械を荷台上に乗せる。その後、ジャッキアップ装置20をセンターフレーム3から外す。
【0037】
なお、前記ジャッキアップ装置20の油圧シリンダ22の駆動に用いる油圧源としては、サイドフレーム1に備えられた走行用油圧モータへの配管に油圧シリンダ22の配管を接続して建設機械の油圧源を用いるものや、独立に設けられた油圧源を用いることができる。
【0038】
このように、本発明は、ジャッキアップ装置20がセンターフレーム3に容易に着脱できるので、旋回体6と地面との間のクリアランスが小さい機械に使用する場合でも、走行等を要しない分解輸送時のみにこのジャッキアップ装置20をセンターフレーム3に取付けることにより、比較的大きなストロークを有する油圧シリンダ22を用い、しかも油圧シリンダ22の間隔を確保して、すなわち接地点を外側にしてジャッキアップ装置20として使用することができ、作業性、安定性が向上する。
【0039】
また、ジャッキアップ装置20のセンターフレーム3からの取外しが可能であるため、従来のようにセンターフレーム3に常備したジャッキアップ装置で必要とした移動装置の設置が不要となる。また、ジャッキアップ装置を持たない建設機械であっても、センターフレーム3にジャッキアップ装置20を取付けて建設機械を持ち上げることが可能となる。このため、補助クレーンはサイドフレーム1を履帯2とともに吊り上げ可能な能力を持つものですみ、また、トレーラはサイドフレーム1と履帯2を除いた荷重を持つものを備えればよいため、比較的小型の補助クレーンやトレーラを用いて建設機械の輸送を行なうことが可能となり、大型の補助クレーンやトレーラを購入あるいはレンタルすることなく、分解、組立、輸送を安価に行なうことができる。
【0040】
また、建設機械のセンターフレーム3への加工は穴31a、47の加工ですみ、ジャッキアップ取付け座を設ける必要がなく、またジャッキアップに伴って発生する反力を取付け座等を介さずにセンターフレーム自体で受ける構造としたので、センターフレームのジャッキアップ取付け部の構造を特別強固なものにすることなく、ジャッキアップ装置を持たない既存の建設機械にも容易に適用できる。
【0041】
また、ジャッキアップ装置20のブラケット23は、ブラケット23の嵌合体であるピン30をビーム3bの下面の穴31aに嵌合し、ジャッキアップ装置20の荷重を支えるたけの落下防止手段であるピン42をビーム3bに装着するだけでジャッキアップ装置20をビーム3bに装着したり、また逆の作業で取外しできるので、センターフレーム3への着脱が容易である。
【0042】
また、本実施の形態のように、落下防止用のピン42の着脱作業を、前方のビームでは走行体の前方から、後方のビームでは走行体の後方から行なえるので、落下防止用のピン42の着脱が容易となる。
【0043】
また、走行体幅を拡縮できる構造の場合、図3で示したようにジャッキアップ装置20を外した状態で走行体幅を縮めることができるため、ジャッキアップ装置20が走行体幅の拡縮の邪魔にならず、また、走行体幅を縮めた状態で構内等でトレーラのある輸送ポジションまでの走行が可能であり、建設機械の走行路の状況に応じた融通性のある対応が可能となる。
【0044】
また、ジャッキアップ装置20をビーム3bから取外すことが可能であるため、ジャッキアップ装置20を建設機械の持ち上げ作業位置に設定したり、走行体幅の縮小のための退避位置にしたり、トレーラ上で荷台からはみ出さない位置にしたりするための移動装置の設置が不要であり、ジャッキアップ装置は小さいスペースで最大限の持ち上げ幅が確保できる構成を採用できるので、図11に示したように上部旋回体6の下面と地面との間のクリアランスHが小さい建設機械にも適用できる。
【0045】
図9は本発明の第2の実施の形態を示す側面図であり、本実施の形態は、ジャッキアップ装置の落下防止手段として、ブラケット23の上面に枢着軸60を中心に上下動可能にビーム3bに掛けるフック61を設け、ジャッキアップ装置20のビーム3bへの取付け時には、フレーム受け部29をビーム3bに潜らせて嵌合体30A(なお、本例では嵌合体30Aは下板部に一体に設けた突起により構成している。)をビーム3bの下面の穴31aに嵌合するとともに、フック61をビーム3bの内側の側面部の上部に掛け、フック61の外端を、ブラケット23の上面に設けた止め板62に止めピン63により固定して、すなわちフック61の端部と止め板62に設けたピン穴に止めピン63を挿入して固定している。このような構成によってもジャッキアップ装置の落下を防止することができる。
【0046】
なお、上記実施の形態においては、フレーム受け部29の水平方向への移動を阻止する手段が、ビーム3bに設けた穴31aとフレーム受け部29に設けた嵌合体30、30Aとにより構成された例について示したが、この代わりに、センターフレーム3の下面に設けた突起部にフレーム受け部29に設けた穴を嵌合させる構成にしてもよく、また、センターフレーム3とフレーム受け部29の双方に穴を設けてこれらの穴に挿着するピンやボルト等の連結具で連結するように構成してもよい。また、センターフレーム3がビーム3bを有しない構造の場合にも本発明を適用することができる。
【0047】
図10、図11は、本発明の第3の実施の形態を示す側面図であり、上述した第1の実施の形態の図4に対応する図面である。図10において、(A)は側面図、(B)は平面図、(C)は(A)のA方向矢視図、(D)は(B)のB断面図、図11は、図10においてサイドフレーム3のビーム3bの幅が異なった場合の実施態様を示す図である。そし
て本実施の形態は、ジャッキアップ装置65のサイドフレーム3bへの装着にあたり、上述した第1の実施の形態のようにサイドフレーム3bの下板部31の穴31aや側板部44の穴43を必要としないものであり、第1の実施の形態との相違点は、ブラケット70のビーム3bへの装着部の構造である。なお、その他の構成は本実施の形態においても同様に採用されるが、一部図示、説明を省略する。以下詳細に説明する。
【0048】
図10、図11において、第1の実施の形態のブラケット23に対応するブラケット70は、上板部71と、下板部72と、それら間に設けられて両者に固着される縦板部73と、上板部71の先端に上板部71と直交するように設けられ、後述する当接部材74を取り付けるための取付部材75とを有する。下板部72は、上述の下板部29と同様、上板部71よりビーム3b側への突出量を大とし、その突出部をビーム3bの下面(下板部31)に当接させるフレーム受け部76を有する。さらにこのフレーム受け部76は、ビーム3bへの装着時にビーム3bの下板部31を越えた位置となるまでさらに延設され、その端部には、ビーム3bの下板部31の側面部31cと当接することによりブラケット70をビーム3bに固定するための固定部材77(阻止手段)を備える。取付部材75は、補強用のリブ78によっては、補強が施されて設けられ、上端が上板部71から上方に突出し、下端が下板部72の上面に固着されている。そしてこの取付部材75の突出部には、孔75aが穿設されてボルト79によって当接部材74が設けられる。当接部材74は、上述の当接部材34と同様の機能を有するもので、ジャッキアップ時にビーム3bの上板部38の側面部に圧接される圧接部74aと、この圧接部74aの上部に設けられブラケット70の落下防止用のピン80を装着するための孔74bを有する。落下防止用のピン80は、前述したように当接部材74に設けられた孔74bに着脱可能に設けられるもので、ブラケット70のビーム3bへの装着時に、その外周面がビーム3bの上板部38の上面に当接してブラケット70の落下を防止する。本実施の形態では、これを2本備える構成となっている。
【0049】
この実施の形態において、固定部材77のビーム3bの下板部31との当接面と当接部材74の圧接部74aとの間の寸法aがビーム3bの幅寸法bとほぼ一致するように構成される。そのため、ジャッキアップ装置65を装着するビーム3bの幅寸法bが図11に示すように図10のものに比べ小さい場合は、当接部材74をボルト79により取外し、寸法aが寸法bとほぼ等しくなるように別の幅寸法を有する当接部材81を選択して取り付ける。82、83はそれぞれビーム3bの上板部、下板部である。
【0050】
次に、本実施の形態おけるジャッキアップ装置65の装着方法を説明する。まず、ピン80を当接部材74から取り外した状態で前述した第1の実施の形態と同様に補助クレーンを用いてジャッキアップ装置65を吊り上げる。そして、クレーンを操作し、ブラケット70の先端をビーム3bに接近させ、固定部材77をビーム3bの下板部31の下方を通って、下板部31の側面部31c側に移動させて、固定部材77の側面を下板部31の側面部31cに当接するように位置させる。この状態にあっては、上述した寸法関係によりブラケット70の当接部材74の圧接部74aはビーム3bの上板部38の側面に当接し得る状態にある。(取付性を考慮して多少の隙間を設けるため必ずしも当接するとは限らない。)次に当接部材74の孔74bにそれぞれピン80を挿通し、ピン80の外周面をビーム3bの上板部38の上面に当接させる。これにより、ブラケット70は、ピン80によって落下が防止されるとともに、この状態においてビーム3bに取付けられた状態となる。このジャッキアップ装置65は、左右にそれぞれ突出するビーム3bに同様の方法により計4ヶ所設けられる。そして、油圧シリンダ22のピストンロッド22aと地面との間にフロート55(図10、図11で省略)を介在させて4本のジャッキアップ装置65の油圧シリンダ22を伸長させることでジャッキアップを行なう。このとき、第1の実施の形態同様、ブラケット70に反力F1が作用し、これによって固定部材77を中心としてモーメント力が発生するが、ブラケット70に設けた固定部材77の側面がビーム3bの下板部31の側面31cと当接することによりブラケット70が矢印c方向に移動することを阻止するとともに、フレーム受け部76がビーム3bの下板部31の下面に圧接され、また、ブラケット70の上板部71の先端の当接部材74の圧接部74aがビーム3bの側面(上板部38の側面)に圧接し、このモーメント力がビーム3bの側面に伝達されて受止められる。このとき、ブラケット70はビーム3bの各部の圧接されるため、確りと固定された状態となる。
【0051】
このように本実施の形態では、ビーム3bにジャッキアップ装置65を装着するための特別な構造を必要としないため、簡単かつ安価に構成できる。さらに、ジャッキアップ装置を有しない、既存の建設機械にも改造などを要せず容易に適用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明によるジャッキアップ装置の第1の実施の形態を建設機械のセンターフレームのビームに取付けている状態で示す側面図である。
【図2】図1のジャッキアップ装置を建設機械のセンターフレームのビームに取付けた状態で示す側面図である。
【図3】本実施の形態のジャッキアップ装置を外して走行体幅を縮めた建設機械を示す正面図である。
【図4】本実施の形態のジャッキアップ装置を建設機械のセンターフレームのビームに取付けた状態を示す拡大側面図である。
【図5】本実施の形態のジャッキアップ装置を建設機械のセンターフレームのビームに取付けた状態を示す平面図である。
【図6】本実施の形態のジャッキアップ装置を建設機械のセンターフレームのビームに取付けた状態を示す底面図である。
【図7】本実施の形態のジャッキアップ装置を建設機械のセンターフレームのビームに取付けた状態を示す正面図である。
【図8】(A)は本実施の形態のジャッキアップ装置を建設機械のセンターフレームのビームに取付けた状態を示す側面断面図、(B)はその平面図、(C)はその落下防止用のピンの取付け構造を示す平面断面図である。
【図9】本発明によるジャッキアップ装置の第2の実施の形態を示す側面図である。
【図10】本発明によるジャッキアップ装置の第3の実施の形態を示すもので、(A)は側面図、(B)は平面図、(C)はA方向矢視図、(D)はB断面図である。
【図11】図10におけるビーム幅が異なる態様における適用状態を示す図である。
【図12】従来のジャッキアップ装置を有する建設機械を示す正面図である。
【図13】従来のジャッキアップ装置を有しない建設機械を示す正面図である。
【符号の説明】
【0053】
1:サイドフレーム、1a:角筒部、2:履帯、3:センターフレーム、3a:中央部、3b:ビーム、5:旋回装置、6:上部旋回体、7:拡縮用油圧シリンダ、8:駆動スプロケット、9:従動スプロケット、10:ローラ、11:固定板、12:ピン、14:ブラケット、13、15、16:ピン穴、17:運転室、18:パワーユニット、19:ウインチ、20、65:ジャッキアップ装置、21:ワイヤロープ、22:油圧シリンダ、23、70:ブラケット、24:接続部、25:錘、26:ハンドル、27:下板部、28:上板部、29、76:フレーム受け部、30:固定用ピン、30A:嵌合体、31:下板部、31a:穴、32:位置合わせ部、33:空間部、34、74、81:当接部材、35、78:リブ、36、75:取付け部材、37:シム、38:上板部、39、79:ボルト、40:穴、41:ねじ穴、42、80:落下防止用ピン、43:穴、44:側板部、45:補強板、46:取付け部材、47:穴、49:突起またはリング、50、51:穴、52:ピン、55:フロート、60:枢着軸、61:フック、62:止め板、63:止めピン、77:固定部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体フレームをセンターフレームとサイドフレームとにより構成し、前記サイドフレームに履帯を取付けた建設機械のジャッキアップ装置において、
ジャッキアップ装置は前記センターフレームへの取付け用ブラケットとそのブラケットに設けたジャッキアップ用の油圧シリンダとを有し、
前記ブラケットに、水平方向の移動を阻止する阻止手段と、ジャッキアップ時に前記阻止手段より上方の前記センターフレームの側面に当接する当接部とを有することを特徴とする建設機械のジャッキアップ装置。
【請求項2】
走行体フレームをセンターフレームとサイドフレームとにより構成し、前記サイドフレームに履帯を取付けた建設機械のジャッキアップ装置において、
ジャッキアップ装置は前記センターフレームへの取付け用ブラケットとそのブラケットに設けたジャッキアップ用の油圧シリンダとを有し、
前記ブラケットに、前記センターフレームの下面に当接させるフレーム受け部と、前記センターフレームの下面に当接した前記フレーム受け部の水平方向の移動を阻止する阻止手段と、ジャッキアップ時に前記下面より上方の前記センターフレームの側面に当接する当接部とを有することを特徴とする建設機械のジャッキアップ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建設機械のジャッキアップ装置において、
前記ブラケットには、前記センターフレームに係止させてジャッキアップ装置の落下を防止する落下防止手段を有することを特徴とする建設機械のジャッキアップ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の建設機械のジャッキアップ装置において、
前記ブラケットはその上部に吊り下げ用ワイヤロープに接続される接続部を有し、 前記ブラケットの接続部を中心として一方に前記センターフレームへの装着部を設け、その反対側にジャッキアップ用油圧シリンダと錘とを設けるとともに、この錘を設けた側の端部にハンドルを設け、ワイヤロープにより支持した状態において、前記ブラケットがほぼ水平姿勢を保ち、かつ前記油圧シリンダがほぼ垂直姿勢を保つことを特徴とする建設機械のジャッキアップ装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の建設機械のジャッキアップ装置において、
前記落下防止手段は、前記ビームの側板部に設けた穴と、前記ブラケットに着脱可能に取付けられ、前記側板部に設けた穴に挿入される落下防止用のピンからなることを特徴とする建設機械のジャッキアップ装置。
【請求項1】
走行体フレームをセンターフレームとサイドフレームとにより構成し、前記サイドフレームに履帯を取付けた建設機械のジャッキアップ装置において、
ジャッキアップ装置は前記センターフレームへの取付け用ブラケットとそのブラケットに設けたジャッキアップ用の油圧シリンダとを有し、
前記ブラケットに、水平方向の移動を阻止する阻止手段と、ジャッキアップ時に前記阻止手段より上方の前記センターフレームの側面に当接する当接部とを有することを特徴とする建設機械のジャッキアップ装置。
【請求項2】
走行体フレームをセンターフレームとサイドフレームとにより構成し、前記サイドフレームに履帯を取付けた建設機械のジャッキアップ装置において、
ジャッキアップ装置は前記センターフレームへの取付け用ブラケットとそのブラケットに設けたジャッキアップ用の油圧シリンダとを有し、
前記ブラケットに、前記センターフレームの下面に当接させるフレーム受け部と、前記センターフレームの下面に当接した前記フレーム受け部の水平方向の移動を阻止する阻止手段と、ジャッキアップ時に前記下面より上方の前記センターフレームの側面に当接する当接部とを有することを特徴とする建設機械のジャッキアップ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建設機械のジャッキアップ装置において、
前記ブラケットには、前記センターフレームに係止させてジャッキアップ装置の落下を防止する落下防止手段を有することを特徴とする建設機械のジャッキアップ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の建設機械のジャッキアップ装置において、
前記ブラケットはその上部に吊り下げ用ワイヤロープに接続される接続部を有し、 前記ブラケットの接続部を中心として一方に前記センターフレームへの装着部を設け、その反対側にジャッキアップ用油圧シリンダと錘とを設けるとともに、この錘を設けた側の端部にハンドルを設け、ワイヤロープにより支持した状態において、前記ブラケットがほぼ水平姿勢を保ち、かつ前記油圧シリンダがほぼ垂直姿勢を保つことを特徴とする建設機械のジャッキアップ装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の建設機械のジャッキアップ装置において、
前記落下防止手段は、前記ビームの側板部に設けた穴と、前記ブラケットに着脱可能に取付けられ、前記側板部に設けた穴に挿入される落下防止用のピンからなることを特徴とする建設機械のジャッキアップ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−16208(P2006−16208A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151688(P2005−151688)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(503032946)日立住友重機械建機クレーン株式会社 (104)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(503032946)日立住友重機械建機クレーン株式会社 (104)
【Fターム(参考)】
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