説明

建設機械の作動油タンク

【課題】油圧機器からの戻り油の受け入れポートを、リターン室に収納されているリターンフィルタの側面に設けることができる等、設計の自由度がきく構造をした作動油タンクを提供する。
【解決手段】油圧機器からの戻り油の受け入れポート4が接続されたリターン室2を作動油タンク1内に有し、該リターン室2にリターンフィルタ3を収納するとともに、リターンポート5を介してリターン室2と作動油タンク1内とを連通させた建設機械の作動油タンクであって、受け入れポート4とリターンフィルタ3との間に防護部材8を設け、受け入れポート4から流入した戻り油を、リターンフィルタ3の前側で一旦防護部材8に衝突分散させ、受け入れポート4からの戻り油がリターンフィルタ3に直接当たらないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械の作動油タンクに関するものであり、特に、設計の自由度を向上させることができる建設機械の作動油タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種作動油タンクには、戻り油に混入した塵埃や摩耗粉を除去すべく、タンクの内部にリターンフィルタを内装したものがある。このようなものでは、作動油タンク内に、リターンフィルタを収納してなるリターン室を設け、リターンポートを介してリターン室と作動油タンク内とを連通させた構造になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の建設機械の作動油タンクの一例を図4及び図5に示す。作動油タンク1内にリターン室2を備え、このリターン室2にリターンフィルタ3を収納してある。該リターン室2の上部には油圧機器(図示せず)からの戻り油が流入する受入れポート4が接続され、該リターン室2の底部はリターンポート5を介して作動油タンク1内に連通している。そして、作動油タンク1の底部に設けた出口ポート6は、油圧ポンプに接続されている。
【0004】
油圧機器を通過した油は、作動油タンク1に流入するが、先ず、受入れポート4から一旦、リターン室2に受け入れられ、リターンフィルタ3を通過する際に油中のコンタミナントが除去される。リターンフィルタ3で濾過された油は、リターンポート5から作動油タンク1内へ流入し、作動油タンク1に収容される。油圧機器を駆動することにより、作動油タンク1に収容されている油は順次出口ポート6から流出していく。
【0005】
ところで、受け入れポート4からリターン室2内に流入する戻り油は、流量が多く、また圧力も高い。このため、受け入れポート4を、例えば図4中に二点鎖線で示すように、リターンフィルタ3の側面と対峙する位置に設け、受け入れポート4から流入した戻り油がリターンフィルタ3の側面に直接当たるようにすると、高い圧力を受けてリターンフィルタ3に穴が開く虞がある。そこで、従来では、受け入れポート4を、図4中に実線で示すようにリターンフィルタ3の上方に設け、受け入れポート4から流入した戻り油がリターンフィルタ3に直接当たらないような構造がとられている。なお、特許文献1に記載されている作動油タンクも、同様の構造がとられている。
【特許文献1】特開平10−280475号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載に記載されている作動油タンクの構造や、図4及び図5に示した作動油タンクの構造では、受け入れポートから流入した戻り油がリターンフィルタに直接当たらないようにするために、受け入れポートをリターンフィルタの上方に設けた構造がとられている。そのため、リターンフィルタの上面と作動油タンクの天井面との間に、受け入れポートから流入した戻り油を落下させる空間を確保する必要があり、作動油タンクの高さも必然的に大きくなり、高さの低い作動油タンクを希望する場合には、設計上の障害になる。このように、従来の作動油タンクの構造では、受け入れポートをリターンフィルタの側面位置に設けることができない等、設計がしづらいという問題があった。
【0007】
そこで、油圧機器からの戻り油の受け入れポートを、リターン室に収納されているリターンフィルタの側面に設けることができる等、設計の自由度がきく構造をした作動油タンクを提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、油圧機器からの戻り油の受け入れポートが接続されたリターン室を作動油タンク内に有し、該リターン室にリターンフィルタを収納するとともに、リターンポートを介して前記リターン室と前記作動油タンク内とを連通させた建設機械の作動油タンクにおいて、前記受け入れポートと前記リターンフィルタとの間に防護部材を設け、前記受け入れポートから流入した戻り油を、前記リターンフィルタの前側で一旦防護部材に衝突分散させ、前記受け入れポートからの戻り油が前記リターンフィルタに直接当たらないように構成したことを特徴とする建設機械の作動油タンクを提供する。
【0009】
この構成によれば、受け入れポートからの戻り油は、受け入れポートとリターンフィルタとの間に設けられている防護部材に一旦衝突し、ここで勢いが弱められて、その後、リターンフィルタに向かって流れる形となる。このため、受け入れポートがリターン室のどの位置に設けられていようとも、受け入れポートから流入した戻り油は直接リターンフィルタに当たることがないので、戻り油の高圧力でリターンフィルタに穴が開くというようなことがなくなる。
【0010】
請求項2記載の発明は、上記受け入れポートを、上記リターンフィルタの側面と対峙する位置に設けてなる建設機械の作動油タンクを提供する。
【0011】
この構成によれば、受け入れポートを、リターンフィルタの側面と対峙する位置に設けることにより、作動油タンクの高さ方向の寸法を小さくすることが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明は、受け入れポートがリターン室のどの位置に設けられていても、戻り油の圧力でリターンフィルタに穴が開くということがないので、受け入れポートを自由な位置に設けることが可能になり、作動油タンクを設計する上での自由度が向上する。
【0013】
請求項2記載の発明は、作動油タンクの高さ方向の寸法を小さくすることが可能になるので、請求項1記載の作用効果に加えて、さらに小形化及び低背形化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る建設機械の作動油タンクについて、好適な実施例をあげて説明する。油圧機器からの戻り油の受け入れポートを、リターン室に収納されているリターンフィルタの側面に設けることができる等、設計の自由度がきく構造をした作動油タンクを提供するという目的を達成するために、油圧機器からの戻り油の受け入れポートが接続されたリターン室を作動油タンク内に有し、該リターン室にリターンフィルタを収納するとともに、リターンポートを介して前記リターン室と前記作動油タンク内とを連通させた建設機械の作動油タンクにおいて、前記受け入れポートと前記リターンフィルタとの間に防護部材を設け、前記受け入れポートから流入した戻り油を、前記リターンフィルタの前側で一旦防護部材に衝突分散させ、前記受け入れポートからの戻り油が前記リターンフィルタに直接当たらないように構成したことにより実現した。
【実施例】
【0015】
図1及び図2は本発明の実施の形態に係る建設機械の作動油タンクを示す。なお、説明の都合上、従来と同一構成部分には同一符号を付して、その説明を省略する。図1及び図2に示すように、作動油タンク1内のリターン室2には、油圧機器(図示せず)からの戻り油の受け入れポート4が、リターンフィルタ3の側面と対応する位置に接続されている。また、受け入れポート4とリターンフィルタ3との間には、防護部材8を設けている。
【0016】
防護部材8は、図3に示すように、金属板材であり、本体部9の上下両端部分を各々同一方向に向かって略直角に折り曲げ、断面コ字状に形成されている。そして、防護部材8は、左右の両側面を開放させたままの状態で、上下の両端部10,10をそれぞれリターン室2の内面に固定し、本体部9が受け入れポート4の前面に立ちふさがるようにして取り付けられている。
【0017】
次に、動作を説明する。油圧機器を通過した油は作動油タンク1に戻されるが、先ず、受入れポート4からリターン室2に流入する。その際、受入れポート4からの戻り油は、直接リターンフィルタ3に当たることなく、受け入れポート4の前に立設された防護部材8の本体部9に一旦衝突し、該本体部9の内面で分散して、勢いが弱められた後に左右の両側開放部分からリターン室2内に拡散する。また、リターン室2内に排出された戻り油は、リターンフィルタ3を通過する際に油中のコンタミナントが除去されて濾過され、その後、リターンポート5から作動油タンク1内へ流入し、作動油タンク1に収容される。油圧ポンプを駆動することにより、作動油タンク1に収容された油は順次出口ポート6から流出していく。
【0018】
したがって、本実施の形態による作動油タンクの構造によれば、受け入れポート4からの戻り油は、受け入れポート4とリターンフィルタ3との間に設けられている防護部材8に一旦衝突し、ここで勢いが弱められた後、リターンフィルタ3に向かって流れる形となる。よって、受け入れポート4がリターン室2のどの位置に設けられていても、受け入れポート4から流入する戻り油の圧力で、リターンフィルタ3に穴が開くというような問題がなくなる。これにより、受け入れポート4を自由な位置に設けることが可能になり、作動油タンク1を設計する上での自由度が向上する。また、受け入れポート4を、リターンフィルタ3の側面と対峙する位置に設けることもできるので、作動油タンク1の高さ方向の寸法を小さくすることも可能になる。
【0019】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。例えば、上記実施の形態では、受け入れポート4をリターンフィルタ3の側面に対峙させて設けた構造を開示したが、図1中に二点鎖線で示すように、リターンフィルタ3の上方に受け入れポート4を設け、その前側に保護部材8を設けた構造にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る建設機械の作動油タンクの縦断面図。
【図2】図1のA−A線断面矢視図。
【図3】同上作動油タンクの部分拡大斜視図。
【図4】従来の作動油タンクの縦断面図。
【図5】図4のB−B線断面矢視図。
【符号の説明】
【0021】
1 作動油タンク
2 リターン室
3 リターンフィルタ
4 受け入れポート
5 リターンポート
6 出口ポート
8 防護部材
9 本体部
10 上下両端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧機器からの戻り油の受け入れポートが接続されたリターン室を作動油タンク内に有し、該リターン室にリターンフィルタを収納するとともに、リターンポートを介して前記リターン室と前記作動油タンク内とを連通させた建設機械の作動油タンクにおいて、
前記受け入れポートと前記リターンフィルタとの間に防護部材を設け、前記受け入れポートから流入した戻り油を、前記リターンフィルタの前側で一旦防護部材に衝突分散させ、前記受け入れポートからの戻り油が前記リターンフィルタに直接当たらないように構成したことを特徴とする建設機械の作動油タンク。
【請求項2】
上記受け入れポートを、上記リターンフィルタの側面と対峙する位置に設けてなる請求項1記載の建設機械の作動油タンク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−155006(P2007−155006A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351109(P2005−351109)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(501132804)住友建機製造株式会社 (271)
【Fターム(参考)】