説明

建設機械の旋回駆動装置

【課題】電動モータハウジングがアルミ合金製で強度が低くても、油圧モータ、電動モータおよび減速機をこの順番で重ねて強固に結合することができる建設機械の旋回駆動装置を提供すること。
【解決手段】油圧モータハウジング21、電動モータハウジング31、減速機ハウジング41の3つを組付ける組付け手段50は、ボルト52の呼び長さ部52bが油圧モータハウジング21のボルト孔53と補強部材51の通し孔とに差し通された状態で減速機ハウジング41の雌ネジ部54に螺合することに伴い、油圧モータ側段部56と減速機側段部57により油圧モータ20側と減速機40側から電動モータハウジング31を挟持することで、電動モータハウジング31を油圧モータハウジング21と減速機ハウジング41とに対して間接的に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧モータと、この油圧モータに伝動可能に結合する電動モータと、この電動モータに伝動可能に結合する減速機とを備え、油圧モータおよび電動モータの少なくとも一方の回転に伴って減速機のピニオンが旋回ベアリングのインナーレースのリングギアに沿って転動することにより、旋回体を旋回させる建設機械の旋回駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の旋回駆動装置としては、油圧モータと、電動モータと、油圧モータおよび電動モータから入力された回転を減速して出力する遊星歯車減速機(減速機)とを備えたものがある。遊星歯車減速機と旋回ベアリングのインナーレースはピニオンを介して伝動可能に接続されている。油圧モータ、電動モータ、遊星歯車減速機(減速機)はこの順番で上から下に重なって組みつけられている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−8422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のような旋回駆動装置において、油圧モータの外形を形成している油圧モータハウジング、および、減速機の外形を形成している減速機ハウジングは一般に鉄製の部材であり、電動モータの外形を形成している電動モータハウジングは一般にアルミニウム合金製の部材である。電動モータハウジングがアルミニウム合金製の部材である理由は、電動モータにより発生される熱を放熱しやすく、冷却水を供給しても腐食が生じにくいことが要求されるためである。
【0005】
油圧モータ、電動モータ、減速機をこの順番で上から下に重ねて組付ける場合、電動モータの上部および下部の両方に雌ネジ部を設け、油圧モータの下部にボルトを差し通すボルト孔を設け、減速機の上部にボルトを差し通すボルト孔と設けて、電動モータハウジングの上部と油圧モータハウジングの下部とをボルトと雌ネジ部で締結し、電動モータハウジングの下部と減速機ハウジングの上部とをボルトと雌ネジ部で締結して、油圧モータ、電動モータおよび減速機の3つを組付けることが考えられる。油圧モータハウジングと電動モータハウジングとの締結部は、油圧モータの出力時に油圧モータハウジングが電動モータハウジングに対して回転しないよう固定するものである。ボルトの締付けトルクが大きいほど強固に油圧モータハウジングを電動モータハウジングに固定することができるが、電動モータハウジングはアルミニウム合金製であるために強度が得にくく、旋回体の旋回開始に際し油圧モータが非常に大きなトルクを出力したときに耐え得る十分な締付けトルクを確保することが困難である。つまり、ボルトの締付けトルクを大きくしていくと、十分な締付けトルクに達する前に雌ネジ部が損傷する。
【0006】
このように油圧モータ、電動モータおよび減速機をこの順番で重ねて強固に組付けるためには、ボルトと雌ネジ部による単純な締結構造は十分でなかった。なお、建設機械の旋回駆動装置において使用される油圧モータの出力は、電動モータの出力の10倍程度であるため、電動モータと油圧モータの上下方向の位置を入れ替えることは考えられない。
【0007】
本発明は前述の事情を考慮してなされたものであり、その目的は、油圧モータ、電動モータおよび減速機をこの順番で重ねて強固に結合することができる建設機械の旋回駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するために本発明に係る建設機械の旋回駆動装置は次のように構成されている。
【0009】
〔1〕 本発明に係る建設機械の旋回駆動装置は、油圧モータと、この油圧モータに伝動可能に結合する電動モータと、この電動モータに伝動可能に結合する減速機と、台部材に対し旋回体を旋回可能に結合する旋回ベアリングと、前記油圧モータの外形を形成している油圧モータハウジング、前記電動モータの外形を形成している電動モータハウジング、および、前記減速機の外形を形成している減速機ハウジングの3つを組付ける組付け手段と、を備え、前記旋回ベアリングは、前記台部材に固定され内周面にリングギアが形成されたインナーレースと、前記旋回体に固定されて前記インナーレースの外周側で前記インナーレースに対し周方向に回転自在に設けられたアウターレースとを備え、前記減速機は前記インナーレースの前記リングギアに噛み合うピニオンを備え、前記油圧モータおよび前記電動モータの少なくとも一方の出力に伴い、前記減速機のピニオンが前記インナーレースの前記リングギアに沿って転動することにより、前記台部材に対し前記旋回体を旋回させる建設機械の旋回駆動装置において、前記電動モータハウジングはアルミニウム合金製の部材であって前記油圧モータハウジングよりも強度の低い部材であり、前記組付け手段は、前記油圧モータハウジングと同等以上の強度を有する部材であって前記油圧モータと前記減速機の間に位置して前記電動モータハウジングの外周面に装着される補強部材を備え、この補強部材を介して前記電動モータハウジングを前記油圧モータハウジングと前記減速機ハウジングに対して固定することを特徴とする。
【0010】
この「〔1〕」に記載の建設機械の旋回駆動装置において、組付け手段は補強部材を介して電動モータハウジングを油圧モータハウジングと減速機ハウジングに対して固定する。補強部材は油圧モータハウジングと同等以上の強度を有する部材であるので、補強部材に対し油圧モータハウジングを強固に固定することができる。これによって、油圧モータ、電動モータおよび減速機をこの順番で重ねて強固に結合することができる。
【0011】
〔2〕 本発明に係る建設機械の旋回駆動装置は、「〔1〕」に記載の建設機械の旋回駆動装置において、前記組付け手段は、ボルトと、前記油圧モータハウジングに設けられ前記ボルトの呼び長さ部が差し通されるとともに前記ボルトの頭部が通過不能な大きさに形成されたボルト孔と、前記減速機ハウジングに設けられ前記ボルトが螺合する雌ネジ部と、前記補強部材に設けられ前記ボルト孔と前記雌ネジ部の間に位置し前記ボルトの呼び長さ部が差し通される通し孔と、前記油圧モータ側の前記補強部材の端部に前記通し孔よりも内側に突出して形成され、前記電動モータハウジングに前記油圧モータ側から接する油圧モータ側段部と、前記減速機側の前記補強部材の端部に前記通し孔よりも内側に突出して形成され、前記電動モータハウジングに前記減速機側から接する減速機側段部と、を備え、前記ボルトの前記呼び長さ部が前記油圧モータハウジングの前記ボルト孔と前記補強部材の通し孔とに差し通された状態で前記減速機ハウジングの前記雌ネジ部に螺合することに伴い、前記油圧モータ側段部と前記減速機側段部により前記油圧モータ側と前記減速機側から前記電動モータハウジングを挟持することで、前記電動モータハウジングを前記油圧モータハウジングと前記減速機ハウジングとに対して固定することを特徴とする。
【0012】
〔3〕 本発明に係る建設機械の旋回駆動装置は、「〔1〕」に記載の建設機械の旋回駆動装置において、前記組付け手段は、ボルトと、前記油圧モータハウジングに設けられ前記ボルトの呼び長さ部が差し通されるとともに前記ボルトの頭部が通過不能な大きさに形成されたボルト孔と、前記減速機ハウジングに設けられ前記ボルトが螺合する雌ネジ部と、前記補強部材に設けられ前記ボルト孔と前記雌ネジ部の間に位置し前記ボルトの呼び長さ部が差し通される通し孔と、前記油圧モータ側の前記補強部材の端部に前記通し孔よりも内側に突出して形成され、前記電動モータハウジングに前記油圧モータ側から接する段部と、この段部に対し前記油圧モータ側から嵌め込まれて前記減速機側に貫通するとともに、前記段部を貫通した部分が前記電動モータハウジングに嵌め込まれる打込みピンと、を備え、前記ボルトの前記呼び長さ部が前記油圧モータハウジングの前記ボルト孔と前記補強部材の通し孔とに差し通された状態で前記減速機ハウジングの前記雌ネジ部に螺合することに伴い、前記段部により前記電動モータハウジングを前記油圧モータ側から前記減速機ハウジングに押し付けるとともに、前記補強部材に前記電動モータハウジングを前記打込みピンで固定することにより、前記電動モータハウジングを前記油圧モータハウジングと前記減速機ハウジングとに対して固定することを特徴とする。
【0013】
〔4〕 本発明に係る建設機械の旋回駆動装置は、「〔1〕」に記載の建設機械の旋回駆動装置において、前記組付け手段は、前記補強部材の前記油圧モータ側の端部から内側に突出して形成された油圧モータ側段部と、前記補強部材の前記減速機側の端部から内側に突出して形成された減速機側段部と、前記油圧モータ側段部に設けられた油圧モータ側雌ネジ部と、前記減速機側段部に設けられた減速機側雌ネジ部と、前記油圧モータ側に配置されて前記油圧モータ側雌ネジ部に螺合する油圧モータ側ボルトと、前記減速機側に配置されて前記減速機側雌ネジ部に螺合する減速機側ボルトと、前記油圧モータハウジングに設けられ前記油圧モータ側ボルトの呼び長さ部が差し通されるとともに前記油圧モータ側ボルトの頭部が通過不能な大きさに形成された油圧モータ側ボルト孔と、前記減速機ハウジングに設けられ前記減速機側ボルトの呼び長さ部が差し通されるとともに前記減速機側ボルトの頭部が通過不能な大きさに形成された減速機側ボルト孔と、を備え、前記油圧モータ側ボルトが前記油圧モータ側雌ネジ部に螺合し、かつ前記減速機側ボルトが前記減速機側雌ネジ部に螺合した状態となることに伴い、前記油圧モータ側段部と前記減速機側段部により前記油圧モータ側と前記減速機側から前記電動モータハウジングを挟持することで、前記電動モータハウジングを前記油圧モータハウジングと前記減速機ハウジングとに対して固定することを特徴とする。
【0014】
この「〔4〕」に記載の建設機械の旋回駆動装置においては、油圧モータ側ボルト孔と減速機側ボルト孔の間に位置する補強部材の部分を、それら油圧モータ側ボルト孔および減速機側ボルト孔よりも外側に張り出させることによって、補強部材の内側の空間を大きくすることができる。したがって、油圧モータの外形寸法および減速機の外径寸法よりも大きな外径寸法の電動モータを、油圧モータと減速機の間に組付けることができる。
【0015】
〔5〕 本発明に係る建設機械の旋回駆動装置は、「〔1〕」〜「〔4〕」のいずれか1に記載の建設機械の旋回駆動装置において、前記補強部材に冷却水路が設けられたことを特徴とする。
【0016】
この「〔5〕」に記載の建設機械の旋回駆動装置において、電動モータハウジングに装着された補強部材が、電動モータハウジングの放熱を抑えることを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る建設機械の旋回駆動装置によれば、前述のように、油圧モータ、電動モータおよび減速機をこの順番で重ねて強固に結合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る建設機械である油圧ショベルを示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る旋回駆動装置の部分断面図である。
【図3】図2に示した補強部材の上面図である。
【図4】補強部材に設けられた冷却水路を示す図である。
【図5】図4のV−V断面図である。
【図6】第2実施形態に係る旋回駆動装置の部分断面図である。
【図7】図6に示した補強部材の上面図である。
【図8】第3実施形態に係る旋回駆動装置の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1〜第3実施形態について図を用いて説明する。
【0020】
<第1実施形態>
第1実施形態について図1〜図5を用いて説明する。
【0021】
第1実施形態に係る建設機械は、図1に示す油圧ショベル1である。この油圧ショベル1は、履帯2aを駆動して走行する走行体2と、この走行体2の骨格を形成しているフレーム2b(図2参照)を台部材としてこの台部材に対し旋回ベアリング14を介して旋回可能に結合する旋回体3と、この旋回体3の前部に設けられ、ブームシリンダ7a(油圧シリンダ)により起伏し、アームシリンダ8a(油圧シリンダ)およびバケットシリンダ9a(油圧シリンダ)の少なくとも一方の収縮または伸長により屈曲または伸展するフロント作業装置6とを備えている。
【0022】
旋回体3は運転室4と機械室5を備えている。機械室5内には、エンジン10と、このエンジン10により駆動される油圧ポンプ11とが設けられている。油圧ポンプ11は、ブームシリンダ7a、アームシリンダ8a、バケットシリンダ9a等、油圧ショベル1の各油圧アクチュエータに供給される油圧の油圧源である。
【0023】
また、機械室5内には、エンジン10に連結されジェネレータ(発電機)とモータ(電動機)の機能を備えて駆動されるモータ・ジェネレータ12と、このモータ・ジェネレータ12により生起された電気エネルギーを蓄えるキャパシタ13とが設けられている。なお、モータ・ジェネレータ12はモータとして機能した場合にエンジン10の回転を助勢するようになっている。
【0024】
また、機械室内5には、油圧モータ20と、この油圧モータ20に伝動可能に結合する電動モータ30と、この電動モータ30に伝動可能に結合する減速機40とが設けられている。油圧モータ20は前出の油圧ポンプ11からの圧油により駆動されるものである。電動モータ30は前出のキャパシタ13からの電力により駆動されるものである。
【0025】
図2に示すように、第1実施形態に係る旋回駆動装置は、前出の油圧モータ20と、前出の電動モータ30と、前出の減速機40と、前出の旋回ベアリング14とを備えている。
【0026】
電動モータ30の外形は、電動モータハウジング31により形成されている。この電動モータハウジング31の内部には、シャフト32と、このシャフト32を電動モータハウジング31に対して回転可能に保持するベアリング33と、シャフト32に固定されたロータ(永久磁石)と、このロータ34の外周側に位置するステータコイル35とを備えている。
【0027】
旋回ベアリング14は、台部材である走行体2のフレーム2bに固定され内周面にリングギア15aが形成されたインナーレース15と、旋回体3の下部を形成しているフレーム3aに固定されてインナーレース15の外周側でインナーレース15に対し周方向に回転自在に設けられたアウターレース16とを備えている。減速機40はインナーレース15のリングギア15aに噛み合うピニオン42を備えており、油圧モータ20および電動モータ30の少なくとも一方の出力に伴い、減速機40のピニオン42がインナーレース15のリングギア15aに沿って転動することにより、走行体2(フレーム2b)に対し旋回体3を旋回させるようになっている。
【0028】
油圧モータ20の外形を形成している油圧モータハウジング21と、減速機40の外形を形成している減速機ハウジング41は、鉄製の部材である。電動モータハウジング31はアルミ合金製の部材であって、油圧モータハウジング21および減速機ハウジング41よりも強度が低い。電動モータハウジング31がアルミニウム合金製である理由は、電動モータにより発生される熱を放熱しやすく、冷却水を供給しても腐食が生じにくいことが要求されるためであり、このことは既に述べた通りである。なお、図2中の36は電動モータハウジング31に設けられた冷却水路である。
【0029】
第1実施形態に係る旋回駆動装置は、油圧モータハウジング21、電動モータハウジング31、および、減速機ハウジング41の3つを組付ける組付け手段50を備えている。この組付け手段50は補強部材51を備えている。この補強部材51は、油圧モータハウジング21と同等以上の強度を有する。また、この補強部材51は、電動モータハウジング31の外周面に装着されるものであり、電動モータハウジング31の外形に合わせて円筒形に形成されている。組付け手段50は、その補強部材51を介して電動モータハウジング31を油圧モータハウジング21と減速機ハウジング41に対して固定している。この組付け手段50の詳細について次に説明する。
【0030】
組付け手段50は、ボルト52と、油圧モータハウジング21下端のフランジ22に設けられボルト52の呼び長さ部52bが差し通されるとともにボルト52の頭部52aが通過不能な大きさに形成されたボルト孔53と、減速機ハウジング41上端のフランジ43に設けられボルト52が螺合する雌ネジ部54と、補強部材51に設けられボルト孔53と雌ネジ部54の間に位置しボルト52の呼び長さ部52bが差し通される通し孔55と、油圧モータ20側の補強部材51の端部において通し孔55よりも内側(シャフト32側)に突出して形成され、電動モータハウジング31に油圧モータ20側から接する油圧モータ側段部56と、減速機40側の補強部材51の端部に通し孔55よりも内側(シャフト32側)に突出して形成され、電動モータハウジング31に減速機40側から接する減速機側段部57と、を備えている。そして、組付け手段50は、ボルト52の呼び長さ部52bが油圧モータハウジング21のボルト孔53と補強部材51の通し孔55とに差し通された状態で減速機ハウジング41の雌ネジ部54に螺合することに伴い、油圧モータ側段部56と減速機側段部57により油圧モータ20側と減速機40側から電動モータハウジング31を挟持することで、電動モータハウジング31を油圧モータハウジング21と減速機ハウジング41とに対して固定している。
【0031】
図3に示すように、補強部材51は、半円筒状の2個の部材、すなわち第1円筒部材51a,第2円筒部材51bとから構成されている。つまり、第1円筒部材51aと第2円筒部材51bのそれぞれは、第1円筒部材51aと第2円筒部材51bとが全体として円筒形をなすように電動モータハウジング31の外周面に当接した状態で、油圧モータハウジング21および減速機ハウジング41に対し固定されることによって円筒状の1個の補強部材51をなす。図4中の51cは第1円筒部材51aと第2円筒部材51bとの突合せ位置である。
【0032】
通し孔55は補強部材51の周方向に等間隔に並んで複数、第1実施形態では12個設けられている。ボルト孔53は油圧モータハウジング21のフランジ22に、周方向に等間隔に並んで複数設けられている。雌ネジ部54は減速機40のフランジ43に、周方向に等間隔に並んで設けられている。通し孔55の個数、ボルト孔53の個数、雌ネジ部54の個数は同数に設定されている。周方向において隣り合う2個の通し孔55の間隔、周方向において隣り合う2個のボルト孔53の間隔、周方向において隣り合う2個の雌ネジ部54の間隔は、同寸法に設定されている。
【0033】
図4に示すように、補強部材51には、冷却水路60(図4中の黒塗り部)が設けられている。この冷却水路60は、電動モータ30のシャフト32の軸方向に延びた縦水路61と、電動モータハウジング31の上部において周方向に延びた上部横水路62と、電動モータハウジング31の下部において周方向に延びた下部横水路63と、冷却水路60の入口をなす入口管64と、冷却水路60の出口をなす出口管65と、接続管66,67と、これら接続管66,67を接続するホース68を備えている。縦水路61は周方向において通し孔55と交互に並んで位置する。なお、図4において冷却水路60を実線で示したが、これは図の簡略化のためであり、実際の補強部材51の外観では冷却水路60は見えない。
【0034】
図4,図5に示すように、上部横水路62(図5では黒塗り部)は、隣り合う2条の縦水路61の上端同士を連通させる水路であり、下部横水路63(図5では破線部)は、隣り合う2条の縦水路61の下端同士を連通させる水路であり、これら上部横水路62と下部横水路63は周方向において交互に並んで位置する。つまり、上部横水路62により上端同士を連通されている2条の縦水路61は互いの下端同士を下部横水路63により連通されていることはなく、それら2条の縦水路61の一方は他方と反対側で隣り合う縦水路61と下部横水路63により連通されている。また、上部横水路62も下部横水路63も外側に湾曲した円弧状をなして通し孔55を避けて位置する。入口管64が設けられた縦水路61と出口管65が設けられた縦水路64とは、上部横水路62および下部横水路63のいずれにも連通されていない。接続管66,67はそれぞれ、突合せ位置51cを挟んで隣接して位置する縦水路61の上部から突出しており、ホース68を介して連通している。
【0035】
第1実施形態に係る旋回駆動装置によれば次の効果を得られる。
【0036】
第1実施形態に係る旋回駆動装置において、組付け手段50は、補強部材51を介して電動モータハウジング31を油圧モータハウジング21と減速機ハウジング41に対して固定する。補強部材51は油圧モータハウジング21と同等以上の強度を有する部材であるので、補強部材51に対し油圧モータハウジングを強固に固定することができる。これにより、油圧モータ20、電動モータ30および減速機40をこの順番で重ねて強固に結合することができる。
【0037】
第1実施形態に係る旋回駆動装置において、補強部材51には冷却水路60が設けられているので、電動モータハウジング31に装着された補強部材51が、電動モータハウジング31の放熱を妨げることを防止でき、電気モータハウジング31の冷却を十分に行うことができる。
【0038】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る旋回駆動装置について図6,図7を用いて説明する。
【0039】
第2実施形態に係る旋回駆動装置は、第1実施形態の組付け手段50とは異なる組付け手段70を備えている。第2実施形態に係る旋回駆動装置の組付け手段70以外の構成は、第1実施形態に係る旋回駆動装置と同様である。
【0040】
組付け手段70は、ボルト52と、油圧モータハウジング21に設けられボルト52の呼び長さ部が差し通されるとともにボルト52の頭部が通過不能に形成されたボルト孔53と、減速機ハウジング41に設けられボルト52が螺合する雌ネジ部54と、補強部材71に設けられボルト孔53と雌ネジ部54の間に位置しボルト52の呼び長さ部52bが差し通される通し孔55とを備えている。これらの構成要素は、第1実施形態の組付け手段50と共通している。
【0041】
特に、組付け手段70は、油圧モータ20側の補強部材71の端部において通し孔55よりも内側(シャフト32側)に突出して形成され、電動モータハウジング31に油圧モータ20側から接する段部72と、この段部72に対し油圧モータ20側から差し通された状態で嵌め込まれて貫通するとともに、段部72を貫通した部分が電動モータハウジング31に嵌め込まれる打込みピン73とを備えている。そして、組付け手段70は、ボルト52の呼び長さ部52bが油圧モータハウジング21のボルト孔53と補強部材71の通し孔55とに差し通された状態で減速機ハウジング41の雌ネジ部54に螺合することに伴い、段部72により電動モータハウジング31を油圧モータ20側から減速機ハウジング41に押し付けるとともに、補強部材71に電動モータハウジング31を打込みピン73で固定することにより、電動モータハウジング31を油圧モータハウジング21と減速機ハウジング41とに対して固定している。
【0042】
特に、第2実施形態の補強部材71は、図7に示すように、ボルト孔53に加えて、打込みピン73が嵌め込まれるピン孔74が設けられている。また、補強部材71の下端の内径は、電動モータハウジング31を挿入可能な寸法に設定されている。つまり、補強部材71は電動モータハウジング31に上側から被せるようにして装着されるようになっている。なお、補強部材71にも冷却水路60は設けられている。
【0043】
第2実施形態に係る旋回駆動装置によれば次の効果を得られる。
【0044】
第2実施形態に係る旋回駆動装置においても第1実施形態と同様に、組付け手段70は、補強部材71を介して電動モータハウジング31を油圧モータハウジング21と減速機ハウジング41に対して固定する。補強部材71は油圧モータハウジング21と同等以上の強度を有する部材であるので、補強部材71に対し油圧モータハウジング21を強固に固定することができる。これにより、油圧モータ20、電動モータ30および減速機40をこの順番で重ねて強固に結合することができる。
【0045】
特に第2実施形態に係る旋回駆動装置によれば、補強部材71を電動モータハウジング31に上側(油圧モータ20側)から被せるようにして装着することができる。これにより、第1実施形態の補強部材51のように電動モータハウジング31に対する装着のために第1円筒部材51aと第2円筒部材51bとに分割する必要がない。
【0046】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る旋回駆動装置について図8を用いて説明する。
【0047】
第3実施形態に係る旋回駆動装置は、第1実施形態の組付け手段50とは異なる組付け手段80を備えている。第3実施形態に係る旋回駆動装置の組付け手段80以外の構成は、第1実施形態に係る旋回駆動装置と同様である。
【0048】
組付け手段80は、補強部材81の油圧モータ20側の端部から内側(シャフト32側)に突出して形成された油圧モータ側段部82と、補強部材81の減速機40側の端部から内側(シャフト32側)に突出して形成された減速機側段部83と、油圧モータ側段部82に設けられた油圧モータ側雌ネジ部88と、減速機側段部83に設けられた減速機側雌ネジ部89と、油圧モータ側雌ネジ部88に螺合する油圧モータ側ボルト84と、減速機側雌ネジ部89に螺合する減速機側ボルト85と、油圧モータハウジング21に設けられ油圧モータ側ボルト84の呼び長さ部84bが差し通されるとともに油圧モータ側ボルト84の頭部84aが通過不能な大きさに形成された油圧モータ側ボルト孔86と、減速機ハウジング41に設けられ減速機側ボルト85の呼び長さ部85bが差し通されるとともに減速機側ボルト85の頭部85aが通過不能な大きさに形成された減速機側ボルト孔87と、を備えている。そして、組付け手段80は、油圧モータ側ボルト84が油圧モータ側雌ネジ部88に螺合し、かつ減速機側ボルト85が減速機側雌ネジ部89に螺合した状態となることに伴い、油圧モータ側段部82と減速機側段部83により油圧モータ20側と減速機40側から電動モータハウジング31を挟持することで、電動モータハウジング31を油圧モータハウジング21と減速機ハウジング41とに対して固定している。
【0049】
第3実施形態に係る旋回駆動装置によれば次の効果を得られる。
【0050】
第3実施形態に係る旋回駆動装置においても第1実施形態と同様に、組付け手段80は、補強部材81を介して電動モータハウジング31を油圧モータハウジング21と減速機ハウジング41に対して固定する。補強部材81は油圧モータハウジング21と同等以上の強度を有する部材であるので、補強部材81に対し油圧モータハウジングを強固に固定することができる。これにより、油圧モータ20、電動モータ30および減速機40をこの順番で重ねて強固に結合することができる。
【0051】
特に第3実施形態に係る旋回駆動装置によれば、油圧モータ側ボルト孔86と減速機側ボルト孔87の間に位置する補強部材81の周壁部81aを、それら油圧モータ側ボルト孔86および減速機側ボルト孔87よりも外側に張り出させることによって、補強部材81の内側の空間を大きくすることができる。したがって、油圧モータ20の外形寸法および減速機40の外径寸法よりも大きな外径寸法の、すなわちより最高出力の高い電動モータ30を、油圧モータ20と減速機40の間に組付けることができる。
【0052】
なお、前述の第1〜第3実施形態が適用される建設機械は油圧ショベルであったが、本発明が適用可能な建設機械は油圧ショベルに限定されるものではなく、油圧モータ、電動モータ、減速機をこの順番で組付ける旋回駆動装置を備えた建設機械であればよく、クレーンであってもよい。また、旋回体が旋回可能に結合される台部材は、走行体のフレーム2bに限らず、地面に対して固定されたもの、台船に設けられたものであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 油圧ショベル
2 走行体
2a 履帯
2b フレーム
3 旋回体
3a フレーム
4 運転室
5 機械室
6 フロント作業装置
7 ブーム
7a ブームシリンダ
8 アーム
8aアームシリンダ
9 バケット
9a バケットシリンダ
10 エンジン
11 油圧ポンプ
12 モータ・ジェネレータ
13 キャパシタ
14 旋回ベアリング
15 インナーレース
15a リングギア
16 アウターレース
20 油圧モータ
21 油圧モータハウジング
22 フランジ
30 電動モータ
31 電動モータハウジング
32 シャフト
33 ベアリング
34 ロータ
35 ステータコイル
36 冷却水路
40 減速機
41 減速機ハウジング
42 ピニオン
43 フランジ
50 組付け手段
51 補強部材
51a 第1円筒部材
51b 第2円筒部材
51c 突合せ位置
52 ボルト
52a 頭部
52b 呼び長さ部
53 ボルト孔
54 雌ネジ部
55 通し孔
56 油圧モータ側段部
57 減速機側段部
60 冷却水路
61 縦水路
62 上部横水路
63 下部横水路
64 入口管
65 出口管

70 組付け手段
71 補強部材
72 段部
73 打込みピン
74 ピン孔

80 組付け手段
81 補強部材
82 油圧モータ側段部
83 減速機側段部
84 油圧モータ側ボルト
84a 頭部
84b 呼び長さ部
85 減速機側ボルト
85a 頭部
85b 呼び長さ部
86 油圧モータ側ボルト孔
87 減速機側ボルト孔
88 油圧モータ側雌ネジ部
89 減速機側雌ネジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧モータと、この油圧モータに伝動可能に結合する電動モータと、この電動モータに伝動可能に結合する減速機と、台部材に対し旋回体を旋回可能に結合する旋回ベアリングと、前記油圧モータの外形を形成している油圧モータハウジング、前記電動モータの外形を形成している電動モータハウジング、および、前記減速機の外形を形成している減速機ハウジングの3つを組付ける組付け手段と、を備え、
前記旋回ベアリングは、前記台部材に固定され内周面にリングギアが形成されたインナーレースと、前記旋回体に固定されて前記インナーレースの外周側で前記インナーレースに対し周方向に回転自在に設けられたアウターレースとを備え、
前記減速機は前記インナーレースの前記リングギアに噛み合うピニオンを備え、前記油圧モータおよび前記電動モータの少なくとも一方の出力に伴い、前記減速機のピニオンが前記インナーレースの前記リングギアに沿って転動することにより、前記台部材に対し前記旋回体を旋回させる建設機械の旋回駆動装置において、
前記電動モータハウジングはアルミニウム合金製の部材であって前記油圧モータハウジングよりも強度の低い部材であり、
前記組付け手段は、前記油圧モータハウジングと同等以上の強度を有する部材であって前記油圧モータと前記減速機の間に位置して前記電動モータハウジングの外周面に装着される補強部材を備え、この補強部材を介して前記電動モータハウジングを前記油圧モータハウジングと前記減速機ハウジングに対して固定する
ことを特徴とする建設機械の旋回駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の旋回駆動装置において、
前記組付け手段は、
ボルトと、
前記油圧モータハウジングに設けられ前記ボルトの呼び長さ部が差し通されるとともに前記ボルトの頭部が通過不能な大きさに形成されたボルト孔と、
前記減速機ハウジングに設けられ前記ボルトが螺合する雌ネジ部と、
前記補強部材に設けられ前記ボルト孔と前記雌ネジ部の間に位置し前記ボルトの呼び長さ部が差し通される通し孔と、
前記油圧モータ側の前記補強部材の端部に前記通し孔よりも内側に突出して形成され、前記電動モータハウジングに前記油圧モータ側から接する油圧モータ側段部と、
前記減速機側の前記補強部材の端部に前記通し孔よりも内側に突出して形成され、前記電動モータハウジングに前記減速機側から接する減速機側段部と、
を備え、
前記ボルトの前記呼び長さ部が前記油圧モータハウジングの前記ボルト孔と前記補強部材の通し孔とに差し通された状態で前記減速機ハウジングの前記雌ネジ部に螺合することに伴い、前記油圧モータ側段部と前記減速機側段部により前記油圧モータ側と前記減速機側から前記電動モータハウジングを挟持することで、前記電動モータハウジングを前記油圧モータハウジングと前記減速機ハウジングとに対して固定する
ことを特徴とする建設機械の旋回駆動装置。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械の旋回駆動装置において、
前記組付け手段は、
ボルトと、
前記油圧モータハウジングに設けられ前記ボルトの呼び長さ部が差し通されるとともに前記ボルトの頭部が通過不能な大きさに形成されたボルト孔と、
前記減速機ハウジングに設けられ前記ボルトが螺合する雌ネジ部と、
前記補強部材に設けられ前記ボルト孔と前記雌ネジ部の間に位置し前記ボルトの呼び長さ部が差し通される通し孔と、
前記油圧モータ側の前記補強部材の端部に前記通し孔よりも内側に突出して形成され、前記電動モータハウジングに前記油圧モータ側から接する段部と、
この段部に対し前記油圧モータ側から嵌め込まれて前記減速機側に貫通するとともに、前記段部を貫通した部分が前記電動モータハウジングに嵌め込まれる打込みピンと、
を備え、
前記ボルトの前記呼び長さ部が前記油圧モータハウジングの前記ボルト孔と前記補強部材の通し孔とに差し通された状態で前記減速機ハウジングの前記雌ネジ部に螺合することに伴い、前記段部により前記電動モータハウジングを前記油圧モータ側から前記減速機ハウジングに押し付けるとともに、前記補強部材に前記電動モータハウジングを前記打込みピンで固定することにより、前記電動モータハウジングを前記油圧モータハウジングと前記減速機ハウジングとに対して固定する
ことを特徴とする建設機械の旋回駆動装置。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械の旋回駆動装置において、
前記組付け手段は、
前記補強部材の前記油圧モータ側の端部から内側に突出して形成された油圧モータ側段部と、
前記補強部材の前記減速機側の端部から内側に突出して形成された減速機側段部と、
前記油圧モータ側段部に設けられた油圧モータ側雌ネジ部と、
前記減速機側段部に設けられた減速機側雌ネジ部と、
前記油圧モータ側に配置されて前記油圧モータ側雌ネジ部に螺合する油圧モータ側ボルトと、
前記減速機側に配置されて前記減速機側雌ネジ部に螺合する減速機側ボルトと、
前記油圧モータハウジングに設けられ前記油圧モータ側ボルトの呼び長さ部が差し通されるとともに前記油圧モータ側ボルトの頭部が通過不能な大きさに形成された油圧モータ側ボルト孔と、
前記減速機ハウジングに設けられ前記減速機側ボルトの呼び長さ部が差し通されるとともに前記減速機側ボルトの頭部が通過不能な大きさに形成された減速機側ボルト孔と、
を備え、
前記油圧モータ側ボルトが前記油圧モータ側雌ネジ部に螺合し、かつ前記減速機側ボルトが前記減速機側雌ネジ部に螺合した状態となることに伴い、前記油圧モータ側段部と前記減速機側段部により前記油圧モータ側と前記減速機側から前記電動モータハウジングを挟持することで、前記電動モータハウジングを前記油圧モータハウジングと前記減速機ハウジングとに対して固定する
ことを特徴とする建設機械の旋回駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の建設機械の旋回駆動装置において、
前記補強部材に冷却水路が設けられた
ことを特徴とする建設機械の旋回駆動装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図2】
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【図6】
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【図8】
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