説明

建設機械の油圧配管用クランプ装置

【課題】油圧配管用クランプ装置の軽量化を図り、部品点数の低減及び作業の工数の削減を実現し、且つ、油圧配管に対する保持力を増大させる
【解決手段】上部旋回体に搭載された作業機に油圧配管12,12を配設すると共に、該油圧配管12,12をクランプ部材14によりクランプするように構成された建設機械の油圧配管用クランプ装置13において、前記クランプ部材14は合成樹脂又はゴムにより形成され、且つ、該クランプ部材14には、油圧配管12,12を嵌着してクランプするためのクランプ溝18が凹設されている。クランプ溝18,18は、油圧配管12,12の外径と略同径を有する断面略C字状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の油圧配管用クランプ装置に関するものであり、特に、上部旋回体に搭載した作業機の油圧配管をクランプ部材によりクランプするように構成された建設機械の油圧配管用クランプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下部走行体上に上部旋回体を旋回可能に搭載して成る油圧ショベル等の建設機械においては、ブーム、アーム及びバケット等から構成された作業機が前記上部旋回体に配設されている。そして、前記ブーム、アーム及びバケットには、ブームシリンダ、アームシリンダ及びバケットシリンダが付設されている。
【0003】
又、上記建設機械の上部旋回体(車体)側には油圧源である油圧ポンプが設置され、該油圧ポンプと前記各種シリンダとは油圧配管により接続されている。したがって、前記油圧ポンプから送出される圧油は、前記油圧配管を通して各種シリンダに供給され、これにより、前記ブームシリンダ、アームシリンダ及びバケットシリンダが相互独立に駆動されるように構成されている。
【0004】
上記建設機械の油圧配管は、ブームシリンダ、アームシリンダ及びバケットシリンダ毎に設けられている。又、前記油圧配管は前記ブームの背面に沿って配設され、且つ、該油圧配管の適宜箇所は油圧配管用クランプ装置により固定して保持されている。
【0005】
従来の油圧配管用クランプ装置は例えば、図4又は図5に示すように、正面視にて角形又は波形に形成された金属製の上クランプ部材(油圧配管押え用クランプ部材)21、下クランプ部材22及びボルト(締結手段)23から構成されている。
【0006】
そして、前記油圧配管用クランプ装置により油圧配管24,24をクランプするときは、上クランプ部材21と下クランプ部材22の間に油圧配管24,24をセットしたのち、上クランプ部材21、下クランプ部材22をボルト23によって締結することにより、上クランプ部材21と下クランプ部材22の間に油圧配管24,24を挟持固定してクランプしている。尚、図中符号25はブームの背面又は該背面に固定されたブラケットである。
【特許文献1】特開平11−200408号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術では、前記油圧配管を挟持固定すべく、該上クランプ部材と下クランプ部材をボルト等の締結手段で締め付ける際、作業者は油圧配管を左手で保持しながら、右手に工具を持って前記ボルトを締め付けなければならない。そのため、油圧配管のクランプ時における作業工数が増加して時間がかかるという問題があった。
【0008】
また、上クランプ部材と下クランプ部材を締結するためにボルト等の締結手段を必要とするため部品点数が増加し、加えて、上クランプ部材と下クランプ部材は金属材により形成されているので、油圧配管用クランプ装置全体の重量が増大する。更に、前記上クランプ部材、下クランプ部材又は油圧配管の加工精度に所定値以上の寸法誤差がある場合、該油圧配管に対する保持力が不十分になる。
【0009】
そこで、油圧配管用クランプ装置の軽量化を図り、部品点数の低減及び作業の工数の削
減を実現し、且つ、油圧配管に対する保持力を増大させるために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、上部旋回体に搭載した作業機に油圧配管が配設され、且つ、該油圧配管をクランプ部材によりクランプするように構成された建設機械の油圧配管用クランプ装置において、前記クランプ部材は合成樹脂又はゴムにより形成されていると共に、該クランプ部材には前記油圧配管を嵌着して固定するためのクランプ溝が凹設されている建設機械の油圧配管用クランプ装置を提供する。
【0011】
この構成によれば、合成樹脂又はゴムから成るクランプ部材にクランプ溝を形成したので、作業者は該クランプ溝に油圧配管を片手で押し込むことにより、該油圧配管がクランプ溝に嵌着して固定される。
【0012】
請求項2記載の発明は、上記クランプ溝は上記油圧配管の外径と略同径を有する断面略C字状に形成されている請求項1記載の建設機械の油圧配管用クランプ装置を提供する。
【0013】
この構成によれば、合成樹脂製又はゴム製のクランプ部材に凹設した断面略C字状のクランプ溝の開口縁部は所要の弾性を有する。そのため、クランプ溝に油圧配管を押し込んで嵌着固定すると、該クランプ溝の開口縁部が弾性変形し、油圧配管の外周面を押し付けて保持する。
【0014】
請求項3記載の発明は、上記クランプ部材に上記クランプ溝が複数互いに平行に設けられている請求項1又は2記載の建設機械の油圧配管用クランプ装置を提供する。
【0015】
この構成によれば、クランプ部材に複数のクランプ溝を互いに平行に設けたので、1つのクランプ部材に複数の油圧配管が同一方向に固定される。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明は、クランプ部材のクランプ溝に油圧配管を片手で押し込んで嵌着できるので、該油圧配管をワンタッチで迅速に固定することができる。この場合、従来必要であった金属製の油圧配管押え用上クランプ部材及びボルト等の締結手段が不要になり、油圧配管用クランプ装置の部品点数を大幅に低減させることができ、しかも、本発明のクランプ部材は合成樹脂又はゴムにより形成されているので、油圧配管用クランプ装置全体の重量が従来に比べて大幅に軽くなる。
【0017】
又、油圧配管のクランプ時にボルトの締結作業が不要になるので、作業工数の削減が可能になる。更に、油圧配管などの寸法精度が低い場合でも、クランプ溝の開口縁部の弾性変形により前記寸法精度の誤差を吸収できるので、油圧配管に対する保持力が増大する。
【0018】
請求項2記載の発明は、前記断面略C字状のクランプ溝に油圧配管を嵌着固定した状態では、該クランプ溝の開口縁部が油圧配管の外周面を押し付けて保持するので、請求項1記載の発明の効果に加えて、油圧配管に対する保持力が一層増大するメリットを有する。
【0019】
請求項3記載の発明は、複数の油圧配管を1つのクランプ部材に平行に固定できるので、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、複数の油圧配管を一箇所にて整然と配置して保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、油圧配管用クランプ装置の軽量化を図り、部品点数の低減及び作業の工数の削減を実現し、且つ、油圧配管に対する保持力を増大させるという目的を達成するために、上部旋回体に搭載した作業機に油圧配管が配設され、且つ、該油圧配管をクランプ部材によりクランプするように構成された建設機械の油圧配管用クランプ装置において、前記クランプ部材は合成樹脂又はゴムにより形成されていると共に、該クランプ部材には前記油圧配管を嵌着して固定するためのクランプ溝が凹設されていることにより実現した。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の好適な一実施例を図面に従って説明する。図1は、本発明の油圧配管用クランプ装置を適用した建設機械としての油圧ショベルを示す。同図において、クローラ式の下部走行体1上には上部旋回体2が旋回自在に搭載され、該上部旋回体2の前方一側部にキャブ3が載置されている。また、上部旋回体2の前方中央部には作業機が載置され、該作業機はブーム4,アーム6,バケット8およびこれらを駆動する各種シリンダ5,7,9により構成されている。
【0022】
より具体的には、ブーム4は上部旋回体2の前方中央部に俯仰可能に取り付けられ、該ブーム4の先端部にアーム6が揺動可能に枢着されている。更に、該アーム6の先端部にはバケット8が回動可能に枢着されている。
【0023】
また、図2に示すように、上部旋回体2の旋回中心部近傍には旋回モータ10が設けられ、該旋回モータ10の後部にコントロールバルブ11が取り付けられている。該コントロールバルブ(油圧切換調整部)11は、油圧ポンプ(図示せず)にて生成される圧油を、旋回モータ10、ブームシリンダ5、アームシリンダ7及びバケットシリンダ9に配給する役割を有している。
【0024】
上記コントロールバルブ11と各種シリンダ5,7,9は、それぞれパイプ状の油圧配管12,12 ,12により接続され、該油圧配管12,12,12を通して各種シリンダ5,7,9に圧油を送給できるように構成されている。また、該油圧配管12,12,12はブーム4及び又はアーム6の背面において該ブーム4及び又はアーム6の長手方向に延びて配置され、該油圧配管12,12,12の下端近傍部は油圧配管用クランプ装置13により固定して保持されている。
【0025】
図3は、油圧配管用クランプ装置13(以下、単に「クランプ装置13」という)を示す一部切欠拡大図である。尚、同図は説明の都合上、1台のクランプ装置13に2本の油圧配管12,12を固定した形態例を示すが、1台のクランプ装置13に1本又は3本以上の油圧配管12,12,12を固定するように構成することもできる。又、図示例の油圧配管12,12は互いに同一の外径を有するが、該油圧配管12,12の外径は互いに相異していてもよく、この場合、後述するクランプ溝18,18の直径は該油圧配管12,12の外径に応じて設定するものとする。
【0026】
図3に示すように、クランプ装置13はブロック状のクランプ部材14を備え、該クランプ部材14の上面中央部には底面部を有する孔15が開穿されている。又、該クランプ部材14は、弾性変形可能な合成樹脂材により形成されているが、使用状況などに応じてゴム材により形成することもできる。
【0027】
更に、クランプ部材14は固定手段を介してブーム4及び又はアーム6の背面に直接固設されている。本実施例では、固定手段はブーム4及び又はアーム6の背面に溶接にて一体化されたナット16と、該ナット16に螺合するボルト17とから成り、該ボルト17の締め付け力によりクランプ部材14の孔15の底面部が前記ブーム4及び又はアーム6の背面に固着されている。尚、クランプ部材14は前記ブーム4及び又はアームの背面にブラケットを介して取り付けることもできる。
【0028】
そして、クランプ部材14上面における孔15の左右両側には、油圧配管12,12を嵌着して保持固定するためのクランプ溝18,18が凹設されている。該クランプ溝18,18はブーム4の長手方向と同方向に平行に延びるように形成されている。
【0029】
また、クランプ溝18,18は断面略C字状に形成され、該クランプ溝18,18の開口縁部の幅寸法は、油圧配管12,12の直径よりも若干小に設定されている。更に、クランプ溝18,18の直径は油圧配管12,12の外径と略同一に設定されている。
【0030】
上記クランプ装置13により油圧配管12,12をクランプするとき、作業者は片手で油圧配管12,12をクランプ溝18,18の開口縁部に当てて、該油圧配管12,12をクランプ溝18,18の奥方に押し込めばよい。これにより、油圧配管12,12の押込み方向側の外周面によってクランプ溝18,18の開口縁部が押し広げられ、油圧配管12,12の外周面がクランプ溝18,18の内周面に当接する位置まで移動して嵌合装着される。
【0031】
この場合、クランプ部材14は所要の弾性変形力を有する合成樹脂により形成されているので、油圧配管12,12の嵌着後、クランプ溝18,18の開口縁部が反力により内面側に弾性変形して、該弾性変形部分が油圧配管12,12の外周面に押し付け状態で密着する。そのため、クランプ溝18,18の開口縁部の押し付け作用により油圧配管12,12に対する保持力が増大し、油圧配管12,12がクランプ溝18,18から不測の外力により離脱する恐れがない。
【0032】
以上説明したように本発明によれば、合成樹脂製のクランプ部材14にクランプ溝18,18を形成したので、作業者は該クランプ溝18,18に油圧配管12,12を片手で押し込むことにより、該油圧配管12,12をワンタッチで嵌着固定することができ、油圧配管12,12の固定強度が向上する。その際、従来必要であったボルトの締結作業が不要になるので作業工数が削減する。
【0033】
又、従来必要あった金属製の油圧配管押え用上クランプ部材及びボルト等の締結手段が不要になり、クランプ装置13の部品点数が低減し、しかも、本発明のクランプ部材14は合成樹脂により形成されているので、クランプ装置13全体として大幅な軽量化が可能になる。
【0034】
特に、油圧配管12,12などの寸法精度が低い場合でも、クランプ溝18,18の開口縁部の弾性変形作用により油圧配管12,12などの寸法精度の誤差が吸収されるので、油圧配管12,12に対する保持力が一層増大する。
【0035】
又、クランプ部材14に複数のクランプ溝18,18 …を互いに平行に設けたので、1つのクランプ部材14に複数の油圧配管12,12…を整然と配置して保持することができる。更に、仕様の異なる複数の油圧配管12,12…に対応可すべく、クランプ装置13のユニット化が可能になり、自由度の高いレイアウト設計を容易に実現することができる。
【0036】
上記実施例では、前記クランプ溝18,18の断面形状を略C字状に形成したが、これに限定せられるべきではなく、クランプ部材14の弾性変形力や油圧配管12,12の大きさなどの設計事項に応じて、例えばU字状又は略半円状などに形成することも可能である。
【0037】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の油圧配管用クランプ装置を適用した油圧ショベルの全体側面図。
【図2】図1の油圧配管用クランプ装置の上面図。
【図3】本発明の一実施例に係る油圧配管用クランプ装置を示す一部切欠拡大図。
【図4】従来の油圧配管用クランプ装置の一例を示す説明図。
【図5】従来の油圧配管用クランプ装置の他の例を示す説明図。
【符号の説明】
【0039】
4 ブーム
12 油圧配管
13 油圧配管用クランプ装置
14 クランプ部材
15 孔
16 ナット
17 ボルト
18 クランプ溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部旋回体に搭載した作業機に油圧配管が配設され、且つ、該油圧配管をクランプ部材によりクランプするように構成して成る建設機械の油圧配管用クランプ装置において、
前記クランプ部材は合成樹脂又はゴムにより形成されていると共に、該クランプ部材には前記油圧配管を嵌着して固定するためのクランプ溝が凹設されていることを特徴とする建設機械の油圧配管用クランプ装置。
【請求項2】
上記クランプ溝は上記油圧配管の外径と略同径を有する断面略C字状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の建設機械の油圧配管用クランプ装置。
【請求項3】
上記クランプ部材に上記クランプ溝が複数互いに平行に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の建設機械の油圧配管用クランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−243212(P2009−243212A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92940(P2008−92940)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】