説明

建設機械の盗難防止装置

【課題】装備しやすく、盗難防止機能を向上させることができる建設機械の盗難防止装置を提供する。
【解決手段】踏動操作可能な左右の走行用ペダル26L,26Rを備えた油圧ショベルに設けられる建設機械の盗難防止装置において、左右の走行用ペダル26L,26Rを狭持する断面略コの字形状の第1係止具41と、この第1係止具41に係合し、第1係止具41と共に左右の走行用ペダル26L,26Rに係止される第2係止具42と、これら第1係止具41と第2係止具42の係合状態を機械的にロックする錠前43とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏動操作可能な左右の走行用ペダルを備えた建設機械に係わり、特にその建設機械の盗難防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械は屋外で使用されることが多く、使用されない場合には、一般にキーシリンダからキーを取外すことで建設機械の盗難防止を図っているが、合い鍵等による盗難が少なからず発生している。そこで、例えば建設機械の直進走行以外の走行を不能にする盗難防止装置として、手動操作可能な左右の走行用レバーを相互に連結可能な連結手段を備えた構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術では、例えば左右の走行用レバーにそれぞれストッパーを上下に設け、左右の走行用レバーのストッパー間をフック付きの錠で連結してロックするようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−138605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術には以下のような課題が存在する。
油圧ショベル等の建設機械は、一般に、手動操作可能な左右の走行用レバーと、踏動操作可能な左右の走行用ペダルとが連結して設けられ、走行用レバーによる手動操作または走行用ペダルによる踏動操作の操作に応じて走行するようになっている。そのため、上記従来技術では、万一走行用レバーが切断された場合(あるいは着脱可能な走行用レバーが取外された場合や走行用レバーがもとより設置されていない場合)、走行用ペダルを踏動操作して走行することが可能であり、盗難防止機能の点で改善の余地があった。
【0005】
本発明の目的は、装備しやすく、盗難防止機能を向上させることができる建設機械の盗難防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、踏動操作可能な左右の走行用ペダルを備えた建設機械に設けられる建設機械の盗難防止装置において、前記左右の走行用ペダルを連結し、この連結状態を機械的にロック可能な連結手段を備える。
【0007】
本発明においては、連結手段で左右の走行用ペダルを連結し、この連結状態を機械的にロックする。これにより、盗難防止装置を容易に取付けて、直進走行以外の走行を不能として盗難防止を図ることができる。また、例えば手動操作可能な左右の走行用レバーを連結する場合と比べ、走行用ペダルを取外したり切断したりすることが容易ではなく、盗難防止機能を向上させることができる。
【0008】
(2)上記目的を達成するために、また本発明は、踏動操作可能な左右の走行用ペダルを備えた建設機械に設けられる建設機械の盗難防止装置において、前記左右の走行用ペダルを狭持する断面略コの字形状の第1係止具と、前記第1係止具に係合し、前記第1係止具と共に前記左右の走行用ペダルに係止される第2係止具と、前記第1係止具と前記第2係止具の係合状態を機械的にロック可能な錠前とを備える。
【0009】
(3)上記(2)において、好ましくは、前記第1係止具は、前記走行用ペダルの取付手段を覆うように形成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、装備しやすく、盗難防止機能を向上させることができる建設機械の盗難防止装置を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本発明の適用対象である小型の油圧ショベルの全体構造を表す側面図である。なお、以降、油圧ショベルが図1に示す状態にて操作者が運転席に着座した場合における操作者の前側(図1中左側)、後側(図1中右側)、左側(図1中紙面に向かって手前側)、右側(図1中紙面に向かって奥側)を、単に前側、後側、左側、右側と称する。
【0013】
図1において、この油圧ショベルは、走行手段としての左右の無限軌道履体(クローラ)1L,1R(但し1Lのみ図1に図示)を備えた下部走行体2と、この下部走行体2の上部に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、この上部旋回体3の基礎下部構造をなす旋回フレーム4に垂直ピン(図示せず)を中心にして水平方向に回動可能に取り付けられたスイングポスト5と、このスイングポスト5に上下方向に回動可能に(俯仰可能に)取り付けられた多関節型のフロント装置6と、旋回フレーム4上に設けられたいわゆるキャノピータイプの運転室7と、旋回フレーム4上の後方部に取り付けられたカウンタウエイト8と、旋回フレーム4上の運転室7以外の大部分を覆う上部カバー9とを備えている。
【0014】
下部走行体2は、略H字形状のトラックフレーム10と、このトラックフレーム10の左右両側の後端近傍に回転自在に支持された駆動輪11L,11R(但し11Lのみ図1に図示)と、駆動輪11L,11Rをそれぞれ駆動する左右の走行油圧モータ12L,12R(但し12Lのみ図1に図示)と、トラックフレーム10の左右両側の前端近傍に回転自在に支持され、履体1L,1Rを介し駆動輪11L,11Rの駆動力でそれぞれ回転される従動輪(アイドラ)13L,13R(但し13Lのみ図1に図示)と、トラックフレーム10の前方側に上下動可能に設けられ、ブレード用油圧シリンダ(図示せず)により上下動する排土用のブレード14とを備えている。また、下部走行体2の中央部には旋回台軸受(旋回輪)15が配置され、この旋回輪15の中心近傍に下部走行体2に対し旋回フレーム4を旋回させる旋回用油圧モータ(図示せず)が内蔵されている。
【0015】
スイングポスト5は、垂直ピン(図示せず)を介し旋回フレーム4に対し水平に回動可能となっている。またスイングポスト5は、旋回フレーム4に設けられたスイング用油圧シリンダ(図示せず)に、連結ピン(図示せず)を介して連結されており、前記スイング用油圧シリンダの伸縮でスイングポスト5全体が鉛直方向の軸心まわりに回動することによって、フロント装置6が左右にスイングするようになっている。
【0016】
フロント装置6は、ブーム16と、ブーム16に回動可能に結合されたアーム17と、アーム17に回動可能に結合されたバケット18とを備えている。そして、ブーム16、アーム17、及びバケット18は、それぞれブーム用油圧シリンダ19、アーム用油圧シリンダ20、及びバケット用油圧シリンダ21により動作する。
【0017】
上部カバー9は、詳細は図示しないが、その内部に、エンジンと、このエンジンにより駆動される油圧ポンプと、エンジンの燃料を貯留する燃料タンク等の機器を収納している。そして、前記油圧ポンプから吐出された圧油により複数の油圧アクチュエータ(詳細には、上記左右の走行用油圧モータ12L,12R、上記ブレード用油圧シリンダ、上記旋回用油圧モータ、上記スイング用油圧シリンダ、上記ブーム用油圧シリンダ19、上記アーム用油圧シリンダ20、上記バケット用油圧シリンダ21等)が駆動するようになっている。
【0018】
運転室7は、旋回フレーム4上の左側に設けられており、操作者が着座する座席(運転席)22を備えている。座席22の左側には、左側又は右側に操作することで上記旋回用油圧モータを駆動し上部旋回体3を左側又は右側に旋回させるとともに前側又は後側に操作することでアーム用油圧シリンダ20を駆動しアーム17をダンプ又はクラウドさせる十字操作式の左手動操作レバー23Lが設けられている。また、座席22の右側には、左側又は右側に操作することでバケット用油圧シリンダ21を駆動しバケット18をクラウド又はダンプさせるとともに前側又は後側に操作することでブーム用油圧シリンダ19を駆動しブーム16を下げ又は上げる十字操作式の右手動操作レバー23Rが設けられている。
【0019】
座席23の前方には、左右の走行油圧モータ12L,12Rをそれぞれ駆動し油圧ショベルを走行させるための走行用操作装置24が設けられている。図2は、この走行用操作装置24の詳細構造を表す斜視分解図である。
【0020】
この図2において、走行用操作装置24は、前後方向に手動操作可能な左右の走行用レバー25L,25Rと、踏動操作可能な左右の走行用ペダル26L,26Rと、左走行用レバー25Lまたは左走行用ペダル26Lの操作に応じてパイロットポンプ(図示せず)からの1次パイロット圧を減圧した操作パイロット圧(2次パイロット圧)を出力する左操作パイロット弁27L、右走行用レバー25Rまたは右走行用ペダル26Rの操作に応じてパイロットポンプからの1次パイロット圧を減圧した操作パイロット圧を出力する右操作パイロット弁27Rを一体的に備えた操作パイロット弁装置28とを備えている。
【0021】
上記旋回フレーム4の上側に設けられた床板29上にはブラケット30が取付けられ、このブラケット30に操作パイロット弁装置28が例えば4つ(図2中1つのみ図示)の固定ボルト31で固定されている。
【0022】
左走行用レバー25Lは、操作者が把持する把持部32Lと、上端側(図2中上右上側)にナット33を介し把持部32Lが取り付けられ、下端側に連結部34Lを設けた操作竿35Lとで構成されている。左走行用ペダル26Lは、例えば操作者が足を滑らないように上面が凹凸状に形成され、その後方側(図2中右下側)は上方に突出して形成され、また前方側(図2中左上側)は上方向に傾斜するとともに一側方側(図2中左下側)が突出して形成されている。そして、例えば2つ(図2中1つのみ図示)の連結ボルト36がそれぞれバネ座金37及び座金38を介し、左走行用ペダル26Lの上下方向に貫通した貫通孔39L、左走行用レバー25Lの連結部34Lの上下方向に貫通した貫通孔40Lに連通し、左操作パイロット弁27Lに締結されている。これにより、左操作パイロット弁27Lは、左走行用レバー25Lによる手動操作または左走行用ペダル26Lによる踏動操作の操作に応じて、生成した操作パイロット圧を左走行用制御弁(図示せず)に出力し、これによって左走行用制御弁が油圧ポンプから左走行用油圧モータ12Lへの圧油の流れを制御するようになっている。
【0023】
右走行用レバー25Rは、左走行用レバー25L同様、操作者が把持する把持部32Rと、上端側にナット33を介し把持部32Rが取り付けられ、下端側に連結部34Rを設けた操作竿35Rとで構成されている。右走行用ペダル26Rは、左走行用ペダル26L同様、例えば操作者が足を滑らないように上面が凹凸状に形成され、その後方側は上方に突出して形成され、また前方側は上方向に傾斜するとともに一側方側(図2中右上側)が突出して形成されている。そして、例えば2つ(図2中1つのみ図示)の連結ボルト36がそれぞれ座金37及びバネ座金38を介し、右走行用ペダル26Rの上下方向に貫通した貫通孔39R、右走行用レバー25Rの連結部34Rの上下方向に貫通した貫通孔40Rに連通し、右操作パイロット弁27Rに締結されている。これにより、左操作パイロット弁27Rは、右走行用レバー25Rによる手動操作または右走行用ペダル26Rによる踏動操作の操作に応じて、生成した操作パイロット圧を右走行用制御弁(図示せず)に出力し、これによって右走行用制御弁が油圧ポンプから右走行用油圧モータ12Rへの圧油の流れを制御するようになっている。
【0024】
以上のように構成された油圧ショベルに適用される本発明の建設機械の盗難防止装置は、上記左右の走行用ペダル26L,26Rを連結し、この連結状態を機械的にロックするようになっている。図3は、本発明の建設機械の盗難防止装置の一実施形態の全体構造を表す側面図(但し、後述の錠前は図示せず)であり、図4は、図3中矢印IV方向からみた矢視上面図(但し、後述の錠前は図示せず)であり、図5は、矢印V方向からみた矢視後面図であり、図6は、本発明の建設機械の盗難防止装置の一実施形態の詳細構造を表す斜視分解図である。
【0025】
これら図3〜図6において、本実施形態による盗難防止装置は、左右の走行用ペダル26L,26Rを厚み方向に狭持する断面略コの字形状の第1係止具41と、断面略L字形状の第2係止具42と、錠前43とを有する。第1係止具41は、挿通孔44aを有する上板部44と、挿通孔45aを有する下板部45と、これら上板部44下板部45を連結する側板部46とで構成されている。また、第1係止具41の上板部44は、左右の走行用ペダル26L,26Rの上側の大部分(少なくとも上記連結ボルト36)を覆うように形成され、下板部45は操作パイロット弁装置28や走行用レバー25L,25Rの連結部34L,34R等に干渉しないように形成されている。また、上板部44と下板部45との間隔dは、走行用ペダル26L,26Rの中央厚さ寸法dより大きく、かつ走行用ペダル26L,26Rの後方側厚さ寸法dより小さくしている。
【0026】
第2係止具42は、第1係止具41の挿通孔44a,45aに連通する挿通板部47と、この挿通板部47の垂直方向に設けた抑板部48とで構成されている。そして、第2係止具42の挿通板部47が第1係止具41の挿通孔44a,44bに連通され、第2係止具42の抑板部48が第1係止具41の上板部44に当接して、第2係止具42が第1係止具41に係合することにより、これら第1係止具41及び第2係止具42が走行用ペダル26L,26Rに係止されるようになっている。また、第2係止具42の挿通板部47には貫通孔47aが設けられており、この貫通孔47aに錠前43が取り付けられて、第1係止具41と第2係止具42の係合状態を機械的にロックするようになっている。
【0027】
なお、上記において、第1係止具41、第2係止具42、及び錠前43は、特許請求の範囲記載の左右の走行用ペダルを連結し、この連結状態を機械的にロック可能な連結手段を構成する。また、連結ボルト36は、走行用ペダルの取付手段を構成する。
【0028】
次に、本実施形態の動作及び作用効果を説明する。
操作者が例えば掘削作業等を終了又は中止する場合、左右の走行ペダル26L,26Rを第1係止具41で狭持し、その第1係止具41の挿通孔44a,45aに第2係止具42を連通して係合させ、その第2係止具42の貫通孔47aに錠前43を取り付けて第1係止具41と第2係止具42との係合状態を機械的にロックする。これにより、走行ペダル26L,26Rの踏動操作による直進走行以外の走行を不能として、盗難防止を図ることができる。
【0029】
以上のように本実施形態においては、既設の走行用ペダル26L,26R及び床部等に追加工を施す必要がなく、盗難防止装置を容易に装備することができる。また、例えば手動操作可能な左右の走行用レバー25L,25Rを連結する場合と比べ、走行用ペダル26L,26Rを取外したり切断したりすることは容易でなく、盗難防止機能を向上させることができる。また、左右の走行用ペダル26L,26Rの取付手段である連結ボルト36を第1係止具41で覆うことにより、走行用ペダル26L,26Rを取外すことが困難となり、さらに盗難防止機能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の建設機械の盗難防止装置の適用対象である小型の油圧ショベルの全体構造を表す側面図である。
【図2】本発明の建設機械の盗難防止装置の適用対象である小型の油圧ショベルを構成する走行用操作装置の詳細構造を表す斜視分解図である。
【図3】本発明の建設機械の盗難防止装置の一実施形態の全体構造を表す側面図である。
【図4】図3中矢印IV方向からみた矢視上面図である。
【図5】図3中矢印V方向からみた矢視後面図である。
【図6】本発明の建設機械の盗難防止装置の一実施形態の詳細構造を表す斜視分解図である。
【符号の説明】
【0031】
26L 左走行用ペダル
26R 右走行用ペダル
36 連結ボルト(走行用ペダルの取付手段)
41 第1係止具(連結手段)
42 第2係止具(連結手段)
43 錠前(連結手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏動操作可能な左右の走行用ペダルを備えた建設機械に設けられる建設機械の盗難防止装置において、
前記左右の走行用ペダルを連結し、この連結状態を機械的にロック可能な連結手段を備えたことを特徴とする建設機械の盗難防止装置。
【請求項2】
踏動操作可能な左右の走行用ペダルを備えた建設機械に設けられる建設機械の盗難防止装置において、
前記左右の走行用ペダルを狭持する断面略コの字形状の第1係止具と、
前記第1係止具に係合し、前記第1係止具と共に前記左右の走行用ペダルに係止される第2係止具と、
前記第1係止具と前記第2係止具の係合状態を機械的にロック可能な錠前とを備えたことを特徴とする建設機械の盗難防止装置。
【請求項3】
請求項2記載の建設機械の盗難防止装置において、前記第1係止具は、前記走行用ペダルの取付手段を覆うように形成されることを特徴とする建設機械の盗難防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−9448(P2006−9448A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189355(P2004−189355)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】