説明

建設機械の補助プラットフォーム構造

【課題】上向き状態のキャブに乗降するときにも安全性を向上し得る建設機械の補助プラットフォーム構造を提供する。
【解決手段】建設機械は、車体上にブームの起立方向に上向きに傾動可能に設けられたキャブ1と、キャブ側面の出入り口2の下縁部に設けられた補助プラットフォーム10とを備える。補助プラットフォームは、車体側方から見た側面視で後端側又はその中心軸延長線がキャブの傾動中心Pを通る高さ位置で前後方向に水平に延びた状態でキャブ側面に固定された第1のフレーム11と、このフレームに対向して前後方向に延び後端が車体側に回動可能に連結された第2のフレーム12と、両フレームに沿って前後方向に所定の距離毎に配置され、各々後端が第1のフレームに、前端が第2のフレームに夫々回動可能に連結された複数の足場13とを有する。各足場は、側面視で両フレームと平行リンク機構を構成してキャブの傾動に拘わらず水平状態を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンや高所作業車などの建設機械に装備されるキャブの側方に設けられる補助プラットフォームの構造に関し、特に、キャブがブームの起伏方向に上向きに傾動可能に設けられた建設機械の補助プラットフォーム構造に係わる。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーンや高所作業車などの建設機械において、例えば特許文献1に記載され、また図7にも示すように、キャブ101を車体側の旋回フレーム102に支軸103回りに傾動可能に設けるとともに、キャブ101と車体側との間にシリンダ104を設け、ブーム105を起立させて作業を行う場合に上記シリンダ104によりキャブ101をブーム105の起立方向に上向きに傾動させることにより、キャブ101内からの上方視界性を高め、オペレータの負担を軽減し得るようにしたものは知られている。
【0003】
また、このような建設機械においては、通常、キャブ101側面の出入り口106の下縁部に補助プラットフォーム(ステップともいう)を設け、この補助プラットフォームを通ってオペレータが車体側のデッキ107上よりキャブ101内に乗り込んだり、キャブ101内から車体側のデッキ107上に移動したりするのを容易にするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9―249382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような建設機械では、オペレータが作業中に休憩などのためにキャブ101内から降りるとき上向きのキャブ101を水平状態に戻し、キャブ101内に乗り込んだ後再度キャブ101を上向きに傾動させる必要があるが、この操作が面倒であることから、オペレータはキャブ101を上向きに傾動させた状態のまま乗り降りすることがある。また、キャブ101が上向き状態でシリンダ104などが故障したときにもオペレータはその上向き状態のキャブ101に対し乗り降りする必要が生じる。
【0006】
しかし、このような場合、補助プラットフォームは、キャブ101と一緒に上向きに傾斜した状態にあるため、滑り易く、転落事故を招く恐れがあり、危険である。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、補助プラットフォームの構造を改良し、キャブの傾動に拘わらず足場が水平状態を維持するようにすることにより、上向き状態のキャブに対し乗降するときにも安全性を向上し得る建設機械の補助プラットフォーム構造を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、建設機械として、車体に基端が起伏可能に支持されたブームと、車体上にこのブームの起立方向に上向きに傾動可能に設けられたキャブと、このキャブ側面の出入り口の下縁部に設けられた補助プラットフォームとを備えたものを前提とする。そして、上記補助プラットフォームを、車体側方から見た側面視で後端側又はその中心軸延長線が上記キャブの傾動中心を通る高さ位置で前後方向に水平に延びた状態でキャブ側面に固定された第1のフレームと、この第1のフレームに対向して前後方向に延びかつ後端が車体側に回動可能に連結された第2のフレームと、この両フレームに沿って前後方向に所定の距離毎に配置され、各々後端が第1のフレームに、前端が第2のフレームにそれぞれ回動可能に連結された複数の足場とを有する構成にし、各足場は、車体側方から見た側面視で第1及び第2のフレームと平行リンク機構を構成して、キャブの傾動に拘わらず水平状態を維持するようになる構成にする。
【0009】
この構成では、キャブが水平状態から上向きに傾動するときには、補助プラットフォームの構成部材のうち、第1のフレームは、キャブ側面に固定されていることから、キャブの傾動中心回りに傾動し、第2のフレームは、その後端が車体側に回動可能に連結されていることから、後端の連結点回りに傾動する。また、各足場は、車体側方から見た側面視で上記第1及び第2のフレームと平行リンク機構を構成して、キャブの傾動に拘わらず水平状態を維持する。このため、オペレータが作業中に休憩などのために上向き状態のキャブから降りたり、乗り込んだりするときでも水平状態の足場を伝って乗り降りすることができ、足を滑らせて落下することはない。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明における建設機械の補助プラットフォーム構造によれば、補助プラットフォームの各足場が、第1及び第2のフレームと平行リンク機構を構成して、キャブの傾動に拘わらず水平状態を維持するようになっているため、上向き状態のキャブに対してオペレータが乗り降りするときでも足を滑らせて落下することはなく、安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の実施形態に係るクレーンのキャブが水平状態のときのキャブ周辺の側面図である。
【図2】図2は上記キャブが上向き状態のときのキャブ周辺の側面図である。
【図3】図3は補助プラットフォームを示し、(a)は(b)のZ−Z線における断面図、(b)は側面図である。
【図4】図4は図3(a)のX−X線における拡大断面図である。
【図5】図5は図3(a)のY−Y線における拡大断面図である。
【図6】図6は補助プラットフォームの足場を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図7】図7は従来例を示すクレーンの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態である実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1及び図2は本発明の一実施形態に係る補助プラットフォーム構造を備える建設機械としてのクレーンのキャブ周辺を示す。クレーンは、図7に示す従来例の場合と同じく、車体(詳しくは上部旋回体)に基端が起伏可能に支持されたブーム105(図7参照)と、車体上に設けられかつ運転室及び操作室を兼用するキャブ1とを備えている。
【0014】
上記キャブ1は、ブーム105と反対側の側面である外側側面に出入り口2を有しており、この出入り口2に取り付けたドア3を開けてオペレータがキャブ1内に乗り込んだり、キャブ1内から降りたりするようになっている。また、キャブ1は、車体側方から見た側面視でその背面から所定距離離れたP点回りに車体側の旋回フレーム(図示せず)に傾動可能に結合されており、このキャブ1の底部と車体側の取付アーム4との間にはシリンダ5が設けられ、図1に示すシリンダ5が縮小状態でキャブ1の底部が略水平な状態から、ブーム105を起立させて作業を行う場合にシリンダ5を伸張させることにより、図2に示す如くキャブ1をブーム105の起立方向に上向きに傾動させ、キャブ1内からの上方視界性を高め得るようになっている。
【0015】
また、上記キャブ1の外側側面には出入り口2の下縁部に沿って前後方向に延びる補助プラットフォーム10が設けられている。この補助プラットフォーム10は、車体側方から見た側面視で後端側が上記キャブ1の傾動中心Pを通る高さ位置で前後方向に水平に延びた状態でキャブ1の側面に固定された第1のフレーム11と、この第1のフレーム11に対向して前後方向に延びかつ後端が車体側に支点Q回りに回動可能に連結された第2のフレーム12と、この両フレーム11,12に沿って前後方向に所定の距離毎に配置された複数(図では4つ)の足場13,13,…とを有している。
【0016】
上記補助プラットフォーム10のキャブ1に取り付ける前の状態は、図3ないし図5に拡大詳示している。すなわち、この補助プラットフォーム10の構成部材のうち、第1のフレーム11は、上方から見た平面視で全体が逆向きコの字状のものであり、互いに所定距離を隔てて前後方向に延びる左右一対の縦フレーム部11a,11bと、この左右一対の縦フレーム部11a,11bの一端(後端)同士を結合する横フレーム部11cとからなる。この第1のフレーム11の左側の縦フレーム部11aは、キャブ1の側面にボルト止め又は溶接などにより固定される。また、第2のフレーム12は、上方から見た平面視で全体がコの字状のものであり、上記第1のフレーム11の一対の縦フレーム部11a,11bの内側にそれらとそれぞれ所定の隙間を隔てて対向しつつ前後方向に延びる左右一対の縦フレーム部12a,12bと、この左右一対の縦フレーム部12a,12bの一端(前端)同士を結合する横フレーム部12cとからなる。この第2のフレーム12の左右一対の縦フレーム部12a,12bの後端同士間には、図3(a)に仮想線で示す如く支軸15が架設され、この支軸15を支点Qとして第2のフレーム12が車体側に回動可能に連結されるようになっている。
【0017】
さらに、上記各足場13は、図6にも示すように、矩形状の足場本体13aと、この足場本体13aの左右両縁からそれぞれ垂下する左右一対の側壁部13b,13bとからなる。各足場13は、その足場本体13aが第2のフレーム12上に載置された状態で各側壁部13bが第1のフレーム11の縦フレーム部11a,11bと第2のフレーム12の縦フレーム部12a,12bとの間に挿入可能に設けられている。また、各足場13の左右一対の側壁部13b,13bの前端にはそれぞれ内側に突出する一対の軸部16,16が設けられているとともに、各足場13の左右一対の側壁部13b,13bの後端にはそれぞれ外側に突出する一対の軸部17,17が設けられており、各足場13の側壁部13b前端の軸部16と側壁部13b後端の軸部17との軸心間長さL1は、車体側方から見た側面視でキャブ1の傾動中心Pと第2のフレーム12の車体側との連結支点Qとの間の前後方向長さL2と同一(L1=L2)に設定されている。
【0018】
上記複数の足場13,13,…のうち、最も後側(図3で左側)の足場13は、図1に示す如く補助プラットフォーム10のキャブ1への取付状態を車体側方から見た側面視でキャブ1の傾動中心Pとなる第1のフレーム11の各縦フレーム部11a,11bの後端部に設けた軸孔に対し側壁部13b後端の軸部17を嵌入することにより、足場13の後端が第1のフレーム11に軸部17回りに回動可能に連結されている一方、車体側方から見た側面視で第2のフレーム12の車体側との連結支点Qとなる第2のフレーム12の各縦フレーム部12a,12bの後端に設けた軸孔に対し側壁部13b前端の軸部16を嵌入することにより、足場13の前端が第2のフレーム12に軸部16回りに回動可能に連結されている。後側から2番目の足場13は、最も後側の足場13と干渉を避けるための隙間を隔てて配置され、第1のフレーム11の各縦フレーム部11a,11bに設けた軸孔に対し側壁部13b後端の軸部17を嵌入することにより、足場13の後端が第1のフレーム11に軸部17回りに回動可能に連結されている一方、第2のフレーム12の各縦フレーム部12a,12bに設けた軸孔に対し側壁部13b前端の軸部16を嵌入することにより、足場13の前端が第2のフレーム12に軸部16回りに回動可能に連結されている。その他の足場13も、同様に第1のフレーム11の各縦フレーム部11a,11bに設けた軸孔に対し側壁部13b後端の軸部17を嵌入することにより、足場13の後端が第1のフレーム11に軸部17回りに回動可能に連結されている一方、第2のフレーム12の各縦フレーム部12a,12bに設けた軸孔に対し側壁部13b前端の軸部16を嵌入することにより、足場13の前端が第2のフレーム12に軸部16回りに回動可能に連結されている。しかして、各足場13は、車体側方から見た側面視で第1及び第2のフレーム11,12と平行リンク機構を構成して、キャブ1の傾動に拘わらず水平状態を維持するようになっている。尚、第2のフレーム12の車体側との連結支点Qを構成する支軸15と、複数の足場13,13,…のうちの最も後側の足場13における左右一対の側壁部13b,13b前端の各軸部16とを単一の軸材により構成しても良い。
【0019】
次に、上記実施形態の作用・効果について説明するに、図1に示すように、シリンダ5が縮小状態にあり、キャブ1が水平状態にあるときには、補助プラットフォーム10の構成部材のうち、第1のフレーム11は、車体側方から見た側面視で後端がキャブ1の傾動中心Pを通る高さ位置で前後方向に水平に延びた状態でキャブ1側面に固定されており、第2のフレーム12は、この第1のフレーム11と同じ高さ位置を前後方向に延びかつ後端が車体側に支点Q回りに回動可能に連結されている。また、各足場13は、この両フレーム11,12に沿って前後方向に水平にかつ所定の距離毎に配置され、各々後端が第1のフレーム11に、前端が第2のフレーム12にそれぞれ軸部17,16回りに回動可能に連結されている。このため、オペレータがこの補助プラットフォーム10を利用してキャブ1内に乗り降りするときには、従来の補助プラットフォームの場合と同様に安全に乗降することができ、安全性を確保することができる。
【0020】
一方、このような状態から、図2に示すように、オペレータが作業時のキャブ1内からの上方視界性を高めるためにシリンダ5を伸張させてキャブ1を上向きに傾動させたときには、補助プラットフォーム10の構成部材のうち、第1のフレーム11は、キャブ1側面に固定されていることから、キャブ1の傾動中心P回りに傾動し、第2のフレーム12は、その後端が車体側に回動可能に連結されていることから、後端の連結支点Q回りに傾動する。また、各足場13は、車体側方から見た側面視で上記第1及び第2のフレーム11,12と平行リンク機構を構成して、キャブ1の傾動に拘わらず水平状態を維持する。このため、オペレータが作業中に休憩などのために上向き状態のキャブ1から降りたり、乗り込んだりするときでも水平状態の各足場13を伝って乗り降りすることができるので、足を滑らせて落下することはなく、従来の補助プラットフォームの場合と比べて安全性を向上させることができる。
【0021】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の形態を包含するものである。例えば上記実施形態では、補助プラットフォーム10の構成部材のうち、キャブ1の側面に固定される第1のフレーム11の後端側を、キャブ1の傾動中心Pと同じ高さ位置をこの傾動中心Pを通る位置にまで水平に延ばし、この位置で最も後側の足場13の後端を第1のフレーム11の後端側に回動可能に連結するように構成したが、本発明は、上記第1のフレーム11の後端側を、必ずしもキャブ1の傾動中心Pと通る位置にまで延ばす必要はない。要は、キャブ1の傾動に伴い、車体側方から見た側面視で第1のフレーム11がキャブ1の傾動中心P回りに傾動し、第2のフレーム12の後端が車体側との連結支点Q回りに傾動し、各足場13が、この両フレーム11,12と平行リンク機構を構成して、キャブ1の傾動に拘わらず水平状態を維持するように構成すれば良い。
【0022】
また、上記実施形態では、建設機械としてのクレーンに装備される補助プラットフォーム構造について述べたが、本発明は、この場合に限らず、キャブがブームの起立方向に上向きに傾斜可能に設けられる高所作業車などのその他の建設機械に装備される補助プラットフォーム構造にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 キャブ
2 出入り口
10 補助プラットフォーム
11 第1のフレーム
12 第2のフレーム
13 足場
P キャブの傾動中心
Q 第2のフレームの車体側との連結支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に基端が起伏可能に支持されたブームと、車体上にこのブームの起立方向に上向きに傾動可能に設けられたキャブと、このキャブ側面の出入り口の下縁部に設けられた補助プラットフォームとを備えた建設機械において、
上記補助プラットフォームは、車体側方から見た側面視で後端側又はその中心軸延長線が上記キャブの傾動中心を通る高さ位置で前後方向に水平に延びた状態でキャブ側面に固定された第1のフレームと、この第1のフレームに対向して前後方向に延びかつ後端が車体側に回動可能に連結された第2のフレームと、この両フレームに沿って前後方向に所定の距離毎に配置され、各々後端が第1のフレームに、前端が第2のフレームにそれぞれ回動可能に連結された複数の足場とを有しており、各足場は、車体側方から見た側面視で第1及び第2のフレームと平行リンク機構を構成して、キャブの傾動に拘わらず水平状態を維持するようになっていることを特徴とする建設機械の補助プラットフォーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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