説明

建設機械の足場構造

【課題】荷幅制限をオーバーすることなく、展開位置において足場部材の回動動作を規制することができる建設機械の足場構造を提供する。
【解決手段】回動規制部材50は、展開位置における足場部材30と旋回フレーム3の側壁面との隙間に配設されている。回動規制部材50は、旋回フレーム3の側壁面に設けられた係合部材51と、足場部材30に設けられたラッチ部材55とを備えている。そして、係合部材51の係合孔52にラッチ部材55のラッチピン56を係合させることで、展開位置において足場部材30の回動動作を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の足場構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、下部走行体と、下部走行体上に搭載された上部旋回体と、上部旋回体の側壁面から外方に張り出した歩行用台とを備えた建設機械の足場構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。上部旋回体には、運転室、エンジン、及び油圧機器等が設けられている。また、歩行用台としての足場部材は、上部旋回体の前後方向に並ぶように複数配設されている。作業者は、足場部材の踏み面を利用して上部旋回体に乗り降り可能であり、安全且つ容易に運転室に乗車したり、エンジンや油圧機器等のメンテナンスを行うことができる。
【0003】
ここで、建設機械を工事現場まで搬送する際には、建設機械をトラックやトレーラ等の運搬車両に載せる必要があるが、運搬車両で搬送可能な荷幅は道路法によって制限されている。そのため、足場部材を上部旋回体の側壁面から外方に張り出したままの状態では、荷幅制限をオーバーするおそれがある。
【0004】
そこで、従来の建設機械では、足場部材の踏み面が略水平となるように張り出させた展開位置と、足場部材の踏み面が上部旋回体の側壁面に沿うように立設させた格納位置との間で、足場部材を回動自在に支持した構造とすることで、運搬車両の荷幅制限内に収めるようにしている。
【0005】
ここで、足場部材には、格納位置に格納した足場部材が意図せずに展開しないように、足場部材の回動動作を規制する回動規制部材が設けられている。例えば、車両前後方向に進退自在なラッチピンを有するラッチ部材を足場部材の踏み面の裏面側に取り付ける一方、係合孔が形成された係合部材を上部旋回体の側壁面に取り付けておき、ラッチピンを係合孔に挿入して係合させることで、足場部材を格納位置で固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−244960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の建設機械の足場構造では、格納位置における足場部材の回動動作をラッチ部材で規制するようにしているが、より安全性を高めるために、展開位置においても同様に足場部材の回動動作を規制することが望ましい。
【0008】
しかしながら、従来の建設機械の足場構造のように、足場部材の踏み面の裏面側にラッチ部材を取り付けた構成では、展開位置においてラッチ部材と係合させるための係合部材は、上部旋回体の側壁面から外方に向かってラッチピンの進退位置まで大きく突出させた形状としなければならない。そのため、足場部材を格納位置に格納しても、係合部材が幅方向外方に突出したままの状態となり、建設機械の幅方向長さを荷幅制限内に収めることができないという問題がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、荷幅制限をオーバーすることなく、展開位置において足場部材の回動動作を規制することができる建設機械の足場構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下部走行体と、該下部走行体上に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の側壁面から外方に張り出した足場部材とを備えた建設機械の足場構造を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、第1の発明は、前記足場部材の踏み面が略水平となるように張り出させた展開位置と、該足場部材の踏み面が該上部旋回体の側壁面に沿うように立設させた格納位置との間で、該足場部材を回動自在に支持するヒンジ部材と、
前記展開位置における前記足場部材と前記上部旋回体の側壁面との隙間に配設され、該展開位置において該足場部材の回動動作を規制する回動規制部材とを備え、
前記回動規制部材は、
前記足場部材及び前記側壁面のうちの一方に設けられ、前記上部旋回体の前後方向に開口した係合孔が形成された係合部材と、
前記足場部材及び前記側壁面のうちの他方に設けられ、前記係合孔に対して進退させることで前記係合部材に係合自在なラッチ部材とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
第1の発明では、足場部材は、ヒンジ部材によって展開位置と格納位置との間で回動自在に支持される。展開位置は、足場部材の踏み面を略水平となるように張り出させた位置である。格納位置は、足場部材の踏み面を上部旋回体の側壁面に沿うように立設させた位置である。展開位置では、回動規制部材によって足場部材の回動動作が規制される。回動規制部材は、展開位置における足場部材と上部旋回体の側壁面との隙間に配設されている。回動規制部材は、足場部材及び側壁面のうちの一方に設けられた係合部材と、他方に設けられたラッチ部材とを備える。係合部材には、上部旋回体の前後方向に開口した係合孔が形成されている。ラッチ部材は、係合孔に対して進退させることで係合部材に係合自在とされる。
【0013】
このような構成とすれば、展開位置において足場部材の回動動作を規制するためのラッチ部材及び係合部材を、足場部材の回動中心に近接して配置させることができるから、荷幅制限をオーバーすることなく、展開位置において足場部材の回動動作を規制することができる。
【0014】
具体的に、従来の建設機械の足場構造では、足場部材の踏み面の裏面側にラッチ部材が取り付けられていた。そのため、展開位置においてラッチ部材と係合させるための係合部材は、上部旋回体の側壁面から外方に向かってラッチピンの進退位置まで大きく突出させた形状としなければならなかった。このような構成では、足場部材を格納位置に格納しても、係合部材が幅方向外方に突出したままの状態となり、建設機械の幅方向長さを荷幅制限内に収めることができないという問題がある。
【0015】
これに対し、本発明では、展開位置における足場部材と上部旋回体の側壁面との隙間にラッチ部材及び係合部材が配設されているから、係合部材を幅方向外方に大きく突出させる必要が無く、建設機械の幅方向長さを運搬車両の荷幅制限内に収めることができる。
【0016】
また、足場部材を展開位置に位置付けたときに、作業者が上方からラッチ部材を視認し、係合状態を確認することができる。
【0017】
第2の発明は、第1の発明において、
前記回動規制部材は、前記展開位置及び前記格納位置のそれぞれにおいて前記足場部材の回動動作を規制するように構成されていることを特徴とするものである。
【0018】
第2の発明では、回動規制部材により、展開位置及び格納位置のそれぞれにおいて足場部材の回動動作が規制される。
【0019】
このような構成とすれば、展開位置と同様に、格納位置において足場部材の回動動作を規制するためのラッチ部材及び係合部材を、足場部材の回動中心に近接して配置させることができるから、足場部材の踏み面よりも上方に係合部材を配置しなくても良くなり、作業者が足場部材に乗り降りする際に係合部材に躓くことを防止できる。
【0020】
また、足場部材の踏み面よりも上方には、係合部材のような突起物が存在しないので、キャブドアと干渉しない位置まで踏み面を高くすることができる。これにより、上部旋回体に設けられたハンドレールから足場部材の踏み面までの距離を短くするように定められたISOの基準を満たすことができる。
【0021】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記展開位置における前記ラッチ部材の上方を覆うカバー部材を備え、
前記ラッチ部材は、前記カバー部材を介して前記足場部材及び前記側壁面のうちの一方に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0022】
第3の発明では、展開位置におけるラッチ部材の上方は、カバー部材で覆われている。ラッチ部材は、カバー部材を介して足場部材及び側壁面のうちの一方に取り付けられる。
【0023】
このような構成とすれば、カバー部材によってラッチ部材が保護されているから、展開位置における足場部材と上部旋回体の側壁面との隙間から泥や砂等が落下しても、泥や砂等がラッチ部材に噛み込んでしまうのを防止できる。また、ラッチ部材のラッチハンドルがカバー部材の下方に配設されるので、ラッチハンドルが足場部材の踏み面よりも上方に突出することがなく、作業者が足場部材に乗り降りする際にラッチハンドルに躓くことがない。
【0024】
また、ラッチ部材は、カバー部材を介して足場部材及び側壁面のうちの一方に取り付けられているから、ラッチ部材とカバー部材との相対位置を適宜変更することで、ラッチ部材の位置調整を行うことができる。
【0025】
第4の発明は、第1乃至第3の発明のうち何れか1つにおいて、
前記回動規制部材は、前記展開位置における前記足場部材の踏み面よりも下方に配設されていることを特徴とするものである。
【0026】
第4の発明では、展開位置における足場部材の踏み面よりも下方に、回動規制部材が配設される。
【0027】
このような構成とすれば、回動規制部材としてのラッチ部材及び係合部材を、展開位置における足場部材の踏み面よりも下方に配設することで、踏み面よりも上方に突出する突起物が存在しなくなり、作業者が足場部材に乗り降りする際にラッチ部材や係合部材に躓くことを防止できる。また、足場部材の踏み面よりも上方には突起物が存在しないので、キャブドアと干渉しない位置まで踏み面を高くすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、展開位置における足場部材と上部旋回体の側壁面との隙間にラッチ部材及び係合部材が配設されているから、係合部材を幅方向外方に大きく突出させる必要が無く、建設機械の幅方向長さを運搬車両の荷幅制限内に収めることができる。
【0029】
また、足場部材を展開位置に位置付けたときに、作業者が上方からラッチ部材を視認し、係合状態を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態1に係る建設機械の全体構成を示す側面図である。
【図2】建設機械の全体構成を示す斜視図である。
【図3】足場部材を展開位置に位置付けたときの斜視図である。
【図4】足場部材を格納位置に位置付けたときの斜視図である。
【図5】展開位置における足場部材を上面側から見た平面図である。
【図6】図3のX−X矢視断面図である。
【図7】図4のY−Y矢視断面図である。
【図8】本実施形態2に係る足場部材の構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0032】
《実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る建設機械の全体構成を示す側面図、図2は斜視図である。図1及び図2に示すように、この建設機械10は、クローラ式の下部走行体1の上に、旋回可能な上部旋回体2が搭載された油圧ショベルである。
【0033】
上部旋回体2は、車体フレームとしての旋回フレーム3と、旋回フレーム3の前端側に設けられて土砂等の掘削作業を行うアタッチメント4と、キャブ5と、機械室6と、旋回フレーム3の後端側に設けられてアタッチメント4との重量バランスを取るためのカウンタウエイト7とを備えている。
【0034】
なお、本実施形態では、図1において、図面左側のアタッチメント4が配置された側を車両前側、紙面手前側のキャブ5が配置された側を車両左側とし、以下の説明では前後左右等の方向は特に言及しない限り、これに従うものとする。また、図2では、下部走行体1、アタッチメント4、及び後述する回動規制部材50,60の記載を省略している。
【0035】
アタッチメント4は、基端側が旋回フレーム3に回動可能に取り付けられたブーム11と、ブーム11の先端側に回動可能に取り付けられたアーム12と、アーム12の先端側に回動可能に取り付けられたバケット13とを備えている。
【0036】
キャブ5は、その内部に運転シートや各種制御機器、操作機器等が装備された矩形箱型の運転室であり、アタッチメント4の左側に隣接して位置するように上部旋回体2の前部左側に配設されている。
【0037】
機械室6は、上部旋回体2の後部に左右両側間にわたって設けられている。機械室6の後側にはカウンタウエイト7が配設されている。そして、機械室6の左前方部には、作動油を貯留する作動油タンク15が配設されている。機械室6の右前方部には、燃料を貯留する燃料タンク16が配設されている。
【0038】
機械室6及びカウンタウエイト7の上部には、機械室6及びカウンタウエイト7の上部に乗った作業者の安全性を確保するために、安全柵17が立設している。また、旋回フレーム3の右前方側には、作業者の乗り降り動作を補助するためのハンドレール18が立設している。
【0039】
上部旋回体2における旋回フレーム3の左側の側壁面には、車両前後方向に並ぶように複数の足場部材30が設けられている(図2に示す例では4枚)。
【0040】
図3は、足場部材を展開位置に位置付けたときの斜視図、図4は、足場部材を格納位置に位置付けたときの斜視図、図5は、展開位置における足場部材を上面側から見た平面図である。図3〜図5に示すように、足場部材30は、ヒンジ部材40に回動自在に取り付けられ、その踏み面が略水平となるように張り出させた展開位置(図3参照)と、踏み面が旋回フレーム3の側壁面に沿うように立設させた格納位置(図4参照)との間で回動自在に構成されている。
【0041】
複数の足場部材30のうち最前列の足場部材30の側面部には、下方に延びる取っ手19が取り付けられている。側面部に取り付けられた取っ手19は、足場部材30に対して着脱自在とされ、足場部材30を格納位置に位置付けたときに取っ手19を取り外し、踏み面の裏面側に収納することで、車両の幅方向に突出しないようにしている。
【0042】
足場部材30は、足場部材30の踏み面を構成する踏面板31と、踏面板31の周縁に沿って下方に延びる周縁板32と、踏面板31の幅方向の略中央位置で車両前後方向に延びる縦梁33と、踏面板31の長手方向に間隔をあけて配設された横梁34とを備えている。
【0043】
踏面板31には、複数の孔が形成されている。これらの孔は、踏面板31の裏面側から打ち抜かれることによって形成され、孔の周縁は表面側に突出しており、作業者が踏面板31に乗り降りする際の滑り止めとして機能する。
【0044】
縦梁33は、踏面板31の幅方向の略中央位置で車両前後方向に延び、前後方向の両端部が周縁板32に接合されている。縦梁33は、踏面板31を補強する補強リブを構成している。
【0045】
横梁34は、踏面板31の長手方向に間隔をあけて配設されている。横梁34の基端部は、踏面板31よりも外方に延び、ヒンジ部材40に回動自在に取り付けられている。横梁34の張り出し側端部は、周縁板32に接合されている。横梁34は、踏面板31を補強する補強リブを構成している。また、旋回フレーム3側の周縁板32と横梁34とは、補強リブ35によって接合されている。周縁板32における補強リブ35の接合位置の近傍には、旋回フレーム3側に延びるストッパボルト47が設けられている。ストッパボルト47は、足場部材30を展開位置に位置付けたときに取付ブラケット45に当接して、足場部材30の踏み面が略水平となるように規制している。
【0046】
ヒンジ部材40は、横梁34の基端部が収容される凹部を有するヒンジ本体41と、ヒンジ本体41及び横梁34に貫通して横梁34を回動自在に支持する回動軸42とを備えている。ヒンジ部材40は、取付ブラケット45を介して旋回フレーム3に取り付けられている。
【0047】
最前列の足場部材30の取付ブラケット45は、車両前後方向の両端にフランジ面を有するように折り曲げられた板状体で形成されている。取付ブラケット45のフランジ面は、旋回フレーム3の側壁面から膨出した膨出部3aに当接され且つ締結ボルト45aによって締結固定されている。
【0048】
残りの足場部材30の取付ブラケット45は、板状体で形成されている。取付ブラケット45は、旋回フレーム3の側壁面に当接され且つ締結ボルト45aによって締結固定されている。
【0049】
展開位置における足場部材30と上部旋回体2の旋回フレーム3の側壁面との隙間で且つ足場部材30の踏み面よりも下方には、展開位置において足場部材30の回動動作を規制する展開用の回動規制部材50と、格納位置において足場部材30の回動動作を規制する格納用の回動規制部材60とが配設されている。
【0050】
展開用及び格納用の回動規制部材50,60は、旋回フレーム3の側壁面側に設けられた展開用及び格納用の係合部材51,61と、足場部材30側に設けられた展開用及び格納用のラッチ部材55,65とを備えている。
【0051】
展開用の係合部材51は、車両前後方向の中央寄りの位置に配置されており、取付ブラケット45に当接し且つ上下方向に移動可能に締結固定された当接部51aと、当接部51aの前側端部から足場部材30側に延びる係合部51bとを有する。係合部51bには、上部旋回体1の前後方向に開口した係合孔52が形成されている(図6参照)。係合孔52は、車両幅方向に延びる長孔状に形成されている。
【0052】
格納用の係合部材61は、車両前後方向の両端側にそれぞれ配置されており、取付ブラケット45から足場部材30側に延びる板状体で構成されている。係合部材61には、上部旋回体1の前後方向に開口した係合孔62が形成されている(図7参照)。
【0053】
展開用及び格納用のラッチ部材55,65は、ラッチピン56,66と、ラッチ本体57,67と、ラッチハンドル58,68とを備えている。ラッチピン56,66は、ラッチ本体57,67に収容され、車両前後方向に進退自在である。ラッチピン56,66には、ラッチピン56,66の軸方向に垂直な方向に延びるラッチハンドル58,68が取り付けられており、作業者は、ラッチハンドル58,68を把持してラッチピン56,66を進退させることができる。
【0054】
車両後側に配置された格納用のラッチ部材65は、カバー部材70を介して、展開位置において旋回フレーム3と対向する足場部材30の周縁板32に取り付けられている。また、車両前側に配置された格納用のラッチ部材65と展開用のラッチ部材55とは、共通のカバー部材70を介して、展開位置において旋回フレーム3と対向する足場部材30の周縁板32に取り付けられている。
【0055】
ここで、展開用のラッチ部材55は、近接する係合部材51よりも車両前側に配設されている。車両後側に配置された格納用のラッチ部材65は、近接する係合部材61よりも車両前側に配設されている。車両前側に配置された格納用のラッチ部材65は、近接する係合部材61よりも車両後側に配設されている。
【0056】
カバー部材70は、展開位置におけるラッチ部材55,65の上方を覆っている。これにより、展開位置における足場部材30と旋回フレーム3の側壁面との隙間から泥や砂等が落下しても、泥や砂等がラッチ部材55,65に噛み込んでしまうのを防止できる。また、ラッチ部材55,65のラッチハンドル58,68がカバー部材70の下方に配設されるので、ラッチハンドル58,68が足場部材30の踏み面よりも上方に突出することがなく、作業者が足場部材30に乗り降りする際にラッチハンドル58,68に躓くことがない。また、ラッチ部材55,65は、カバー部材70を介して足場部材30に取り付けられているから、ラッチ部材55,65とカバー部材70との相対位置を適宜変更することで、ラッチ部材55,65の位置調整を行うことができる。
【0057】
ここで、足場部材30を展開位置に位置付けた状態で、作業者が展開用のラッチピン56を後側に移動させて係合孔52に係合させることで、展開位置における足場部材30の回動動作が規制される(図6参照)。一方、ラッチピン56を前側に移動させて係合孔52との係合を解除することで、足場部材30が回動可能となる。
【0058】
また、足場部材30を格納位置に位置付けた状態で、車両前側に配置された格納用のラッチピン66を前側に、車両後側に配置された格納用のラッチピン66を後側にそれぞれ移動させて係合孔62に係合させることで、格納位置における足場部材30の回動動作が規制される(図7参照)。そして、ラッチピン66を係合時とは逆方向に移動させて係合孔62との係合を解除することで、足場部材30が回動可能となる。
【0059】
このように、展開用のラッチ部材55及び係合部材51を、展開位置における足場部材30と旋回フレーム3の側壁面との隙間、つまり、足場部材30の回動中心に近接させて配設したから、係合部材51を幅方向外方に大きく突出させる必要が無い。これにより、荷幅制限をオーバーすることなく、展開位置において足場部材30の回動動作を規制することができる。
【0060】
また、格納用のラッチ部材65及び係合部材61も同様に、展開位置における足場部材30と旋回フレーム3の側壁面との隙間、つまり、足場部材30の回動中心に近接させて配設したから、足場部材30の踏み面よりも上方に係合部材61を配置しなくても良くなり、作業者が足場部材30に乗り降りする際に係合部材61に躓くことを防止できる。
【0061】
また、足場部材30の踏み面よりも上方には、係合部材61のような突起物が存在しないので、キャブドア(図示省略)と干渉しない位置まで踏み面を高くすることができる。
【0062】
《実施形態2》
図8は、本実施形態2に係る足場部材の構成を示す正面図である。前記実施形態1との違いは、展開用及び格納用の回動規制部材を兼用できるようにした点であるため、以下、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。なお、図8では、展開位置における足場部材30を実線で示し、格納位置における足場部材30を仮想線で示している。
【0063】
図8に示すように、横梁34の基端部には、回動中心となる回動軸42が挿通された回動孔34aが形成されている。回動孔34aは、展開位置において車両幅方向に延びる長孔状に形成されている。そして、展開位置では、回動孔34aの基端側(図8で左端側)に回動軸42が位置している。回動軸42の斜め下方(具体的に、回動軸42に対して斜め45度右下の位置)には、展開用のラッチピン56が配設されている。また、ラッチピン56の進退方向には、係合孔52が形成された係合部材51が配設されている。
【0064】
そして、足場部材30を回動させて格納位置に位置付けると、格納位置では、回動孔34aが上下方向に延びる長孔状となり、その上端側に回動軸42が位置している。このとき、格納用の係合部材61及びラッチピン66は、車両正面側から見て展開用の係合部材51及びラッチピン56と同じ位置に配設されている。
【0065】
このように、本実施形態2では、回動孔34aの長孔の長さや、回動軸42に対するラッチピン56,66の相対位置を工夫することで、展開位置及び格納位置におけるラッチピン56,66の配設位置が同じ位置となるようにしている。これにより、展開用の係合部材51及びラッチピン56と、格納用の係合部材61及びラッチピン66とを兼用することが可能となり、部品点数を削減することができる。
【0066】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0067】
本実施形態では、ラッチ部材55,65を足場部材30側に取り付ける一方、係合部材51,61を旋回フレーム3の側壁面側に取り付けた形態について説明したが、ラッチ部材55,65を旋回フレーム3の側壁面側に取り付ける一方、係合部材51,61を足場部材30側に取り付けてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、カバー部材70を介して展開用のラッチ部材55を足場部材30側に取り付けるようにしているが、ラッチ部材55を足場部材30に直接取り付けてもよい。このようにすれば、作業者がラッチハンドル58を上方から把持できるとともに、部品点数を削減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、本発明は、荷幅制限をオーバーすることなく、展開位置において足場部材の回動動作を規制することができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0070】
1 下部走行体
2 上部旋回体
10 建設機械
30 足場部材
40 ヒンジ部材
50 回動規制部材
51 係合部材
52 係合孔
55 ラッチ部材
60 回動規制部材
61 係合部材
62 係合孔
65 ラッチ部材
70 カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、該下部走行体上に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の側壁面から外方に張り出した足場部材とを備えた建設機械の足場構造であって、
前記足場部材の踏み面が略水平となるように張り出させた展開位置と、該足場部材の踏み面が該上部旋回体の側壁面に沿うように立設させた格納位置との間で、該足場部材を回動自在に支持するヒンジ部材と、
前記展開位置における前記足場部材と前記上部旋回体の側壁面との隙間に配設され、該展開位置において該足場部材の回動動作を規制する回動規制部材とを備え、
前記回動規制部材は、
前記足場部材及び前記側壁面のうちの一方に設けられ、前記上部旋回体の前後方向に開口した係合孔が形成された係合部材と、
前記足場部材及び前記側壁面のうちの他方に設けられ、前記係合孔に対して進退させることで前記係合部材に係合自在なラッチ部材とを備えたことを特徴とする建設機械の足場構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記回動規制部材は、前記展開位置及び前記格納位置のそれぞれにおいて前記足場部材の回動動作を規制するように構成されていることを特徴とする建設機械の足場構造。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記展開位置における前記ラッチ部材の上方を覆うカバー部材を備え、
前記ラッチ部材は、前記カバー部材を介して前記足場部材及び前記側壁面のうちの一方に取り付けられていることを特徴とする建設機械の足場構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のうち何れか1つにおいて、
前記回動規制部材は、前記展開位置における前記足場部材の踏み面よりも下方に配設されていることを特徴とする建設機械の足場構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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