説明

建設機械の電動駆動装置

【課題】建設機械に搭載された蓄電装置によって制限される稼働時間を、電動・発電機による発電作用により従来よりも長くすることができる建設機械の電動駆動装置を提供する。
【解決手段】蓄電装置7と、電動・発電機29によって駆動する固定容量型の油圧ポンプ30と、油圧ポンプ30から複数の油圧アクチュエータへ供給する圧油の流れをそれぞれ制御する複数の方向切換弁33,34等と、電動・発電機29の回転数を可変制御する双方向コンバータ28と、LS差圧Plsが目標値Pgrとなるように、双方向コンバータ28を制御するLS制御装置45とを備える。双方向コンバータ28は、LS差圧Plsが目標値Pgrを上回って電動・発電機29の回転数を減少させるときに、電動・発電機29の回転子の慣性力を電力に変換して蓄電装置7を充電する回生制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式油圧ショベル等の建設機械に係わり、特に、複数の油圧アクチュエータに圧油を供給する油圧ポンプを駆動する電動・発電機と、この電動・発電機との間で電力の授受を行う蓄電装置とを搭載した建設機械の電動駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の一例であるミニショベル(すなわち、運転質量6トン未満の油圧ショベル)は、一般に、下部走行体と、この下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、この上部旋回体に俯仰可能に設けられブーム、アーム、及びバケットを含む多関節型の作業機とを備えている。このミニショベルは、例えば、油圧ポンプと、複数の油圧アクチュエータ(詳細には、例えばブーム用油圧シリンダ、アーム用油圧シリンダ、及びバケット用油圧シリンダ等)と、油圧ポンプから複数の油圧アクチュエータへの圧油の流れをそれぞれ制御する複数の方向切換弁と、複数の方向切換弁をそれぞれ操作する操作手段(詳細には、例えば操作レバーの操作位置に対応するパイロット圧を出力する複数の操作装置)とを備えている。
【0003】
近年、排気ガスを排出せず、騒音や振動も大幅に低減する利点を有することから、上記油圧ポンプの駆動源としてエンジンの代わりに電動モータ(電動・発電機)を搭載した電動式ミニショベルが提唱されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−121328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した電動式ミニショベルにおいては、電動モータの電力源として複数のバッテリからなる蓄電装置を搭載したものがある。この蓄電装置搭載型の電動式ミニショベルでは、常に電力ケーブルを用いて外部電源に接続する必要がない。そして、例えばミニショベルの作業時に電力ケーブルを用いて外部電源に接続しない場合は、移動や旋回動作が制限されないという利点を有する。しかし、ミニショベルに搭載可能なバッテリの数量ひいては蓄電装置の蓄電容量には限界がある。詳しく説明すると、例えば後方超小旋回型若しくは超小旋回型と呼ばれるミニショベルにおいては、上部旋回体の後端若しくは上部旋回体の全体における旋回半径寸法が制限されている。そして、上部旋回体には、運転者が搭乗する運転室などが設けられており、さらに、複数の方向切換弁、油圧ポンプ、及び作動油タンクを含む油圧機器が搭載されている。そのため、運転者の視認性を損なわないように上部旋回体に搭載できるバッテリのスペースは限られており、上部旋回体に搭載可能なバッテリの数量には限界がある。したがって、ミニショベルに搭載する蓄電装置の蓄電容量に限界があり、電力ケーブルを用いて外部電源に接続しない場合のミニショベルの稼働時間が限られていた。
【0006】
本発明の目的は、建設機械に搭載された蓄電装置によって制限される稼働時間を、電動・発電機による発電作用により従来よりも長くすることができる建設機械の電動駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、蓄電装置と、前記蓄電装置との間で電力の授受を行う電動・発電機と、前記電動・発電機によって駆動する油圧ポンプと、複数の油圧アクチュエータと、前記複数の油圧アクチュエータの動作を指示する複数の操作手段と、前記複数の操作手段の操作方向及び操作量に応じて、前記油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータへ供給する圧油の方向及び流量をそれぞれ制御する複数の方向切換弁とを備えた建設機械の電動駆動装置において、前記電動・発電機の回転数を可変制御する電動・発電機制御手段と、前記複数の操作手段のそれぞれからの操作指令量に基づく要求流量の変化に応じて前記電動・発電機制御手段への指令値を演算する指令制御手段とを備え、前記電動・発電機制御手段は、前記要求流量の減少に応じて前記電動・発電機の回転数を減少させるときに、前記電動・発電機の回転子の慣性力を電力に変換して前記蓄電装置を充電する回生制御を行う。
【0008】
このような本発明においては、要求流量の減少に応じて電動・発電機の回転数を減少させるときに電動・発電機の回転子の慣性力を電力に変換して蓄電装置を充電する回生制御を行うことにより、建設機械の稼働時間を長くすることができる。
【0009】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記複数の方向切換弁のそれぞれの前後差圧が、前記油圧ポンプの吐出圧と前記複数の油圧アクチュエータの最高負荷圧との差圧であるロードセンシング差圧となるように制御する複数の圧力補償弁と、前記ロードセンシング差圧を検出する差圧検出手段とを備え、前記指令制御手段は、前記差圧検出手段で検出されたロードセンシング差圧が予め設定された目標値となるように、それらの差分に応じて前記電動・発電機制御手段への指令値を演算しており、前記電動・発電機制御手段は、前記ロードセンシング差圧が前記目標値を上回って前記電動・発電機の回転数を減少させるときに、前記電動・発電機の回転子の慣性力を電力に変換して前記蓄電装置を充電する回生制御を行う。
【0010】
このような本発明においては、ロードセンシング差圧が目標値を上回って(すなわち、要求流量が減少して)電動・発電機の回転数を減少させるときに電動・発電機の回転子の慣性力を電力に変換して蓄電装置を充電する回生制御を行うことにより、建設機械の稼働時間を長くすることができる。
【0011】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記複数の方向切換弁のそれぞれの前後差圧が、前記油圧ポンプの吐出圧と前記複数の油圧アクチュエータの最高負荷圧との差圧であるロードセンシング差圧となるように制御する複数の圧力補償弁と、前記油圧ポンプの吐出圧を検出する吐出圧検出手段と、前記複数の油圧アクチュエータの最高負荷圧を検出する最高負荷圧検出手段とを備え、前記指令制御手段は、前記最高負荷圧検出手段で検出された前記複数の油圧アクチュエータの最高負荷圧に基づいて前記油圧ポンプの吐出圧に対する目標値を設定し、前記吐出圧検出手段で検出された前記油圧ポンプの吐出圧が前記目標値となるように、それらの差分に応じて前記電動・発電機制御手段への指令値を演算しており、前記電動・発電機制御手段は、前記油圧ポンプの吐出圧が前記目標値を上回って前記電動・発電機の回転数を減少させるときに、前記電動・発電機の回転子の慣性力を電力に変換して前記蓄電装置を充電する回生制御を行う。
【0012】
このような本発明においては、油圧ポンプの吐出圧が目標値を上回って(すなわち、要求流量が減少して)電動・発電機の回転数を減少させるときに電動・発電機の回転子の慣性力を電力に変換して蓄電装置を充電する回生制御を行うことにより、建設機械の稼働時間を長くすることができる。
【0013】
(4)上記(1)において、好ましくは、前記複数の方向切換弁は、オープンセンタ型であり、前記複数の方向切換弁のセンタバイパス流路の下流側に設けられた絞りと、前記絞りの上流側で切換わる複数の方向切換弁のうちの少なくとも1つの切換量の変化に基づき変化する、前記絞りの上流側圧力を制御圧として検出する制御圧検出手段と、前記電動・発電機の回転数を取得する回転数取得手段と、前記回転数取得手段で取得された前記電動・発電機の回転数に基づいて前記油圧ポンプの吐出流量を演算する吐出流量演算手段とを備え、前記指令制御手段は、前記吐出流量演算手段で算出された前記油圧ポンプの吐出流量に基づいて前記制御圧に対する目標値を設定し、前記制御圧検出手段で検出された制御圧と前記目標値との差分に応じて前記電動・発電機制御手段への指令値を演算しており、前記電動・発電機制御手段は、前記制御圧が前記目標値を上回って前記電動・発電機の回転数を減少させるときに、前記電動・発電機の回転子の慣性力を電力に変換して前記蓄電装置を充電する回生制御を行う。
【0014】
このような本発明においては、制御圧が目標値を上回って(すなわち、要求流量が減少して)電動・発電機の回転数を減少させるときに電動・発電機の回転子の慣性力を電力に変換して蓄電装置を充電する回生制御を行うことにより、建設機械の稼働時間を長くすることができる。
【0015】
(5)上記(1)において、好ましくは、前記複数の操作手段の最大操作量を検出する最大操作量検出手段と、前記電動・発電機の回転数を検出する回転数取得手段と、前記回転数取得手段で検出された前記電動・発電機の回転数に基づいて前記油圧ポンプの吐出流量を演算する吐出流量演算手段とを備え、前記指令制御手段は、前記最大操作量検出手段で検出された前記複数の操作手段の最大操作量に基づいて要求流量を設定し、前記吐出流量演算手段で算出された前記油圧ポンプの吐出流量が前記要求流量となるように、それらの差分に応じて前記電動・発電機制御手段への指令値を演算しており、前記電動・発電機制御手段は、前記油圧ポンプの吐出流量が前記要求流量を上回って前記電動・発電機の回転数を減少させるときに、前記電動・発電機の回転子の慣性力を電力に変換して前記蓄電装置を充電する回生制御を行う。
【0016】
このような本発明においては、油圧ポンプの吐出流量が要求流量を上回って(すなわち、要求流量が減少して)電動・発電機の回転数を減少させるときに電動・発電機の回転子の慣性力を電力に変換して蓄電装置を充電する回生制御を行うことにより、建設機械の稼働時間を長くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、要求流量の減少に応じて電動・発電機の回転数を減少させるときに電動・発電機の回転子の慣性力を電力に変換して蓄電装置を充電する回生制御を行うことにより、建設機械の稼働時間を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の適用対象である電動式ミニショベルの全体構造を表す側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における電動駆動装置の構成を表す概略図である。
【図3】図2で示された電動駆動装置の構成のうち、代表例としてブーム用油圧シリンダ及びアーム用油圧シリンダの駆動に係わる構成を表すとともに、LS差圧検出装置の構成を表す図である。
【図4】図2で示されたLS制御装置の機能的構成を関連機器とともに表すブロック図である。
【図5】図4で示されたローパスフィルタ部の処理を説明するための図であり、具体例の一つとして、処理前の差分ΔPls及び処理後のΔPls’の経時変化を表す。
【図6】図2で示された双方向コンバータの機能的構成を関連機器とともに表すブロック図である。
【図7】本発明の第1の変形例におけるLS差圧検出装置の構成を表す図である。
【図8】本発明の第2の変形例におけるLS差圧検出装置の構成を表す図である。
【図9】本発明の第3の変形例におけるLS差圧検出装置の構成を表す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態における電動駆動装置の構成を表す概略図である。
【図11】図10で示されたLS制御装置の機能的構成を関連機器とともに表すブロック図である。
【図12】本発明の第3の実施形態における電動駆動装置の構成を表す概略図である。
【図13】図12で示されたネガティブ制御装置の機能的構成を関連機器とともに表すブロック図である。
【図14】図13で示された目標値設定部の処理を説明するための図である。
【図15】本発明の第4の実施形態における電動駆動装置の構成を表す概略図である。
【図16】図15で示されたポジティブ制御装置の機能的構成を関連機器とともに表すブロック図である。
【図17】図16で示された目標値設定部の処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の実施形態を、図1〜図5により説明する。
【0020】
図1は、本発明の適用対象である電動式ミニショベルの全体構造を表す側面図である。なお、以降、電動式ミニショベルが図1に示す状態にて運転者が運転席に着座した場合における運転者の前側(図1中左側)、後側(図1中右側)、左側(図1中紙面に向かって手前側)、右側(図1中紙面に向かって奥側)を、単に前側、後側、左側、右側と称する。
【0021】
この図1において、電動式ミニショベルは、クローラ式の下部走行体1と、この下部走行体1上に旋回可能に設けられた上部旋回体2と、上部旋回体2の基礎下部構造をなす旋回フレーム3と、この旋回フレーム3の前側に左右方向に回動可能に設けられたスイングポスト4と、このスイングポスト4に上下方向に回動可能(俯仰可能)に連結された多関節型の作業機5と、旋回フレーム4上に設けられたキャノピータイプの運転室6と、旋回フレーム4上の後側に設けられ、複数のバッテリ(例えばリチウム電池)からなる蓄電装置7(後述の図2参照)を収納したバッテリ搭載部8とを備えている。なお、本実施形態では、上部旋回体2の側方には、外部電源からのケーブルを接続可能な給電ソケット(図示せず)が設けられている。
【0022】
下部走行体1は、上方から見て略H字形状のトラックフレーム9と、このトラックフレーム9の左右両側の後端近傍に回転可能に支持された左右の駆動輪10と、トラックフレーム9の左右両側の前端近傍に回転可能に支持された左右の従動輪(アイドラ)11と、左右それぞれの駆動輪10と従動輪11とで掛けまわされた左右の履帯(クローラ)12とを備えている。そして、左の走行用油圧モータ13Aの駆動により左の駆動輪10(すなわち、左の履帯12)が回転し、右の走行用油圧モータ13B(後述の図2参照)の駆動により右の駆動輪10(すなわち、右の履帯12)が回転するようになっている。
【0023】
トラックフレーム9の前側には排土用のブレード14が上下動可能に設けられており、このブレード14はブレード用油圧シリンダ15(後述の図2参照)の伸縮駆動により上下動するようになっている。
【0024】
トラックフレーム9の中央部には旋回輪16が設けられ、この旋回輪16を介し旋回フレーム3が旋回可能に設けられており、旋回フレーム3(すなわち、上部旋回体2)は旋回用油圧モータ17(後述の図2参照)の駆動により旋回するようになっている。
【0025】
スイングポスト4は、旋回フレーム3の前側に左右方向に回動可能に設けられており、スイング用油圧シリンダ18(後述の図2参照)の伸縮駆動により左右方向に回動するようになっている。これにより、作業機5が左右にスイングするようになっている。
【0026】
作業機5は、スイングポスト4に上下方向に回動可能に連結されたブーム19と、このブーム19に上下方向に回動可能に連結されたアーム20と、このアーム20に上下方向に回動可能に連結されたバケット21とを備えている。ブーム19、アーム20、及びバケット21は、ブーム用油圧シリンダ22、アーム用油圧シリンダ23、及びバケット用油圧シリンダ24により上下方向に回動するようになっている。
【0027】
運転室6には、運転者が着座する運転席(座席)25が設けられている。運転席25の前方には、手または足で操作可能とし前後方向に操作することで左右の走行用油圧モータ13A,13Bの動作をそれぞれ指示する左右の走行用操作レバー26A,26B(但し、図1中26Aのみ示す)が設けられている。右の走行用操作レバー26Bのさらに右側の足元部分には、左右方向に操作することでスイング用油圧シリンダ18の動作を指示するスイング用操作ペダル(図示せず)が設けられている。
【0028】
運転席25の左側には、前後方向に操作することでアーム用油圧シリンダ23の動作を指示し、左右方向に操作することで旋回用油圧モータ17の動作を指示する十字操作式のアーム・旋回用操作レバー27Aが設けられている。運転席25の右側には、前後方向に操作することでブーム用油圧シリンダ22の動作を指示し、左右方向に操作することバケット用油圧シリンダ24の動作を指示する十字操作式のブーム・バケット用操作レバー27B(後述の図2参照)が設けられている。また、運転席25の右側には、前後方向に操作することでブレード用油圧シリンダ15の動作を指示するブレード用操作レバー(図示せず)が設けられている。
【0029】
図2は、上述した電動式ミニショベルに備えられた本実施形態の電動駆動装置の構成を表す概略図である。図3は、図2で示された電動駆動装置の構成のうち、代表例としてブーム用油圧シリンダ22及びアーム用油圧シリンダ23の駆動に係わる構成を表すとともに、LS差圧検出装置の構成を表す油圧回路図である。
【0030】
これら図2及び図3において、電動駆動装置は、複数(図2では便宜上2つのみ示すが、実際にはそれより多く)のバッテリからなる蓄電装置7と、双方向コンバータ28を介し蓄電装置7との間で電力の授受を行う電動・発電機29と、この電動・発電機29によって駆動する固定容量型の油圧ポンプ30及び固定容量型のパイロットポンプ(図示せず)と、複数の油圧アクチュエータ(詳細には、上述した左右の走行用油圧モータ13A,13B、ブレード用油圧シリンダ15、旋回用油圧モータ17、スイング用油圧シリンダ18、ブーム用油圧シリンダ22、アーム用油圧シリンダ23、及びバケット用油圧シリンダ24。以降、これらを油圧アクチュエータ22,23等と称す)と、油圧ポンプ30から複数の油圧アクチュエータ22,23等へ供給する圧油の流れを制御する弁ユニット32とを備えている。
【0031】
弁ユニット32は、油圧ポンプ30から複数の油圧アクチュエータ22,23等へ供給する圧油の方向及び流量をそれぞれ制御する複数のクローズドセンタ型の方向切換弁(詳細には、図3で示すブーム用方向切換弁33及びアーム用方向切換弁34、並びに、図示しない左右の走行用方向切換弁、ブレード用方向切換弁、旋回用方向切換弁、スイング用方向切換弁、及びバケット用方向切換弁。以降、これらを方向切換弁33,34等と称す)を有している。また、弁ユニット32は、方向切換弁33,34等の上流側にそれぞれ設けられた複数の圧力補償弁(詳細には、図3で示すブーム用圧力補償弁35及びアーム用圧力補償弁36、並びに、図示しない左右の走行用圧力補償弁、ブレード用圧力補償弁、旋回用圧力補償弁、スイング用圧力補償弁、及びバケット用圧力補償弁。以降、これらを圧力補償弁35,36等と称す)を有している。
【0032】
アーム用方向切換弁34は、操作装置37Aからのパイロット圧によって遠隔操作されるようになっている。詳しく説明すると、操作装置37Aは、上述したアーム・旋回用操作レバー27Aと、この操作レバー27Aの前後方向の操作に応じパイロットポンプの吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成する一対の減圧弁38A,38Bと、操作レバー27Aの左右方向の操作に応じパイロットポンプの吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成する一対の減圧弁(図示せず)とを有している。そして、例えば操作レバー27Aを中立位置から前側に操作すると、その操作量に応じて減圧弁38Aで生成されたパイロット圧がアーム用方向切換弁34の図3中上側の受圧部へ出力され、これによってアーム用方向切換弁34が図3中上側の切換位置に切換えられる。これにより、油圧ポンプ30からの圧油がアーム用油圧シリンダ23のロッド側に供給されてアーム用油圧シリンダ23が縮短し、アーム20が下側に回動するようになっている。一方、例えば操作レバー27Aを中立位置から後側に操作すると、その操作量に応じて減圧弁38Bで生成されたパイロット圧がアーム用方向切換弁34の図3中下側の受圧部へ出力され、これによってアーム用方向切換弁34が図3中下側の切換位置に切換えられる。これにより、油圧ポンプ30からの圧油がアーム用油圧シリンダ23のボトム側に供給されてアーム用油圧シリンダ23が伸張し、アーム20が上側に回動するようになっている。
【0033】
ブーム用方向切換弁33は、操作装置37Bからのパイロット圧によって遠隔操作されるようになっている。詳しく説明すると、操作装置37Bは、上述したブーム・バケット用操作レバー27Bと、この操作レバー27Bの前後方向の操作に応じパイロットポンプの吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成する一対の減圧弁38C,38Dと、操作レバー27Bの左右方向の操作に応じパイロットポンプの吐出圧を元圧としてパイロット圧を生成する一対の減圧弁(図示せず)とを有している。そして、例えば操作レバー27Bを中立位置から前側に操作すると、その操作量に応じて減圧弁38Cで生成されたパイロット圧がブーム用方向切換弁33の図3中上側の受圧部へ出力され、これによってブーム用方向切換弁33が図3中上側の切換位置に切換えられる。これにより、油圧ポンプ30からの圧油がブーム用油圧シリンダ22のロッド側に供給されてブーム用油圧シリンダ22が縮短し、ブーム19が下側に回動するようになっている。一方、例えば操作レバー27Bを中立位置から後側に操作すると、その操作量に応じて減圧弁38Dで生成されたパイロット圧がブーム用方向切換弁33の図3中下側の受圧部へ出力され、これによってブーム用方向切換弁33が図3中下側の切換位置に切換えられる。これにより、油圧ポンプ30からの圧油がブーム用油圧シリンダ22のボトム側に供給されてブーム用油圧シリンダ22が伸張し、ブーム19が上側に回動するようになっている。
【0034】
なお、本実施形態では、左右の走行用油圧モータ13A,13B、ブレード用油圧シリンダ15、旋回用油圧モータ17、スイング用油圧シリンダ18、及びバケット用油圧シリンダ24に係わる構成も、上述したブーム用油圧シリンダ22及びアーム用油圧シリンダ23の駆動に係わる構成とほぼ同様である。すなわち、左右の走行用方向切換弁、ブレード用方向切換弁、旋回用方向切換弁、スイング用方向切換弁、及びバケット用方向切換弁はそれぞれ、対応する操作装置(図示せず)からのパイロット圧によって遠隔操作されるようになっている。
【0035】
方向切換弁33,34等は、弁切換時に対応する油圧アクチュエータの負荷圧を取り出すための(但し、弁中立時にタンク圧となる)負荷ポート33a,34a等を有し、それら負荷ポート33a,34a等から出力された負荷圧のうちの最も高い負荷圧Plmax(以降、複数の油圧アクチュエータ22,23等の最高負荷圧Plmaxと称す)を選択して取り出すための複数(本実施形態では7つであり、図3では2つのみ示す)の負荷圧用シャトル弁39が設けられている。そして、油圧ポンプ30の吐出圧Psと複数の油圧アクチュエータ22,23等の最高負荷圧Plmaxとの差圧であるロードセンシング差圧Pls(以降、LS差圧Plsと称す)を検出するLS差圧検出装置40が設けられている。
【0036】
本実施形態では、LS差圧検出装置40は、油圧ポンプ30の吐出圧Psを元圧としてLS差圧Plsに相当する圧力を生成する差圧検出弁41と、この差圧検出弁41の出力圧(すなわち、LS差圧Pls)を測定する圧力センサ42とで構成されている。差圧検出弁41は、油圧ポンプ30の吐出圧Psを導入して昇圧側に作用させる受圧部と、複数の油圧アクチュエータ22,23等の最高負荷圧Plmaxをシャトル弁39から導入して減圧側に作用させる受圧部と、差圧検出弁41自身の出力圧を導入して減圧側に作用させる受圧部とを有している。このような構造により、LS差圧Plsに相当する圧力を生成して出力するようになっている。そして、圧力センサ42は、差圧検出弁41の出力圧を測定し、これを電気信号として出力するようになっている。
【0037】
圧力補償弁35,36等はそれぞれ、対応する方向切換弁の上流側圧力を導入して閉弁側に作用させる受圧部と、対応する方向切換弁の下流側圧力(詳細には、負荷ポートの出力圧)を導入して開弁側に作用させる受圧部と、LS差圧Plsを差圧検出弁41から導入して開弁側に作用させる受圧部とを有している。これにより、全ての方向切換弁33,34等の前後差圧がLS差圧Plsとなるように制御されている。その結果、例えば2つ以上の油圧アクチュエータを同時に駆動する複合操作の場合、油圧アクチュエータの負荷圧の大小にかかわらず、方向切換弁の開口面積に応じた比率で圧油を分配するようになっている。
【0038】
そして、双方向コンバータ28を制御するロードセンシング制御装置45(以降、LS制御装置45と称す)が設けられている。このLS制御装置45は、LS差圧検出装置40で検出されたLS差圧Plsが予め設定された目標値Pgrとなるように、双方向コンバータ28を介し電動・発電機29の回転数を可変制御するようになっている。なお、本実施形態では、LS差圧の目標値Pgrを変更可能な入力装置46が設けられており、LS差圧の目標値Pgrの変更によって油圧アクチュエータの動作速度を変更可能としている。
【0039】
LS制御装置45の詳細を、図4により説明する。図4は、LS制御装置45の機能的構成を関連機器とともに表すブロック図である。
【0040】
LS制御装置45は、入力装置46から入力されたLS差圧の目標値Pgrを設定する目標値設定部47と、LS差圧検出装置40の圧力センサ42から入力されたLS差圧Plsと目標値設定部47で設定された目標値Pgrとの差分ΔPlsを演算する減算部48と、この減算部48で算出された差分ΔPlsに対しカットオフ周波数fのローパスフィルタ処理を施すローパスフィルタ部51と、このローパスフィルタ部51で処理された差分ΔPls”に対し所定の演算処理を行い、生成した制御信号を双方向コンバータ28へ出力する電動・発電機指令演算部52とを有している。
【0041】
ローパスフィルタ部51の処理を、図5(a)及び図5(b)を用いて具体的に説明する。減算部48で算出された差分ΔPlsの経時変化は、図5(a)で示すように、2つの周波数fa,fb(但し、fa>f>fb)が支配的な合成波形である場合を想定する。ローパスフィルタ部51は、減算部48で算出された差分ΔPlsに対し周波数f以上の変化成分を除去する処理を行うので、処理後の差分ΔPls”の経時変化は、図5(b)で示すように、周波数fbが支配的な波形となる。
【0042】
電動・発電機指令演算部52は、例えば図示のように、LS差圧の差分ΔPls”がゼロより大きくなるに従って電動・発電機29の回転数の差分ΔNがゼロより小さくなり、LS差圧の差分ΔPls”がゼロより小さくなるに従って電動・発電機29の回転数の差分Δqがゼロより大きくなる演算テーブルを予め記憶している。そして、この演算テーブルに基づき、ローパスフィルタ部51で処理されたLS差圧の差分ΔPls”から電動・発電機29の回転数の差分ΔNを演算し、この差分ΔNを前回の回転数の指令値(若しくは、例えば双方向コンバータ28が電動・発電機29の駆動電流の大きさや位相から算出した回転数の実値でもよい)に加算して今回の回転数の指令値とし、これに対応する制御信号を生成して双方向コンバータ28に出力するようになっている。
【0043】
なお、本実施形態では、電動・発電機指令演算部52は、電動・発電機29の回転数の上限値及び下限値を予め記憶しており、前述した回転数の指令値を上限値及び下限値で制限している。これにより、パイロットポンプの吐出圧、すなわち操作装置37A,37B等におけるパイロット圧の元圧を確保するようになっている。
【0044】
双方向コンバータ28の詳細を、図6により説明する。図6は、双方向コンバータ28の機能的構成を関連機器とともに表すブロック図である。
【0045】
双方向コンバータ28は、昇降圧チョッパ53と、交直変換器54と、コントローラ55とを備えている。昇降圧チョッパ53は、詳細を図示しないが、昇圧回路、降圧回路、整流回路、及びそれらの回路の間に設けられた開閉器を有している。コントローラ55は、LS制御装置45からの制御信号(すなわち、回転数の指令値)等を入力し、この回転数の指令値に応じて昇降圧チョッパ53及び交直変換器54を制御するようになっている。詳しく説明すると、コントローラ55は、電動・発電機29の回転数を増加させるとき若しくは維持するときに(言い換えれば、LS差圧の差分ΔPls”≦0であるときに)、電動・発電機29を電動機として作動させる駆動指令を、昇降圧チョッパ53及び交直変換器54へ出力する。これに応じて、昇降圧チョッパ53は、蓄電装置7からの直流電力の電圧を昇圧して交直変換器54に供給し、交直変換器54は、昇降圧チョッパ53からの直流電力を元に交流電力を生成して電動・発電機29に印加し、電動・発電機29を駆動させる。一方、コントローラ55は、電動・発電機29の回転数を減少させるときに(言い換えれば、LS差圧の差分ΔPls”>0であるときに)、電動・発電機29を発電機(回生ブレーキ)として作動させる回生指令を、昇降圧チョッパ53及び交直変換器54へ出力する。これに応じて、交直変換器54は、電動・発電機29の回転子の慣性力を交流電力に変換し、この交流電力を直流電力に変換し、昇降圧チョッパ53は、交直変換器54からの直流電力の電圧を昇圧して蓄電装置7に供給し、蓄電装置7を充電させる。
【0046】
また、双方向コンバータ28は、例えば商用電源56(外部電源)からのケーブルが給電口に接続された場合に、商用電源56と蓄電装置7との間に介在するようになっている。そして、電動・発電機29の停止中に外部電源による充電の開始・終了を指示可能な充電スイッチ(図示せず)が設けられており、コントローラ55は、この充電スイッチからの充電開始指示信号に応じて昇降圧チョッパ53へ充電指令を出力する。これに応じて、昇降圧チョッパ53は、商用電源56からの交流電力を直流電力に変換するとともに、その電圧を降圧して蓄電装置7に供給し、蓄電装置7を充電させる。
【0047】
なお、上記において、操作装置37A,37B等は、特許請求の範囲に記載の複数の油圧アクチュエータの動作を指示する複数の操作手段を構成する。また、双方向コンバータ28は、電動・発電機の回転数を可変制御する電動・発電機制御手段を構成する。また、LS差圧検出装置40は、ロードセンシング差圧を検出する差圧検出手段を構成する。また、LS制御装置45は、複数の操作手段のそれぞれからの操作指令量に基づく要求流量の変化に応じて電動・発電機制御手段への指令値を演算する指令制御手段を構成し、かつ、差圧検出手段で検出されたロードセンシング差圧が予め設定された目標値となるように、それらの差分に応じて電動・発電機制御手段への指令値を演算する指令制御手段を構成する。
【0048】
次に、本実施形態の動作及び作用効果を説明する。
【0049】
例えば運転者が単独操作中の操作レバーを中立位置に戻すと、対応する方向切換弁が中立位置に戻されて、要求流量が減少する。これにより、油圧ポンプ30の吐出圧Psが増加するとともに、複数の油圧アクチュエータ22,23等の最高負荷圧Plmaxが減少するので、LS差圧Plsが目標値Pgrを上回る。そして、LS制御装置45は、LS差圧Plsが目標値Pgrとなるように(言い換えれば、要求流量に見合う油圧ポンプ30の吐出流量となるように)、双方コンバータ28を介し電動・発電機29の回転数を減少させる。このとき、双方向コンバータ28は、電動・発電機29の回転子の慣性力を電力に変換して蓄電装置7を充電する回生制御を行う。したがって、蓄電装置7を充電することができ、ミニショベルの稼働時間を長くすることができる。
【0050】
ここで、例えば双方向コンバータ28の回生制御によって得られる電力を高めるために、電動・発電機29の回転子の質量を大きくしてその慣性力を高めることが考えられるものの、その場合、電動・発電機29の回転数の可変制御の応答性が低下する。そこで、本実施形態においては、LS制御装置45は、電動・発電機指令演算部52がLS差圧Plsと目標値Pgrとの差分ΔPlsに対して演算する前に、ローパスフィルタ部51が差分ΔPlsに対して周波数f以上の変化成分を除去する処理を行っている。これにより、LS差圧Plsの変動に対する電動・発電機29の回転数の可変制御の感度を下げることができる。したがって、ハンチングを抑えることができる。
【0051】
なお、上記第1の実施形態においては、差圧検出弁41及び圧力センサ42で構成されたLS差圧検出装置40を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば図6で示す第1の変形例のように、差圧センサ57で構成されたLS差圧検出装置40Aを備えてもよい。差圧センサ57は、油圧ポンプ30の吐出圧Psを導入するとともに、シャトル弁39から複数の油圧アクチュエータ22,23等の最高負荷圧Plmaxを導入し、それらの差圧であるLS差圧ΔPlsを測定し、これを電気信号としてLS制御装置40へ出力する。このような変形例においても、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
また、例えば図7で示す第2の変形例のように、吐出圧センサ58、最高負荷圧センサ59、及び減算器60で構成されたLS差圧検出装置40Bを備えてもよい。吐出圧センサ58は、油圧ポンプ30の吐出圧Psを導入して測定し、これを電気信号として出力する。最高負荷圧センサ59は、複数の油圧アクチュエータ22,23等の最高負荷圧Plmaxをシャトル弁39から導入して測定し、これを電気信号として出力する。減算器56は、吐出圧センサ58から入力された油圧ポンプ30の吐出圧Psと最高負荷圧センサ59から入力された最高負荷圧Plmaxとの差圧であるLS差圧Plsを演算し、これを電気信号としてLS制御装置40へ出力する。なお、減算器56は、LS差圧検出装置の一部ではなく、LS制御装置の一部となるように構成してもよい。このような変形例においても、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
また、例えば図8で示す第3の変形例のように、LS差圧検出装置40Cは、上記LS差圧検出装置40Bと同様の構成としつつ、吐出圧センサ58及び最高負荷圧センサ59の油圧導入側に絞り61を設けてもよい。すなわち、絞り61を設けることにより、センサの検出値の変動を抑えるようにしてもよい。このような変形例においても、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
なお、上記第1〜第3の変形例においては、LS差圧Plsに相当する圧力を出力する差圧検出弁41を備えていないため、圧力補償弁35A,36A等は、対応する方向切換弁の上流側圧力を導入して閉弁側に作用させる受圧部と、対応する方向切換弁の下流側圧力(詳細には、負荷ポートの出力圧)を導入して開弁側に作用させる受圧部と、油圧ポンプ30の吐出圧Psを導入して開弁側に作用させる受圧部と、シャトル弁39から複数の油圧アクチュエータの最高負荷圧Plmaxを導入して閉弁側に作用させる受圧部とを有している。
【0055】
本発明の第2の実施形態を、図10及び図11により説明する。本実施形態は、上記第1の実施形態とは制御手順が異なるロードセンシング制御を行う実施形態である。なお、本実施形態において、上記第1の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0056】
図10は、本実施形態における電動駆動装置の構成を表す概略図である。
【0057】
本実施形態の電動駆動装置は、上記第2又は第3の変形例と同様、吐出圧センサ58及び最高負荷圧センサ59を備えている。LS制御装置45Aは、最高負荷圧センサ59で検出された複数の油圧アクチュエータ22,23等の最高負荷圧Plmaxに予め設定されたLS差圧の目標値Pgrを加算し、これを油圧ポンプ30の吐出圧の目標値Ps0として設定する。また、吐出圧センサ58で検出された油圧ポンプ30の吐出圧Psが目標値Ps0となるように、双方向コンバータ28を介し電動・発電機29の回転数を可変制御するようになっている。
【0058】
LS制御装置45Aの詳細を、図11により説明する。図11は、LS制御装置45Aの機能的構成を関連機器とともに表すブロック図である。
【0059】
LS制御装置45Aは、油圧ポンプ30の吐出圧の目標値Ps0を設定する目標値設定部47Aと、吐出圧センサ58から入力された油圧ポンプ30の吐出圧Psと目標値設定部47Aで設定された目標値Ps0との差分ΔPsを演算する減算部48Aと、この減算部48Aで算出された差分ΔPsに対しカットオフ周波数fのローパスフィルタ処理を施すローパスフィルタ部51Aと、このローパスフィルタ部51Aで処理された差分ΔPs”に対し所定の演算処理を行い、生成した制御信号を双方向コンバータ28へ出力する電動・発電機指令演算部52Aとを有している。
【0060】
目標値設定部47Aは、入力装置46から入力されたLS差圧の目標値Pgrを設定する。また、最高負荷圧センサ59から入力された複数の油圧アクチュエータ22,23等の最高負荷圧PlmaxにLS差圧の目標値Pgrを加算し、これを油圧ポンプ30の吐出圧の目標値Ps0として設定する。
【0061】
電動・発電機指令演算部52Aは、例えば図示のように、油圧ポンプ30の吐出圧の差分ΔPs”がゼロより大きくなるに従って電動・発電機29の回転数の差分ΔNがゼロより小さくなり、油圧ポンプ30の吐出圧の差分ΔPs”がゼロより小さくなるに従って電動・発電機29の回転数の差分Δqがゼロより大きくなる演算テーブルを予め記憶している。そして、この演算テーブルに基づき、ローパスフィルタ部51Aで処理された油圧ポンプ30の吐出圧の差分ΔPs”から電動・発電機29の回転数の差分ΔNを演算し、この差分ΔNを前回の回転数の指令値(若しくは、例えば双方向コンバータ28が電動・発電機29の駆動電流の大きさや位相から算出された回転数の実値でもよい)に加算して今回の回転数の指令値とし、これに対応する制御信号を生成して双方向コンバータ28に出力するようになっている。
【0062】
なお、上記第1の実施形態と同様、電動・発電機指令演算部52Aは、電動・発電機29の回転数の上限値及び下限値を予め記憶しており、前述した回転数の指令値を上限値及び下限値で制限している。これにより、パイロットポンプの吐出圧、すなわち操作装置37A,37B等におけるパイロット圧の元圧を確保するようになっている。
【0063】
そして、上記第1の実施形態と同様、双方向コンバータ28は、電動・発電機29の回転数を増加させるとき若しくは維持するときに(詳細には、油圧ポンプ30の吐出圧の差分ΔPs”≦0であるときに)、電動・発電機29を電動機として作動させる。一方、電動・発電機29の回転数を減少させるときに(詳細には、油圧ポンプ30の吐出圧の差分ΔPs”>0であるときに)、電動・発電機29を発電機(回生ブレーキ)として作動させるようになっている。
【0064】
なお、上記において、吐出圧センサ58は、特許請求の範囲に記載の油圧ポンプの吐出圧を検出する吐出圧検出手段を構成する。また、最高負荷圧センサ59は、複数の油圧アクチュエータの最高負荷圧を検出する最高負荷圧検出手段を構成する。また、LS制御装置45Aは、複数の操作手段のそれぞれからの操作指令量に基づく要求流量の変化に応じて電動・発電機制御手段への指令値を演算する指令制御手段を構成し、かつ、最高負荷圧検出手段で検出された複数の油圧アクチュエータの最高負荷圧に基づいて油圧ポンプの吐出圧に対する目標値を設定し、吐出圧検出手段で検出された油圧ポンプの吐出圧が目標値となるように、それらの差分に応じて電動・発電機制御手段への指令値を演算する指令制御手段を構成する。
【0065】
次に、本実施形態の動作及び作用効果を説明する。
【0066】
例えば運転者が単独操作中の操作レバーを中立位置に戻すと、対応する方向切換弁が中立位置に戻されて、要求流量が減少する。これにより、油圧ポンプ30の吐出圧Psが増加するとともに、複数の油圧アクチュエータ22,23等の最高負荷圧Plmaxが減少して吐出圧の目標値Ps0も減少するので、吐出圧Psが目標値Ps0を上回る。そして、LS制御装置45Aは、油圧ポンプ30の吐出圧Psが目標値Ps0となるように(言い換えれば、要求流量に見合う油圧ポンプ30の吐出流量となるように)、双方コンバータ28を介し電動・発電機29の回転数を減少させる。このとき、双方向コンバータ28は、電動・発電機29の回転子の慣性力を電力に変換して蓄電装置7を充電する回生制御を行う。したがって、蓄電装置7を充電することができ、ミニショベルの稼働時間を長くすることができる。
【0067】
また、本実施形態においては、LS制御装置45Aは、電動・発電機指令演算部52Aが油圧ポンプ30の吐出圧Psと目標値Ps0との差分ΔPsに対して演算する前に、ローパスフィルタ部51Aが差分ΔPsに対して周波数f以上の変化成分を除去する処理を行っている。これにより、油圧ポンプ30の吐出圧Psの変動(すなわち、LS差圧Plsの変動)に対する電動・発電機29の回転数の可変制御の感度を下げることができる。したがって、ハンチングを抑えることができる。
【0068】
なお、上記第2の実施形態においては、特に説明しなかったが、LS制御装置45Aは、最高負荷圧センサ59から入力された複数の油圧アクチュエータ22,23等の最高負荷圧Plmaxに対し、例えば周波数f以上の変化成分を除去する処理を行うローパスフィルタ部を有してもよい。そして、目標値設定部47Aは、そのローパスフィルタ部で処理された複数の油圧アクチュエータ22,23等の最高負荷圧PlmaxにLS差圧の目標値Pgrを加算し、これを油圧ポンプ30の吐出圧の目標値Ps0として設定する。このような場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0069】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、入力装置46によってLS差圧の目標値Pgrを変更可能とした場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば、LS差圧の目標値Pgrは、予め設定された固定値として、LS制御装置45に記憶されてもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0070】
本発明の第3の実施形態を、図12〜図14により説明する。本実施形態は、ネガティブ制御を行う実施形態である。なお、本実施形態において、上記実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0071】
図12は、本実施形態における電動駆動装置の構成を表す概略図である。
【0072】
本実施形態では、油圧ポンプ30から複数の油圧アクチュエータ22,23等へ供給する圧油の方向及び流量をそれぞれ制御する複数のオープンセンタ型の方向切換弁(詳細には、図12で示すブーム用方向切換弁33A及びアーム用方向切換弁34A、並びに、図示しない左右の走行用方向切換弁、ブレード用方向切換弁、旋回用方向切換弁、スイング用方向切換弁、及びバケット用方向切換弁。以降、これらを方向切換弁33A,34A等と称す)を備えており、これら方向切換弁33A,34A等は、センタバイパス流路62を介し直列接続されている。
【0073】
センタバイパス流路62の下流側には制御圧発生用絞り63が設けられており、この絞り63の上流側圧力を制御圧Pnとして検出する制御圧センサ64が設けられている。そして、例えば全ての操作レバー27A,27B等が中立位置にある場合(すなわち、全ての方向切換弁33A,34A等が中立位置にある場合)に、センタバイパス流路62の流量が比較的多くなるので、制御圧Pnは比較的大きくなる。一方、例えば操作レバー27A,27B等のうちのいずれかが最大操作位置にある場合(すなわち、方向切換弁33A,34A等のうちのいずれかが切換位置にある場合)に、センタバイパス流路62の流量が比較的少なくなるので、制御圧Pnは比較的小さくなる。
【0074】
また、双方向コンバータ28のコントローラ55は、電動・発電機29の駆動電流の大きさや位相から電動・発電機29の回転数(実値)Nを演算するようになっている。
【0075】
そして、双方向コンバータ28を制御するネガティブ制御装置66が設けられている。このネガティブ制御装置66は、双方向コンバータ28で取得された電動・発電機29の回転数Nに基づいて油圧ポンプ30の吐出流量Qを演算し、この吐出流量Qに対応する制御圧の目標値Pn0を設定する。そして、制御圧センサ64で検出された制御圧Pnと目標値Pn0との差分ΔPnに応じて、双方向コンバータ28を介し電動・発電機29の回転数を可変制御するようになっている。
【0076】
ネガティブ制御装置66の詳細を、図13により説明する。図13は、ネガティブ制御装置66の機能的構成を関連機器とともに表すブロック図である。
【0077】
ネガティブ制御装置66は、油圧ポンプ30の吐出流量Qを演算する吐出流量演算部67と、この吐出流量演算部67で算出された吐出流量Qに対応する制御圧の目標値Pn0を設定する目標値設定部47Bと、制御圧センサ64から入力された制御圧Pnと目標値設定部47Bで設定された目標値Pn0との差分ΔPnを演算する減算部48Bと、この減算部48Bで算出された差分ΔPnに対しカットオフ周波数fのローパスフィルタ処理を施すローパスフィルタ部51Bと、このローパスフィルタ部51Bで処理された差分ΔPn”に対し所定の演算処理を行い、生成した制御信号を双方向コンバータ28へ出力する電動・発電機指令演算部52Bとを有している。
【0078】
吐出流量演算部67は、油圧ポンプ30の押しのけ容積(固定値)を予め記憶しており、この油圧ポンプ30の押しのけ容積と双方向コンバータ28で取得された電動・発電機29の回転数Nとを積算して、油圧ポンプ30の吐出流量Qを算出するようになっている。
【0079】
目標値設定部47Bは、例えば図14中実線で示すような演算テーブルに基づき、吐出流量演算部67で算出された油圧ポンプ30の吐出流量Qに対応して制御圧の目標値Pn0を設定する。この制御圧の目標値Pn0は、同じ吐出流量Qの条件で、全ての操作レバー27A,27B等が中立位置にある場合(言い換えれば、全ての方向切換弁33A,34A等が中立位置にある場合)の制御圧Pn(図14中一点鎖線で示す)より所定値a(詳細には、制御の応答性等を考慮して予め設定された所定値)だけ小さく、かつ、操作レバー27A,27B等のうちのいずれかが最大操作位置にある場合(言い換えれば、方向切換弁33A,34A等のうちのいずれかが切換位置にある場合)の制御圧Pn(図14中二点鎖線で示す)より大きくなっている。
【0080】
したがって、例えば全ての操作レバー27A,27B等が中立位置にあれば、油圧ポンプ30の吐出流量Qにかかわらず、制御圧Pn>目標値Pn0(すなわち、ΔPn>0)となり、後述する電動・発電機29の回転数の可変制御を、油圧ポンプ30の吐出流量Qの減少方向に進めさせることになる。すなわち、制御圧Pn>目標値Pn0の関係を維持しながら制御圧Pn及び目標値Pn0が減少し、最終的に、油圧ポンプ30の吐出流量Qが最小値となる(詳細には、電動・発電機29の回転数Nが最小値となる)。一方、例えば操作レバー27A,27B等のうちのいずれかが最大操作位置にあれば、油圧ポンプ30の吐出流量Qにかかわらず、制御圧Pn<目標値Pn0(すなわち、ΔPn<0)となり、後述する電動・発電機29の回転数の可変制御を、油圧ポンプ30の出流量Qの増加方向に進めることになる。すなわち、制御圧Pn<目標値Pn0の関係を維持しながら制御圧の目標値Pn0が増加し、最終的に、油圧ポンプ30の吐出流量が最大値Q_maxとなる(詳細には、電動・発電機29の回転数が最大値N_maxとなる)。
【0081】
電動・発電機指令演算部52Bは、図示のように、制御圧の差分ΔPn”がゼロより大きくなるに従って電動・発電機29の回転数の差分ΔNがゼロより小さくなり、制御圧の差分ΔPn”がゼロより小さくなるに従って電動・発電機29の回転数の差分Δqがゼロより大きくなる演算テーブルを予め記憶している。そして、この演算テーブルに基づき、ローパスフィルタ部51Bで処理された制御圧の差分ΔPn”から電動・発電機29の回転数の差分ΔNを演算し、この差分ΔNを前回の回転数の指令値(若しくは、双方向コンバータ28で取得された回転数の実値でもよい)に加算して今回の回転数の指令値とし、これに対応する制御信号を生成して双方向コンバータ28に出力するようになっている。
【0082】
なお、上記実施形態と同様、電動・発電機指令演算部52Bは、電動・発電機29の回転数の上限値及び下限値を予め記憶しており、前述した回転数の指令値を上限値及び下限値で制限している。これにより、パイロットポンプの吐出圧、すなわち操作装置37A,37B等におけるパイロット圧の元圧を確保するようになっている。
【0083】
そして、上記実施形態と同様、双方向コンバータ28は、電動・発電機29の回転数を増加させるとき若しくは維持するときに(詳細には、制御圧の差分ΔPn”≦0であるときに)、電動・発電機29を電動機として作動させる。一方、電動・発電機29の回転数を減少させるときに(詳細には、制御圧の差分ΔPn”>0であるときに)、電動・発電機29を発電機(回生ブレーキ)として作動させるようになっている。
【0084】
なお、上記において、制御圧センサ64は、特許請求の範囲に記載の絞りの上流側で切換わる複数の方向切換弁のうちの少なくとも1つの切換量の変化に基づき変化する、絞りの上流側圧力を制御圧として検出する制御圧検出手段を構成する。また、双方向コンバータ28は、電動・発電機の回転数を取得する回転数取得手段を構成する。
【0085】
また、ネガティブ制御装置66は、複数の操作手段のそれぞれからの操作指令量に基づく要求流量の変化に応じて電動・発電機制御手段への指令値を演算する指令制御手段を構成する。また、ネガティブ制御装置66は、回転数取得手段で取得された電動・発電機の回転数に基づいて油圧ポンプの吐出流量を演算する吐出流量演算手段と、吐出流量演算手段で算出された油圧ポンプの吐出流量に基づいて制御圧に対する目標値を設定し、制御圧検出手段で検出された制御圧と目標値との差分に応じて電動・発電機制御手段への指令値を演算する指令制御手段とを構成する。
【0086】
次に、本実施形態の動作及び作用効果を説明する。
【0087】
例えば運転者が単独操作中の操作レバーを中立位置に戻すと、対応する方向切換弁が切換位置から中立位置に戻されて、要求流量が減少する。これにより、制御圧Pnが増加して、油圧ポンプの吐出流量Qに対応する目標値Pn0を上回る。そして、ネガティブ制御装置66は、制御圧Pnと目標値Pn0との差分に応じて、双方コンバータ28を介し電動・発電機29の回転数を最終的に最小値N_minまで減少させる(言い換えれば、要求流量に見合う油圧ポンプ30の吐出流量となる)。このとき、双方向コンバータ28は、電動・発電機29の回転子の慣性力を電力に変換して蓄電装置7を充電する回生制御を行う。したがって、蓄電装置7を充電することができ、ミニショベルの稼働時間を長くすることができる。
【0088】
また、本実施形態においては、ネガティブ制御装置66は、電動・発電機指令演算部52Bが制御圧Pnと目標値Pn0との差分ΔPnに対して演算する前に、ローパスフィルタ部51Bが差分ΔPnに対して周波数f以上の変化成分を除去する処理を行っている。これにより、制御圧Pnの変動に対する電動・発電機29の回転数の可変制御の感度を下げることができる。
【0089】
本発明の第4の実施形態を、図15〜図17により説明する。本実施形態は、ポジティブ制御を行う実施形態である。なお、本実施形態において、上記実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0090】
図15は、本実施形態における電動駆動装置の構成を表す概略図である。
【0091】
本実施形態では、上記第3の実施形態と同様、双方向コンバータ28のコントローラ55は、電動・発電機29の駆動電流の大きさや位相から電動・発電機29の回転数(実値)Nを演算するようになっている。
【0092】
また、操作装置37A,37B等から出力されたパイロット圧のうちの最も大きいパイロット圧Pp(以降、最大パイロット圧Ppと称す)を選択して取り出すための複数(本実施形態では7つであり、図15では4つのみ示す)のパイロット圧用シャトル弁68が設けられ、最終段のシャトル弁68の出力圧(すなわち、最大パイロット圧Pp)を検出するパイロット圧センサ69が設けられている。
【0093】
そして、双方向コンバータ28を制御するポジティブ制御装置70が設けられている。このポジティブ制御装置70は、双方向コンバータ28で取得された電動・発電機29の回転数Nに基づいて油圧ポンプ30の吐出流量Qを演算する。また、パイロット圧センサ69で検出された最大パイロット圧Ppに基づいて要求流量Qrefを設定し、油圧ポンプ30の吐出流量Qが要求流量Qrefとなるように、双方向コンバータ28を介し電動・発電機29の回転数を可変制御するようになっている。
【0094】
ポジティブ制御装置70の詳細を、図16により説明する。図16は、ポジティブ制御装置70の機能的構成を関連機器とともに表すブロック図である。
【0095】
ポジティブ制御装置70は、パイロット圧センサ69で検出された最大パイロット圧Ppに基づいて要求流量(言い換えれば、吐出流量の目標値)Qrefを設定する目標値設定部47Cと、油圧ポンプ30の吐出流量Qを演算する吐出流量演算部67と、この吐出流量演算部67で算出された吐出流量Qと目標値設定部47Cで設定された要求流量Qrefとの差分ΔQを演算する減算部48Cと、この減算部48Cで算出された差分ΔQに対しカットオフ周波数fのローパスフィルタ処理を施すローパスフィルタ部51Cと、このローパスフィルタ部51Cで処理された差分ΔQ”に対し所定の演算処理を行い、生成した制御信号を双方向コンバータ28へ出力する電動・発電機指令演算部52Cとを有している。
【0096】
目標値設定部47Cは、例えば図17で示すような演算テーブルに基づき、最大パイロット圧Ppに対応する要求流量Qrefを設定する。この要求流量Qrefは、全ての操作レバーが最大操作位置にある場合(すなわち、パイロット圧センサ69で検出された最大パイロット圧が全ての方向切換弁33A,34A等に出力された場合(すなわち、)を想定して方向切換弁33A,34A等の開口面積とその前後差圧とを積算したものに相当する。
【0097】
電動・発電機指令演算部52Cは、例えば図示のように、油圧ポンプ30の吐出流量の差分ΔQ”がゼロより大きくなるに従って電動・発電機29の回転数の差分ΔNがゼロより小さくなり、油圧ポンプ30の吐出流量の差分ΔQ”がゼロより小さくなるに従って電動・発電機29の回転数の差分Δqがゼロより大きくなる演算テーブルを予め記憶している。そして、この演算テーブルに基づき、ローパスフィルタ部51Cで処理された油圧ポンプ30の吐出流量の差分ΔQ”から電動・発電機29の回転数の差分ΔNを演算し、この差分ΔNを前回の回転数の指令値(若しくは、双方向コンバータ28で取得された回転数の実値でもよい)に加算して今回の回転数の指令値とし、これに対応する制御信号を生成して双方向コンバータ28に出力するようになっている。
【0098】
なお、上記実施形態と同様、電動・発電機指令演算部52Cは、電動・発電機29の回転数の上限値及び下限値を予め記憶しており、前述した回転数の指令値を上限値及び下限値で制限している。これにより、パイロットポンプの吐出圧、すなわち操作装置37A,37B等におけるパイロット圧の元圧を確保するようになっている。
【0099】
そして、上記実施形態と同様、双方向コンバータ28は、電動・発電機29の回転数を増加させるとき若しくは維持するときに(詳細には、油圧ポンプ30の吐出流量の差分ΔQ”≦0であるときに)、電動・発電機29を電動機として作動させる。一方、電動・発電機29の回転数を減少させるときに(詳細には、油圧ポンプ30の吐出流量の差分ΔQ”>0であるときに)、電動・発電機29を発電機(回生ブレーキ)として作動させるようになっている。
【0100】
なお、上記において、パイロット圧センサ69は、特許請求の範囲に記載の複数の操作手段の最大操作量を検出する最大操作量検出手段を構成する。また、ポジティブ制御装置70は、複数の操作手段のそれぞれからの操作指令量に基づく要求流量の変化に応じて電動・発電機制御手段への指令値を演算する指令制御手段を構成する。また、ポジティブ制御装置70は、回転数取得手段で取得された電動・発電機の回転数に基づいて油圧ポンプの吐出流量を演算する吐出流量演算手段と、最大操作量検出手段で検出された複数の操作手段の最大操作量に基づいて要求流量を設定し、吐出流量演算手段で算出された油圧ポンプの吐出流量が要求流量となるように、それらの差分に応じて電動・発電機制御手段への指令値を演算する指令制御手段を構成する。
【0101】
次に、本実施形態の動作及び効果を説明する。
【0102】
例えば運転者が単独操作中の操作レバーを中立位置に戻すと、最大パイロット圧Ppが減少し、対応する方向切換弁が切換位置から中立位置に戻されて、要求流量Qrefが減少する。そして、ポジティブ制御装置70は、油圧ポンプ30の吐出流量Qが要求流量Qrefとなるように、双方コンバータ28を介し電動・発電機29の回転数を減少させる。このとき、双方向コンバータ28は、電動・発電機29の回転子の慣性力を電力に変換して蓄電装置7を充電する回生制御を行う。したがって、蓄電装置7を充電することができ、ミニショベルの稼働時間を長くすることができる。
【0103】
また、本実施形態においては、ポジティブ制御装置70は、電動・発電機指令演算部52Cが油圧ポンプ30の吐出流量Qと要求流量Qrefとの差分ΔQに対して演算する前に、ローパスフィルタ部51Cが差分ΔQに対して周波数f以上の変化成分を除去する処理を行っている。これにより、要求流量Qrefの変動に対する電動・発電機29の回転数の可変制御の感度を下げることができる。したがって、ハンチングを抑えることができる。
【0104】
なお、上記第4の実施形態においては、説明しなかったが、油圧アクチュエータの動作速度を変更するための比例係数を入力可能な入力装置(図示せず)を設け、ポジコン制御装置の目標値設定部は、入力装置から入力された比例係数を要求流量Qrefに積算して補正してもよい。このような場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0105】
また、上記第1〜第4の実施形態においては、複数の操作手段として、操作レバーの操作位置に対応したパイロット圧を出力する油圧パイロット式の操作装置37A,37B等を採用した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば、操作レバーの操作位置に対応した電気操作信号を出力する電気レバー式の操作装置を採用してもよい。そして、上記第4の実施形態において、電気レバー式の操作装置を採用した場合には、最大操作量検出手段として、操作装置から出力された電気操作信号のうち最大操作量のものを選択して取り出す演算部を設ければよい。このような場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0106】
また、上記第1〜第4の実施形態においては、双方向コンバータ28は、蓄電装置7からの電力を電動・発電機29に供給して電動・発電機29を駆動する第1の制御モード、及び外部電源からの電力を蓄電装置7に供給して蓄電装置7を充電する第2の制御モードを選択的に行えるように構成し、第1の制御モード中、電動・発電機29の回転数を減少させるときに回生制御を行う場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、前述した第1の制御モード及び第2の制御モード、外部電源からの電力を電動・発電機29に供給して電動・発電機29を駆動する第3の制御モード、並びに外部電源からの電力を電動・発電機29及び蓄電装置7に供給して電動・発電機29を駆動するとともに蓄電装置7を充電する第4の制御モードを、モード選択スイッチ(図示せず)の操作に応じて選択的に行えるように構成してもよい。そして、第3の制御モード又は第4の制御モード中、電動・発電機29の回転数を減少させるときに、外部電源からの電力供給を一時中断しつつ、回生制御を行ってもよい。このような場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0107】
なお、以上においては、本発明の適用対象として、ミニショベルを例にとって説明したが、これに限られず、中型や大型の油圧ショベル(運転質量6トン以上の油圧ショベル)に適用してもよい。また、油圧ショベルに限られず、油圧クレーン等、他の建設機械に適用してもよい。
【符号の説明】
【0108】
7 蓄電装置
13A 走行用油圧モータ
13B 走行用油圧モータ
15 ブレード用油圧シリンダ
17 旋回用油圧モータ
18 スイング用油圧シリンダ
22 ブーム用油圧シリンダ
23 アーム用油圧シリンダ
24 バケット用油圧シリンダ
28 双方向コンバータ(電動・発電機制御手段、回転数取得手段)
29 電動・発電機
30 油圧ポンプ
33,33A ブーム用方向切換弁
34,34A アーム用方向切換弁
35,35A ブーム用圧力補償弁
36,36A アーム用圧力補償弁
37A 操作装置(操作手段)
37B 操作装置(操作手段)
40,40A,40B,40C LS差圧検出装置(差圧検出手段)
45,45A ロードセンシング制御装置(指令制御手段)
58 吐出圧センサ(吐出圧検出手段)
59 最高負荷圧センサ(最高負荷圧検出手段)
62 センタバイパス流路
63 絞り
64 制御圧センサ(制御圧検出手段)
66 ネガティブ制御装置(指令制御手段、吐出流量演算手段)
69 パイロット圧センサ(最大操作量検出手段)
70 ポジティブ制御装置(指令制御手段、吐出流量演算手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置と、
前記蓄電装置との間で電力の授受を行う電動・発電機と、
前記電動・発電機によって駆動する油圧ポンプと、
複数の油圧アクチュエータと、
前記複数の油圧アクチュエータの動作を指示する複数の操作手段と、
前記複数の操作手段の操作方向及び操作量に応じて、前記油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータへ供給する圧油の方向及び流量をそれぞれ制御する複数の方向切換弁とを備えた建設機械の電動駆動装置において、
前記電動・発電機の回転数を可変制御する電動・発電機制御手段と、
前記複数の操作手段のそれぞれからの操作指令量に基づく要求流量の変化に応じて前記電動・発電機制御手段への指令値を演算する指令制御手段とを備え、
前記電動・発電機制御手段は、前記要求流量の減少に応じて前記電動・発電機の回転数を減少させるときに、前記電動・発電機の回転子の慣性力を電力に変換して前記蓄電装置を充電する回生制御を行うことを特徴とする建設機械の電動駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械の電動駆動装置において、
前記複数の方向切換弁のそれぞれの前後差圧が、前記油圧ポンプの吐出圧と前記複数の油圧アクチュエータの最高負荷圧との差圧であるロードセンシング差圧となるように制御する複数の圧力補償弁と、
前記ロードセンシング差圧を検出する差圧検出手段とを備え、
前記指令制御手段は、前記差圧検出手段で検出されたロードセンシング差圧が予め設定された目標値となるように、それらの差分に応じて前記電動・発電機制御手段への指令値を演算しており、
前記電動・発電機制御手段は、前記ロードセンシング差圧が前記目標値を上回って前記電動・発電機の回転数を減少させるときに、前記電動・発電機の回転子の慣性力を電力に変換して前記蓄電装置を充電する回生制御を行うことを特徴とする建設機械の電動駆動装置。
【請求項3】
請求項1記載の建設機械の電動駆動装置において、
前記複数の方向切換弁のそれぞれの前後差圧が、前記油圧ポンプの吐出圧と前記複数の油圧アクチュエータの最高負荷圧との差圧であるロードセンシング差圧となるように制御する複数の圧力補償弁と、
前記油圧ポンプの吐出圧を検出する吐出圧検出手段と、
前記複数の油圧アクチュエータの最高負荷圧を検出する最高負荷圧検出手段とを備え、
前記指令制御手段は、前記最高負荷圧検出手段で検出された前記複数の油圧アクチュエータの最高負荷圧に基づいて前記油圧ポンプの吐出圧に対する目標値を設定し、前記吐出圧検出手段で検出された前記油圧ポンプの吐出圧が前記目標値となるように、それらの差分に応じて前記電動・発電機制御手段への指令値を演算しており、
前記電動・発電機制御手段は、前記油圧ポンプの吐出圧が前記目標値を上回って前記電動・発電機の回転数を減少させるときに、前記電動・発電機の回転子の慣性力を電力に変換して前記蓄電装置を充電する回生制御を行うことを特徴とする建設機械の電動駆動装置。
【請求項4】
請求項1記載の建設機械の電動駆動装置において、
前記複数の方向切換弁は、オープンセンタ型であり、
前記複数の方向切換弁のセンタバイパス流路の下流側に設けられた絞りと、
前記絞りの上流側で切換わる複数の方向切換弁のうちの少なくとも1つの切換量の変化に基づき変化する、前記絞りの上流側圧力を制御圧として検出する制御圧検出手段と、
前記電動・発電機の回転数を取得する回転数取得手段と、
前記回転数取得手段で取得された前記電動・発電機の回転数に基づいて前記油圧ポンプの吐出流量を演算する吐出流量演算手段とを備え、
前記指令制御手段は、前記吐出流量演算手段で算出された前記油圧ポンプの吐出流量に基づいて前記制御圧に対する目標値を設定し、前記制御圧検出手段で検出された制御圧と前記目標値との差分に応じて前記電動・発電機制御手段への指令値を演算しており、
前記電動・発電機制御手段は、前記制御圧が前記目標値を上回って前記電動・発電機の回転数を減少させるときに、前記電動・発電機の回転子の慣性力を電力に変換して前記蓄電装置を充電する回生制御を行うことを特徴とする建設機械の電動駆動装置。
【請求項5】
請求項1記載の建設機械の電動駆動装置において、
前記複数の操作手段の最大操作量を検出する最大操作量検出手段と、
前記電動・発電機の回転数を検出する回転数取得手段と、
前記回転数取得手段で検出された前記電動・発電機の回転数に基づいて前記油圧ポンプの吐出流量を演算する吐出流量演算手段とを備え、
前記指令制御手段は、前記最大操作量検出手段で検出された前記複数の操作手段の最大操作量に基づいて要求流量を設定し、前記吐出流量演算手段で算出された前記油圧ポンプの吐出流量が前記要求流量となるように、それらの差分に応じて前記電動・発電機制御手段への指令値を演算しており、
前記電動・発電機制御手段は、前記油圧ポンプの吐出流量が前記要求流量を上回って前記電動・発電機の回転数を減少させるときに、前記電動・発電機の回転子の慣性力を電力に変換して前記蓄電装置を充電する回生制御を行うことを特徴とする建設機械の電動駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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