説明

建設機械

【課題】 運転席やロックレバーの位置に応じてアクチュエータの作動を禁止することにより、オペレータが扱い易い建設機械を実現する。
【解決手段】 車体には、前,後方向に回動する運転席8と、運転席8の位置を検出する検出スイッチ9と、オペレータにより操作されるロックレバー16と、ロックレバー16の位置を検出する検出スイッチ17とを設ける。また、アクチュエータを作動させるパイロット管路26には、運転席8が着座用位置にあり、ロックレバー16がロック解除位置にあるときに、供給位置(a)に保持される切換弁29を設ける。これにより、運転席8が前側位置でレバー11〜14と接触して作業装置5が作動するのを防止することができる。また、オペレータが車両から離れるときには、ロックレバー16によって作業装置5をロックすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等の建設機械に関し、特に、車両のメンテナンス作業等を行うために運転席が前側に回動可能となった建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の建設機械としては、例えば運転席の下側に各種の部品を配置し、その部品交換、点検作業等を行うときに運転席を前側に回動させる構成としたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実開平7−35563号公報
【0004】
この種の従来技術による油圧ショベルは、下部走行体上に上部旋回体が旋回可能に搭載されている。そして、上部旋回体には、オペレータが着座する運転席と、該運転席の前側に位置してオペレータが操作する複数の操作レバーとが設けられている。
【0005】
ここで、運転席の床板には、操作レバーから後側に離れた位置に運転席用のマウント部が設けられ、このマウント部内には、例えば電気部品等の部品が配置されている。そして、運転席は、その前部側がマウント部に前,後方向に回動可能に取付けられ、マウント部上に搭載された状態でこれを上側から覆っている。この運転席の搭載位置は、オペレータが油圧ショベルを運転するときに着座する通常の位置(着座用位置)となっている。
【0006】
そして、油圧ショベルの運転時には、オペレータが運転席に着座して前側の操作レバー等を操作すると、その操作内容に応じて車体各部の油圧アクチュエータに圧油が給排される。これにより、オペレータは、車体を走行させたり、上部旋回体を旋回させることができ、また作業装置を作動させることによって土砂等の掘削作業を行うことができる。
【0007】
一方、運転席のマウント部内の部品交換、点検作業等を行うときには、作業者等が運転席の前部を支点として後部側を持上げ、これを操作レバー側に向けて前方に倒すように回動させることにより、マウント部内の部品を露出させるようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した従来技術では、例えばマウント部内の部品に対してメンテナンス作業等を行うときに、運転席を前側に回動させる構成としている。しかし、運転席の前側には、比較的近い位置に操作レバーが配置されている。
【0009】
このため、例えば掘削作業中にオペレータがちょっとした点検等を行う場合等、エンジンをかけた状態で運転席を前側に回動させると、運転席が操作レバーに接触してレバーが押動され、車体や作業装置がオペレータの意図しない動作を行う虞れがあり、このような動作が作業の妨げになるという問題がある。
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、運転席が操作装置と接触した場合でも、車体や作業装置が不用意に作動するのを防止でき、オペレータが扱い易く、作業を円滑に実行できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために本発明は、自走可能な車体と、該車体に設けられアクチュエータにより作動する作業装置とからなり、車体には、常時はオペレータが着座する着座用位置に保持され前記着座用位置から前側に回動可能となった運転席を設けてなる建設機械に適用される。
【0012】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、車体には、運転席が着座用位置にあるか否かを検出する座席位置検出手段と、オペレータによりロック位置とロック解除位置との間で切換えられるロックレバーと、座席位置検出手段により運転席が着座用位置にあると検出され、かつロックレバーがロック解除位置となっているときにアクチュエータの作動を許し、これ以外の場合にはアクチュエータの作動を禁止する作動禁止手段とを設ける構成としたことにある。
【0013】
また、請求項2の発明によると、ロックレバーにはロック解除位置にあるか否かを検出するレバー位置検出手段を設け、作動禁止手段は、座席位置検出手段とレバー位置検出手段との検出結果に応じてアクチュエータの作動を許可または禁止する構成としている。
【0014】
また、請求項3の発明によると、作動禁止手段は、車体の油圧源からアクチュエータに圧油を供給しまたは供給を遮断する切換弁により構成している。
【0015】
さらに、請求項4の発明によると、作動禁止手段は、ソレノイド部の通電状態に応じて車体の油圧源からアクチュエータに圧油を供給しまたは供給を遮断する電磁パイロット式切換弁により構成し、車体の電源とグランドとの間には、座席位置検出手段、レバー位置検出手段及び電磁パイロット式のソレノイド部を直列に接続する構成としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、建設機械の運転中にオペレータが運転席を前側に移動したときには、これを座席位置検出手段によって検出でき、作動禁止手段は、オペレータの注意力等に頼ることなく、アクチュエータの作動を自動的に禁止することができる。このため、仮りに運転席が誤って操作装置に接触したとしても、作業装置がオペレータの意図しない動作を行うのを確実に防止でき、この状態で各種の作業を円滑に行うことができる。また、オペレータが運転席を着座用位置に戻したときには、車両の作動禁止状態を速やかに解除することができる。
【0017】
また、例えばオペレータが建設機械から離れる場合等には、ロックレバーをロック位置に切換えることができ、このときにも作動禁止手段によってアクチュエータの作動を確実に禁止することができる。このため、例えばオペレータがいないときに作業装置が誤って操作されるのをロックレバーによって確実に防止することができる。また、オペレータは、ロックレバーをロック解除位置に戻すだけの簡単な操作によって作動禁止状態を速やかに解除することができる。
【0018】
従って、オペレータが扱い易く、信頼性の高い建設機械を実現することができる。そして、運転席の位置に応じてアクチュエータの作動を禁止する機構と、オペレータのロック操作に応じてアクチュエータの作動を禁止する機構とを、共通の作動禁止手段によって構成でき、用途の異なる2つの機構を1つにまとめて簡略化することができる。
【0019】
また、請求項2の発明によれば、オペレータがロックレバーによって行う切換操作をレバー位置検出手段によって検出でき、検出時には、作動禁止手段によってアクチュエータの作動を確実に禁止することができる。また、座席位置検出手段の検出結果と、レバー位置検出手段の検出結果とを用いることにより、2つの条件が成立したときに作動禁止手段が作動する構成を容易に実現することができる。
【0020】
また、請求項3の発明によれば、作動禁止手段として切換弁を用いることにより、各種のパイロット制御等によって切換弁を所望のタイミングで開,閉させることができ、この開,閉動作に応じてアクチュエータの作動を確実に許可または禁止することができる。
【0021】
さらに、請求項4の発明によれば、作動禁止手段として電磁パイロット式切換弁を用いることにより、この切換弁をソレノイド部の通電状態に応じて容易に開,閉させることができ、これによってアクチュエータの作動を確実に許可または禁止することができる。また、電源とグランドとの間には、例えば座席位置検出手段とレバー位置検出手段とを構成する2個のスイッチと、切換弁のソレノイド部とを直列に接続することができる。
【0022】
これにより、例えば両方の検出手段が検出状態となっているか、または少なくとも一方の検出手段が非検出状態となっているかに応じて、切換弁のソレノイド部に通電したり、通電を停止することができ、2つの条件が成立したときに切換弁が作動する回路を容易に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に適用される建設機械として、小型の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図中、1は小型の油圧ショベルを示し、該油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載され、下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体4と、該上部旋回体4の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置5とによって大略構成されている。
【0025】
そして、下部走行体2には、車体を走行させる左,右の走行モータ2A,2Bが設けられ、旋回装置3には、下部走行体2上で上部旋回体4を旋回させる旋回モータ3Aが設けられている。また、上部旋回体4は、図1、図4に示す如く、支持構造体として形成された旋回フレーム4Aと、該旋回フレーム4A上に搭載された後述の外装カバー6、運転席8、検出スイッチ9,17、レバースタンド10、レバー11〜16、エンジン18、油圧ポンプ22,25、作動油タンク23、制御弁27、油圧パイロット弁28、切換弁29等とによって構成されている。
【0026】
また、作業装置5は、旋回フレーム4Aの前部に左,右方向に揺動可能に取付けられたスイングポスト5Aと、該スイングポスト5Aに俯仰動可能に取付けられたブーム5Bと、該ブーム5Bの先端部に俯仰動可能に取付けられたアーム5Cと、該アーム5Cの先端部に回動可能に取付けられたバケット5Dと、これらのブーム5B,アーム5C,バケット5Dをそれぞれ作動させるブームシリンダ5E,アームシリンダ5F,バケットシリンダ5Gとによって大略構成されている。そして、各シリンダ5E,5F,5Gは、走行モータ2A,2B、旋回モータ3Aと共にアクチュエータを構成している。
【0027】
6は上部旋回体4の後側に設けられた外装カバーで、該外装カバー6は、旋回フレーム4Aの後側に搭載されたエンジン18、油圧ポンプ22,25、作動油タンク23等の機器を覆っている。また、外装カバー6の上部側には、図2に示す如く、運転席8が搭載される枠状のマウント部7が設けられ、このマウント部7には、例えば電気部品等の部品(図示せず)が収容されると共に、後述の座席位置検出スイッチ9が取付けられている。
【0028】
8はマウント部7を用いて外装カバー6上に搭載された運転席で、該運転席8は、その前部側が支軸8Aによってマウント部7に取付けられ、支軸8Aを中心として前,後方向に回動可能となっている。また、運転席8の下部側には、例えばゴム等の弾性材料により形成されて運転席8を弾性的に支持する複数の脚部8Bが設けられている。
【0029】
そして、運転席8は、図2中に実線で示す如く、常時はオペレータが着座する着座用位置に保持されている。この着座用位置では、運転席8の各脚部8Bがマウント部7に当接すると共に、運転席8によってマウント部7内の各部品が覆われている。
【0030】
また、例えばマウント部7内の部品交換、点検作業等を行うときには、運転席8が着座用位置から前側に倒すように回動され、図2中に仮想線で示す前側位置に移動される。これにより、作業者等は、マウント部7内の部品を露出を露出させて各種のメンテナンス作業等を行うことができる。
【0031】
9は座席位置検出手段としての座席位置検出スイッチを示し、該座席位置検出スイッチ9は、図2、図5に示す如く、例えば運転席8の脚部8Bに対応する位置でマウント部7に設けられ、運転席8が着座用位置にあるか否かを検出するものである。この検出スイッチ9は、例えば2つの端子9Aと、該各端子9Aの間に開,閉可能に配置された接点9Bと、該接点9Bを端子9Aから離れる方向に付勢する付勢ばね9Cとを有し、常開(ノーマル・オープン)のスイッチとして構成されている。
【0032】
そして、運転席8が着座用位置にあるときには、検出スイッチ9の接点9Bが運転席8の脚部8Bに押動されて各端子9Aに接触し、接点9Bが閉成位置に保持されている。また、運転席8が前側位置に回動されたときには、図6に示す如く、脚部8Bが検出スイッチ9の接点9Bから離れ、接点9Bが付勢ばね9Cによって開成位置に切換えられる。
【0033】
10は運転席8の前側に位置して上部旋回体4に立設されたレバースタンドで、該レバースタンド10には、後述の作業レバー11,12、走行レバー13,14、アクセルレバー15、ロックレバー16等が設けられている。
【0034】
11,12はレバースタンド10の上部側に取付けられた左,右の作業レバー11,12で、これらの作業レバー11,12は、図2、図3に示す如く、オペレータによって前,後方向及び左,右方向に傾転操作される。この場合、左側の作業レバー11は、例えば上部旋回体4を旋回させたり、作業装置5のアーム5Cを回動させるものであり、右側の作業レバー12は、例えば作業装置5のブーム5Bを俯仰動させたり、バケット5Dを回動させるものである。
【0035】
13,14はレバースタンド10の上部側に取付けられた他の操作装置としての左,右の走行レバーで、これらの走行レバー13,14は、オペレータによって前,後方向に傾転操作され、車体を前進、後進させたり、左,右方向に曲進させるものである。また、レバースタンド10の側面部には、傾転操作することによりエンジン回転数を増減させるアクセルレバー15と、後述のロックレバー16とが設けられている。
【0036】
16はレバースタンド10の側面部に設けられた左,右のロックレバーを示し、このロックレバー16は、通常ゲートロックレバーまたは乗降レバーと呼ばれている。そして、ロックレバー16は、例えばオペレータが油圧ショベル1から離れるときに車両の動作をロックするためのレバーであり、図2中に実線で示すロック解除位置と、仮想線で示すロック位置との間で切換えられる。この場合、左,右のロックレバー16は互いに連結されており、オペレータが何れか一方のロックレバー16を傾転操作することによって一体に回動する。
【0037】
そして、運転席8が着座用位置にあるときには、オペレータがロックレバー16をロック解除位置に保持することにより、車体を走行させたり、上部旋回体4を旋回させることができると共に、作業装置5を作動させることができる。また、ロックレバー16をロック位置に切換えたときには、後述の切換弁29が作動することにより、例えば車体の走行、上部旋回体4の旋回動作及び作業装置5の作動が全て禁止された状態となる。
【0038】
17はレバー位置検出手段としてのレバー位置検出スイッチを示し、該レバー位置検出スイッチ17は、図2、図5に示す如く、例えばロックレバー16に対応する位置でレバースタンド10に設けられ、ロックレバー16がロック解除位置にあるか否かを検出するものである。
【0039】
ここで、検出スイッチ17は、例えば2つの端子17Aと、該各端子17Aの間に開,閉可能に配置された接点17Bと、該接点17Bを端子17Aから離れる方向に付勢する付勢ばね17Cとを有し、常開のスイッチとして構成されている。
【0040】
そして、ロックレバー16がロック解除位置にあるときには、検出スイッチ17の接点17Bがロックレバー16に押動されて各端子17Aに接触し、接点17Bが閉成位置に保持されている。また、ロックレバー16がロック位置に切換えられたときには、図7に示す如く、ロックレバー16が検出スイッチ17の接点17Bから離れ、接点17Bが付勢ばね17Cによって開成位置に切換えられる。
【0041】
これにより、本実施の形態では、座席位置検出スイッチ9とレバー位置検出スイッチ17の両方が閉成位置となっているときに、後述の切換弁29を供給位置(a)に切換えることによって車体及び作業装置5の作動を許し、検出スイッチ9,17のうち何れか一方または両方が開成位置となっているときには、切換弁29を遮断位置(b)に切換えることによって車体及び作業装置5の作動を禁止する構成としている。
【0042】
次に、図4、図5を参照しつつ、油圧ショベル1の駆動系統について説明すると、まず18は車両の動力源として上部旋回体4に搭載されたエンジンを示している。そして、エンジン18には、これを始動する電動式のスタータ18Aが付設され、該スタータ18Aは、車両に搭載されたバッテリ等の電源19とグランド20との間に接続されている。
【0043】
21はエンジン制御を行うコントローラで、該コントローラ21は、例えば車両のスタータスイッチ(図示せず)等が閉成されたときに、電源19からスタータ18Aに通電を行い、これによってエンジン18を始動させる。
【0044】
また、コントローラ21には、図5に示す如く、後述する切換弁29の電磁パイロット部29Aの通電状態を検出する検出端子21Aが設けられ、この検出端子21Aは、例えば電磁パイロット部29Aとグランド20との間に接続されている。そして、コントローラ21は、電磁パイロット部29Aへの通電が停止されているときに車両のスタータスイッチ等が閉成されたとしても、スタータ18Aに通電を行わず、エンジン18を停止状態に保持する構成となっている。
【0045】
22はエンジン18により駆動される油圧源としての油圧ポンプで、該油圧ポンプ22は、作動油タンク23内の作動油を吸込み、後述の制御弁27と油圧ポンプ22との間に設けられた主管路24に圧油を吐出する。
【0046】
25はエンジン18により駆動されるパイロット油圧源としてのパイロット油圧ポンプで、該パイロット油圧ポンプ25は、その吐出側に接続されたパイロット管路26にパイロット圧を供給する。この場合、パイロット管路26は、後述の油圧パイロット弁28とパイロット油圧ポンプ25との間に設けられ、パイロット管路26の途中には切換弁29が設けられている。
【0047】
27A〜27Fは主管路24によって油圧ポンプ22の吐出側に接続された複数個の制御弁(全体として制御弁27という)で、該制御弁27は、例えば油圧パイロット式のスプール弁等によって構成されている。そして、制御弁27は、後述の油圧パイロット弁28から油圧パイロット部に入力されるパイロット圧に応じて切換えられ、油圧ポンプ22から各アクチュエータ(例えばモータ2A,2B,3A、シリンダ5E,5F,5G)に給排される圧油の方向を制御する。
【0048】
この場合、制御弁27は、図4に示す如く、旋回装置3の旋回モータ3Aを制御する旋回制御弁27Aと、作業装置5のアームシリンダ5F、ブームシリンダ5E、バケットシリンダ5Gを制御するアーム制御弁27B、ブーム制御弁27C、バケット制御弁27Dと、下部走行体2の走行モータ2A,2Bを制御する左走行制御弁27E,右走行制御弁27Fとによって構成されている。
【0049】
28は制御弁27A〜27Fの油圧パイロット部に接続された複数個の油圧パイロット弁で、該各油圧パイロット弁28は、例えば4個の減圧弁28A〜28Dによって構成されている。ここで、例えば図5中で左側に位置する油圧パイロット弁28は、左側の作業レバー11に連結され、旋回制御弁27A及びアーム制御弁27Bに接続されている。
【0050】
そして、例えば左側の作業レバー11を前,後方向または左,右方向に傾転操作したときには、左側の油圧パイロット弁28から旋回制御弁27Aまたはアーム制御弁27Bにレバーの操作量に応じたパイロット圧が出力され、該当する制御弁が切換えられる。これにより、上部旋回体4を旋回させたり、アーム5Cを俯仰動させることができる。
【0051】
また、右側に位置する油圧パイロット弁28は、右側の作業レバー12に連結され、ブーム制御弁27C及びバケット制御弁27Dに接続されている。そして、右側の作業レバー12を傾転操作したときには、右側の油圧パイロット弁28によってブーム制御弁27Cまたはバケット制御弁27Dが切換えられ、これによってブーム5Bやバケット5Dを作動させることができる。
【0052】
さらに、中央の油圧パイロット弁28は、左,右の走行レバー13,14に連結され、左走行制御弁27E及び右走行制御弁27Fに接続されている。そして、走行レバー13,14を傾転操作したときには、中央の油圧パイロット弁28によって左走行制御弁27Eまたは右走行制御弁27Fが切換えられ、車両を走行させることができる。
【0053】
29は例えばパイロット管路26の途中に開,閉可能に設けられた作動禁止手段としての切換弁で、該切換弁29は、運転席8が着座用位置に保持され、かつロックレバー16がロック解除位置となっているときに、油圧ショベル1に搭載された各アクチュエータ(例えばモータ2A,2B,3A、シリンダ5E,5F,5G)の作動を許可し、これ以外の場合にはアクチュエータの作動を禁止するものである。
【0054】
ここで、切換弁29は、図5に示す如く、例えば電磁パイロット式の3ポート2位置切換弁等からなり、車両の電源19から信号が通電されるソレノイド部としての電磁パイロット部29Aと、戻しばね29Bとを有している。この場合、電源19とグランド20との間には、座席位置検出スイッチ9、レバー位置検出スイッチ17及び電磁パイロット部29Aが互いに直列に接続されている。そして、切換弁29は、検出スイッチ9,17の検出結果に応じて供給位置(a)と遮断位置(b)との間で切換えられ、パイロット圧を用いてアクチュエータへの圧油の供給,遮断を間接的に行う構成となっている。
【0055】
この場合、両方の検出スイッチ9,17が閉成位置となっているときには、電源19から切換弁29の電磁パイロット部29Aに通電が行われることにより、切換弁29が供給位置(a)に保持されている。このため、各油圧パイロット弁28には、パイロット油圧ポンプ25からパイロット圧が供給され、オペレータは、レバー11〜14を操作することにより、制御弁27を切換えて所望のアクチュエータを作動させることができる。
【0056】
また、検出スイッチ9,17の何れか一方または両方が開成位置となっているときには、電磁パイロット部29Aへの通電が停止され、切換弁29が戻しばね29Bによって遮断位置(b)に切換えられるため、各油圧パイロット弁28に供給されるパイロット圧が遮断される。これにより、制御弁27が中立位置に保持され、各アクチュエータへの圧油供給が遮断されるので、車体及び作業装置5の作動を禁止することができる。
【0057】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0058】
まず、油圧ショベル1を通常の状態で運転するときには、図5に示す如く、運転席8を着座用位置に保持し、ロックレバー16をロック解除位置に切換える。この状態で、運転席8に着座したオペレータが車両の電源を投入すると、検出スイッチ9,17を通じて切換弁29の電磁パイロット部29Aに通電が行われ、これによって切換弁29が供給位置(a)に切換えられる。そして、車両のスタータスイッチを閉成すると、コントローラ21によってエンジン18のスタータ18Aに通電が行われ、エンジン18が始動する。
【0059】
ここで、例えば図6に示すように運転席8が前側位置であったり、図7に示すようにロックレバー16がロック位置となっているときには、検出スイッチ9,17のうち少なくとも一方が開成位置となるため、電磁パイロット部29Aには通電が行われない。この状態で、オペレータがスタータスイッチを閉成したとしても、コントローラ21は、検出端子21Aによって電磁パイロット部29Aが非通電状態であることを検出でき、スタータ18Aへの通電を停止してエンジン18の始動を禁止することができる。
【0060】
一方、両方の検出スイッチ9,17が閉成されているときに、エンジン18を始動すると、供給位置(a)となった切換弁29を通じて油圧パイロット弁28にパイロット圧が供給され、制御弁27が制御可能な状態となる。このため、オペレータは、作業レバー11,12や走行レバー13,14を必要に応じて操作することにより、車体を走行させたり、上部旋回体4を旋回させることができると共に、作業装置5を作動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0061】
また、油圧ショベル1を用いた作業中には、例えばオペレータが運転を中断してマウント部7内の部品を点検したり、降雨中に車両から一時的に降りるときにレバー11〜14等が濡れるのを避けたい場合等があり、これらの場合には、オペレータが運転席8から降りてこれを持上げ、運転席8を前側位置に移動させることがある。
【0062】
そして、オペレータが運転席8を持上げたときには、図6に示す如く、座席位置検出スイッチ9が開成位置となり、切換弁29が遮断位置(b)に切換えられるため、各制御弁27は、油圧パイロット弁28からパイロット圧が入力されなくなり、中立位置に保持される。このため、レバー11〜14が不用意に操作されたとしても、各アクチュエータを停止した状態に保持でき、車体の走行、上部旋回体4の旋回動作及び作業装置5の作動を禁止することができる。
【0063】
また、例えばオペレータがエンジンをかけた状態で油圧ショベル1から一時的に離れる場合等には、図7に示す如く、ロックレバー16をロック位置に切換える。この結果、レバー位置検出スイッチ17が開成位置となり、切換弁29が遮断位置(b)に切換えられるため、この場合にも、各制御弁27を中立位置に保持してアクチュエータを停止させることができ、車体及び作業装置5の作動を禁止することができる。
【0064】
かくして、本実施の形態では、座席位置検出スイッチ9、ロックレバー16、レバー位置検出スイッチ17、切換弁29等を設ける構成としたので、油圧ショベル1の運転中にオペレータが運転席8を前側位置に移動したときには、これを座席位置検出スイッチ9によって検出でき、切換弁29によってアクチュエータの作動を確実に禁止することができる。
【0065】
この場合、例えばオペレータが運転席8とレバー11〜14との接触について認識していなかったり、これを忘れていたとしても、オペレータの注意力等に頼ることなく、運転席8を持上げるだけで切換弁29を自動的に作動させることができる。これにより、仮りに運転席8が前側位置でレバー11〜14等に接触したとしても、作業装置5等がオペレータの意図しない動作を行うのを確実に防止でき、この状態でメンテナンス作業等を円滑に行うことができる。
【0066】
そして、オペレータが運転を再開するときには、運転席8を着座用位置に戻すだけで座席位置検出スイッチ9を容易に閉成でき、オペレータは、特別な解除操作等を行うことなく、車両の作動禁止状態を速やかに解除することができる。従って、オペレータが扱い易く、信頼性の高い油圧ショベル1を実現することができる。
【0067】
また、例えばオペレータが油圧ショベル1から離れる場合等には、ロックレバー16をロック位置に切換えることができる。そして、この切換操作をレバー位置検出スイッチ17によって検出でき、検出時には切換弁29によってアクチュエータの作動を確実に禁止することができる。
【0068】
このため、例えばオペレータがいないときに作業装置5等が誤って操作されるのをロックレバー16によって確実に防止でき、正規の操作が行われたときにのみ油圧ショベル1を作動させることができる。また、オペレータが運転を再開するときには、ロックレバー16をロック解除位置に戻すだけの簡単な操作によって作動禁止状態を速やかに解除することができる。従って、ロック操作及び解除操作の操作性を高め、オペレータの運転環境を向上させることができる。
【0069】
そして、本実施の形態では、運転席8の位置に応じてアクチュエータの作動を禁止する機構と、オペレータのロックレバー操作に応じてアクチュエータの作動を禁止する機構とを、共通の切換弁29によって構成することができ、用途の異なる2つの機構を1つにまとめて簡略化することができる。
【0070】
また、作動禁止手段として電磁式の切換弁29を用いたので、電磁パイロット部29Aの通電状態に応じて切換弁29を容易に開,閉させることができ、この開,閉動作に応じてアクチュエータの作動を確実に許可または禁止することができる。この場合、切換弁29をパイロット管路26に設けたので、例えば比較的耐圧の低い弁装置等を切換弁29として用いることができ、部品の小型化、コストダウンを促進することができる。
【0071】
また、切換弁29の電磁パイロット部29Aと検出スイッチ9,17とを電源19とグランド20との間に直列に接続したので、両方の検出スイッチ9,17が閉成されているか、または少なくとも一方のスイッチが開成されているかに応じて電磁パイロット部29Aに通電したり、通電を停止することができ、2つの条件が成立したときに切換弁29が作動する回路を容易に構成することができる。
【0072】
さらに、コントローラ21により電磁パイロット部29Aの通電状態を検出し、非通電時にはエンジン18の始動を禁止するようにしたので、コントローラ21は、例えば運転席8が前側位置であったり、ロックレバー16がロック位置となっているときに、車両を運転できないにも拘らずエンジン18が始動されるのを防止でき、車両が適切な状態となったときにエンジン18を始動させることができる。
【0073】
なお、前記実施の形態では、切換弁29をパイロット管路26に設ける構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば主管路24に切換弁を設けることにより、各アクチュエータに供給される圧油を切換弁によって直接的に遮断する構成としてもよい。
【0074】
また、実施の形態では、検出スイッチ9,17と切換弁29の電磁パイロット部29Aとを直列に接続する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えばコントローラの入力側に検出スイッチ9,17を接続し、コントローラの出力側に切換弁29を接続することにより、コントローラは、両方の検出スイッチ9,17が閉成位置にあることを検出したときに、切換弁29を供給位置(a)に駆動する構成としてもよい。
【0075】
また、実施の形態では、ロックレバー16の位置を検出スイッチ17によって電気的に検出する構成とした。しかし、本発明のロックレバーはこれに限らず、例えばロック位置に切換えたときに、ロックレバーが作業レバー11,12や走行レバー13,14に係合してこれらのレバーを機械的にロックすることにより、車体や作業装置5の作動を禁止する構成としてもよい。
【0076】
さらに、実施の形態では、運転席8を前側位置としたときに、マウント部7内の部品のメンテナンス作業を行う場合を例に挙げて述べた。しかし、本発明は、このような部品のメンテナンス作業に限定されるものではなく、例えば外装カバー6内に収容されたエンジン、油圧ポンプ等の機器がマウント部7の内側に露出する構造とし、運転席8を前側位置に移動させたときには、これらの機器のメンテナンス作業を行う構成としてもよい。
【0077】
さらにまた、実施の形態では、建設機械として小型の油圧ショベルを例に挙げて述べた。しかし、本発明はこれに限らず、例えば中型、大型の油圧ショベルや、油圧クレーン、ロードローラ等を含めて各種の建設機械に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態に適用される油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】油圧ショベルの車体を拡大して示す正面図である。
【図3】油圧ショベルの車体を示す左側面図である。
【図4】油圧ショベルの油圧系統全体を示す回路図である。
【図5】座席位置検出スイッチ、レバー位置検出スイッチ、切換弁等の接続状態を示す回路図である。
【図6】運転席を前側位置に回動したときの接続状態を示す回路図である。
【図7】ロックレバーをロック位置に切換えたときの接続状態を示す回路図である。
【符号の説明】
【0079】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体(車体)
2A,2B 走行モータ(アクチュエータ)
3 旋回装置
3A 旋回モータ(アクチュエータ)
4 上部旋回体(車体)
5 作業装置
8 運転席
9 座席位置検出スイッチ(座席位置検出手段)
11,12 作業レバー
13,14 走行レバー
16 ロックレバー
17 レバー位置検出スイッチ(レバー位置検出手段)
19 電源
20 グランド
22 油圧ポンプ(油圧源)
24 主管路
25 パイロット油圧ポンプ
26 パイロット管路
27 制御弁
28 油圧パイロット弁
29 切換弁(作動禁止手段)
29A 電磁パイロット部(ソレノイド部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、該車体に設けられアクチュエータにより作動する作業装置とからなり、前記車体には、常時はオペレータが着座する着座用位置に保持され前記着座用位置から前側に回動可能となった運転席を設けてなる建設機械において、
前記車体には、
前記運転席が前記着座用位置にあるか否かを検出する座席位置検出手段と、
オペレータによりロック位置とロック解除位置との間で切換えられるロックレバーと、
前記座席位置検出手段により前記運転席が前記着座用位置にあると検出され、かつ前記ロックレバーが前記ロック解除位置となっているときに前記アクチュエータの作動を許し、これ以外の場合には前記アクチュエータの作動を禁止する作動禁止手段とを設ける構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記ロックレバーには前記ロック解除位置にあるか否かを検出するレバー位置検出手段を設け、前記作動禁止手段は、前記座席位置検出手段と前記レバー位置検出手段との検出結果に応じて前記アクチュエータの作動を許可または禁止する構成としてなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記作動禁止手段は、前記車体の油圧源から前記アクチュエータに圧油を供給しまたは供給を遮断する切換弁により構成してなる請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記作動禁止手段は、ソレノイド部の通電状態に応じて前記車体の油圧源から前記アクチュエータに圧油を供給しまたは供給を遮断する電磁パイロット式切換弁により構成し、前記車体の電源とグランドとの間には、前記座席位置検出手段、前記レバー位置検出手段及び前記電磁パイロット式切換弁のソレノイド部を直列に接続する構成としてなる請求項2に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−28798(P2006−28798A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206264(P2004−206264)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】