説明

建設機械

【課題】 作業靴、工具等の物品をフロア部材上の所定の場所に動かないように配置することにより、足元への干渉を防止して操作性等を向上する。
【解決手段】 フロアマット16の足元マット部17には、前隔壁19A、左隔壁19B等によって取囲むことにより第1の物品収容部19を設け、延長マット部18には、枠状隔壁20Aによって取囲むことにより第2の物品収容部20を設ける構成としている。従って、第1の物品収容部19には、例えば作業靴21等を収容することができ、第2の物品収容部20には、例えばスパナ22、ドライバ23等を収容することができる。しかも、各物品収容部19,20は、収容した作業靴21、スパナ22、ドライバ23の移動を規制するから、これらが足元に干渉するのを防止し、走行用操作レバー・ペダル11の操作性を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフロア部材上にフロアマットが敷設された油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の建設機械は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより大略構成されている。
【0003】
そして、上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレーム上にフロア部材を有し、該フロア部材は、後側が運転席を取付ける運転席取付部となり前側がオペレータが足を乗せる足乗せ部となっている。そして、フロア部材の足乗せ部の上側には、例えば弾性をもったゴム材料等からなるフロアマットが敷設されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−88799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今では、油圧ショベルをリラックスした状態で操作するため、また、リースの油圧ショベルを汚さないため等の理由から、泥等が付着して汚れた作業靴を脱いで油圧ショベルの操作を行う場合がある。この場合、大型の油圧ショベルでは、運転席の周囲に脱いだ靴を置く場所を容易に確保することができるが、小型の油圧ショベルでは、スペースに余裕がなく靴を置く場所を確保することができない。そこで、脱いだ作業靴をフロアマット上の邪魔にならない位置に載せることが考えられるが、走行時や作業時の揺れによって靴が移動し、足に当たって操作の邪魔になる虞がある。
【0006】
一方で、日常的に使用する工具類は、工具箱からの出し入れが面倒なために、容易に手の届くフロアマットの上に出しておきたい。しかし、小型の油圧ショベルでは、スペースを確保するのが難しい上に、作業靴と同様に、移動すると邪魔になったり紛失したりする虞がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、例えば作業靴、工具等の物品をフロア部材上の所定の場所に動かないように配置することができ、各種作業を行うときの操作性等を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による建設機械は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、前記上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、該旋回フレーム上に設けられ後側が運転席を取付ける運転席取付部となり前側がオペレータが足を乗せる足乗せ部となったフロア部材と、該フロア部材の足乗せ部の上側を覆うように敷設されたフロアマットとを備えている。
【0009】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記フロアマットには、当該フロアマットの一部を立上がった隔壁で取囲むことにより物品を収容する物品収容部を設ける構成としたことにある。
【0010】
請求項2の発明によると、前記物品収容部を画成する前記隔壁は、前記フロアマットを成型するときに一体的に形成する構成としたことにある。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、フロア部材の足乗せ部の上側に敷設されたフロアマットには、当該フロアマットの一部を隔壁で取囲むことにより物品収容部を設ける構成としている。従って、小型の建設機械でも、フロアマット上の物品収容部に作業靴、工具類等の物品を収容することができる。また、物品収容部に収容した物品は、隔壁によって移動を規制することができるから、走行時や作業時に物品が不用意に移動することはない。
【0012】
この結果、小型の建設機械でも物品収容部に物品を収容することができる。しかも、物品収容部は、物品を移動しないように収容できるから、各種作業を行うときに物品が足に当たって違和感を感じることがなく、操作性等を向上することができる。また、隔壁によって囲まれた物品収容部は、上側に大きく開口しているから、物品を容易に出し入れすることができる。さらに、物品の紛失も防止することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、物品収容部を画成する隔壁は、フロアマットを成型するときに一体的に形成することができるから、物品収容部を簡単に設けることができる。また、隔壁は、一般的なフロアマットと同じく弾性材料から形成されることになるから、隔壁を踏み付けて変形させることができ、足元を広く使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るキャブ仕様の油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】図1中のキャブを拡大して示す外観斜視図である。
【図3】キャブ内を示す横断面図である。
【図4】図2中のフロア部材、運転席、フロアマット、物品収容部等を示す外観斜視図である。
【図5】第1の実施の形態による2つの物品収容部が形成されたフロアマットを示す外観斜視図である。
【図6】第2の実施の形態による2つの物品収容部が形成されたフロアマットを示す外観斜視図である。
【図7】第3の実施の形態によるフロアマットが設けられたキャノピ仕様の油圧ショベルを示す正面図である。
【図8】図7中のフロア部材、運転席、フロアマット、物品収容部等を拡大して示す外観斜視図である。
【図9】図8中のフロア部材とフロアマットと物品収容部を示す外観斜視図である。
【図10】第3の実施の形態による物品収容部が形成されたフロアマットを示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に適用される建設機械として、クローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0016】
まず、図1ないし図5は本発明の第1の実施の形態を示している。この第1の実施の形態では、建設機械として中型ないし小型の油圧ショベルを例示している。
【0017】
図1において、1は本実施の形態に適用される建設機械としてのキャブ仕様の油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、例えば一般的な油圧ショベルを大型、中型、小型、超小型(ミニ)に分類すると、中型ないし小型となるものである。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行う作業装置4とにより大略構成されている。
【0018】
ここで、上部旋回体3は、支持構造体をなす旋回フレーム5と、該旋回フレーム5の後部に設けられたカウンタウエイト6と、該カウンタウエイト6の前側に位置して旋回フレーム5上に搭載されたエンジン、油圧ポンプ(いずれも図示せず)等と、旋回フレーム5の左前側に搭載された後述のフロア部材7、運転席8、キャブボックス15等とにより大略構成されている。
【0019】
7は旋回フレーム5の左前側に設けられたフロア部材で、該フロア部材7は、後述する運転席8、キャブボックス15等のベース板を構成している。また、フロア部材7上には、図2、図3に示すように、後述の運転席8、キャブボックス15、フロアマット16等が配設されている。また、フロア部材7は、図4に示す如く、例えば前,後方向に長尺な長方形状の平板として形成され、後側部分が運転席8等を取付けるための運転席取付部7Aとなり、この運転席取付部7Aよりも前側部分がオペレータが足を乗せる足乗せ部7Bとなっている。また、足乗せ部7B上にはフロアマット16が敷設されている。
【0020】
そして、フロア部材7は、前,後位置および左,右位置の各角隅部が旋回フレーム5に対し防振マウント(図示せず)を介して取付けられている。また、フロア部材7上には、運転室を画成するキャブボックス15が取付けられている。
【0021】
ここで、第1の実施の形態によるフロア部材7は、中型ないし小型の油圧ショベル1に設けられたものであるから、オペレータが搭乗し、レバー操作、ペダル操作等を行うことができるだけの大きさとなっている。このために、大きな物品、例えば後述の作業靴21等を収容するためのスペースを確保することは困難となっている。
【0022】
8はフロア部材7の上側に設けられた運転席で、該運転席8は、フロア部材7の運転席取付部7Aの前側寄りに配置されている。また、運転席8は、運転席取付部7Aに取付けられた台座8Aと、該台座8Aの上側に取付けられオペレータが着座するシート部8Bとにより構成されている。
【0023】
9は運転席8の左側に設けられた作業用の左操作レバーで、該左操作レバー9は、後述の右操作レバー10と一緒に作業装置4等を操作するものである。また、左操作レバー9は、図4に示す如く、フロア部材7から上方に離間して配設され各種スイッチ、表示器類が設けられたコンソール9Aと、該コンソール9Aの前側位置に傾転可能に設けられたレバー部9Bとにより大略構成されている。この左操作レバー9は、後述するキャブボックス15の乗降口15F側となる運転席8の左側に配置され、そのコンソール9Aの下方には、当該コンソール9Aとフロア部材7との間のスペースを利用して後述する第2の物品収容部20が設けられている。
【0024】
また、10は運転席8の右側に設けられた作業用の右操作レバーで、該右操作レバー10は、左操作レバー9と一緒に作業装置4等を操作するものである。また、右操作レバー10は、左操作レバー9とほぼ同様に、コンソール10Aとレバー部10Bとにより大略構成されている。
【0025】
11は運転席8の前側に位置してフロア部材7に設けられた走行用操作レバー・ペダルである。この走行用操作レバー・ペダル11は、下部走行体2を走行させるもので、足乗せ部7Bの前部中央に取付けられている。また、走行用操作レバー・ペダル11の左,右両側には、オペレータが足を乗せる左,右のペダル12が設けられている。
【0026】
13は運転席8の後側に位置してフロア部材7上に搭載された空調装置で、該空調装置13は、エバポレータ、ヒータ、送風ファン等(いずれも図示せず)を内蔵している。また、14は乗降口15Fと左,右方向の反対側となる運転席8の右側に位置して前,後方向に延びた空調ダクトである。この空調ダクト14は、空調装置13から供給される温風または冷風を、例えばオペレータの上半身、足元、運転室の前面側等に向けて吹き出すものである。また、空調ダクト14は、その後側が空調装置13に接続され、前側がフロア部材7の最前部まで延びて立上がっている。
【0027】
15は運転席8の周囲と上方とを覆うようにフロア部材7上に取付けられたキャブボックスで、該キャブボックス15は、フロア部材7上にオペレータが各種操作を行う運転室を形成するものである。また、キャブボックス15は、前面部15A、後面部15B、左側面部15C、右側面部15Dおよび天井面部15Eにより上側が閉塞された箱体として構成されている。さらに、キャブボックス15の左側面部15Cには、中央から前側にかけてオペレータが出入りするための乗降口15Fが設けられ、この乗降口15Fを開閉するようにドア15Gが取付けられている。
【0028】
16はフロア部材7の上側を覆うように敷設されたフロアマットで、該フロアマット16は、例えば弾性を有するゴム材料、樹脂材料等の弾性材料からなり、例えば射出成型等の加工手段を用いて所望の形状に加工されている。また、フロアマット16は、前側に位置してフロア部材7の足乗せ部7Bを覆うように長方形状に形成された足元マット部17と、キャブボックス15の乗降口15F側となる足元マット部17の左後部から後側に延びた長方形状の延長マット部18とにより略P字状に形成されている。
【0029】
ここで、フロアマット16の足元マット部17は、前,後方向の中間部から後側がほぼ平坦な平坦面部17Aとなり、中間部から前側が緩やかに上側に傾斜した傾斜面部17Bとなっている。また、傾斜面部17Bの左,右方向の中央位置には、走行用操作レバー・ペダル11を通すための大開口17Cが設けられ、該大開口17Cの左,右両側にはペダル12を通すための小開口17Dが設けられている。
【0030】
また、足元マット部17には、キャブボックス15の乗降口15Fと反対側となる右端縁を立ち上げることで右側壁17Eが形成され、後端縁を立ち上げることで後側壁17Fが形成されている。この右側壁17Eと後側壁17Fは、後述する第1の物品収容部19を画成する隔壁の一部を構成している。一方、延長マット部18は、フロア部材7の運転席取付部7Aのうち、運転席8の左側に露出した左端部を覆うものである。そして、この延長マット部18には、後述する第2の物品収容部20が設けられている。
【0031】
19はフロアマット16の足元マット部17に設けられた第1の物品収容部を示し、該物品収容部19は、例えば後述の作業靴21、雨具、工具等を収容するものである。また、第1の物品収容部19は、図3、図4に示すように、オペレータがキャブボックス15の乗降口15Fと運転席8との間を通るときに邪魔にならない位置、また運転席8のシート部8Bに着座したオペレータが足で走行用操作レバー・ペダル11を操作するときに邪魔にならない位置に配置されている。具体的には、走行用操作レバー・ペダル11と運転席8との間に位置して該レバー・ペダル11よりも右側位置、即ち、足元マット部17のうち、前記乗降口15Fと左,右方向の反対側となる平坦面部17Aの右側位置に配置されている。
【0032】
そして、第1の物品収容部19は、平坦面部17Aと傾斜面部17Bとの境界付近に立ち上げられ、左,右方向に延びた前隔壁19Aと、該前隔壁19Aの左端部から後側に延びるように平坦面部17Aから立ち上げられた左隔壁19Bと、前述した足元マット部17の右側壁17E、後側壁17Fとによって囲まれることにより、長方形状の収容空間として形成されている。また、第1の物品収容部19は、例えば作業靴21を収容することができる前,後方向寸法、左,右方向寸法をもって形成されている。
【0033】
ここで、第1の物品収容部19を画成するために設けられた前隔壁19A、左隔壁19Bは、フロアマット16を射出成型するときに一体的に形成することにより、新たに工程を増やすことなく、物品収容部19を簡単に設けることができる。また、各隔壁19A,19Bは、フロアマット16と同じく弾性材料(ゴム材料等)によって形成しているから、該各隔壁19A,19Bは、踏み付けて変形させても簡単に復帰するため、故意に踏み潰すこともでき、足元を広く使用することができる。
【0034】
20はフロアマット16の延長マット部18に設けられた第2の物品収容部を示し、該物品収容部20は、例えば後述のスパナ22、ドライバ23等を収容するものである。また、第2の物品収容部20は、キャブボックス15のドア15Gを開いたときに容易に手が届く位置、具体的には、運転席8の乗降口15F側となる左側位置に配置されている。また、この運転席8の左側位置は、左操作レバー9のコンソール9Aとフロア部材7の運転席取付部7Aとの間に形成されたデッドスペースとなり、このデッドスペースを利用して第2の物品収容部20が設けられている。
【0035】
そして、第2の物品収容部20は、前,後方向に長尺な長方形状の延長マット部18をそのまま利用して設けられている。即ち、第2の物品収容部20は、延長マット部18の4辺を立ち上げてなる枠状隔壁20Aによって囲まれることにより、長方形状の収容空間として形成されている。また、第2の物品収容部20は、例えばスパナ22、ドライバ23等の工具類、消耗パーツ等を収容するのに適している。さらに、第2の物品収容部20の枠状隔壁20Aも、第1の物品収容部19の各隔壁19A,19Bと同様に、フロアマット16を射出成型するときに一緒に設けることができる。
【0036】
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0037】
まず、フロア部材7上に乗り込む場合、オペレータは、キャブボックス15のドア15Gを開き、乗降口15Fからキャブボックス15内に入る。このときに、車内が汚れないように泥等が付着した作業靴21(図5中に二点鎖線で図示)を脱いだ場合には、この作業靴21をフロアマット16に設けた第1の物品収容部19内に収める。これにより、作業靴21に付着した泥等が周囲に付着するのを防止し、また、走行時、作業時の揺れによって作業靴21が移動しないように固定することができる。
【0038】
そして、運転席8に着座したオペレータは、走行用操作レバー・ペダル11を操作することにより、下部走行体2を走行させて作業現場まで移動することができる。また、作業現場まで移動したら、作業用の操作レバー9,10を操作することにより、作業装置4等を俯仰動させ、土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0039】
次に、日常的な点検整備、簡単な修理作業等を行う場合について述べる。これらの作業で用いるスパナ22、ドライバ23等の工具は第2の物品収容部20内に収容されている。これにより、オペレータは、外部に設けられた工具箱まで行くことなく、キャブボックス15のドア15Gを開くだけで容易に取り出すことができ、これらの工具によって点検整備や修理作業等を行うことができる。
【0040】
かくして、第1の実施の形態によれば、フロア部材7の足乗せ部7Bの上側を覆うように敷設されたフロアマット16の足元マット部17には、当該足元マット部17の右側壁17E、後側壁17Fと前隔壁19A、左隔壁19Bとによって取囲むことにより第1の物品収容部19を設けることができる。また、フロアマット16の延長マット部18には、枠状隔壁20Aによって取囲むことにより第2の物品収容部20を設けることができる。
【0041】
そして、足元マット部17に設けた大きな第1の物品収容部19には、大きな物品、例えば作業靴21等を収容することができる。一方、延長マット部18に設けた小さな第2の物品収容部20には、小さな物品、例えばスパナ22、ドライバ23等の工具類等を収容することができる。
【0042】
従って、中型ないし小型の油圧ショベル1でも、フロアマット16上の第1の物品収容部19に作業靴21を収容でき、第2の物品収容部20にスパナ22、ドライバ23等を収容することができる。この上で、第1の物品収容部19に収容した作業靴21は、各隔壁19A,19B等によって移動を規制することができるから、走行時や作業時の揺れや振動によって作業靴21が不用意に移動しないように固定することができる。また、第2の物品収容部20に収容したスパナ22、ドライバ23等の工具類は、枠状隔壁20Aによって移動しないように収容することができる。
【0043】
この結果、収容スペースを確保することが困難な小型の油圧ショベル1でも、各物品収容部19,20に物品を収容することができる。しかも、各物品収容部19,20は、収容した物品の移動を規制できるから、走行用操作レバー・ペダル11等を操作する足に物品が当たるのを防止できる。これにより、オペレータは、足に違和感を感じることなく操作することができ、各種作業時の操作性等を向上することができる。
【0044】
また、各物品収容部19,20は、上側に大きく開口するように形成し作業靴21、スパナ22、ドライバ23等の物品を容易に出し入れすることができる。さらに、スパナ22、ドライバ23等の小さな物品については、移動を規制することで紛失を防止することができる。このように、物品収容部19,20を2箇所に設けることにより、用途に応じて使い分けることができる。
【0045】
また、第1の物品収容部19は、足元マット部17のうち、キャブボックス15の乗降口15Fと左,右方向の反対側となる平坦面部17Aの右側位置に配置している。これにより、第1の物品収容部19は、オペレータがキャブボックス15の乗降口15Fと運転席8との間を通るときに邪魔にならない位置、また運転席8のシート部8Bに着座したオペレータが足で走行用操作レバー・ペダル11を操作するときに邪魔にならない位置に配置できるから、オペレータは円滑に乗り降りすることができる。
【0046】
一方、各物品収容部19,20を画成する各隔壁19A,19B,20Aは、フロアマット16を射出成型するときに一体的に形成することができるから、工程を増やすことなく、各物品収容部19,20を簡単に設けることができる。
【0047】
さらに、各隔壁19A,19B,20Aは、フロアマット16と同じく弾性をもったゴム材料により形成することができるから、各隔壁19A,19B,20Aを誤って踏み付けても容易に復帰させることができる。しかも、各隔壁19A,19B,20Aを故意に踏み付けて変形させることで、足元を広く使用することもできる。
【0048】
次に、図6は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、物品収容部をフロアマットの左,右方向の中央部に設ける構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0049】
図6において、31は第2の実施の形態によるフロアマットで、該フロアマット31は、第1の実施の形態によるフロアマット16と同様に、平坦面部32A、傾斜面部32B、大開口32C、小開口32D、右側壁32Eおよび後側壁32Fからなる足元マット部32と、延長マット部33とにより構成されている。
【0050】
34はフロアマット31の足元マット部32に設けられた第2の実施の形態による第1の物品収容部を示している。この物品収容部34は、例えば作業靴21等を収容するものである。また、第1の物品収容部34は、走行用操作レバー・ペダル11を操作するときに邪魔にならない位置、具体的には、足元マット部32のうち、平坦面部17Aの左,右方向の中央位置に配置されている。そして、第1の物品収容部34は、前隔壁34A、左隔壁34B、右隔壁34Cと前述した足元マット部32の後側壁32Fとによって囲まれることにより、長方形状の収容空間として形成されている。
【0051】
ここで、第1の物品収容部34の前隔壁34A、左隔壁34B、右隔壁34Cは、第1の実施の形態による第1の物品収容部19とほぼ同様に、フロアマット31と一体成型することにより容易に形成することができ、弾性材料(ゴム材料等)から形成することにより踏み付けて変形させることができる。
【0052】
また、35は延長マット部33に設けられた第2の物品収容部を示し、該物品収容部35は、例えばスパナ22、ドライバ23等を収容するもので、フロアマット31と一体成形されている。また、第2の物品収容部35は、運転席8の左側位置に配置され、枠状隔壁35Aによって囲まれることにより、長方形状の収容空間として形成されている。
【0053】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0054】
次に、図7ないし図10は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、通常ミニショベルと呼ばれる小型ないし超小型の油圧ショベルに用いられるフロアマットに物品収容部を設ける構成としたことにある。
【0055】
図7において、41は第3の実施の形態による建設機械としてのキャノピ仕様の油圧ショベルで、該油圧ショベル41は、大型、中型、小型、超小型(ミニ)に分類すると、小型ないし超小型となるものである。この油圧ショベル41は、クローラ式の下部走行体42、上部旋回体43、作業装置44により大略構成されている。また、上部旋回体43は、旋回フレーム45と、該旋回フレーム45の後部に設けられたカウンタウエイト46と、該カウンタウエイト46の前側に位置して前記旋回フレーム45の左側に搭載された後述のフロア部材47、運転席48、キャノピ52等とにより大略構成されている。
【0056】
47は旋回フレーム45の左前側に設けられたフロア部材で、該フロア部材47上には、図8に示すように、後述の運転席48、キャノピ52、フロアマット53等が配設されている。また、フロア部材47は、図9に示す如く、後側部分がステップ状に立上がった運転席取付部47Aとなり、この運転席取付部47Aよりも前側部分がオペレータが足を乗せるほぼ平坦な足乗せ部47Bとなっている。そして、フロア部材47は、足乗せ部47Bの前側が旋回フレーム45の前側に取付けられ、運転席取付部47Aの後側がカウンタウエイト46の上部に取付けられている。
【0057】
ここで、第3の実施の形態によるフロア部材47は、小型ないし超小型の油圧ショベル41に設けられたものであるから、第1の実施の形態による中型ないし小型の油圧ショベル1よりも、物品を収容するためのスペースを確保することは困難となっている。
【0058】
48はフロア部材47の運転席取付部47A上に設けられた運転席で、該運転席48の左,右両側には、図8に示すように、作業用操作レバー49が設けられている。また、運転席48の前側となる足乗せ部47Bの前部中央には、走行用操作レバー・ペダル50が取付けられている。また、走行用操作レバー・ペダル50の左,右両側には、作業装置44の揺動操作、オプション機器の操作等を行うための操作ペダル51が設けられている。さらに、フロア部材47上には、運転席48、作業用操作レバー49、走行用操作レバー・ペダル50等の上方を覆うように4柱式のキャノピ52が取付けられている。
【0059】
53はフロア部材47の足乗せ部47Bの上側を覆うように敷設されたフロアマットで、該フロアマット53は、例えばゴム材料等の弾性材料からなり、射出成型等の加工手段を用いて形成されている。また、フロアマット53は、図9、図10に示す如く、足乗せ部47Bを覆うように長方形状に形成され、その前側位置には走行用操作レバー・ペダル50を通すための大開口53Aと、操作ペダル51を通すための小開口53Bとが設けられている。
【0060】
54はフロアマット53に設けられた第3の実施の形態による物品収容部を示し、該物品収容部54内には、例えばスパナ22、ドライバ23等の工具類、消耗パーツ等を収容することができる。また、物品収容部54は、オペレータが左側の乗降口55(図8、図9参照)から乗り降りするときに邪魔にならない位置、また、足で走行用操作レバー・ペダル50を操作するときに邪魔にならない位置に配置されている。具体的には、走行用操作レバー・ペダル50と運転席48との間に位置して該レバー・ペダル50よりも右側位置、即ち、図8、図10に示すように、レバー・ペダル50から後方に離れたフロアマット53の後端部の右側の角隅位置に配置されている。
【0061】
そして、物品収容部54は、フロアマット53上に左,右方向に長尺な角枠状の枠状隔壁54Aを立ち上げることにより、この枠状隔壁54Aによって囲まれた長方形状の収容空間として形成されている。また、物品収容部54は、フロアマット53を射出成型するときに一体成型されている。
【0062】
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第3の実施の形態によれば、物品を収容するためのスペースを確保することが非常に困難な小型ないし超小型の油圧ショベル41においても、フロアマット53上を利用して物品収容部54を設けることができ、この物品収容部54内に物品を固定的に収容することができる。
【0063】
なお、各実施の形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1,41を例示した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の油圧ショベル等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1,41 油圧ショベル(建設機械)
2,42 下部走行体
3,43 上部旋回体
4,44 作業装置
5,45 旋回フレーム
7,47 フロア部材
7A,47A 運転席取付部
7B,47B 足乗せ部
8,48 運転席
15 キャブボックス
15F,55 乗降口
16,31,53 フロアマット
17,32 足元マット部
17E 右側壁(隔壁)
17F,32F 後側壁(隔壁)
18,33 延長マット部
19,34 第1の物品収容部
19A,34A 前隔壁
19B,34B 左隔壁
20,35 第2の物品収容部
20A,35A,54A 枠状隔壁
21 作業靴(物品)
22 スパナ(物品)
23 ドライバ(物品)
34C 右隔壁
54 物品収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、
前記上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、該旋回フレーム上に設けられ後側が運転席を取付ける運転席取付部となり前側がオペレータが足を乗せる足乗せ部となったフロア部材と、該フロア部材の足乗せ部の上側を覆うように敷設されたフロアマットとを備えてなる建設機械において、
前記フロアマットには、当該フロアマットの一部を立上がった隔壁で取囲むことにより物品を収容する物品収容部を設ける構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記物品収容部を画成する前記隔壁は、前記フロアマットを成型するときに一体的に形成する構成としてなる請求項1に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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